ロシアの「移動式アウシュビッツ」と、国連人権委員会からの追放
いくつかニュースがあります。
まずロシアの「移動式火葬装置」の証言がでてきました。
「露軍による包囲と激しい攻撃が続く南東部マリウポリの市議会は6日、露軍が「移動式の火葬施設」を稼働させたとSNSで明らかにした。露軍の侵攻により死亡した地元住民らの遺体を、地元の協力者が集めて焼却しているという。
ブチャでの民間人殺害を受け、露軍の「戦争犯罪」に非難が高まっていることから、市議会は「ロシアの最高指導部が露軍による犯罪の証拠隠滅を命じた」と批判している」
(読売4月7日)
セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使(@KorsunskySergiy)さん / Twitter
上のような装置のようで、普通の軍隊はこんなものをわざわざ野戦に運んできません。
ましてやそれでなくても補給が困難な外国の戦場に、わざわざ火葬装置を持参するバカはいませんからね。
だいいち、戦死者を焼く装置なんかを持って歩いたら、兵隊はやる気なくすでしょう。
高温で焼くので骨も粉状になる装置です。
こんなものを持ってくる理由はひとつしか思いつきません。
マリウポリ議会が言うとおり、「浄化作戦」の結果発生した大量の死体を焼却して証拠隠滅するためです。
FSBはこれを使って、自分らが殺した市民を焼くのですが、まるで移動式アウシュビッツです。
マリウポリでは、完全に市がロシア軍に制圧されたら、このグロテスクな装置の出番となります。
先日来引用しているセルゲイ・サムレニー氏のツイートが、まるで予言のようにすべて的中しているのに驚かされます。
「ロシアは、ウクライナの降伏に続いて、3日以内にキーウを容易に奪取することを計画しました。-ロシア軍部隊の後には数千人の治安警察が続いた。
ロシア軍は4万5千個のボディバッグを購入し、移動式火葬装置を持ち込んだ」
https://twitter.com/sumlenny/status/1510168073831165956
サムレニー氏が言っていた、「後から来た数千人の治安警察」はFSBだったことが判明していますし、彼らは「移動式火葬装置」を持ち込んでいました。
もはや目的は氏が述べるとおりだとしか考えられません。
「これらの墓はウクライナ人向けに予定されていたようだ。
標準的な予想では、3日以内に各墓地で最大1000人の死体を対象とする独立した集団墓地の掘削が行われた。
16人の兵士のチームが、すべての墓の掘削に携わった。
ロシアはウクライナ軍に対する迅速な勝利、ウクライナの完全占領、ウクライナの市民社会の指導者、政治家、文化的指導者、聖職者などの大量虐殺を含む大量虐殺を計画したようだ。
計画されたような、大量虐殺は第二次世界大戦以来見られなかった」
(サムレニー氏のツイート前掲)
何度も強調しますが、ブチャ大虐殺はただの戦場での兵士による違法行為一般ではなく、組織的計画的に準備された「浄化」を目的とする大量虐殺なのです。
それはかつて占領地で、ユダヤ人、精神障害者、身体障害者、LGBTなどを逮捕し処刑したナチス、あるいは社会の指導者層の抹殺を狙ったポルポトの犯罪と酷似しています。
またにわかには信じがたい話ですが、ロシア正教会が「ウクライナ民族の地上からの抹殺」を命じた文書を兵士に配布していたことがわかっています。
「ロシア正教会は「ウクライナ民族を地球上から抹殺するのが貴方たちの任務である」と書かれた配布物をロシア軍の兵士に配っていると報じられている。
ブリャンスク管区のロシア正教会が作成した配布物には「貴方はロシアの戦士である、貴方の任務はウクライナの民族主義から祖国を守ることだ、貴方の任務はウクライナ民族を地球上から抹殺することだ、
貴方の敵は人間の魂に罪深い損害を与えるイデオロギーだ」と書かれており、この話題を取り上げたウクライナのEuromaidan Pressは「ロシア軍兵士にとって正教会関係者の指示はウクライナ民族に対する暴力に限り免罪符を与えている」と指摘しており、もはや平和なウクライナ人をナチズムから解放するという建前は何処かに消えてしまったようだ」
(航空万能論4月7日)
ロシア正教会、ウクライナ民族を抹殺するのがロシア軍兵士の任務 (grandfleet.info)
私は侵略前に、ウクライナ正教会とロシア正教会による和解のための仲介を考えた時期もありましたが、これでははなしにもなりません。
さて2番目。国連人権委員会から、ロシアが追放されました。
遅すぎたくらいです。
「アメリカ・ニューヨークの国連本部で開かれた国連総会の緊急特別会合の冒頭、ウクライナのキスリツァ国連大使は、「ロシアは隣国の民間人を殺害し、支配しようとしている」とロシア側を強く批判しました。
その上で、「国連人権理事会におけるロシアの資格停止は、選択肢ではなく義務だ。決議案に賛成し、ウクライナと世界の多くの命を救う必要がある。反対に投票するとスクリーン上に赤がともる。赤は命を奪われた罪のない人々の血を意味する。赤い血の表示は、全員の心に残り続けるだろう」と訴え、決議案への賛成を呼びかけました。
決議案では、「ウクライナでロシアによる組織的な人権侵害および、国際人道法の違反があったという報告に対し、重大な懸念を表明する」と明記した上で、国連人権理事会でのロシアの理事国の資格を停止することを求めていました」
(日テレ4月8日)
賛成票が93票、反対24票、棄権がなんと58票も出ています。
米国国連大使の表現を使えば「命を奪われた罪のない人たちの血の色」にこれだけの国が日和見を決め込んだわけです。
反対は当のロシア、そして唯一の共犯国であるベラルーシ、そして中国で、後は人権侵害国家で有名なキューバ、ボリビア、シリア、北朝鮮、イラン、ニカラグア、ジンバブエなどがズラリと並びます。
がっくりくるのはTPPには加盟し、クアッドにも協力的なベトナムが反対票を投じていることです。
これらの国々は、兵器体系がすべてロシア式に依存していますから、ロシアに逆らうと国軍が維持できなくなるということのようですが、それにしても大虐殺を肯定するのですか 。
同じくロシアの兵器体系に依存していたインドは、かろうじて棄権で踏みとどまりました。
インドは4月5日、ブチャ大虐殺を非難し、独立した調査の実施を求めています。
これはインドとしては、かなり思い切った決断で、ティルムルティ国連常駐代表は、安全保障理事会の会合でこう言っています。
「ブチャでの民間人殺害に関する報告は実に悲惨だ。こうした殺害を明確に非難し、独立した調査要請を支持する」
これまでロシアのウクライナ侵略については批判を控えて静観していたインドが、とうとうブチャ大虐殺で、長年友好関係にあったロシアと決別を決めたということになります。
インドにはブリンケンが強く働きかけていましたが、これより先にラブロフは、中国歴訪後の3月31日にインドを訪れて、ジャイシャンカル外相と会談しています。
ここでラブロフは懸命にゴマをすりまくり、非難声明に棄権したインドを褒めたたえ、印露両国は今後も西側諸国の違法な制裁圧力とたたかおうぞ、オオっ、みたいな会談をしていました。
そしてロシアへの制裁にはサインせずに、むしろロシアからの原油輸入を増やしてさえいました。
これが一変したのがブチャ大虐殺です。
いかにブチャ大虐殺が、国際的な力関係を激変させたのかわかるでしょう。
ブチャ大虐殺を非難することに反対すれば、それは共犯者とみなされます。
「ロシアの友人たち」は一人減り二人減り、とうとう中央アジア三馬鹿独裁者の一角であるカザフスタンでは、ウクライナ支持デモは許可され、ロシア支持デモは禁止されたそうです。(笑)
カザフスタンのティルベルディ外相は、ロシアが主張するウクライナ東部のルハンスクとドネツの「人民共和国」を承認しないことを明らかにしており、ロシア離れを始めています。
といっても、インドと同様にロシア制裁には反対していますが。
ロシアは追放されるくらいなら辞めてやるわ、とばかりに後ろ足で砂をかけていきました。
日刊スポーツ
「193カ国で構成される国連総会は7日昼(日本時間8日未明)、ウクライナで「重大かつ組織的な人権侵害」を行ったとして、ロシアの国連人権理事会理事国としての資格を停止する決議を採択した。ロシアは採択後、人権理から離脱する意向を表明した。
表決は賛成が93カ国で、反対が24カ国。採択には棄権(58カ国)や無投票(18カ国)を除き、3分の2以上の賛成が必要だった。人権理理事国の資格を失うのは、2011年3月のリビア以来、2例目となった」
(朝日4月8日)
これでロシアは復帰の道を自分で断ったことになります。
ウクライナに平和と独立を
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移動式火葬装置···証拠も残さずに灰にするということを前提にわざわざトレーラーで持ち込むとはねえ。
あ、これってこちらのブログに初めてお邪魔した時に口蹄疫の牛や豚を焼却処理できないんかなぁ?なんて思った時に想像してた装置そのものだったと。。
ベトナムが反対票入れたのは残念です。
が、まずアサルトライフルをイスラエルの技術入れて国産化し始めたりしてますから、いずれNATO標準の装備体系へ徐々に移行するものと思います。
投稿: 山形 | 2022年4月 9日 (土) 06時16分
虐殺の証拠を残さないための移動式火葬設備は戦闘当初から確認されていて、「ずいぶん用意がいい軍隊だな」とくらいに思ってました。
まぁ、我々には思い付かないですよ。ハナからアウシュビッツをやる気の人間がいるなんて、狂った現代の戦争狂の実在は小説の中の事柄では無いのですね。
ロシア正教会のアジびらにも寒気がします。
いったい、宗教とは何なのか。
及川幸久氏の動画など見ていると、幸福実現党もお里が知れました。
幸福にはモスクワ支部があるし、大川の言霊シリーズ(プーチンの前世は八代将軍吉宗だった、とかってやつ)もあるので、真っ当なプーチン批判は控えると考えてましたが、親露的な胡散臭い情報にばかりアクセスして拡散してる。
馬淵さんや鈴木親子同様、考える力が減衰している保守層に一定の影響力があるので本当に困りものです。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年4月 9日 (土) 17時30分
他国の人間を殺し尽くせ、って。フィクションの世界の悪役そのものです。
そして人権理事会。「我が代表堂々退場す」状態ですね。
投稿: ねこねこ | 2022年4月 9日 (土) 17時48分
ウクライナ人の憎しみがここまで増幅されるとロシアとの修復は難しいですね。逆にロシアは真綿で首を絞められるように破綻への道を転げ落ちます。戦費の調達が出来ない。物価はいよいよハイパーインフレの様相を呈しています。物不足が顕著になれば情報弱者のロシア国民もさすがに何かおかしいと気が付くはずです。ロシアは手当たり次第に乞食外交をやっていますが、ロシアに付き合う国もないですね。窮地に立たされ国連などでも支離滅裂な発言を続けていますが、増々傷口を広げるだけです。
投稿: karakuchi | 2022年4月10日 (日) 09時47分