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2022年4月25日 (月)

ロシア中銀総裁、経済制裁の結果は感じられ始めたばかりだ

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プーチンは何年でも戦争をやると言っています。もはや狂気の沙汰です。
プーチンに言わせると西側の制裁はまったく効いていない、平気の平左であるぞと言っていますが、現場はまったくそうは思っていないようです。
あいかわらずこんな怪気炎を吹き上げているようです。困ったやつだ。

「プーチン氏は月曜日、ロシア経済が本格的なパニックを避けたという事実を利用して、西側の懲罰的な制裁が彼を抑止しないという彼の主張を強化するために、全く異なるシナリオを予測した。
西側の罰則は、高官とのテレビテレビ会議で、「わが国の金融経済状況を急速に弱体化させ、市場のパニックを引き起こし、銀行システムの崩壊と店舗での商品の大規模な不足を引き起こす」ことを意図していると述べた。
「しかし、我々はすでに自信を持って、この対ロシア政策は失敗したと言うことができる」と彼は続けた。「経済電撃戦の戦略は失敗した。
プーチン氏は、現金不足、株式市場の荒廃、イケアのような人気のある西側の小売業者の閉鎖の恐怖に耐えなければならなかったロシア人を安心させようと、部分的に国内の聴衆に演説していました。彼は彼のメッセージを増幅する強力な国家プロパガンダマシンを持っている」
(ニューヨークタイムス4月18日)
https://www.nytimes.com/2022/04/18/world/europe/russian-economy-bleak-assessments.html

ところが、外貨払底にもかかわらず、ルーブル暴落をドル売りルーブル買いの為替操作で補修し、さらには政策金利を20%にするという西側経済当局ならまず死んでもやらないような超高金利政策をしてルーブル安を食い止めている真っ最中の当のロシア中央銀行総裁のエルヴィラ・ナビウリナは、プーチンとは違う意見のようです。

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エルヴィラ・ナビウリナ総裁
国家仮想通貨に「明白な必要性なし」:ロシア中央銀行総裁 | coindesk JAPAN | コインデスク・ジャパン

「ロシアの中央銀行総裁は月曜日、欧米経済制裁の結果は感じられ始めたばかりだと警告し、モスクワ市長は、ロシアの首都だけで20万人の雇用が危険にさらされていると述べ、経済制裁がロシア経済を不安定化させなかったというウラジーミル・V・プーチン大統領の主張を弱体化させる明確な認識を表明した。
二人の高官による厳しい評価は、ロシアが輸入品や部品の在庫が底をつき、急激な景気後退に直面しているという多くの専門家の予測と一致している」
(ニューヨークタイムス4月18日)
https://www.nytimes.com/2022/04/18/world/europe/russian-economy-bleak-assessments.html

実はナビウリナ総裁は、就任にあたって中銀側から警戒感をもたれていました。
なにせ彼女、元プーチンの大統領補佐官だった女性ですからね。
中銀側は、政府で唯一プーチンの意志が通らない伝統を誇ってきた中銀の独立性が危ういと考えたのです。
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復活するロシア市場、ナビウリナ中銀総裁の手腕に高い評価 - WSJ

「ロシア中銀はプーチン大統領の権限が及ばない最後の国家機関の一つだった。独立性を保ち、2008年の世界金融危機からその後に至るまで、一貫して通貨ルーブルを守ってきた。
しかし今、警戒感が漂い始めたようだ。大統領の子分であるナビウリナ氏が金融緩和を推進し、通貨の安定とインフレ抑制よりも低金利を優先するのではないかと」
(ロンター2013年3月14日)
ロシア中銀、新総裁の下でプーチン支配を免れるか | Reuters

実際、ナビウリナはこの戦争の後始末についても、プーチンの意向を優先したようです。
そのナビウリナですら、というのが今回の「もうロシアではモノが作れなくなる」発言の裏にはあります。

ところでNYTの記事に出てくる「ふたりの高官」のもうひとりとは、セルゲイ・ソビャーニン・モスクワ市長のことです。
彼はプーチンの与党「統一ロシア」に属し、腹心とまでいわれた人物でした。

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セルゲイ・ソビャーニン・モスクワ市長
モスクワ市長にプーチンの腹心ソビャーニンСобянин - 壺 齋 閑 話 (hix05.com)

ソビャーニンは、プーチンのパペットといってよいような人物だったようです。

「プーチンとソビャーニンの関係はそう旧いものではないが、プーチンのソビャーニンに対する信頼は非常に厚いといわれている。プーチンは2005年に、チュメニ州知事だったソビャーニンを大統領府の主席補佐官に迎え、2008年に首相になると、自分の分身として副首相に任命した」
(壺斉閑話2010年10月25日)

その人物ですから、モスクワだけで20万人の雇用が危険にさらされていると述べて、制裁が失敗したというプーチンの主張を否定しています。
実は、ウクライナ侵攻開始から3月22日までのわずか1カ月間に5~7万人が海外へと逃避し、さらにその後も7~10万人の人材流出が続くと推定されています。
しかも流出した人材の多くは、ロシア人の中でも優れて教育水準が高く、複数の言語を話すことが可能なテック製企業に勤務する若いエンジニア、ソフト開発や投資家層のようです。
彼らが、そう大きいとは言えないロシアの中間層を形成していました。

この階層は複数の言語に堪能なだけに、いち早くロシアの置かれた状況を察知して、ロシア人がビザなしで滞在できるアルメニア、ジョージア、トルコ、UAEなどの国々に脱出してしまったようです。
米国商務省によれば、2019年の時点で130万人以上のロシア人がテック企業に雇用されているといいますから、早くも1割が逃げ出したようです。
このような人材流出は歯止めがかからず、プーチンが戦争を長引かせれば長引かすほどロシアの金融業界を破綻に追い込むはずです。
しかしプーチンからすれば、この高い教育を受けた知識階層は、ウクライナ戦争当初に起きた反戦デモの主役でしたから、むしろ自分から逃げてくれることは嬉しいことでしょう。

下の写真は反戦デモで拘束された上品な女性ですが、どう見ても富裕階層に属しているように見えます。
このような人々までもが反戦を叫んだだけで根こそぎ逮捕されて口を封じられてしまう、そんな独裁者が支配するロシアを見限ったのです。

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ロシアで3500人超拘束 反戦デモ参加者 - 産経ニュース (sankei.com)

一方、ナビウリナ総裁は、この日のロシア議会に出席してこのようにも述べています。

「ロシアで製造されるすべての製品は輸入部品に依存する」とし、西側の輸出制裁でロシア企業はサプライチェーンを移すか、自ら部品を調達するなどの対策を講じなければならないと述べ、また、西側の制裁で6000億ドル(約77兆円)に達する外貨保有高と金の半分が凍結された状態であることを認めた。
NYTはプーチン大統領の楽観的予想とは相反する予測が方々から出ているとし、国際金融機関らは今年のロシア経済が10~15%縮小すると予想していると伝え、ロシア中央銀行は、消費財価格が昨年より16.7%上昇したと述べた」
(NYT前掲)

中銀総裁が、このまま推移すれば、ロシアではモノが作れなくなると言うのです。
制裁のためにロシア企業はサプライチェーンを外国に移すしかなくなり、すでに多くの企業が部品調達ができなくなって操業が停止しかけています。

ロシア経済は、発展途上国タイプのモノカルサャーです。
国家経済は、原油、LNG、木材、金属などの資源の輸出によって成り立っています。
その中で唯一世界と対等の競争力を持つ製造業は軍需産業です。
軍需産業はそこそこの性能のものを西側より格安で売って世界第2位に上り詰めた、ワン&オンリーの輸出産業なのです。
ミグとスホーイのブランドを持つユナイテッド・エアクラフト社、戦車ならロスティック社、通信機器のバイカルエレクロニクス社などがそうです。

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ロシアSu-34戦闘機の組み立ての様子が公開_中国網_日本語 (china.org.cn)

戦車や戦闘機産業は、ロシアの唯一の輸出工業製品であり、かつ世界の大国としての威信はこの軍事力に依存していました。
世界に大量の武器類を輸出することで、その国を政治的に従属させる力にしていました。
カネ儲けできるうえに世界の大国ヅラできるて、一粒で二度おいしい、これが武器輸出なのです。

ロシアのプーチン大統領が17日、今年の武器輸出総額が過去最高の$14B以上となる見通しだと 述べた。 また今年の新規契約が$15B超であることも明らかにした。
 ロシアは米国に次ぐ世界第二位の武器輸出国で、近年は増加傾向にある。 主な取引先には旧ソ連時代からの取引相手であるインドのほか、中 国軍の台頭を警戒するベトナムなど東南アジア諸国が含まれているという」
(Report: Russia surges in global arms sales 2014年1月31日)
ロシア軍事産業 (ssri-j.com)

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アジア太平洋の武器輸出国は中国がトップ 国内軍需産業の基盤を強化 地域の軍拡レースに拍車(木村正人)

この戦争で多くのアジアの国々が国連人権委員会追放に対して棄権、ないしは反対に回ったのは、軍事体系の基礎をロシアに握られているからです。
逆らうと、自分の国の戦闘機や戦車が動かなくなるかもしれませんからね。

ところがロシアの軍事産業の最大の弱点は内製率が低く、使用する工作機械や電子部品などの大部分を外国製品に頼ってきたことです。
これが今、制裁でこれらの輸入が停止に追い込まれました。
特にロシアの軍事産業にとって致命的な制裁は、半導体の禁輸措置でした。
半導体を製造できる国は、世界でそう多くはありません。米国、台湾、韓国、EU、日本で95%を占め、そこにわずかに中国が食い込むていどです。

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台湾が月産445万枚でトップ国・地域別半導体生産能力 | 電波新聞デジタル (dempa-digital.com)

中国は輸出してくれそうですが、量的に圧倒的に不足しているうえに、セカンダリーサンクション(二次制裁)を恐れていつまで続くかわかりません。

そうなると、現代の戦闘機や戦車は電子部品の塊ですから、半導体がなければ戦闘機も戦車も動かない、修理すらできないことになります。
実際、ウクライナで故障した戦車や戦闘機などを修理するパーツが切れてしまい、戦車は半世紀以上前のポンコツを引っ張りだして使わせている有り様のようです。
航空機も飛ぶものが希少となり、最新鋭ステルス戦闘機をつまらない爆撃に投入しているほどです。

ロシアの造船業も大ピンチで、同じように資金が枯渇した上に部品不足で船舶の建造や修理を継続することができない状態であるようです。
ウラジオストクの国営造船所は、部品不足のために350億ルーブル相当のタンカー2隻とミサイル艇2隻という政府発注を完了することができず、救済を申し出ました。
とうぜん、船舶の保守・修理もできず、大打撃を食った黒海艦隊の修理・補給は手つかずのようです。
つまり陸海空の軍需産業が、ガン首並べて滅亡寸前となりそうです。
そりゃそうでしょうとも。あまりの高利でカネが借りられないから運転資金がショート、エンジニアが海外に逃げて技術部門がショート、制裁で部品が禁輸で製造部門がショート、これでどうやってモノ作れっつうんだ、というところです。
しかも戦争が仮に終わっても、制裁は終了することなく、延々とどこまで続くかわからないのですからね。

そうでなくても、ロシア製武器類が笑劇的にボンコツなことがバレたせいもあって、ロシア製武器に頼ってきた諸国が一斉にロシア離れするのは必至と予測されています。
すると、世界の軍事地図が大きく塗り替わることになります。
このような状況を直視せずに、目先だけの政策をとらせるという頭のネジのはずれたことをして、いっそう企業を追い詰めているのが、プーチンというイケイケドンドンの馬鹿男です。

なお、今後ですが、西側はこのように予測しています。

「ロシア経済は今のところ壊滅的な崩壊を避けているが、経済の痛みをさらに増大させるような制裁が進行中だ。欧州連合(EU)はロシア産石油の輸入を抑制する計画を策定中だ。そして、ジャネット・L・イエレン財務長官は、今週ワシントンで開催される世界銀行と国際通貨基金(IMF)の春季会合で、アメリカの同盟国にロシアに対する経済的圧力を強化するよう呼びかけると予想されている、と財務省関係者は言う。
ロシア経済の縮小に関する国際金融機関の推計は10〜15%の範囲である。
月曜日、ロシアの中央銀行はウェブサイトで、消費者物価は平均して1年前より16.7%高かったと述べた。
アメリカ財務省のウォーリー・アデエモ副長官は、月曜日の経済会議で、ロシアのインフレは急上昇し、輸入は急落し、クレムリンは"ロシア経済を支え、ウクライナ侵略を追求し、将来、権力を投射する資源が少なくなる"と予測した」
(NYT前掲)

よく制裁が効いていないという人がいますが、まだ始まったばかりなのです。
まさにロシア中銀総裁が言うように、「欧米経済制裁の結果は感じられ始めたばかり」なことをお忘れなく。
地獄の釜の蓋は開いたばかりなのです。

 

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ウェッジ5月号表紙より
ウクライナに平和と独立を

 

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コメント

「西側諸国の経済電撃戦の戦略は失敗した」
これって明らかに、「プーチンの(ウクライナへのリアル)電撃戦の戦力は失敗した」へのあてつけのつもりの言葉ですよね。どんだけチンケなプライドなんだこのおじいちゃん。

経済制裁の本当の効果はこれからですからね。

天然資源のほかに主力の輸出品目である武器の生産がままならなくなってきて、早晩自国の戦線維持のための兵器も作れなくなるわけですし。

しかし、ロシアのドローンのパーツがキャノンの一眼レフって笑っちゃいましたけど。

 このナビウリナ総裁ですが私の記憶に間違いなければ、露軍によるウクライナ侵攻直後に中銀総裁の職を辞するべく辞表を提出し、プーチンに拒否されてやむなく職に留まっている御仁です。

中共資金でルーブル買いをさせ、たしかに為替の一時的安定を見ました。そこから国内産業保護のため、政策金利引き下げに舵を切っているようですが、為替は急激なロシア経済衰退の本質的問題ではないですね。ほとんど「焼け石に水」です。
それどころか、かえってロシアの金融主権は中共に握られる羽目に陥ってます。爾来、プーチンは中共に対しても警戒を怠りませんでした。
かつて愛国者的と言われたプーチンは背に腹を変えられず、中共に売国的依存をしている現在地が苦境をあらわしています。

上でednakanoさんが言う、ロシア製ドローンの件も良くロシアシステム欠陥の一端をあらわしていると思います。件のドローンは日本円にして一千万以上。何の独自技術もないポンコツの価値は、西側ではせいぜい数十万円です。いかに軍部が腐敗しているか明瞭です。

技術もノウハウもなく、金融政策の主体性も失いつつあるロシアの経済成長率予想はマイナス10~15%であるとか。
それだけで壊滅的にケツに火がついた状態であるところ、とても戦争など続けられる要素はないのです。

このロシアの衰退は2014年の経済制裁に端を発していて、持てる資源等一次産品の輸出に頼るしかなくなっていた。いかに制裁の効き目があったかの証左です。にもかかわらず、ウクライナに固執したプーチンの夢の実現行動は、単にデフォルトの連続出来では済まされない危機に陥ることが必定です。

山路さんの仰る通り、完全に中共に従属することになりましたね。
西側諸国と売買できなくなった分のうちのある程度は中国経由で取引できますが、中間搾取が半端ないでしょうね。

原油の国際相場が1バレル100ドルなら、ロシアでだぶついた分を中国なら採算ラインギリギリの50ドルで買い、発展途上国に75ドルで流すでしょう。いずれ相場が下がったらポイ捨て、採掘機器が更新できなくて採掘が止まるのとどちらが早いかですね。

ロシアの怒りが中国に向いてくれたら面白いのですが。

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