ウクライナが止めた台湾武力侵攻
マリウポリで例の移動式火葬装置がみつかったとか。
「特別作戦」とは、浄化作戦であることが確定しました。
さて、今出しておかないとないとお蔵入りとなりそうなので、ここで加筆して再アップします。
このブチャ大虐殺で唯一苦笑させられるのは、中国です。
コッチへふらふら、アッチにふらふら、見ちゃいられません。
当初中国は、世界で唯一の盟友のプーチンにつくのかと思いきや、おっと待て距離を開けねばと思い返し、結局でてきたのは非兵器類を送るんだとか。
「ロシアのウクライナ侵攻から5週間、中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」は3月25日、物資を積んで中国の湖北省鹹寧市からロシアに向けて出発した。
中国紙「湖北日報」の報道によると、41基のコンテナ車両は約770トンの「自動車部品、医療品、家電、日用品」などを積み、14日後にロシアの首都モスクワに到着する予定
(4月4日大紀元)
鉄道でロシアに運ぶそうですが、3月15日にはウクライナにも「人道支援」をしていますからまさにコウモリ。
ブチャ大虐殺後は変化するかとおもいきや、ロシアの代弁を流すだけでお茶を濁しているようです。
中国の外交下手が全開です。
ところで中国には3通りのシナリオがあったはずです。
①ロシアを支持する。
②ロシア非難の国際社会と同調する。
③あいまい路線。
西側外交筋はおおむね①支持と見ています。
「いっぽう、中国の政治事情に詳しい専門家の間では、ウクライナ侵攻でロシアが劣勢になればなるほど、中国政府は犠牲を払ってでもロシアを支援するという見方が大半を占めている。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)中国部門のジュード・ブランシェット主任は3月24日付のワシントン・ポストへの寄稿で、「中国政府はたとえ経済・外交上の大きなリスクを払ってでも、ロシアの地位を維持させようとする」という観点を示した。 その根拠について、「中国政府にとって、ロシアの敗北は中国の安全保障および米国との大国競争に極めて不利であるからだ」と分析した」
(4月4日大紀元)
日経(3月1日)が中国の対応を並べていますが、ふらふらして一貫した方針がないのがわかります。
ロシア暴走、中国の誤算: 日本経済新聞 (nikkei.com)
本来は一も二もなく①の全面支持が、中国の方針だったはずです。
よもやロシアが負けるなんてことは、西側軍事筋以上に中国はチラリとも考えなかったはずでした。
中国はロシアを軍事力近代化の師匠にしていましたから、ウクライナ如きに負ければ弟子の立場がなくなります。
だから、在大阪中国公使が「弱者は強者に従っていればいいのだ」とツイートするような鼻息の荒さだったのです。
「ウクライナでの戦争を巡る中国の姿勢にも戦況とともに変化が見られる。中国の薛剣・在大阪総領事は、台湾における中国の敵対勢力に対しプーチン氏によるウクライナ攻撃は「大きな教訓」を含むもので、「弱者は強者にけんかを売るほど愚かであってはならない」と侵攻直後にツイートしていた」
(ブルームバーク3月8日)
まさに強者の奢りそのままの言い草ですが、これこそが中国の本音です。
中国は初めはロシアの大勝利をみじんも疑わず、唯一の気がかりはオリンピック閉幕とパラリンピックの開幕までに終りになること程度でした。
習のプーチンへの入れ上げぶりは異常で、「親友」という表現を使うほどでした。
習は、ウクライナ戦争は短期で終り、「親友」のロシアと友好条約があるウクライナに停戦協議の労をとってみせて漁夫の利を得るくらいに気楽に構えていたことでしょう。
「習近平はプーチンに対し個人的にも思い入れがあり、全面的支援をするつもりだった。あるいはプーチンのウクライナ侵攻に呼応して秋に台湾進攻を計画していたかもしれない。この計画に反対する劉亜洲は発言を封じられて昨年11月以降、「失踪」した。習近平はプーチンに対して冬季五輪閉幕まで進攻作戦を延期するよう頼み、プーチンも承諾した」
(福島香織 2022年3月17日)
これではできない「台湾武力侵攻」、プーチンの失敗で大誤算の習近平 体制内学者から「プーチンを見捨てよ」との提言も(1/5) | JBpress
しかし、現実は4日で終わるどころか、あまりのロシア軍の弱さに西側ですら唖然とするほどで、1か月たっても収束の気配がないばかりか、いまや戦略目標のキーウを断念し、海岸沿いと東部にへばりついていますが、たぶんこのままでは5月までには継戦能力自体を失うことでしょう。
このていたらくでは、政治の師匠をプーチンと仰ぐ習でさえ、今全面支持などしたら破産企業の連帯保証人になるようなものだと判ったはずです。
ところで中国にはウクライナの二匹目のドジョウを狙っていたのではないか、と見るロシアFSBアナリスト情報のリークがありました。
真偽は定かではありません。
「中国にはこの秋、台湾を武力侵攻する計画があったが、ロシアの苦戦ぶりをみてその機会を失ったと考えているという。情報元は、ロシア連邦安全局(FSB)のアナリストが書いたとされる情報分析リポートだ。ロシアの腐敗を告発するサイト「Gulagu.net」を運営するウラジミール・オセチキンが、このFSBの内部文書を公開し、ネットで広まった。オセチキンはこれまでも「ロシアがウクライナに大量破壊兵器使用の準備をしている」といったFSB内部文書由来の情報を暴露してきた人権活動家だ(略)
かつて欧州調査報道賞を受賞したクリスト・ゴロゾフ記者がツイッターで、ウクライナはこれまでにフェイクのFSB文書をリークする心理戦術を使ったことがあると指摘している。だがゴロゾフ記者が2人のFSB元職員と現職員にこのリポートを見せて確認をとったところ、「疑いなく同僚の書いた文書だ」と認めたという」
(福島前掲)
私は台湾侵攻は中国側の軍事的失敗に終わる可能性が大きいので、そうそう簡単にできるものではないと思っていますが、プーチンが大勝利したらあるいは習も西側の団結力を甘く見てコトを起こしたかもしれません。
勝とうものなら、党大会で政権3期目連任は確定、永久首席の座を手にすることができるのは、習に取って甘い誘いではあります。
こびる習近平をプーチンは冷笑? 中国・ロシア「対米共同戦線」の同床異夢|ニューズウィーク日本版
それはあったかもしれないと、ブルームバークも少数意見として紹介しています。
「ブルームバーグ・ニュースが元当局者や著名な中台関係ウオッチャーら計十数人にインタビューしたところ、具体的な評価にはまだ時期尚早と全員が回答した上で、プーチン氏が始めた戦争は中国政府に台湾への軍事行為を思いとどまらせるとの見方が大勢を占めた。
その多くは、プーチン氏が迅速な勝利を達成できずにいることや、ロシア政府の国際的孤立、米国とその同盟国による団結した対応、米軍介入の可能性、国内の反応などさまざまな理由を挙げた。
これに対し、ロシアによる今回のウクライナ侵攻が習主席による台湾侵略をあおるとする少数意見があるのも確かだ。その結果、経済制裁が科されたとしても中国には小さな代償だとし、米国が紛争に軍事介入するか疑問視している。さらに、プーチン氏の動きからは、強度に統制された政治体制の年老いた指導者は外部の識者には合理的とは考えられないようなリスクを進んで取る可能性が浮き彫りとなったという」
(ブルームバーク3月8日)
プーチン氏が始めた戦争、習主席に台湾攻撃思いとどまらせる教訓も - Bloomberg
いずれにしても、ウクライナが台湾侵攻の習の野望を打ち砕いたことは確かですが、中国内にもロシアを切り捨てるべきだという意見はありました。
在野のジャーナリストではなく、政権に献策する政府シンクタンクの意見です。
「胡偉は中国国務院参事室公共政策研究センター副理事長で、外交部傘下のシンクタンク「チャハル学会」学術委員会主任委員、上海市公共政策研究会会長。つまり現役の体制内学者で、しかも政府に外交献策を行う立場にある人物だ。
この文書は、執筆日に3月5日の日付が入り、(略)、民主党系カーターセンターが設立したネットサイト「中美印象ネット」で発表された。
チャハル学会とカーターセンターの学術交流は広く知られている。(略)
この交流は、過去に親中政策をとってきた民主党政権の背景に中国のソフトパワー浸透があったということの証左でもあるが、同時に、中国共産党にも米国との全面対立を避けるよう献策する親米派ブレーンたちが多く存在するということでもある」
(福島前掲)
胡偉は、明確に「ロシアは負けるので、プーチンとの関係を切るべきだ」ということを言い切っています。
胡は、中国から見たウクライナ戦争の情勢分析をしています。
要約しておきます。
胡はウクライナ情勢について
①ウクライナ戦争の戦争はロシアの敗北に終わる。ロシアが短時間でウクライナ現政権を倒して傀儡政権を樹立することは失敗し長期化した。
②和平交渉でウクライナの譲歩は引き出せない。占領地支配を継続することも、ウクライナの抵抗とコストと長期制裁のため不可能。強行しても数年で破綻するだろう。
③ウクライナ戦争は最悪の選択。世界大戦と核戦争に発展する危険性もあり、そうなればロシアは破滅。ロシアの大国の地位は終結するだろう。
まぁそのとおりで、胡の見立てどおり、ロシアは今後勝とうと負けようと大国の地位を完全に失い、ただのユーラシア大陸の東端にある貧しい国のひとつとなるかもしれません。
一方西側陣営は
④当初、仏独などのヨーロッパが離反すると見られていたがそのようなことは起きなかった。仏独は再びNATOの枠組みに戻り、ノルドストリーム2の稼働は棚上げされた
⑤ロシア産原油・LNGが制裁によって消滅したために、欧州エネルギーの米国依存が進んだ。米国は西側世界の指導者の地位に復帰した。
そして西側諸国の対中外交は
⑥ロシアが大国の地位を喪失した結果、中国がこれまでの路線を進めた場合、西側勢力は中国のみを唯一の敵として照準した。
⑦今後、ウクライナ戦争の後に、米国は中国に対する戦略的包囲網をさらに強化し、軍事的包囲網と価値観を対置するようになる。
したがって胡は、 ②のプーチン切り捨てが最も正しい中国の選択となるとしています。
「だから、できるだけ早く「ロシアという荷物を降ろすべきだ」と、プーチンを切り捨てるよう提言。1~2週間のうちに即断しなければ中国にも挽回の猶予がない、と判断を急がせている」
(福島前掲)
にもかかわらず、習政権は③の中途半端な路線を選択しているが、これは下策だと胡は述べています。
「さらに胡偉によると、中国は目下、曖昧路線、中間路線をとろうとしているが、この選択はロシア、ウクライナのどちらも満足させていない。それよりも「中国は世界のメーンストリームサイドになって、孤立を避ける選択をすべきだ」「この立場は台湾問題にも有利だ」と言う。
中国の外交原則は、国家の主権・領土の完全性の維持であり、ウクライナの東部分割や独立も承認していない。これは、台湾が中国の国家の一部であるというロジックに立てば譲れない部分だからだ。この場合、ウクライナと中国が国家であり、ドネツク、ルガンスクと台湾が不可分の領土、にあたる。ロシアの支援によるドネツク、ルガンスクの独立を承認すれば、米国の支援による台湾の独立に反対できない、というわけだ」
(福島前掲)
前にも記事でとりあげましたが、プーチンのウクライナ方針はことごとく中国の利害と抵触します。
そもそもあの東欧から中欧一帯は一帯一路の要衝ですから荒らされたくない筆頭の地域であるうえに、ロシアのトネツク・ルガンスクの分離独立方針などを認めれば台湾、ウィグル・チベット・香港の分離独立も認めねばなりません。
だから、ここで中国は思い切ってプーチンを切り捨て、共に対露制裁の陣営に加わる顔をしておけば、バイデンに貸しを作って今の対中制裁も緩和できるだろうと胡は見ます。
「バイデンはもともと「一つの中国」原則を尊重し、台湾独立を支持しないと明言している。プーチンを切る代わりに、台湾問題で米国に幾分かの譲歩を求めるという戦略も見出せるかもしれない。
「いかにロシア・ウクライナ戦争を利用して戦略的な調整を行い、米国の中国に対する敵視態度を改善するために全力を尽くすかが、中国が直面する筆頭の大きな問題なのだ」と胡偉は言う。
さらにうまくいけば、中国は「世界を核戦争から救った立役者」になるかもしれない、と胡偉は指摘する。「中国は世界で唯一この種の能力を持つことのできる国家であり、この優勢を発揮しなければならない。プーチンが中国の支持を失えば、おそらく戦争は終結するしかない。少なくともさらにエスカレートさせることはない。このことから、中国は国際的・普遍的な賞賛を勝ち得て、孤立局面から脱出する助けになるだけでなく、世界平和を維持した立役者となって、米国と西側との関係改善の機会を探すことも可能となるのだ」
(福島前掲)
「世界平和の立役者」ですって、なにを虫のいいことを(笑)。
習がプーチンの忠実な弟子なことは世界の外交筋では知らぬ者とていないことですし、五輪開幕式で五輪とパラリンピックの間にやってくれと懇願したのもバレているのですがね。
「親友」同士手を取り合って、仲良く地獄に落ちなさい。
« やっぱり虐殺者はFSBだった | トップページ | ロシアの「移動式アウシュビッツ」と、国連人権委員会からの追放 »
コメント
« やっぱり虐殺者はFSBだった | トップページ | ロシアの「移動式アウシュビッツ」と、国連人権委員会からの追放 »
ウクライナの方々には申し訳ないですが、NATOや米軍が参戦しない判断を示した事は正しかったと思います。(ただし、今後ロシアが大量破壊兵器を使えば話は別ですが。)
橋下のいう「(妥結なければ)NATOは参戦しろ」は、それこそ中共の思うツボ。
胡氏の「世界平和の立役者」論や、橋下ら日本にもある「中国仲裁論」など甘ちゃんもいいところで、そもそも習の後ろ盾を確信したからこそプーチンはウクライナ侵攻に踏み切れたというのが事実。
「侵攻直前に電子戦でアシストした」という信ぴょう性のある報道もあります。
今のウクライナ戦争中であっても米政府は正しく「中国が第一の脅威」としていて、台湾情勢とウクライナ戦争を不可分一体の流れと捉えています。
ロシアを国際的に孤立させる事で、中国をして曖昧戦略を取らざるを得ない窮地に追い込んでいるのが今です。それを解除したからと言って、主たるプレイヤーの位置に返り咲けると考える胡氏は甘すぎでしょう。習が兄貴分のプーチンを見捨てる事もあり得ません。
今のところのウクライナ情勢は中国の台湾侵攻を遠ざけていますが、プーチンは負けが混めば戦術核を使用するかも知れません。
事実、露軍は「戦争の早期終結のため核を用いる」までの容認論に核使用のハードルを下げて来ています。
そうなれば習の野望にどういう変化が起こるか?台湾から目が離せない状況は変わらないと思います。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年4月 8日 (金) 08時54分
キンペーが即座にプーチンを損切りできずにどっちつかずの態度を取ってしまった事で、今回の有事で最も利を得る可能性があった「不良だったと思ってたアイツが実はイイ奴だった作戦」を遂行する機会を逃したばかりか万が一ウイグル、チベットでの蛮行が明るみになった時どうなるかという見せしめを目の当たりにして中国のお偉さん方々が一枚岩でいられるかどうか怪しくなってきました。
最近の情勢分析を見るにウクライナがここまで守り切れた経緯はかなり細い可能性の連続を勝ち切った奇跡とも言えるもので、情報統制の自家中毒に侵された2人が負けるリスクを全く考慮していなかったのも無理もないのかもしれません。
事実、開戦直前にこの現状を予測してた人は一人もいません。
今後を考えるとロシアは新たに敷いた戦勝ラインである東部&クリミアの完全確保はなにがなんでも譲らないでしょうから停戦が長引き国力が疲弊して北朝鮮ルートまっしぐら。
中国もロシアとの適切な距離感と内陸部での蛮行をいかに今後も波風立たせずに隠ぺいし続けるかで必死になるでしょうからプーチンへの未練を断ち切れずに判断を誤り続けているキンペーの政治生命もここまでかもしれません。
この負け確定のゲーム展開をノーゲームにする唯一の方法が核使用なんですよねぇ…
本当にどうなることやら。
投稿: しゅりんちゅ | 2022年4月 8日 (金) 15時00分