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2022年5月26日 (木)

山路敬介氏寄稿 ウクライナ戦争の本質は「民主主義VS専制主義」その3

      001_20220524033001       

                               ウクライナ戦争の本質は「民主主義VS専制主義」その3
                              ~戦後を左右する世論  あやうい認識はプーチンを利するだけ
                                                                                           山路 敬介

承前

話をもとに戻します。
国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏の論考(「プーチンは習近平のポチである」日本人が知らない"中華秩序"に属するロシアの実態 中国という後ろ盾があるからウクライナに侵攻した | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)) によれば、プーチンは自ら中国の下に庇護される選択をしたのであり、そこから抜け出す意思も能力もないという事のようです。少なくともミアシャイマーの説く「三勢力鼎立状態」などすでになく、中華圏メンバーの様相を帯びて久しいのは間違いないのではないでしょうか。

ロシアは冷戦終結後、米国が主導する国際秩序を受け入れて共に国際ルールを確立する立場を望んだ時期があります。けれど、プーチン政権下で既存の秩序への挑戦者となり、中国とともに新たな秩序を模索する道を選択するしかなかったのです。これは経済のせいです。
にもかかわらず、ミアシャイマーの頭の中は今だに「ロシアを引き入れて中国を包囲すべし」とする地点に留まっています。しかし現実は進んでいて、中国が「ロシアを引き入れて米国を包囲」しようとしたのです。


ついでですが、よく言われる「代理戦争論」について。これも失当です。ウクライナはウクライナの国益を賭けて戦っているのであり、米国の代理人ではありません。米国や欧州・日本もそうですが、それぞれの国益に沿って判断し、ウクライナを支援しているのです。米国は開戦前からゼレンスキーにキーウからの避難、ポーランドへの亡命政権を勧めたところが、これを断っています。ゼレンスキーはNATOを呪い、ドイツを罵りさえしています。これを代理戦争だとした日には、血を流して戦っているウクライナに失礼でしょう。
このあたりの誤謬を篠田英朗氏が良くまとめています。
プーチンの「陰謀論」に踊らされる左派系言論人…ウクライナ「代理戦争」論の錯誤と罪悪(篠田 英朗) | マネー現代 | 講談社 (ismedia.jp)

なお、エマニュエル・トッドの文藝春秋の記事の方も、ほぼミアシャイマーの論考を踏襲したような案配です。中国のプロパガンダよろしく「米国に根本原因」があり、これは「代理戦争だ」とするならば、行き着く先はミヤシャイマー同様になる他ありません。
違いと言えば何時ものように「日本は早く核武装せよ!」と言っているくらいでしょうか。

トッドはシャルリエブド事件のさい、フランス中で起こったデモ行動を批判して総スカンを喰いました。この際のトッドの著書を私も読みましたが、どうも浮世離れというか、意図的に次元をずらした位置から説く学者さんらしい「高見からのお話」だった印象です。
フランスという「水」と、それに合わないイスラームという「油」。これをどうするかの有効策は示されていません。「合わないものは別々にするしかない」という飯山陽氏的リアリズムもそこにはありません。
そうしたフワフワとしたトッドの思考の特徴が出たように感じた記事でした。

たいそうな大家をけなして恐れ多い事ですが、ベルグソンは次のように述べています。
「一流の学者ほどと言って良い程だが、学者は自分の方法というものを固く信じているから、知らず知らずのうちに、その方法の中に入って、その方法のとりこになっているものだ。だから、いろいろな現象の具体性というものに目をつぶってしまう。」
ミアシャイマーはミアシャイマーの論理でのみ語っていて、その回答は個別具体的なケースに対応するものではありません。

2014年、ナショナルインタレスト紙にミヤシャイマーが書いた恐ろしい論文が載った事を憶えておられる方もあると思います。
まだ米中対立などなく、台湾についての米国のスタンスがハッキリしない中、「台湾にさよならを言おう」(say goodby taiwan)と題された記事は衝撃的でした。
ここで言う、いわゆる「台湾切り捨て論」はミアシャイマーのリアリズム理論によれば、それは全く正しいのです。しかし、台湾が中国に組み込まれた場合、次の目標は沖縄になるしかありません。決まって沖縄とアジアに睨みを効かす沖縄の米軍基地が狙われます。
ミアシャイマーの言説に従えば、アジア全域が中共の勢力圏になるしかありません。


■「戦争ハンターイ!」はいいが、肝心の「過程」がすっぽりぬけ落ちた遠藤誉氏の論考

 「ミアシャイマーやトッドのような大家と意見が合った」と言って小躍りする遠藤誉氏(ミアシャイマー「この戦争の最大の勝者は中国」と拙論「ウクライナ戦争は中国の強大化を招く」(遠藤誉) - 個人 - Yahoo!ニュース )ですが、この人の言っている事にはいつも違和感を感じます。同じ感覚は八幡和郎氏にも感じます。
「ウクライナ戦争は中国を利するだけ」とする遠藤氏ですが、いわゆる「ラスボス」が中国だとしても、本当にそうした事が言えるのか。

遠藤氏の論考の中には米議会における「習近平枢軸法」が下院で通った事は出てこないのは仕方ないでしょう。
しかし、習近平が米国の対ロシア制裁をいかに妨害・阻害するか、これを30日以内に、以降90日毎に評価する法案が近々上院でも通ります。
法案に関係する米行政府の中国への認識として、①ロシアウクライナ戦争を虚偽宣伝し、無数のウクライナ人を殺害した中国共産党は手助けしている。②もし中国共産党がロシアのウクライナ侵攻を実質的に支持していると判明した場合、速やかにかつ厳重に中国共産党にその責任を負わせるべき、となっています。
成立すれば、それでも習近平は堂々とロシアに喰い込み「漁夫の利」をむさぼる事が出来るでしょうか。

「習近平枢軸法」の狙いは幅広く、プーチン後のロシアの主導権から習近平の影響力を排除する事まで含まれていると見る向きが一般的です。
ウクライナ戦争に対する評価が中国内知識層で割れるなか、習の強力な願望をもってしても、現在ですらロシア支援に汲々とする中国が、米国や欧州の意に反して立場をハッキリさせる事が出来るとは思いません。
4/18中国の泰剛中米大使は「中・露は同盟関係ではない」と逃げを打ち、趙立堅報道官はロシアの戦勝記念日への評価に口を閉ざしています。中村逸郎氏は「習近平はプーチンを見限るだろう」と述べていますが、私は習派以外の中共首脳陣の考えは中露それぞれの「核の先制使用に関する取り決め」の差異が両者の間を大きく隔てる根本原因になると思っています。すいません。ここで言いたい事から話が逸れました。

遠藤氏の論考の中で(遂につかんだ「バイデンの動かぬ証拠」――2014年ウクライナ親露政権打倒の首謀者(遠藤誉) - 個人 – Yahoo!ニュース)というのがあります。
この記事は2014年~2015年当時、米政権が当時のヤヌコヴィッチ政権を亡命させ、親米ポロシェンコ大統領を据えた事実を述べたものです。
しかし、私には「え? それがどうしたの?」という感想しかわきませんでした。

私たちはマイダン革命において、オバマに近いジョージソロスなどが資金を提供・協力していた事を承知しています。それから後にも今のバイデン政権の面々が関わったのだと言いたいのが記事から伝わって来ますが、そのような事は当時から米保守派のニュースサイトで繁く言われていて、かなり「今さら感」があります。
なにより、そんな事はいまさら問題になる事ではありません。

                                                                                                        (続く)

 

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ウクライナの男性、妻と子の死をTwitterで知る「これは戦争犯罪」「何が起きているか知ってほしい」 | (huffingtonpost.jp)
                              ウクライナに平和と独立を

 

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コメント

完結まで大変興味深く拝読いたしました。
奥山氏は師であるコリングレイの戦略論を真ん中に、地政学、リアリズム、プロパガンダの観点からフレームを組み上げ、日本の安全保障戦略を構築しています。
ここにミックスする1ピースとして、中露の動向を映すミアシャイマーの単純なフレームは有効であり、切り取ったり単体で有難がると判断を誤りますよね。

日本の保守論者(敢えて学者とは今回書かない)の、情報選択の安易さや無理解は一体何に由来するのか?
山路さんは民族主義で語られておられます。私もそれに近いものを思い浮かべますが、細かく見るに、彼等は信条ともいうべき大和魂のメガネを通してしか外の世界を見ないせいで何事も判断がズレるのです。相手の認識とも世間とも。
属性故の価値観を完全に外すことは無論不可能ですが、意識するだけでかなり違います。ファクトの見落としも減るはずです。

国際政治chの過去動画で故.中山俊宏氏が
「研究者が自分の専門分野だけをやって答える時代ではなく、他の分野も知った上で組み合わせて、リミックスした意見を求められていると日々感じる」という風な発言をされていました。
何を信じているのか、ではなく、エビデンスと併せてプランやアイデアを出さないと、とも。
チャンネル桜や虎ノ門、文化人放送局等が盛り上げてきた時間を上書きするかのように、
リベラル寄りだがお花畑では決してない識者達が身を削って、大手メディア、動画、SNSで発信する姿を見て、それこそが与論だよねと頼もしく思います。

すみません、完結日にコメントしたつもりが3日目欄に(汗)。大論投稿いつもありがとうございます。

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