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2022年5月14日 (土)

英国は北欧二国に核の傘を提供する

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迫りくるロシアの脅威を前にして、フィンランドとスウエーデンがNATO加盟の方向で揃いました。
NATO側にも特に大きな反対がないようなら、早ければ6月中に正式加盟となります。
とはいえ、学級委員会体質が抜けないNATOはスッタモンダが定番ですので1年くらいかかるかもしれません。
このブランクを埋めようというのが、ボリス・ジョンソンの北欧2国に対する安全保障協定の合意です。
この素早さがポリス外交の真骨頂ですが、これはウクライナ侵攻を阻止できなかったということに対する反省から生まれているのでしょう。

「イギリスは11日、スウェーデン、フィンランドの両国と安全保障協定に合意した。いずれかの国が攻撃を受けた場合、支援を行うという内容。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は両国を訪れ、合意文書に署名した。両国をめぐっては、北大西洋条約機構(NATO)への加盟に関する議論が起きている。
協定には、イギリスが危機に置かれた際、フィンランドとスウェーデンが支援することも明記されている。
ただ、この協定は法的または自動的な安全保障に関するものではなく、要請があればイギリスが支援に向かうことを政治的に宣言するという位置づけだ
」(BBC5月12日)
英国、フィンランド・スウェーデンと安全保障強化で合意 - BBCニュース

要点を整理してみます。
ポイントの第1は、この北欧2国との安保協定が双務的なものだということです。
つまりいずれかの国が攻撃を受けた場合、相互に支援を行うという内容で、これは日米安保が安保法制で半歩前進したとはいえ片務的であることと対照的です。
わが国はせいぜいが、米艦艇を海自が守る程度のことしかできないのに対して、北欧2国は相互安全保障協定(mutual security agreements)であって、北欧2国にも英国防衛の義務を持たせています。
ちなみに、今回のagreementsは「協定」とも「合意」とも和訳します。合意のほうが柔らかい印象ですが、原文では同じです。

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英首相、スウェーデンとの安保合意文書に署名 - イザ! (iza.ne.jp)

第2に、これはNATO第5条のような自動参戦条項をもたず、要請に基づいての相互防衛義務です。

「ただ、この協定は法的または自動的な安全保障に関するものではなく、要請があればイギリスが支援に向かうことを政治的に宣言するという位置づけだ。
ジョンソン氏とスウェーデンのマグダレナ・アンデション首相は、ロシアがウクライナを侵攻している現状において、協力は「いっそう重要」だと述べた。
ジョンソン氏は、「もしスウェーデンが攻撃され、イギリスに支援を求めたら、私たちはそれを提供するだろう」とした。
ロシアがスウェーデンを攻撃した場合、イギリスはどう対応するのか明確にするようBBCが求めると、ジョンソン氏は、今回の協定によって「相手国からの要請があれば支援に向かう」ことになると述べた」
(BBC前掲)

「支援」の中身については英国は明確にしていませんが、それは当然でしょう。
手の内を見せる必要はないし、それはロシアの出方次第だからです。
航空機や陸上の随時派遣から核による反撃までいくとおりもあるからです。

明示されていませんが、とうぜん英国が提供する「安全保障」には核兵器も含まれているはずです。
英国は、SLBM(水中発射弾道ミサイル)を搭載した複数の潜水艦の運用を中心とした核戦力を有しています。

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イギリス最新の原子力潜水艦「アンソン」進水 就役は2022年以降の予定 | 乗りものニュース (trafficnews.jp)

この英海軍戦略原潜は、自国に接した北海、バルト海、フィンランド近辺までパトロールし、常に英国の核の傘にこの北欧2国を置くことになるはずです。
北欧二国にとっては、自国の危機に際して、協定に基づいて英国の核の傘による核抑止を用いることができることになります。
これはNPT条約で合法核保有国の傘を延長したもので、条約非核国のニュークリア・シェアリング政策の亜種かもしれません。

一方、英国にとっては、自国の核の傘を、ヨーロッパ全域の核の傘にまで拡げる最初の一歩となるわけです。
これはフランスからオーストラリアの原潜製造を横取りよろしく持っていった、アングロサクソン同盟の世界戦略と関わりがあるかもしれません。

第3に、この安保協定の位置づけが、ロシア、中国の自由主義陣営への脅威に対抗するためのものであることです。
いうまでもなく、北欧2国のこの行動は、「プーチンの戦争」に触発されたものです。
このウクライナ侵略が明示してしまったのは、戦争は現代でも突如として、かつ理不尽に始まりうる、そしてそれは核の脅迫を伴うという現実でした。
そして米欧は、プーチンの核の脅迫に対してなす術がなかったわけです。

いくらなんでも21世紀の世の中に19世紀のロシア帝国のようなマネはすまい、という常識が見事に覆ったのが今回の事態でした。
ところがヨーロッパ主要国は、ロシアを共通の脅威だとする認識すら薄れていました。
ルトワックが辛辣に評するように「NATOは麻薬」、あるいは安眠できるための睡眠薬と化していたからです。
「ヨーパの盟主」を気取るドイツなど、ロシアに対する警戒感を完全に忘れ、軍備を削り続け、気がつけば陸軍の動く戦車がヒイフーミー、ロシアに対するエネルギー依存度がベッタリ5割以上というていたらくでした。

それをよく現したのが、2022年1月21日の、ドイツ海軍総監のシェーンバッハが、シンクタンクの会合で言ったこの台詞です。
彼は、当時ウクライナ国境に集結する19万のロシア軍の脅威を知りながら、こう言ってのけたのです。

「プーチン氏が本当に求めているのは敬意だ。敬意を払うのは低コスト、いやノーコストだ。彼が本当に要求している、おそらくそれに値する敬意を与えるのは簡単なことだ」と発言した。
クリミア半島は消滅し、二度と戻ってくることはない、これは事実だ」

これがメルケル・ドイツの本音です。
武装解除をするだけでは済まずに、むしろロシアの意向に喜んで忖度していたわけです。

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プーチン大統領とメルケル首相、露国境を横断したウクライナ海軍の艦艇3隻を巡る事案を論議 - 2018年11月27日, Sputnik 日本 (sputniknews.com)

もう一方のNATOの盟主フランスは、会って話せば説得できるとばかりに毎日プーチンに電話を入れたそうですが、プーチンを止めることができなかったばかりか、自由主義陣営の分断に手を貸しただけに終わりました。
マクロンの大統領選のにおける対抗馬のマリー・ルペンに至っては、根からのプーチン好きなうえに、NATO脱退を唱えるのですから外交感覚を疑います。
今回の侵略を見ても日本のヒダリの方々は、「外交力で解決しろ」などと言っていますが、どこまで寝ぼけているのか。

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マクロンがプーチンと対面で会談 ウクライナ問題「向こう数日間が正念場」|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

それはさておき、これら独仏の対応に共通するのは、米国とその盟友英国に対する根深い反感です。
この反米意識は、ファーレフトからファーライトまで共通しているのですから、困ったものです。
しかもトランプはそれを増幅させてしまいました。

一方、米英とファイブアイズの動きは敏速でした。

「イギリスは急遽、対戦車兵器をウクライナに供与し、訓練要員として約100人を派遣。カナダも小規模な特殊部隊をキエフに配備した。両国ともアングロサクソン5カ国のスパイ同盟「ファイブアイズ」のメンバーだ。それに対してドイツは自らの武器供与を拒否した上、バルト三国のエストニアがドイツ製の武器をウクライナに供与することまで許さなかった。
そればかりか対戦車兵器を運ぶイギリスの軍用機はドイツ領空を飛べず、迂回ルートを取らざるを得なかったのだ。
ドイツ政府はロシアを国際金融決済システム(SWIFT)から切り離す金融制裁は欧州にも破壊的な影響を与えるため考えられないと独メディアに説明し、アメリカを激怒させた」
(ニューズウィーク1月23日)
ウクライナ危機で分断される欧州 米と連携強める英 宥和政策の独 独自外交唱える仏|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

米英は、昨年段階から緻密な情報戦をロシアに対して仕掛けていました。
宮家邦彦氏のまとめによれば、このような動きでした。
米国は2014年のクリミア侵攻以来、次はウクライナ全土に対して侵攻するだろうと予測していたようです。
そして自由主義陣営に対して、ロシア軍の動向を膨大な情報から抽出して警報を鳴らし続けていました。

侵攻10か月前の2021年4月には、早くも国防総省報道官はウクライナ国境付近の露軍の規模が拡大と指摘し、翌月5月にはブリンケン国務長官が「ロシアの脅威に懸念」を表明しています。
10月には、国務・国防の両長官がウクライナを直接訪問し、米国の支援を約束しました。
どこよりも早い対応で、11月には国防総省がウクライナ国境付近の露軍の「異常な活動」に再三警告を発し、この時点でウクライナへの軍事顧問派遣や武器など装備品の新たな供与を開始し始めています。
もちろんこの情報構築は、英国情報機関も協力しており、おそらくこの去年11月の時点で、米国と英国はロシアのウクライナ侵攻は時間の問題だと見ていたはずです。

そして軍事援助だけではなく12月にはバイデンが、ロシアが侵攻すれば強力な経済的措置で対応する、と警告しました。
これは後に、「金融の核爆弾」と呼ばれるようなSWIFT規制などで現実のものとなります。

今年に入って1月には、国防総省がロシアがウクライナ侵攻の口実を作る偽旗作戦をすると警告しました。
同月には、大統領報道官も「いつ攻撃が開始されてもおかしくない」とまで言い切っています。
この侵攻間近という情報は、当該国のウクライナはもとよりNATO諸国、日本、中国にも伝えられたといわれています。
驚いた中国は、訪中したプーチンに、侵攻は北京冬季五輪後とパラリンピックの間に済ませてくれと懇願したのかもしれません。
プーチンはショイグのいうとおり、4日間でキエフを落としてみせると豪語したのでしょう。

今年2月時点で、11日にはウクライナ滞在米国人に48時間以内の退避を求め、そして18日にはバイデン自身が、「プーチンは侵攻を決断したと確信している」とまで断言しました。
開戦日まで明確にするというのは異例でしたが、1週間遅れで見事に的中します。
開戦後も、ロシア軍の部隊編成、指揮官名、装備、戦闘能力、補給状況、士気に至るまで詳細な動向を連日発信し続けています。
あらためてアングロサクソンの情報能力の高さに驚嘆します。
昨年、空母クイーンエリザベスが来日し、第2次日英同盟が話題に登りましたが、思えば彼らの有する世界最高水準の情報能力こそが、同盟で得られる最大の贈り物なのかもしれません。

プーチンの誤算は、侵攻のみならず余りに安易に核の脅迫をしてしまったことです。
確かに自由主義陣営はたたらを踏みました。
飛行禁止区域の設定は、当のジョンソンすら拒んだのです。

核を使うぞ、という脅迫はそれほど強烈だったのです。
しかしこの核の脅迫がバラバラだったNATOを団結させてしまったのですから、皮肉なものです。

ロシアの核による脅迫をはねのけるためには、集団安保体制を作り、その中に対抗核戦力を位置づけるというNATOの防衛構想の原点に戻るしかないわけです。
それすらもNATO学級委員会ではなかなか定まらないのだから、英国が個別にハブとなってスポークとなる国々とハブ&スポーク的安保協定を作って「核の傘」を差し伸べていくということです。
当然その主導権は独仏ではなく、英国が握りますが、なにか文句があるんですか、という宣言です。

さっそくロシアが猛反発しているようですが、これにどのように対抗するかが英国の差し伸べた安全保障協定の最初の試金石になります。

 

※今日はほぼ完成した瞬間、PCがフリーズしてパー。なんせうちのPCはWindows7ですぜ(泣き笑い)。
前に故障してPC屋にもちこんだら、若い店員にへぇー、7っすかって言われたというもんです。
買い換えたいんですが、親指キイボードはもう生産停止しているんで、どうにもなりません。
このジサマPCは起きてくれない、年中死んだふり。いきなり怒りだす。
2時間かかった原稿を消されるとショックですわな。(号泣)
気を取り直て全面書き直したら、今度は脱字、誤字のテンコ盛りとなりました。
訂正しまくっています。すいません。

 

 

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ウクライナに平和と独立を

 

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コメント

誰であろうと、力を持つのと、それを正しく扱うのは常にセット。
誰であろうと、知識と自由を享受するのと、理性と道徳と共にそれらを扱うのは常にセット。
そうだったら理想的なのに、現実は理想通りにはならない。
それどころか、立場によって違う「理」の主張や行き過ぎる自由を制御する国際法にすら従わず嘘も吐く、侵略も残虐行為も平気な者がいる。
「あんた気に入らないから土地財産も生活も身分保証も生命も奪ってやる」、それを実行する者に反撃以外の外交で解決しろという人たちには、とても優しい言い方で、あなたに出来ないことを他の誰がやれるの?と申し上げましょう。

安全のために「中立」でいることも、何処かの国や地域が他の国や地域を緩衝地帯にすることも、意味のないことになっていく。
力を示したり使ったりしなければならないなら、それをどう扱えるか。
決定的な惨事を避けるためのバック・ドアも持たない!侵攻あるのみ!なロシアのオウン・ゴールです。
鶴岡路人氏が「言い続けて陳腐化の懸念」と仰っていますが、そんなことはない、ロシアのオウン・ゴールです。

ロシアの侵略行為によって起きた象徴的かつ歴史的な転機だというのにメディアの扱いは小さく感じます

ロシアの動機が口先で言った通りのやれ中立化だNATOの拡大がなんだということなら、こうなる前に交渉する為の妥協が生まれてもいいはずなんですが、全くそんな動きもなかったんでアンタマジで侵略そのものが目的なんだねって思いです、今更ですけど

あとはバルト3国にも同様の核の傘が提供されることを期待したいところです

フィンランド、スウェーデンのNATO加入の動きにロシアが激怒してるようですけど、なるほどイギリスのこの動きは核の傘に入ることを意味してるんですね。イギリスのインテリジェンスは冷静で強かですね。ええかっこしいのEUの盟主気取りの国と違ってやるときはやりますね。イギリス、フランス、ドイツの違いは歴史的経緯の違いがあるんでしょうね。

フィンランド、スウェーデンのNATO加盟にトルコが難色を示しているようですけど、スムーズにいくのでしょうか。

2022.5.15 相模吾です。 英国の決断の速さは何ですかね。
 たかだか67百万人、GDP世界4位の国が、米国よりも早く、独仏よりも強烈にフィンランド、スウェーデンへの支援声明とは。度胸が据わっていると思います。クラッシャーさんの仰るとおり歴史の重みですかね。ウクライナ国民の悲惨を思うと、早くぽプーチンさんが引いてくれるのを心待ちにしています。
 今後、ロシアと中国に挟まれたカザフスタン、ウズベキスタンなどのロシア影響圏のイスラム国がどのような反応を示していくのでしょうか、チェチェンのように2度もロシアに攻めこまれた国を見て、そしてウクライナを見て、ロシア正教に反発するイスラームとしては複雑なのではないかと思います。
 我が国も西のはずれの島国の度胸の据わった対応を見習いたいものです。

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