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2022年5月12日 (木)

もう少し国際法を勉強しろ、プーチン

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もう少し国際法で、このウウクライナ戦争はどのように判断されるか、考えていきましょう。
まず昨日、「侵略」の定義にウクライナ戦争が完全に当てはまることを既にみました。
「1974年12月14日に国際連合総会の第29回総会で採択された侵略の定義に関する決議 」の第1条から第3条において、、「他の国家の主権、領土、政治的独立」を侵し、「武力を最初使用」し「軍事的占領、武力による併合」の場合を「侵略行為」と定義づけています。

他国への武力行使に対して、現在の国際法は極めて非寛容です。
「現在の国際法」と言ったのは、国際法典がどこかにあるのではなく、その時代を背景に作られた合意、協定、条約類を一括して「国際法」と呼んでいるからです。
戦争諸法規のうちハーグ陸戦条約とかジュネーブ条約は健在ですが、大きく違うのは「侵略」の定義です。

第2次大戦前二あった宣戦布告などという要件は取り払われ、スッキリと74年国連決議一本において戦争行為は原則禁止されています。
つまり「先に武力行使したほうが違法」なのです。
武力行使とは、ある国が別の国から組織的、かつ計画的な軍事攻撃を受けた場合を指します。
今回のウクライナ戦争は、ロシアがウクライナに対して、正規軍を使って国境線を超えて計画的な攻撃を加えたのですから、国際法上弁解の余地なき「侵略」行為です。
これだけで充分にアウトです。

いくらNATOが侵略しそうだったから自衛の戦いをしたのだと言っても、現実にロシアに対する武力行使はいっさい行われていなかったし、その意図はありませんでした。
これはNATOや米国が、ウクライナ戦争に対して飛行禁止空域の設定も拒むなど一切の武力介入を控えていることでも明らかです。
また、ウクライナが大量破壊兵器を作って戦争を準備していたともプーチンは言っていますが、その証拠はまったくありません。
つまり、一方的な危惧に基づく妄想で、国境を超えて武力行使してしまったことになります。
ウクライナがNATOに加盟する意志を持っていたからといって、それは武力行使する理由にはなりませんし、NATOには加盟させる意志はありませんでした。

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もう少し深堀りしてみます。
プーチンは「戦勝記念日」の演説で、盛んにドネツク、ドネツク、ドンツクドンンドンと最大の戦争理由をドネツク地方の「解放」にあげていました。
実際にも、プーチンは参謀総長に対してドネツク州境まで勝ち取れ、と命じたとかいう噂も聞こえてきます。
このウクライナ戦争は、侵攻直前にドネツク州の半分ほどの「ドネツク人民共和国」(自称)とルハンスク州の一部の「「ルハンスク人民共和国」(自称)を国家承認したことから始まっています。

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BBC

このようなステップを踏んでいます。

第1段階・ドネツクとルハンスクの親露派を集めて武器支援を行い、内戦状態を作り出す。
第2段階・内戦が長期化する家庭で「ド人共」と「ル人共」という傀儡国家を作らせ「独立」を宣言させる。
第3段階・ロシアはこの二つの偽装国家に国家承認を与える。
第4段階・ふたつの傀儡国家に救援要請を出させて、集団的自衛権の行使を宣言する。
第5段階・要請に応えた形でウクライナ領内に侵攻する。

では、検証してみましょう。
最大のポイントは、この「ド人共」と「ル人共」というふたつの「新国家」が、国家としての要件を持っているかどうかです。
国家の成立要件は4ツあります。
国家の資格要件 - Wikipedia

①永続的な国民を有しているか。
②明確な国境線を有しているか。
③統治する政府が存在しているか。
④他国との外交関係を結ぶ能力があるか。

この二つの「新国家」の場合はどうでしょうか。
①の「永続的国民」らしき者はいるようですが、それが外部から強要されたものであるという証拠がありません。
脅迫による「国民」強要は無効ですし、ウクライナ政府はこの「国民」をウクライナ国民として処遇していますので、人為的二重国籍状態二なってしまっています。
ウクライナ政府がこの「国民」の国籍を剥奪するというなら別ですが、そうでない以上元々の国籍が優先されます。、
いわばISの自称「 国家」と同等の扱いです。

②「明確な国境線」らしきものは、ミンスク合意の結果ある暫定的なもので、国境線ではなく停戦ラインにすぎません。
プーチンはドネツク州ルハンスク州の州境まで領土を拡げろと命令していることからも判るように、今ある「国境線」はどちらも認めていないものにすぎません。

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「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」とは何か?ロシアが独立承認して軍派遣へ | ハフポスト WORLD (huffingtonpost.jp)

③統治している「政府」は、一方的「独立」によって生まれたものですが、ロシアという外部勢力の政治的軍事的支援があったことは明白です。
このような「独立」が違法であり無効であることはいうまでもないことです。

④このような「政府」が支配する「国家」を承認するのは、世界でもロシア一国だけです。
そもそもロシアが作った傀儡国家である以上、国際社会はこれを「国家」として承認しないでしょう。

したがって、そもそもウクライナ東部2州には、「新国家」など存在していないのです。
このように力づくで新国家として承知することを「尚早の承認」と呼びます。

「尚早の承認」を押えておきます。

「国家の合併・併合,分裂・分離独立などによる新たな国家が既存国家によって国際法の主体として認められること。 そのための条件としては,まず国家としての実質(領土,国民,政府)が備わっていること,国際法を守る意思と能力を有していることなどがある。 それが備わっていない段階で承認を与えるのは〈尚早の承認〉として不法とされる」
(コトバンク)
尚早の承認とは - コトバンク (kotobank.jp)

したがって、本来当該国しか持たない国家主権に力づくで干渉するので、内政干渉です。
内政干渉は、明確な国際法違反であり、このよう新国家自体が違法であり、その「政府」が出した「要請」もまた違法無効です。
存在しているのはロシアの息がかかった「新国家」のただの武装グループだけですから、ロシアに対して集団的自衛権の要請をする主体そのものが欠落しているのです。

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一方ウクライナには完全な自衛権発動要件がそろっています。

「自衛権とは、急迫不正の侵害を排除するために、武力をもって必要な行為を行う国際法上の権利[1]であり、自己保存の本能を基礎に置く合理的な権利」
自衛権 - Wikipedia

では、NATOと米国のウクライナへの軍事物資支援はどのように考えたらよいのでしょうか。
中立法違反ではないのでしょうか。
いえ、いまは大戦時には存在した中立法自体が存在しないのです。

中立法は、大戦までの武力行使(戦争)自体が違法ではなかった時代背景においてだけ存在していた概念でした。
戦闘を交えている国家を「交戦国」とし、それ以外を「中立国」に分けて考えることで中立法は成立していました。
現代では、「国境の実力による改変」を企んで実行したこと自体が国際法違反ですから、中立国概念自体も存在しません。

侵略自体が違法である以上、あるのは「他国に侵略している違法国家」と、「自衛権に基づいて防衛している国家」の二つの区別しかなく、違法な侵略行為を止めるために合法的自衛権を行使している国を支援するのは、国際法上なんの問題もありません。

国際法の最大の欠陥は、これを執行する主体がないことです。
執行主体と罰則がない法律は実は無意味です。
理念的には国連がその役割を果たすべきでしたが、グテーレス事務総長が嘆くように国連は拒否権つき常任理事国に支配されて身動きがとれません。
ですから、常任理事国が違法行為の当事国だった場合、国際法を行使する者がいなくなってしまいます。
それ故、戦後においては、「違法行為を働く国」と戦うために、自衛権を行使する国を武器支援することが認められているのです。

このように一方的侵略戦争を始めて、数千人のウクライナ国民を殺戮し続けているロシアは、いまや言い逃れができない「絶対悪」に等しい存在なのです。

 

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ウクライナに平和と独立を

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コメント

すごくスッキリ理解ができました。そしてふと思ったのですが、

アメリカのイラク侵攻はお咎めなしだったのは、結局何故なんでしたっけ。国境変更ではなく核兵器の確認が目的だったから?

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b204067.htm
日本政府のイラク侵攻に関する総括答弁がありました。何条に基づき云々とぱっと読みはしづらいですが、これが日本の公式の立場ですね。
安全保障関係は平明な言葉に直すとニュアンスの読み取りに幅が出てしまうので、なかなか難しいです。
こちらでの記事も解釈の噛み砕きに毎回気をつけられていて、勉強になります。いつもありがとうございます。

余談ですがその風刺画の鉤十字、見事に左万字ですねえ。あちらの人々は左万字と右万字の区別を付けないで一緒くたに鉤十字=ナチなんでしょうね。

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