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2022年5月11日 (水)

湿ったプーチン「戦勝」演説

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プーチンの「戦勝記念日」演説は、たいそう地味なものでした。
世界は、開戦宣言でもやらかすかと、逆説的に楽しみにしていたのですが、なし。
下の写真をみてやって下さいよ。覇気がないね顔。とうてい他国を蹂躙している独裁者の顔じゃありませんね。
他人ごとのような顔。戦争どころか、外界ぜんぶに無関心な顔つきです。

思わず、肝心のあんたがこんなつまらなそうな顔しちゃダメでしょうが、と説教を垂れたくなります。
顔は艶を失い、垂れ下がった瞼、焦点が合わない眼、口元は締まらない。
やはりガンの噂は本当だったみたいです。
それとも自分が裸の王様なことに、ハタと気がついてしまった、実は負けているとわかっちゃったとかね。

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https://www.bbc.com/japanese/61375859 

かんじんの演説は言い訳に終始しました。

「プーチン氏は、「キエフでは政府関係者が核兵器入手の可能性について語り、NATOは私たちの国に近い土地に関して探り始めた。そうした行為は、私たちの国と国境にとって、明白な脅威となった。すべてのことが私たちに対して、戦う必要があると物語っていた」と述べた(編注:ウクライナの首都キーウをロシア語ではキエフと発音する)。
また、ウクライナでの「特別軍事作戦」について、必要かつ「時宜にかなった」対応だったと説明。独立した頑強な主権国家による「正しい決断」だったとした。ロシアは今回の軍事侵攻を「特別軍事作戦」と呼んでいる。この戦勝記念日を機に正式に戦争を宣言し、国家総動員を発令するのではないかとの観測もあったが、そのような変化を示すものはなかったと、アダムズ外交担当編集委員は指摘する」
(BBC5月9日) 

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ダース プーチン

演説内容は、例によって嘘とノスタルジーと妄想の入り交じった正当防衛論です。
さぞ言っているほうも、聞かされたロシア国民も虚しかったこととお察しします。
戦争中の指導者ならば、スターリンよろしく立てロシア人民よ、祖国のために戦場へ赴け、くらい言いたかったでしょうにね。

演説冒頭から、「ロシアは侵略者と戦っています。それが唯一の正しい決断でした。主権国家である独立した国家の決断でした」と来ました。
まさに白を黒という奴で、脳みそがマトモに働いている人間には言えない台詞です。
「独立した主権国家」を一方的に侵略したのが、自分たちロシアだということは、認識の大前提です。
かつての独ソ戦はそうでしたが、ただ今現在が誰が誰の独立と主権を犯しているのか、どこの国の軍隊がどこの国の土地で、誰と戦っているのか、それすらわからないほど精神が狂ってしまったのでしょうか。

「国境の実力による改変」が侵略だというのは国際法のイロハです。
いい機会ですから、当該部分を抜粋しておきます。

●1974年12月14日に国際連合総会の第29回総会で採択された侵略の定義に関する決議
第1条
(侵略の定義)
侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する、又は国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使であ って、この定義に述べられているものをいう。
第2条
(武力の最初の使用)
国家による国際連合憲章に違反する武力の最初の使用は、侵略行為の一応の証拠を構成する。ただし、安全保障理事会は、国際連合憲章に従い、侵略行為が行われたとの決定が他の関連状況(当該行為又はその結果が十分な重大性を有するものではないという事実を含む。)に照らして正当に評価されないとの結論を下すことができる。
第3条
(侵略行為)
次に掲げる行為は、いずれも宣戦布告の有無に関わりなく、二条の規定に従うことを条件として、侵略行為とされる。
(a) 一国の軍隊による他国の領域に対する侵入若しくは、攻撃、一時的なものであってもかかる侵入若しくは攻撃の結果もたらせられる軍事占領、又は武力の行使による他国の全部若しくは一部の併合
(b) 一国の軍隊による他国の領域に対する砲爆撃、又は国に一国による他国の領域に対する兵器の使用
(以下略)
侵略の定義に関する決議 - Wikipedia

これを提案したのは当時のソ連、つまりロシアの前身国家です。悪い冗談ですか。
一読してお分かりのように、「他の国家の主権、領土、政治的独立」を侵し、「武力を最初使用」し「軍事的占領、武力による併合」をしているのは万人の眼であきらかのように、ロシア自身です。
言い訳は効きません。

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Ruben L. Oppenheimer

ロシアは、2014年から始まった侵略戦争を完成させるべく、今回のウクライナ侵略に踏み切ったのです。
安倍氏がいう、「ウクライナが中立化をすれば侵攻はなかった」などということもありません。
NATOに加盟しようとしまいと、できないならなおさら、プーチンはウクライナを獲りに来たはずです。

ただそうは国際社会の手前言えないから、こじつけた理由がNATO東進脅威論と、ウクライナ=ロシア論です。
キエフは大ロシアの起源の土地であるぞ、祖先は一緒であるぞ、ありがたく思え、お前らウクライナ人は劣った弟のようなものであるぞ、というアレです。
ここから現実に存在するウクライナは幻想だ、人工的に作られた疑似国家にすぎないという妄想が始まります。
まぁ、これなら確かに侵略にはならないでしょうがね、プーチンの脳内だけでは。
気の毒にも世界でこれを正しいと思う人間が、親露派しかいないということだけですが。

そして「我々はドンバスのために、ロシアの安全のために戦っている。この世にナチスがいなくなるために戦っている」のだそうです。
手垢がついたウクライナ=ネオナチ論です。

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Ruben L. Oppenheimer

これについては先日ふれたからパスしますが、百歩譲ってそうだとしても、ネオナチが支配しているのはドンバス地域だけのはずです。

では、どうして全土を軍事攻撃しているのでしょうか。
ドンバス、ドンバスと盛んにこの地域の安全を戦争の大義にしたのですから、ならば百歩譲ってドンバス地域だけで戦っておればよろしい。
全土に戦火を拡げておいてなにを言っているのでしょうか。
ドンバス大事なら、そもそもベラルーシから軍を南下させて首都キーウを襲う必要もなかったし、メリウポリを襲って大量に市民を殺し、焼け野原にする必要もありませんでした。
ナチスから人民の「解放」なら、ブチャで大量虐殺を行う必要もなければ、避難民がいることがかわかっている学校や劇場を空爆する必要など、どこにもなかったはずです。

そしてとうとう「キーウでは核兵器の取得に関する話が進んでいた」なんて、まだ同じデマを言っています。
これはチョルノービリ(チェリノブイリ)を不必要に占拠して核兵器製造の有無を徹底調査したのでしょうから、どうです証拠がありましたか。
あったらとっくに鬼の首でも獲ったように大喜びしていますよね。
ウクライナが大量破壊兵器を作っているなんて、プーチンの幻だったのです。

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ウクライナで戦闘激化 ロシア軍、チェルノブイリ占拠: 日本経済新聞 (nikkei.com)

チョルノービリのホットスポットである「赤い森」に兵隊を送り込み、そこで塹壕まで掘らせて急性被爆者まで出しているのですから、バカですか。
百歩譲ってウクライナが核武装しようとしても、西側がそれを許しませんよ。
ウクライナが旧ソ連の核の一部を保有していたのに、それを取り上げたのは他ならぬ西側ですから。

プーチンはある意味でわかっているのです。
ウクライナに核を持たせたら、本気で「独立」するにちがいない、と。
ウォールストリートジャーナルは、昨日付けの記事に寄稿としてこんな記事を掲載しています。

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「存在しなかった安全」ブダペスト覚書署名から24年 (ukrinform.jp)

※『【寄稿】ウクライナの教訓 核兵器を手放すな
ウクライナは1994年のブダペスト覚書に従って核兵器を放棄したが、それは間違いだったようだ』
ウォールストリートジャーナル2022年5月10日

「ロシアの侵攻に対するウクライナ国民の予想外に強力な抵抗によって、1994年のブダペスト覚書に注目が集まっている。ウクライナは同覚書に従って、国内にあった核兵器を放棄した。ロシアと西側諸国はこの譲歩の見返りとして、かつて旧ソ連の一部だったウクライナの主権と領土保全を保障すると約束した。
その後、2014年にロシアはクリミア半島を併合した。クリミアは間違いなくウクライナの領土だった。当然ながらウクライナ国民は、20年前に核による抑止力を放棄したことで攻撃を受けやすくなったのではないかとの疑念を抱いた。
ロシアがウクライナ全土を支配下に置こうとしている今、ウクライナ国民は同じ疑念を抱いている。ロシアの行動を注視している悪意ある国々を含め、多くの諸国が自前の核兵器を求めることは避けられないだろう。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、こうした核兵器を持つことが他国への攻撃の許可証になること、核兵器を持たない平和的な国が侵略者の餌食になることを示した」
(WSJ 5月10日)

ブタペスト合意について、ウクライナフォーラムはこのように書いています。

「・ブダペスト覚書は、ウクライナ国内法「1968年7月1日付核兵器不拡散条約へのウクライナの加盟」が採択されたことに関連して、署名されたものである。この法律には、「本法律は、核兵器保有国からウクライナに対し、関連の国際法的文書への署名を通じて形成される、安全の保証が与えられた後に発効する」と書かれている。
・このようにして、ブダペスト覚書署名国は、「ウクライナの独立、主権、現存国境を尊重する」こと、「ウクライナに対して、今後一切の武器を使用しない」こと、「ウクライナの政策に影響を及ぼすことを目的とした経済的圧力を控える」ことが義務づけられたのである。
・同覚書にのっとり、当時世界第3の核兵器保有国であったウクライナは、自発的に核兵器能力を放棄し、非核国家となった。ソ連邦崩壊時、ウクライナ領内には、大陸間弾道ミサイル、戦術核兵器、核兵器を搭載可能な戦略爆撃機、戦略核兵器があった。ウクライナが独立した直後から、アメリカとロシアは、当時のウクライナ政権幹部に対し、できるだけ早く核兵器を放棄するよう説得し始めていた」
(ウクライナフォーラム『存在しなかった安全 ブタペスト合意から24年』2018年12月6日)

実際にこのウクライナに核を持たせるべきか否かで、西側にも議論がありました。
たとえば、最近ロシア擁護論ともとれることを言って論壇をにぎわせているジョン・ミアシャイマーは、ウクライナの非核化交渉の真っ只中の1993年に、「ウクライナは核保有国になるべきだ。核保有がスムーズに達成できるよう手助けするのが米国の利益にかなっている」と論じていました。

「ミアシャイマーの議論は、核を持った強いウクライナが、NATOに加盟せず、そのうえでロシアと欧州の緩衝地帯となってくれるであろうという、米国視点からの冷徹な戦略的利得の計算に基づくものであった。
言ってみれば、今のロシアのウクライナ侵略を正当化する論理(緩衝地帯であるはずのウクライナがNATO加入を検討しているから攻撃を仕掛ける)の裏返しである」
(秋山信将3月1日『「ウクライナは核を放棄したからロシアに侵攻された」という議論が見逃していること』)
「ウクライナは核を放棄したからロシアに侵攻された」という議論が見逃していること(秋山 信将) | 現代ビジネス | 講談社

秋山氏は核保有を維持していたら、かえって不安定になったろう、といいますが、もっとも政治が不安定で崩壊国家化していたのは親露派が政権を握っていた独立初期のころです。
彼らがロシアにそそのかされて非核化を強引に進めたのです。
ウクライナがNATOに加盟することで安定した国際的地位を得て、核を集団安保体制下で管理する仕組みに参加していれば、時間をかけて核軍縮に加わるということも可能だったはずです。
そうすれば2014年のクリミア簒奪も、2022年の全土侵攻もなかったでしょう。
NATOと米国は約束を守らず、核だけ取り上げてNATO加盟は先伸ばしにし続け、そしてとうとうこのウクライナ侵略を招いたのです。
西側には、ブタペスト合意を成立させた当事国として、道義的にも法的にもウクライナを保護する義務があります。

いずれにせよ、ウクライナには核兵器がないのは明白です。
核戦争をしたいのは自分のほうです。
そして今や、それも危険な火遊びだと気がつき始めているようです。
だから核戦争の時に大統領らが指揮をとる特別機「イリューシン80」を飛行させなかったのです。青空が見えていたのにね(笑)。
今、こんな頃こんな危ない機体を飛ばすと、西側を刺激しすぎるからでしょうがね。

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1機だけだと目立つので、空軍全部の飛行を中止させたのかもしれません。
正気に戻ったら、急に弱気になりましたか、結構なことです。

開戦宣言うんぬんも幻だったようです。
それはそうです。仮に百万のロシアの青年を徴兵したとしても、兵隊にするまでに最低で2年、モノになるまでに部隊で2年かかるのです。
自衛隊ですら、初め2年間の教育隊の頃はアルバイトみたいなものと言われています。
予備役や新兵を好きなだけ召集することが出来ても、その多くは怒って国外逃亡するか、今ロシアで作られつつある反独裁のためのレジスタンス運動に参加してしまうかもしれません。
第一、そんな使えない兵隊を大量に作られても困るのは現地部隊です。

戦争だけは続けたいようですから、具体的な継続した戦争計画を立て、それに沿って手順を考えることです。
さもないと、長引いたウクライナ戦争をロシアは戦うことができません。
それまでに、ウクライナ軍によって彼らの領土から叩き出されないといいのですがね。

 

 

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ウクライナに平和と独立を

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コメント

ロシア在住の徳山あすか氏の考察では、これ以上酷くなるような発表がなかった事にロシア国民は少しホッとしたようだ、との事(言葉使い違っていたらすみませんラジオを聞いた記憶なので)。
戦死者の遺体が帰ってき始め、国内を落ち着かせる事に重きを置いたイベントに私も見えました。また、当日はくるくると天気が急転する、晴れ間の向こうにモクモクあった積乱雲が支配する天候だったようです。
おじけづいた気持ちを隠す良い言い訳になったかかどうかは分かりませんが。
プーチンの顔色や覇気も、あの純喫茶トーク動画ほどの衝撃は無く、個人的にはロシア不利な情報を割引いて他のエビデンスに紐付けずに日々観ようと、褌を締め直した日でした。

プーチンは癌かもしれないけど死はまだ遠く、頭も老いたが発狂してない。
ロシア国民も戦争は嫌だけど国内動乱も困る、位。命をかけてプーチン不支持を表す勇気はまだ持てない。
だからこそ人道兵器や核の限定使用への懸念は深まります。やる時は言わないでしょうし。

多大な犠牲を払いながらここまで押し戻しているウクライナを応援するのは元よりです。

 プーチンは2014年以来、ウクライナ全土を支配する目論見であった事が明白です。どの時点においても、中立化でどうこうなる問題じゃないです。
今回の演説では「ウクライナ」という言葉を一度も使わず、あたかもロシアの一地方であるかのような国民への印象付けが印象的でした。
それとともに、戦時体制を作り上げるための宣戦布告をしなかったのも国際法を意識していたからだと思いますが、ここまでウソ八百だらけだと同盟国ですらウンザリしているでしょう。

 >これを提案したのは当時のソ連、つまりロシアの前身国家です

 ロシアは都合で「我々は旧ソ連の正当な継承国」と言ったり「我々はもうソ連ではない」と言ったり自分勝手な言い分を使い分けてますね。
 日本にも似たような野党がいますが(苦笑)。

また、陰謀論者めいたことを書かせてもらいます。

NATO側は、あんまり露骨にロシアを追い詰めると化学兵器やら核兵器を使うようになるので、ジワジワと詰将棋でもするみたいに、ロシア側にも勝機があるように装いながら、とどのつまり、全体主義国家ロシア帝国の国自体の息の根を止めるつもりなんだと思いますわ。もちろん、経済制裁も連動させながら、ちゃっかりロシア民主化の計画まで練り上げてありそう。

その為に、独裁者のプーチンの野郎に猿回しのサルの役を最後まで演じてもらおいかい!と、ガン?の身の上をおしてまで演技させるなんて、人が悪い。ただ、プーチンの野郎が停戦に応じる意思をまったく見せない(そりゃ、ココまで来ておいて止める=侵攻失敗なんで、国内で即失脚ですわ)のが一番悪いのは論をまちません。

でも、ロシアが大きく民主化に動けば(私はロシアが完全民主化するなんて思ってないけど)、中共にも多大な影響を与えるので、極東の島国に住む一般凡人としては期待したくもなりますわ。そういう事で長期戦になりそうなんで、一般凡人の生活もラクではなくなりそうですが、ウクライナの人達の立場からはそんな事も言ってられません。

何度も書きますが、日本のトップ層には平和ボケから目覚めて、核使用を含めた現実的防衛について議論して欲しいですわ。今侃々諤々しないで何時するの?

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