• 20250123-031626
  • 20250123-033832
  • 20250123-045507
  • 20250122-034332
  • 20250122-034624
  • 20250121-022941
  • 20250121-025750
  • 20250119-145554
  • 20250119-142345
  • 20250119-142345_20250119150101

« 揺らぐ中露権力と新悪の枢軸 | トップページ | ぬるい日向水のようなバイデンIPEF »

2022年6月 1日 (水)

中国、南太平洋取り込みに失敗

105

ふー、危なかった。
南太平洋諸国が、分裂してくれたおかげで、首の皮一枚で南太平洋諸国が中国のあぎとから逃れたようです。

「中国が締結を目指していた太平洋島しょ国10カ国との貿易や安全保障など広範な合意を巡り、一部の国が中国案の具体的な項目に懸念を表明したことで署名が見送られたと、オーストラリアのABCニュースが報じた。
中国の銭波駐フィジー大使はABCに対し、王毅外相が来月4日に太平洋島しょ国歴訪を終えた後に中国は自国の立場を表明した文書を公表すると説明。王外相による今回の訪問は、南太平洋での影響力を巡り米国やオーストラリアとの主導権争いが激しくなっている兆候と見られていた。
ABCによると、銭大使は「われわれは常に友人と意見交換を続けている」とし、「他国に何かを押し付けることは決してしないというのも中国の方針だ」と述べた」
(ブルームバーク5月30日)
中国、太平洋島しょ国と貿易・安保合意に至らず-一部の国が懸念表明 - Bloomberg

800x1_20220531162501

ブルームバーク

さて、この南太平洋地域は日本と深い関わりがあります。
ここはかつての日本の信託統治領である「南洋群島」でした。(下図青線)
少し説明しておきます。
よく「日本が占領した」と書かれたものを見かけますが、第1次大戦のドイツの敗戦処理を定めたベルサイユ条約によって国際連盟の委託統治国が日本に肩代わりしただけのことで、別に軍隊がドンパチやって軍事占領したわけではありません。
むしろ積極的に経営に乗り出し、教育インフラを作り、交通、情報、製造業インフラをシコシコ作りました。
台湾、朝鮮、南太平洋と、どこに行ってもうちの国のやることは同じ「国づくり型植民地」です。
日本からも新天地を求めて移民に出かけ、多くの日本人が産業に携わっています。
ちなみに沖縄からも多くの移民が出ています。

地域的には、赤道以北に散在するマリアナ・パラオ、カロリン、マーシャル群島などがその範囲ですが、戦後、これらの地域は米国に信託統治権が移り、「自由連合盟約」(COFA)という名称で米国の事実上の海外県となります。
この自由連合盟約とは、国家としては独立しながら、経済援助をもらう代わりに軍事権と外交権は米国が持つというものです。
ありていにいえば体のいい植民地ですが、形式的には独立国という体裁です。
なんとなく「民主的」に見えるでしょう。これが米国流です。

なお、お隣のソロモン諸島やフィジー諸島、サモア諸島などは英国の統治領です。(下図赤線)

Map660_1

日本が戦った第一次世界大戦 ⑥ 南洋諸島の占領 (kaizenww1.com)

さて、話を現在に戻します。
中国は、この地域にことのほかご執着の様子です。
なぜならここを支配下におけば、オーストラリアは丸裸になるからです。

この地域は、米軍がフィリピンから撤退した後には広大な軍事的真空地帯となっていました。
サモアから西側には米海軍の力が及ばず、オーストラリア海軍がかろうじて守っている海域です。
そしてこのオーストラリアの弱い横腹こそが、かつてオーストラリアと米国の連絡を遮断しようとして軍を進めて自滅した旧日本軍の進撃ルートに当たります。

1_20190930052701

http://murasaki-syoumeidan.com/solomon-guadalcanal/

青線が連合国の通商ルート、赤線が日本軍の遮断作戦ルートで、緑色で囲んだ円がソロモン諸島 黄色で囲んだ部分が有名なガダルカナル島です。
ガダルカナルが先の大戦の天王山となったのは、米国とオーストラリアの海上連絡線を断ち切る位置にあったからです。

地理的条件が変わらない以上、それは今も変わりません。
この海貿易ルートを切断されれば、オーストラリアは鉄鉱石や石炭を輸出できず、機械、自動車部品、原油などの輸入ができなくなります。
習にとって、この南太平洋諸国を取ることの意味は、単に台湾との国交を切断して孤立化させるだけにとどまらず、オーストラリアをも孤立化させ、中華共栄圏の東端としてしまう野望があるからです。

中国はこれら財政基盤が貧弱な南太平洋諸国に街金よろしくジャブジャブとカネを貸し付けていますが、いったん返済出来ないとなったらスリランカで起きたような借金のカタに港を百年租借し海軍基地を作り、南シナ海の要塞島とを結ぶ広大な太平洋海上権益圏を形成する気です。

その野望が見えたのが7年前のことでした。
豪ABCはこう報じています。

167743020210228230229_b603ba275f0eac

「キリバス野党、滑走路計画への中国の関与について答え求める
ロイターによるこの報道が事実であれば、米国にとっては警鐘となる。この環礁は、ハワイの南西約3,000kmと、極めて戦略的な場所に位置するからだ。
キリバスの野党議員であるイングランド・イウタ氏は、カントン島で計画されている再開発の青写真を実際に見たとしているが、政府はまだ中国の関与を認めていないという。
一方で、イウタ議員によれば、カントン島をめぐって米国との間で交わされた長期合意はまだ有効であり、キリバスが波風を立てることはないだろうという。
「万が一、カントンが軍事利用できる形で改修されれば、おそらく米国の感情を逆撫ですることになるだろう」
「米国がカントン島をキリバスに引き渡した際の合意の基本条件では、第三国によって同地がいかなる軍事目的でも開発されないよう、明確に求めている」
(豪ABC2015年5月7日)
キリバス野党、滑走路計画への中国の関与について答え求める(2021年5月7日、ABC/PACNEWS) | 太平洋島嶼国事業-ブレーキングニュース | 笹川平和財団 - THE SASAKAWA PEACE FOUNDATION (spf.org)

また、中国の甘い誘いに乗ってしまう親中政権も現れました。
この地域でもっとも大きな島のフィジーです。
フィジーは台湾と断交し、中国に乗り換えました。

Https3a2f2fimgixproxyn8sjp2fdsxzqo131054

日経

「2019年4月、マナセ・ソガバレが首相に再度就任した後、対外関係の全面見直しを表明。同年9月16日中華人民共和国と国交を樹立し、これまで国家承認していた台湾中華民国)と断交することを発表した。アメリカは、台湾との国交を継続するよう働きかけていたが裏切られた形となり、直後にマイク・ペンス副大統領がソガバレ首相との会談をキャンセルするなど大きなしこりを残すこととなった。
2021年11月24日、中国との関係強化や首相の公約が果たされていないことに不満を持つマライタ州の住民を中心とした住民により、マナセ・ソガバレ首相の退陣を求めるデモが発生。デモ隊は1000人以上に膨れ上がり、一部は国会に侵入しようとするなど混乱が広がったため、政府は首都ホニアラに外出禁止令を派出した。デモは翌25日にも発生して暴動に発展。中国人が経営する商店などが襲撃されて略奪・放火が行われた。混乱を受けて中国政府は重大な懸念を表明。オーストラリア政府は警察や軍人など66人を派遣することを決定した。
2021年12月23日、ソロモン諸島は暴動再発防止のため中国から警察関係者と装備品の受け入れに合意した」

ソロモン諸島 - Wikipedia

この反政府デモに際して、フィジーと安全保障条約を結ぶオーストラリアは、治安維持部隊を派遣しています。

「南太平洋のソロモン諸島でソガバレ首相の退陣を求めるデモの参加者が暴徒化し、首都ホニアラで放火や略奪が起きた。オーストラリアのメディアなどによると、中国寄りの外交方針への不満が背景にある。ソロモンと安全保障条約を結ぶ豪州は25日、要請を受け、治安維持のため100人以上の軍や警察の要員派遣を決めた」
(日経2019年11月26日)
ソロモン諸島で暴動、親中政権に反発 豪は治安要員派遣: 日本経済新聞 (nikkei.com)

これに懲りることないフィジーのソガバレ政権は、この親中路線をさらにこの地域全体に広げて、中国と安全保障条約を結んでしまおうというのですからあきれたものです。
当然、チャイナマネーの袖の下で頬を叩かれたのです。
オーストラリア前国防相のダットンはこう述べています。

「ソガバレ政権が中国から賄賂を受けたと思うかと聞かれたダットン国防相は、「誰もがそうだと推測している」と指摘。「中国は、我々と異なる方法でビジネスをする。中国はアフリカなどで確実に賄賂を活用するが、我々は賄賂ではなく、サポートを提供する。賄賂が通用するのなら我々は成果を得られない。ソロモン諸島の政治には、腐敗したカネが重要なファクターであるのは有名だ」と断罪してみせた。(略)
一つは、中国政府がソガバレ政権が保有する隠しファンドに出資すること。二つ目は、就任間もない議員を中国本土へのアゴ足付きの豪華接待旅行に招くことである。その際、中国側は日当の補助金まで支給して議員のポケットに入れる。この補助金額は、ソロモン諸島では家族を1年間養うのに十分な額だという」
(NNA2021年5月9日)
【オーストラリア】【有為転変】第174回 中国とソロモンの安保協定の裏側(下)(NNA) - Yahoo!ニュース

王毅は「我々は押しつけない」とキレイゴトを言っていますが、スリランカでは借金で首が回らなくして、港をとりあげて軍事拠点に変えてしまいました。
前述したキリバスのカントン島など、中国の甘言にのったら最後、気がついてみれば空港や港は百年間の租借地となり、中国軍機と空母の島になっていることでしょう。

今回は、ミクロネシアが根性を見せました。

「今回の会合は、米豪が長らく存在感を示してきた南太平洋で中国が影響力拡大を目指していることを示していた。バイデン政権が提唱するインド太平洋経済枠組み(IPEF)を巡っては、フィジーが太平洋島しょ国としては初めて参加国となった。ABCによると、ミクロネシアのパニュエロ大統領は南太平洋地域に関する中国の計画を批判し、新たな冷戦を招く恐れがあると警鐘を鳴らしていた」
(ブルームバーク前掲)

実は南太平洋島しょ国に中国が食い込むことができた背景には、オーストラリアや米国などの白人諸国は、常に上目線で関わってきたという背景があります。
その隙間に中国が、チャイナマネーを抱えて、現地の経済を買い占めんばかりの勢いで進出してきたわけです。
そしてたちまち街には中国文字の看板が溢れて、どどっと移民が押し寄せ現地化していきます。
そして気がつけば、資源からなにから根こそぎ持っていかれてしまいます。
そして今回のような、基地を作らせてくれ、軍港も欲しいというようなことが裏に見え隠れする安全保障協定を結ぶ段になって、初めてヤバイと気がつくわけです。

その点,日本はフランクでした。
かつての南洋群島時代も、教育は現地の人も含んで行われていましたし、残していった道路や生活インフラなどいまでも使われています。
日本は白人諸国より上から目線ではなく、中国ほどガツガツしておらず、長い時間かけていい関係を作りたい国だと思われています。
日本が戦後してきたのは、空港や漁港の整備といった民生部門ばかりで、当たり前ですが軍事的思惑などまったくありません。
その意味で、米豪と南太平洋島しょ国との間を取り持つ、いい立ち位置にいるのです。

中国の狙いは、一帯一路の南太平洋コースを作って、オーストラリアを米国や日本のザ・クアッド陣営から引き剥がし、孤立化させることでした。
今の中国経済には、かつての勢いが失せているのですが、今回もまだあきらめないと言っているので、引き続き警戒が必要です。

 

 

Maxresdefault_20220531173501

廃墟となったウクライナの街に響くチェロ。「建物を破壊できても魂は破壊できない」と反響広がる | ハフポスト
ウクライナに平和と独立を

« 揺らぐ中露権力と新悪の枢軸 | トップページ | ぬるい日向水のようなバイデンIPEF »

コメント

>南太平洋諸国が、分裂してくれたおかげで、首の皮一枚で南太平洋諸国が中国のあぎとから逃れたようです。

危なかったですねー。南太平洋諸島さん分裂してくれて有難う。(笑)
南太平洋諸島はうちの爺さんが戦時中に出兵していたところでして、
食料班でしたので、よく現地の人たちと一緒にヤシの木の実を採ったり、畑も耕したりしていたそうです。
南太平洋諸国に対しては、目の前の金に靡く態度には正直ムカついていましたが、完ぺきに取り込まれる前に、中国のあくどさに気付いてくれてよかったと思います。

インドネシアの高速鉄道のグダグダやスリランカのデフォルトの原因となったりと中国と組む事へのリスクを考えるようになってきたのであれば良い傾向だと言えます。
でも現段階では「より金を引き出すための駆け引き」として利用している向きもあるので注意が必要だと感じます。

こういってはなんですが途上国の権力者はお金の力でどうとでもなる、国を私物化する人の方が遥かに多いのが現実なので(それをその国の国民性と混同するのもまた危険ですが)
その点を踏まえてきっちり切り分けた判断が必要ですね。
イデオロギーとか正義とかよりも米中どちらに付いた方が得をするのかをしっかりとアピールする事が彼らを引き止めるために重要な事だと思います。

 会議では「なぜ、今なのか?」という不満が出たそうですね。
中国の提案に異議を言った国々は、ロシア-ウクライナ戦争に関連付けて考えています。
ウクライナの勝利が中国外交に及ぼす影響は大きいと思います。

明治政府が、鉄道、港、電力などの社会インフラに外国資本を参入させなかったのは、それが侵略の手口だと見抜いていたからです。
それに比べて、中国に依存させようとする勢力は、救いがたいお花畑頭です。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 揺らぐ中露権力と新悪の枢軸 | トップページ | ぬるい日向水のようなバイデンIPEF »