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2022年6月15日 (水)

プーチンの思惑と破綻

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プーチンが歴史絡みの妄想にかられているとしても、この男をみくびってはいけません。
プーチンのウクライナ征服計画は昨日今日思いついたものではなく、たぶん20年以上前から構想され着実に実施されてきたものです。
語弊がある言い方かもしれませんが、プーチンの「凄味」は、平時からエネルギーと食糧という国家の根幹的要素を掌握することで、敵対陣営の無効化を策したことです。

それが端的にわかるのは、天然ガスパイプラインを張りめぐらすに当たっての周到さです。
プーチンのガスパイプラインは、EU全域をカバーし、トルコ、中国にまで及んでいます。
まさに網のように、くるみ込んだのです。
そしてパイプライン以外に、強大な石油輸送船団を有して、インドやアフリカ、中東のエネルギー源も押さえています。
つまり、ロシアは米国と日本以外の国すべての、エネルギーの首根っこを握っているといってもよいのです。

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ロシア 天然ガスの野望 :3大パイプラインで目指す「グレートゲーム」の覇権=原田大輔 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)

プーチンが放ったエネルギーの投げ網の最大のものこそが、ノルドストリームです。
ノルドストリーム1が開通したのが2011年11月、計画段階まで遡れば2005年時点には、すでにロシアとヨーロッパを結ぶ世界最長のパイプライン構想は出来上がっていたはずです。
さらに、あえてウクライナを通過する陸上ルートを排して海底を通したノルドストリーム2は、2011年から2012年にかけて敷設され、米国の妨害がなければ今頃は開通しているはずでした。

プーチンがウクライナに「殺意」を覚えたのは、2006年、09年にウクライナに供給停止した前後頃ではなかっと思われます。
プーチンは、ドル箱の欧州市場を確保していき、エネルギー帝国の覇者として世界に君臨する予定でしたが、はからずもそれを阻んだのが、当時のウクライナ親露政権でした。

ロシアにとって死活的に重要だったノルドストリーム戦略を破綻に追い込みかねなかったウクライナに対して、根深い怒りを覚えたはずです。
そこで始まったのが、パイプラインの多様化への方向転換として、ノルドストリーム2建設にかじを切りました。

ノルドストリーム2は、バルト海を経由して年間550億立方メートルのロシア産天然ガスをドイツへ輸送するパイプラインで、これは原子力発電所14基もしくは石炭火力発電所50基の発電量に相当します。
このノルドストリーム2さえあれば、原発を止められるというのがメルケルの思惑で、見事にここでメルケルとプーチンの利害は一致したのです。
プーチンは、これでEUとNATOの盟主を切り崩した、もはや西ヨーロッパは張り子のトラにすぎないとほくそえんたはずです。

ですから、よもやノルドストリーム2が開通直前でストップをかけられるような供給停止が制裁手段に登るとは考えてもいなかったのかもしれません。
いやよしんばその可能性があったとしても、完全停止までには時間があるはずで、おそらく制裁案は半年くらいはまとまらず、実施に至っては1年間はグズグズとした猶予期間があるはずだと睨んだはずです。
だから、短期で戦争を終結してしまえば、制裁が始まる前に一切が後の祭りとなるから、それまでにキーウを占領して親露政権を作らせ、南部クリミアと東部2州を連結させて、ここは直轄領とする、これがこの男の目論見でした。

つい先日のこと、プーチンは余裕しゃくしゃくでこう言っています。

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BBC  ピョートル大帝生誕350年の記念展示を訪れたプーチン


「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9日、西側諸国は今後数年にわたりロシア産の石油や天然ガスの輸入を止められないはずだと述べた。プーチン氏は若い起業家の集まりで、「世界市場の石油供給量は減少し、価格は上昇している。企業の利益は増えている」と話した。
大統領はさらに、数年後にどうなっているか誰も分からないので、ロシア企業は「油井をコンクリートで埋めたり」しないとも述べた」
(BBC6月10日)
プーチン氏、西側は今後何年もロシアのエネルギーを拒絶しないと - BBCニュース

この思惑は半分当たりました。


「ウクライナにおける戦争の最初の100日間で、ロシアは石油とガスの輸出によって約1000億ドル(13兆4000億円)の収入を得たとする報告書を、エネルギー研究機関が公表した。
この報告書は、フィンランドに拠点を置く独立系の「エネルギー・クリーンエアー研究センター」(CREA)がまとめた。
それによると、3月以降はロシアによるエネルギー供給を多くの国が回避しているため、ロシアの収入は減っている。しかし、依然として高い水準にあるという」
(BBC 6月14日)
ロシアのエネルギー輸出収入、ウクライナでの戦費上回る | Start Magazine (taboolanews.com)

たしかに欧米の経済制裁で減収はしたものの、戦争開始からロシアは13兆4千億円を石油と天然ガスで稼ぎだしています。
これは戦費をはるかに上回っており、ロシアには継続して戦争する経済力は十分あるとCREAは分析しています。

「開戦から最初の100日間でみると、収入が戦費を上回った。CREAはロシアの戦費を、1日あたり約8億7600万ドルと見積もっている」
(BBC前掲)

以前に出所不明の「戦費1日2兆円」説が流布されて、すぐにロシア国庫は枯れるだろうという妙な楽観が広がりましたが、小泉悠氏はこれを完全に否定しています。
そもそも国防予算の支払いはルーブルなので、国際為替市場が閉じられてしまったロシアには腐るほどありますし、足りなければ刷ればいいだけのことです。
独裁者が自由に経済を操って一元化できる専制国家にとって、戦費は無限なのです。

ミサイルや戦車の重要な部品で不足しているものが出始めて、いますでにロシア軍の先行きを不透明にしています。
たとえば、電子部品に必須の半導体やエンジンなどに使うベアリングですが、これらは輸入制限をくっているから入らないのであって、経済力とは無関係です。
ただし大砲の玉は山ほどあるので、今東部戦線ではありとあらゆる火砲をかき集めて、ふんだんにある弾を撃ちまくってウクライナ軍を窮地に陥れています。

ですから、戦費が枯渇して戦争が止まるということはありえません。
ロシア軍が撤退するとすれば、カネが問題ではなく、それは致命的な兵員不足、激しい装備の損耗、そして士気の崩壊以外ありえません。

ここまではプーチンの思惑どおりでした。
唯一ちがったのは、ウクライナ人が壮絶なまでの戦いぶりを見せたこと、ゼレンスキーが一歩も逃げずに救国の英雄となってしまったことでした。
プーチンの書いたシナリオは、徐々に狂い始めていくことになります。
ロシア制裁は年末から効果を表し始めます。


「EUは今年末までに、ロシア産石油の船による輸入を禁止する計画だ。これにより、輸入量は3分の2ほど減ると見込まれている。
EUはガスについても、1年以内にロシアからの輸入を3分の2近く削減すると宣言している。
しかし、全面的な禁止は合意できていない。
一方、アメリカは、ロシア産石油、ガス、石炭の全面禁輸を宣言している。イギリスは、ロシアからの石油の輸入を年内に段階的に終える予定だ。
CREAの報告書は、EUによる石油の禁輸によって、大きな影響が及ぶだろうとした」
( BBC前掲)

つまり長期になればなるほど苦しむのはロシアだということです。
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BBC
ウクライナに平和と独立を

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コメント

権威主義国家の弱点として指導者が万能である事を誇示しようとして不得意な分野にも介入して墓穴を掘る事です。
狡猾な政治的立ち周りに対して軍事面に関しては素人丸出しと言う点ではヒトラーと共通するかもしれませんね。
今回の侵攻で明るみになったロシア軍組内部の杜撰な規律管理もプーチンがなんでも自身で掌握したいがための結果だと考えれば納得がいきます。

インドがロシアから大量の原油を輸入し、精製したガソリンなどを欧州へ輸出しているという説もあります。
結果的に欧州の金がインド経由でロシアへ流れているとなるとロシアの受ける打撃はもっと少ないのかもしれません。
ハンバーガー店ではドル払いの優先レジもあり、外貨獲得に貢献してるし。
半導体を輸出したくてウズウズしている国もあり、こっそりと売る輩が出てきそうです。

ロシアは日に6万〜9万発の砲弾を撃ち、ウクライナは砲弾の支援を受け5千〜6千発を撃ち返すのがやっとです。
ロシアの砲弾は一年間撃ち続けても在庫切れにならぬとの予測も。
口惜しいかな、命中率は低くともそれを数で圧倒してますね。

ウクライナの本格的な反攻が始まり戦局が好転することを祈ります。


海外では「欧米諸国のウクライナ疲れ」みたいな記事が現れていますが、そんなのそれこそロシアの思う壺。
カタが付くまで時間が掛かることに疲れたり絶望したりはいけませんね。
持ち堪えてロシアに消耗させるか、ウクライナとウクライナ人が地球から消されるか。
ロシアが人道回廊を申し出たことで得意げに篠田先生をディスっている人もいますけれど、ちょっと待て。
その人道回廊の出口は何処なのさ。

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