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2022年6月23日 (木)

飼料価格狂騰、トン10万円台に

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縁起でもありませんが、日本畜産も終了かもしれません。
というのは、日本畜産のビジネスモデルが破綻してしまったからです。
戦後日本は、主要に米国で過剰気味に生産される潤沢で低価格の穀物を輸入し、徹底した合理化によって国際競争力を持つ畜産品を作ってきました。
ですから、養鶏などは、もうこれ以上の合理化は無理という所まで削りまくっています。
ややっこしくなっているのは、牛などのように農水省が利権化して複雑化させているからで、それが抑えられている養鶏部門はスッキリした経営合理化が進んでいました。

この養鶏すら立ちいかなくなったのですから、もう末世です。
象徴的な出来事は、鶏卵業界トップのイセが経営破綻したことです。
最大の理由は飼料代の高騰、いや狂騰です。
イセのように薄利多売の価格競争で勝利してシェアを延ばしてきた企業は、規模が巨大であるために逆スケールメリット状態になってしまいました。

それも一過性のものではなく、どこまでも続く構造的な可能性が出ました。
今の飼料高騰はほんの始まったばかりで、その全体の姿は見え始めたばかりのようです。

下図をご覧いただければわかるように、2020年には節目の6万円/トンを軽々と突破し、21年にはなんと禁断の7万円台に突入、そしてこの22年7月にはとうとう破天荒の9万に達する勢いです。
遠からず、10万円台を突破するという悪夢が現実化する気配です。

かつて私が養鶏を始めた30年前頃は相場は4万円以下で、5万円を突破したときにはJA系の飼料屋に怒鳴りこんだほどです。
いや、私も若かった。今は、正直、戦う元気もありません。
個人が戦ってどうなるというレベルではないのです。

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日経

「飼料最大手の全国農業協同組合連合会(JA全農)は22日、2022年7~9月期の農家向け配合飼料の出荷価格を、4~6月期に比べ全畜種平均で1トンあたり1万1400円引き上げると発表した。上げ幅は約14%と過去最大で、新価格は同9万4400円前後とみられる。3四半期連続で過去最高値となる」
(日経6月22日)
JA全農、7~9月期配合飼料1万円超上げ 上昇幅最大に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ともかく値上がりのピッチが異常に速い。
わずか2年で2万円上げられたら、対応のしようがありません。
畜産は、牛、豚、鶏の分野を問わず、飼料コストが経費の大部分を占めます。

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(19)飼料作物等:農林水産省 (maff.go.jp)

牛は粗飼料(牧草)を与えねばならないので3割台ですが、豚や鶏になるとコストの6割以上を飼料が占めています。
できるだけ青物やなどをやるなどしてその比率を減らす努力をしていますが、自ずと限界があります。

そして、その購入飼料のほぼ9割は外国産です。

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同上

ですから、カロリーベースで自給率を計算するという世界でも珍しいやり方をしている日本の農水省は、豚肉や鶏卵は9割が国内産でも自給率は10%以下というヒドイ数字にしています。
この農水省の過少な自給率評価のおかしさはさておき、今回は輸入飼料の高騰が日本畜産を真正面から襲っています。

私は現在の飼料高騰の原因は、中国のあさましいばかりの買い占めにあると見ています。
たとえば、飼料用トウモロコシはこうです。

「配合飼料価格高騰の要因はトウモロコシなど飼料穀物価格の相場上昇にある。中国が昨年後半からトウモロコシを大量に買い付け始めた。
トウモロコシのシカゴ定期は3月には1ブッシェル(25.4kg)5.4ドル前後で推移していたが、南米産地の乾燥による作柄悪化懸念や、4月に米国農務省が期末在庫率見通しを下方修正したこと、さらに中国からの強い引き合いを受けて同7.3ドルまで上昇した。
今後の見通しについて全農は、米国の夏場の受粉期に向け天候に左右されるものの、引き続き中国向けの旺盛な輸出需要が見込まれることや、期末在庫が低水準であることから「相場は堅調に推移するものと見込まれる」とする」
(全農2021年6月18日)

連動してこの高騰は、大豆にも及びました。

「大豆粕のシカゴ定期は3月には1t440ドル前後だったが、中国向けの輸出増大で大豆の期末在庫率が歴史的な低水準となったことに加え、米国の天候不良による作付け遅れ懸念から480ドル台まで上昇した。その後、作付けが順調に進んだことから現在は430ドルまで下落している。国内の大豆粕価格は為替が円安のため値上げが見込まれる」
(全農前掲)

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世界経済総予測2022 :中国の穀物爆買いで市場激変。22年は小麦需給ひっ迫のおそれ=柴田明夫 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)

そしてこれに船舶運賃の値上げがかぶりました。
これも中国の爆買いが原因のコンテナ不足が、バルク(船倉)輸送の飼料にまで波及したためです。

「世界の海運大手各社が5月中旬以降、コンテナの輸送運賃を相次ぎ引き上げた。昨年後半から続く海運費の高騰は、ベトナムでも輸入穀物や鉄などの原材料高騰を招いており、輸出入に依存する大手企業各社の収益を圧迫している。4月下旬ごろに天井を打ち一度は落ち着くかに見えた海上輸送コストの上昇傾向が止まらなければ、新型コロナウイルス感染第4波で需要の落ち込みが懸念されるベトナム経済のさらなる重しになりかねない」(アジア経済ニュース5月28日)
海上運賃再値上げが収益圧迫 コロナ前の数倍、業者「不合理」 - NNA ASIA・ベトナム・運輸

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海運コンテナ船の運賃急騰、生活じわり影響…食料品への価格転嫁広がる

そしてこの中国の爆買いによる相場急騰に加えて、さらにウクライナ戦争が影響を及ぼそうとしています。

「小麦は、ロシアのウクライナ侵攻によって世界的に供給が混乱する懸念が高まり、シカゴ穀物相場(先物)が高騰。3月上旬には史上最高値を付けた。その後下落したが、インドが輸出規制をするなど自国の食料確保を優先する動きも見られ、相場は再び上昇する。国連など国際機関は、今後の食料危機に懸念を示す」
(日本農業新聞5月24日)

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ウクライナ侵攻3カ月 農業への影響は? 資材高騰、円安、国産切り替え…(日本農業新聞) - Yahoo!ニュース

戦争の影響は、これから本格的に出始めます。
生産団体はウクライナ戦争が原因だ、と主張していますが、(たぶん説明しやすいからでしょうが)、まちがってはいませんが、本格的な高騰の波はこれからだ、ということもつけ加えたほうがいいでしょう。

「千葉県酪農農業協同組合連合会=千葉県酪連によりますと、新型コロナの影響によるコンテナ不足やロシアのウクライナ侵攻で輸入される穀物価格が高騰して飼料代が値上がりしているということです」
(NHK6月13日)
関東地方の生乳販売団体 飼料代高騰で年度途中値上げ交渉へ|NHK 首都圏のニュース

飼料価格の売買は四半期ごとに決定されます。
これは飼料の国際市場価格が、四半期ごとの先物取引でヘッジ売買さているからです。
3カ月刻みでその中で変動はありますが、おおよそは一定範囲内で納まります。
いまの3月期は3月1日からから6月30日までです。
ウクライナ戦争が始まったのは2月24日ですから、いくらなんでも1週間では影響が出るとは思えないのですが、上図を見ると侵攻のあった直後から3月初旬にかけて著しい高騰があります。
本格的にウライナ戦争の影響が出るのは、次の四半期である7月から9月期で、さらに秋口の10月期には凄まじい飼料の高騰ぶりが演じられるはずです。
もうお腹いっぱいなので、説明は省きますが、これに原油高、資材高騰、円安が加わるのは言うまでもありません。ダブルパンチどころか、クインテットパンチ。
もう矢でも鉄砲ももって来い、ヘルプレスという心境です。
たぶん10万円台に乗るはずで、もう日本で畜産が可能な環境ではありません。
だって、平たくいえば畜産農家の収入が半分になったということなんですから。

それにしても農水省は一体ナニをしているのか。今頃になってこんなとぼけたことを言っています。
今頃なにが「据え置き」ですか。飼料価格の1割下げることを目指す支援策だそうです。
さらに深刻化するだろう秋口には日本畜産には抵抗する余力は残されていないはずです。
普通ならば、倒れた群小の経営を巨大養鶏資本が買って独占を延ばしていくのですが、その巨大企業がイセに見られるように経営破綻しています。
ひょっとしたら、中国資本が入って、スーパーの棚には中国製の畜産品が並ぶかもしれません。
いや、あそこも国内向けがいっぱいいっぱいだから、米国製か、まえぁどちらでも一緒です。
なぜ、政府は2月24日に戦争が始まった時点で、対策を打たないのでしょうか。
この2月末の時点で、ウライナとロシアという世界二大穀物輸出国が戦争をすれば、小麦などの飼料価格がどう動くのかわからなかったら阿呆です。
いままで、なんのために統計数字をいじってきた
のですか、こういう危機的状況の対応に役立てるためではないのでしょうか。
いまになって選挙対策よろしく対策を小出しにするのですから、すべて出遅れ。
これから検討ですから、来年の末くらいにはなにか出てきますかね。

やるならやるで、ガソリン価格のように、6万円台に下がるまで無制限に飼料会社に補てん金を支払うくらいはしなさい。
間違いなく、戦後最大の穀物高騰が始まっているのですから。
霞が関貴族のあなた方にはまったく期待していませんが、やるなら今ですよ。今しかない。
日本畜産は瀕死です。
中国の爆買いで叩きのめされ、さらにロシアの侵略で壊滅に追い込まれようとしています。
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西日本新聞
ウクライナに平和と独立を




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コメント

日本は北米とオーストラリアからの輸入なので、ほとんど輸入していないロシアやウクライナの穀物は直接関係ないですが、ロシアやウクライナから輸入していた国々が北米系を買付け出したら日本は更に厳しくなりますね。
昨年に続き今年も北米は不作が見込まれ、中国の異常なまでの買付け、ウクライナ戦争の影響、なにも良い材料がありません。
飼料や肥料の高騰、これらが国内生産に与えるダメージたるや…。

全てが戦争の影響ではないにせよ、早期に終結して欲しいものです。

飼料/エサを作るために必要な肥料の価格も高騰中、と言うかずっと世界中で争奪戦が続いてきました。たしかロシアは肥料の一大輸出国でしたが、SWIFTで止まるのかな…。

エサもリンも日本は総量が少ないので買い負けしながら、それでも追い縋ってきたのですが、円安でノックアウト…。
記事の通り、ウクライナ侵攻の影響は秋以降。まだまだこれからで、こればかりは本当に何を書いても解決策が一文字も書けない、辛い気持ちです。
消費者としてロスなく買い支えるつもりで暮らすくらいしか出来なくて申し訳ない日々。

日本はこれからインバウンド復活するにも、目玉の外食産業を支える農業者が身も心も折れてしまったら、客に食わせる分なんてないです。

畜産物は生産コストをそのまま生産物に転嫁できないのが、ネックですね。物価の優等生などと言われて、どれだけ物価が上昇しようが、卵や牛乳の値段は変わらずに来ました。それが究極までの生産コストの合理化を進めたのも事実ですね。それが、とうとう限界点に達してしまったということですか。暴論かもしれませんが、この危機を乗り越えるためには、コストをちゃんと売価に転嫁できるようにする。ものを売ることで再生産できるサイクルを作る。そのためには、そのものを買える家計収入が必要です。皆の所得を増やすことが絶対必要です。政府は国民の所得を増やす施策を速やかに行う必要があります。財政出動、減税、電力供給の安定、今すぐにでも出来ることは、素人考えですが、いくらでもあるような気がします。

 昨年12月19日の日経新聞ですでに、中国による食料買占めを問題にする記事が出ています。
引用=「中国が食糧の買い集めを加速している。米農務省によるとトウモロコシなど主要穀物の世界在庫量の過半が、世界人口の2割に満たない中国に積み上がっている。中国による穀物の高騰が貧困国の飢餓拡大の一因になっている。」との事。
産経では「中国の戦争準備か?」という論調でしたが、いずれにしても中国の国家政策として行った結果の穀物不足です。

ですから、こうなる事は分かっていて、それでいて無策だった岸田政権の責任は重いと言わざるを得ません。
中途半端な政策しか打てないなら、日本はますます中国からの食糧を受け入れざるを得なくなります。

> こうなる事は分かっていて、それでいて無策だった岸田政権の責任は重いと言わざるを得ません。
>中途半端な政策しか打てないなら、日本はますます中国からの食糧を受け入れざるを得なくなります。

これはこう書くのに非は無いとはいえ、買付量が国単位で違いすぎる中、商社と全農は相当無茶を覚悟で策を講じて来ています。
国も農水省はともかく買う方運ぶ方は相当後押しして来ましたが、分かっていてもどうにも無理な状況だと私は見てきました。

国内インフレを許容範囲最大ペースで容認して物価を海外と近づけていくのが一つの方策と思います。
労働世代は賃上げとの時間ギャップとの闘いですが一応未来はあります。企業も方針転換や貸付政策など施す余地がまだある。
老人は貯金の目減りしかない。
でもね、先週私が食べた駅の立ちそば400円って、3ドルですよ今。
その仕入れ値どん底感。セルフサービスとはいえ中で人が作って「ありがとうございました」って言ってくれる。その笑顔幾らなんだと。
帰宅してTVをつければ「岸田インフレー買い物の値段がー」で、色々悶々としてしまいました。

昨日はとっ散らかったコメントしてしまいすみませんでした。
下記ニュースによると、
農水省は臨時・特別措置として、配合飼料価格安定制度の異常補てん基金からの発動基準である輸入原料価格の115%超を112.5%へと引き下げた。また、異常補てん金の国による積み増しも行っている。当面はこれらによる生産者への十分な交付が求められる。

https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2022/06/220622-59769.php

しまねはちょろっと補填動き出したようです。足りないでしょうから、電気代の見直し急いで欲しいですね。東電…大丈夫かな。
稼働の有無でコストは変わらない、とはいえ、事故以降館内での確認事項や作業の手続きは絶対増えているはずで、原子力関係の新卒採用に10年近くも恵まれていない企業です。逆にいえばこれ以上放置したら産業の危機なのでやるしかないのですが。

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