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2022年6月 6日 (月)

原発を止めて地域経済が維持できるとでも思っているのか?

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この札幌地裁判決は再稼働は差し止めたものの、廃炉は認めなかったわけですが、理由がよくわかりません。
再稼働されない以上、廃炉するしかないじゃないですか。
仏心を出したわけじゃあるまいに、妙なバランスとるんじゃないよ、と言いたくなります。
半永久的に再稼働も出来ず、かといって廃炉もしないまま宙ぶらりんで維持していろ、とでもいうんでしょうかね。

ただし、廃炉は口でいうのは簡単ですが、その工程をマラソンランナーのように走らねばならないのは、ほかならぬ電力会社です。
廃炉は一切の利益を生み出さず、巨額な処分費用を長期間負担せねばならないために、電力会社が経営的余裕がなければ廃炉などできることではありません。
原子炉が40年たっても廃炉できないのは、新型炉にリプレイスできないためだけではなく、廃炉処分の方途が見つからないからでもあるのです。

ではその電力会社の体力は、今、どうなっているでしょうか。
実は史上かつてなく最悪です。
電力業界から、逃げ出す会社が増え続けています。
2016年4月に、電力の小売自由化が鳴り物入りでスタートしました。
それまで地域の電力会社10社が独占供給してきた一般家庭向け電力販売が一般企業に解禁され、利用者はライフスタイルや価値観、価格に合わせ自由に販売会社やプランを選択できるようになる、といのが触れ込みでした。

安倍氏好みの規制緩和の一環でしたが、今まで幕藩体制とまで言われていた発電-送電-小売りの独占が解禁されたのですから、新しいビジネスチャンス到来とばかりに猫も杓子も新規参入し、その新規事業者数、実に全国で約700社というのですからもうブームでした。
当時、そこかしこでナントカ電力の新規会員募集広告を見たものです。
私は、ライフラインの規制緩和には反対でしたが、案の定です。

それから6年、どうなったのかといえば、新電力は続々と経営破綻するか、我先にと逃げ出しています。
日本ロジテック、福島電力は倒産し、水面下では鹿角市も出資したかづのパワーが売電事業を休止、楽天グループの「楽天でんき」は新規契約停止といった具合に、計画の事業計画が破綻したり、そもそも稼働する前に止めてしまった登録事業者も相当数あると言われています。

「企業信用調査最大手の帝国データバンクが4月公表した「『新電力会社』倒産動向調査」によれば、2021年度における新電力の倒産は過去最多となる14件となった。倒産までいかなくとも、電力の小売事業から撤退を余儀なくされた事業者も含めると、その数は31社と過去最悪のペースとなるという」(2022年5月2日)

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苦境の新電力、“ソシャゲ感覚”で撤退? 1年で14件、倒産過去最多: 古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン

なぜでしょうか。
新電力自体が電力会社のようなしっかりした経営基盤を持たないふわふわした異業種参入組だったうえに、それらが熾烈な競争にさらされ、しかもこの間の原油高、円安による調達コストの肥大化という二重三十の打撃を受けたからです。

「大手電力10社のうち東京電力や中部電力など6社は、2022年3月期連結決算の最終利益が赤字になる見通しだ。赤字額は東京電力が410億円、東北電力は450億円と予想している。
もともと大手電力各社は、政府の制度により、原油や液化天然ガス(LNG)などの燃料費の上昇分を電気料金に転嫁することが認められている。ただ、料金への転嫁は数か月後になるため、その間、業績が押し下げられるという」
(読売2022年2月9日)社説:電力業績悪化 安定供給が揺らがないように : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

この間、電気料金が値上がりを続けているのを見たのが下図です。
ウクライナ侵攻以来の今年2月までのものですが、原油価格は昨年末以降WTI先物価格は1バレル90ドルを突破しています。
これは2014年10月以来、7年4カ月ぶりの高水準にあたっています。

今後、この原油価格の高止まりは、脱炭素の世界的時代潮流を背景としているために、簡単には修正が効きません。
すると当然のことながら、原油を原料にしている電気はスライドして値上がりします。

去年、大手電力10社が電気料金を値上げしました。
標準家庭の電気料金で、値上げ前と比べてもっとも幅が大きいのは沖縄電力で171円となり、次いで中国電力が135円、東京電力と中部電力は133円、それぞれ値上げしました。

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原油・ガソリン価格の高騰は続くのか?~高騰の背景整理と見通し |ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp)

ただし、公共料金の値上がりは政府の承認が必要ですから3カ月ズレて、しかも設定された基準燃料価格の1・5倍までしか料金に反映できない仕組みです。
超過分は電力会社が負担する仕組みで、北陸、関西、中国の3社は既にその上限に達しています。

かつての電力自由化論議の際に、電力会社の寡占が問題視されましたが、電力各社は寡占との引き換えに安定した電力供給体制と公共料金としての妥当な売価で縛られていたのです。
ですから、経営がしんどいから止めた、経営が成り立たないから値上げする、という新電力のようなまねは許されませんでした。
いまでも、意地でもオンボロ火力を動かしているのは、こういう昔気質の電力マンの義務感があるからです。


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6月電気料金、5社が値上げ ロシア影響 - 産経ニュース (sankei.com)

「標準的な家庭の電気料金で最も値上げ幅が大きいのは、北海道電力の81円。次いで東京電力が60円、中部電力は42円、九州電力は32円、東北電力が29円値上げするとみられる」
(産経2022年4月22日)

そしてもうひとつの燃料価格の高騰の影響は、収益力の低下です。
これは続々と撤退する新電力を見ればわかるとおり、電力は収益性の悪い部門となってしまったために、各社は発電設備への投資余力を失うことになりました。
大手電力の発電設備への投資額は2019年に1.3兆円と、自由化が始まった1995年に比べて約3割減ったと言われています。
すると、電力各社はいままで維持してきた効率が悪く採算性の低い老朽火力発電所の廃止を進めたために発電能力全体が低下しました。
結果、電力供給の逼迫が起きています。

これが電力予備率の低下の原因です。
去年から今年にかけての冬は、まさに薄氷の上を歩むが如しでした。
東電と関西電力の予備率には3%台という赤信号が灯りました。

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経産省 冬の電力需給対策強化 過去10年で最も厳しく |日商 Assist Biz (jcci.or.jp)

「この冬の電力需給は、10年に1度の厳しい寒さを想定した場合にも、全国10エリア全てで安定供給に必要な予備率3%を何とか確保できる見通しとなっているものの、東京エリアは1月に3・2%、2月に3・1%とギリギリの状況。特に、2月は中部、北陸、関西、中国、四国、九州の6エリアでも3%台の予備率になる見通しで、過去10年間で最も厳しい状況となっている」
(日商BIZ 2021年12月4日)

再エネは文字どおりの風頼りの風来坊で頼りにならず、原子力は止められており、結局のところ日本の社会と経済の屋台骨は火力が一手に引き受けることになってしまっています。
そして北電の場合、その火力発電所も前回の地震で被害を受けた苫東厚真などまだ新品なほうで、北電の他の火力発電所は中古品に等しいものをつかっています。 
いちばん古い苫小牧など1973年建設ですから、あと5年で齢半世紀です。
北電に限らず、全国の火力は老朽化が激しく、電力マンの現場力でやっと維持できているような状況が続いています。

Photo_3北海道電力HP 

このような電力供給の薄氷の危うさが明らかになったのが、北海道地震に伴う全域停電でした。
北海道地震において特徴的なことは、約300万戸に近い広域停電が発生したことです。
日本が初めて経験する広域ブラックアウトでした。
※参考 資源エネルギー庁
日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)  


経済産業省は6日、北海道内のほぼ全世帯にあたる295万戸で起きた停電について、午後9時時点で、7日朝までに約120万戸分に相当する150万キロ・ワット規模の電力供給を確保できるとの見通しを明らかにした。
北海道電力が発電所の再稼働を進め、6日午後4時時点で、札幌市や旭川市など28市町村で約33万戸の停電が解消したとしており、その後、さらに復旧が進んでいる」(読売2018年9月7日)

https://news.nifty.com/article/economy/stock/12213-20180906-50097/

2共同より引用 

上の写真は地震の影響で停電した2018年9月6日午前の札幌市内です。中央がさっぽろテレビ塔です。 
大地震が来たから停電はあたりまえだ、なんて思わないで下さい。 
私も経験した2011年3月の東日本大震災においてすら、東電エリア全域の停電は起きませんでしたから、管内全域が一気にダウンする大規模停電がいかに異常なものかわかると思います。

「電力各社でつくる電気事業連合会も「エリア全域での停電は近年では聞いたことがない」としている」
(日経9月6日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35045160W8A900C1000000/

北海道は北電管内すべてでブラックアウト(停電)していますが、これは道内を一括して周波数管理をしている構造があるからです。
電力は「生もの」なために備蓄できません。そのために常に供給と需要を合致させておかねばならないのですが、北電は道内をワンセットでやっています。 
そのために主力の発電所が破損すると、地震とは関係のない地域まで一気に停電してしまうことになります。 
この北海道地震は165万キロワットを発電していた苫東厚真火力発電所が、たまたま震源地の近くにあったために大きく損壊し、ここの3基が停止したことで道内の半分の電力供給が奪われてしまい、一気に需給バランスが釣り合わなくなりました。
需給バランスがくずれると起きるのが、恐怖の周波数の乱れです。
これを放置すると周波数の狂った電気を送電してしまい、発電用タービンが故障し、需要側の電子機器なども破壊する恐れがあるからです。
それを防ぐために、他の無事だった発電所まで停止をかけました。 

Photo_4北海道新聞

さらに悪いことには、他の電力会社から電力融通しようにも、北海道と本州各社と結ぶ送電線が停電でダウンしてしまい、救援すら受けられない状況になってしまいました。 

これが大停電の直接の原因ですが、遠因は火力に依存する体質にあります。 
北海道電力の電源構成は、発電量ベースで原子力は44% をベースにして、火力39%、水力15%の割合でした。
電力会社は下図福島事故1年前のものですが、黄色の原子力をベース電源にして恒常的に同じ出力で発電させ、細かい出力調整は火力にまかせていました。 
しかし原子力は現在停止中ですから、今の電力構成は片方のエンジンの火力だけで飛んでいる片肺飛行のようなものなのです。

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毎日新聞

この2018年の北海道地震による全域停電が起きた時、蓮舫女史はこんなトンチキなことをツイートして失笑を買っていました。
この人、本当に馬鹿だ。

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「非常用電源に切り替わったのが問題だ」ですって、なにひとつ電力について勉強していませんね。
外部電源が停止した場合、いかに早く内部の非常用電源に切り替わるかが勝負なのです。
それが問題だと言うのですから、この人は原子力のことなど一回もまじめに考えずに脱原発を叫んでいたようです。

このベース電源の片方の原子力が奪われたことが、この2018年の大規模停電の原因です。
安定した電源を確保するのは地域経済の根幹ですから、今の時期にすべきことは、原子力を復旧させねばならなかったのにもかかわらず、札幌地裁は真逆の方向に突っ走っていったようです。
なんと愚かで無責任なことよ。

サプライチェーンの多様化が叫ばれても、なかなか進まないのには訳があります。
日本企業を呼びたい国はいくらでもあるのですが、電力供給が安定しないからです。
せめて国が作った工業団地には安定した電力供給が必須なのですが、それも不安定です。
日本が持ち込む精密加工機器は、周波数が狂っただけでオシャカの山を作り出します。
瞬間停電などやれば、致命的です。
だから電力の安定的な供給が期待できない国や地域には企業は進出できないのです。

日本では2013年以前には、大規模広域停電など起こるはずがない、と思われていました。
ところがそれが民主党政権が原子力を止めてしまった以降、現実のものとなりました。
今後、日本でも工場誘致の条件に安定的な電力供給が出てくることでしょう。
その場合、真っ先に企業が忌避するのは北海道です。
そこまで考えて札幌地裁は、生存権だの、人格権などというごたいそうな言葉を使って判決を書いたのでしょうか。 

 

 

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ロシア軍、ウクライナに侵攻…最新ニュース・速報まとめ : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

ウクライナに平和と独立を

 

 

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コメント

道民の能天気具合には、同じ道民ながら呆れるばかりです。
すでにブラックアウトは過去のことになり、もう起きないものと考えているようです。
前回のブラックアウトが起きた時期が幸運にも9月だったために死傷者は少なかったわけですが、これが逆にいけなかったのかもしれません。
道民が電力のありがたみを感じるには、冬の最中にブラックアウトして生きるか死ぬかの苦しみを味あわねばならないようです。

地方裁判官なんて、所詮は出世レースに負けた、世間に恨みしかない腐れエリートもどきの吹き溜まりですよ。

再稼働と一緒に廃炉も否定したのは、「廃炉せい」と言ったら今度は「廃炉しろと命令したこと」についての責任が生じるから。それは彼らにとっては「再稼働しても良いよ」と判決を下すことと同程度のストレスです。

「私は何一つ決めたくありません、何故なら無能で無責任な屁理屈大将に過ぎないから」というのな本音でしょう。

地方裁判は痴呆裁判。要らない人達です。

周波数や電圧の変動が極めて少ない高品質な電力があることは、有り難くも我が国の強みのひとつ、国民の安寧な暮らしの裏付けのひとつだったはずです。
それを捨ててどうする。
今後電力が高コストかつ不安定で当たり前となるならば、個人の暮らしも企業活動も、企業誘致も観光客誘致もままならないことになりますね。
「岸田に投資を」が笑われる理由はここにもあるわけですが、選挙で選ばれてもいない者たちで国民の衰退と窮乏化を是と決めてしまうのは、より問題です。
理想の高いご老人方を大事に思わないわけではありませんが、より長く先の人生を生き抜かなければならない国民を蔑ろにするのも大概にしておかないと。
いや、誰もが平等に、かつて享受できたものを諦めて我慢の末に衰退して、貧しく暮らしながら死に絶えていこうというコンセンサスが職業年齢立場を横断縦断して存在するならば仕方ありませんが、そんなわけないでしょう?
走りながら治療する考え方は、そんなにいけないことなんでしょうかねぇ。

原発が稼働してなかったらノーコスト、ノーリスクだと勘違いしている人が多すぎるんですよね。
待機状態を維持するエネルギーや人的コストは稼働状態とほぼ変わりませんし、テロのリスクにおいては稼働とは全く関係ありません。
維持するなら使わないと丸損なのに使わない、原発の稼働リスクと電力不足が発生するリスクとどちらが可能性が高いかを情報発信すれば現実的な判断も容易に出来るのですが政府もメディアもそれもやらない。

活動家の生存戦略や地裁の日和見判決につけ込まれるような土壌を作ってしまっている政府&経産省も同罪だと思いますが、岸田総理はリスクを取らない事が支持率UPの必勝法だと学んでしまったので積極的に動く事は一切しないでしょうね。
権力の監視者と自称しているメディアがこの仕事放棄に対してなんの批判もしない(批判する能力すらない)のが一番の癌なのかもしれません。

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