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2022年6月11日 (土)

メルケル外交敗北の弁明

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アンゲラ・メルケル・ドイツ前首相が、ウクライナ侵攻が始まってから初めてインタビューに登場しました。
たぶんメルケルの100日にわたる沈黙は、彼女の中での苦しさを表していると思われます。
彼女の首相時代の16年間とは、そのままロシアへの融和策であり、それが遠因となってプーチンをウクライナ侵攻に踏み込ませたことは疑い得ないからです。

ウクライナ政府は、メルケルへの強い憤りを隠そうともしませんでした。

「ロシア軍がウクライナ侵攻した直後(2022年2月24日)、駐独ウクライナ大使館のアンドリーイ・メルニック大使が、「ゲアハルト・シュレーダー元独首相(首相在任1998年10月~2005年11月)とメルケル氏の手には血がついている」と指摘し、2人の政治家はウクライナやバルト3国(エストニア、リトアニア、ラトビア)の強い反対にもかかわらず、ドイツとロシア間で天然ガスのパイプライン建設「ノルド・ストリーム2」プロジェクトを推進した張本人だと批判した時だ。
メルケル氏は、「当時の情勢ではその決定は間違いではなかった」と弁明している」
(「ウィーン発コンフィデンシャル」6月4日)
メルケル前首相が沈黙する理由 : ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.jp)

ここでウクライナが強く非難しているノルドストリーム2こそ、プーチンがウクライナ侵攻に踏み切ってもEUが結束できないと考えた最大の理由でした。
ドイツ以下のEU各国は、ウクライナやバルト3国の強い反対にも関わらず、自国のエネルギー源の過半をロシアに委ねてしまうという大失敗を演じましたが、この推進役こそメルケルです。

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メルケル氏に花束贈るプーチン氏 最後の会談も平行線に:朝日新聞デジタル (asahi.com)

では、メルケルはプーチンの何を信じていたのでしょうか。
それは「理性」です。
メルケルはプーチンの合理的理性を信用していたが故に、両国間見直しの最大の機会だった2014年のクリミア侵攻に際しても、見直そうとはしませんでした。

「プーチン大統領がクリミア半島を併合した段階でメルケル氏はプーチン氏の本質に気がつくべきだった。メルケル氏の最側近の1人、内相を長い間務めたトーマス・デメジエール氏は、「プーチンという男の攻撃性を見誤った」と認めている」
(「ウィーン発」 前掲)

ここでメルケルの最側近が苦々しげに口にする「プーチンという男の攻撃性」という言葉は、今回のメルケルのインタビューにおいても彼女自身の口から漏れています。

「メルケル氏はロシアへの融和政策を弁明し、ミンスク合意を例に挙げて、「その合意がなければ状況はさらに悪化していたかもしれない。外交が成果をもたらさなかったとして、その外交が間違いだったとは言えない」と述べ、「ロシアとの取引でナイーブではなかった。
貿易、経済関係を深めることでプーチン氏が変わるとは決して信じていなかった」と弁明。
プーチン氏がその後、戦争に走ったことに対し、「言い訳のできない、国際法に違反する残忍な攻撃で、如何なる弁解も許されない。ロシアに対して軍事的抑止力の強化が重要だ。軍事力がプーチン氏が理解できる唯一の言語だからだ」と説明している」
(「ウィーン発」6月9日)
メルケル前首相が語った「プーチン像」 : ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.jp)

メルケルは、プーチンという男が残忍で攻撃性があることを見抜けなかった、しかし融和策自体の外交的努力は無駄ではなかったと弁明しています。

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ミンスク合意」とは?ウクライナ東部めぐる停戦プロセス。3つの

しかし現実にはミンスク合意の構造的欺瞞が生んだものこそ、ドのンバス・ルハンシクの東部2州で、ロシアの傀儡武装集団に「特別な地位」を与えてしまったことです。
そして今回の侵攻では、この2州の「ネオナチからの解放」がウクライナ侵攻の口実に利用されました。

ミンスク合意は12項目から成り、欧州安保協力機構(OSCE)による停戦監視や、分離派が支配する地域への「暫定的な特別地位の付与」、地方選挙の実施、当事者の恩赦などが含まれていました。

「状況をさらに困難にしているのは、ミンスク合意がウクライナの憲法を改正し、ドンバス(ドネツク、ルガンスク両州)に特別な地位を与えることを規定している点だ。
しかも、親ロシア派が実効支配する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」の指導者らとの「協議・合意により」行う必要があるとしている。また最も大きな争点とみられるのは、特別な地位を付与する地域の範囲が定まっていないことだ。分離派指導者はドネツク、ルガンスク両州の全域が含まれるべきだと主張。ウクライナ政府は現在も両州の半分余りの地域を管轄下に置いているが、それを手放すことになる」
(ブルームバーク2022年2月19日)

実態が明らかではない特定の外国の影響下にある武装集団に「特別な地位を与え」、しかもその指導者たちと「協議」して合意せよというのですから、メルケルがいうように「この合意がなければさらに悪化」したどころか、この合意が悪化した状況を固定化させたのです。
この正体不明の二つの「人民共和国」と東部2州の境界も確定しておらず、これが後に武装衝突の原因となりました。

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プーチンが繰り出すヤバい奇策「ロシア軍を使わずウクライナ制圧

「ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の一部を実効支配する親露派武装勢力「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」(ともに自称)を国家承認する大統領令に署名した。署名直後にはロシアと両「共和国」間の協力を定める協定も締結。両地域に軍を派遣し平和維持に当たるよう国防省に命じた。2014年のウクライナ南部クリミア半島併合に続く一方的な「現状変更」であり、ロシアと米欧の対立が先鋭化するのは確実だ」
(産経2022年2月22日)
プーチン大統領がウクライナ親露派を国家承認 派兵命令も - 産経ニュース (sankei.com)

メルケル外交が、ウクライナに戦争の災厄の種を蒔いたのです。
融和外交こそが、プーチンの「言い訳のできない、国際法に違反する残忍な攻撃性」を引き出したのですが、今に至ってもこの因果関係がこの賢明な女性の中では落ちていないようです。
「軍事力がプーチン氏が理解できる唯一の言語」だったにもかかわらず、メルケルは逆の道にを選択してしまったのです。

では、なぜでしょうか。
たぶんメルケルには、リベラル派特有の理性崇拝があるからです。
リベラル派の人々は、万人が等しく理性を持つことを前提にしています。
人類すべてが知性と良心を兼ね備えており、それを否定することを「差別」だと見なしています。

社会一般でも、リベラル派は常軌を逸した行為に対して、大人の対応で接するようにと訓戒を垂れます。
仮に家族が暴漢によって襲われることがあっても、差し出すものがあればさっさと差し出し、妻子には逃げることをさせよと説きます。
そして暴漢から殴打されようと、殺されようともその暴力を耐え忍べと、言うことでしょう。

個人が理想を貫いて死ぬのは勝手ですが、これを国家単位に敷衍したものが、リベラル派の外交観です。
たとえば、このウクライナ侵攻でもさんざん聞かされましたね。
前ふりでロシアを批判してみせた後に、ある者はしたり顔で「国家は国民を逃がすのが任務である」と言ってみたり、共産党などは「9条外交で解決しろ」と主張しています。
どうやら彼らは侵略に抵抗せずに逃げろ、もしくは死ねということのようです。

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「鳴りやまない銃声」を食い止めろ! 米国で繰り広げられる、銃乱

では、銃や軍隊を廃絶することによって、国民や国家の安全は保障されるのでしょうか。
残念ながら不可能であるばかりか、そのような態度こそが新しい紛争の原因を作り出していきます。
現実の世界においては、暴力が存在し、それを行使することになんの良心の痛みも覚えない国と指導者が跋扈しているからです。

彼らは、戦略的合理性から侵略行為を起こすのではなく、独りよがりの怒りと残忍性から軍隊を動かします。
彼らは追い込まれて戦争をするのではなく、むしろ戦争こそが自分の専制権力を永遠化するとかんがえるからです。

リベラルの人々が銃規制をいかに叫ぼうと、現実に自動小銃を学校で生徒に向けて連射するような狂人が後を絶たない以上、米国民の多くは、むしろ銃器店に駆け込み自家用拳銃を買うことがあっても、銃規制に賛成することはないのです。
規制すれば、銃売買は地下に潜るだけのことです。

プーチンの理性を信じたメルケルは、この男の持つきわめつきの残忍性と暴力主義を見ようとはしませんでした。
これがメルケルの眼を曇らせたのです。

国際政治は戦略、地政学だなどといっても、結局人間が作り出すものにすぎません。
ウクライナ戦争が非合理的なプーチンの狂気から始まり、ゼレンスキーがキーウを包囲されながら言った「私はキーウから逃げない」というひとことがすべてを変えました。
仮にゼレンスキーがアフガニスタン大統領のように後ろも見ずに逃げていたら、キーウは陥落し、今頃はミンスク合意3でも締結されてウクライナは属国に転落していたはずです。

今に至ってメルケルは正しい判断をしています。

「如何なる弁解も許されない。ロシアに対して軍事的抑止力の強化が重要だ。軍事力がプーチン氏が理解できる唯一の言語だからだ」
(「ウィーン発」前掲)

この判断をメルケルは2014年に持つべきでした。
プーチンのような政治的狂人に通じる言語はひとつしかありません。

軍事力を正しく使うことです。
それは侵略者を追い出し、ウクライナの人々を守るために使うことです。

そして力によって理解させ、交渉のテーブルにつかせねばなりません。
そこから外交の出番が始まるのです。

それにしても、メルケルや安倍レベルの手練ですらだまされたプーチンに、「外交力で対処する」ですか、笑わせないで下さい。

 

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ロシア軍、ウクライナ東部で激しい砲撃 物資配給所で民間人4人死亡|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

ウクライナに平和と独立を

 

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コメント

アンゲラ婆さんやっと出てきましたね。
そりゃそうだよアンタが悪い!
東ドイツ出身のインテリさんですから。日本には冷淡で中国にも随分と利益計算で肩入れしてましたしね。
で、財政は再建させたけどドイツの軍備はボロボロ。あの戦車大国が今では稼働してるレオパルドⅡが60両程度。ほとんど輸出用しか作らず。
空軍はもっと悲惨。旧式化したトーネードは整備されずに殆ど飛べず、ユーロファイターもアップグレードされていない。
シュレーダーに至ってはロシアが開戦直前にガス屋の社長に迎えると言ってたくらいだし。

また、英国のボリス同様に「ウクライナ情勢急変」のお陰で直前までロシアと仲介しようと走り回った(意味無かったけど)フランスのマクロンの首が繋がったけど···国民議会総選挙でどうなるやら。「ロシアを追い詰めすぎるな」的な発言が出てるし。とはいっても極右のルペンはむしろロシアと仲良くして安いエネルギー買って生活を守れ!ですからね。ヨーロッパでネオナチと言ったら極右政党のはずなのに、ウクライナだけネオナチ扱いされて実際に侵略されている訳ですからなんとも。

で、ドイツは現政権になってもしばらくはウクライナ支援を渋りまくってたし、フランスと一緒に「ミンスク合意」というウクライナにとって屈辱的なことを8年前に取りまとめてますから。
ウクライナからしたら「ふざけんなテメェら!」となるでしょう。

と、プーチンは自らピョートル大帝を持ち出してきて「領土奪還」と言っちゃいましたね。あーあ、バルト三国やポーランドにスウェーデンとフィンランドはオレのモノ宣言ですよ!

かつてのメルケルさんの方針では、「互いの経済関係の拡大、その結びつきこそが戦争を防止する」という不文律がありました。
こういう頭で都合よく拵えたリベラルの論理は逆利用され、のっぴきならない状態に至っているのが現在地。

ですが、20年遅れて我が国の立憲共産党泉代表は、参院選前の今まさに同じことを言ってるのですね。ったく、アホウとしか言いようがありません。

これまでにないやり方を試みて思惑通りに進まなかった
ここまではまだアリだと思っています。
間違いや失敗を認めずに持論を変えられない、私も騙された側だと被害者側に回ろうとする、主張してた事を無かった事にして別の話題をはじめる方々これは完全にNGです。

メルケルさんに関しては自分が蒔いた種の落とし前をどうつけるのか次第で、後世に語り継がれる愚か者となるかが決まるのでしょうが、今の被害者意識まんまんの姿勢では汚名返上は無理そうですね。

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