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2022年6月 2日 (木)

ぬるい日向水のようなバイデンIPEF

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バイデンが残していったお土産には、開けてみるとなにも入っていない箱が混ざっていました。
それがIPEF(Indo-Pacific Economic Framework ・インド太平洋経済枠組み)です。
これがなんなのか、誰にもさっぱりわーらん。

初めはかつてトランプが足蹴にしたTPPの代替なのかと思いましたが、まったく違うようです。
だってそもそも「経済枠組み」といっても、ここで貿易交渉の話をしようというフレームじゃないからです。
では、なんなのかといえば謎なんですね。
あえて言うなら、学校の「今週の目標」みたいなもんです。

TPPの時は、トランプからヒドイめに合いました。
かつてのオバマ時代には旗振りのひとつだった米国が、いきなり脱退をかますんですから。
それも交渉が9割方出来上がっていたのに、後ろ足で砂をかけたのですから、たまげました。
それを真面目な日本が、わがままを言いまくる11カ国をまとめ上げてゴールしたわけです(泣く)。

で、オバマの副大統領だったバイデンに替わればTPP復帰するのかとおもいきや、その気配はさらさらなく、おもむろに、というか思いつきで出してきたのがこのIPEFでした。
米語読みでアイペッフという気抜けする読み方をするようですが、内容もペフっとしたぬるい日向水のようなものです。

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米バイデン政権 IPEF立ち上げに向け協議開始発表 13か国参加へ | NHK | 米 バイデン大統領

「声明では、IPEFについて「各国の強じんさや経済成長を発展させるものだ」と位置づけ、「インド太平洋地域の協力や繁栄、平和に貢献する」などと目的を強調しています。
そして、4つの柱に焦点を当てるとして、
▽デジタルを含む貿易、
▽サプライチェーン=供給網、
▽クリーンエネルギー・脱炭素、インフラ、
▽税制・汚職対策を挙げ、
それぞれについて高い基準を設けていくなどとしています。
IPEFは、この地域で影響力を強める中国への対抗を念頭にバイデン政権が構想し、復帰に否定的なTPP=環太平洋パートナーシップ協定に代わる経済連携と位置づけています。
一方、IPEFは関税の引き下げなどを対象にしないため、メリットが少ないとみる国もあり、参加する国がどこまで広がりを見せるかが焦点になっていました」
(NHK5月23日) 

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バイデン氏、IPEF「インド太平洋の経済戦略」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

4カ国首脳を集めたザ・クアッドをやった日本でバイデンが発表しているところを見ると、もちろんザ・クアッドの経済的枠組みであることを強調したかったのと、日本にうまく取り持ってもらえないかという下心が見え見えです。
昨日触れた南太平洋島しょ国でもそうですが、東南アジア諸国やインドも米国の上から目線は嫌いだが、かといって中国はマジで恐ろしい、というどっちつかずの立場です。

だから、ロシア制裁でもこれらの諸国は、揃ってどっちつかずのあいまい路線を貫きました。
そういう国々の気分を一番理解せねばならない立場にいるのが、他ならぬうちの国なのです。
これらの「どっちつかずの国々」を中国の従属化させることなく、自由主義陣営の枠組みに参加させるのが我が国の役割です。

これらの「どっちつかずの国々」は、新冷戦が始まったという認識が甘いのです。
ウクライナ戦争で明確になったのは、まがうことなく第2次冷戦の開始でした。
好むと好まざるとにかかわらず、冷戦は既に始まっており、どちらの側に与するのか、そこに中間的立場やあいまいさは許されません。

その象徴的出来事は、歴史的な中立政策を保ってきたスウエーデンとフィンランドがNATOに加盟申請したことです。
これがウクライナ戦争後のリアルな世界なのです。

反米保守論客の一部はいまだに、「ウクライナ戦争は代理戦争だ」とか「ロシアを戦争に追いやったのは米国だ」「ウクライナのネオナチを作ったのは米国だ」などと斜に構えて見ていますが、いいかげんにしていただきたい。
こういう連中は、グレンコ・アンドリー氏に言わせれば、「
ロシアのスパイか、無意識にロシアを利する役に立つ阿呆」です。
今、問われているのは、我が国の取るべきポジションを明確にすることなのですよ。

さて、話を戻します。
IPEFですが、実は記事に取り上げるのを止めようかと思ったほど、内容がありません。
貿易から汚職追放まで、思いつきでフルーツバスケットに入れて来ました、というような代物です。

そもそもこれは経済協定なのですか、それとも「みんなで守ろう今週の目標」みたいなものなのでしょうか。
その点、TPPは明確に自由貿易を前面に打ち出した環太平洋の経済連携協定づくりでした。
しかしこのIPEFは、米国民主党が好きそうな理念をズラズラと総花的に並べただけのものにすぎません。

参加国が少ないって?当然でしょう。
各国は米国市場へ、いかにスムーズに、かつ安い関税で参入できるのかしか眼が行っていないのですから。
ですから、今の当初参加国はお義理の様子見にすぎないのですよ。

では、いちおう項目別に見てゆきましょう。
ひとつめは、「公平で強靭性のある貿易」です。

「我々は、ハイ・スタンダードで、包摂的で、自由かつ公正な貿易に係るコミットメントの構築を追求し、経済活動を活性化し、持続可能で包括的な経済成長を促進し、労働者と消費者に利益をもたらす幅広い目標を推進するために、貿易・技術政策において新しく創造的なアプローチを発展するよう努める。 我々の取組は、それだけではないが、デジタル経済における協力を含む」
(内閣府訳 以下同じ)

ひどい悪文。なんのことを書いているのか、当人がわかって書いているのかしら。
「自由かつ公正な貿易」というのは、トランプが再三口酸っぱく中国を糾弾してきた、中国の知的財産権侵害や資本移動の禁止などのことを指すのでしょうね。
ならば、トランプのように中国に制裁関税をかけて締め上げるしかないわけです。
そうならそうと中国と、自由貿易を掲げて自由貿易を守る闘争をするんだ、と書けばいいのですが、後段で各国の「貿易・技術の創造的アプローチの発展」をうたい、「デジタル経済の協力」を唱えているから訳がわからなくなります。
頭の中がグチャグチャに混線している、デキの悪い学生が書いたレポートのようです。 

2つ目は、「サプライチェーンの強靭性」です。

 「我々は、より強靭で統合されたサプライチェーンとするために、サプライチェーンの透明性、多様性、安全性、及び持続可能性を向上させることにコミットする。我々は、危機対応策の調整、事業継続をより確実にするための混乱の影響へのより良い備えと影響の軽減のための協力の拡大、ロジスティックスの効率と支援の改善、主要原材料・加工材料、半導体、重要鉱物、及びクリーンエネルギー技術へのアクセスを確保するよう努める」

「多様性」とか「持続可能性」「クリーンエネルギー」などと、リベラル好みの文言が散りばめられていますが、要するに今突き当たっているコロナ以降のサプライチェーンを強靱化するということのようです。(たぶん)
では、その対策としての「よりよい備え」って、いったいなんなのでしょうか。
各国にとって、できることといったら、国外のサプライチェーンの多様化と国内生産を増やしていく以外ないでしょうに。
それだって困難を極めていて、いざとなれば売らない、あるいは余ってしまって余剰を抱え込むというリスクと裏腹です。
これを米国が音頭をとって調整して、多様性に満ちた持続可能なクリーンなサプライチェーンにする秘策を授けていただける、というならわかりますが、まさか違いますよね。

三つ目は、やはり出ました「脱炭素」と「クリーンエネルギー」。
これを入れないと、民主党左派からお許しがもらえないようです。

「パリ協定の目標及び我々の国民と労働者の生活を支援する取組に沿って、我々は、経済を脱炭素化し、気候の影響に対する強靱性を構築するために、クリーンエネルギー技術の開発と展開を加速することを計画する。
これには、技術協力の深化、譲与的融資を含む資金の動員、そして持続可能で耐久性のあるインフラの開発支援と技術協力の提供による競争力の向上と連結性の強化のための方法の模索が含まれる」

そもそも脱炭素を言いたいなら、世界の炭酸ガスの大部分をまき散らしている炭酸ガス排出大国の中国を名指ししないと無意味です。
だって、中国が世界の半分出しているんですから、ここを締めないとCO2は減らないのです。

わかりきった話ですが、なぜか中国だけはいままで「開発途上国」と自称して削減を拒んできました。
ある時は世界の覇権国、ある時は発展途上国ですからね(笑)。

日本と中国のCO2 排出量を比較してみましょう。

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杉山大志氏による

「上図で2020年の数値はWRIの最新情報に基づくもの。CO2「等」としているのは、CO2にメタン等を加えた温室効果ガス全体の意味である。
中国の排出量は2020年に124億トンだったものが2025年には136億トンになる。この増分は12.4億トンで、日本の現在の年間排出量である11.9億トンよりも多い」(杉山大志2021年3月21日) 

次にCO2 年間排出量を世界各国を合わせた量と比較します。単位は億トンです。

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上図の縦軸は年間のCO2排出量で単位は100万トン。左が中国、右は先進国(G7である米国、英国、カナダ、日フランス、ドイツ、イタリア、日本、およびその他のEU)です。
おそらくこの中国の伸びからみれば、2021年には追い抜いているはずです。

わ、はは、もう笑っちゃうでしょう。
世界全部の国の炭酸ガス排出量と中国の排出量はイコールなのですぜ。
しかも今後5年の中国の増加量だけで、日本の年間排出量に匹敵します。
つまり中国の炭酸ガス排出をなんとかしなければ、地球温暖化阻止もクソもないわけです。
やっとこのことに世界も気がついて、スウエーデンの環境少女が中国も批判するようになったのです。

この世界の炭酸ガス排出の最大の元凶を問題視することなく、「クリーンエネルギー技術の開発と展開を加速」を言うなら、脱炭素対策の小道具を世界でもっとも熱心に揃えている、中国を称賛することと同じです。
小は太陽光パネル、中は電気自動車から大は第3世代原発までなんでもござれ。

たとえばすでに中国は、電気自動車の保有台数と生産台数で世界トップを誇っています。

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【データから読み解く】世界各国のEV販売台数・保有台数と成長性|オンラインMBAなら『ビジネス・ブレークスルー大学大学院』 (ohmae.ac.jp)

「世界のEV保有台数(乗用車)を見てみます。世界全体では、2010年で1.7万台でしたが、そこから増加トレンドが徐々に加速し、20年には1020万台と1000万台を超える規模となりました。国・地域別のEV保有台数を見ると、20年時点では中国が最も多く451万台となっています。次いで欧州(316万台)、米国(178万台)と続きます。
EV保有台数で見ると、やはり人口規模の大きい中国がトップに来ることが分かります。
将来のEV保有台数はどの位の規模になっているか見てみます。ここでは乗用車に加え、バス、トラック、バン等を含めた保有台数の予測を見てみます。世界全体では、20年時点では約1460万台ですが、25年に5172万台、30年に約1億4500万台になると予想されています。2020年からの10年間で10倍近く増えることになります。
国・地域別で見ると、2030年時点では、中国が最も多く約5600万台、次いで欧州(約4200万台)、米国(約1600万台)、インド(約900万台)と続きます」
(『【データから読み解く】世界各国のEV販売台数・保有台数と成長性』)

ついでに再生可能エネルギーの世界シェアを見てみます。

「2019年の出荷量のシェアを国別に見てみると、1位は、中国で全世界出荷量の63%を占めた。2位はマレーシアだが、かなり距離を空けて、シェアは約20%だった」
(メガソーラービジネス)

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2019年の世界太陽電池市場、シェアトップ5社は? - 特集 - メガソーラービジネス : 日経BP (nikkeibp.co.jp)

このように中国は21世紀のビジネス・トレンドが、クリーンエネルギーにあると判断し、それを国策化し、世界トップの座を確保しました。
したがって、クリーンエネルギーに固執すればするほど、中国に強く依存することになります。
わかっていますか。、東京都の太陽光パネル義務化などと言っている小池さん。

ですから、中国に炭酸ガス排出問題を問わないでただ脱炭素化を唱えてしまっては、メイド・イン・チャイナの電気自動車と太陽光パネルをもっと買おうと言うに等しいのです。
自由主義陣営の貿易ルールを作ろうと言うのに(たぶん)、中国依存を強めてどうします。

最後の4つ目は、「反腐敗」ですが、ここでもまた習近平がやったことと言葉まで一緒ですか、と言いたくなります。

「我々は、インド太平洋地域における租税回避及び腐敗を抑制するために、既存の多国間の義務、基準、及び協定に沿った、効果的で強固な税制、マネーローンダリング防止、及び贈収賄防止制度を制定し、施行することにより、公正な経済を促進することにコミットする。これには、説明可能かつ透明性のある制度を促進するための知見の共有や能力構築支援等を模索することが含まれる」

租税回避を言うなら、まずはバイデンは自分の国のGAFAの大仕掛けの租税回避こそ問題にしたらどうなのです。
魁より始めよ、ですぞ、バイデン閣下。

このようにどれを見ても総論賛成・各論なにひとつ具体的に決まらず、になるのが見えています。
いや今はただのフレームだけだからと言うなら、各論に落とししてから空中分解するか、自然消滅するに決まっています。
だって、関税交渉なき経済圏構想なんてありえませんからね。
米国は、つまらないゴタクを並べていないで、さっさとTPPに復帰しなさい。

 

 

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ウクライナ全土で国旗掲げ「団結の日」、ロシアに対抗…「国民の気持ちは一つ」 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

ウクライナに平和と独立を

 

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コメント

 電気自動車の普及なんて考えるだけでも怖いですね。私の住んでるような雪国、寒冷地でそれをやったら「車輪付き棺桶」になってしまいます。
 そこまで考えて設計されてるのでしょうか。

TPPのハードルをクリアできない太平洋諸国をこの緩いルールのIPEFでくるむ、という使い方なら、できそうです。
小国が中国の恫喝めいた過剰なお世話投資から逃れる都合の良い口実が、今全くないので。
どっちつかずの国をこっちに引き寄せてくる実務担当が日本なら、2年後に変わるやもしれない社長にあんまりガッチリ大枠をはめられてもなあと。
一応フィジーが乗ってくれましたね。
ゆるゆるの目標の1番目にある
▽デジタルを含む貿易
をキモに、後はチャイナをはじくための理由付けとしてぶら下げているように私には見えます。育っていくなら、行先はTPPとは全く違う道なのでは。
即効性が全くない一手ですが、web3年初ですし、ここに一個石を置いておくのも有りと考えます。

中国への経済的な対峙もふにゃふにゃ、ウクライナへの長距離砲支援もふにゃふにゃ。

ウクライナへの軍事支援は日本はどうしようも無いので、せめて経済的な枠組みでペフペフなアメリカの尻拭いをするしかないんですかね。

これによって将来的にRCEPの存在感がより希薄になればいいな〜
たぶん無理だろうけど…

程度の認識で今のところ見ています

 現時点で曖昧さは否めませんが、中共の反発はかなりのものです。
従来の関税やWTO、GATTなどの建付けとは違い、最初から中国を除外するための経済連携である事が重要な点でしょう。
今後、これを提携国間でどう発展させるかです。

なお、中国と経済対立する事を好まないニュージーランドのアーダーン首相はさっそく、「アメリカはTPPに回避せよ」と言いましたが、TPPとは全く性質が違う事を理解して言ったのだと思います。

アメリカはIPEFで台湾にお声掛けをしなかったので、合衆国にとっても我が国にとっても、台湾が担うテクノロジー製品等の貿易をおさえなくて大丈夫なのかしらと思っていたら、やっぱり合衆国政府は個別に台湾と協議するようです。
https://jp.wsj.com/articles/u-s-launches-initiatives-to-boost-economic-ties-with-taiwan-11654103299
WSJの記事によれば、こちらもまた関税の話は無いようですが、ぬるいIPEFと違って重要ターゲットに焦点を当てた具体的な内容が話し合われるようです。
半導体等での危機感を考えれば当然、合衆国にとっての肝はこちらでしょうかね。(こういうところは我が国もいっちょかみできた方が宜しかろうとも思いますが)
とまれ、中共にも忖度しておきたい国々をもユルさを以て囲い込むと同時に、台湾をがっちり掴みにいくわけで、バイデン政権が中共の反発を買いに行く気満々なことは確かなようです。

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