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2022年6月 3日 (金)

ウクライナ軍、ゼベロドネツクの罠にかからず

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米国のISW(戦争研究所)が大変に面白い最新レポートをアップしています。
ロシアの攻撃キャンペーン評価、|5月31日戦争研究所 (understandingwar.org)
いつもながらアングロサクソンの、戦争という現象に対しての冷徹な眼に感嘆します。
彼らは情に流されず、膨大な情報からリアルな戦争という病を外科医のような冷静さで取り出し、プレパラートに乗せて私たちに見せてくれます。
今回のウクライナにおけるロシアの虐殺に対しても、こうそっけなく答えています。

ロシアの戦争犯罪について詳細に報道しないのは、これらの活動が欧米マスコミで十分に報道されており、我々が評価し予測している軍事作戦に直接影響しないからだ。
我々は、これらの犯罪行為がウクライナの軍隊及び国民、特にウクライナの都市部における戦闘に及ぼす影響について、引き続き評価し、報告する。我々は、これらのロシアの武力紛争法、ジュネーブ諸条約及び人道に対するこれらの違反を、これらの報告書に記載していなくても、完全に非難する。
(ISW 5月30日 以下同じ)

日本のメディアのように、特派員のそばに砲弾が落ちたと言っては泣き叫ばんばかりのレポートを送ってくるヤワな精神ではないのです。

さて、東部戦線に戦力を集中したロシア軍と、それを迎え撃つウクライナ軍の戦闘の行方を追ってみましょう。
現在、ロシア軍の概況は以下です。
攻防の天王山はセベロドネツクです。ここは軍事的に特に価値のない都市でしたが、ロシア軍がウクライナ軍を包囲殲滅するためのいわば罠として使ったことから、一気に攻防の焦点となりました。

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ISW 5月31日の戦況図

セベロドネツクが罠だと察知していたウクライナ軍は、あえてここの街の防衛にこだわることなく、いち早く撤退をしました。
ロシア軍の目的がウクライナ軍主力の殲滅である以上、退路と補給路が確保されているうちに、いち早く動かねばならなかったのです。

「ウクライナ指導部は、プーチンの誤った優先順位付けに見合うことを賢明に避けたようだ。 ウクライナはセベロドネツクの防衛にもっと多くの予備軍と資源を投入することができたはずであり、そうしなかったことは批判を浴びている。
ウクライナ軍は現在、最後まで戦うのではなく、セベロドネツクから撤退しているようで、ロシア軍が本格的な攻撃を開始した後、比較的迅速に市内に侵入することを可能にした要因である」
(ISW前掲)

ISWはこのウクライナ軍の判断を、「撤退するという決定は、戦略的には健全であったが、痛みを伴うものだった」と評しています。
ロシア軍はセベロドネツク市内のほとんどを支配することに成功し、市内で戦闘は続いているもののウクライナ軍の大半はリシチャンシクに後退しました。
実際に、日本のメディアにも、マウリポリに続くセヴェロドネツク陥落、ウクライナ打撃、と伝え、退却するウクライナ軍と印象づけた報道したところも多かったようです。
ウクライナが狙っていたのは、より戦略的重要性が高いヘルソンの奪還でした。

「セヴェロドネツクとドンバスの掌握に対するモスクワの集中は、ウクライナの反撃が続いているウクライナの重要なヘルソン州で、ロシアにとって一般的に脆弱性を生み出し続けている。
 ヘルソンは、ロシア軍がドニプロ川西岸に地盤を固めているウクライナで唯一の地域であるため、重要な地形である。
もしロシアが、戦闘が止まった時にヘルソンに強力な拠点を維持できれば、ロシアは将来の侵略を開始するための非常に強い立場にあるだろう」
(ISW前掲)

ヘルソンはドニエプロ川以西の地域で、ロシア軍が唯一占領している拠点です。
ここを抑えられたまま、戦線が膠着してしまうと、ロシアは随時そこから侵略の触手を延ばすことが可能です。
逆に、ロシア軍がヘルソンを失陥すると、クリミア半島からハリキウまで伸びる全長1000キロにも及ぶ長大な戦線が分断され、クリミアは孤立します。
仮に、将来、ここで戦線が膠着した場合、クリミアには水もなければ食料も届かないロシアの孤島となってしまいます。
ですから、ヘルソンの奪還は大変に重要な意味を持ちます。

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ロシア、占領地で支配固め 南部ヘルソンは併合「要請」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「ハルキウ州のゾーロチウから北西に進んだウクライナ軍はウディの奪還に成功、ハルキウ周辺のロシア軍支配地域は以前よりも大分縮小しているが、今だに自走砲やMLRSでハルキウを狙える地域を確保しているため都市は連日攻撃を受けている。
一方、もしウクライナがヘルソンを奪還すれば、ウクライナは将来のロシアの攻撃から身を守るための、はるかに強力な立場に立つだろう。

この戦略的計算は、原則として、ロシアがヘルソンを保持するのに十分な戦闘力を割り当てることにつながるはずだ」
(ISW 前掲)

本来プーチンはこのヘルソンの重要性に気がつき、ここにこそ軍事力を集中させるべきだったにもかかわらず、政治的勝利を求めてセベロドネツクなどというなんの戦略的重要性がない地点に軍を集中させてしまう下策を選択してしまいました。

「その代わりに、プーチンは大部分が象徴的な利益をもたらすウクライナ東部の地域を占領するために、絶望的で血なまぐさい圧力で今かき集めることができるすべての力と資源を集中させることを選んだ。
ヘルソンでのウクライナの反撃が引き続き成功していることは、ウクライナの司令官たちがこれらの現実を認識し、プーチンの決定が作り出した脆弱性を利用していることを示している」
(ISW前掲)

ロシア軍の最大の弱みは、実はISWも指摘するとおり「プーチンの決定の脆弱性」にあります。
この男は、かつての福島事故時のイラカンよろしく、現場指揮にまでクチバシをつっこんでは混乱させました。
戦略は言うまでもなく、部隊配置や戦術にまで介入し、キーウ攻略など軍部は考えていなかったのを押しつけたとも言われています。
どう見てもプロが作ったとは思えないハチャメチャな戦略ですから、さもありなんではあります。

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プーチン大統領周辺に〝異変〟 相次ぐ側近離脱に暴走の危険 「その後に待つのは毒殺や銃殺では…」専門家(1/2ページ) - zakzak

米国の軍事筋は、ロシア軍は首都キーウでの敗北と同じように、指揮がバラバラで統制がとれておらず、航空優勢もとれていないのに装甲部隊を進出させては潰されるという轍を踏んだと見ているようです。

「米政府の関係者は「2週間ほどドボルニコフ上級大将は姿を見せておらず、現在も彼が総司令官の地位にあるのか分からない」と明かしており、国防当局者は「バラバラだった航空戦力と地上戦力の意思疎通を図り、各方面の作戦に協調性をもたらそうとドボルニコフ上級大将は取り組んだが、クレムリンは作戦の進捗を急かして再編途中だった部隊の投入を指示、空軍はウクライナ空域に侵入するのを拒否して国境付近でミサイルを発射して直ぐに帰投する」と指摘。
軍事アナリストも「ロシア軍の指揮体系には根深い欠陥(下士官に作戦の欠陥を指摘したり作戦を調整を行う権限ない)が存在し、ドボルニコフ上級大将をもってしても2週間程度でこの欠陥を修正するのは無理だ」と述べ、欧州連合軍最高司令官を務めたブリードラブ元大将は「ウクライナ軍がハルキウ州東部でロシア軍の補給路遮断に成功すればイジューム方面のロシア軍はキーウ方面の戦いと同じ状況に陥るだろう」と指摘しているのが興味深い」(ニューヨークタイムス5月31日)
ロシア軍はウクライナ東部で過ちを繰り返している、と米国は言う - ニューヨークタイムズ (nytimes.com)

一方、ウクライナは6月に総反撃といっていましたが、その時期は早まりそうです。

ところでISWはもうひとつのホントかよ、というような情報を書いています。
言っているのがクールこのうえもないISWで、すべてに根拠となる資料も提示していますから、情報の信頼性は高いかもしれません。
なんとロシア国内に抵抗運動が発生し、徴兵センターを焼き討ちしたというのです。

「ロシア国民は5月下旬、おそらく秘密の動員に抗議して、ロシア軍の徴兵センターに対する一連の攻撃を続けた。 
ロシアのテレグラムチャンネBazaは、ロシア連邦保安局が5月21日にウラル山脈のウドムルト共和国の軍事募集センターに対するモロトフカクテル攻撃で、モスクワの元芸術家で野党の人物、イリヤ・ファーバーを逮捕したと報じた。
ロシアの裁判所は以前、贈収賄事件でファーバーに8年の懲役刑を宣告していた。この事件はロシアの野党指導者からファーバーの多大な支持を得た。ファーバーは5月30日に法廷で放火を犯したことを認めた。
Bazaはまた、5月28日と5月31日にそれぞれシンフェロポリとトゥーラ州の募集センターにさらに2つの攻撃があったと報じた」
(ISW前掲)

米国は、かつてのベトナム戦争において、国内に強い厭戦の空気を生み出しました。
そのことが米国が徴兵制を止める一つの原因になったのですが、志願制のプロの軍隊となってからのイラク・アフガン戦争もでも似たようなやりきれなさを社会に蔓延させました。
それは、徴兵制と不本意に召還された予備役兵に大きく依存しているロシアでは、さらに顕著になりこの憤りは士気と戦う意志、そして兵役に拒否費の傾向をうみだすだろうとしています。

またISWによれば、ロシア軍は深刻な装甲車両の不足をきたしているようです。

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ロシア軍損害状況(5月31日現在)
在日ウクライナ大使館(@UKRinJPN)

なんとベラルー軍の装備を勝手に持ち出しているとISWは述べています。

「ロシア軍は、ウクライナでの大規模な物質的損失を補うために、ベラルーシの装備備蓄を搾取しようとしている可能性が高い。 ウクライナ参謀本部は5月31日、ベラルーシ軍が戦闘損失を補充するため、戦車と歩兵戦闘車両をベラルーシの貯蔵施設からロシアに移動させていると報告した。
この報告書は、ロシア軍が自国の予備軍をほとんど使い果たしたという以前の報告を裏付けており、クレムリンがベラルーシの装備を使用するためにベラルーシに対する影響力を依然として活用していることを示している」
(ISW前掲)

なるほどね。ベラルーシやカザフスタン、果ては北朝鮮にまで戦車を寄こせと言っている話はほんとうだったのかもしれません。
なお、米国がMLRS(多連装ロケットシステム)を供与することにしたそうです。
これについては別記事とします。

 

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ウクライナ、W杯出場へあと1勝…スコットランドに3―1で勝利 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

「DFジンチェンコ(マンチェスター・シティー)は「われわれの夢はただ一つ、戦争が終わること。そしてサッカーではW杯に行くこと」
ジンチェンコが会見で涙 サッカーW杯予選臨むウクライナ|秋田魁新報電子版 (sakigake.jp)


ウクライナに平和と独立を

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コメント

半包囲された時点で撤退が吉。戦略的は留まる理由が無い。市民を残して去るのは辛すぎますけど。「一歩も引かずに最後まで戦う!」とか言ってると、マリウポリの二の舞になります。
ここは迅速に引いて少しでも多くの戦力を長期戦に備えて温存·再編成すべき時期です。
どのくらい無事に脱出できるやら。

そういえばせっかくドンバス攻略の総司令官(それまでいなかった!)として遣わされたはずのドボルニコフ上級大将の動向が全く報じられませんね。まさか既に更迭されたのかと。

ロシア各地での徴兵所への火炎瓶攻撃は少なくとも12箇所確認。実際にはずっと多いかと。

ヘルソンでは先週あたりにはロシアによる「住民投票」が準備されていると報じられましたが、まだやってないようで。あそこならウクライナのミサイルでもオデッサ近辺から十分に届きますね。
MLRS·HiMARSがアメリカからたくさん届けば戦況が一気に変わる可能性があります。それが分かっているからロシアは過敏に反応しているな、と。

ヒトラーと言い軍事の素人が軍の戦略に介入して仕切りたがると碌なことがありませんねほんと

自由主義陣営と独裁主義陣営の違いは、「過去の過ちに真摯に向き合って、適切な方針転換ができるか否か」なんだろうな、としみじみ思いました

 プーチンとすれば、セベロドネツクで包囲戦をやって、主力部隊を潰してから有利に停戦合意に持ち込む腹づもりだったと思います。
なんだかドイツやフランス・イタリアはこれに平仄を合わせているように見え、英・米東欧諸国との認識に差が出ているようです。
米のMLRS·HiMARSがウクライナ側に補給される事も想定外だったようで、自らトルコにおもむかねばならない局面に至ったのだと考えます。

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