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習近平のゼロコロナ政策は、どえらく高いものにつきました。
感染はいつまでたっても終息せず、北京へと飛び火し、しかも上海を危うくダメにしかかるまでロックダウンをしておきながら、いまだ終息にはほど遠い状況のようです。
中国は、武漢での発生を強力なロックダウンで封じ込めたので、これこそが唯一無二のコロナ制圧の方法だと思ったようです。
時系列で追ってみます。
感染初期の2020年1月~2月頃を見てみます。薄い黒線が中国です。
新型コロナウイルス新規感染者数、中国以外の国・地域で中国を上回る(世界、中国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)
その頃の重慶は、病院は阿鼻叫喚で患者がひしめき、溢れ出た感染者が臨時の掘っ建て医療施設に収容されていました。
そして街は厳重な戒厳令もどきのロックダウンが敷かれました。
権力集中が裏目に 習近平指導部、新型肺炎の拡大で苦境:朝日新聞デジタル (asahi.com)
それが習近平が20年3月10日に重慶入りした春頃から、ピタリと拡大が止まります。
習様の霊験あらたかです。
習様が降臨されると、下グラフで山脈になっていた青線が、見事にゼロに向かって急降下していきます。あら不思議、あら不思議。
中国など北東アジア地域では「第2波」抑制が次の課題 | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ (jetro.go.jp)
指導者がくればどんな疫病でもピタリと止まる、中国ならではの風景です。
実際には、武漢市で10日の習視察に合わせて、症状の残る多数の患者が隔離を大慌てで解除し、感染検査もストップさせています。
医療放棄と隠蔽が、この習マジックのタネです。
中国で飛び交い始めた「習近平政権ピンチ」の噂 続々と表面化する習近平政権批判の動き(1/5) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)
以後、感染者はボトムを推移していると中国当局は発表してきました。
下グラフの底辺に見える黒線が中国です。
中国は、早々と世界最初のコロナ制圧国を宣言しました。
武漢ラボで怪しげな実験して、新型コロナを作った疑惑をもたれているのはあんたの国だからね。
とまれ、以後、ウソのようなゼロ患者が続きます。
海外の動向/東京大学 保健センター (u-tokyo.ac.jp)
しかしそれが今年3月頃から再拡大を開始してしまいます。下グラフ右端です。
しかし習は、頑迷にゼロコロナを命じ続けます。
アベマ・タイムス
専制主義国家のほうが自由主義国家よりコロナ制御で優位性があると日本の左翼文化人にオダてられたもので、ゼロコロナに突っ走ったんでしょうか。
習はこれで3期めも固い、オレは終身国家主席だと思ってしまったようです。長島さんじゃないのですから終身なんてありえないんですがね。
ところが22年3月頃から、上海を中心にして再度感染が爆発します。
習はなんとかの一つ覚えのように、またもや徹底したロックダウンを命じます。
重慶あたりならまだしも、中国経済の心臓部の上海で厳重な都市封鎖を敷いたらどうなるのかわかりそうなもんですが、あいにく習は資本主義経済が大嫌いなのです。
「2022年3月、中国経済が突然失速した。厳しい外出・行動制限を強制する「ゼロコロナ」対策が人口2400万人強の中国最大の経済都市上海に事実上全面適用されたことが大きく影響した。全国的に外食、観光など接触型消費が落ち込み、住宅や自動車販売が低迷。頼みの投資、貿易も停滞し、失業率は上昇した。
習近平総書記(国家主席)が3期目に入るとみられる今年秋の共産党大会を控え、党・政府は今年の経済成長率目標を「5.5%前後」に設定したが、このままでは5%も難しい」
(読売3月28日)
100年に1度の危機 どう乗り越えるか : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
読売
経済は正直です。
経済の中心の上海の失速中国国家統計局が今年4月18日に発表した経済データによると、22年1~3月期の国内総生産(GDP)は物価変動の影響を除いた実質ベースで前年同期比4.8%増加しました。
一見好調のようですが、好調だったのは北京五輪が開催された2月までのことで、3月に入って消費支出はいきなりしぼみ、前年同月比で3月の小売売上高は3.5%減少、中でも外食・レストラン収入は16.4%の急減を記録してしまいました。
中国GDP、4.8%増 政府目標下回る―1~3月期:時事ドットコム (jiji.com)
五輪前からいきなりの急激な落ち込みですが、原因はいわずと知れた習が強行した上海ロックダウンです。
中国2大都市でコロナ感染落ち着く兆し、上海のロックダウン緩和も - Bloomberg
上海のパンデミックはを完全に制圧しきれていないうちに、今度は北京に飛び火しました。
「中国で最も重要な2都市の感染拡大で、政府が掲げるゼロコロナ政策は厳しい局面を迎えた。上海のロックダウン長期化により中国経済の成長懸念が広がり、食料や医療へのアクセス確保が困難になった市民が増えている。
北京市で同日報告された新規感染者数は34人。当局はオミクロン変異株の拡散を抑える取り組みの一環で、大規模検査対象地域を市内の大部分に拡大した。 新型コロナウイルスは言うまでもなく、人類共通の強敵だ。世界中の国々が力を合わせ、知見を共有して戦っていくほかない。実際、各国の保健衛生当局は、概してそのように行動している」
(ブルームバーク4月27日)
中国2大都市でコロナ感染落ち着く兆し、上海のロックダウン緩和も - Bloomberg
ここで習の権威は大きく動揺し、習より多少経済がわかる李克強へ替えたらどうかという意見もでたようですが、なんの当人は3期目をやる気満々です。
さすがは世界最強の独裁者、不屈の闘志。めげない自信。なんと自分で続投宣言を出してしまいました。
福島香織氏によれば、胡春華が習近平に忠誠を誓うようなことを言い始めていますし、長老組も今のところは黙ってみているようです。
李克強からしても、不動産バブルが弾けて、国内景気落ち込み、米国との関係も最悪のいま、政権をもらってもねぇ、というところなのかもしれません。
かくして独裁者クンはどこまでも驀進し続けるのです。
メディアで連日繰り返されているのが、統一教会踊りと第7波ダンスです。
まさに情弱向けハンマー&ダンスそのもので、自分でやっててイヤにならないですかね。
「産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、新型コロナウイルスの流行「第7波」に「不安を感じる」との回答が7割にのぼった。今夏に「帰省も旅行もしない」と答えた人も7割近くにのぼり、感染拡大への警戒感が広がっている。ただ、政府には物価高や景気対策を要望する声が集中しており、社会経済活動の減速を避けつつ、生活に重点を置いた政策を求める傾向が目立つ」
(産経7月25日)
産経さん、少しは抑え気味で報じなさいよ。こういうことを報じること自体が煽りなのです。
こんな言い方もしています。
「新型コロナウイルスの「第7波」の感染が広がる中、WHO=世界保健機関は7月27日、先週一週間の新規感染者の人数について日本が、世界で最も多かったとする最新のリポートを発表しました。国別では、先週一週間で96万9068人の感染が確認された日本の新規感染者数が世界で最も多かったということです」(FNN7月28日)
WHO「日本が世界最多」 先週1週間のコロナ新規感染者数 (fnn.jp)
だからなんなのよ、という類のどーでもいい情報ですが、こういう報じられ方をするとギクっとなって、家族持ちはバカンスにいくのを止めて家に閉じこもるかと思い、独身者は外食も止めて家でインスタントラーメンでも作るかというふうになります。
そもそも「世界最多の感染者数」なんて言い方自体が意味がありません。
コロナは株を変異させながら世界を巡っています。
ある国がハンデミックになってピークアウトした頃には、今度は別な国がパンデミックになっていきます。
ちょっと前までは欧米で、今は日本がその順番になったというだけのことにすぎません。
しかも、デルタ株だったらイヤですが、相手はオミクロンBA5です。
もう欧米では、コロナのことなどこんな仰々しく報じません。
感染の正体が感染力こそ強力ですが、毒性の低いBA5だからです。
実際の感染拡大によるデメリットより、規制をかけることによる社会的損失のほうが多いことがわかったので欧米メディアは騒がないし、政府も特に規制強化をする気配もありません。大人だね。
【産経・FNN合同世論調査】「第7波」警戒強まるも…行動制限は否定的 物価高対策の必要性重視 - 産経ニュース (sankei.com)
日本ときたらメディアが大騒ぎしたあげく、社会インフラに影響が出始めるとまたまた大変だぁ、と悲鳴を増幅します。
「全国各地に広がる、新型コロナウイルスの第7波。26日は、全国で19万6,500人の感染が確認された。かつてないほどの感染爆発は、社会インフラにも深刻な影響を与えている。
JR九州では、運転士と車掌、あわせて38人が感染者や濃厚接触者となり、出勤できなくなった。これを受け、27日から博多駅発着の特急「ソニック」と「かもめ」のあわせて120本が運休する。
利用者「出勤がちょっと大変になりますね」、「自分も使う身としては、やっぱりちょっと不便ではありますよね。(略)
東京・杉並区にある病院の、27日朝の様子。多くの親子が診察に訪れていた。しかし、その対応には限界が来ているという。
たむら医院・田村剛院長「スタッフが、感染拡大で勤務できない状況が先週からあったので、初診のお客さんは、ちょっとお断りしていました」病院スタッフの中にも感染が広がり、人繰りが困難に 」
(FNN7月27日)
そりゃ、いつまでも頑迷にコロナを5類にしておけば、陽性判定されれば即隔離なんですから、どんどん欠勤者が増えて当然ですがな。
メディアと野党がPCR検査を増やせって主張したために、いまやちょっとした街のそここで簡易検査ができるようになりましたから、検査数が増えれば陽性者も増えます。
だから尾身氏が、いみじくも「一般市民が主体的に自分で判断していろいろと工夫するフェーズに入った」と、国や自治体が規制する時期は終わりましたよ、国民が自分で身を守れれる時期なんですよ、と言ったのです。
すると今度は、尾身、逃げるのか、政府は国民を見捨てる気だ、と糺弾大会を始めるのですから、底無しの馬鹿者です。
そして政府もそのメディアが作り出す「世論」には勝てずに、だましだまし2類を5類と折衷しようとします。
というわけで、もうとっくにコロナを飼い馴らす時期(ウィズコロナ)、ハンマー&ダンスでいうダンス期にとっくに来ていますが、メディアの狂騒で国民の大半が不安に駆られ続けるかぎり難しいでしょう。
では、こうやって本来終わりになるべきコロナ規制を続けると、どうなるのでしょうか。
もう結果はでています。経済はいつまでたってもコロナ前に戻らず、社会は大量の「コロナ鬱」と、それによる自殺者が増加し続けるのです。
コロナが始まった2020年3月から22年4月までの期間における超過自殺者数は6995人にも登りました。
しかもその大部分は若年層です。
コロナの疾病による死亡者は日本で32040人ですから、自殺者数を7000人とすると、約5分の1弱の数がみずから命を絶っていたわけです。
まず、東京大学大学院経済学研究科の試算を見ます。
東京大学大学院経済学研究科
●コロナ危機による追加的自殺者
・20代女性・・・985人
・同 男性・・・690人
・20歳未満の女性・・・250人
・同 男性 ・ ・・80人
・高齢者60歳以上(男女)・・・1600人
もうひとつ、旭川医科大学社会医学講座の吉岡英治准教授の研究グループが、北海道大学環境健康科学研究教育センターのシャロン ハンリー特任講師と共同で行った調査もあります。
日本の自殺率に大きな影響を与えたコロナの影響は、特に女性と若い年齢層でもっとも顕著でした。
パンデミック期間中の自殺による過剰死亡数は、旭川医科大学調査で男性で1208人、女性で1825人、東大大学院経済学研究科調査で20代女性1235人(20歳未満を含む)、同じく男性で770人に達しました。
とくに女性は20代、30代、60代で過剰死亡が多くみられました。
人は病気や戦争、事故だけで死ぬわけではなく、自らの人生の先行きが見いだせない時、自ら命を絶つ場合があります。
今回はコロナが引き起こした「戦争」によって、実に6995人もの人たちが自殺に追い込まれたのです。
そしてその多くが次代を担う青年たちだったことに思いを致すべきです。
コロナを過剰に警戒するあまり、これ以上この陰鬱で先が見えない「コロナのトンネル」に国民を置きざりにするのを止めるべきです。
あの日刊ゲンダイが尾身氏に噛みついています。
「耳を疑った視聴者もいたのではないか──。24日のNHK日曜討論で尾身氏は「従来までは国、自治体が国民にお願いし、国民が従うというフェーズだった。今は、いろんなことを学んできたので一般市民が主体的に自分で判断していろいろと工夫するフェーズに入った」と強調した。
「一般市民が自分で判断」とは聞こえがいいが、要するに「自助で何とかしろ」ということだ。コロナ禍の2年半、コロナ対策は的外れなものが多く、後手対応も目立った。政府に従った国民は多大な犠牲を強いられた。その張本人である政府分科会の責任者が、今度は「一般市民が主体的に」とは、視聴者が呆気に取られても不思議はない」
(日刊ゲンダイ7月25日)
【新型コロナウイルス】尾身会長がNHKで“職務放棄”の仰天発言!コロナ対策は自助で、犠牲は国民の「許容度」の問題|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
日刊ゲンダイ
日刊ゲンダイさん、なにを仰天しているんでしょうか。尾身さんは当然のことを言ったまでのことです。
尾身氏は、コロナ分科会の「コロナを『一疾病』として日常的な医療提供体制の中に位置づけるための検討も始める必要がある」という新たな提言をかみ砕いてしゃべっただけです。
このどこがおかしいのです。私からみれば、遅いよ、尾身サンなんですが。
「国や自治体がお願いし、国民が従う」というパターンが、この2年間の緊急事態宣言出しっぱなしの日本の社会状況をつくった原因でした。
こういう「お願い」しかできないあいまいな形で大丈夫なのか、しっかり緊急事態に対応できる法的根拠を作るべきではないか、というのがかつての私の考えでした。
こういう牛のよだれ的にダラダラやるとどうしても安易に走りますから、解決能力のない自治体首長のやってる感に使われてしまい、簡単に出してそのまま出しっぱなし、というケースが頻発しました。
これがいかに社会生活を息苦しくしたのか、経済を収縮させたのか計り知れないほどです。
では、今はどういう時期なのかといえば、昨日も書いたようにコロナ対応社会から脱出する時期です。
2年間制約だらけだった社会を節目をつけて、段階的に普通の社会に戻す時期だ、と私は思っています。
出入国制限は完全撤廃し、密閉室内でのマスク、密集回避、手洗い、この程度の基礎的自己防衛策で十分だと思います。
それが尾身氏が言う「一般市民が主体的に自分で判断していろいろと工夫するフェーズ」です。
もうお国がアレやれ、コレするなという時期じゃないですよ、というだけのことです。
このどこが間違っていますか。
どうも左方向の人らは、もう一回緊急事態宣言やマンボーをかけてもらえないと気が済まないみたいのようです。
統制大好き、規制大賛成は左翼の通弊ですが、一種のマゾ体質なんですかね。
それとも、年中怒りや不満を誰かにぶつけていないと気が済まない体質のようですから、敵がいなくなるのが寂しいのでしょうか。
ひょっとして「自分で判断する」のがコワイ、自分の頭を信じられない、あんがいその辺かもしれませんね。
それはさておき、永江一石氏が自身のブログ『More Access! More Fun』で興味深い指摘をされていました。
経済破壊で人は死なない? 東大のシミュレーションでコロナ禍の超過自殺数7000人の衝撃|More Access! More Fun (landerblue.co.jp)
永江氏は、私と違って感染初期からロックダウンや緊急事態宣言に反対されてきました。
私はやるならやれ、そして厳重にやって、短期で終わりにしろという考え方でしたが、永江氏はハナからするなという意見だったようです。
「理由は2つで
1. どれだけ効果があるのか不明
2. 経済が破壊されれば自殺が爆増する」
1.についてはとっくに先進諸国は効果はないと判断。要するに「ロックダウンをした国としない国で死者数は変わらない」というのが明らかになっているからです。死者数が変わらないなら経済をぶち壊してまで制限をする必要が無い。
(ゴチックは原文ママ)
私は2に関しては賛成です。後述しますが、自殺者はロックダウンや緊急事態宣言が長引けば長引くほど増加していきます。
1のロックダウンの効果については微妙です。
ロックダウンしないで、英国やスウエーデンのように集団免疫だけに頼ると、死者が増えるという意見も存在します。
「スウェーデン政府の疫学者で、新型コロナウイルスの感染症(COVID-19)対策を指揮してきたアンデシュ・テグネル博士は3日、厳格なロックダウン(都市封鎖)を敷かないという判断によって同国で想定より多くの死者が出たと認めた。
スウェーデンでは、新型ウイルスによる死亡率が近隣諸国よりもはるかに高い。国民は国境を越えて他国へ入国することを禁止されている」
(BBC 2020年6月4日)
スウェーデン、ロックダウンせず「多くの死者出た」 政府疫学者 BBC News Japa
一方、そうではない、ロックダウンが遅れたスウエーデンより多い死亡者のを出したロックダウン国はいくらでもある、という反論もあります。
「多数の人を感染させる集団免疫策は「命を危険にさらす」策だと批判されているが、スウェーデンでのコロナによる死亡率は高くはない。ロックダウンを継続している他の欧州国で、死亡率がスウェーデンよりも高い国はたくさんある。
5月10日の時点で、人口100万人あたりのスウェーデンのコロナ死者数は314(435; 38% up)人である。
ロックダウンを続けている他の欧州諸国を見ると、人口あたりの死者数がスウェーデンより多い国はベルギー751(817; 9% up)、スペイン566(580; 4% up)、イタリア502(553; 10% up)、英国475(567; 19% up)、フランス392(441; 13% up)、オランダ316(348; 10% up) となっている。3月から完全にロックダウンをした英国(*)と比べても、スウェーデンは好成績だ。
都市閉鎖をしないスウェーデンが、他の都市閉鎖をしている欧州諸国より低い致死率であるということは、スウェーデンの集団免疫策は現段階では成功していると言えそうだ」
(みゆきポアチャ 2020年5月29日)
スウェーデンの集団免疫、いよいよ「効果アリ」の声が聞こえてきた
アジア・太平洋地域でもっとも厳しいロックダウンを敷いたのは、ニュージーランドと台湾です。
では、この両国の累計死亡者を見てみましょう。
●人口100万人あたりの累計死者数
・NZ・・・・396.0人
・台湾・・・357.6
・日本・・・252.9
う~ん、圧倒的に多いぞ。
これではなんちゃって非常事態宣言の日本と比べて、ロックダウンに有為な効果があったとはとても言えません。
では、オミクロンに置き換わった直近120日間ではどうでしょうか。
永江一石氏による
●人口100万人あたりの過去120日間の死者数
・NZ・・・351.4人
・台湾・・・321.9
・日本・・・33.8人
桁が違う。
このように比較すると、ロックダウンが決定的に有効であったということはないように思えます。
日本がで死者が少なかったのは、重症者から死亡に至りやすい高齢者に対するワクチン接種が順調に進行したからです。
菅前首相は、さんざんメディアから遅い、世界最低とボロカスに言われながら、接種率を高い水準の軌道に乗せました。
正当にそれを評価しないで袋叩きにしたのは、メディアでした。
メディアにとって世の中が不幸であることが商機なので、菅氏のように黙々と奮闘するタイプが大嫌いなのです。
周りを見渡しても、高齢者で最低でも2回打っていない人は皆無で、3回目もあたりまえ、すでに4回目を私は打ちました。
このようなワクチン接種の進捗が、コロナにもっとも脆弱だった高齢者層を救ったともいえます。
ただしその反面、経済再開は主要国でもっとも遅れていて、経済はまだコロナ禍から抜け出せていません。
物価高騰が市民生活直撃、金融引き締めの遅れ、とメディアは連日絶叫していますが、CPIで見るとわず0.8%です。
このくらいだと、かえってインフレ・ターゲットを早く達成できるかもしれません。
日本の成長率、22年2.4%に減速 IMF「回復鈍化」: 日本経済新聞 (nikkei.com)
「日本の22年の消費者物価指数(CPI)の上昇率は1.0%と試算した。政府・日銀が掲げる2%の物価目標を「依然として大きく下回っている」と評価し、日銀の大規模な金融緩和策は「引き続き適切だ」と言及した」
(日経2022年4月7日)
つまり、死者は世界的にはボトムの水準であるくせに、経済回復もまたボトム、というありえないことが起きているわけです。
おかしいではありませんか。死者は少なく、ロックダウンもしなかったわが国がどうしてこうも回復が遅いのでしょう。
理由はさんざん言ってきましたが、規制緩和が遅々として進まないからです。
私はこれは典型的なメディア禍だと思っています。
連日トップニュースに、「感染者〇〇万突破!遅れる政府の対策」と恐怖を煽れば、そりゃ政府の腰は重くなりますよ。
その結果、ダラダラと緊急事態宣言は続き、解除されてもまだ余波が残り続けています。
かんじんな医療機関がスタッフ不足、交通機関は乗員不足、会社も欠勤者だらけ、相撲はコロナ休場で半分の力士でやっているかんじ、プロ野球は一球団まるごと隔離、かくして経済はボロボロ、復興景気どころか復興不景気といったていたらくです。
もういいかげん欧米並みにしたらどうですか。あっちはもっと感染がひどいのに、夏のバカンスをエンジョイしていますがね。
メディアを見ていると、また緊急事態宣言をして社会を凍結したいようですが、どうかしています。
日本と中国以外、行動制限をかけている国はありません。
おいおい、ゼロコロナ驀進中のチャイナと一緒かよ、と思いますが、日本は上海ロックダウンのような過激なことはしませんが、外国から見れば入国制限をかけていることにおいて同等だと考えられています。
バカンスシーズンに観光鎖国してどうすると思いいますが、まだ岸田氏は踏ん切りがつかないようです。
6月の観光客はたった252人です。
「6月の訪日外国人 観光目的は252人にとどまる
日本を訪れた外国人は先月、12万人を超えましたが、観光目的の入国は252人にとどまっていることが明らかになりました」
(ANN7月26日)
いまの時期は、2年以上に渡ったコロナ対応社会からの離脱の時期です。
本来的には今年3月ころには大胆な緩和策をとって、社会を平常飛行に戻してやるべきでしたが、まだもたついています。
戻そうとは政府は思っていたはずで、山際経済再生担当相も議論に前向きだったようです。
しかしその矢先にBA5の波が来てしまって、メディアが毎回トップニュースで「今日は何万人の新規感染者、第7波が来たぁ」と盆踊り状態。
参院選の前も手伝って緩和のタイミングを失いました。
本来はこの夏には、熱中症対策としてマスク着用を限定的に解除すべきでした。
夏に緩和しておかないと、秋からの寒冷期に流行る季節性インフルエンザの時期に入ってしまい、日本人は超長期間にわたってマスクから離れられなくなるからです
ところが、日本人特有の潔癖症と秩序遵守癖がアダになりました。
もうマスクをつけるのは、日本人のドレスコードと化してしまったのです。
なんとまぁ、禍福はあざなえる縄の如し。。
ですから、マスクはずしている奴は、いまやズボンはかないで歩き回る変態サンと同じ扱いです。
ならば、規制にメリハリをつければいいのです。
たとえば、いま外国から熱望されている入国前検査必須は大幅に緩和してよいでしょう。
いっそう止めてもいいくらいです。
経済界は外国との人的連携を遮断されてしまいましたから、いまや悲鳴を通り越して素で怒っています。
「日本の水際対策「世界に取り残される」 経済界が苦言
三菱重工業の加口仁・常務執行役員は新型コロナの扱いについて「インフルエンザくらいにしてほしい」と期待する。海外の顧客がビザを取得できずに訪日できないケースもあったという。加口氏は「できればもう少し緩和してほしい」と話す。(略)
国内ですでに大流行している現状で、水際対策をする効果は乏しい。科学的根拠がないまま外国人を拒み続けるのも大きな問題だ。経団連なども繰り返し「開国」を求めているが、政府の動きは鈍い。(略)
IHIの満岡次郎会長はオミクロン型の重症化率が下がっていることに触れ、「感染対策は何が良いのかを統計で合理的にみれば、少なくとも今の水際対策よりは緩和してもいいという結論になると期待している」と述べた」
(日経7月21日)
日本の水際対策「世界に取り残される」 経済界が苦言: 日本経済新聞 (nikkei.com)
そうとうにセーブした言い方ですが、観光業ではなく製造業の大黒柱の三菱重工の役員が「インフルエンザくらいの扱いにならないか」と言い出したのは重視すべきです。
これでは外国との商取引での来日や、技術者の移動もできないのですから、当然です。
世界の状況を具体的にながめてみましょう。いかに日本が飛び抜けて厳しい対応をしているかわかるでしょう。
「EUで最初にコロナ規制を全廃することになったデンマークは、2月1日から、屋内でのマスク着用義務や、飲食店や屋内施設を利用する際の「コロナパス」提示義務、陽性者の自己隔離義務なども撤廃しました。
その時点では、デンマークの新規感染者数(人口当たり、7日間平均)は、世界で2番目に多い水準で、感染力が強いとされるオミクロン亜種「BA.2」の感染が大半となっていましたが、重症患者が少ないことや国民の8割以上が2回のワクチン接種を終えていた(ブースター接種は6割)ことから、規制撤廃に舵を切りました。
英国のジョンソン首相は、2月21日、「パンデミックは終わっていないが、オミクロン株は重症化リスクが減じ、ワクチン接種も進展している。規制は、英国の経済社会精神衛生に大きな打撃を与えている」等として、イングランドで新型コロナ関連の国内的な法的規制を全廃すると発表しました。感染者の自主隔離義務と付随する手当支給もなくなり、簡易検査キットの無料配布も終了となります」
(豊田真由子2022年3月12日)
世界標準から取り残される…日本の「コロナ規制」はまだまだ続きそうだ(豊田 真由子) | 現代ビジネス | 講談社(1/3) (ismedia.jp)
米国のメジャーリーグを見ると、マスクつけているのは2人くらいですか。
レンジャーズ メジャー唯一の「100%観客動員」、タイムスリップしたような光景に歓喜と不安― スポニチ Sponichi Annex 野球
ヨーロッパの街は、いまバカンスシーズンの真っ盛りですが、マスクつけた人は皆無に等しいようです。
見つける方が大変だと思います。いたらそちらのほうが変人奇人。
別にいま始まったことではなく、もう1年前から下の写真状態です。
マスクなんぞしている者ゼロ、大密集の中で、絶叫あり、ハグあり、さすが私もこりゃやりすぎだと思うわ。
しかも去年のオミクロン株前のことです。たぶんデルタ株の頃です。いいのか。
私は日本では規制緩和派に入れられるでしょうが、欧米だと厳格規制派に入れられそう。(笑)
サッカー欧州選手権9000人超のクラスター…マスクなし観客大多数「イングランド決勝進出が重大リスク」:中日スポーツ・東京中日スポーツ (chunichi.co.jp)
「今年6~7月に行われたサッカーの欧州選手権のうち、英国で行われた8試合で新型コロナウイルスの特大クラスターが発生し、9000人以上の新規感染者が出ていたことが20日、分かった。とくに7月11日のイングランド対イタリアの決勝では、ウェンブリー競技場の周辺にいた2295人、スタジアム内にいた3404人が感染した可能性があるという」
(中日スポーツ2021年8月21日)
日本はいきなりノーマスクでやれというのは、国民性から言っても無理でしょうから、要はメリハリです。
マスクは屋外では、密集しないかぎりいいことになっているのですか、政府がもっとハッキリ言わないと、国民は誰もいない散歩でもつけています。
プーーさんのコメントどおり、秋冬になって季節性インフルが流行る時期には、また着けることを励行すればいいのです。
後は、ワクチン接種の徹底です。
ワクチンは徹底すべきで、特に3回目が半数に届かない沖縄県、チバリヨー。
そして自治体発行のワクチン接種証明(パス)を随時携行することを義務づけるべきでしょう。
ヨーロッパではすでに実施している国もあります。
ワクチン反対主義者は保守にもリベラルにもいて複雑なのですが、接種するしないは当人の意志の自由の問題で、強制できません。
しかしこれほど広範囲、かつ深刻に社会に打撃を与えた感染症に対して、公共の空間における自由の制限はあるべきです。
ワクチンを打たねば、鉄道の長距離移動のキップが買えず、飛行機にも乗れず、ホテルにも泊まれないことになります。
そうでもしないと、ワクチンは主義だから打たないという人が一定数残っていってしまいます。
反ワクチン主義者が打たないのは自分が選んだ主義主張なので、自らが選択した茨の道を辿るしかありません。
自由というのは、不利益を被ることを甘受することでもあるのです。
将来、国家緊急事態法ができた場合、ワクチン接種はこの範疇に入るかもしれません。
そして後は感染症法の分類見直しです。
<新型コロナ>2類?5類?分類引き下げ論 保健・医療は負担緩和の一方 受診控えで感染増リスクも :東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
「新型コロナウイルスの流行「第7波」が猛威を振るう中、感染症法上、結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)といった「2類」感染症以上の厳格な措置を取っている新型コロナについて、季節性インフルエンザ並みの「5類」相当に緩和すべきだという声が医療現場で広がりつつある。緩和すれば、病床確保が容易になり、医療逼迫(ひっぱく)を回避できるためだ。政府も第7波が落ち着いたタイミングで見直しに向けた議論に着手したい考えだ。
「コロナを『一疾病』として日常的な医療提供体制の中に位置づけるための検討も始める必要がある」
政府の新型コロナ対策分科会が14日にまとめた「第7波に向けた緊急提言」にこうした文言が盛り込まれた。「一疾病」はコロナを季節性インフルエンザのような疾患とみなすことを念頭に入れた言葉だ」
(産経2022年7月23日)
コロナ、インフル並み「5類」見直し 政府、秋にも議論 - 産経ニュース (sankei.com)
いまのままなら、コロナはどこまで行っても結核やSARS並の上から2番目に厳しい隔離病床扱いです。
ですから、いま陽性判定されると、指定医療機関でしか診てもらえません。
これが実態にそぐわなくなっているのは、新型コロナ分科会も認めています。
これを5類に引き下げると、それだけで季節性インフルエンザと同じに、一般の医療機関でも受診できるようになります。
こんな厳しい規制をしているのはいまや日本だけ。
それも医師会がなかなか5類落しをウンといわないからです。
門田隆将氏は、隔離ベッドを確保しておくだけで得られる巨額の政府補助金が、病院業界で利権化しているからだとみていますが、それについてはなんともいえません。
ただし、医師会も2類にしておく意味がグラついているのはたしかなようです。
「東京都医師会の尾崎治夫会長も周辺に「感染者が急増中での分類見直しは現実的ではない。現場が混乱する。だが、2類相当のままではコロナ対応が可能な医療機関は増えない。現場の医師の多くが5類に変更し、医療体制を整えるべきだとの認識だ」と語っている。
政府関係者はコロナの分類を見直す時期について「第7波が落ち着くとみられる今秋以後だろう。5類への変更ありきではないが、第8波に備え、議論を急ぎたい」と語る。
こうした動きを受け、日本医師会ではコロナをこれまでのような分類に無理にはあてはめずに、あくまでも運用面で「5類に近い扱い」とする独自の変更案が浮上している」
(産経前掲)
今年の秋ですか、それだと今度は季節性インフルがかぶってきますよ。
今の時期に5類に変更しておかないと、かえって厳しくなると思うんですが。
いずれにせよ、平常体制をとりながらコロナを社会になじませてゆく、いわゆるウィズコロナの決断をすべき時なことだけは確かなのです。
もう相撲取りがいない大相撲や、選手のいない巨人なんかは見たくないですもんね。
これは審議会で喧々諤々するものではなく、首相の決断事項です。
また毎日のように第7波だ、感染爆発だとメディアは騒いでいます。
たしかに感染者数が増えているのは確かですが、煽りの代表例。
「東京都は21日、新型コロナウイルス新規陽性者が3万1878人と発表した。直近4週間、ほぼ“倍々ゲーム”の増え方で初の3万人台に達した急速な感染拡大に、SNS上でも「東京3万人」などの関連ワードが相次いでトレンド入り。「さいたまスーパーアリーナ埋まる人数」「東京3万人はきつい電車に乗るのすら嫌になってきた」「あちこち密だし何の規制もないし。夜は酔っぱらいが吐いたり電車でノーマスクで大声で話してる」「いつまで騒いでいるんだろうね」など、さまざまな声が飛びかった」
(東京中日2022年7月21日)
コロナ感染爆発「東京3万人」トレンドワードに、倍々ゲームの増え方にも「あちこち密だし何の規制もない」:中日スポーツ・東京中日スポーツ (chunichi.co.jp)
この記事は、こんなに感染が拡大しているのに、国はなんの規制もしないというお怒りの声ばかり報じています。
毎日埼玉スーパーアリーナ一杯分の新規感染者がでているぞォ、電車はコワイぞォ、酒飲んでいる親父どもはコワイぞぉ、ギャ~~~ってなかんじ。
さすがは東京新聞系スポ新です。
たしかに感染者は増えています。
下図は2020年から今年まで一画面で見ています。今年7月にまた波が来ていることは事実です。
NHK 新型コロナ 全国の感染者 過去最多15万2536人 30府県で最多 | NHK | 新型コロナ 国内感染者数
しかし、ちょっとお待ちを。「3万人の新規感染者」というのは、実はただのPCR検査陽性判定者のことです。
PCRは疑似判定を3割生みますから、その数をそのまま感染者だとかんがえないで下さい。
「木下博勝氏は「7/16から7/22の1週間のジャガークリニックでの、PCR検査の結果、過去最高です。249名検査されて、181人が陽性でした。72.6%でした」と報告。「発熱が無くても、風邪症状でも軒並み陽性になっている現状です。スタッフ一同、全力で頑張っています」とつづっている」
( 日刊スポーツ 7月25日)
検査をすれば7割以上も陽性判定されてしまいつすが、木下医師が言うように、その大部分は発熱がない風邪くらいの症状なのです。
インフルエンザに似ていますから劇症も出るので注意は必要ですが、「一日3万人新規感染者」の大部分は軽い風邪症状で熱もないか、症状さえ出ない場合がほとんどです。
しかしいったん陽性に判定された場合、結核と同じ5類扱いですから隔離病床に入れられるか、家庭で自主隔離することになり、家族は濃厚接触者として外出禁止となります。
では、このコロナ専用病床の使用率はどうでしょうか。
特徴的な県をピックアップしてみました。
東京、神奈川、静岡では5割に近づいており、沖縄はなんと68%ですから赤信号で医療非常事態宣言を出すようです。
●入院者数・新型コロナ対応のベッド数
・東京都・・・ 3024床使用/7179床42%
・神奈川県・・ 1032床使用/2100床49%
・静岡県・・・ 291床使用/648床45%
・大阪府・・・ 1724床使用/4552床38%
・和歌山県 ・・390床使用/529床74%
・沖縄県 ・・・477床使用/699床68%
・全国平均 ・・16347床使用/43959床37%●重症者数・重症者対応のベッド数
・東京都・・・ 482床使用/1007床48%
・神奈川県・・ 34床使用/210床16%
・静岡県・・・ 0床使用/60床0%
・大阪府 ・・・402床使用/1491床27%
・和歌山県・・ 0床使用/26床0%
・沖縄県 ・・・17床使用/62床27%
・全国平均・・ 1031床使用/5446床 19%
東京や沖縄のように重症者対応病床が増大しているほうが稀であり、和歌山や静岡のようにそれなりに隔離病床が占有されていても、重症者擁ベッドが空っぽというケースもあります。
全国平均で病床使用率37%に対して、重症者擁は19%を占めるにすぎません。まるで余裕です。
沖縄ですら重傷擁病床は27%使用です。
この2年間かけてわかったことは、新規感染者数ではなく、重症者数と死亡者数こそが医療崩壊を引き起こすということでした。
重症者さえ押さえ込められれば、医療体制は大丈夫なのです。
ということで、重症者の数と死亡者数を見ておきましょう。
特に増えてはいません。重症者が一年前の同時期と比較にならないほど少ないのがわかるはずです。
「毎日スーパーアリーナ一杯分の新規感染」、などと言って内実を精査しないと、冷静な対応ができずにパニックが起きてしまいます。
さらにはまた非常事態宣言だのマンボーだのと出せという人が増えて、せっかく再稼働を始めた社会の活気を吹き消してしまいかねません。
NHK第1波~第7波 感染者数グラフ(全期間を1画面表示)|NHK
続けて死亡者数を見ると、こちらも横ばいです。
NHK
なぁーんだ。新規感染者の数はスゴクみえても、内実はたいしたことはないのです。
このようにきわめて強い感染力を持ちながら、重症や死亡者が少ないという毒性の低さが典型的なコロナのオミクロン株BA5の感染の特徴です。
国内では4月ごろに主流だったBA.2からBA.5への置き換わりが進み、国立感染症研究所の分析では、8月はじめには全国でほぼ100%になるとみられます。
オミクロン株の亜型BA.5の拡大で第7波到来 | メディアスホールディングス株式会社 (medius.co.jp)
「欧州疾病予防管理センター(ECDC)の5月の報告では、南アフリカやポルトガルの感染状況からの推計で、BA.2系統よりも12~13%。英国の健康安全保障庁の6月の報告では、BA.2系統よりも35%、感染者が増えやすいとしている」
(朝日2022年7月22日)
【そもそも解説】オミクロン株のBA.5系統、特徴は? 広がるの? [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル (asahi.com)「英国健康安全保障庁の報告によると、BA.5はBA.2よりも35.1%速く感染が広がると推定されています。BA.5はウイルスの表面にある突起のスパイクタンパク質に「L452R」や「F486V」という変異を持っていて、ワクチン接種や過去の感染によってできた免疫を回避するという特徴があります。このためワクチンを接種していても、今までのオミクロン株より感染しやすくなると考えられます。ワクチン接種により作られた抗体は半年以上経過すると抗体濃度はピーク時の約4分の1に低下することが確認されています」
(メディアス ホールディングス)
BA5の特徴は、ワクチンの効果を低くすることです。
ワクチン接種により作られた抗体は「半年以上経過すると抗体濃度はピーク時の約4分の1に低下させる」ことが知られています。
ワクチンが無効に見えるというのは、ドキっとする特徴で、反ワクチンの人らが喜びそうな特徴です。
しかし落ち着いて考えれば、半年以内にワクチンを接種していれば、免疫濃度を維持して予防することも可能なわけです。
ですから、3回目、4回目接種をして、常に免疫濃度を一定以上にキープしておくことが有効な予防方法なのです。
ワクチン3回目接種がどこまで進んでいるのかが、ひとつの目安になるでしょう。
そこで、全国の県別3回目接種率を見てみましょう。
沖縄県が、愕然となるほど低い46.27%なのがお分かりでしょうか。まだ5割にも達していません。
そこで冒頭の直近の「入院者数・新型コロナ対応のベッド数・重症者数・重症者対応のベッド数」と突き合わしてみます。
沖縄県は、コロナ病床使用率が68%、重症者病床使用率が27%です。
この低いワクチン3回目接種率と病床使用率・重症ベッドの不足には、因果関係が認められます。
よく観光客が持ち込んだと安易に言う者がいますが、それ以上にこの沖縄県の低いワクチン3回目接種の遅れと関連づけたほうがよさそうです。
しっかりしろよ、デニーさん。
まわりにひとりくらいいませんか、なんにでも意見を言う人。
「私はこう思う」「私はここが違うと思う」、そして「あなたはこうすべきだ」と、頼まれてもいないお節介を垂れます。
なぜか断定口調で、決めつけます。
一種のナルシズムなのでしょうか。
この人たちはいつも怒っており、自分が糾弾する側にいつもいるのが当然だと信じて疑いません。
もっとも声高に言うわりに、誰も聞いてはいませんが。
ノイジーで神経をいらだたせるからでしょう。
あえて誰がとは申しませんが、今回の元首相の非業の死に対してもまた同じようなことをやっています。
私たちには静かに哀悼する権利はないのでしょうか。
あなたがたにそれを妨害する権利を誰が与えたのですか。
国葬に反対というならそれもけっこう。
出席したくないというのもけっこう。
弔いたくない、唾を吐きかけたいというのもけっこう。
ただし、国葬の場に押しかけて、世界の弔問客の前で聞き苦しいシュプレッヒコールなどしないように。
そして国葬に過半数の国民が賛成している事実を素直に受け止めて、静かにやるように。
そのていどの節度は持ちなさい。
いまは喪に服する時です。
静かに亡くなられた方に思いを致すときであって、政治主張をわめく時期ではないのですから。
亡き安倍氏にたむける心打つ弔辞がありましたので、ご紹介します。
このような心がこもった弔辞が海外から寄せられる一方、メディアに踊らされて、カルト宗教狩りと山上同情論ばかりに偏った日本の世相をうとましくかんじます。
こういった殺伐とした日本の空気とはちがって、インド首相のモディ氏から友情のこもった弔辞をいただいております。
訳出された高橋克己氏に感謝いたします。
モディ首相の「My Friend, Abe San」:安倍さんへの最大級の賛辞 | アゴラ 言論プラットフォーム (agora-web.jp)
安倍元首相がインドにこれだけ愛された3つの理由 Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) (ismedia.jp)
My Friend, Abe San
Narendra Modi 2022年7月8日19:27 IST
Shinzo Abe-日本の優れたリーダーであり、世界的な政治家として聳え立つ、日印友好の偉大な擁護者(champion)-はもう私たちの前にはいないのです。日本と世界は偉大な先見性を持つ人(visionary)を失いました。そして、私も親愛なる友人を失いました。
私が彼に初めて会ったのは、2007年、グジャラート州首相として来日した時でした。爾来、私たちの友情は、肩書の虚飾(trappings of office)や公的な儀礼の枠(shackles of official protocol)を超えたものとなりました。京都の東寺訪問、新幹線の旅、アーメダバードのサバルマティ・アシュラム*訪問、カシのガンガー・アラティ**、東京での入念な茶会など、私たちの記憶に残る交流は数限りない。そして山梨の富士山麓のひっそり閑たる(nestled)ご実家にお招き戴いたこの上ない光栄(singular honour)を、私はずっと大切に思っています。
*グジャラート州にあるガンジー「塩の行進」の発地 **ヒンズー教の儀式
2007年から2012年まで、そして2020年以降、彼が総理大臣でなくなっても、私たちの絆(personal bond)は変わらず強いままでした。Abe Sanとの会合は毎回、知的な刺激に満ちていました。彼はいつも新しいアイデアと、統治、経済、文化、外交、その他さまざまなテーマについての貴重な洞察に溢れていました。彼の助言は、私がグジャラート州の経済を選択する際の着想を与えてくれました。そして、グジャラート州と日本との活発なパートナーシップを築く上で、彼のサポートは非常に大きなものでした。
その後、インドと日本の戦略的パートナーシップに前例のない変化をもたらすために、彼と一緒に仕事ができたことは私の特権(privilege)でした。狭い範囲での二国間の経済関係だったものが、Abe Sanのお陰で広範で包括的な関係になり、国家活動のあらゆる分野をカバーするだけでなく、両国とこの地域の安全保障にとって極めて重要な存在になったのです。
彼にとって日印関係は、両国の人々や世界のために最も重要な関係の一つでした。彼は、自国にとって最も困難なインドとの民生用原子力協定を断固として推進し、インドの高速鉄道*に最も寛大な条件を提示することに断固とした態度を示しました。独立国インドの歩みの中で最も重要なマイルストーンの如く、彼は新生インドが成長を加速させる際に日本が傍らにいることを保証しました。彼の日印関係への貢献は、栄誉あるパドマ・ヴィブーシャンが2021年に授与されたことで高く評価されました。
*グジャラート州の工業都市アーメダバードとマハラシュトラ州の商都ムンバイとを結ぶ
Abe Sanは、世界で起きている複雑で多重な変遷に対する深い洞察力、政治、社会、経済、国際関係への影響を見抜く時代の先端を行くビジョン、なすべき選択を知る知恵、慣行に立ち向かって明確で大胆な決断を下す能力、そして日本国民と世界を彼と共に前進させる(carry)稀有な能力を持っていました。彼の遠大な政策-アベノミクス-は日本経済を活性化し、国民のイノベーションと起業家精神の再点火につながりました。
彼の最も偉大な贈り物(greatest gifts)であり、最も永続的な遺産(enduring legacy)であり、世界が常に恩義を感じるのは、時代の潮流の変化と嵐の到来を認識した彼の先見性と、それに対応するリーダーシップでありましょう。2007年のインド議会での演説では、インド太平洋地域が現代の政治的、戦略的、経済的現実として出現し、今世紀の世界を形成する地域となる土台を、他の誰よりも前に築きました。
そして、主権と領土の尊重、国際法とルールの遵守、平等の精神に基づく国際関係の平和的運営、より深い経済的関与による繁栄の共有など、自らが深く愛する価値に基づいて、安定と安全、平和と繁栄の未来のための枠組みとアーキテクチャを、彼は正面から構築したのでした。
クワッド、ASEAN主導のフォーラム、インド太平洋海洋イニシアティブ、アフリカを含むインド太平洋地域における日印開発協力、災害に強いインフラストラクチャー連合なども、すべて彼の貢献によるものでした。国内での躊躇や海外の懐疑的な態度を克服し、ファンファーレ抜きの静けさの内に、彼はインド太平洋地域全体における防衛、接続性、インフラ、持続可能性を含む日本の戦略的関与を変革しました。そのお陰で、この地域はその運命に対してより楽観的になり、世界はその未来に対してより自信を深めることができています。
今年5月に日本を訪問した際、日印協会の会長に就任したばかりのAbe Sanにお会いする機会がありました。エネルギッシュで、人を惹きつけ、カリスマ性があり、とても機知に富んだいつもの彼でした。日印友好をさらに強化するための革新的なアイデアを持っていらした。その日、彼に別れを告げた時、それが私たちの最後の面会になるとは、少しも想像していませんでした。
私は常日ごろ、彼の温かさと知恵、優雅さと寛大さ、友情と指導に恩義を感じているので、心から彼を惜しんでいます。
インドの私たちは、彼が寛大な心(open heart)で私たちを包んでくれたように、彼の死を私たちの仲間として悼みます。彼は、自分が最も好きなこと、つまり人々にインスピレーションを与えることをして亡くなりました。彼の人生は悲劇的に短くなったかもしれませんが、彼の遺産は永遠に続くでしょう。
インドの人々を代表して、また私自身を代表して、日本の人々、特に安倍昭恵夫人とそのご家族に心から哀悼の意を表します。
オム・シャンティ(Om Shanti)
アベロスというのは、ある意味、私たちより左方向のひとたちのほうが大きいのかもしれません。
安倍氏が殺害されてしまっては、もうなにがなんでもみんなアベが悪いんだ、と言えませんからね、お気の毒。
最後の名残で、とうとう国葬にも反対だそうです。
共産党が音頭を取り、立憲が相乗りするという、あのオリンピック反対運動のノリです。
ただし、今回は弱々しいのであそこまで盛り上がるかなぁ。
オリンピックもあれだけ「国論を二分」して大反対運動をしましたが、始まれば結局大成功。
反対していた人らは、いつのまにか反対のハの字もいわなくなり、自然消滅していきました。
この国葬反対運動も似たパターンを辿るでしょう。
NHK
世界から元首や首脳級が大挙して訪日する頃には、反対する意味がなくなるはずです。
今回、国葬にした現実的理由は、多くの元首首脳が弔問を希望しており、これに個々の対応することは外務省や警察の能力を超えたからです。
さらに国際常識として、首脳弔問を受けた場合、弔問外交の場を提供するのが、接受国の義務です。
今回ならば、おそらく百カ国を超える国が参加する、G7やG20を軽く凌ぐ空前の規模の国際ステージになるはずです。
ですから、その国際要求に答えるには、国が一括して責任を持った弔問を受ける場を設定する必要がありました。
これが国葬とした最大の理由です。
国内向けというより国際的な理由のほうが大きいのです。
高市政調会長が、こう述べるのは当然です。
「野党などから国葬の実施に反対する声もあることについては「国民の中にはさまざまな考えがあると思う。内心の自由なので尊重しなければならない」としつつ、「この国の儀式として内閣府が執り行うことで、外交的な意義や遺族の負担軽減は非常に大きい」と強調。国葬の実施に賛意を示した」
(産経7月22日)
高市氏、安倍氏国葬「外交的意義大きい」 - 産経ニュース (sankei.com)
ましてやアベの神格化だ、なんて言うのは、論評にも値しない馬鹿馬鹿しい妄想です。
日本は金無垢の銅像を建てて拝ませる全体主義の国ではないし、選挙に勝とうが負けようが20年間も党首が変わらないどこぞの党とは違うのです。
この共産党は、神奈川県議会が安倍氏追悼決議をだそうとしたことに反対し、こんな講釈を垂れています。
「共産党は採決で反対した。同党の大山奈々子県議は暴力に屈しない意思の表明には賛同するとした上で「多様な考え方の県民がいる中で、亡くなった人への思いを他者が勝手に代弁することは許されない」と討論で述べた」
(産経7月21日)
「多様な考え方の県民いる」安倍氏銃撃非難決議に共産県議が反対 神奈川 - イザ! (iza.ne.jp)
ビックリしたなぁ。葬儀で弔辞を読むと「勝手に代弁した」ことになるんですと。
そもそも弔辞って、生者が死者の思いを「勝手に代弁」するもんでしょうが。(笑)
そんなこと言っておいて、いままで共産党はたとえば宮本委員長の死去に際して、長ったらしい弔辞を読み上げているんですから勝手なもんです。これを読み上げた不破氏は「勝手に代弁」したのかな。
故宮本顕治元議長の葬儀での日本共産党中央委員会の弔辞/日本共産党中央委員会を代表して/不破哲三 (jcp.or.jp)
自分らの党内はオーケーで、安倍氏には許さない、なんなんですかね、このダブスタは。
そういえば、共産党は神奈川県議会で哀悼のために、県が作った記帳台設置にすら反対していました。
もはや人の道にはずれます。
「市庁舎への安倍晋三元首相を追悼する記帳所設置と市職員配置は直ちに中止を 。本日団長声明を発表しました。市の対応は県に倣ったと説明していますが、設置理由はあいまいであり、公平公正であるべき自治体のあり方に反すると言わざるを得ません」
(共産党ツイッター)
死者を哀悼する記帳台に「公平公正」という概念がなじみますか。
いっそ県民投票でもして、記帳台の存続を決めますか。
それでは時間がかかるというなら、直近のNHK今年5月の政党支持率ではわず2%の支持率しか持っていないません。
2%の人の反対で記帳台を撤去し、哀悼決議を葬るほうがよほど非民主的です。
ところで、NHKの世論調査では国葬に国民の半分が賛成して反対を大きく凌いでいるようです。
あれあれ国論が二分しているんじゃなかったのかなぁ。
「政府は、安倍元総理大臣の葬儀を、国の儀式の「国葬」として今年秋に行う方針です。
この方針への評価を聞いたところ、「評価する」が49%、「評価しない」が38%でした」
(NHK7月19日)
安倍元首相の「国葬」「評価する」49%「評価しない」38% NHK世論調査 | NHK政治マガジン
NHK
国葬賛成が約半分、しかも年齢層では若年層に行くにしたがって国葬賛成が増える傾向にあります。
「年代別では、20代以下はどちらかといえばを含む賛成が59・4%を占めた。30代も賛成が51・4%。これに対し60代は、どちらかといえばを含む反対が60・4%と多数で、70代以上も反対56・4%、50代も反対52・5%だった。40代では賛否がほぼ拮抗した」
(熊日7月21日)
熊本日々
安倍氏「国葬」賛成42% 反対49% 世代で差、40代境に賛否が逆転 熊日S編アンケート(熊本日日新聞) - Yahoo!ニュース
反対派の人は、駅頭でこんな不気味な立て看板をたてていました。
ホソピー@江ノ島さんはTwitterを使っています: 「このくらいやらないと国民に伝わらないかも。 https://t.co/Kt7RZaxVGA」 / Twitter
す、すいません、一般の人はこんな看板にはどん引きますよ。
お仲間の「権力犯罪を監視する実行委員会」という団体は、安倍氏の国葬に関する予算執行の差し止めなどを求める仮処分を東京地裁に申し立てています。
だめだめ、こういう差し止め請求は札幌地裁に出さなくちゃ。
この人らの言い分は、これも共産党の記帳台反対のリクツと一緒で、「国会で審議しなければいけないのに、議論をせずに決めて、国民の総意に基づいていない」そうです。
国会ひらかなけりゃ、葬式ひとつできないのかね。
あなたたちが言う「国民の総意」ってなんなの。選挙結果ならもう惨敗と出ているんですが。
国会ひらいても、反対は共産党と社民党、立憲が割れて、それ以外の党派全部賛成でしょう。
共産党は採決で反対した。同党の大山奈々子県議は暴力に屈しない意思の表明には賛同するとした上で「多様な考え方の県民がいる中で、亡くなった人への思いを他者が勝手に代弁することは許されない」と討論で述べた。
その共産党が、統一教会を狩りしたいそうです。
田中秀臣氏がツイートでげんなりした声で漏らしていましたが、カルト政党がカルト宗教を狩るおぞましさ。
そしてそれを煽るメディアの醜悪さ。
共産党は、昔から安倍殺せと公然と言っていたところですから、問題を統一教会狩り方向にそらしたいのでしょう。
下写真は2014年8月2日の共産党のブルドーザーデモとやらです。
こういう幼稚な殺人衝動をおおっぴらにして悦に言っていた人らが、今回は国葬反対、記帳台撤去せよですからわかりやすい。
共産党のみなさん、こういう行為を言論の自由とは呼びませんからね。
ともかく国民の安倍氏を悼む気持ちに赤ペンキをかけて汚せさえできれば満足なのです、この人らは。
山上減刑嘆願署名も始まったとか。
「山上容疑者の「減刑」を求める署名を立ち上げたとされる人物は、15日に立ち上げに際してTwitter上で《山上容疑者の非常に辛かった生育環境、境遇に対しての情状酌量、また、非常に真面目で努力家な人柄であり更生の余地が大きい事を訴える署名です。いかなる理由でも殺人を肯定するものではありません》と呼びかけている。
署名サイト「Change.org」内に立ち上げられた検察庁長官宛ての署名には、すでに賛同者が180人を超えている(21日22時30分時点)」
(女性自身7月23日)
安倍氏を銃撃した山上容疑者の“減刑”求める署名が始動も「まだ起訴前」「お気持ちで司法歪める」と物議|ニフティニュース (nifty.com)
なんともかともとため息しか出ません。この間の山上礼賛のなせるわざでしょうが、上の報道も「銃撃」という言い方で山上を間接的にかばっています。
「銃撃」して殺したのです。したがって殺人、ないしはテロ、暗殺です。
「銃撃」だと、死に至ったという意味が消えてしまいます。
こういう言葉を換えて、マイルドにすることで本来持っていた事件の意味を拡散させる言い方はやめてほしいものです。
山上は家は貧しかったから安部氏を殺害したのだ、ということを言う者がいます。こんな調子です。
「安倍元首相の銃撃事件で、山上容疑者が「金がなくなり、7月中には死ぬことになると思った。その前に殺そうと思った」という趣旨の供述をしていることが分かった。奈良県警は経済的困窮から絶望し襲撃を決意した可能性もあるとみている。奈良簡裁は19日、容疑者の勾留を29日まで延長する決定をし」
(ZAKZAK 2022年7月20日)
山上容疑者「金がなくなり、今月中に死ぬ」 経済的困窮から絶望、襲撃決意か 旧統一教会の元会長がソウルで会見 - zakzak:夕刊フジ公式サイト
冗談ではありません。なにが7月には飢え死にするからその前にだ、ふざるな。
山上はテロの準備をしていたから働けなくなって、貧しくなったにすぎません。
統一教会や、ましてや安倍氏のせいではまったくない。
また山上が、奈良県内で有数の進学校を卒業しながら、大学受験を断念して海自に入隊したことを、家庭崩壊と結びつけているものもいます。
大学進学の学費がないなら、官費が支給される防衛大学という進路もありえたでしょう。
海自の隊員は3年間の任期制で、3年目で「士」(兵隊)という階級から、次のステップ「曹」(下士官)に昇任する壁が待っています。
おそらく山上はこの壁に挑戦せずに、その手前で辞めています。
昨今、士から曹への昇給試験は難度を上げていると聞きますが、奈良の進学校出の彼に超えられない壁ではなかったはずです。
これも彼自身の問題です。
ちなみに「元自衛官」という言い方を平然とメディアは使っていますが、まるで「自衛隊」に入隊したことが何らかの烙印のようです。
自衛隊に入ると殺し方や武器の使用法に詳しくなり、殺人をしてみたくなるとでもいうのでしょうか。とんでもない偏見です。
もちろん、海上自衛隊に入っても、小銃訓練は一年に数時間ていどで、ましてや銃や爆発物の自作など、どの自衛隊でも教えているはずがありません。
「山上容疑者が3年間勤務していた海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は同日の記者会見で、「銃の自作能力を自衛隊の教育や訓練で得ることは無理だ。所要もなく、教育訓練を行 うこともない」と話した 」(ZAKZAK 2022年7月20日)
山上容疑者「金がなくなり、今月中に死ぬ」 経済的困窮から絶望、襲撃決意か 旧統一教会の元会長がソウルで会見 - zakzak:夕刊フジ公式サイト
山上は3年契約で辞めており、自衛官としては入り口のそのまた入り口で終わった経歴の持ち主です。
しかもはるか昔の17年前ですから、どのような意味があるのか。
彼は3年任期の候補生で辞めてしまったので、正規の自衛官ではなくただの見習いにすぎません。
未確認情報ではこのような情報も流されています。
「山上容疑者と同一とみられる人物は、佐世保教育隊で訓練を受けた後、14年12月に「まつゆき」へ配属され、大砲や誘導ミサイルなどを扱う砲雷科で見習いとして勤務した後、16年4月に広島・江田島の第一術科学校に所属する練習船へ配属されたそうです。砲雷科の配属がきっかけで爆弾などに興味を持ったのか、もしくは以前から望んでいた部署なのかはわかりません 」
山上徹也の銃は手製で銃弾も手作り?元海自で銃の扱いに慣れてる? | さくさくログ (comedian-wife.com) 。
おいおい、いまの砲雷科はテッポウ持ってバンバン撃つようなものではなく、コンソールに向かって黙々と仕事をするもんなんですがね。
ミサイルが相手で、密造銃製造などお呼びではありません。(あたりまえだつうの)
ましてや候補生の山上は、そのコンソールの前にもすわらせてもらえなかったはずです。
そこで銃に関心を持ったといいますが、それは職業とは無関係の、彼のいわば趣味道楽の類です。
彼の作った銃は技術レベルの幼稚な模造銃で、専門家がよく暴発しなかったもんだと評しているようなものです。
銃器評論家の津田哲也氏はこう述べています。
【画像】山上徹也の押収銃”ブランダーバス”がやばい「ゲームか映画の画像かと…」|トピコレ! (hanayaka-na-life.com)
「一般の人たちは現代銃の連発式の高性能のものを想像されるから、手作りじゃ難しいとお考えになると思うんですが、今回の犯行に使われたのは極めて原始的な火縄銃と変わらない構造なんですよ。(略)
火薬そのものが、黒色火薬は不安定なんですよ。静電気でも発火することがあるんですよ」
「本人が爆死する可能性ある」銃器評論家が警鐘鳴らす”銃の製造”...誰でも手に入る材料で数千円でも『銃破裂で大けが』の危険 | 特集 | MBSニュース
ところで自衛隊を辞めた後の山上について、週刊誌はこんなこと書いています。
「母親は02年に破産します。山上容疑者は食べる物にも困り、保険金で妹たちを助けようと自殺未遂を起こしました。安倍氏を銃撃した事件当日には、借金が60万円ほどあり所持金はほとんどなかったようです。心身ともに、相当疲弊していたのでしょう」(前出・記者) 母親は02年に破産します。山上容疑者は食べる物にも困り、保険金で妹たちを助けようと自殺未遂を起こしました。安倍氏を銃撃した事件当日には、借金が60万円ほどあり所持金はほとんどなかったようです。心身ともに、相当疲弊していたのでしょう」
(Friday 7月19日)
山上容疑者が手紙&SNSに綴った「母と安倍氏への意外な感情」(FRIDAY) - Yahoo!ニュース
なにを短絡したことを言っているのか。
これではまるで母親の破産による一家離散で極貧に追い込まれ「食べ物もない」ことが暗殺の理由のようです。
自殺して返済をするのは、違法行為です。
妹を助けるだなんていいながら、こんなテロ事件を起こせば、誰がいちばん迷惑するのかわかりきったことです。
山上は家族思いだと書きたいらしいですが、その「家族思い」が一瞬でも安倍氏の家族について思い致したことがあったのでしょうか。
山上は、こういう社会ルールを容易に逸脱する短絡的思考する男だとわかるだけのことです。
それがメディアにかかると、山上かわいそう、山上健気、統一教会が絶対悪なのだ、社会が悪い、といったお涙頂戴ストーリーになってしまうのですから、いいかげんにしてほしいものです。
ところで山上は普通に学校に通い、様々な職場で働いていました。
自衛隊で働こうとおもえば一生働けたし、その後も資格を活かして働くつもりならいくらでも職はありました。
山上は自衛隊を辞めた後、しっかりとフィナンシャルプランナーや宅建建物取引士の資格を取って働いているのですから。
「海上自衛隊を退職したあとは、ファイナンシャルプランナーや宅地建物取引士などの資格を取り、複数の会社で派遣社員やアルバイトとして働いていたとされますが、その間のことを証言する友人などはまったくいない」
(ポストセブン7月19日)
山上徹也容疑者のTwitterが閉鎖 明かしていた『ジョーカー』への感情移入「真摯な絶望を汚すやつは許さない」
FPや宅建の資格を持った契約社員なら、同世代では頭ひとつ高給をもらっていたはずで、極貧なわけがありません。
逮捕時にカネがなかったのはテロにハマってまともに働かなかったからにすぎませんし、サラ金に60万借りていたくらいで世界的政治家を殺していいのでしょうか。
自分を不遇だと思い込み、その原因すべてが統一教会のせいだと考えたから、おかしくなったのです。
初めは弁護士らと母親の献金したカネを半分取り返したりしていたところまでは常識的ですが、その後は文鮮明とその妻を殺害しようとし、それもかなわず、では一家まるごと殺すことを考えて迷走し、いっそう隘路にはまり、最後は安倍氏殺害というわけのわからない方向に突進しました。
すべて自分のせいです。
精神的に疲弊していたのはテロリズムの魔力に屈伏してしまった自分自身の問題ですし、貧しかったのは働かなかったからで、社会的に孤立したのもテロの妄想に支配されていたからにすぎません。
全部彼自身が生み出したものなのです。
ところで、山上は自衛官の「服務の宣誓」はしませんでした。
山上が撃った安倍氏は、常々自衛隊の「服務の宣誓」について話していました。
「わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し」から始まる宣誓は、最後に「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」で締めくくられます。
この言葉がいかに重いことか。
自らの生命をかけて日本の独立と平和を守るということなのですから。
だから自衛隊員に死地に赴けと命じねばならない立場の首相にできることは、自衛隊を「国軍」という正しい地位で遇すること、その生活や労働環境を向上させること、一朝ことあった場合には、無駄死にさせない装備を持たせること、死した後は国がその霊を日本国がある限り祀るということだったのです。
安倍氏の改憲論には魂があると言われるのは、そういう温かい自衛官への思いが込められているからです。
また安倍氏が防衛予算の倍増を唱えたのも、よく言われるような「2%ありき」ではなく、たとえば足りない訓練費用、全国の部隊で異なる通信機器、本当に戦争になったら3日と持たない弾薬の備蓄不足、なにより新隊員が集まらない待遇の低さの改善などが念頭にあったからです。
一生勤めたくても勤められない、訓練したくても予算がない、ほんとうに戦争になったら何日耐えられるのか、こういう自衛隊の現場の声にもっとも耳を傾け、その改善に力を尽くしたのが、安部氏でした。
●執拗に荒しがコメント欄に入っていますが、まったく読まないで削除していますので、無駄なことはしないように。
山上の手紙と称するものがでてきました。
あるフリージャーナストに当てたものでだそうですが、真贋はなんともいえません。
内容的には、前半は母親と教団への恨みつらみ一色です。ここまでは分かりやすい。
「親が子を、家族を、何とも思わない故に吐ける嘘、止める術のない核心に満ちた悪行、故に終わる事のない衝突、その先にある破壊」
「母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産…。この経過と共に私の10代は過ぎ去りました。その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言っても過言ではありません」
「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」
40男がなにを甘えたことをグチャグチャと、と思って読みましたが、ならば、母親なり教団幹部と刺し違えて自殺でもすればよいのです。
安倍元首相を暗殺した山上容疑者の今後は?「死刑の可能性低い」と元東京地検特捜部検事 | 女性自身 (jisin.jp)
山上容疑者 犯行前日に知人男性宛ての手紙投函か 安倍元首相は「本来の敵ではない」― スポニチ Sponichi Annex 社会
これだけの文章を書けるのはスゴイと妙に褒めそやす者がいますが、なにを言っているのか。
山上は奈良県トップクラスの高校出身者なのですよ、こんなていどの作文ができてあたりまえです。
この「手紙」(というより犯行声明文ですが)には、肝心要の安倍氏殺害動機が語られていないという重大欠陥があります。
書いているのは、オレの人生は母親の入信で歪められた、教団は「人類の恥」だということだけをグチグチ書いているだけです。
これが犯行声明文ならば、安倍氏殺害動機を明確に掲げねばなんの意味もありません。
かくかくしかじかで安倍は大悪人なのだから天誅を決意した、と言わねばなりませんが、その部分は末尾にチョロっと一行「もはやそれを考える余裕はありません」ときているのですから、ふざけるのもいいかげんにしてほしいものです。
世界数百カ国の首脳が弔問に訪れ、数万人の国民が記帳し、日本国が国葬で送ろうという人物を殺害しておいて、「もはや考える余裕がない」、とはどういう意味なのでしょうか。
山上は、安部氏にターゲットを絞った経緯について、いちおうの説明は試みています。
しかしこれがよくわからない。
文鮮明やその妻である韓鶴子、あるいはその子供たちを殺そうと計画したが、殺してしまうと三男四男が喜んで新しい教祖になりそうだ、ほんとうは全員殺さねばならないが不可能だからやめた、ということのようですが、全般の恨み節では饒舌だった彼がここになると妙に歯切れが悪い印象です。
これでは無差別殺人です。
というか自分でも整理できないまま短絡的犯行に及んだのか、あるいはなんらかの教唆で安部氏殺害へとねじ曲がったのかもしれません。
ここに山上はJFK暗殺事件におけるオズワルドだ、という謀略説が生まれる余地を残しています。
たしかに、安倍氏を抹殺したいという者は国の内外にひしめいており、無能を絵で描いたような奈良県警の警備を見ると、なくはないと思わせてしまうのも事実ですが、謀略論にはまるには早すぎます。
さすがに山上も、文教祖、ないしはその血族を殺すのが筋だということくらいわかっていたようです。
ところが、エネミーナンバーワンのはずの文が死んでしまい、教団は跡目争いで分裂してしまいました。
すると、もうどこを叩いていいのかわからず、一家全員まとめて殺害などと気分だけはエスカレートしても実現はいっそうむずかしくなって頓挫したようです。
ならば、ここで暗殺計画を止めて当然です。
“元ナンバー2”が旧統一教会批判も、実態は“どっちもどっち”?…背景には文鮮明氏ファミリーの分裂も(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース
ターゲットなき暗殺計画などありえませんから、後半3分の1は自分でもなにを書いているのかわからない錯乱状態です。
教団トップを殺せば三男四男が新しい教祖になる、分裂して弱体化した教団が再結集してしまって再び強力になってしまうかもしれない、どうやってもだめじゃん、ええい、ならば安部を殺す、なんですかこの短絡は?
山上はここで暗殺の限界を知るべきだったのです。
暗殺という手段を使えば、ひとりを殺しても次の新しい権力者を生み出してしまいなんの解決にもならないことは、わかりきったことです。
だから、暗殺という手段は99.9%が無意味です。
日本史上もっともテロの嵐が吹き荒れたのが幕末期ですが、政局に影響をあたえたのは唯一桜田門外の変だけです。
残りの有象無象のテロは無意味な殺人にすぎませんでした。
今回の安部氏暗殺ですら、衝撃は巨大ですが、岸田氏が安部氏の役割を自覚する作用を生み出せば、政治的影響は最小限で治まります。
山上よ、だったら初めからやるな。
教団が分裂してしまって誰を殺していいのか自分でわからなくなった段階で、テロ計画は中止しろ。
ここで止めていれば、お前は市民生活に戻れたのだ。
ところが山上は、最後の時期にはテロリズム自体が持つ魔力の虜になっていたようです。
暗殺は、(語弊がありますが)「楽しい」のです。
他者の生命、しかも安倍氏のような世界的指導者の命が、自分の掌中にある、いつでも引き金ひとつでそれを奪えるという倒錯した万能感。
死をもたらすことで、安部氏を凌げると感じる支配感。
オレのようなさえない一生を送らされた男でも、安部を殺したことで時代の寵児になるれると思う屈折した達成感。
ゴリアテにも似た巨悪を石つぶてひとつで倒そうとするダビデの自分、という擬似的正義感。
そう考えて、山上はえも言われぬ快感に酔ったことでしょう。
テロリズムという悪習から人類が自由にならないのは、これがあるからです。
ですから、山上は安倍氏を付け狙い、それに向けて密造銃や爆弾を作っていた時、生まれて始めて「生きがい」らしきものを感じたはずです。
ユーチューブで製造方法を学び、DIYで部品を物色して製造するかたわら、標的と定めた安倍氏の動向を探って付け狙いながら、ふと自分でもいくらなんでも無茶な八つ当たりテロではあるまいか、とどこか気がついています。
オレはナニをやっているんだ、という悔恨の声が湧いて当然です。
ここで普通の人間は止めます。理性のストッパーが掛かったからです。
しかし山上は、「今のオレには政治的意味を考える余裕はない」と、その声を無理やり押し殺してしまいます。
馬鹿め、どの段階でも引き返すチャンスがありながら、テロリズムの持つ魔力に引き込まれていきやがった、と私には見えました。
この理解不能な飛躍の背景には、その死後も溢れる安部ヘイトがあるとかんがえるのは自然でしょう。
このことは多くの人が指摘しています。
私たちは下のような報道を丸々2年間も見せられ続けたのです。
そしてこのモリカケ桜全開の時期こそ、山上が安倍氏にターゲットを変更した時期に当たっていました。
「このような偏った報道が、今回の事件の遠因にあるのではないかと個人的には思っている。先ほども言ったように、ヘイトクライムというのは、みんなが叩いている「わかりやすい敵」を叩く傾向にある。
近年、安倍氏ほど、マスコミなどから叩かれた政治家はいない。その中には真っ当な政策に対する批判もあったが、中にはSNSの誹謗中傷のように、人格をおとしめるようなものも多くあった。そういう「ヘイト」は当然、山上容疑者も把握していたはずだ。なにせネットで、教団関連団体に安倍氏がビデオメッセージを送ったのをチェックして、統一教会との関係も調べていたくらいなのだ。
そのような大量の「安倍ヘイト」に、山上容疑者も刺激された可能性はゼロではない。教団幹部の中で誰を殺せば最も教団にダメージを与えられるか、などと複雑な問題と向き合うより、「日本に統一教会を持ち込んだ悪の政治家・安倍晋三」を殺害すればすべて解決だと自分に言い聞かせた方が、山上容疑者的にもラクだし納得感があったのではないか」
(窪田順生7月14日
宗教団体を恨んで安倍氏狙う不条理…犯人は「ヘイトクライム」思考の典型だ | 情報戦の裏側 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
まぁ、でしょうな。
その意味で、アベヘイトを延々と2年も3年も毎日垂れ流し続けたメディアは立派な共犯者なのです。
教祖殺害に挫折した山上に新たな目標を教唆し煽動し、死後も安倍氏の死を毀損し続けるメディアの犯罪が、氏を殺したということです。
ただし、山上はその前になんども引き返す機会はあったが、テロリズムの持つ魔力に魅せられていたのです。
承前
ことを複雑にしたのは、統一教会は政界に触手をのばしたことです。
統一教会は、半世紀ほど前に「国際勝共連合」というフロント組織を作って、岸元首相に取り入りました。
岸は、いうまでもなく「昭和の妖怪」と呼ばれたほどの政治力を持つ自民党の重鎮です。
勝共連合こと統一教会は威勢よく韓国は反共の砦だ、団結して共産主義と戦おう、資金は潤沢にある、票も世話する、共に反共の草の根運動をしようではないか、と言ったのですね。
岸は賛同し、ここから自民党と統一教会との腐れ縁が始まったのです。
もちろん、この工作の背後には米国がいました。
おそらく岸は、米国筋からの圧力も受けて、KCIAがバックにいた勝共連合との接近を促されていたのでしょう。
「戦後、米国がSCAP(GHQ)による敗戦国・日本の占領政策を行うにあたり、既に始まっていた米国とソビエト連邦との間の冷戦構造に対して、東アジアの共産化を防ぎ、民主主義陣営につなぎ留めておく必要が生じました。
そして、占領下における日本の反共産党対策のために、当時の韓国の情報部門「KCIA」から後援を受ける形で統一教会が「国際勝共連合(勝共連合)」を創設したのは、1968年1月(一説には1966年9月)にさかのぼります。
日本だけでなく、海外のメディアも「なぜこの時期の反共的活動に情報部門が?」と疑問に思う部分が多くあるようですが、実のところデフコン(防衛準備態勢)の最高ランクにまで緊張が高まったキューバ危機が1962年、米ソの緊張緩和政策であるデタント政策が米大統領のリチャード・ニクソンとソ連書記長レオニード・ブレジネフとの間で成立したのが1969年です」
(山本一郎7月13日)
「勝共連合」から続く歴史、自民党は今すぐ旧統一教会(家庭連合)と手を切れ(JBpress) - Yahoo!ニュース
勝共連合の創設は、朝鮮戦争という現実の熱戦を経験した後の東西の緊張が最高潮の時期でした。
この時期の自民党政権は、戦前から続く旧来派閥の抗争、駐留軍と名を変えた占領軍の日本統治政策、不安定な朝鮮半島、共産陣営に加担して武装闘争にまで走った共産党、そして彼らの影響下にある過激な学生運動と労働運動、こういった複雑な情勢の中で政権運営をせざるをえませんでした。
たぶん当時の岸にとって、勝共連合は頼もしい助っ人に見えたのでしょう。
このように統一教会=勝共連合と自民党の「共闘」は、冷戦が極点に達した時期に生まれた非常に特殊な関係だったのです。
しかしそれが冷戦が終了した後にも、一部ではズルズルと党内に尻尾を残していまいました。
1991年にソ連が崩壊すると、米ソ冷戦の構造の中でアジアの共産化を防ぐ目的で作られた勝共連合も、存在意義を急速に失います。
この時期に、自民党は彼らと袂を別つべきでした。
なぜなら、統一教会はなんと昨日の敵、あれほどまでに罵っていたはずの「ならず者国家」に急接近するのですから。
まさに裏切りです。
元来、文鮮明教祖を頂点とする国家内国家で、いわばミニ全体主義国家ですから北朝鮮とそっくりな組織体質で、むしろ民主主義国家よりも北朝鮮のほうに親和性が強いのです。
統一教会は、いつのまにか南北早期統一を主張する親北団体に変質してしまいました。
訪朝した文鮮明はキムイルソンと抱擁し、さまざまな北への支援と合弁事業を提案したとか。
この対北資金の出所は、日本人信徒から巻き上げたカネで賄われたのですから、まったくやりきれません。
日本人信徒は、家屋敷を売ってキムイルソンに貢いでいたのです。
『金日成と文鮮明』(キム・ドンギュ)という統一教会系の本は、キムイルソンをこんなふうに礼賛しています。(おいおい)
「ふたり 金主席が朝鮮半島の共産化を夢見た場合は、文総裁は地球上で共産主義を追い出すのが目標だった。両方とも「統一」を言ったが、そこに至る道は全く違った。
軍人であり政治家であった金主席はやたらに「武力」のみを育てたのに対し、宗教家であり思想家であった文総裁は最後まで「平和」に訴えた。
二人は1991年に会って合意した内容の中には「金剛山開発」と「南北文化芸術交流」が入っている。政治と軍事の代わりに経済と文化で北朝鮮を変化させようとした文総裁の強力な要請がもたらした成果だ」
(『金日成と文鮮明』キム・ドンギュ)
【BOOK】 金日成と文鮮明/キム・ドンギュ著/ | 奇 知 外 記 - 楽天ブログ (rakuten.co.jp)
デイリーNKジャパンの高英起氏が指摘していますが、文鮮明は北朝鮮地域の出身で、1991年頃から北朝鮮人脈の中枢に食い込み、旧ソ連の崩壊に伴う重油供給停止を契機に経済的困難に直面した北朝鮮に対し支援を送ります。
これは経済支援だけにとどまらず軍事支援までにも及び、制裁破りにも加担しています。
1993年から94年にかけて、ロシア極東管区から「くず鉄」名目で輸入した、ゴルフ級潜水艦をベースに弾道ミサイル潜水艦を北朝鮮が開発したと見られる一件では、統一教会系人物が設立したT社が取引を仲介していました。
北朝鮮 弾道ミサイル発射可能の新型潜水艦建造=韓国筋-韓国新聞・北朝鮮 (wowkorea.jp)
「米国から強い要請を受けた通産省(当時)は、取引に介入。「くず鉄」であることが完全に証明されるまで輸出を凍結するよう、T社とロシア側の双方から確約を取った。
ところが、この約束はロシア側によって一方的に反故にされる。同年5月、ゴルフ級1隻が日本側に無断で北朝鮮へ曳航されたのだ。ゴルフ級は前年12月にも1隻が運ばれており、計2隻が北朝鮮に引き渡されたことになる。(略)
ゴルフ級はミサイル発射装置が取り外されていたかどうか、第三者が確認できないまま北朝鮮に渡ったということだ。この一部始終は、北朝鮮がゴルフ級を入手するために巧妙に仕組まれたものであった可能性が高い。(略)
T社は統一教会の系列企業であることを明かしている。
同社の代表と3人の役職員は全員がソウルでの合同結婚式に参加した男性たちだという。ちなみに、長らく「反共」を唱えていた統一教会の文鮮明教祖は、1991年に電撃的に訪朝。金日成主席と会談し、核開発問題で孤立を深める北朝鮮のスポンサー的存在となっていた」
(高英起 デイリーNK2014年12月18日 )
北のミサイル潜水艦開発(中) 阻止に動いた日本 | DAILY NK JAPAN | Page 3 (dailynkjp.com)
このように北朝鮮への経済制裁強化後も、統一教会は朝鮮総連と並んで日本社会における在日北朝鮮系の組織として活動するだけでなく、韓国を経由して対北朝鮮へと流れ込む闇の資金の出所を担っていました。
通常なら違法な資金移送も、統一教会は宗教法人の資格を使って堂々と韓国に送金し、それが韓国を経由して北朝鮮に送金されていたのです。
つまりは統一教会=勝共産連合とは、内部的には集団結婚を強制し、霊感商法で財産を巻き上げて多数の裁判ざたを引き起し、政治的には反共は表向きで内実は北朝鮮支援団体というカルト宗教でした。
このように、統一教会の背景には東西冷戦と激化している朝鮮半島情勢があったのです。
韓国は統一教会を使って日本の政界に浸透しよとし、一方北朝鮮は朝鮮総連を拠点にして社会党や朝日などのメディアを使おうとしたわけです。
しかし冷戦終了後、統一教会まで北朝鮮の送金装置に変質してしまったのです。
統一教会は霊感商法で、山上の母親のような犠牲者を大勢作っていたのですから、この時期に政府はカルト宗教を徹底的に社会から排除すべきでした。
しかし武力で国家転覆まで図ったオウムですら、野党とメディアの反対で破防法ひとつかけられませんでした。
統一教会などのカルト宗教は、今もぬくぬくと宗教法人の特権に浴しています。
半世紀前ならいざしらず、今は統一教会の自民党に対する影響力など皆無に等しく、議員がおつきあいでメッセージを送っているだけです。
とはいえ、いい機会ですから、自民党は統一教会のようなカルトとは完全に縁を切るべきです。
かつてのオウムや統一教会のような悪質なカルト宗教が宗教法人を名乗れるような法律は変えねばなりません。
安部氏暗殺と統一教会問題は別次元ですが、それはそれとしてカルト宗教の野放しが山上のような男を生んだのは事実 だからです。
そして閣内にもぐり込んでいる宗教団体とも、いいかげん関係を絶つべきです。
統一教会とは、ひとことで言えば韓流カルト宗教です。
表向きはキリスト教を装っていましたが、韓国にうようよしているまがいもので、俗に言うウリスト教の一派です。
韓国人はアジア有数のキリスト教国というのが自慢なようですが、その大部分はこのプロテスタント系のウリスト教徒で占められています。
韓国の統計庁がまとめた2015年時点の調査では、「信仰する宗教がある」と答えたのは43.9%。内訳は15.5%が仏教、19.7%がプロテスタント、7.9%がカトリックでした。つまり韓国社会の27.6%、約3割がキリスト教徒です。
歴代の韓国大統領も、李承晩と李明博はプロテスタント、金大中、盧武鉉、文在寅はカトリックです。
保守系がプロテスタントで、左翼系がカソリックです。
では、なぜ韓国の新興宗教の多くがプロテスタント由来なのかと言えば、カトリックはバチカンを頂点とした一枚岩なのに対し、プロテスタント系の教団ではカリスマ的な牧師が自分のシンパを引き連れて、どんどんと分派していくからです。
大げさに言えば、韓国のプロテスタント系教団の場合、ちょっと仲間と喧嘩したらすぐ分裂してしまうひとり一派教団なのです。
だから、仰天するような聖書解釈や、教祖を独裁者にする異様な全体主義的教団がたくさん誕生し、不祥事の温床になってしまいました。
統一教会も、ごたぶんに漏れずプロテスタント系です。
韓流新興宗教は、自分の国だけでやっているぶんには勝手にやったらぁですが、韓国人ニューカマーと共に海を渡って日本に上陸しました。
統一教会から分派した「摂理」は、牧師が信徒の女性に淫行を働いたり、違法な献金を求めたりしたので問題になりました。
しかも統一教会は、妙な使命感すら持っていました。
それは道義的に韓国は日本より上だから、道徳的に悲惨な日本人を救済してやる、というありがたい任務だそうです。(ダーッ)
「「統一教会」や「摂理」などの韓国の新興宗教の場合は、現実の政治的な日韓関係が影響している感は否めません。「日本から虐げられたぶん、道徳的に韓国は有利だ。キリスト教が弱く、道徳的にかわいそうな日本人を救う使命がある」という意識が、進出の原動力に加わっている側面はあると思います」
(文春オンライン 2021年3月3日)
コロナ感染の「新天地イエス教」からハーレム教団まで 韓国で“密室誘惑のカルト”が生まれる理由 | 文春オンライン (bunshun.jp)
この統一教会を日本で有名にさせたのは、桜田純子が合同結婚式を上げたあたりからでした。
文鮮明教祖が結婚相手を決めて、それを一カ所に集めて大集団で式をあげさせるんですから、まともな人なら近づきたくもないでしょう。
しかし、当人たちは恍惚としてマンセーですから、う~気持ちが悪い。牛のセリだってもっとましです。
桜田純子も、こうして教祖が決めた相手と結婚しました。
旧統一教会の合同結婚式、「マンセー」と「アイゴー」交錯する壮絶儀式だった(JBpress) - Yahoo!ニュース
「巨大なスタジアムが純白のウエデイングドレスで埋まっていたのだ。この日の為に世界中から3万625組のカップルが集まったという。
その光景は不気味としか言いようがなかった。その中にどこか晴れ晴れとした風の桜田淳子や山崎浩子の姿もあった。
やがて教祖、文鮮明と妻の韓鶴子が冠を頭に乗せ、クリーム色に金筋のガウンをまとって姿を現した。すると3万625組の男女が一斉に「ムーン・ソンミュン、ハン・ハクチャ、マンセー(万歳)!」と連呼する声がスタジアムに響き渡った。(略)
ここに集まった信者たちは一人あたり参加費30万円と感謝金140万円を統一教会に払ったという。アフリカなどの貧しい開発途上国から来た花婿は、田畑を売り、周りから借金までしてギリギリで来たとも聞いた」
(橋本昇 2022年7月14日)
旧統一教会の合同結婚式、「マンセー」と「アイゴー」交錯する壮絶儀式だった(JBpress) - Yahoo!ニュースkカルト教団は、半世紀ほど前に「国際勝共連合」というフロント組織を作って岸元首相に取り入りました。
統一教会がしまくったのが霊感商法でした。
例の壺をめちゃくちゃな値段で売りつけるアレです。
山上の家も壺だらけだったとか。
やがて壺では済まずに、全財産むしりとられます。
手口は、初めは身元を隠して啓発セミナーのような顔してターゲットに接近し、折りを見て教団に誘い込みます。
「布教、勧誘の際に団体名や活動内容を明かさず、人間関係ができた時に明かす。それから“姓名判断”“霊感占い”だ。壺や数珠、多宝塔といった“霊感グッズ”を、50~100万円ほどで売っていた。“聖本”が3000万円だというのは本当だが、霊感グッズについては、相手の懐具合によって変化させていることも特徴だ。こうしたことが後に損害賠償請求に繋がり、多くのケースで敗訴しているし、全国の弁護士会への被害相談は昨年も今年もある」
(abemaタイムズ2022年7月13日 北海道大学大学院教授・櫻井義秀 宗教社会学)
旧統一教会の「“エバ国”日本が資金調達し“アダム国”韓国に捧げる」システム…それでも続いた自民党“保守政治家”との関係(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース
そして啓発セミナーで誘い込んだ人に、あなたが不幸なのは、ご先祖供養が足りないからだとか、水子の霊がどーたらこーたら、というキリスト教とはぜんぜん関係のないヨタ話で引き込みます。
これが不幸にも日本で大当たりして、統一教会は莫大なカネを稼ぎだし、本国に送金しました。
ただし統一教会は日本だけで違法な集金を行い、本国の韓国ではやっていません。
これは教理的には、日本が霊的に低い存在なために、エバ国の日本がアダム国の韓国に献金せねばならないからだそうです。(はいはい)
「霊感商法、そして訴訟関係は日本を中心として起きていて、アメリカや韓国では起きていない。これは日本の旧統一教会だけが、いわば違法な形で資金調達をし、それを韓国の本部に送り届けるというミッションがあるからだ。旧約聖書にアダムとエバが禁断の木の実を食べたという話が出てくるが、エバが先に食べ、そしてアダムに渡したとされている。これが旧統一教会の教義では、アダム=韓国で、エバ=日本だということになっている。つまり“エバ国”である日本の支部が資金調達をし、“アダム国”である韓国の本部に捧げる。そして韓国がアメリカなど各国の支部に配分し、世界的な布教戦略を展開してきたということだ」
(櫻井前掲)
日本人信徒はカネを巻き上げられて韓国に貢いであたりまえだ、彼らはかつて朝鮮人を奴隷にしたのだから、といった理屈が統一教会にはあったのです。
この意識は、日韓基本条約から慰安婦・徴用工訴訟まで一貫して韓国側の中にある、日本は食い物にされてとうぜん、貢いであたりまえというねじくれた意識と同一です。
統一教会は、「日本の皇室には朝鮮人の血を入れねばならない」「日本民族は日帝36年の原罪を背負って韓国民に永遠に謝罪せねばならない」という反日説教を信者に吹き込んで、財産を吸い取っていたのです。
山上の母親も、たぶんこの反日説教を食らって動揺したところをカルトにつけ込まれたのでしょう。
ちなみに国際的なカルト宗教の定義をおさえておきましょう。
①精神の不安定化(洗脳、マインドコントロール)
②法外な金銭的要求(多額の寄付金要求)
③住み慣れた生活環境からの断絶(監禁、出家など)
④肉体的保全の損傷(精神的暴力も含む暴力)
⑤子供の囲い込み(子供の洗脳教育、宗教2世、カルト二世問題)
⑥反社会的な言説
⑦公秩序の攪乱
⑧裁判沙汰の多さ
⑨従来の経済回路からの逸脱
⑩公権力への浸透の試み
「セクト構成要件の10項目」
カルト - Wikipedia
フランスで「セクト」は党派という意味ではなく、カルト教団をさす用語です。
オウム真理教はこのすべてに該当し、統一教会は①②⑧⑨に当てはまります。
長くなりそうなので、次回に続けます。
まるで岸田さんに、死せる安部氏が憑依したかのようです。
いままでの検討と先送りの姿勢が姿をひそめ、国葬、原発再稼働などで凛々しい対応を示し始めたのです。
どうしちゃったの、岸田さん。
「岸田文雄首相が14日、参院選の街頭演説中に銃撃され死亡した安倍晋三元首相の「国葬」を秋に実施する方針を表明した。昭和42年の吉田茂元首相の国葬以降行われておらず、戦後2例目。政府内にも慎重論があったが、首相が押し切る形で決断した。
「最初から国葬でやると決めていた。法的な問題を詰めていた」
首相は14日夜、周囲に語った。政府関係者によると、内閣法制局などと調整し、実施のメドが立ったのは記者会見前日の13日だった。
平成5年の初当選同期で、第2次政権では外相として安倍氏を支えた首相自身、追悼方式には強いこだわりがあった。官邸関係者は「(首相は)安倍さんに対し、周りが思う以上の思いを持っている」と語る」
(産経7月14日)
「国葬」慎重論 首相が押し切り決断 - 産経ニュース (sankei.com)
事件当日、安倍氏暗殺について官邸で答える岸田氏の目は充血していました。
安部氏と岸田氏は1993年同期当選の仲で、事件後、下の写真をインスタグラムにアップしました。
この写真は1997年に、若手政治家の登竜門とされた青年局長を安部氏から引き継いだ時のものですが、安部氏はそんなに変わらないないが、岸田さん若い!
たしか長銀だったとおもいますが、いかにも銀行員。ぜんぜん頼りにならないかんじが一緒(失礼)。
「岸田文雄首相は8日夜、銃撃で死去した安倍晋三元首相とのツーショットの写真を自身のインスタグラムに掲載した。「多くの時間を共にした良き友人」とのメッセージも書き込み、別れを惜しんだ。笑顔で握手する若かりし頃の両氏の姿が写っている」
(日経7月9日)
岸田首相、安倍氏との写真掲載 「良き友人」別れ惜しむ: 日本経済新聞 (nikkei.com)
岸田首相、安倍氏との写真掲載 「良き友人」別れ惜しむ: 日本経済新聞 (nikkei.com)
かつて安倍氏は、こんなことを言っていました。
「安倍氏は、首相、茂木氏と初当選同期だとして、「同期一番の男前は岸田文雄、一番頭がいいのは茂木敏充、そして性格が良いのが安倍晋三と言われている」とあいさつし、笑いを誘った」
(日経2021年12月14日)
「同期一番の男前は岸田」「頭いいのは茂木」と語った安倍氏、最後に「そして性格良いのが安倍」 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp) 。
安部氏か冗談好きなのは有名で、ゴルフで負けるのはダジャレを考えていたためという話があるくらいです。
国民に哀惜されるのは、政治的功績だけではなく、安部氏のこういう柔らかい人柄があるのでしょう。
岸田氏と安部氏は、党内で対局に位置すると見られていましたが、実はあんがい強い絆で支えあっていたのかもしれません。
安部氏は、常々自分の後継首相は岸田氏だと言っていたようで、早い時期から岸田氏を閣僚に登用し、最後は外相として遇しています。
この岸田氏の温かい思いがなければ、国葬についてかくも早いスピードで実現する段取りにはならなかったはずです。
ところで、この国葬こそ自民党がもちこたえねばならない一線でした。
今までの自民党は、安部氏と岸田氏を中心に回っている二重星的太陽系のようなものでした。
ふたりはリベラルと保守に役割分担することで、自民党を幅広い支持層を持つ国民政党にしていたのです。
対局にいるように見えて、岸田氏は安保法制など枢要な政策では安部氏を支えていました。
ですから、二つの恒星のひとつが消えたいま、残ったもうひとつの恒星である岸田氏がなんとしてでも自民党をまとめきらねば、バラバラに分解し派閥に閉じこもるようになっていきます。
その派閥でさえ、安部派は中心を失って危機にさらされています。
また自民支持層も、岸田自民党に絶望して大量に離反していくことでしょう。
実はその試金石が国葬だったのです。
いま左翼メディアがワイドショー民をどう煽っているかといえば、こうです。
「実際、旧統一教会の政界への浸透は凄まじい。日刊ゲンダイは旧統一教会と関係のある国会議員112人のリストを入手。ジャーナリストの鈴木エイト氏が長年の調査によってリストアップしたものだ。
「統一教会との関わり方は様々ですが、議員本人のイベント出席や秘書の代理出席、祝電など、教団系メディアの生配信やネットに残っている公開資料等で確認できたものをリスト化しています。公になっていないだけで、関りのある議員は他にもいると考えられます」(鈴木氏)
リストを見ると、やはり自民党議員が圧倒的に多い。衆院議員78人、参院議員20人が統一教会系の団体等との何らかの関わりが確認された。野党でも立憲民主党6人、日本維新の会5人、国民民主党2人が関わりを持っていた。そのうち閣僚、党幹部の経験者だけでも34人に上る」(日刊ゲンダイ7月16日)
旧統一教会と「関係アリ」国会議員リスト入手! 歴代政権の重要ポスト経験者が34人も|ニフティニュース (nifty.com)
この日刊アベヘイトは、表まで乗せて自民の統一教会汚染がこんなにありましたよ~、アベが殺されて当然だよね、といわんばかりです。
そしてもう一方で、山上の叔父まで登場させて、しっかりした優秀な若者だった、家族が離散しなければ、ううっ、可哀相なテツヤちゃ~んと泣いて見せます。
一方で同情を引きながら、一方で山上家を地獄に落とした巨悪の統一教会に自民がこんなに汚染されているっ、その頭目がアベだったんだ~と、まるで殺人を正義の鉄槌に見せかけるアンバイです。
朝日の川柳コーナーですが、川柳なのにまったく笑えないどぎつさです。
こうして、何もないところに煙が立つのです。
いままでさんざんモリカケ桜で見せられてきた、左翼の伝統芸です。
こんなことばかりやって、まともな政策論争をしないから劣化したのです。
志位氏や辻本氏などが、国論を二分したアベの国葬ハンタイなどといっていますが、二分したならどうしてこんなに選挙で惨敗ばかりすんの。
いま彼らがやっているのが、安部が撃たれても当然だ、さらには山上、よくやった、お前はこそヒーローだという世論です。
そのうち山上減刑嘆願署名くらいやりそうです。
やれやれ困ったもんだ。
そもそも統一教会なんて前世紀の遺物、とっくに今の自民への影響力なんて消滅しているですから。
残っているのは、選挙の票目当てのえげつない議員だけです。
磐石の選挙基盤を持つ安部氏には、統一教会票など不要なことはいうまでもありません。
ここで岸田氏が持ちこたえたことは、高く評価できます。
彼が「聞く耳」を持って、法制局のように法的根拠がないから、外務省のようにこんな巨大な国際イベントをやったことがないから、財務省のようにカネはどうするんだという反対の声に屈していたら、その時点で自民党の保守票は維新か国民に去っていったはずです。
オレがなんとかする、安部氏の死は国葬で遇さねばならないのだ、という岸田氏の一念がそれをくい止めたのです。
岸田氏については、もう少し様子を是々非々で判断させてもらいます。
この安部憑依が本物であることを祈ります。
昨日もコメントで統一教会と安倍氏が関わっていことをお前はどう思うのか、安倍氏のメッセージを見て殺害する気になったのだぞ、というコメントをもらいました。
どうも思いません、それで殺人は合理化できませんよ、と答えました。
私はこういうベッタリと犯人に「寄り添う」見方はそうとうに嫌いです。ゾっとします。
かつて私も、自分が不幸な星の下に生まれてきてしまったと思いこんでいた時期があるだけに、いっそうそう思います。
いかにも弱者に寄り添うような顔をしている者の仮面の下から、なんとかして安倍氏暗殺を別の方向に逸らしたい、という政治的思惑が透けて見えます。
朝日など、もう可哀相な山上サン、安倍を殺さざるをえなかったのですね、被害者は安倍じゃない、本当の被害者は悲劇の「てっちゃん」なのですね、と大号泣です。(勝手に泣け、バーロー)
「安倍晋三元首相が銃で撃たれて殺害された事件で、殺人容疑で送検された無職の山上徹也容疑者(41)の一家をよく知る男性が12日、取材に対し「本当に信じられない。生い立ちを知る立場からすると、心が張り裂けそうだ」と話した。
男性によると、山上容疑者には兄と妹がいた。愛称は「てっちゃん」。感情を表に出さず、口数も少ないが、高校で応援団として頑張る姿を見て「地味だけど、頑張り抜く子だ」と思っていた」
(7月12日)
山上容疑者の生い立ち知る男性が語った「てっちゃん」 最後に見た涙:朝日新聞デジタル (asahi.com)
【文春】山上徹也の壮絶人生がかわいそう!母親の統一教会傾倒に同情の声!|トレンド24 (hblmovie.jp)
もう泣き節全開。感情論の安売り。
その男性は「地味だけどやり抜く子」だと言っていますが、そうですか、地味でしっかりと密造銃を数丁作り、爆弾まで作って、大悪魔を仕留めたんだね、よかったよかったやり抜いたね。
キミは昔からそういういい子だったのに貧しさ故に自衛隊なんて所に就職し、その後も兄さんが自殺したりして大変だったね、あれもこれも全部アベがいけないからなんだ、殺して当然、殺されてあたりまえ、というわけです。
こういう朝日の書き方のロジックは、主張さえ正しければ誰を殺害しても許されるという「殺人有理」(殺人には理由がある)という考え方です。
こういうロジックを解放したのが、中国の文化大革命や、今の北朝鮮でした。
「思想は血より濃い」という言い方をして、子供に親の頭を公開の場で撃ち抜かせたのです。
あるいは弟に兄を密告させ、親は子を売り、妻は夫を、夫は妻を密告しました。
いったん密告されれば、その先は拷問と公開処刑が待っています。
やがてそれは近親者ばかりではなく、自分と思想が違う者すべてに及び、紅衛兵は別の派閥の紅衛兵を皆殺しにしました。
まさに地獄です。
この地獄を知っているひとりは、父親が文革で迫害されているのを十代で経験した習近平です。
習近平は長じて、「思想は血より濃い」と信じて、他の派閥の共産党員を粛清し、ウィグル人を殺し続けています。
なぜなら、「思想は血より濃い」からです。
山上がどのように苦しい人生を歩んだのか、私には興味がありません。
そんなことを言い始めたら、家の数だけ悲劇はあるのです。
「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」という一行は、トルストイの『アンナ・カレーニナ』のものですが、不幸はいくつもの顔をしています。
だから、私の家にも他人に言えない苦しみがあり、山上の家にもあった、ただそれだけのことです。
夜、高台から街を見下ろせば無数の家の灯火が見えますが、その数だけ不幸も幸福もあるのです。
だからと言って、その不幸が殺人を合理化しますか?
いかなる理由でも、自らの不幸を他人を呪うことで、ましてや殺害することで解決できませんね。
これは理屈ではなく、常識の範疇です。
山上容疑者「しんどい」5月勤務先退職 自宅に手製の銃数丁と新たな危険物/芸能/デイリースポーツ online (daily.co.jp)
山上は41歳にもなりながら、教団にはまった母親を哀れみ、一家を地獄に落とした者たちを恨み、果てはそこに一回ビデオで登場しただけの安倍氏までに憎悪を拡大してつけ狙っていました。
先ほどの朝日に登場した「てっちゃん」に甘い人物は、その時相談されていたらなんと答えたのでしょうか。
そうだな、お前は不幸だったからアベを殺せ、とでも言ったのでしょうか。
私なら張り倒してでもお前は勘違いしている、不幸なことはお前の特権じゃない、馬鹿なことはするな、と言うでしょう。
では、百歩譲って、こういう自分が不幸なら人を殺してもかまわないという論理が正しいとしたら、どうなるでしょうか。
考えただけでうんざりします。
たとえば、自分はパチンコにハマって一家離散したので、パチンコ業界の広告塔をしていた土井たか子を殺して当然だ。
あるいは、自分は関西生コンによって会社を潰されたので、辻本きよみを殺害して当然だ。
わが家は北朝鮮に貢いで一家離散したので、北を美化し続けた朝日の社員を殺して当然だ。
全部ダメです。あたりまえじゃないですか。
いまの妙な山上同情論に見せかけた安倍殺害合理化論は、まさにこのロジックを使っています。
安倍氏が統一教会にビデオメッセージを送ったたので殺したことが情状の余地があるのなら、もうなんでもできてしまうということではありませんか。
ただし念のため言っておきますが、これで統一教会が正しいというわけではありません。
「統一教会」という名称とどおり、これは韓国と北の「統一」を祈る韓国産の新興宗派です。
慰安婦は日本人の原罪などと言って、日本人信徒から多額のカネを巻き上げていました。
山上の母など1億むしられたそうで、それだけでカルトと呼んでかまわないでしょう。
一方、巧みなのは、冷戦期、北は悪魔だと叫んで勝共連合という組織を作り、自民党に浸透しました。
特にやられたのが、自民党内保守派です。
岸氏がターゲットにされたのは事実です。
しかしこれも、コインの裏面のようなもので、野党も似たようなものでした。
社民党や立憲のルーツの旧社会党が、土井委員長と朝鮮総連のように、北とのズブズブの関係だったのは知られた話です。
その尻尾が、いまでも親北の関西生コンと辻本氏との関係のように残っているのです。
私は、自民党はこんな宗教団体との関係はさっさと切るべきだと思いますが、それと安倍氏暗殺とは別問題です。
この安倍氏暗殺事件は不可解なことばかりです。
海自を辞めたのが17年前、それからなにをしていたのでしょうか、この山上某という男は。
そして「母親に1億円も献金させて、あげく我が家を目茶苦茶にした。兄まで自殺した」という話は再三報じられていますが、ならば直接教団の幹部を狙えばよかったのに、なぜ安倍氏を暗殺したのか、教団と「深い関係」があったと思い込んだにしも、あまりにも飛躍しすぎです。
そこで出てくるのが、奈良県警ネタとでも呼ぶべき数々の奇怪な情報です。
札付きの飛ばし屋メディアの東スポが、山上某の背後に「反安倍団体がいた」という記事を流しています。
「山上容疑者はリベラル色が強い“反アベ”団体に所属していたのではないかと言われています。安倍氏の長期政権の“独善的”な姿勢を嫌う団体。会員は数千人規模です」とはテレビ局関係者。この団体は安倍氏だけでなく、父の故安倍晋太郎元外相、祖父の故岸信介元首相の安倍ファミリーをも敵視する。特に団体幹部は、SNS上で安倍氏を攻撃していた。
山上容疑者は奈良県警の調べに、動機について「安倍氏の政治信条に対する恨みではない」と供述。同関係者は「その団体の中で積極的に活動していたというより、団体の活動を“支持”していたのではと言われている」と話す。この件について団体幹部に「山上容疑者は団体会員か」と問い合わせたが、折り返しはなかった」
(東スポ7月13日)
安倍元首相銃撃の山上容疑者の背後に2つの〝反アベ団体〟か 捜査当局が重大関心 | 東スポの社会に関するニュースを掲載 (tokyo-sports.co.jp)
表情分析官が解説、山上容疑者の「直前表情」の謎 | 災害・事件・裁判 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
これもたぶん奈良県警のリーク情報がネタ元でしょうね。
長い期間同じ住居に住み、怪しげな金属音を立てていた彼が、公安警察の監視対象になっていないほうが不自然だからです。
奈良県警はなんらかの山上情報をもっているのは確かででしょうが(関西の過激な親北反安倍団体ならいくつか思いつきますが)、たぶんこの東スポ報道はガセ情報でしょう。
山上某が、このような反安倍過激団体と接点を持たないとまではいえませんが、彼が構成員ならば逆にこんな暗殺などという手段は使いません。
安倍氏をほんとうに殺害してしまったら、自分らの運動目標が消滅してしまいますから商売あがったりです。
彼ら左翼団体にとって望ましいのは、むしろ安倍氏が活発に活動して「悪魔のような所業」を続けることです。
その都度アベガー、アベガーと連呼できるのに、殺してしまっては困るのは自分のほうです。
日刊ゲンダイなど安倍氏がいなくなれば、即廃刊ですからね。
安倍元首相の葬儀、最後のお別れに市民も集う - BBCニュース
現実には、安倍氏の非業の死に際してその野辺送りに数万の国民が詰めかける、感謝の拍手で送る、自然に国葬という声もわき上がっては彼らにとって逆効果です。
だから100%「山上=反安倍団体メンバー」という線はありません。
むしろこういう怪情報を流しているネタ元がどうやら奈良県警付近だということのほうが、イヤーなかんじがします。
初めに山上某を「海自自衛官」という速報を出したソースは、明らかに奈良県警です。
メディアがこんなに早く容疑者の経歴を調べられるわけはありませんから、奈良県警が「元自衛官が犯人」という方向に情報操作したようです。もちろん山上と自衛隊とは大昔に縁が切れているのを百も承知で流したのです。
自衛隊を自分の失態の楯に使おうとでも考えたのでしょうが、それにしてもタチが悪い。
そう思えるくらい、度しがたいほどの警備の失敗でした。
奈良県警は、日本警察が安倍氏ほどの世界的要人を守れないということを世界に暴露してしまいました。
弛緩というよりも、ほとんど警備などなきが如しだったのです。
次のG7サミットを不安視する声が海外からでているそうですが、あまりに当然でしょう。
私が外国政府なら、こんな要人警護しかできない国に、自分の国のトップは行かせられませんものね。
具体的に見ていきましょう。
警視庁OBたちが口を揃えて指摘するのは、数少ない警備陣が全部前を見てしまって、安倍氏の背後にバス通りがあるにもかかわらず警備要員をひとりも配置していなかったことです。
米国ならダイヤモンド型にシークレットサービスを配置し、さらに近辺の通りや建物にも監視要員を置いたことでしょう。
大和西大寺駅前の広場周辺にはビルが立ち並んでおり、見晴らしが四方に開けていますから、どこからでも銃撃は可能です。
実際に、ビルの上部から現場の様子を撮影した画像も公開されており、カメラでの撮影ができるのであれば、どのビルの高層階からでも銃で狙うことが可能です。
後方の警備手薄・2発目回避できず、警察庁長官「問題あった」…検証チーム設置(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
下写真を見ると、演説をしている安倍氏の横で警備陣は朝礼よろしく全員前を向き、背後の大きなバス通りには大型車やバイクが行き交っています。
安倍氏左のふたりの人物は警備要員ですが、前しか見ていません。
ちらりと左端に写っている鞄を持つ人物は、警視庁からの派遣SPだと思われます。
【 画像4/62枚 】【写真ニュース】安倍晋三元首相が撃たれ死亡 奈良で演説中に:朝日新聞デジタル (asahi.com)
実はこのかなり前から山上は背後の歩道にいて、機会をうかがっていたことがわかっています。
下写真を見ると、山上が安倍氏背後の6~7mの至近距離にすでに占位しているのがわかります。
そして演説が始まると悠々と車道を渡って、ゆっくりと手製散弾銃を安倍氏に向けて撃ったわけです。
この間、彼を阻止する警備の者はひとりもおらず、まったく制止されることなく接近に成功しています。
演説に臨む自民党の安倍晋三元首相(手前)…:安倍氏の背後に立つ山上容疑者:時事ドットコム (jiji.com)
「男は当初、駅北口の向かい側、北西にあるビルの下で様子をうかがうようにしていたという。演説が始まると横断歩道を渡る形で目の前を2~3度、ゆっくりと歩くのを目撃されている。現場にいた男性は「うろうろしていて、様子がおかしかった。きょろきょろしているようにも見えました」と明かした。
演説が行われていたのは、駅前ロータリーから続く横断歩道の中央付近にある一角。安倍元首相が登壇する頃になると、男は当初いたビルの下とは反対側、駅ロータリーのバス停付近に移動した。同元首相からは死角になる場所だった。
近くにいたという女性によると、安倍元首相が登壇すると男は拍手をしていたという。演説が始まり、1~2分が経過すると、バス停付近から歩いて安倍元首相の背後に近づいた」
(日刊スポーツ7月9日)
山上徹也容疑者犯行前の動きに複数証言「うろうろして様子おかしかった」安倍元首相の死角に移動(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース
山上の挙動が明らかに周囲から浮いていたにもかかわらず、警備陣は制止はおろか挙動すら把握してもいないのですから呆れてしまいます。
そもそもこのような場所で街頭演説をさせたということ自体が間違いです。
百歩譲って適地がここしかないなら、背後をビルの壁にするなり、背後を覆う背の高いバスやか街宣車を置くなりすれば、背後からこうも易々と犯人の接近を許すことはなかったはずです。
撃たれた後も、警備陣はありえない行動をとっています。
奈良県警の警備陣は全員が山上ひとりに駆け寄ってしまい、逮捕することに夢中になっていました。
もし複数犯だったら、さらに攻撃を仕掛けられたことでしょう。
朝日同上
この犯人逮捕に警備陣が集中するというのは、ありえない失敗です。
要人警護の警備陣がまずやるべきは、要人の身柄の安全確保であって、警備要員は要人にタックルしてでも路上に伏せさせ、自分がのしかかってでも銃撃から防ぐのが仕事だからです。
下の写真は1981年3月30日のワシントンで起きたロナルド・レーガン大統領狙撃事件時のシークレットサービスのものです。
警護官が折り重なるようにして、大統領の楯になっているのがよくわかります。
安倍氏暗殺事件で浮かび上がる「日本の民主主義」の弱点とは 銃撃されるも一命を取り留めたレーガン大統領、何が違っていたのか| JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)
このとき、レーガンを撃った犯人は6発撃っていますが、レーガンに当たったのは1発で、その他は警護官と報道官に当たっています。
警護官はレーガンを押さえ込み、自らの背中に数発受けてまでして、大統領を守り抜きました。
もちろんこの警護官は重傷を負いましたが、これが要人警護官の狙撃を受けた場合の基本中の基本です。
極端な言い方をすれば、警備陣は要人の代わりに撃たれるためにそこにいるのです。
「大統領が公開の場に出る際は防弾チョッキをつけるが、この日はホテルの出口から専用車までが10メートル以下という至近距離だったため、つけていなかった。
この日、パー警護部長は1発目の銃声を聞いた瞬間、レーガン大統領に覆いかぶさり、彼の頭を引き下げ、ズボンをつかみ、前方に押して、専用車内に押し込んだ。すぐ背後にいたシャディック警護官が、大統領とパー部長の2人の体をさらにかばうように前方にプッシュした。
同時にもう1人のマッカーシー警護官が専用車を背にして立ち大手を広げて、大統領をかばう姿勢をとった。専用車は最初の銃弾が発射された3秒後には現場を離れた」
(古森義久 7月13日)
山上が1発目を撃った後、するべきは発射音の方向に駆け寄るのではなく、身を挺して安倍氏の楯になるべきだったのです。
警視庁SPも、そういう行動規範を持っていると聞いたことがあります。
逮捕など二の次三の次のことで、我が国では逃げても必ず逮捕できるのですし、そんなことは一般の警官に任せてよかったのです。
一発目の銃声で振り返った安倍氏、左上腕部からの銃弾が致命傷に…司法解剖結果を発表 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
実は犯人は1発目をはずしています。
そして第2撃まで3秒間の間隔がありました。
修羅場の3秒間という時間は、十分に安倍氏を警護官が対応できる時間だったはずでした。
警備陣が、基本の基本を実行していたら、安倍氏は1発も弾を受けることはなかったのです。
こういう素人以下の奈良県警の警備陣に、プロの警護官がいたのでしょうか。
ひとりの警視庁派遣SPは確認できます。
ブリーフケース状のものを掲げている人物が警視庁SPで、あのバッグには鉄板が入っています。
「警視庁以外の警察本部にも警護担当部署は存在しており、例えば大阪府警と京都府警では警衛警護課が、神奈川県警などでは公安第二課が警護を担当する。
その他の小規模な県警察本部では「警備部警備課警衛警護係」として少人数の専従員が編制されているのみである。例えば首相が地方に行く場合、近接警護をSPが行い、それ以外の後方支援を地元県警の警護担当部署が行う」
(古川圭一7月10日)
安倍氏銃撃で誰もが思った「要人警護」の不十分さ | 政策 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
「戦後の日本では国家警察が存在しない。そのため最大の警察組織である警視庁が準国家警察のような役割を果たし、各県警を支援するような形式になっている。しかし、今回の件を受けてこのシステムで十分なのか、さらには、県警が十分な協力ができるのか、という疑問が出る」(古川前掲)
戦後、GHQが国家警察(国警)を解体して地方自治体の系列化に置いたために、日本で県境をまたいで動く米国の連邦警察(FBI)のような存在が欠落しています。
ですから、警視庁SPが派遣されてもお印ばかりで、大部分は奈良県警の普通のお巡りさんばかりというのが実態だったようです。
これが安倍氏という世界的重要人物を警護する奈良県警の警備の実態でした。
今回も奈良県警が計画すべてを立案し、警視庁はチェックすらしていませんでした。
「現場では、奈良県警が事前に計画を策定し、県警本部長の了承の下、警護・警備が行われていた。(略)
こうした状況を受け、検証チームは▽警護の体制や警護員の配置が適切だったか▽銃器への対応などを定めたマニュアルの内容の適切性▽警護員の能力や日々の訓練に問題はなかったか――などを確認する。
元首相の警護ではこれまで、原則として都道府県警が警護・警備計画を策定し、警察庁はチェックをしてこなかったが、そうした運用が適切だったかどうかについても検討する」
(読売7月12日)
後方の警備手薄・2発目回避できず、警察庁長官「問題あった」…検証チーム設置(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
今後、要人警備はすべて警視庁が直接に管轄するしかないでしょう。
安倍氏の国葬が決まったようです。
無念の死を遂げた安倍氏に、国家ができることはそのていどのことですから。
安倍氏暗殺事件について、安倍氏が統一協会と「特別な関係」を持っていたために、母親をひどい目にあわされた山上某が「怒りの銃撃」を加えたかのような噂が飛び交っています。まるで山上某が被害者のようです。
左翼メディアは、どうやらこの線で話を作りたいようですが、やめませんか、憶測で想像たくましくするのは。
安倍氏が北朝鮮と癒着して、資金提供まで行っていた統一協会のいいなりになるはずがありません。
副官房長官で正日と拉致被害者奪還で渡り合い、もっとも家族会を支えて強い絆を築いていた政治家は安倍氏でした。
安倍氏は長い総理期間中、一貫して拉致被害者奪還工作を水面下で進めており、当然北朝鮮の内部事情にもっとも精通しているのも彼でした。
そして統一教会は霊感商法にまで手を染めている反社団体だという認識は、政界では知られたことです。
そんな安倍氏が、不用意に統一協会ごときに接近を許すはずがありません。
自民党のみならず、政治家は人気商売です。
あなたを支援すると言われれば、祝辞の一本くらい出すものですし、呼ばれればパーティに顔を出して一緒に写真に納まったりもします。
これは立憲も同じで、辻本女史が関西生コンのような過激派労組とズブズブの関係を持っていたり、有田ヨシフ氏が旧しばき隊という半グレとつきあっていたようなものです。
だからといってこの御両人が、彼らの言うことを素直に国政で実行していたわけでもないように、安倍氏もそうなのです。
朝日
ネットではもともらしく「祖父・岸信介・父を経て続く深い関係」という情報が氾濫していましたが、安倍氏自身が統一教会の布教を後押しした証拠などまったくありません。
むしろ安倍氏は教団には冷やかで、距離を開けていました。
仮にそうだったとしても、山上某の母親に多額の献金をさせたのは教団で、相手方の顔も名前もわかっているはずです。
殺したいまで復讐したいなら、まず彼らを攻撃するというのが普通の流れです。
それをなぜ、無関係な安倍氏を殺害するのでしょうか。
私はこの男は、ネットに流れる陰謀論に骨まで染まってしまった、哀れなサイコパスに見えません。
週刊文春の報道では、統一教会ではなく、ワシントンポストを名乗ってメッセージ依頼が来たそうで、トランプ氏が出すというので、安倍氏はおつきあいで出したのだとか。
こんな薄弱な根拠で、世界的政治家を暗殺したのですから、驚きました。
政治家と宗教団体との関係など、こんなていどのことでしかなく、政界周辺なら誰でも知っている常識なことです。なにを今さら。
こういう印象誘導って、既視感ありありじゃありませんか。
モリカケサクラで3年間国会は、週刊誌政治ばかりで心底ウンザしましたが、亡くなった後までスキャンダルですか。
進歩しないというか、なんというか、ああ、たまらんこの不毛さ。
これもただの新手のモリカケにすぎませんが、山上某がこれにかぶれて安倍氏をつけねらっていた可能性はあるかもしれません。
ならば、こういう根拠不明の陰謀論が安倍氏を殺したのです。
しかしそれも、警察がきちんと公表すればいいことです。
県警や警察庁が、まともな情報開示をせずにチビチビとリークするからこのような「疑惑」がまた首をもたげるのです。
奈良県警は、警察史上最悪の失態をした上に、これ以上の恥をかきたいのでしょうか。
ずさんな警備の失敗については私もそうとうに腹に据えかねているので、近々書きます。
さて、話を変えましょう。
安倍氏にはやり残したことがあります。さぞかし死ぬに死ねないと思ったことでしょう。
ひとつにはいうまでもなく憲法。
そしていまひとつはデフレ脱却でした。
自民党には二つの派閥があります。表向きのなんとか会という派閥とは違って派閥横断的なもので、財政金融政策をめぐるものです。
積極的に財政支出を政府が増やすことで総需要を増やしいき、景気を良くしていく中で税収を増やし、PB(プライマリーバランス)を健全化していく、という積極財政派がひとつ。
いわゆるリフレ派です。
そしてもう一方には、景気もなにも真っ先にPB健全化を命懸けで達成し、そのために財政支出を押さえ込み、税収を増やすために国民にはさらなる税を課していく、という財務省の別動隊の財政再建派でした。
こちらはいわゆる緊縮派です。別名は財務省のをとってZ。まるでロシア軍みたいです。
この両派は、野党との対立以上に激しいつばぜり合いを自民党内で演じており、予算編成では常にコノコノクヌクヌの関係でした。
数的には財政緊縮派のほうが圧倒的に多いようです。
安倍氏はもちろんリフレ派の旗頭で、元来リベラルの経済政策であったリフレ経済学の考え方を、自民党に持ち込んだのが安倍氏でした。
首相を止めた後も、安倍氏は積極財政派の議連で最高顧問を務めてい、その指導者的立場でした。
安倍氏は自身の政治的影響力をフルに行使して、ともすれば財務省寄りに流れる岸田政権をくい止めていたようです。
今回の参院選でも、今年度中に大規模な第2次補正予算案を編成するよう発言しており、これは岸田氏に対する強いメッセージだったはずです。
安倍氏亡き後は、高市氏しか残りませんし(麻生氏は緊縮派ですので)、政権と党の中枢はことごとく緊縮財政派が占めています。
おそらく、攻防は防衛予算2%をめぐってのものになるかもしれません。
今後、防衛予算増額と経済性政策は、切っても切り離せないものとして見てください。
ところで安倍氏がやった大きな業績で歴史に残るアベノミクスについて、簡単に振り返っておきましょう。
※参考文献 松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』飯田泰之『マクロ経済学の核心』
ちなみに松尾氏は、実は思想的にはマルクス主義経済学者なのですが、真面目に分析するとアベノミクスは間違っていないというのが氏の結論です。
飯田氏はリフレ派の論客で、私がいちばん参考にしている経済学者です。
このふたりがアベノミクスについて、結論づけていることを列記していきます。
●アベノミクスの成果の政権発足時と5年後
①日経平均株価:1万230円(2012年12月25日現在) → 2万118円(2017年7月14日現在)
日経株価平均推移
②経常利益 48.5兆(2012年度) → 68.2兆(2015年度)
③有効求人倍率:0.8倍(2012/12)→ 1.49倍(2017/5)
有効求人倍率推移
③失業率:4.5%(2012/1) → 3.0%(2017)
失業率推移
④自殺者と完全失業率の相関
自殺者と完全失業率の相関
⑤大卒就職率 65%(2012/4) → 70%(2015/4)
⑥25歳〜64歳正社員比率 40%(2013/2) → 42%(2015/7)
⑦名目雇用者報酬総額 245兆円(2012/10-12) → 255兆円(2015/4-6)
⑧企業倒産件数 950件/(2013/1) → 742件/(2015/10)
企業倒産年次推移
⑨設備投資額 66兆円(2012/4-6) → 70兆円(2015/4-6)
⑩対ドル為替レート 79円(2012年平均) → 119円(2017年平均)
これらの指標、特に失業率の劇的改善と大学就職率の改善などが、若年層に強く支持され、いまや自民党の強力な支持層になっています。
この成果は、アベノミクスのもう一方のエンジンである金融政策を、黒田氏を日銀総裁に大抜擢したことによる大胆な人事によるものです。
もし白川氏のような総裁を、財務省に押し込まれていたなら、このような成果は望めないどころか永久デフレのトンネルにいたはずです。
しかし、安倍氏をしても財政エンジンを吹かしきることができずに、民主党が置き土産で残していった消費増税の地雷を受けていったんは失速の憂き目を見ています。
2013年スタートした日銀の黒田総裁、岩田規久男副総裁体制の目標は2015年に2%のインフレターゲット達成でしたが、それはいまだ未達成のままの課題となっています。
いまも日米金利差による円安・物価上昇といった現象に対して、早く金融緩和を止めろというのが緊縮派らの主張です。
ただし、黒田氏は金融緩和を継続しつつ、今年の末当たりに2%ターゲットにたっする見通しを述べています。
「国内の物価高が長期化してきた。6月の企業物価指数は9.2%上昇した。12カ月連続で5%を上回るのは約40年ぶりとなる。供給制約に円安が重なり、再値上げに踏み切る企業が増えている。日銀は7月の金融政策決定会合で、2022年度の消費者物価上昇率の予想を2%超に引き上げる見通しだ」
(日経7月13日)
日銀7月会合、物価見通しを2%超へ 金融緩和は維持: 日本経済新聞 (nikkei.com)
今後、岸田氏がどこまでやるかわかりませんが、亡き安倍氏が彼の背中を押してくれるように祈るばかりです。
安倍氏にいかに頼りきっていたのか、自民党は今後思い知ることになるはずです。
安倍氏は自分の頭で思考し、官僚を使うことができるタイプの政治家でした。
G7などの国際会議で、官僚のサポートなしで自由に発言し、とりまとめていた安倍氏の姿を知るだけに、今後岸田氏がどこまで安倍氏の背中を追えるのか注意深く見ていかねばなりません。
さて岸田氏には、いくつもの関門が待ち受けています。
最大の試金石は、安倍氏がやり残した最大の課題であった改憲です。
岸田氏は改憲をできるだけ早く発議すると言っています。
また検討か、などと皮肉は申しません。その意気たるや壮です。
憲法改正「できる限り早く発議」 参院選大勝 岸田首相が会見 | nippon.com
「岸田文雄首相(自民党総裁)は11日、参院選の勝利を受けて党本部で記者会見を開いた。憲法改正に前向きな「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2を参院で維持した結果をめぐり「できる限り早く発議にいたる取り組みを進める」と表明した。改憲を政権運営の中心に据える考えだ。10日投開票の参院選は改憲に前向きな自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党などが95議席を得た。非改選を含め179議席で参院の3分の2の166を上回った。
首相は年内にも改憲論議を始める意向だ。秋に召集する臨時国会について「与野党全体で一層活発な議論を強く期待する」と語った。改憲に積極的だった安倍晋三元首相の死去に関連して「思いを受け継ぐ」と唱えた」
(日経7月10日)
岸田首相、改憲発議「できる限り早く」 物価高対策最優先: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ただしここで問われるのは、強引なまでのリーダーシップです。
自民党の議員の大部分にとって、改憲などしたくはないのが正直な本音のはずです。
なぜなら、自民党議員の大部分は公明党との選挙協力で勝ち上がったものばかりで、彼らを刺激することは極力避けたいからです。
ですから、アンケートで改憲にイエスかノーかと問われれば、やるべしと建前を言いますが、実際は「いつかくる永遠の明日」にすぎません。
いまやらなくてもいいじゃん、自衛隊はちゃんと回っているんだから、ということで先送りになります。
したがって、改憲とは公明党との関係の持ち方のことなのです。
今までのように妥協に妥協の二階を付け足したような、解釈憲法ではもうどうにもなりません。
改造憲法では修正解釈が行き着いてしまって、もういまの世界情勢に対応できない、ここが昭和改憲論と令和改憲論との違いです。
昭和改憲論はまだ余裕があったのです。
安倍氏が出した9条1項、2項は維持して新たに3項に自衛隊を加える改憲案は、大変に興味深いものでした。
大変にリアルな、これなら可能だと膝を打つものだったからです。
安倍氏は、9条2項の削除にこだわるあまり、ニッチもサッチもいかなくなった改憲論議を、「自衛隊を国軍とする」という一行を挿入することで、手品のように変えてみせました。
日本は日本国家の大元である(国体)天皇の地位を守るために、すべてを捨ててしまいました。
戦争の放棄、交戦権否認、戦力不所持などは、米国の軍隊がなければありえないものでした。
つまり、日本は人類の高貴な理想たる「戦争の放棄」というロマン主義に酔うためには、日本国中に在日米軍を受け入れねばならなかったわけです。
なんのこたぁない、表向きは戦争放棄だなんだといいながら、世界最大最強の軍隊を受け入れ、その世界戦略の一部になることで戦力の不所持ができたのです。
これってそうとうに嘘っぽくありませんか。日本人の困った時の得意技、本音と建前の二重底です。
表面では「戦争を知らない日本人」を演じながら、実は米国に多くの基地を貸し出して、それを国の守りの根幹の中にビルトインしているんですから、したたかというかズルイというか。
やや乱暴な言い方をすれば、この二重底構造をスッキリ本音と建前を一つにして作り直せというのが改憲派で、スッキリ自衛隊はなくせ、米軍は出て行けというのが護憲派です。
もっぱらこの9条を舞台にして、半世紀以上喧々ガクガクの戦いが繰り広げられてきました。
別名神学論争。憲法の最大を仕切るのが、憲法学者という名の司祭たちです。
私自身は前者に近いものの、実際には無理だとかんがえていました。
しかし、ちょっと待てよ、憲法9条だけを見ないで、憲法全体をよく観察するとスゴイ構造になっているぞということに気がついたのが、篠田英朗外語大教授でした。
読売・吉野作造賞:篠田英朗氏「集団的自衛権の思想史」に | 毎日新聞 (mainichi.jp)
篠田氏は、平和構築学と言ってPKOなどの国際平和活動を研究されていた方ですが、彼の新釈憲法学は実に面白いものでした。
まず篠田氏は戦争放棄という概念が、戦後憲法の専売特許くらいに吹聴してきた護憲派に対して、こう冷やかに切って捨てます。
「戦争放棄は日本国憲法が初めて宣言したものではなく、日本はすでに1928年不戦条約に加入したときから、自衛権行使以外の戦争の放棄を宣言していた。日本が新奇な戦争放棄の理念を導入したわけではない」
(篠田英朗 『ほんとうの憲法』)
逆に日本は戦前、「国境の実力による変更」をしてしまったために、自らこの条約を破ってしまったわけです。
先の大戦は自衛権では説明しきれないもので、植民地解放理念を接ぎ木しました。
保守派は後者を崇高な理念として、それで大東亜戦争すべてが説明できるとしますが、私はそうは思いません。
今の目で見れば、当時の日本がやったことは「国境線の実力による変更」と「国際法への挑戦」だからです。
したがって篠田氏は冷厳に戦後憲法は、国際法遵守への復帰だとします。
「日本が国際法を破って侵略行為を繰り返したために、日本に国際法を遵守させるために導入したのが日本国憲法だ」(篠田同上)
ここで大東亜戦争が侵略か否かに拘泥しないで下さい。
大事なことは、いかなる理由によろうとも、当時の日本が戦前の国際社会と国際法の枠組みに挑戦したということであって、植民地が解放されたのはその結果でしかありません。
さて国際社会は、戦前のような国際秩序の崩壊がおきないようなスタビライザーを仕込みました。
それが国連憲章にある集団的自衛権です。
「第2次世界大戦後、国際法体系は、国産検証の成立によって、戦争違法化の流れをさらに強化した。その動きと表裏一体の関係にあるのが、集団安全保障である。集団安全保障の補てん策として設定されたのが、個別的・集団的自衛権である」(篠田同上)
日本国憲法はこの国連憲章に対応しています。
意外に思われるかもしれませんが、9条1項の戦争放棄は国連憲章2条4項の武力行使の一般的禁止と照応しています。
●国連憲章2条4項
すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/unch.htm
国連憲は冒頭の第1条1項に、領土保全と政治的独立」に対する「武力による威嚇」を禁じると言っているわけで、日本国憲法が「世界で唯一の平和憲法」だなんて、ただのナルシズムです。
憲法前文が、この国連憲章第2条4項と同じ「平和思想」で書かれていることに注目下さい。
●憲法前文(抜粋)
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
ここで憲法前文が言っているのは、護憲派好みの寝ぼけた平和主義ではなく、「国境線の実力による変更」、すなわち侵略行為に対して「平和を維持」し、独裁政権による民族絶滅政策などの「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去することを努め」ることで、「国際社会の名誉ある地位を占めたい」と宣言しているのです。
憲法前文が、憲法全体の理念を語るものだとするなら、これを指針にして9条も読み解かれねばならないのです。
ですから、日本が放棄したのはあくまでも侵略としての軍事力であって、自衛権としての防衛力はむろんのこと、さらには「専制と隷従、圧迫と偏狭」に対して戦う国際社会と協調して共に戦う軍事力はまったく否定されるどころか、むしろ「名誉ある地位を占めたいと思う」とまで言い切っているのです。
これは国連憲章の第1条1項の「目的」に対応します。
●国連憲章第1条1項
国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。
3月28日、虐殺を続けるミャンマー国軍に対して山崎統合幕僚長が各国の軍トッ プと共同声明をだしています。
その内容の一部にはこうあります。
およそプロフェッショナルな軍隊は、行動の国際基準に従うべきであり、自らの国民を害するのではなく保護する責任を有する。
これは画期的な自衛隊自らの宣言です。
いままで自衛隊は国際法上の「プロフェショナルな軍隊」として、各国軍隊のトップと連名で共同声明を出すことによって「専制と隷従、圧迫と偏狭」に対して戦う国際社会と協調して共に戦う「名誉ある地位を占めたい」という立場を鮮明にしました。
このように見てくると、私は実に日本国憲法は「よくできている」と思うわけです。
極論すれば、このままでも改憲せずに充分にやっていけるとさえ思っているくらいですが(異論はあるでしょうが)、いかんせん一般的にはわかりにくい上に、護憲派の神話的解釈がはびこっているために、若干の手直しは必要かなとは思います。
ですから、改憲といってもそのまま9条を残してもなんらかまいませんし、それに自衛隊を書き加え、さらに緊急事態条項を添えればよい、という安倍加憲案は考え抜かれたものだと思います。
このような最低限の改正で可能なところまで安倍氏は煮詰めて、現実的政治日程に乗せるところまで醸造してくれていたのです。
政治日程としては、与党の改憲案を定めることです。
参院選時の自民党改憲案はこんなものでした。
「自民党は現在、改正の条文イメージとして、①自衛隊の明記、②緊急事態対応、③合区解消・地方公共団体、④教育充実の4項目を提示しています。国民の皆様の幅広いご理解を得るため、全国各地で対話集会などを積極的に開催し、憲法改正の必要性を丁寧に説明していきます」
①②は当然として、③④まで立ち入る必要があるのか疑問です。
自衛隊と緊急自体法の2点に絞ったほうがよい。
とまれ公明を説き伏せ、立憲が審査会をサボタージュする言い訳にしていた「アベが進める改憲ハンターイ」なんて愚にもつかない言いぐさを一蹴し、衆参憲法審議会で改正原案を可決せねばなりません。
岸田氏が泥をかぶる覚悟で公明を説き伏せ、9条3項加憲すら呑めないなら、とうぶん選挙もないことですから連立解消くらい言うのですな。
今まで泥をかぶってこなかった岸田さんにとってつらい日々でしょうが、がんばるしかありません。
いっそ公明とは永遠に連立を完全解消してほしいくらいですが、今は最後の切り札ていどにしておいてもかまいません。
どうせ立憲、共産は変わらないでしょうから、維新・国民を味方につけて徹底してを彼らを孤立化させ、一気呵成にやりぬかねばなりません。
これができないようなら改憲もクソもない。
次に、衆参本会議で3分の2以上で可決し発議します。
そしてこの国会発議を受けて、60日ていどので国民投票運動期間をもうけます。
そして国民投票の過半数を得て、天皇陛下によるが公布、という段取りになるでしょう。
ここまでダラダラ時間をかけてはいけません。
たぶん朝日、毎日、東京などから、岸田氏が今までの生涯浴びたことのないはずの最大限の罵倒と悪魔化の集中砲火を浴びることでしょう。
しかし安倍氏が浴びたそれからすれば、なんのことはないはずです。
安倍氏についてどうしても書けないので、先に参院選について書いておきます。
母の死去は数年前から心の準備ができていましたが、安倍氏はいきなり地面が崩壊したような感覚でした。
すべて安倍氏が健在であるという前提で考えていたために、なにも考えられなくなりました。
政治家の死に際して、私は始めて涙が出ました。
安倍氏の葬儀に世界から要人が参列していることでわかるように、その業績はあまりに巨大で広大です。
日本史に残る名宰相であるばかりか、世界史に名を刻む政治家でした。
もう少し時間を下さい。
さて新議席が確定しました。
「第26回参院選(10日投開票)は11日朝、改選124と、非改選の欠員1補充を合わせた全125議席が確定した。
自民党が63議席を獲得し、単独で改選議席の過半数(63)に達し、大勝した。
立憲民主党は改選23を大幅に下回る17議席と敗北。日本維新の会は議席を12に倍増させ、比例代表で立民を上回った。公明、共産、国民民主各党は改選議席を維持できなかった。
自民、公明両党と憲法改正に前向きな維新と国民で計93議席となり、改憲発議の条件となる3分の2(166議席)を維持した」
(時事2022年7月11日)
自民63、改選過半数=立民敗北、比例で維新下回る―公共国、改選議席維持できず【22参院選】|ニフティニュース (nifty.com)
立憲は共産党と性懲りもなく1人区で共闘を組んだ地域があります。
「自民は、19年参院選で2勝4敗と負け越した東北で、4勝2敗と挽回した。立民重鎮の小沢一郎衆院議員のお膝元の岩手では、30年ぶりに議席を奪還。21年衆院選で野党が全6議席のうち4議席を獲得した新潟でも、立民の現職幹部に勝利した。
野党が勝利を収めたのは青森、山形、長野、沖縄の4選挙区。立民は今回、現職を中心に共産との一本化を図ったが、議席を得たのは青森と長野にとどまった。沖縄は無所属の現職が接戦を制した」
(時事前掲)
これでそうとうにはっきりしたでしょう。
共産党と組めば彼らの票を得られても、それに数倍する票を失うのです。
新潟の場合、立憲の森候補は約7万票差で負けていますから、共産党の2万といわれる固定票をいれても届かなかったということになります。
一方、共産党も議席数を減らしたように、共闘を組むと固定票が逃げ出して損をします。
連合は、地盤を共産党に浸食されて、彼らの「統一戦線」を手伝うはめになります。
つまり立憲・共産・連合が組むと、三方両得どころか全方向沈没となってしまうのです。
典型的な例は、新潟の森ゆうこ立憲参院幹事長の落選です。
新潟で4選目指した森裕子氏敗北 立民現職、国会で鋭く政権追及(共同通信)|熊本日日新聞社 (kumanichi.com)
森氏は小沢一郎の側近で、故安倍氏にキャンキャン噛みついていた戦闘的スタイルで有名でした。
小沢氏が主導した野党共闘のモデルになったのが、この森氏の地盤である新潟でした。
「新潟選挙区では過去2回の参院選で、野党各党と連合新潟や市民団体が野党系候補を支援。各党の代表者らが対等な立場で連携する連絡調整会議を立ち上げた。円満な選挙協力体制は「新潟モデル」と呼ばれ、全国的には優勢だった自民党に議席を譲らなかった」
(朝日2022年7月10日)
立憲森ゆうこ氏が落選見込み 崩れた「新潟モデル」、異変は5月から [参院選2022]:朝日新聞デジタル (asahi.com)●参院選新潟選挙区開票結果(選管最終)
当 小林 一大 49 自新517,581
森 裕子 66 立現448,651
選挙後、敗北理由について森氏はこんなことを言っていました。
「選挙戦中、岸田首相が2回も新潟入りされた。最終日にも入られて、2カ所も回られた。ほかにも与党幹部が次々と新潟入りするなど、与党にとって全国の中でも新潟県は最重要選挙区としていた。こうした強大な権力の力を跳ね返すことが難しかった」と分析」
(SAKISIRU 2022年7月10日)
新潟選挙区で森ゆうこ氏敗れる、敗因は「強大な権力の力を跳ね返すことが難しかった」 – SAKISIRU(サキシル)
「権力の重圧に負けた」のだそうです。
勝つと市民の勝利、負けると権力の重圧、こういう弁解の弁は具体的な政策論議とは別次元の左翼ナルシズムにすぎません。
沖縄における「オールl沖縄」が言っている、極度に単純化された構図と同じで内容がありません。
「米国に追随し横暴な政府」が悪玉、それに抵抗する「戦う知事と沖縄民衆」が正義という陳腐な図式です。
まるで勧善懲悪の時代劇さながらで、昔懐かしき「抑圧者vs被抑圧者」というマルクス主義的抵抗史観にすぎません。
本来はこういう情緒的な総括ではなく、どういう自分の政策が有権者に受けいれられなかったのか、選挙体制はどこが間違っていたのかを考えねばならないのに、「権力の重圧に負けた」ではどうにもなりません。
こんな非現実的なことを言っているうちは、また負けるでしょう。
いままで新潟は、すべてこの6年間、野党共闘方式で勝利してきました。
●最近の県内での大型選挙(○当選、×落選)
・2016年7月参議院選挙
○森ゆうこ(野党統一)
×中原八一(自民、公明推薦)
2016年10月 知事選
○米山隆一(無所属、共産・社民など推薦)
×森民夫(無所属、自公推薦)
・2017年10月 衆院選(小選挙区)
立憲・野党系無所属4議席獲得 自民2議席にとどまる
・18年6月 知事選
○花角英世(無所属、自公支持)
×池田千賀子(無所属、野党統一)
・19年7月 参院選
○打越さく良(無所属、野党統一)
×塚田一郎(自民、公明推薦)
野党4勝も共闘には陰りも 共産との距離に課題も 新潟 [2021衆院選]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
18年の知事選をのぞいて、すべて野党共闘が勝因になっているように見えます。
野党共闘というのは、立憲-共産党を中心にして、連合系労組と共産党系市民団体がその選挙マシーンで動くという構図です。
そして政策協定は立憲と共産党の政策をかき混ぜて総花的にしたものにすぎず、実際になにからどう取りかかるのかまったく見えない、選挙その場限りのものです。
ですからいくらでも逃げが効き、共産党の主導する「統一戦線」を作ったという事実だけが残る白紙委任状のようなものです。
このような白紙の小切手をもらって一番得をするのは、もちろん「社会主義・共産主義革命」をめざしてこの選挙を「民主主義革命」と位置づけている共産党だけです。
しかしいったんこの構図を作ってしまうと、「オール沖縄」と一緒で、県内の立場が違うものたちが、反自民で一致団結して悪辣な自民をやっつけるぞ、エイエイオーと見えるわけです。
また共産党の自称2万票の固定票も魅力です。
【参院選】共産・野党共闘実らず 比例650万票が焦点 - イザ! (iza.ne.jp)
ところがこれは見せかけにすぎません。
野党共闘に参加する「市民団体」の主張は、護憲・反安保・原発反対という共産党の「大義」をストレートに踏襲していますから、共産党の別動隊にすぎません。
共産党系「市民団体」と連合系労組が加わることで、見た目の左翼政党色を薄めて「オール新潟」を作るという目論見ですが、現実には共産党の「大義」だけが濃厚になります。
連合 芳野会長 自民党会合に異例の出席 賃金格差是正など訴え | NHK
ところが、今回、この接着剤役の連合が、当初から共産党に対して強い拒否で臨みました。
特に原発再稼働問題で徹底的に反対を掲げる共産党に対して電力労連を傘下に抱えた連合は絶対に共産党とは組めない、と言い続けてきました。
連合が示した選挙方針は、立憲と国民の候補者を、厳しい基準で推薦することでした。
今年1月、芳野友子会長率いる連合中央は、支援政党として丸抱えするのではなく、候補者別に連合の方針を実現できる候補者を支援するという画期的方針を打ち出します。
「国民民主党の党大会で日本最大の労働組合の中央組織・連合の芳野友子会長が来賓あいさつに立った。「政策制度の実現に向けて党と連携を図る」と激励する内容だったが、参院選の「支援」には触れなかった」
(朝日2022年2月12日)
「民主王国」で始まった労組の「与党シフト」 連合新方針の底流 [立憲] [国民] [共産] [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
これが去年に12月にすでに出ている連合の方針です。
「連合は16日、先の衆院選に関して「共産党との関係が構成組織が一丸となって戦うことの困難さを増長させた」などとする総括をまとめ、公表した。連合は衆院選で立憲民主党と国民民主党を支援したが、立民は共産と政権奪取後の「限定的な閣外からの協力」で合意するなど、踏み込んだ協力関係を築いた。
総括は「立民の候補者が立った一部の選挙区で『比例は共産党』と書かれた公選はがきが配られ、混乱もあった」と指摘した」
(産経
連合は、野党共闘で立憲を支援すると、比例を共産党にというチラシが撒かれたことを背信行為としています。
これは共産党の常套手段で特に驚くことではありません。
共産党は1人区で立憲を立てるばあいにも、ちゃっかりと比例は共産党で元を取っていました。
元々1人区で勝てる共産党候補などひと握りにすぎませんから、比例の全国合計で候補を送り込まねばならないからのです。
これでは立憲を応援したはずの連合は、蓋を開ければ半分を共産党に献上したことになってしまいます。
これは今までのように「自民に代わる新しい政治勢力の形成」方針を明確に捨てたことを意味します。
いまや連合が望む要求は、単に賃上げ、職場の労働条件改善にとどまらず、たとえばトヨタ総連などは、今後来る自動運転の法整備などまでに踏みこんでおり、むしろそれに答えられるのは与党であり、共産党は敵対組織だという厳しい認識があります。
「目的が大きく異なる政党や団体等と連携・協力する候補者は推薦しないという姿勢を明確にする必要がある」と、共産党との連携・協力に歯止めとなる一文も盛り込まれていた」
(朝日前掲)
「目的が異なる」という連合の表現の意味は、同じ「野党共闘」という言葉を使っていても、共産党のそれは「綱領に基づく統一戦線の1つの形であり、共産主義社会実現のための手段であることは明確だ」(連合方針)からです。
それは各県の連合に対しても通達され、今までのように街頭宣伝で共産党の桃太郎旗を隠すような姑息な手段は許さないというのが、連合中央の姿勢でした。
「連合新潟としていつ推薦するか。連合本部で1人区に対してかなり厳しい条件が出ている」
1月15日夜、新潟市のホテルで開かれた立憲民主党新潟県連の臨時大会。夏の参院選で改選を迎える森ゆうこ参院幹事長らが並ぶなか、連合新潟の牧野茂夫会長は、半年後に迫る参院選の対応を決められない苦しさをあいさつで吐露した」
(朝日2022年2月13日)
野党共闘の先進地、崩れたバランス 参院選へ立ちはだかる三つの壁 [立憲] [国民] [共産]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
今回の連合新潟は、連合方針に逆らったものですから、当然なんらかの処分がでることでしょう。
そもそも、当の連合もかつての集票マシーンではなくなって久しいのです。
支援する候補が立憲と国民民主両党に分かれて対立して戦っている分裂状況で、今回の参院選では、連合の労組としての集票力が衰退していることがあらわになりました。
「立民は5人全員が当選したものの、国民は現職1人が落選。連合傘下の産業別組合は、自治労を除きいずれも票を減らし、集票力の衰えが浮き彫りとなった。
減り幅が大きかったのは、国民側のUAゼンセンが約4万9000票、電機連合が約3万3000票、立民側の情報労連が約3万2000票などの順。
前回、基幹労連が支援した「ものづくり産業労働組合(JAM)」の候補は、国民側から出馬したが落選。今回、JAMが支援する基幹労連の候補は、立民側に切り替えて出馬し、約1万8000票減らしたものの当選した。
国民側の電機連合は、前回に続き当選圏に届かなかった」
(時事7月11日)
立・国、労組票に衰え 自民は主要団体上位に【22参院選】(時事通信) - Yahoo!ニュース
なんとまぁ芳野会長のお膝元のUAゼンセンが票を減らし、左翼色が強い自治労は堅調という構図のようです。
芳野会長としては、こういう結果を見てどう判断するのでしょうか。
とまれ、今回の参院選で、かつて野党が唯一勝利できる手段だと考えられていた野党共闘は確実に終焉に向かっています。
今後野党は、維新や国民がそうしているように政策をたたき上げていくしか方途は見えませんが、野党共闘のぬるま湯に漬かって週刊誌政治にうつつをヌカしてきた立憲にそれができるかどうかでしょうが、レンホー、辻本氏らがいるうちはむりでしょうね。
選挙については、ご承知のとおり自民の圧勝です。
特に驚きはありません。
「第26回参院選は10日、投開票が行われた。自民、公明の与党は参院全体(248議席)の過半数の125議席を大きく上回り、改選議席(124)の過半数の63議席も確保した。与党に日本維新の会、国民民主党、憲法改正に前向きな無所属を加えた「改憲勢力」が、改憲の発議に必要な3分の2(166議席)の維持に必要な82議席以上を確保した」
(産経7月11日)
【参院選】改憲勢力3分の2を確保 - 産経ニュース (sankei.com)
自民
|
公明
|
立憲
|
共産
|
維新
|
国民
|
れいわ
|
社民
|
NHK党
|
参政党
|
無所属
|
|
改選数 | 55 | 14 | 23 | 6 | 6 | 7 | 0 | 1 | 0 | 0 | 8 |
当選 | 63 | 12 | 16 | 4 | 10 | 4 | 2 | 1 | 1 | 1 | 5 |
選挙区 | 46 | 7 | 10 | 1 | 4 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 |
比例代表 | 17 | 5 | 6 | 3 | 6 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 |
非改選 | 56 | 14 | 22 | 7 | 9 | 5 | 2 | 0 | 1 | 0 | 7 |
新合計 | 119 | 26 | 38 | 11 | 19 | 9 | 4 | 1 | 2 | 1 | 12 |
改選前 | 111 | 28 | 45 | 13 | 15 | 12 | 2 | 1 | 1 | 0 | 1 |
選挙ドットコム|日本最大の選挙・政治情報サイト (go2senkyo.com)
公明と決別した小野田紀美氏が当選したことはよい兆候です。
「10日に投開票が行われた参院選岡山選挙区(改選数1)で、自民党の小野田紀美氏(39)の当選が確実となった。
小野田氏が公明党の推薦を求めない意向を示したことから、公明は自主投票で臨んだ。全国に32ある改選1人区で唯一、自公が選挙協力をしない選挙区として注目されていた」(産経7月10日)
【参院選】岡山 小野田氏当選確実、公明に推薦求めず - 産経ニュース (sankei.com) 。
本気で憲法改正、防衛費2%を目指すなら、いずれどこかで公明党と袂を別たねばならないはずですから。
さて、安倍氏を人柱にして弔い合戦をしたなんて言っている者がいますが、今回、自民党に負ける要素はありませんでした。
勝つべくして勝ったというだけのことで、岸田氏にはこの与えられた貴重な時間を、せめて安倍氏の生涯の悲願であった改憲に使ってほしいものです。
安倍氏の狙撃事件について、まだ情報が出揃っていません。
さすがに、山上某が17年前にたった3年バイトでいたような海自にこじつけることは止めたようですが、今度は統一協会=安倍だから殺されたのだという怪しげな情報が流されています。
このような軽佻浮薄なメディアの報道の中で唯一、旗幟鮮明なのは「葬式はうちの社が出す」という社是の朝日のこういった報じ方でした。
「森友・加計、桜…「負の遺産」真相不明のまま 安倍元首相が死亡
第2次安倍政権では、森友学園をめぐる公文書改ざんや加計学園問題、「桜を見る会」問題など負の側面も問われた。
学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐっては、国は2016年、安倍氏の妻・昭恵氏が名誉校長に就いた学園側に国有地を8億円余り値引きして売却。国会での追及に安倍氏は「私や妻が関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」と関与を否定した」
(朝日7月6日)
森友・加計、桜…「負の遺産」真相不明のまま 安倍元首相が死亡 [参院選2022] [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
数々の疑惑を振り切ってあの世に逃げやがって、ということのようです。
逃げるも逃げないも、モリカケサクラなど、朝日が作り出した虚構にすぎなかったことは司法判断がでているはずです。
3年間「追求」してなにか出ましたか?
葬儀の場に赤ペンキを撒くようなもので、もはや芸風の域に達していますが、このような報道姿勢が安倍氏に対する「反安倍無罪」といった風潮を生んだことは事実でしょう。
「日本は心情的にこういう状況では自民党が圧勝するんじゃないかと思います。日本を没落に導いた罪が、撃たれたことでチャラになってしまうというか。だからテロや暗殺はいつだって逆効果なんです」
町山智浩さんはTwitterを使っています
そうですか、安倍氏は「日本を没落に導いた罪」をチャラにして逃亡したというわけですね。なるほど、なるほど。
没落したんじゃなくて、没落させたいんでしょう、あなたが。
かつてのアベヘイトをサンプリングしだしたら切りがないのでひとつだけにしますが、集団的自衛権が問われた安保法制の時などこんな調子です。
「集団的自衛権の行使容認をめぐり、安倍晋三首相に「しね」と暴言を吐くツイッターユーザーが増えている。「安倍」を「安部」と書き間違えてしまうような10代の若者まで、「安部しね」と政権批判をつぶやくようになった。
これを見た旧「レイシストをしばき隊」(現在はC.R.A.C)の中心人物がツイートを紹介。つぶやく若者たちを「みんな抱きしめたい。本当にいとおしい」と絶賛している。(略)
リツイートされる発言の多くは、「安倍」ではなく「安部」と書かれている。漢字のミスに気付かないような若者ですら政権に批判的だと訴えたいのか、
『安部しね』がものすごくカジュアルに使われている。若者たちの間で」
(JCASTnews2014年7月3日)
「安部しねって言ってる若者たち、みんな抱きしめたい」 旧「しばき隊」メンバー、若者たちのツイート大絶賛?!: J-CAST
ほー、殺したいほど憎んでいる相手の名を「安部」と書き、「死ね」と漢字すらかけない連中が増えた状況が「いとおしい」ですか。
では、ほんほんとうにそれを実践した山上某など、さぞかし「抱きしめたいほどいとおしい」ヒーローなんでしょうな。
これほどまでに「死ね」という言葉を吐きかけられた政治家はまずいるまい、と思うほど安倍氏は「死ね」という言葉を浴び続けました。
安倍批判の風刺画「晋ゴジラ」が炎上した吉田照美…番組を降板させられても曲げない反権力への思い|LITERA/リテラ (lite-ra.com)
「死ね」という字くらい書けそうな法政大学の山口二郎氏は、2015年8月30日国会前でこんなことを言っていました。
「昔、時代劇で萬屋錦之介が悪者を斬首するとき、『たたき斬ってやる』と叫んだ。私も同じ気持ち。もちろん、暴力をするわけにはいかないが、安倍に言いたい。お前は人間じゃない! たたき斬ってやる!」
(産経2015年8月31日)
【安保法制】国会前集会発言集(1)「安倍は人間じゃない。たたき斬ってやる」山口二郎法政大教授(1/2ページ)産経ニュース
山口氏のこのような殺人願望を公共場で主張することを、政治信条の吐露とは言いません。
ただの暗殺テロ予告です。それに拍手した反安倍の人たちにはこの「殺せ」という気分はしっかり共有されたのでしょう。
どうです、その方々、さぞかし先週末は美酒に酔いしれたことでしょう。
実際、殺人予告をした山口氏も、表向きはこんなことを言っているようです。
「法政大の山口二郎教授は、「安倍元首相には生きて、再び論戦に加わってほしい。暴力で口を封じることは、最悪の民主主義の破壊。」「日本をテロが横行する国にしてはならない。この点は思想信条を超えた問題。」とツイッターに連投した」
(デイリー新潮7月8日)
山口二郎法大教授「安倍元首相には生きて、再び論戦に加わってほしい」批判的な論客も無事祈る(デイリースポーツ)
おや山口サン、いつからこんなぬるいことを言うようになったのでしょうか。
笑わせないで下さい、山口さん。あなたは殺人を教唆していたのですよ。
正直に、山上よくやった、くらい言ったらどうですか。
たぶんこういうと、いやアレは比喩的表現だったんだ、ブンガク的な例えだなんて言うかもしれませんが、そもそ政治的な考え方が異なるだけで「叩き斬る」ことが政治表現なのでしょうか。
人の生命を安直に扱うことが気の効いた政治表現だと思っていたなら、恐ろしい社会ではありませんか。
それこそまさに、「暴力で口封じる」ことであり、「最悪の民主主義破壊」ですから。
また、先日原発再稼働停止を命じた判決で有名になった札幌地裁は、このような仰天判決も出していました。
「北海道札幌市で安倍晋三首相(当時)が街頭演説中に「安倍辞めろ」とヤジを飛ばした2人が北海道警の警察官に現場から排除され、損害賠償を求めた裁判で、札幌地裁は3月25日、原告側の「勝訴」判決を言い渡した」
(アエラ2022年3月28日)
安倍元首相へヤジで警官に排除された男性らが勝訴「表現の自由を侵害」で警察庁に衝撃走る(1/3)〈dot.〉 | AERA dot. (アエラドット) (asahi.com) 。
選挙演説に対してヘイトを飛ばして妨害したほうが訴えて賠償金を勝ち取り、それを規制しようとした県警が敗訴する、こんな中から今回の安倍氏の背後がら空きという奈良県警の腰の引けた警備が生まれたのです。
司法までがグルです。
山上某という暗殺者が生まれたのは、このようなアベなど殺されてとうぜん、いや殺すべきだ、とするこの殺伐とした空気、暴力の肯定、そしてそれを煽り続けた朝日などのメディアが作り出したガスの中からだったのです。
こんな人たちが、平和を叫び、銃規制を言うのはとんだ皮肉です。
あなた方は、特定の人格に対して殺人を肯定し、推奨してきたじゃありませんか。
銃はただの道具でしかありません。
この人たちの他者を悪魔化し、殺意をさもすばらしい政治表現だとするような安易な空気こそが、人を殺人に走らせるほんものの凶器なのです。
やませ吹く日も灯台は在りつづけ 阿部流水
聳え立つ燈台冬の雨寄せず 金子麒麟草
生まれては光りてゐたり春の水 掛井広通
青あらし電流強く流れをり 波多野爽波
このようなウォルターホイットマンの詩を思い出しました。
船長! 船長! つらい旅も終わりました、
船は嵐にも耐え抜き、欲しかったものも手に入れました、
もうすぐ港です、あれは鐘の音ですよ、みんなの祝福が聞こえます、
みんながこの頑丈な竜骨と、大胆不屈の船体を目で追っています。
なのに心は! 心は! 心は!
赤い滴りが流れる甲板の、
その上には船長が横たわり、
冷たくなって倒れてるなんて。
船長! 船長! 起きてあの鐘を聞いてください。
起きてください――あなたに向かって旗が振られ――ラッパが鳴らされています、
あなたに向けた花束と豪華な花輪も――海岸には人だかりです、
あなたに向かって呼んでいます、揺れる群衆が、期待に満ちて振り返っています。
ねえ船長! お願いです!
この腕で頭を支えましょう!
なにかの夢です甲板の上で、
冷たくなって倒れているなんて。
船長は答えない、唇は青ざめて閉じたまま、
ぼくの腕にも触れず、脈も意識もない、
船は無事に錨を降ろし、航海は終わりを迎え、
望みを手に入れ堂々とつらい旅から戻ってきた。
喜べ海岸のみんな、鳴り響け鐘の音!
でもぼくは死を悼む足取りで、
船長が横たわり、冷たくなって
倒れている甲板を歩いている。
ウォルト・ホイットマン
O Captain! My Captain!
日本の最良の船長であった安倍晋三氏のご冥福をお祈りします。
ありがとうございました。安らかにお休みください。
「イギリスのボリス・ジョンソン首相が7日、与党・保守党の党首を辞任すると表明した。次の党首が就任する秋までは首相にとどまる方針。党首選は今夏に行われる見通し。
ジョンソン首相は7日午後12時半過ぎ、官邸前で演説し、「議会の保守党が、新しい党首が必要だと考えている、その意思が明らかになったため、新党首を選ぶプロセスは直ちに開始する必要がある」と述べた。新党首と新首相が決まるまでは「自分が仕える」とし、「2019年の総選挙で保守党に投票してくれた皆さんに、感謝したい」と語った。
その上で首相は、「自分がこの数日、有権者の信任に引き続き自ら応えるため、これほど激しく戦ったのは、自分がそうしたかったからだけではなく」、総選挙で保守党を支持し、自分の政府に「巨大な信任」を授けてくれた大勢の有権者への「責務を果たすのが、自分の仕事で使命で義務だと思っていた」からだと述べた。
「これほど成果を上げ、これほど大きい信任を得ている時に、政権を交代するなど、エキセントリックなことだ」、「経済状況がこれほど内外で厳しく、何カ月にもわたり徹底的にたたかれてきたにもかかわらず、世論調査の(与党)支持率はほんの数ポイントしか落ちていない」と同僚たちを説得しようとしたが、「説得できなかったのは残念だし、たくさんのアイディアや事業を完遂できないのはつらい」とも述べた」(BBC7月8日)
ジョンソン英首相、党首を辞任 首相には秋までとどまる方針 | Start Magazine (taboolanews.com)
「国が経済や予算の問題に直面し、この80年で最大規模の戦争が欧州で起こっているまさにその時、政府は退陣するのではなく、機能し続けることが期待されている。私たちは、この国の人々にとって大切なものに焦点を当て、活動を続けていく必要がある」
(英スカイニュース7月6日)
「ロシアのプーチン大統領は7日、ウクライナでの軍事作戦開始により「米国中心の世界秩序は根本的に壊れ、欧米は既に敗北した」と述べ、勝利に自信を示した。モスクワのクレムリンで行われた下院各会派代表らとの会合で語った。
「戦場でロシアに勝ちたければ試してみたらいい」とも述べ、ロシア軍を撤退させてから停戦交渉に応じるとしているウクライナのゼレンスキー政権と、軍事支援する欧米を強くけん制。交渉は拒否しないが「戦闘が長引くほど和平合意は困難になる」と警告した。
「われわれはまだウクライナで本腰を入れていない」とも強調して攻撃強化の可能性を示唆した 」
(共同7月8日)
欧米、既に敗北とプーチン大統領 「勝ちたければ試せばいい」(共同通信) - Yahoo!ニュース
安倍氏が狙撃されました。心配停止状態です。
「銃撃された安倍元総理の容態について政府関係者は「意識なく、かなり生命が危ないとの情報が入ってきている」と話しました。
捜査関係者によりますと今日午前11時半ごろ、奈良市内で安倍元総理大臣が演説中に後ろから散弾銃で銃撃されたとみられ、目撃者の情報では発砲音が2発聞こえたということです。安倍元総理は、その場に倒れ心肺停止の状態で病院に運ばれました。
また、奈良県在住の山上徹也容疑者(41)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕しました。安倍元総理には警視庁の要人警護を専門とする警察官、SPが1人ついていて、警察庁や警視庁も情報収集を行っているということです」
(TBS7月8日)
いま日本は、もっとも失ってはならない政治家を失おうとしています。
「安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中、男に銃撃された事件で、病院に搬送された安倍元首相の死亡が確認されました。
警察によると、8日午前11時半ごろ、奈良市内で街頭演説をしていた安倍元首相が銃撃され、山上徹也容疑者(41)が殺人未遂の現行犯で逮捕されました。
安倍元首相は、ヘリコプターで救急搬送されていましたが、午後5時過ぎ、病院で死亡が確認されました」
速報】安倍元首相が死亡 搬送先の病院で確認 奈良市内で演説中に銃で撃たれて(関西テレビ) - Yahoo!ニュース
亡くなられました。
また帰ってきました、というお顔を見たかったのですが、かなわぬこととなりました。
コメント欄から承認をはずしました。
すぐに反映されるはずです。
もう少しゲオハルト・シュレーダーについて考えていきます。
昨日はケチョンケチョンに書きすぎたので、若干補正しておきます。
私はかつてシュレーダーや、かれと連立を組んだ緑の党のヨシュカ・フィッシャー のような「左翼」が日本にいたら、だいぶ政治の風景が違っていたのにと嘆息したことがあります。
よくも悪しくも、シュレーダーのような政治家は日本では生まれません。
今回のような故無き一方的侵略という現実を突きつけられても「頑固に平和。9条を平和外交に」などと言っていられるのは、ひとえに自民党が真正保守の安倍氏、高市氏から、原発反対の河野氏や小泉氏、そして中間派の岸田氏までウィングを伸ばしているデパートのような政党だからです。
だから、投票用紙に自民党と書いておけば、その思想的分布のどこかに必ず当たります。
逆に言えば、自民支持といっても、なにも言ったことにはならないわけてす。
私はそれはそれでいいと思っています。
そのようなあいまいさというか、いいかげんさこそが、自民党を国民政党たらしめているのであって、安全保障とエネルギー政策という国の根幹だけしっかり持っていてくれたなら文句はいいません。
河野、小泉両氏に点が辛いのは、後者を軽く見すぎていると思えるからです。
さて一方、ドイツはいかにもあのゴリゴリしたあの国らしく理屈っぽく左右両陣営が対立しきった構造がありました。
保守陣営は米国ベッタリですし、原発推進の立場でしたが、左翼陣営は反核・反戦・反原発を掲げて、その中間はない、妥協なんかするもんか、と言っていたわけです。
これを変えたのがシュレーダーと、後に彼の内閣で外相となる緑の党のヨシュカ・フィッシャーでした。
写真の真ん中のスマートな人物です。スニーカーを履いて政府に来たこともあって、スニーカー大臣と呼ばれていました。
私、けっこう彼のファンです。
1998年、シュレーダー率いるSPD・緑の党の連立政権が誕生。 中央のフィッシャーは外相に就任した。 左はシュレーダー首相、右はラフォンテーヌ財務相(フランス系ドイツ人)http://www.newsdigest.de/newsde/column/jidai/3119-eintritt-der-gruenen-in-die-hessische-landesregierung.html
では、その時メルケルおばさんはどうしていたかといえば、キリスト教民主同盟(CDU)という保守党で、原発には肯定的立場でした。
メルケルは東独の物理学畑出身であるだけに、原子力については好意的で、むしろ脱原発政策を進めていた社民党政権には批判的だったほどです。
後のメルケルを知っている私たちには意外ですが、メルケルは3.11までバリバリの原発推進派だったのです。
シュレーダーは複雑な人物で、マルクス主義的革命観が濃厚に残留するドイツ社会民主党(SPD)で、まずやったことは、口を開けば教条的なことしか言わない党内左派を排除したことです。
その方法が面白い。
ただ強権的に左派所排除をしたのなら平凡ですが、なんと、環境運動的にはさらに急進的な緑の党(同盟90/緑の党)との連立を掲げたのです。
こうした緑の党との連立が実って、シュレーダーは1998年に政権党の党首となり首相となって緑の党のフィッシャーと組んで政権をとりました。
フィッシャーには外相という重要ポストを任せます。
つい最近まで反戦・反核を主張してきた党に、外交を任せてしまったのですから冒険です。
では、なぜ緑の党のフィッシャーに外交を任せたのでしょうか。
首相となったシュレーダーがとった政策の柱は4つをみればわかります。
シュレーダー政権が掲げた政策は、①ロシアと中国への接近政策、②労働市場改革、③脱原発路線、④集団安全保障体制のNATOを重視などですが、すべてがからみあって④の脱原発に落ち込む構造になっています。
現在の視点から見ると、④集団安全保障体制以外は全部まちがっていますが(失礼)、なかなかすごいと思いませんか。
労組の政治部であるSPDが、労組がもっとも嫌った労働市場改革をしたのですから。
集団安全保障体制も、当時のNATOはふにゃふにゃで存在意義さえ問われていた時期でした。(つい最近までそうですが)
20世紀末には冷戦が終わったのに、なんでNATOなんか残ってるんだ、という不信の声に包まれていました。
しかし世界情勢の流れはNATOを許してはおかず、コソボ紛争などで域外派兵が望まれていました。
戦後ドイツにとって初めてのNATO域外派遣で、戦闘さえ覚悟せねばならないのですからシュレーダーはよく踏み切ったものだと思います。
ドイツも、日本以上に贖罪から戦後を始めざるを得ませんでした。
ともかく謝る、ひたすら謝る、悪ぅございました、許して下さいと土下座する、これが戦後ドイツに許された唯一のサバイバル術でした。
にもかかわらず、この時期のドイツで政権を握れば、逃げようもなくNATO域外派兵問題と直面せねばならなかったのです。
それをあえて「反戦反核」を切って政権を共にとった緑の党のフィッシャーにやらせたのですから、たいしたものです。
フィシャーは党内で、赤ペンキを顔にぶつけられて、片目を失明しているほどの目にあっています。
日本の左翼政党にとって反原発政策は、しょせん彼らが並べる数多くの反対メニューのうちの一品でしかありませんが、フィッシャーは「反戦・反核」という左翼反体制的方針をバッサリ切り飛ばし、緑の党の譲れない一点である「脱原発」に絞り込んでいったのです。
関連記事ドイツの脱原発のふたつの資産・地方政府と緑の党 それを融合させたひとりの男: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
かつて民主党政権で閣僚になりながら、辺野古容認に舵を切ったためにあっさり辞任してしまった福島瑞穂氏とは根性が違います。
ちなみに現実的安全保障政策へと転換した今の緑の党は、かつての左翼仲間からは「アーミーグリーンの党に改名しろ」と揶揄されるまでに「好戦的」です。
今回のウクライナ侵攻にあたっては、おたつく社民党を尻を叩いて真っ先に武器供与に賛成しています。
政党別でウクライナに対する武器供与の支持率は、一位が緑の党で、緑の党支持者の70%が武器供与の増加に賛成し、二位がメルケルのいるCDUで支持者の60%が賛成、ドンケツは極右のAfD(ドイツのための選択肢)で支持者のわずか17%が賛成、という結果でした。
ドイツ極右は、フランスの国民戦線と一緒でプーチン大好きだったせいもあります。
見事にフィッシャー路線は健在なようです。
さて、このSPDと緑の党の連立政権が打ち出した中心政策こそ2002年の「原子炉の稼働年数を最長32年に限る」とした脱原発政策でした。
メルケル政権から10年も早い第1次脱原発政策でした。
この時大反対したのが、今や脱原発派の星となっているメルケル率いるキリスト教民主同盟(CDU)だったのは皮肉です。
メルケルおばさんは、後に政権を奪還してから財界の意見を取り入れて原発稼働年数を12年延長することをしています。
つまりシュレーダーの脱原発政策をぶっ壊したのですな。
次に、中国とロシアへの異常接近です。
今はこれが仇となって、シュレーダーは政界追放に等しい目にあっているのですが、ロシアに接近するのは、脱原発をやるためにぜひとも必要だと考えたからです。
中国接近はもちろん輸出大国ドイツの市場目当てです。
シュレーダーについて川口マーン恵美氏は、「大国にすり寄ることによって、自分を大きく見せようとする姑息なところがある」と評しています。
任期中には、徹底してロシアの気に入らないことは言わない、という卑屈なまでの親露的態度を取り続けます。
当時から若きプーチンとは昵懇の仲で、育てあげるような気分で接していたようです。
シュレーダーは、崩壊したソ連の焼け跡から出てきた民主主義のリーダーとプーチンを深く勘違いしたのですね。
プーチン氏と親密の独元首相、ロシア企業会長を退任へ 侵攻後も報酬 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
後にその関係は逆転して、プーチンから天然ガスの会社の要職を恵んでもらって巨富を得るようになります。
初めはロシアと組むことは脱原発政策のための必要悪だと考えて接近し、次にプーチンを民主派と取り違え、さらにロシアが原油大国になるに至ってプーチンの僕となってしまったという悲喜劇です。
シュレーダー政権は、2000年6月、「アトムコンセンサス」と呼ばれる原子力漸減政策を立てて、政府と大手電力会社の間の協定としました。
続いて2001年12月には、脱原発法を通過させ、翌年の4月から施行します。
そしてこの「アトムコンセンサス」で失うエネルギー供給の損失分を、ロシア産原油・LPGで補填しようとしたのです。
ここで恒常的にロシア産原油・LPGを輸入する手段として企画されたのが、あの悪名高きノルドストリーム2でした。
当時、ロシアからの天然ガスはベラルーシからポーランド、あるいはウクライナからスロバキア・チェコ経由のいずれかの地上ルートでドイツに到達する仕組みでした。
下図の中央の黒線がそれです。
この地上ルートはロスが多い上に、各国の利害が絡んで複雑なので、スッキリ海底を通そうと考えたのです。
下図の緑線です。
エマニュエル・トッド「ドイツ帝国が世界を破滅させる」より
2010年に、この直輸入ルートの第1期完成(完工は2020年)を見越して、シュレーダーは脱原発に本格的な舵を切ったわけです。
ただし、その副作用として、ドイツのエネルギー源の極端なロシア依存体質が生まれました。
原油に占めるロシアからの全輸入は実に33%、天然ガスでは35%(2009年現在)、ここまで支配されたら国の基盤を他国にやるようなもので、ほとんど売国的です。
http://www.de-info.net/kiso/atomdata01.html
一方ロシアにとっては、国内価格の実に8倍もの高値でドイツに輸出でき、ここにドイツとロシアの共通の利害、ハッキリ言えば、強依存関係が生まれたのです。
ドイツの脱原発への転換で、もっとも潤ったのがロシアでした。
結果、ロシアはエネルギーの飢餓輸出によって外貨を稼ぎ、再びソ連帝国の再興を視野に入れました。
いわばドイツの脱原発政策で、プーチン・ロシアは帝国再興の手がかりをつかんだと言えるのです。
もうひとつ付け加えるなら、シュレーダーの失敗は、当時流行し米国も罹った「経済が豊かになれば中間層が増え、彼らが民主主義を求めるために、やがて民主主義国家に変化していくだろう」というノーテンキな誤解に基づいています。
結論はお分かりのように、まったくそうはなりませんでした。
独裁国家は独裁政治体制をいささかも変えないまま、経済的に肥大化して手もつけられない専制国家に成長してしまったのです。
ロシアはプーチンという100年にひとりの極悪人を生み、中国は習近平という中華帝国を夢見る男を作り出しました。
ただし、ここでシュレーダーが持っていたロシアに対する感情は、日本の年寄り左翼に時折ある「労働者の祖国」への憧れ、自分の青春期への郷愁といった湿り気を帯びたそれとはまったく次元が違うものでした。
彼の目的はロシアの原油と天然ガスを脱原発の原資とすることでした。
方やプーチンは、崩壊した帝国を原油で建て直して超大国に返り咲きたい、この思惑がふたりを見事に接着します。
そして石油利権がシュレーダーを絡め取ります。
一時代を共に戦った相棒のフィッシャーは、そんな彼をどのような目で見ていたのか知りたいものです。
ウクライナに平和と独立を
ドイツエネルギー大手ウニパーが経営破綻しました。
やるもやったり、1兆2700億の資金注入を政府に依頼しています。
「ドイツのエネルギー大手ウニパーは、最大90億ユーロ(1兆2700億円)の公的支援について政府と協議している。事情に詳しい関係者が明らかにした。
事情を知る関係者2人によると、政府は融資や株式取得などの組み合わせを検討しているほか、コスト上昇分の一部を顧客に転嫁することも視野に入れている。
財務省とウニパーはコメントを控えた。ドイツでロシア産ガスの大口購入企業の一社であるウニパーは先週、流動性確保に向け政府と協議中だと発表していた。4日の株式市場で同社株は28%安で取引を終えた。
ドイツ政府はまた、苦境にあるエネルギー企業への政府による資本注入や株式取得を可能にする法案を準備していると、関係者2人が語った。この法案はガス価格上昇によるコストをより多く顧客に転嫁することも認めている。同法案は今週、内閣が承認する見通しだという」
(ブルームバーク7月5日)
独ウニパー、最大90億ユーロの公的支援で政府と交渉中-関係者 - Bloomberg
ブルームバーグ
しかもウニパーの経営破綻は、国境を超えてフィンランドにも連鎖する可能性が出てきました。
「ドイツでロシア産ガスの最大の買い手であるウニパーは、流動性確保のため政府保証付き融資の増額または政府による出資の可能性を交渉していると明らかにした。ウニパーの危機的な状況は、同社の親会社フォータムの過半数株主であるフィンランド政府にも影響を及ぼす恐れがある」
(ブルームバーク 6月30日)
ドイツ、エネルギー大手に公的支援検討-ロシアガス巡る混乱収拾図る - Bloomberg
原因は、ロシア産天然ガスの輸入縮小による価格高騰です。
ヨーロッパ、特にドイツの電源会社は、ロシア産天然ガスの供給削減分を割高なスポット市場での調達で埋めざるを得ず、損失は加速度がついて膨らんでいます。
ロンドンのシティのアナリストの試算によれば、ウニパーはこの埋め合わせのコストが1日当たり約3000万ユーロ(約42億6000万円)に上っているようです。
ところで、このようなドイツのエネルギー政策の失敗の元凶はメルケルのように言われていますが、実は社会民主党政権の首相であったゲアハルト・シュレーダーが作った路線を完成したにすぎません。
シュレーダーは、初めはまだ弱かったプーチンを育て、やがて立場は逆転して、いまや従僕のようになっていきます。
ロシア大企業役員にドイツ・フランスの元首相 プーチン政権の意図は:朝日新聞デジタル (asahi.com)
[ベルリン 24日 ロイター] - ドイツのシュレーダー元首相について、ロシア企業とのつながりを巡り批判の声が出ている。
シュレーダー氏はロシア国営石油大手ロスネフチの取締役で、ロシアとドイツを結ぶガスパイプライン「ノルドストリーム2」の建設を担当する企業の株主委員会の会長も務めている。
ただ、ロシアのウクライナ侵攻を受けて一部の国内政治家からはこうした役職を退くべきだとの声が出ている」
(ロイター6月25日)
シュレーダー元独首相、ロシア企業とのつながりで批判 | Reuters
ドイツの元首相でありながら、ロシアの国営大手製油会社ロスネフチの役員であり、かつ、ロシア産原油を自分の国に引っ張り込むノルドストリーム2の建設会社のトップですから、シャレになりません。
現職ではないにせよ、かつて首相まで勤め上げた政治家がここまで深くロシア産原油と関わって、その利権の上にアグラをかいていたのですから、批判を受けても当然です。
このような腐敗と指弾されてもいたしかたない利権が野逃され見逃されてきたのは、ひとえにEUの女帝として君臨したメルケルがシュレーダーが敷いたロシア産エネルギー依存をそのまま踏襲したからにすぎません。
しかしいまや、シュレーダーは議会内の事務所を使う特権を剥奪され、今後ますます糾弾の矢面に立たされるでしょうが、糾弾する立場に回ったのが、社会民主党政権の後輩らだというのも、皮肉です。
「ドイツ連邦議会(下院)の予算委員会は19日、シュレーダー元首相から議会内の事務所を使用する権利を剝奪すると決めた。シュレーダー氏はロシアのプーチン大統領と親しく、ウクライナ侵攻後もロシアの複数のエネルギー企業幹部にとどまったままで、国内外で批判が高まっていた」
(日経5月20日)
シュレーダー氏の特権剝奪 親ロシアの独元首相に批判: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ロシアにとって最大の輸出品であり、国家戦略の大黒柱はいうまでもなく原油と天然ガスですが、その中心に位置するのがこのロスネフチでした。
ロスネフチは、年間売り上げが800億ドルを超える超巨大石油企業で、ロシアのトップ企業です。
イーゴリセーチン(ロシア元副首相)の経歴!ロスネフチ会長で対米の鍵? | Woder Bridge (wonderbridge.net)
ロスネフチは典型的な国策会社で、プーチンがトップ最高経営責任者(CEO)に据えたのが腹心のイゴーリ・セーチンでした。
セーチンはプーチンと同じKGB派閥に属し、最側近として大統領府副長官時代に辣腕を振るったとされています。
セーチンは、プーチンと同じレニングラード大学出身で一貫してプーチンを陰で支えた人物としていわゆるシロピッキ(KGB人脈)を代表する人物です。
「経歴上、治安機関での勤務経験は認められないものの、一部報道(2003年7月14日付"Коммерсант-Власть"誌、2003年12月1日付"Власть"誌等)ではKGB出身者とされ、大統領補佐官のヴィクトル・イワノフと共に、プーチン政権におけるシロヴィキの総帥と自他共に任じられる存在である。
プーチン政権による新興財閥(オリガルヒ)抑圧、特にユコス事件では、セーチンが中心的存在であったとされる」
イーゴリ・セーチン - Wikipedia
【詳しく】ウクライナ情勢 鍵握る「オリガルヒ」とは?石川一洋解説委員 - NHK NEWS おはよう日本 - NHK
このようなエネルギー利権を欧州各国のトップに配って、主従関係でからめ捕ってしまうのが、プーチンのやり口でした。
「ロスネフチの取締役には、オーストリアのクナイスル元外相も昨年6月に就任した。クナイスル氏は18年にオーストリアで結婚式を開いた際、プーチン氏がドイツのメルケル前首相との会談へ向かう途中に出席し、一緒にダンスを踊ったことでも知られる。
昨年12月には、フランスのフィヨン元首相がロシア最大の石油化学会社「シブール」の取締役になった」
(川口マーン恵美5月27日)
「プーチンのしもべ」に堕ちた独元首相、“ロシア依存の罪”で特権剥奪の残念な末路(川口 マーン 惠美) |
また、メルケルもその路線を引き継ぎ、脱原発に向けてまい進し、まさに頭の先までズッポリとロシアのエネルギーに漬かる構造を作ってしまいました。
下図はG7各国のロシアへのエネルギー依存度をみたものですが、ドイツがロシアに強く依存しているのがわかります。
脱ロシアのエネルギー未来図~アメリカは救世主になれるのか~ | NHK | ビジネス特集
メルケルが進めたのが、このシュレーダーが役員を勤めるロシア産原油を、これまた彼が役員をするノルドストリーム2で運ぶという出来すぎた癒着ぶりでした。
アンゲラ・メルケル首相徹底解剖! - 第8代ドイツ連邦共和国首相 - ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト (newsdigest.de)
同時にメルケルは、シュレーダーが作ったロシア産エネルギーへの強依存構造に加えて、緊縮財政路線も受け継ぎました。
おかげでベルリン市内の道までデコボコ、ドイツ連邦軍は骨眼きにされてしまいました。
そしてさらには、緑の党の看板であった脱原発までも吸収して、磐石な政治基盤を作ります。
ここからはご承知のとおり、太陽光パネルや風力などを推進し、脱炭素という理由で石炭火力発電も大幅削減する流れになります。
とうぜんのこととして 電気料金は高騰しました。
下のグラフは、主要先進国の電気料金(全体平均)の推移を比較したものです。
資源エネルギー庁
「ドイツの電気料金は、主要先進国の中でもっとも高い水準で推移しているのがわかります。ドイツでは1990年代からすでに価格水準が高かったのですが、近年では突出して高くなっています」
日本の電気料金は先進国の平均レベル、ドイツやイタリアよりも安い:電力供給サービス - スマートジャパン (itmedia.co.jp)
このようにドイツは主要国で群を抜いて高い電気料金であり、ドイツ企業は高い電力代金を避けるために、安価なロシア産天然ガスによる自家発電を進めて凌いだわけです。
このため、ドイツのロシア産ガス消費の6割は産業用であり、今回のロシア産の制裁は、むしろ家庭より製造業を直撃しました。
かくて、シュナイダーとメルケルが敷いた脱原発路線は、その前提であったロシアから安価なガスの安定供給が途絶えた瞬間に破綻してしまったのです。
シュナイダーは強い批判を受けてもシラっとして「この30年間はうまくやってきた」とうそぶいていますが、本来この30年間の時間は高効率の石炭火力発電技術の開発に当てるべきでした。
ドイツは石炭の大量産出国であり、日本と違っていまもなお炭鉱は維持されているからです。
ですから、いったん石炭火力の高効率か成功すれば、ロシア産原油・天然ガスにこれほどまでに依存する必要はなかったのです。
かくしてシュレーダーは、ドイツの諺でいう「パンをくれた人の歌を歌った」男とドイツ国内で揶揄されているようです。
世界の難民・避難民 初の1億人超 ウクライナ侵攻で急増 UNHCR | NHK | ウクライナ情勢
ウクライナに平和と独立を
ロシアが逆制裁に励んでいます。
まずは日本から。
ロシア官営のスプートニクはこのようなことを報じていました。なんでもこんなご大層なことのようです。
「ウラジーミル・プーチン大統領は大統領令「一部の外国、及び国際組織の非友好的な行動に伴う燃料エネルギー分野における特別経済措置の適用について」に署名した。これに伴い、石油や天然ガスの採掘プロジェクト「サハリン2」の事業主は現行の「サハリン・エナジー」から、新たに設立されるロシア法人に移行し、この事業に出資していた外国企業は、 事業への継続、又は株式の売却を1ヵ月以内に決定する義務がある。外国企業が保有する株式を売却する場合、その利益は新たに設立されるロシア法人が受け取る」
(スプートニク7月1日)
ロシアが大統領令で「サハリン2」の事業会社を変更、事業への参加継続に関する決断を外国企業に要求 - 2022年7月1日, Sputnik 日本 (sputniknews.com)
なにせ大統領令ですぜ。日本も憎まれたもんだ(苦笑)。
大統領令とやらには、次のように記されているそうです。
スプートニク
「一部の外国法人、及び個人が義務に反したことで発生した、環境や技術面の非常事態に対する脅威、及び住民の命や安全に対する脅威、ロシア連邦の国家的利益、経済上の安全保障に対する脅威に伴い、これらの外国法人、及びその管理下にある個人に対し、次の特別経済措置が適用されることになった。
大統領令によると、「米合衆国、及びこれに連なる外国、国際組織の非友好的、かつ国際法に矛盾する行動」によってこの措置は発動されるという。大統領令の目的はロシア連邦の国家的利益を保護することにあると強調されている。
これらの外国法人は1994年6月22日に締結された生産分与契約(PS契約)の条件によるピリトゥン・アストフスコエ鉱区とルンスコエ鉱区の開発に関する合意に違反したという」
(スプートニク前掲)
サハリン2、ロシア新企業に譲渡と大統領令 三井物産 三菱商事が出資 - 産経ニュース (sankei.com)
近藤大介氏などは「サハリン2ショック」と仰々しく書いていますが、なんのこのていどのことをプーチンがしかけてくるのは想定内で、起きるべきことが起きた、ただそのタイミングを参院選直前にもってきたというエグサが光るだけのことです。
サハリン2の事業会社サハリンエナジーには、ロシア国営LPG独占企業のガスプロムが約50%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%それぞれ出資しており、LPG生産量の約6割が日本向けです。
これがロシア企業に移管されることで、とうぜんのこととして日本のLPG調達には影響が出ます。
また、北方領土の開発を中国にやらせるそうです。
いままで安倍氏との信義があって、中国に介入させていませんでしたが、近藤氏によれば以後勝手にやらせてもらうそうです。
なんでも中国はナマコが欲しいんですと(苦笑)。
ただこの国後ナマコは、我が国のものなんですがね。
「特産の「国後ナマコ」を始め、中国にとって北方領土は、経済的にも地政学的にも、ぜひとも開発したい地域なのである。これまでも要求はしていたが、ロシア側が日本に遠慮して断ってきた。
だがいまや、「NATOの東アジア拡大」という大きな趨勢を前に、中国とロシアは、東アジアでもがっちり手を組むだろう。「サハリン2ショック」の次は、「北方領土ショック」が日本を襲うような気がしてならない」
(近藤大介 7月4日)
サハリン2の次は「中国による北方領土開発」か、ロシアの報復は止まらない(JBpress) - Yahoo!ニュース
中国は、海軍の太平洋への進出航路として、いままでロシアが独占してきた北方領土航路を狙ってきており、さらにはロシアの野望である北極圏からヨーロッパへ抜けるルートにも協力する気満々のようです。
こんなていどの制裁を覚悟していないで、ロシアに制裁をかけていたなら、岸田政権はマヌケです。
近藤氏は「サハリンショック」がくるのが待ち遠しいようです。
政権筋がこう言った、言わないとか。
「プーチンは周知のように、何を言い出すか分からない男だが、せめて『爆弾発言』(大統領令への署名)を10日間遅らせてほしかった。もっともアチラとしては、参院選で岸田総理を苦しめてやろうとして、『サハリン2』を持ち出してきたのだろうが」
(近藤前掲)
近藤氏は、このサハリンのLPGを買いつけているのが、岸田氏の地元の広島だから票を失うと占っていますが、こんなもんで失う票なら失っちゃいなさい。いつものことながら、この人はちょっと小耳にはさんだことを恣意的に増幅します。
2月侵攻時に、萩生田経産相は盛んに「日本が手放せば、第三国に渡ってしまい、ロシアを制裁することにならない」ということを権益を手放さない理由に上げていましたが、西側が撤退すれば出てくるのはただ一国、中国しかいないのはあたりまえすぎて言う気にもなれません。
そもそも、日本はロシア産原油・LPGへの依存度は3.6%ていどですから、なんとかしなさい。
これがサウジやUAEといった30%を超える依存率を持つ国の禁輸なら青くなるでしょうが、たかだか3%台のシェアでガタガタ言うんじゃないよ。
ロシア産石油の禁輸でどうなる 日本への影響は?ロシアにはどれくらい圧力に?|サクサク経済Q&A|NHK
ロシア産原油は、9割以上依存していた中東産原油が不安定になった時の多極化対策、いわば安全弁にすぎません。
2013年当時、日本はこう考えていました。
「中東依存度の高さが日本のエネルギー安全保障のアキレスけんであると誰もが言う。では、具体的にどう対処したらよいのか? インドネシアは2003年から石油純輸入国となり、LNGの輸出量も2012年から急減している。中東以外で有力な産油国を見つけるのは容易でない。今ある最も有効な対処法は「ロシアシフト」であろう。
2013年か2014年には原油供給のロシア依存度を10%程度に引き上げ、中東依存度を80%程度に引き下げるのが望ましいと思われる」
(本村眞澄 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)主席研究員 2013年6月2日)
22.日本はロシア資源をどう使えるか?-本村 眞澄 | ユーラシア研究所 レポートサイト (yuken-jp.com)
日本は慎重にロシア産のシェアを延ばしてきました。
ドイツのように、愚かにも身も世もなく自分の国のエネルギー源をほとんど全部明け渡すようなまねはしなかったのです。
JOGMEC
ロシア産原油は中東原油が2,3週間かかるのに対して、3日程度で到着する近さが売り物ですが、価格的には国際相場より割り高で取引されていました。
また、ロシア産原油とひとくちに言っても、3つにリスク分散させました。
今回プーチンが、わーわー言っているサハリン2の割合は8.6%を占めるにすぎません。
最も多いのは、東シベリアからのエスポ原油で、これが半分以上の56.5%を占めます。
実はこれを開発したのは日本企業で、日本は地質調査から関わり、2016年から石油の生産にも関わっています。
これがパイプラインで日本海まで運ばれて、そこから日本に輸出されています。
シベリアから新潟までパイプラインを海を超えて南北に通す話もあったそうですが、日本が握りつぶしました。
いま思うと、こんなもんを通さなくてホントによかった。日本版ノルドストリームになっているところでした。
22.日本はロシア資源をどう使えるか?-本村 眞澄 | ユーラシア研究所 レポートサイト (yuken-jp.com)
一方、6月14日、ガスプロムはノルド・ストリーム経由のドイツ向けガスの供給を40%削減すると発表しました。
さらに翌15日には、これを60%に拡大するというえげつなさで、まさにヤクザが少しずつ切り刻むような手口です。
いちおう理由は、パイプラインの部品の定期修繕がカナダにあるシーメンスの工場で行われているが、それがカナダ政府の対ロシア制裁によって再納入出来なくなっていると言っていますが、もちろんうそです。
「しかし、その説明を鵜呑みにする向きはない。イタリアのドラギ首相が言うように、その説明は嘘であり、「小麦が政治的に使われているのと同様、これはガスの政治的利用である」に違いない。
既にポーランド、オランダ、ブルガリアに対するガス供給は停止されている他、幾つかの企業に対する供給も削減されているようであるが、ここに来て欧州の弱みに本格的につけ込む戦略の一手を打った(ガス需要が高まる冬には更なる削減を仕掛けるかも知れない)ということであろう。いわば西側の制裁に対して逆制裁をもって対抗する構えではないかと思われる」
(岡崎研究所)
ロシアの欧州逆制裁とプーチンの思惑 Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) (ismedia.jp)
ロシアは、なぜかいま大変に強気です。
「プーチン大統領が西側の制裁を乗り切れると信ずるに至ったこと(その判断の当否は別として)があるかも知れない。6月17日、サンクトペテルブルグの国際経済フォーラムで演説した同大統領は西側の制裁を「常軌を逸し(insane)」「狂気じみた(crazy)」ものと呼び、西側はロシア経済を暴力的に崩壊させることを予想したが、そうはならなかった、ロシア経済は正常化する、「ロシアに対する経済的電撃戦は最初から失敗する運命にあったのだ」と述べた」
(岡崎研前掲)
その決定の背景には、エネルギー輸出は制裁で減っても、国際原油価格の高騰がこれを補っているのだから、遠からず西側は音を上げてロシアの軍門に下るだろうという計算が働いたことに違いありません。
現在、ヨーロッパが受けているプーチンの逆性差位置くらべれば、日本列島の周りをポンコツ艦隊がサビをまきちらしながら周回しようと、わずか3.8%のロシア産原油を切られようと、ナマコを中国にくれてやることになろうとも、なんということはないはずです。
北方領土など、あの国が崩壊の淵に瀕すれば自然の流れで戻ってきます。
日本はウクライナの独立を守るという大義の側についたのですから、こんなていどのことで浮き足立たないことです。
むしろいいチャンスですから、ロシア産原油に代わるいい輸入チャンネルを見つける時だと思うことです。
煙、崩れる屋根…「最も恐ろしい光景」 ロシア攻撃の商業施設 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
ウクライナに平和と独立を
ところで、マドリッド宣言のもうひとつの注目点が、中国を名指しで「私たちは、私たちの利益、安全保障、価値に挑戦し、ルールに基づく国際秩序を損なおうとする中華人民共和国を含む人々との組織的な競争に直面しています」としたことです。
「中国については「多岐にわたる政治的、経済的、軍事的な手段を使って、力を誇示しようとしている」と覇権的な行動のリスクに言及した。経済面でも「重要インフラや戦略物資を握ろうとしている」と強調した。欧州とインド太平洋の安全保障は不可分として、日本、韓国、豪州、ニュージーランドとの協力強化を推進する方針だ」
(読売6月30日)
NATOがロシアを敵国認定、中国の「組織的な挑戦」初明記…首脳会議で新たな「戦略概念」採択 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
これはかねてから提唱されていた、NATOの枠組みをヨーロッパに限定せずに、アジア・太平洋地域にも拡大するいわゆる「グローバルNATO構想」が現実になりつつあることを示しています。
今回、岸田首相がマドリッドに招聘されたのは、この一環です。
「ノルウェー国防研究所のチョ・インゲ・ベッケボルド研究員は「(ウクライナ戦争は)ロシアの中国依存度を増加させている」とし「中国はロシアにとって第1位の貿易相手国で、世界のどの国よりも多くの原油をロシアから輸入している。
また、新たに建設されるパイプラインを通して、天然ガスの輸送量が急速に増加するものと予想される」と指摘した。中国の最大の原油輸入元は、かつてのサウジアラビアから最近はロシアに変わり、中国の先月のロシア産原油輸入量は前月比で28%増加した」
(2022年6月28日 フォーリン・ポリシー)
このウクライナ戦争で、ヨーロッパへの輸出を大きく制限されたロシアは、中国へ逃げ場を求めています。
中国のエネルギー消費量は、日本の約7倍。石油換算で34億トンにもなります。
では、西欧向けを全部中国が引き受けられるかといえば、そういうことでもないようです。
現状では、ロシアのガスプロムが欧州向けに出荷している数量は、中国向けとは桁が異なる大きさであり、欧州市場から中国に振り向けるにも、それだけの量を送るパイプラインがありません。
EU石油禁輸で露に打撃 穴埋めは困難か - 産経ニュース (sankei.com)
ただし、中国がロシア産原油を買い支えているのは事実で、NATOはこれを明白な敵対行為として受けとっています。
「中国やインドがロシア産原油の調達を増やしている。米国や欧州連合(EU)の輸入禁止で買い手が減るなか、ロシア産は国際価格より大幅に安くなっており、調達する経済的なメリットが拡大しているためだ。中印の買い支えでロシアはエネルギー輸出による歳入を確保しており、米欧による制裁の実効性が薄れている」
(日経6月7日)
ロシア原油、中国・インドが下支え 制裁の実効性そぐ: 日本経済新聞 (nikkei.com)
準敵国認定された中国は、いたくお怒りのようです。
いつも口を尖らせて泡を吹いているような「戦狼外交官」趙立堅は、こう述べています。
「NATOの戦略文書「戦略概念」に中国関連内容が含まれる動きについて、外交部の趙立堅報道官は2022年6月29日の定例記者会見で、「NATOはイデオロギーで線引きして政治的対抗をあおることや、『新冷戦』を始めようとするのをやめるべきだ。
やるべきことは冷戦思考、ゼロサムゲーム、人を敵に回す行為であり、欧州を混乱させ、さらにアジアと全世界を混乱させようとしてはならない」と強調した」
(レコードチャイナ6月30日)
外交部 NATO戦略文書の中国「名指し」に政治的対抗をやめるよう非難 (recordchina.co.jp)
中国から「アジアと世界を混乱させようとしている」などといわれると、失笑してしまいます。
あんたにだけは言われたくない。
朝日もお約束の社説を出しているようです。
「こうしたなか、日本が日米同盟に加え、欧州諸国とも安全保障面の連携を深めることには意義がある。ただ、中国に対抗する姿勢ばかりが前面に出れば、かえって緊張を高める結果になりかねない。対話の努力を同時に進めねばならない」
(朝日社説7月1日)
(社説)NATOと日本 「安定」に資する連携を:朝日新聞デジタル (asahi.com)
あのね、朝日さん「緊張を高めている」のは日本じゃないの。
今、日本の周囲をロシアと周回して威嚇したり、沖縄近海で空母の離発着させているのは、一体誰なのかなぁ。
これが「対話の努力」なのかなぁ。
中露艦隊が日本列島を周回 動き活発化、共同行動の可能性 - ライブドアニュース (livedoor.com)
また6月28日、ミュンヘンG7の共同声明では、中国の経済圏構想一帯一路に対抗し、「質の高いインフラ」に5年間で6000億ドル(約82兆円)を共同で投資する方針も盛り込まれています。
とまれこれで、中国をはっきりと準敵対国扱いしたのですから、2013年以来、中国が打ち出した国策である「一帯一路」政策はこれでドン詰まりを迎えることとなりました。
中国は「親友」ロシアの肩をもったことで、高い代償を払ったことになります。
ウクライナ難民、230万人超に 止まらぬ国外退避: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ウクライナに平和と独立を
気持ちを切り換えて、更新を再開いたします。
脳と身体が別世界で回転していましたので、まだなんか調子が戻りませんが、ボケている暇はありません。
さて、世界史的回転が行われました。
NATOがマドリッド宣言を発しました。この意味するものは、メディアの解説のようにウクライナ支援と北欧2カ国の加入などという単独のパーツで見るとわかりません。
これは端的にいえば、第2次冷戦の開始宣言であって、最低でも以後十数年の期間を決定する分水嶺となるものです。
よくヨーロッパはウクライナ支援疲れを起こしている、関心も薄れた、支援も限界だ、などとしたり顔で言う者が絶えませんが、それはプーチンに勝ってほしいという願望の現れにすぎないことが、このマドリッド宣言で明らかになりました。
また、この宣言は「ウクライナ戦争後」も睨んだものであることを、念頭に入れて下さい。
ウクライナ戦争がどのような結果になるか予断を許しませんが、どちらが勝つにせよ、戦争が膠着し均衡状態が長期化してからが和平交渉の出番となります。
いずれにせよ、ウクライナは天文学的復興資金が必要です。
破壊され尽くした多くの街、橋、水道・電気などの生活インフラ、学校、病院などすべての面での膨大な支援が必要です。
ロシアは負けても賠償金は1ドルたりとも出さないはずですから、それは自由主義陣営の仕事になります。
ある意味、欧米や日本の真の出番はここからです。
非常にイヤな言い方で、亡くなられた多くのウクライナの方々には申し訳ない気がしますが、自由主義経済においてはこれはとりもなおさず巨大な商機なのです。
おそらく、かつての大戦後のヨーロッパの戦後復興に並ぶ規模の復興支援ビジネスとなるでしょう。
これをどうしていくのか、そこまで含んだ上での「新冷戦宣言」です。
要約すれば、6月29日のNATO首脳宣言(マドリッド宣言の内容は、以下です。
①戦略概念の文書で、ロシアを「最大かつ直接の脅威」として敵国認定。
②中国を「政治的、経済的、軍事的に国際秩序を破壊しようとしている」として準敵国認定。
③アジア・太平洋諸国との連携を深める。
④ロシアの脅威に対抗するため東欧でのNATO即応部隊 (NRF)を、現状の7.5倍の30万人に大幅増強する。
⑤ウクライナ軍の新鋭化などの支援強化。
⑥フィンランドとスウェーデンの加盟を認める。
北欧2カ国の加盟は、すでに決まっていたことで、トルコの妨害で遅れていたものです。
別に記事にしようかとも思いますが、トルコはNATO加盟問題とはなんの関係もないクルド族活動家を北欧二カ国が匿っているから引き渡せと横車を押し、まんまとせしめていきました。
GSOMIAを止めてやるぅ、と叫んで米国を引き込んで、日本の妥協を迫ろうとした極東某国と同じやり口です。
東西両陣営を秤にかけ、ロシアに貸しを作って、うまいこと立ち回ろうとする卑しさがたまりません。
ああ、なんて下劣。
とまれ、これでフィンランド湾に21世紀版鉄のカーテンが静々と降りたことになります。
以後、ロシアは、従来のNATO諸国と接する国境に加えて、約1300キロという長大なフィランド国境が加わることになりました。
しかも、NATOはこの対ロシアの抑えとして東欧に、即応部隊(NRF)を30万人置くことを決定しました。
いざという時即参上!NATO高度即応統合任務部隊にポーランド軍着任 | おたくま経済新聞 (otakuma.net)
NRF部隊とは、有事即応部隊のことで、NATO加盟国が共同で部隊を拠出しています。
「NATO加盟国が共同で組織するNATO即応部隊(NRF)のうち、より機動的に対応するため2014年に創設されたのが高度即応統合任務部隊(Very High Readiness Joint Task Force)です。その内容は、5000名程度の将兵で構成される旅団規模の陸上部隊となっており、事態発生から48~72時間以内に展開できる即応体制にあります。
高度即応統合任務部隊の任期は1年で、NATO加盟国間で持ち回りとなっています。2019年の担当だったドイツに代わり、ポーランドが2020年の任務を引き継ぎました」
(おたくま新聞2020年1月17日)
この旅団規模の即応部隊を、一気に本格的部隊編成の30万人規模とし、ポーランドに米軍司令部を置きます。
ただし、幹事国がポーランドの次はトルコなのでどうなることやら。
英国など、腕まくりして、腕をブンブン振り回しているようです。
参謀総長が、「もう一度ヨーロッパで戦う」と吠えています。
「6月に着任した英陸軍のパトリック・サンダース参謀総長は着任早々、イギリスは「もう一度ヨーロッパで戦う」準備をしなければならないと警告した。ロシアの脅威がウクライナを越え、欧州が再び戦場と化すシナリオを示唆した、衝撃的なメッセージだ。
英BBCは6月19日、「イギリス陸軍の新トップが部隊に檄(げき)を飛ばす ロシアとの戦場での対峙に備えなければならないと発言」と報じた。
サンダース氏はウクライナ情勢を念頭に、「イギリスを護り、地上戦に参戦し勝利する準備を整えなければならない」のは明らかであり、英陸軍は同盟国とともに「ロシアを打ち負かすことができる軍隊を編成することが急務である」と指摘した」
(青葉やまと7月2日)
ロシアの軍隊を地上から消し去る…英国の陸軍トップが"直接対決"を公言するワケ(プレジデントオンライン) - Yahoo!ニュース
かくてプーチンは4日で終わる気軽なお仕置き気分で始めた「特別軍事作戦」によって、全ヨーロッパを敵に回してしまうことになりました。
味方は、ベラルーシくらいなもの。
バイデンは、これを「欧州全域のNATO化」という言い方をしています。
「プーチンは欧州の『フィンランド化(中立化)』をもくろんでいました。結果、彼が得んとしているものは、欧州の『NATO化』というありさまです。彼が絶対に望んでいなかったことですが、欧州の安全保障には不可欠なものです」
(青葉前掲)
ロシアは、ウクライナに兵力の大半を突っ込んでいるのに、それに加えていまや全欧を敵に回わさねばならなくなったわけです。
プーチンは、ウクライナのNATO加盟阻止がお題目だったはずなのに、真逆な結果を引き出してしまったのですから、悪いことはできませんね。
対応して軍拡をしたくとも兵力は出払っており、軍需産業は崩壊の淵にあえいでいます。
今はルーブルで払っていますからいいようなものを、やがて制裁によってロシアの国家財政そのものが破綻するかもしれません。
ウクライナ侵攻軍は、兵員はおろか将校すら不足しているようで、将校は事務職も引っこ抜き、兵隊は囚人まで投入していると伝えられています。
「ウクライナ東部で支配域を広げるロシア軍だが、このところまた厳しい状況が聞かれるようになった。
テレグラフ紙は6月23日、「ロシア将校らはこのところ、主に講師と教官、そして料理担当をかき集め、前線部隊を編成することを余儀なくされている」と報じている。兵士不足の解消を図るべく、国内の軽犯罪の囚人に恩赦を与え、戦地へ移送する案も浮上しているという」
(青葉前掲)
東部戦線になけなしの火砲や兵員を集中的に注いで、一時的優勢を得たものの、兵員や火砲、食糧、医療、休養など総合的兵站がどこまで持つか拝見しましょう。
ところで、このマドリッド宣言で注目すべきは、イェンス・ストルテンベルグ事務総長のこの発言です。
ちなみにストルテンベルクは、新規に加盟が決まった北欧2カ国と国境を接するノルウェイの元首相で、ノルウェイ労働党穏健派に属しています。
つまり氏素性はレッキとした社会民主主義者ですが、日本で「頑固に平和。9条の力で平和実現」なんてわけのわからないことを言っているリベラル政党らとは違ってしっかりと現実の世界に立脚しています。
彼はNATOは「戦略概念」において、明確にロシアを敵国措定したのだ、と言っています。
「NATOのストルテンベルグ事務総長は首脳会議に先立つ27日、新たな戦略概念では、ロシアを「われわれの安全保障に対する最も重大かつ直接的な脅威」と位置づけることを明らかにした。2010年に採択された現行の戦略概念ではロシアについて、「真の戦略的パートナーシップを求める」と記していた。
ストルテンベルグ氏はまた、新戦略概念には中国対策を初めて盛り込み、「中国がわれわれの安全保障、利益、価値観にもたらす挑戦に言及する」と語った。中国の軍事的台頭に対する懸念が強まったのは10年以降で、現行の戦略概念では触れられていなかった」
(産経6月28日)
NATO、露中対抗へ「変革」の首脳会議 - 産経ニュース (sankei.com)
いままでのNATOは「敵国」が存在しない、という奇妙な軍事同盟でしたので、ルトワックから加入しただけで安心してしまう偽薬呼ばわりされたほどです。
従来は「戦略的パートナーシップ」(2010年戦略概念)を求めるという姿勢でプーチンを甘やかし続け、その4年後のクリミア侵攻を招いてしまったにもかかわらず、わずかの制裁で済ましてしまい、戦略概念は変更されませんでした。
そしてその間、NATOは戦えない烏合の衆と化していました。
それがもっともよく現れたのが、ドイツ連邦軍の惨状でした。
「飛べない飛行機、動かない艦船、足りない戦闘車両など、ドイツ軍はこれまで数多くの「嘲笑」を受けてきた。
これらの問題は、主にスペアパーツ不足が原因と言われているが、それなら予算を増やして、スペアパーツを購入すれば問題が解決するのかといえば、そこまで単純な話ではなく、ドイツ軍という組織が、もはや機能不全を起こして問題を悪化させている可能性が高い。(略)
ドイツの政治家(主に与党、ドイツキリスト教民主同盟の政治家たち)は、軍の正常化のために予算を増やすどころか、どうやって予算を削るかに知恵を絞っている。
これまでもドイツは頑なに防衛費の引き上げを拒んできた。ドイツは経済的に恵まれ、NATOを中心とした安全保障政策を行っているにも関わらず、NATOが定めた防衛費の基準(GDP比2.0%)を守ろうとしないため、NATO加盟国からの批判も大きい」
(エクスプレス2019年8月16日)
ドイツ軍のショック:国会議員は「戦後の時代は終わった」として巨額の軍事投資を呼びかけ|ワールド|ニュース|Express.co.uk
このメルケルが蒔いたドイツ流平和ボケは、軍の最高指導部にまで及び、ウクライナ戦争が始まってもなおプーチンを讃える海軍司令官が出たり、政府も政府でウクライナ支援は枕(実際はヘルメットだったようですが)という、日本のリベラルといい勝負の現実浮遊ぶりでした。
ゼレンスキーからボロッカスに言われ、キーウ来訪も拒否されて、世界から嘲笑の的となり,NATOがロシアを敵国認定したことでやっと眼が覚めて、いまは真人間に更生しようとしていますが、どうなりますか。
ちなみに、軍拡を宣言したドイツの政権は社民党と緑の党の連立政権ですから、皮肉なものです。
とまれ、こうして歴史的鉄のカーテンが降りたのでした。
※中国の部分はあまりに長いので明日に分割しました。
ウクライナの子ども、半数超の430万人が避難生活 ユニセフ発表 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
ウクライナに平和と独立を
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