テロリズムに魅せられた山上という男
山上の手紙と称するものがでてきました。
あるフリージャーナストに当てたものでだそうですが、真贋はなんともいえません。
内容的には、前半は母親と教団への恨みつらみ一色です。ここまでは分かりやすい。
「親が子を、家族を、何とも思わない故に吐ける嘘、止める術のない核心に満ちた悪行、故に終わる事のない衝突、その先にある破壊」
「母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産…。この経過と共に私の10代は過ぎ去りました。その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言っても過言ではありません」
「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」
40男がなにを甘えたことをグチャグチャと、と思って読みましたが、ならば、母親なり教団幹部と刺し違えて自殺でもすればよいのです。
安倍元首相を暗殺した山上容疑者の今後は?「死刑の可能性低い」と元東京地検特捜部検事 | 女性自身 (jisin.jp)
山上容疑者 犯行前日に知人男性宛ての手紙投函か 安倍元首相は「本来の敵ではない」― スポニチ Sponichi Annex 社会
これだけの文章を書けるのはスゴイと妙に褒めそやす者がいますが、なにを言っているのか。
山上は奈良県トップクラスの高校出身者なのですよ、こんなていどの作文ができてあたりまえです。
この「手紙」(というより犯行声明文ですが)には、肝心要の安倍氏殺害動機が語られていないという重大欠陥があります。
書いているのは、オレの人生は母親の入信で歪められた、教団は「人類の恥」だということだけをグチグチ書いているだけです。
これが犯行声明文ならば、安倍氏殺害動機を明確に掲げねばなんの意味もありません。
かくかくしかじかで安倍は大悪人なのだから天誅を決意した、と言わねばなりませんが、その部分は末尾にチョロっと一行「もはやそれを考える余裕はありません」ときているのですから、ふざけるのもいいかげんにしてほしいものです。
世界数百カ国の首脳が弔問に訪れ、数万人の国民が記帳し、日本国が国葬で送ろうという人物を殺害しておいて、「もはや考える余裕がない」、とはどういう意味なのでしょうか。
山上は、安部氏にターゲットを絞った経緯について、いちおうの説明は試みています。
しかしこれがよくわからない。
文鮮明やその妻である韓鶴子、あるいはその子供たちを殺そうと計画したが、殺してしまうと三男四男が喜んで新しい教祖になりそうだ、ほんとうは全員殺さねばならないが不可能だからやめた、ということのようですが、全般の恨み節では饒舌だった彼がここになると妙に歯切れが悪い印象です。
これでは無差別殺人です。
というか自分でも整理できないまま短絡的犯行に及んだのか、あるいはなんらかの教唆で安部氏殺害へとねじ曲がったのかもしれません。
ここに山上はJFK暗殺事件におけるオズワルドだ、という謀略説が生まれる余地を残しています。
たしかに、安倍氏を抹殺したいという者は国の内外にひしめいており、無能を絵で描いたような奈良県警の警備を見ると、なくはないと思わせてしまうのも事実ですが、謀略論にはまるには早すぎます。
さすがに山上も、文教祖、ないしはその血族を殺すのが筋だということくらいわかっていたようです。
ところが、エネミーナンバーワンのはずの文が死んでしまい、教団は跡目争いで分裂してしまいました。
すると、もうどこを叩いていいのかわからず、一家全員まとめて殺害などと気分だけはエスカレートしても実現はいっそうむずかしくなって頓挫したようです。
ならば、ここで暗殺計画を止めて当然です。
“元ナンバー2”が旧統一教会批判も、実態は“どっちもどっち”?…背景には文鮮明氏ファミリーの分裂も(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース
ターゲットなき暗殺計画などありえませんから、後半3分の1は自分でもなにを書いているのかわからない錯乱状態です。
教団トップを殺せば三男四男が新しい教祖になる、分裂して弱体化した教団が再結集してしまって再び強力になってしまうかもしれない、どうやってもだめじゃん、ええい、ならば安部を殺す、なんですかこの短絡は?
山上はここで暗殺の限界を知るべきだったのです。
暗殺という手段を使えば、ひとりを殺しても次の新しい権力者を生み出してしまいなんの解決にもならないことは、わかりきったことです。
だから、暗殺という手段は99.9%が無意味です。
日本史上もっともテロの嵐が吹き荒れたのが幕末期ですが、政局に影響をあたえたのは唯一桜田門外の変だけです。
残りの有象無象のテロは無意味な殺人にすぎませんでした。
今回の安部氏暗殺ですら、衝撃は巨大ですが、岸田氏が安部氏の役割を自覚する作用を生み出せば、政治的影響は最小限で治まります。
山上よ、だったら初めからやるな。
教団が分裂してしまって誰を殺していいのか自分でわからなくなった段階で、テロ計画は中止しろ。
ここで止めていれば、お前は市民生活に戻れたのだ。
ところが山上は、最後の時期にはテロリズム自体が持つ魔力の虜になっていたようです。
暗殺は、(語弊がありますが)「楽しい」のです。
他者の生命、しかも安倍氏のような世界的指導者の命が、自分の掌中にある、いつでも引き金ひとつでそれを奪えるという倒錯した万能感。
死をもたらすことで、安部氏を凌げると感じる支配感。
オレのようなさえない一生を送らされた男でも、安部を殺したことで時代の寵児になるれると思う屈折した達成感。
ゴリアテにも似た巨悪を石つぶてひとつで倒そうとするダビデの自分、という擬似的正義感。
そう考えて、山上はえも言われぬ快感に酔ったことでしょう。
テロリズムという悪習から人類が自由にならないのは、これがあるからです。
ですから、山上は安倍氏を付け狙い、それに向けて密造銃や爆弾を作っていた時、生まれて始めて「生きがい」らしきものを感じたはずです。
ユーチューブで製造方法を学び、DIYで部品を物色して製造するかたわら、標的と定めた安倍氏の動向を探って付け狙いながら、ふと自分でもいくらなんでも無茶な八つ当たりテロではあるまいか、とどこか気がついています。
オレはナニをやっているんだ、という悔恨の声が湧いて当然です。
ここで普通の人間は止めます。理性のストッパーが掛かったからです。
しかし山上は、「今のオレには政治的意味を考える余裕はない」と、その声を無理やり押し殺してしまいます。
馬鹿め、どの段階でも引き返すチャンスがありながら、テロリズムの持つ魔力に引き込まれていきやがった、と私には見えました。
この理解不能な飛躍の背景には、その死後も溢れる安部ヘイトがあるとかんがえるのは自然でしょう。
このことは多くの人が指摘しています。
私たちは下のような報道を丸々2年間も見せられ続けたのです。
そしてこのモリカケ桜全開の時期こそ、山上が安倍氏にターゲットを変更した時期に当たっていました。
「このような偏った報道が、今回の事件の遠因にあるのではないかと個人的には思っている。先ほども言ったように、ヘイトクライムというのは、みんなが叩いている「わかりやすい敵」を叩く傾向にある。
近年、安倍氏ほど、マスコミなどから叩かれた政治家はいない。その中には真っ当な政策に対する批判もあったが、中にはSNSの誹謗中傷のように、人格をおとしめるようなものも多くあった。そういう「ヘイト」は当然、山上容疑者も把握していたはずだ。なにせネットで、教団関連団体に安倍氏がビデオメッセージを送ったのをチェックして、統一教会との関係も調べていたくらいなのだ。
そのような大量の「安倍ヘイト」に、山上容疑者も刺激された可能性はゼロではない。教団幹部の中で誰を殺せば最も教団にダメージを与えられるか、などと複雑な問題と向き合うより、「日本に統一教会を持ち込んだ悪の政治家・安倍晋三」を殺害すればすべて解決だと自分に言い聞かせた方が、山上容疑者的にもラクだし納得感があったのではないか」
(窪田順生7月14日
宗教団体を恨んで安倍氏狙う不条理…犯人は「ヘイトクライム」思考の典型だ | 情報戦の裏側 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
まぁ、でしょうな。
その意味で、アベヘイトを延々と2年も3年も毎日垂れ流し続けたメディアは立派な共犯者なのです。
教祖殺害に挫折した山上に新たな目標を教唆し煽動し、死後も安倍氏の死を毀損し続けるメディアの犯罪が、氏を殺したということです。
ただし、山上はその前になんども引き返す機会はあったが、テロリズムの持つ魔力に魅せられていたのです。
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山上は銃を崇拝するサンクチュアリ教会にいたという噂もあります。
事件後にサンクチュアリ教会も日本に来日してます。そこで安倍氏を殺害するように教唆されたのではないかと私は考えてます。
投稿: レナト | 2022年7月21日 (木) 07時14分
このようなエセヒロイズムに捕らわれた凶悪事件は扱いを間違うと犯人を被害者かのように祭り上げてしまうので注意が必要ですね。
個人的には山上も意味不明な理由で京都アニメーションで大量殺人を行った青葉も同じ理性が吹っ飛んだ異常者です。
この前提がないまま下手にこの手の事件を扱ってしまうと
「おれも不幸な生い立ちをしたから社会に復讐してもいいんだ」
という模倣犯を生んでしまいかねません。
近年の秋葉原のテロ事件、やまゆり園などの凶悪事件に対してメディアがどのように接してきたのか?山上がメディアを通してこれらの事件をどのように受け止めていたのか?
統一教会うんぬんも結構ですがメディアが彼に与えた影響についてメディア自身が分析する必要もあるのではないでしょうか?
投稿: しゅりんちゅ | 2022年7月21日 (木) 08時26分
真贋を問えないものに感想や想像を巡らせることをなるべく控えた方がいいです。
注目される事が望みだった者には罵倒すら褒美です。
個々の警備体制の見直し、別個に考えるカルト問題、この辺は進むでしょう。
今回更にケチがつきつつある振れ幅の大きい左右とそのインフルエンサーについて、これは自業自得として放置されますから覚悟した方がいいです。特に右。安倍さんの顔にこれ以上泥を塗らないで。
投稿: ふゆみ | 2022年7月21日 (木) 09時52分
ふゆみさん。今回のご意見は承服しかねます。
今回の場合、これを出してきた人物が山上と接点があったのは事実なので、ひとつの手がかりとして取り上げました。
仰せの「批判すら褒美」とはどういう意味でしょうか。山上を批判するなとでも。あるいは彼の行動を分析するなとでも。
どうしてこれが死せる安倍氏の顔に泥を塗ることになるのか、皆目見当がつきません。
ならば、今の山上礼賛の声すら起きている中、しっかりと彼の考えをみつめることは必要だと考えて、本日の記事にした次第です。
この事件が起きてから荒しが複数入っています。
ことごとくブロックしましたが、このていどでも安倍と聞くと騒ぐのです。
投稿: 管理人 | 2022年7月21日 (木) 10時04分
事件報道のあり方に反対し、扇動に負けない為に
ニュージーランドの銃乱射テロの際、アーダーン首相が議会で演説された言葉は
「男はこのテロ行為を通じていろいろなことを手に入れようとした。そのひとつが、悪名だ。だからこそ、私は今後一切、この男の名前を口にしない。皆さんには、大勢の命を奪った男の名前ではなく、命を失った大勢の人たちの名前を語ってほしい。男はテロリストで、犯罪者で、過激派だ。そうすれば、あの男は無名のままで終わる」でした。
このやり方が絶対的に正しいと人に押し付ける権利はもちろん私にはありません。
でも、こうやってショッキングなものを今迄もこれからも、メディアが調子に乗って出し続ける事自体に私はいつも腹立たしく感じます。
普段犯罪と出自を軽々しく結びつけるなというメディアが、加害者の動機や人生自体を抱きしめろとばかりに受け手に刻みつけてくる。
ジャブのように批判や皮肉だと称して川柳で悲しむ心さえ殴りつけてくる。
人間だから反応してしまうのです。
だからこそ、こういう件に関しては真偽の判定を先に送って「たとえ本当だったとしても」「もし本当だったら」が少しでも減ることを切望しています。
思わず気にしてしまったネタは今後も真贋を問えないまま山積みにされていきます。
ガセだったショックは罪悪感と共に「次は本当の早耳をピックアップしなくては」という誘導を迫ります。
一旦イエスかノーか読み手に上記の「」のフレーズと共に刻みつける事で分断を煽り目を曇らせ、1件2件が偽だと分かっても最早どこで自分が不信感を持ったか思い出させなくする大衆扇動の手法を私は憎みます。
モリカケ桜も過剰な不正選挙への盛り上がりも鬱憤晴らしのように引き摺り下ろした菅政権批判と同じ手法で、テロに於いては本当に自分達の日常と直結する由々しき報道なのです。
一億分の10人が触発されたら列島大騒ぎなんですよ。
腐ったメディアが吐き散らす日々の煽りの一つ一つの真贋を今気にする時ではないのです。むしろ吐くこと自体に恥を知れと戦略的に批判するべき。それによってのみ、私達受け手は理不尽な真贋判定の束縛から離れることができませんか?
ニュージーランド首相のスタンスは犯人だけで無くメディアハラスメントに対する戦略的なカウンターでもあると私は考えます。
それによってカルト被害への関心がまた低くなるなどという意見があったとしても、それこそ別個にやるべき事です。
本当は、岸田首相にアーダーン首相のような発言を、あそこまでどぎつい言葉でなくてもいいからしていただきたかった。
オールドメディアに愛想をつかし、極端を嫌い中道を目指す層の1人として、メディアのやっている報道自体がモラハラだ、容疑者の供述をリークする警察は人権侵害だ、警察とメディアは癒着しているのかという問いやメールを官邸などに送ろうと思っています。
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管理人様
このコメントはとても長いものになりました。本日の私のコメントが出過ぎだ割には余りにも短く迷惑をおかけするかもしれないと思い、お送りします。
極端な層は覚悟したほうがいい、というのは無論当ブログを指してはおりません。
ニュースを見てしまった者としての管理人さんが後々謝罪をされる必要もないと考えます。
--------以上の部分を別の日に投稿として挙げていただくか、手間であればこのままコメントとして入れていただけたらと存じます。
報道モラルに関してあまりに思う所が大きすぎて、結果として記事に粘着したようになっていることをお詫び申し上げます。
猛暑が戻りつつある日々、お身体お大事になさってください。
投稿: るゆみ | 2022年7月21日 (木) 16時57分
山上容疑者が統一教会に恨みを抱くのは分かります。
けれど、そのために母親や教団関係者を標的にするのではなく、安倍氏を殺害するというのは動機として社会通念上成立しにくい理屈です。しかも、山上側は10年かけて5000万円は取り戻しているのですね。
仮に統一教会により深いダメージを与える事を考えて、あえて安倍氏を標的にしたというのであれば、その深謀遠慮はほとんど情状の余地はなくなり無期もあり得ます。
現在、精神鑑定を経て起訴される見通しですが、検察は動機の部分をどのように起訴状にするのか。裁判員裁判になる由で当然の疑問に捜査・検察側がしっかりと答えられないと、動機は量刑に関係する大事な部分なのでちゃんと解明して欲しいところです。
なお、山上をしてテロリストやテロリズムと呼ぶ事は適切ではない、と指摘する人がいますが、それは違うと思われます。
不適切とするのは「政治的動機の犯行ではない」という要件的理由からですが、欧米の報道で見られるように外形的事実からの呼び名を使用しても全くかまわない。
実効すれば、山上でも重大な政治的影響が出て来る事が必然的に理解が可能だったからです。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年7月21日 (木) 17時12分
西欧、特にアメリカは「自分たちは正義であり、かつ正義は勝つ」と思い、シナ・朝鮮・ロシアは「勝ったものが正義であり、勝つためには、また勝ちさえすれば何をやってもよい」と思う傾向があります。日本は「負けた者にも義があり、勝ったからと言って何をやってもいいというわけではない」と思う、かなり変わった文化圏です。但し、日本は西欧と同じく、最終的には法の支配に服しますし、そこが、シナ・朝鮮・ロシアとの違いです。古くは赤穂浪士、近くは5・15や2・26の青年将校の如く、あるいは過激派前夜の学生運動も、一部国民のシンパシーの対象となっていたのは事実です。今回も、大メディアや反日勢力は、これを利用しようとしていますが、きっちりと法に則って真相解明と処罰を行うべきです。同時に、文明世界の崩壊を阻止しえた稀有の政治家の喪失も正当に評価すべきです。蛇足ながら、平和な国日本と言われはしますが、過去に大規模な爆弾テロ、海外での銃乱射テロ、生物化学兵器を用いたテロなど、成田闘争なども含め、海外からは数奇の目で見られていることは、自覚すべきです。そしてそれは、共産主義、宗教を騙る共産主義的勢力によりなされたことは、忘れるべきではありません。
投稿: ぼびー | 2022年7月21日 (木) 17時57分
その手紙が無くても。
自力で銃を作成して、威力や確実性を実験して、安倍さんのスケジュールを追って、一度は現場の警備を見て実行が無理そうだと判断して出直し、改めて安倍さんのスケジュールを確認して向かい、安倍さんの背後から撃った。
本人の愚かな選択。
手紙が本物だと仮定しても。
「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕が私にはありません」と自分で自分を分析してみせる文章を書き、人へ宛てて手紙にする思考力がありながら、犯罪を思い留まることなく実行した。
やはり本人の愚かな選択。
「そうさせた〇〇が悪い」で犯人を助けたり守ったりするのならば、それは犯罪の衝動を持つ全ての者の背中を押すことになる。
「可哀想な人を助けた」つもりの人や社や組織団体へも、仇になって戻ってき得る。
犯罪行為の連鎖や応酬が望みなのか。
裁く権利や義務の無い者ばかりが犯人の動機やら事情やらで盛り上がるのは愚かな選択。
投稿: 宜野湾より | 2022年7月21日 (木) 19時05分