不幸なことは特権ではない
昨日もコメントで統一教会と安倍氏が関わっていことをお前はどう思うのか、安倍氏のメッセージを見て殺害する気になったのだぞ、というコメントをもらいました。
どうも思いません、それで殺人は合理化できませんよ、と答えました。
私はこういうベッタリと犯人に「寄り添う」見方はそうとうに嫌いです。ゾっとします。
かつて私も、自分が不幸な星の下に生まれてきてしまったと思いこんでいた時期があるだけに、いっそうそう思います。
いかにも弱者に寄り添うような顔をしている者の仮面の下から、なんとかして安倍氏暗殺を別の方向に逸らしたい、という政治的思惑が透けて見えます。
朝日など、もう可哀相な山上サン、安倍を殺さざるをえなかったのですね、被害者は安倍じゃない、本当の被害者は悲劇の「てっちゃん」なのですね、と大号泣です。(勝手に泣け、バーロー)
「安倍晋三元首相が銃で撃たれて殺害された事件で、殺人容疑で送検された無職の山上徹也容疑者(41)の一家をよく知る男性が12日、取材に対し「本当に信じられない。生い立ちを知る立場からすると、心が張り裂けそうだ」と話した。
男性によると、山上容疑者には兄と妹がいた。愛称は「てっちゃん」。感情を表に出さず、口数も少ないが、高校で応援団として頑張る姿を見て「地味だけど、頑張り抜く子だ」と思っていた」
(7月12日)
山上容疑者の生い立ち知る男性が語った「てっちゃん」 最後に見た涙:朝日新聞デジタル (asahi.com)
【文春】山上徹也の壮絶人生がかわいそう!母親の統一教会傾倒に同情の声!|トレンド24 (hblmovie.jp)
もう泣き節全開。感情論の安売り。
その男性は「地味だけどやり抜く子」だと言っていますが、そうですか、地味でしっかりと密造銃を数丁作り、爆弾まで作って、大悪魔を仕留めたんだね、よかったよかったやり抜いたね。
キミは昔からそういういい子だったのに貧しさ故に自衛隊なんて所に就職し、その後も兄さんが自殺したりして大変だったね、あれもこれも全部アベがいけないからなんだ、殺して当然、殺されてあたりまえ、というわけです。
こういう朝日の書き方のロジックは、主張さえ正しければ誰を殺害しても許されるという「殺人有理」(殺人には理由がある)という考え方です。
こういうロジックを解放したのが、中国の文化大革命や、今の北朝鮮でした。
「思想は血より濃い」という言い方をして、子供に親の頭を公開の場で撃ち抜かせたのです。
あるいは弟に兄を密告させ、親は子を売り、妻は夫を、夫は妻を密告しました。
いったん密告されれば、その先は拷問と公開処刑が待っています。
やがてそれは近親者ばかりではなく、自分と思想が違う者すべてに及び、紅衛兵は別の派閥の紅衛兵を皆殺しにしました。
まさに地獄です。
この地獄を知っているひとりは、父親が文革で迫害されているのを十代で経験した習近平です。
習近平は長じて、「思想は血より濃い」と信じて、他の派閥の共産党員を粛清し、ウィグル人を殺し続けています。
なぜなら、「思想は血より濃い」からです。
山上がどのように苦しい人生を歩んだのか、私には興味がありません。
そんなことを言い始めたら、家の数だけ悲劇はあるのです。
「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」という一行は、トルストイの『アンナ・カレーニナ』のものですが、不幸はいくつもの顔をしています。
だから、私の家にも他人に言えない苦しみがあり、山上の家にもあった、ただそれだけのことです。
夜、高台から街を見下ろせば無数の家の灯火が見えますが、その数だけ不幸も幸福もあるのです。
だからと言って、その不幸が殺人を合理化しますか?
いかなる理由でも、自らの不幸を他人を呪うことで、ましてや殺害することで解決できませんね。
これは理屈ではなく、常識の範疇です。
山上容疑者「しんどい」5月勤務先退職 自宅に手製の銃数丁と新たな危険物/芸能/デイリースポーツ online (daily.co.jp)
山上は41歳にもなりながら、教団にはまった母親を哀れみ、一家を地獄に落とした者たちを恨み、果てはそこに一回ビデオで登場しただけの安倍氏までに憎悪を拡大してつけ狙っていました。
先ほどの朝日に登場した「てっちゃん」に甘い人物は、その時相談されていたらなんと答えたのでしょうか。
そうだな、お前は不幸だったからアベを殺せ、とでも言ったのでしょうか。
私なら張り倒してでもお前は勘違いしている、不幸なことはお前の特権じゃない、馬鹿なことはするな、と言うでしょう。
では、百歩譲って、こういう自分が不幸なら人を殺してもかまわないという論理が正しいとしたら、どうなるでしょうか。
考えただけでうんざりします。
たとえば、自分はパチンコにハマって一家離散したので、パチンコ業界の広告塔をしていた土井たか子を殺して当然だ。
あるいは、自分は関西生コンによって会社を潰されたので、辻本きよみを殺害して当然だ。
わが家は北朝鮮に貢いで一家離散したので、北を美化し続けた朝日の社員を殺して当然だ。
全部ダメです。あたりまえじゃないですか。
いまの妙な山上同情論に見せかけた安倍殺害合理化論は、まさにこのロジックを使っています。
安倍氏が統一教会にビデオメッセージを送ったたので殺したことが情状の余地があるのなら、もうなんでもできてしまうということではありませんか。
ただし念のため言っておきますが、これで統一教会が正しいというわけではありません。
「統一教会」という名称とどおり、これは韓国と北の「統一」を祈る韓国産の新興宗派です。
慰安婦は日本人の原罪などと言って、日本人信徒から多額のカネを巻き上げていました。
山上の母など1億むしられたそうで、それだけでカルトと呼んでかまわないでしょう。
一方、巧みなのは、冷戦期、北は悪魔だと叫んで勝共連合という組織を作り、自民党に浸透しました。
特にやられたのが、自民党内保守派です。
岸氏がターゲットにされたのは事実です。
しかしこれも、コインの裏面のようなもので、野党も似たようなものでした。
社民党や立憲のルーツの旧社会党が、土井委員長と朝鮮総連のように、北とのズブズブの関係だったのは知られた話です。
その尻尾が、いまでも親北の関西生コンと辻本氏との関係のように残っているのです。
私は、自民党はこんな宗教団体との関係はさっさと切るべきだと思いますが、それと安倍氏暗殺とは別問題です。
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https://president.jp/articles/amp/51855?page=1
この記事で心理学者が述べられている犯罪報道の問題が、今回顧みられるどころか祭りの如くエスカレートしている事は大問題です。
朝日新聞の連日の社会面、山上容疑者の伝記でも書いているつもりでしょうか。
警察も毎日小出しにリークするのをやめてほしい。
諸外国で、政治にしろ生活にしろ不満をもとにテロ行為に及んだ個人の背景や手口が直後にあまり報じられないのは、知る権利より、報道の自由より、模倣犯を増やさない方が優先されるからです。
それは被害者の社会的地位や人数に関わらずです。安倍さんだから、恨みの元が統一協会だから、というのは理由になりません。
「もっと不幸だ、もっと憎んでいる、じゃあ私なら誰をやれる?」という心に火をつけて回っている訳です。
吐き気を抑えながら家にある旦那の朝日社会面に目を通しましたが、
安倍氏銃撃手口→不幸なファクト(原因は宗教と母親)→(主語のない)恨んでいたのだろう
で日々重ねられており、典型的な模倣犯煽り記事です。
メディアは次誰が襲われて欲しいんでしょうかね。
ビデオレターや祖父の関わりを以て安倍氏自業自得とかいう方々。
完全無垢なる存在でなければ殺される理由を持ち、それを償うように何かしなくてはいけなかったという論法こそが、エバ国日本からアダム国に金を貢がせることが善行だと説く教義と、私には同じに見えます。
投稿: ふゆみ | 2022年7月16日 (土) 09時15分
いつも毎朝拝見しております。
今回のエントリは特に心底共感しましたので思わずコメントさせていただきます。
殺人有理など何の正当性もないとのご指摘は本当に仰るとおりで、まさに悪魔の詭弁というべきものだと思います。
そこまで朝日が山下某を湿気たっぷりに情緒まみれで殺人の罪を理解するのなら、戦争という大殺戮を犯したロシアプーチン大統領の計り知れない"心の底の懊悩や苦しみや悲しみ"などを徹底的に忖度して然るべきです。
悪事に手を染めざるを得ない人の弱さや苦しみは極々プライベートの領域にあるべきで、社会の決まりごととは別枠の場所、例えば家庭や宗教の告解室でのみ語られなくてはならない。そこでなら親や司祭や神の愛に縋ったり、犯した罪を理解されたりもあって良いでしょう。
それを法や理性やコモンセンスで成り立つ社会の中で野放図に許したら秩序など維持できるはずがありません。
理性を情緒で犯そうとする朝日の"寄り添い"には、私も強烈な嫌悪を覚えます。
いかにも理解ある情緒で誑かして自らの利益に利用するやり方は、悪魔が聖書を携えて人を誘惑するようなものだと思います。
投稿: kosuke | 2022年7月16日 (土) 09時43分
私はただのヒトなので、腹では「おまえが死ねばよかったのに」と思い、割と本気でその顔を思い浮かべる人たちがいる。
しかしそれを社会に向けて発言しないし、実現していいことではない、それが許されるなら自分にも返ってくるとわかっている。
たぶん多くの人々が似たり寄ったり、そこは区別できると思う。
でも区別できない人はいる。
養老孟司氏は、自著のタイトル「バカの壁」が、「人は知りたくないことに耳を貸さず情報を遮断すること」であると言った。
どういうことを知りたいと、或いは知りたくないと自分は思っているのか、それをいつも意識できるというのは簡単なことではないと考える。
「壁」を意識できる人とできない人があり、意識している人の中にも、「壁」を自分の成長の糧にする人と、他人を「壁」の中に置いておきたがる人がいる。
何にも考えることのない人々だけでなく、まだ自分が知らないことがあるかもしれないと思う人へも向けて、「あなたの知らないこんなことがあるんですよ」「実はこうなんですよ」と情報を与えて、その中に閉じ込めたがる人たちがいる。
他人を「壁」の内側の住人にすれば、お気持ちをくすぐってやるだけで操るのは簡単。
そこに、宗教や陰謀論やセールストークやマスメディアやテレビ番組で大差はない。
油断大敵。
手取り足取り教えてくれて、考えなくて済むようにしてくれる者を信じ過ぎない。
仮説は実証して初めて真実になる(湯川学パクった
時には自分を疑い、決断した後も決断を疑う。
安心安全やゼロリスクを求めるくせに、何かをすぐに信じるのはヘンだと疑う。
何も信じないという人ですら、「何も信じない自分」は信じるのだから、肝心の「自分」というもののリスクを減らす。
あーーー厄介、全然楽じゃない。
でも天下泰平は無いのだから、仕方ないか。
投稿: 宜野湾より | 2022年7月16日 (土) 09時56分
今回の事件を考えるに、アホンダラ1号さんも仰るように、リスクマネジメントで言うところの一体幾つのスイスチーズの孔を貫通したのか、という慨嘆を禁じ得ません。 警備についてはもう言うに及ばずですが、この犯人についても、一人の人間の中に二つの要素の、あり有べからざる理不尽にして不幸な混淆が、まあここでどうして生じているのか。 その彼の個人的な恨み辛みや幸不幸はもはや措くとして、銃の作成にあたっての殆ど誠実とも言える水準の精励勤勉と、統一教会と安倍さんを安易に結びつけると言う殆ど痴呆的とも言えるリテラシーの欠如が、恐らく本人にとっては矛盾無く存在しているのがもう恐怖というべきです。 その無駄使いに猪突邁進した優秀さを、どうしてもっと根本的な省察に回せないのか、まあこの世に在りがちなことなのかもしれませんが。
銃撃そのものについては、奈良県立医科大の当日の会見での説明と司法解剖の結果とは若干の齟齬がありますが、後者によれば左上腕から入った銃弾が左右の鎖骨下動脈を損傷し、そこからの出血が直接死因だとのこと。 また前者によればそれ以外にも心室壁の損傷があったようで、これは首からの銃弾が胸郭入口部を経て縦隔に至ったもののようです。 で、そもそも銃弾が「左右」の鎖骨下動脈を同時に損傷するというのがどれ程確率の低い状況であることか。 これは、安倍さんが一発目の銃声で振り向く途中の丁度そのタイミングで二発目が撃たれたことによる針の穴をつくような偶然の産物です。 上記の二つの発表から推定するに、恐らく銃撃後直ぐに血気胸と心タンポナーデとなり、出血性ショックと肺の虚脱も生じて心肺停止、さらに外傷性凝固障害( TIC ) が継起するという凡そ絶望的な状況になったものと考えられます(当方は外科系ではありませんので、この推定の妥当性を担保はできませんけれども。)。 ここで、もし安倍さんが振り向かなかったなら、最悪の事態は免れ得た可能性があったことでしょう。 いや本当に幾つの悪条件が重なったのかと思わざるを得ません。
投稿: Thoth | 2022年7月16日 (土) 14時56分
40すぎたオッサンの不幸な生い立ちがどうだろうと、そんなもの屁の突っ張りにもなりません。長く生きてりゃ、親族も諸先輩も友人もどんどん亡くなるし、だいいち世の中は理不尽と不条理ばかりです。
山上のオッサンの不幸は今後、裁判上のわずかな情状酌量にはなるとしても「動機」ではないのです。
このケースでは「協会と安倍氏につながりがあると思い込んだ」、という点がもっとも重要。
「協会への恨み」をもってして、それが「元首相殺害を決意させた」までの間の大きな距離が解明すべき問題の核心です。
心理学者は「一種の拡大自殺」だとか、「怒りの置き替え」などという便利な言葉を用いますが、根本は「不幸な私なら、何をしても許される」、あるいは「例外を要求する権利がある」とういう、特権意識が山上容疑者の中にあったのは間違いないでしょう。
とすれば、マスコミにはびこるかわいそうな「山上容疑者あげ」は同様の犯罪抑止どころか、助長にもなりかねない危険な論調という事になります。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年7月16日 (土) 19時23分
2022.7.8に起こった安倍元総理ケースについて
ブログ主様 from ひだか
先日は大変ご迷惑をおかけいたしました。
以下の記載については、なにかとお疲れのところとお察ししますので無視をしていただいても構いませんし、ましてや貴ブログにての公開は望んでいません。
然しながらどうにも貴殿やコメントの皆さんが書いているように、安倍氏殺害に対する今の一般的な解釈が腑に落ちないために、吐露したい私の気持ちをお許しをいただきたいと考えます。
当日と記憶していますが、事件後即座に「①統一教会云々」と「②元海上自衛隊に所属」と共に「③政治的な信条に関係はない」との報道が即時になされました。
以降、報道はこの3つの内①をベースに連日されていますが、警備への批判に対して県警の不手際の要因として「④5発の銃弾が失くなった云々」と今になって出てきました。
これら今の報道の見出しを見るにつけ、事態の本質から乖離させようとしているように見えます。
起こったことを報道から離れて見ると、二重三重どころではなく、偶然に偶然が重なって安倍氏に致命傷を負わせたという、あり得ない事態で、動機、準備の流れを含めてたまたま地元に来た安倍氏殺害となる一連の線が見えてきません。不自然と思います。
長文となってはいけないので端的に申し上げますと結局、何が目的か、安倍氏を殺害することで利する者は誰かを考える必要があると思います。当事者としての犯人の直後の冷静な様子、そしてその発言から、R・ケネディ殺害のサーハン・サーハンを想起します。本懐を遂げたという昂りも感じません。
国内の主要なマスコミ(広告主が大事)、一部の警察関係(関西、買収?)をもある程度コントロールしているとの前提として、今の諸情勢を総体的に考えると中国(もしくは朝鮮系)・ロシアのスリーパーエージェント的な存在が犯人像として一番しっくりくると考えます。
長々とすみません。駄文に最後までお付き合いいただき感謝します。
投稿: ひだか | 2022年7月16日 (土) 23時18分
家庭環境がどうとか不幸のどん底だったとか、関係ない、人を殺すこと、それ自体が大罪です。山上が被害者だったとか笑えるわ、加害者、なんなら一般人を巻き込む可能性が十分にあったテロリストの可能性もある。
メッセージ見てやったんだぞって?しるか、心が弱いだけ。加害者に共感するとか危険人物ですか。
投稿: 銀 | 2022年7月17日 (日) 12時25分
ひだかさんへ
下記のリンクでも高橋氏が述べてますが
https://www.youtube.com/watch?v=NTiuxqmJuz0
左翼体勢でそのような情報操作で大衆意識を煽り乱心をおこさせる手法はわりと定番らしいですが、それはあくまでそれが起きやすい空気を作るというだけで暗殺そのものが目標でその隠ぺいまで用意周到に仕組まれていたとまで考えると相手の思うツボになる危険性もあります。
この事件をもって誰が得をしたという見方で警戒するまではまだありですが、それが確たる証拠も無い段階から行き過ぎた憎悪とならないようには気をつけたいとことですね。
そうなるとアベガーの方々とやってることが同じになってしまいますし、違う角度からの情報操作に操られる危険性も生まれてきます。
とてもやるせない日本にとって大き過ぎる損失の事件ですが俯瞰の気持ちは忘れずに冷静に対峙していきましょう。
投稿: しゅりんちゅ | 2022年7月17日 (日) 12時27分