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2022年7月13日 (水)

安倍氏が残した最大の試練、改憲

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安倍氏にいかに頼りきっていたのか、自民党は今後思い知ることになるはずです。
安倍氏は自分の頭で思考し、官僚を使うことができるタイプの政治家でした。
G7などの国際会議で、官僚のサポートなしで自由に発言し、とりまとめていた安倍氏の姿を知るだけに、今後岸田氏がどこまで安倍氏の背中を追えるのか注意深く見ていかねばなりません。

さて岸田氏には、いくつもの関門が待ち受けています。
最大の試金石は、安倍氏がやり残した最大の課題であった改憲です。
岸田氏は改憲をできるだけ早く発議すると言っています。
また検討か、などと皮肉は申しません。その意気たるや壮です。

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憲法改正「できる限り早く発議」 参院選大勝 岸田首相が会見 | nippon.com

「岸田文雄首相(自民党総裁)は11日、参院選の勝利を受けて党本部で記者会見を開いた。憲法改正に前向きな「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2を参院で維持した結果をめぐり「できる限り早く発議にいたる取り組みを進める」と表明した。改憲を政権運営の中心に据える考えだ。10日投開票の参院選は改憲に前向きな自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党などが95議席を得た。非改選を含め179議席で参院の3分の2の166を上回った。
首相は年内にも改憲論議を始める意向だ。秋に召集する臨時国会について「与野党全体で一層活発な議論を強く期待する」と語った。改憲に積極的だった安倍晋三元首相の死去に関連して「思いを受け継ぐ」と唱えた」
(日経7月10日)
岸田首相、改憲発議「できる限り早く」 物価高対策最優先: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ただしここで問われるのは、強引なまでのリーダーシップです。
自民党の議員の大部分にとって、改憲などしたくはないのが正直な本音のはずです。
なぜなら、自民党議員の大部分は公明党との選挙協力で勝ち上がったものばかりで、彼らを刺激することは極力避けたいからです。
ですから、アンケートで改憲にイエスかノーかと問われれば、やるべしと建前を言いますが、実際は「いつかくる永遠の明日」にすぎません。
いまやらなくてもいいじゃん、自衛隊はちゃんと回っているんだから、ということで先送りになります。

したがって、改憲とは公明党との関係の持ち方のことなのです。
今までのように妥協に妥協の二階を付け足したような、解釈憲法ではもうどうにもなりません。
改造憲法では修正解釈が行き着いてしまって、もういまの世界情勢に対応できない、ここが昭和改憲論と令和改憲論との違いです。

昭和改憲論はまだ余裕があったのです。

安倍氏が出した9条1項、2項は維持して新たに3項に自衛隊を加える改憲案は、大変に興味深いものでした。
大変にリアルな、これなら可能だと膝を打つものだったからです。

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安倍氏は、9条2項の削除にこだわるあまり、ニッチもサッチもいかなくなった改憲論議を、「自衛隊を国軍とする」という一行を挿入することで、手品のように変えてみせました。

日本は日本国家の大元である(国体)天皇の地位を守るために、すべてを捨ててしまいました。
戦争の放棄、交戦権否認、戦力不所持などは、米国の軍隊がなければありえないものでした。
つまり、日本は人類の高貴な理想たる「戦争の放棄」というロマン主義に酔うためには、日本国中に在日米軍を受け入れねばならなかったわけです。
なんのこたぁない、表向きは戦争放棄だなんだといいながら、世界最大最強の軍隊を受け入れ、その世界戦略の一部になることで戦力の不所持ができたのです。

これってそうとうに嘘っぽくありませんか。日本人の困った時の得意技、本音と建前の二重底です。
表面では「戦争を知らない日本人」を演じながら、実は米国に多くの基地を貸し出して、それを国の守りの根幹の中にビルトインしているんですから、したたかというかズルイというか。

やや乱暴な言い方をすれば、この二重底構造をスッキリ本音と建前を一つにして作り直せというのが改憲派で、スッキリ自衛隊はなくせ、米軍は出て行けというのが護憲派です。
もっぱらこの9条を舞台にして、半世紀以上喧々ガクガクの戦いが繰り広げられてきました。
別名神学論争。憲法の最大を仕切るのが、憲法学者という名の司祭たちです。

私自身は前者に近いものの、実際には無理だとかんがえていました。

しかし、ちょっと待てよ、憲法9条だけを見ないで、憲法全体をよく観察するとスゴイ構造になっているぞということに気がついたのが、篠田英朗外語大教授でした。

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読売・吉野作造賞:篠田英朗氏「集団的自衛権の思想史」に | 毎日新聞 (mainichi.jp)

篠田氏は、平和構築学と言ってPKOなどの国際平和活動を研究されていた方ですが、彼の新釈憲法学は実に面白いものでした。
まず篠田氏は戦争放棄という概念が、戦後憲法の専売特許くらいに吹聴してきた護憲派に対して、こう冷やかに切って捨てます。

「戦争放棄は日本国憲法が初めて宣言したものではなく、日本はすでに1928年不戦条約に加入したときから、自衛権行使以外の戦争の放棄を宣言していた。日本が新奇な戦争放棄の理念を導入したわけではない」
(篠田英朗 『ほんとうの憲法』)

逆に日本は戦前、「国境の実力による変更」をしてしまったために、自らこの条約を破ってしまったわけです。
先の大戦は自衛権では説明しきれないもので、植民地解放理念を接ぎ木しました。
保守派は後者を崇高な理念として、それで大東亜戦争すべてが説明できるとしますが、私はそうは思いません。
今の目で見れば、当時の日本がやったことは「国境線の実力による変更」と「国際法への挑戦」だからです。

したがって篠田氏は冷厳に戦後憲法は、国際法遵守への復帰だとします。

「日本が国際法を破って侵略行為を繰り返したために、日本に国際法を遵守させるために導入したのが日本国憲法だ」(篠田同上)

ここで大東亜戦争が侵略か否かに拘泥しないで下さい。
大事なことは、いかなる理由によろうとも、当時の日本が戦前の国際社会と国際法の枠組みに挑戦したということであって、植民地が解放されたのはその結果でしかありません。

さて国際社会は、戦前のような国際秩序の崩壊がおきないようなスタビライザーを仕込みました。
それが国連憲章にある集団的自衛権です。

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国際連合憲章 | 国連広報センター

「第2次世界大戦後、国際法体系は、国産検証の成立によって、戦争違法化の流れをさらに強化した。その動きと表裏一体の関係にあるのが、集団安全保障である。集団安全保障の補てん策として設定されたのが、個別的・集団的自衛権である」(篠田同上)

日本国憲法はこの国連憲章に対応しています。
意外に思われるかもしれませんが、9条1項の戦争放棄は国連憲章2条4項の武力行使の一般的禁止と照応しています。

●国連憲章2条4項
すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/unch.htm

国連憲は冒頭の第1条1項に、領土保全と政治的独立」に対する「武力による威嚇」を禁じると言っているわけで、日本国憲法が「世界で唯一の平和憲法」だなんて、ただのナルシズムです。

憲法前文が、この国連憲章第2条4項と同じ「平和思想」で書かれていることに注目下さい。

●憲法前文(抜粋)
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。

ここで憲法前文が言っているのは、護憲派好みの寝ぼけた平和主義ではなく、「国境線の実力による変更」、すなわち侵略行為に対して「平和を維持」し、独裁政権による民族絶滅政策などの「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去することを努め」ることで、「国際社会の名誉ある地位を占めたい」と宣言しているのです。

憲法前文が、憲法全体の理念を語るものだとするなら、これを指針にして9条も読み解かれねばならないのです。
ですから、日本が放棄したのはあくまでも侵略としての軍事力であって、自衛権としての防衛力はむろんのこと、さらには「専制と隷従、圧迫と偏狭」に対して戦う国際社会と協調して共に戦う軍事力はまったく否定されるどころか、むしろ「名誉ある地位を占めたいと思う」とまで言い切っているのです。

これは国連憲章の第1条1項の「目的」に対応します。

●国連憲章第1条1項
国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。

3月28日、虐殺を続けるミャンマー国軍に対して山崎統合幕僚長が各国の軍トッ プと共同声明をだしています。
その内容の一部にはこうあります。

およそプロフェッショナルな軍隊は、行動の国際基準に従うべきであり、自らの国民を害するのではなく保護する責任を有する。

これは画期的な自衛隊自らの宣言です。
いままで自衛隊は国際法上の「プロフェショナルな軍隊」として、各国軍隊のトップと連名で共同声明を出すことによって「専制と隷従、圧迫と偏狭」に対して戦う国際社会と協調して共に戦う「名誉ある地位を占めたい」という立場を鮮明にしました。

このように見てくると、私は実に日本国憲法は「よくできている」と思うわけです。
極論すれば、このままでも改憲せずに充分にやっていけるとさえ思っているくらいですが(異論はあるでしょうが)、いかんせん一般的にはわかりにくい上に、護憲派の神話的解釈がはびこっているために、若干の手直しは必要かなとは思います。
ですから、改憲といってもそのまま9条を残してもなんらかまいませんし、それに自衛隊を書き加え、さらに緊急事態条項を添えればよい、という安倍加憲案は考え抜かれたものだと思います。

このような最低限の改正で可能なところまで安倍氏は煮詰めて、現実的政治日程に乗せるところまで醸造してくれていたのです。
政治日程としては、与党の改憲案を定めることです。
参院選時の自民党改憲案はこんなものでした。

「自民党は現在、改正の条文イメージとして、①自衛隊の明記、②緊急事態対応、③合区解消・地方公共団体、④教育充実の4項目を提示しています。国民の皆様の幅広いご理解を得るため、全国各地で対話集会などを積極的に開催し、憲法改正の必要性を丁寧に説明していきます」

①②は当然として、③④まで立ち入る必要があるのか疑問です。
自衛隊と緊急自体法の2点に絞ったほうがよい。

とまれ公明を説き伏せ、立憲が審査会をサボタージュする言い訳にしていた「アベが進める改憲ハンターイ」なんて愚にもつかない言いぐさを一蹴し、衆参憲法審議会で改正原案を可決せねばなりません。
岸田氏が泥をかぶる覚悟で公明を説き伏せ、9条3項加憲すら呑めないなら、とうぶん選挙もないことですから連立解消くらい言うのですな。
今まで泥をかぶってこなかった岸田さんにとってつらい日々でしょうが、がんばるしかありません。
いっそ公明とは永遠に連立を完全解消してほしいくらいですが、今は最後の切り札ていどにしておいてもかまいません。
どうせ立憲、共産は変わらないでしょうから、維新・国民を味方につけて徹底してを彼らを孤立化させ、一気呵成にやりぬかねばなりません。

これができないようなら改憲もクソもない。

次に、衆参本会議で3分の2以上で可決し発議します。
そしてこの国会発議を受けて、60日ていどので国民投票運動期間をもうけます。
そして国民投票の過半数を得て、天皇陛下によるが公布、という段取りになるでしょう。
ここまでダラダラ時間をかけてはいけません。

たぶん朝日、毎日、東京などから、岸田氏が今までの生涯浴びたことのないはずの最大限の罵倒と悪魔化の集中砲火を浴びることでしょう。
しかし安倍氏が浴びたそれからすれば、なんのことはないはずです。

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コメント

そこまでの胆力が岸田総理にあるか、期待したいけど……ちょっとなあ、という印象です。
財務省とズブズブの緊縮財政派として、増税だけやりました、というオチにならないことを祈ります。

安倍さんが亡くなってからの岸田総理の発言には以前とは違う何か覚悟めいたものをを感じます。甘いかも知れませんが、本来の意味である「君子豹変す」に期待したいですね。

近畿大学の卒業式に安倍さんがサプライズで登壇され、卒業生を前にスピーチをされた事実を昨日知りました。幸いYoutubeにアップされており拝見しましたが、安倍晋三という人の凄さを再認識させられました。全体で15分ほどの長さですが、No原稿で切々と語られる一言一言、時にユーモアを交えながら諦めないことの大切さを訴えておられました。後半はもう涙腺大崩壊でボロボロになりながら見終えましたが、なにやら国民に対する最後のメッセージにも思えました。
御覧になってないなら是非ご視聴をお薦めします。(近畿大学 卒業式 安倍元総理とでも入れて検索すれば間違いなく見つかると思います)

今まで面倒なことはおんぶに抱っこで頼り切っていた先輩が、ある日突然異動や転職でいなくなって(流石に暗殺はそうそう無いでしょうが)、明日からは全部オレ1人でやらなきゃならない…

そんな事態は、どんなお仕事にだってある訳で。岸田さんも、目が醒めてシャカリキに動き始める可能性は、十分にあると思います。周りの方も、うまくサポートしてあげて、岸田さんが遠慮なく強引に動けるような、環境を整えてあげてほしいと思います。

今回の記事は素晴らしい内容だと思います。
中学の公民の授業でこれを読んだ上で自分はどう感じたのかをまとめるのを夏休みの宿題にして欲しいくらいです。

憲法改正に関しては社会的な気運の高まりもあるがこそ、これですら何もしないのであれば未来永劫日本では憲法改正は出来ないとも思っています。
自分のケツを叩く存在がいなくなった時どう立ち振る舞うのか
岸田氏個人および自民党全体が試される時だと感じます。

ブログ主様
昨夜は申し訳ありませんでした。決して荒らすという気持ちではなくて、人の死への言葉として許せなくて、書いてしまいました。
どうぞお体に気をつけください。今後もこのブログを応援させてください。

> また検討か、などと皮肉は申しません。その意気たるや壮です。
同意見です。彼の資質を品定めしたり誰それと比べてふさわしいかとか足りないでなく、今の国会と政府が引き受ける役目を果たさせなければ。
私的には、アベガー左派や公明&自民内のことなかれ主義の議員よりも、改憲派において石破氏のような原理原則にこだわり過ぎる論や過剰に情熱をアピールする保守系議員(左派から見ると勇ましい復古主義、中道から見るとただ危なくみえる)が足を引っ張らないか心配です。
その人達とその支持者が目を通すネット発信では今は「警備厳重にしても岸田なんて狙われない」「これで高市さんの芽が」位で済んでいますが、そのうち「これが安倍さんの遺志だ!」と自分が安倍さんに託していた思いをてんでに遺志に乗っけた発信を始めることでしょう。
彼等の願いは自民を割って真の保守政党を作り日本を美しい国にしてゆくことかもしれませんが、人を繋ぎ、異論をいなし、時には悠々とリベラルな政策を打ち出し、見事な改憲案をまとめられた安倍晋三氏がそんな事を望んでおられたわけは、決してないと私は考えています。

ふゆみさん名文ですね、感動しました。
本当におっしゃる通りだと思いす。

制定の過程・意図、特に芦田修正の解釈等、篠田氏の説が決定版といえるくらい正確な内容を述べていると思います。芦田修正に関しては、GHQ側が、日本の再軍備の可能性を理解し、それゆえにシビリアン条項を提示したのですが、肝心の日本側がこれを理解できず、おかしなシビリアンコントロールが定着してしまいました。安倍氏の第三項追加:自衛隊明記は政治的には最善手ですが、第二項の誤った通説・定説が残ることは変わりなく、「芦部信喜すら知らないアベの案」として抵抗することでしょう。少なくとも自衛隊を軍として明記しなければならないのは、以下の5点です。①民主主義に反する:民主主義の根本原理は、「自分たちの国は、自分たちで守る」ということに反する。 ②立憲主義に反する:主権の物理的行使手段である軍を、憲法でなく自衛隊法という一般法規で規定することは、憲法を最高法規とする立憲主義に反する。 ③国際ルールに反する:主権国家は、他国からの主権侵害を拒絶する・できることが存立要件。難しければ集団的自衛権を採るべし。の基本ルールに反する。 ④とんでもない人権蹂躙を半永久的に固定する:軍として明記されないゆえに、自衛官は警察官職務執行法に服さざるを得ず、それは領空侵犯に対するスクランブル発進でも「打ってくるまで打てない」こととなる。現代空戦でこれは死を意味し、それゆえにスクランブルは複数機でなされている⇒一機目がやられて初めて応戦。これは「死ね」といわれて任務に就くことであり、これ以上の人権蹂躙はない。 ⑤先の戦争の反省になっていない:先の戦争は「政治が軍事を統制できなかった」ことが、最大の反省点。憲法で軍の処遇を明記しないことは、これに反する。 この5点を広く訴えるべきです。東大法学部卒の憲法学者は、このことを理解していないのです。今年は戦後70年です。1952年4月28日に主権を回復したからなのですが、このことを理解している日本人は殆どいません。主権を規定する憲法を語れる日本人などほとんどいないということです。安倍元首相は、このことを理解しており、主権回復記念式典を実施しました。本当に偉大な政治家だと思います。

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