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2022年8月

2022年8月31日 (水)

旧統一教会狩りという宗教戦争

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今の旧統一教会狩りをみていると、宗教戦争のように見えてきてしまいます。
宗教戦争は優勢な片方の宗派が、劣位の一方を「狩る」場合が多いのですが、今回も同様のようです。
カルトと名指しされた少数宗教と、無宗教を名乗る「宗派」との争いです。
その苛烈さは、旧統一教会の信教の自由を剥奪しろ、とまで叫ぶのですから、もはや「無宗教を自称する宗派」です。
彼らは、旧統一教会に接点を持ったすべてを探し出して叩き潰さないと気がすまないようです。
もはやその「狩り」方のほうこそ、病的カルト臭が漂うほどです。

塩野七生氏は、こうした宗教と宗教の争いについて、かつてこう述べたことがあります。 

「『神は我らと共にある』と信じる者にしてみれば、敵であろうが何であろうが、相手とともにあるのは、悪魔しかいないことになるのだから、大義名分は立派に成立するわけである。
ただこの場合は、相手側とて、自分と共にあるのは神だと信じているわけたから、問題はややっこしくなる。
お互い神の後押しを受けていると信じているもの同士がぶつかるほど、禍を後に引く争いはない」
(塩野七生 『男の肖像』) 

塩野氏に習えば、今のメディアと野党は政教分離こそが神だと考え、「神はわれらと共にある。統一教会は悪魔だ」と信じて叫んでいることになります。
ほんとうの宗教戦争を長期間体験したヨーロッパのキリスト教世界は、ドイツ30年戦争のように同民族内部での宗派(旧教・新教)の激烈な争いをしていて、その大殺戮と国土の荒廃にくたびれ果ててしまいました。
ドイツが宗教戦争の舞台になったのは、ここがマルティン・ルターというプロテスタント(新教)の始祖を生んだ国だったからです。
このおぞましいドイツ30年戦争は、1648年のウェストファリア条約によって、新教の自由を認めることでようやく終了しましたが、その間双方ともに自らの側に立つのは神であり、相手は悪魔だと信じていたことになります。
なんともグロテスクな話です。

そしてさらに一定の宗教が政治に容喙することを禁じたのが 、この条約から141年後の1789年フランス革命でした。
フランス革命の結果、フランス人が手にしたのは何だったのかといえば、近代世俗国家でした。
なぁ~んだ、と言わないで下さい。大変な犠牲の上に勝ち取ったものなんですから。 
フランス革命の犠牲者数は約200万人。革命当時のフランスの人口が約2500万~2600万人といったところですから、実に1割を殺したことになります。
これに比べれば明治維新など無血革命といっていいくらいです。
大量処刑と虐殺が横行し、ヴァンデ、リヨンのように王党派に属したために、市民全員が街ごとすり潰されてしまった地域すらあります。
皮肉にもコンコルド(調和)と名付けられたパリの広場では、毎日多数の無辜の人々がギロチンにかかって処刑され、子供がその首をサッカーで遊んでいたという話さえ残っています。

フランス革命は「自由・平等・友愛」という標語を掲げましたが、この<自由>とは一般的な自由ではなく、明瞭に「宗教からの自由」を指します。
それは革命期においては、信教の自由を圧殺し、カソリックの僧侶というだけで処刑の対象になりました。

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上の絵のキリスト像の上は、「旦那、お休み」と書き換えられて、首を吊られているのは、裁判官、大司教、修道士、修道女などです。
三色旗の上に「自由万才」とあり、聖母昇天教会は炎上中です。
ガス灯によじのぼってニカニカしてバイオリンを弾いているのが、サン・キュロット(平民)です。  
今は観光地として名高いモン・サン・ミッシェル修道院は牢獄となり、ヨーロッパ最大だったクリュニー修道院は他の建造物の石材供給源となってしまいました。
フランス全土の多くの貴重な文化遺産が破壊され、その規模は中国の文革に並ぶといわれています。

下の写真は、「自由・平等・博愛」という革命スローガンに書き換えられたカソリック寺院の正面玄関です。
革命派は、キリスト教に代わって理性を神として崇めることを国民に強要しました。

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1801年に、ナポレオンが革命の終了を宣して教皇との和解(コンコルダート)に至るまで宗教への徹底した迫害が続けられました。 
宗教を公権力の場から排除するために、いかに巨大な犠牲が必要だったのかわかると、憂鬱になりますね。
このフランス革命の暗部があまりに大きかったために、フランス共和国は、今に至るも内乱の詳しい実態を公表せず、臭いものに蓋を決め込んでいます。
このフランス革命の内乱の内情については、藤本ひとみ氏の『聖戦ヴァンデ』をお読み下さい。

この「(宗教からの)自由」こそがフランス共和制の大前提であって、後に来るふたつの「平等・友愛」は、これを理解した者に対してのみ平等と友愛を保障します、という意味です。
「友愛」が好きな頭の軽い首相がいましたが、わかって使っているのでしょうか。 
いまだにフランスに移民を希望する人間は、この<自由>を理解したことを宣誓してのみ帰化が認められます。 
フランスの小学校ではイスラムのスカーフ(ヒジャブ)が禁じられましたが、同様にキリスト教のネックレスのようなロザリオも禁じられています。
これがフランス共和国が掲げる「ライシテ」(laïcité)と呼ばれる政教分離です。
こんな血なまぐさいことをしてまで政教分離したのは、このフランスくらいです。

ちなみにわが国は、フランス革命の実に218年前の1571年における比叡山の焼き討ちにおいて、徹底した政教分離が実行されています。
塩野氏は、この信長の「蛮行」によって、日本人に宗教に対する抗体が生まれたと評しています。

「織田信長が日本人に与えた最大の贈り物は、比叡山の焼き討ちや長島、越前の一向宗徒との対決や石山本願寺攻めに示されたような、狂信の徒の皆殺しである。このときをもって、日本人は宗教に免疫になったのである。いや、とにかく守備範囲の外まで口を出したがるたぐいの宗教には、免疫になったというべきかもしれない。(略)
信長によってもたらされたこの免疫性は、宗教人にとっても、良い結果をもたらしたと思う。日本では、宗教が政治に口をだすことのほうが、不自然になってしまったのだから」
(塩野前掲)

そのフランス共和国が掲げたのが、先日紹介した「カルト10の条件」です。
これはライシテの存在なくして考えられません。
この背景を知ろうとしないで、「カルト10条件」をそのまま日本に移植しようとする者もいるようですが、歴史的背景のまったく違うものを「宗教に対する免疫性」をもったわが国の風土に持ってくるほうが乱暴というものです。

いまやSNSでは「自民党と旧統一のズブズブの関係が明らかになってもまだ自民党支持を続けられる人は、カルト信者とほぼ同じに見える」というコメントもよく見られるようになってきました。
旧統一教会=悪魔=安倍=自民党=自民党支持者と、無制限に悪の概念を拡張しています。
こういった人にかかると、自民党支持者である国民の4割までが皆「悪魔」で、清く正しいのは3%の共産党くらなようです。
当人らはこれこそが正義だと気取っているのでしょうが、それこそ「我らの側に神あり、相手は悪魔だ」という宗教戦争の論理そのものなのです。

長崎県の黒田成彦・平戸市長は、このような旧統一教会「狩り」をこう感じていると述べています。

「長崎新聞から統一教会との関係を尋ねるアンケートが届いた。(関係は)ないと答えるがまるで江戸期のキリシタン弾圧の踏み絵のようだ。隠れキリシタンの末裔である私は遺伝子的にこのような踏み絵行為は気持ち悪い」

おそろしくまっとうな意見で、この黒田平戸市長の意見が危険に見えてしまう今の日本社会のほうが危険なのです。
メディアが煽動し、野党が相乗りして国民に踏み絵を迫っている風景を、気持ちが悪いと感じないほうが異常なのではありませんか。
ちなみにこれらの人々は、オリンピック反対、国葬反対の集団と完全に重なります。

共同通信が国会議員712人に旧統一教会への関与を聞いたところ、106人が関連団体へのイベント出席や選挙協力を受けていたことを認めたそうです。
馬鹿なアンケートをとるものです。「関与」をきちんと概念規定せずに旧統一教会との「接点」を質問すれば大勢の政治家が引っかかるか、隠蔽しようとします。
二階氏がいみじくも言ったように、「支援すると言われたら、その人がなんの宗教かなんて聞かないぜ」というのはまったくそのとおりです。食えないたぬき、たまにはいいことを言います。
政治家と宗教の距離の軽重を問わず「関与」を聞けば、、「インタビューを受けた」、「祝電を送った」、「スピーチをした」などという儀礼的なかかわりすべてが「接点」となりえてしまいます。
そしてメディアはこの「接点」を得意気に「ズブズブの癒着さらに広がる」という報じ方をするのですから、手に負えません。
まさに魔女狩りです。

岸田首相は、先日の内閣改造で前内閣の全閣僚、新閣僚の全メンバーに、教会と関与があったかどうかを点検するように達しましたが、メディアは大甘だと言っているようです。
ならば岸田さん、「統一教会汚染」は野党にまで広がって「ズブズブの関係」だそうですから、いっそ衆議院を解散したらいかがでしょうか。

いまや有名な旧統一教会ハンターとなった紀藤正樹弁護士は、こうツイートしています。

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弁護士 紀藤 正樹【弁護士の肖像】 | Attorney’s MAGAZINE Online (legal-agent.jp)

「そろそろ政治家と統一教会との関係の濃淡/線引きの基準を作るべき時期ではないか。個別取材ではなく記者会見で世界日報から取材を受けて記事になった程度は避けようがなく問題ないと思います。超党派で基準作りをするなら協力したい>紀藤正樹弁護士、超党派での基準作成求める」

なにが「そろそろ線引きの基準をつくるべき時だ」ですか。
そんなものを誰がどのようにして作るのでしょうか。
立憲は308万の信徒を持つ立正佼成会と「ズブズブの関係」ですが、信徒わずか56万の旧統一教会とどこがどう違っていて、その影響力をどう判定して、誰がその基準線を引くのでしょうか。
たとえば、山上の母親が出した1億がダメなら、100万ならいいのでしょうか。
山上家は富裕だったから1億出せたのですが、貧者なら100万出したら破産します。
ありとあらゆる宗教が宗教的啓示を重要視しますが、霊感がダメで、啓示ならいいのでしょうか。
すべてが宗教の教理に関わることなので、判定が困難、というか不可能です。
よもや自分だけはできる、なんて考えていませんよね。
そうだとすると、あなたは政治家全員の生殺与奪を握る大魔王になれます。

紀藤氏は、フランスのライシテばりの政教分離主義者だと見えて、首相の伊勢神宮参拝も宗教行為だそうです。

「安倍首相の伊勢神宮への参拝がマスコミによって報道されること、個人としての発信ならまだわかる。しかし国家機関である首相官邸のラインで国民に向けてあえて告知するのは、明らかな政教分離違反ではないか!安倍首相とその側近の憲法感覚の欠如、いや、はなから現行憲法を守る気がないのではないか!」

コワイ人だな。
こういう立場の人が「政治家と旧統一教会との関係の濃淡の線引き」をするイニシャチブを握ろうとしているのですから、この弁護士に神道は宗教ではない、だなんて説明しても無駄。
首相の伊勢神宮参拝はハトカンも首相時しているのですから、紀藤氏の政教分離基準に従えば、唯一清浄なのはオンリー共産党だけとなるでしょう。ま、それが目的なのかな。
どうやら紀藤氏は、僧侶と政治家をギロチン台に送り込んだジャコバン派の審問官になりたいようです。

まったくおそろしい風潮を作ってしまったものです。

 

 

 

 

2022年8月30日 (火)

選挙警備における警察比例の原則を見直すべき時です

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では、どうしてここまで奈良県警や沖縄県警の腰が引けてしまったのでしょうか。
その背景のひとつには、リベラル系法曹団体の活動があります。
東京弁護士会は2019年7月、札幌における安倍氏の選挙演説を妨害した「市民団体」を警察が規制したことに対してこう言っています。

「市民排除行為、プラカード阻止行為及び移動制限行為は、警察官職務執行法第5条の要件を満たさない「制止」であり、さらには「警告」の要件すら満たしていなかったというべきである。
しかも、特に暴れるようなこともなく、聴衆の後方から「増税反対」と政権に不満・不安を伝えるべく叫んだ市民や平穏にプラカードを掲げようとしただけの市民らに対して、8人もの警察官が囲むというのは過剰警備というほかなく、「目的のため必要な最小の限度」(同法第1条第2項)を超えた警察比例の原則に違反する警察活動であるというべきである」
(2019年9月9日 東京弁護士会)
選挙演説の際の市民に対する警察権行使について是正を求める意見書 (toben.or.jp)

東京弁護士会と同様のものを、2022年3月に札幌地裁も出しています。

「判決によると19年7月、札幌市内で応援演説をしていた元首相に「増税反対」「安倍辞めろ」などとやじを飛ばしたところ、複数人の警察官に腕などをつかまれ、強制的にその場から排除された。桃井さんはその後約1時間、警察官に付きまとわれた。
広瀬裁判長は警察官らの行為について、警察官職務執行法の定める「生命や身体に危険を及ぼす恐れのある危険な事態」などに当たらず、違法と判断した。その上で、「原告らの表現行為の内容や態様が街頭演説の場にそぐわないと判断して、表現行為を制限したものと推認せざるを得ない」と述べ、賠償を認めた。
 道警側は「周囲の聴衆ともめ事になる可能性がある危険な事態で、排除は適法だった」と主張していた。 警察比例とは、このような法解釈です」
(時事2022年3月25日)
首相演説やじ排除、道に賠償命令 「表現の自由侵害」―札幌地裁:時事ドットコム (jiji.com)

ここで東京弁護士会がいう警察比例とは、規制する対象のエスカレーションに比例して対応しろ、という意味です。

「警察権の発動に際し、目的達成のためにいくつかの手段が考えられる場合にも、目的達成の障害の程度と比例する限度においてのみ行使することが妥当である」
警察比例の原則 - Wikipedia

しかしこれを左派法曹関係者は、あきらかな選挙の自由妨害をする集団に対しての警察の規制すらやめるべきだと解釈し、それに札幌地裁が「表現の自由」概念を持ち出して同様の判決を出したために、以後全国の県警の腫れ物にさわるような規制が定着してしまいます。
このような風潮に後押しされるようにして山上は、安倍氏に向けて発砲するまで「言論と表現の自由」を保証されて思うぞんぶん動きまわれたようです。

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「即席」警備140秒の死角 安倍元首相はなぜ銃弾に倒れたか [写真特集NaN/0] | 毎日新聞 (mainichi.jp)

警察は安倍氏の背後をがら空きにしていたこともさることながら、一発目をはずした山上に対して単に駆け寄るという不手際をしています。
奈良県警の警備の失敗は4つです。

①候補者後方を道路にする候補者の位置どりの失敗。
②警備陣が全員前向きで後方警備がガラ空き。
③一発目を撃たせてしまい、そこで阻止できず2発目を撃たせてしまった。
④1発目を撃たれた瞬間、安倍氏に覆い被さって保護する警官がひとりもでなかった。

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【続報】「殺そうと思ってやった」山上徹也容疑者(41) 安倍元首相銃撃され心肺停止 | nippon.com

警備陣は、足よりはるかに早く、かつ効果的な阻止手段である銃器の使用を選択すべきでした。
威嚇射撃でよいから、拳銃をなぜ発射しなかったのでしょうか。
ところが警官は逮捕することしか念頭になく、2発目を阻止することを怠りました。

かくして警備陣がおっとり刀で駆けつけているうちに、2発目が安倍氏を打ち倒したのです。
欧米では考えられない要人警護でした。

安倍氏暗殺事件以降、選挙運動の警備の警察比例を真剣に考えるべき時期に入っています。
銃器を使った要人暗殺が現実のものとなり、世情に「自民党政治家は殺しても罪にならない」という恐るべき風潮が日本に生まれてしまったことを真正面から見据えるべきです。
この銃器を持ったテロリスト
という新たな状況に対応した、新たな警察比例の時代がすでに始まっているのです。

 

 

 

2022年8月29日 (月)

沖縄県知事選、佐喜眞候補が弾丸を投げつけられる

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沖縄県知事選において、また許すことのできない政治テロが起きてしまいました。
事件はこのように起きました。

「26日午後6時半ごろ、那覇市の県庁前の広場で、沖縄県知事選に立候補している佐喜真淳氏の演説中、聴衆の女性が古い薬きょうのような物を複数投げ付けた。陣営スタッフが女性を取り押さえ、県警に引き渡した。候補者本人を含め、けが人はいない。那覇署が女性を任意同行して事情を聴いている」
(沖縄タイムス8月27日)
佐喜真候補に薬きょうを投げ付ける 沖縄知事選の演説中に 女性を任意同行 (沖縄タイムス) - Yahoo!ニュース

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まず初めにおことわりしますが、私はこのような行為に対して「選挙妨害をした」という表現をとりません。
安倍氏暗殺事件を「銃撃事件」という表現で、本質をずらしてしまいうような言い方に同調できないからです。
この表現を柔らかくすることで逃げる日本人の悪い習慣は、都合の悪い現実を直視しない性癖を生み出します。

安倍氏暗殺事件は、「銃撃事件」と表現を言い換えることで、事件の経緯、警備のあり方、その後の県警の対応の問題点などの見たくない現実から眼を逸らす働きをしてしまいました。
奈良県警は自らの警備史上空前の大失態からメディアの眼を背けさせるために、いち早く17年も前の「海自出身」という情報を意図的にリークさせ、以後、捜査関係者しか知り得ない山上の供述内容を大量にメディアにリークしました。
その結果できあがったのが、統一教会と安倍が巨悪、山上こそ真の義士、というメディアの描いた醜悪な構図でした。

安倍氏は奈良県警によって二度殺されたことになります。
一度は肉体を抹殺され、二度目は死の尊厳を踏みにじられることで。
静謐であるべき弔いの空間は土足で汚され、いまや鳥葬にしろという朝日文化人すら出る始末です。
したがって、このような状況を引き起こした県警本部長は二重に処罰されるべきです。
ひとつは警備の失敗、二つ目は捜査情報の漏洩。
もはや辞職程度ではすまないはずで、国会に証人喚問したらどうでしょうか。

さて、この宮城秋乃という人物の行為は、公職選挙法に基づき正当な選挙活動をしている候補者に対して、暴力で選挙妨害することを企み、実行したのですから、これは明らかな政治テロでした。
候補者に対して暴力を行使した時点で、宮城のとった行為はヤジなどの選挙妨害とは一線を画して考えるべきです。
まして投げつけたのが、古びているとはいえ、5.56ミリの弾頭つき実弾でした。
当人は演習場から掘り出したのだと言いたいようですが、そんなことはとっさにはわかりません。
弾丸を投げつける行為は、次回はこれを銃で撃つぞという脅迫的行動そのものなのです。
そもそも佐喜真氏は北部訓練場の返還交渉にはまったくかわりがなく、要は自民党候補なら誰でもよかったのです。

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沖タイが書くようなけが人のあるなしは結果論で、宮城は佐喜真氏が演説する街宣車の手前の銃撃可能な位置におり、仮に山上某のように明瞭に殺害を企画していれば、佐喜真氏は安部氏と同様に射殺されていた可能性が十分にあります。

この宮城は、いままでも派手な反基地運動をし続けていた人物でした。
あの高江村落を日干しにした過激なヘリパッド闘争にも関わっていたようです。

「アメリカ軍北部訓練場のゲート前にガラス片や鉄くずなどを置いて業務を妨害させたなどとして、警察は8月3日、チョウ類研究家の女性を書類送検しました。
警察などによりますと、書類送検されたのはチョウ類研究家の宮城秋乃さんで、2021年4月、北部訓練場のゲート前にガラス片や鉄くずなどを散乱させて関係者の業務を妨害した疑いがもたれています。
さらに、2020年から2021年にかけてゲート前に立ちふさがって車両の通行を妨害したほか、金属片や空き瓶、空き缶など廃棄物が入った袋をゲート前に置いたこともわかっていて、これらの容疑についても警察が8月3日書類送検しています。警察は宮城さんの認否について明らかにしていません。
女性は県内のチョウ類研究者。米軍北部訓練場の返還区域では銃弾などの廃棄物が大量に見つかっており、撤去を求めて活動している。目撃者によると、取り押さえられる際に「米軍の銃弾が普通に拾える状況であることをみんなに知ってほしかった」と話した。現場には、パトカーが少なくとも5台駆け付け、騒然とした」(琉球朝日放送2021年8月3日)
チョウ類研究家の女性を書類送検 鉄くずなど廃棄物をゲート前に捨てた疑い – QAB NEWS Headline 

宮城を取り押さえたのは選挙スタッフで、その後携帯をいじっている宮城を警官が逮捕するでもなく、やさしく対応して任意で事情聴取したとか。おやさしいことです。

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【現場写真】沖縄県知事選、佐喜眞候補が金属を投げつけられる。活動家の女か – SAKISIRU(サキシル)

「女は佐喜眞陣営のスタッフらが取り押さえ、駆けつけた県警那覇署員が事情聴取。陣営は選挙妨害を訴えており、同署が事態の経緯を調べている(略)女は沖縄の米軍基地反対運動に参加している活動家で、陣営スタッフが女を知っており、警戒していたとの情報もある」
( SAKISIRU8月26日)

奈良県警といい勝負の沖縄県警の警備ぶりも明らかになりました。
宮城は反基地運動の活動家として「アキノ隊員」とコスプレして出没し、そこら中に顔をだしていた人物ですから、このような人物が佐喜真候補の接近することに対して警戒感を持たない方がどうかしています。
県警が無規制で危険な位置に近寄らせてしまったこと自体が、警備のミスだったのです。

※後段は内容的に別なので、明日に分離しました。

 

 

 

 

2022年8月28日 (日)

日曜写真館 そよ風に座る者待つ蓮の花

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あの世にて逢ふ人あまた蓮ひらく 林翔

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いちまいの蓮田恋をへだてたり 伊丹三樹彦

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いまが死にごろか白蓮花ひらく 桂信子

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嘆きありゆふべ蓮田に沿ひゆけば 伊丹三樹彦

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一茎に一仏 かくも蓮花溢れ 伊丹三樹彦

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ひらきゆく蓮の吐きたる虚空かな 上野泰

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星ばかり見ないで蓮が開くから 中村苑子

2022年8月27日 (土)

ロシアの侵攻開始から半年

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先日はウクライナの独立記念日でした。
BBCは、あるウクライナ軍の部隊の記述から始めています。

「ウクライナ陸軍第59独立自動車化歩兵旅団の砲兵たちが次々とトラックから飛び降りて、小麦畑の乾いた土の中に、ソ連時代の榴弾砲(りゅうだんほう)をしっかりと固定する。
敵軍の砲弾が1発、頭上を通過し、近くの畑に落下する。ウクライナ兵たちは作業の手を止めず、ただちに撃ち返す。
この旅団が半年前、司令本部に連絡をとり補給を要請したところ、司令本部の反応は驚愕(きょうがく)そのものだった。ロシアの侵攻開始から3日後のことだ。
「殲滅(せんめつ)されたものとばかり思っていた」と、そのとき司令部は言った。
あれから半年。今日は独立記念日だが、それでもほかの日とほとんど変わらない。激戦は続いている。ウクライナ軍の榴弾砲は、ロシアの砲撃で受けた傷跡だらけだ。砲身には砲弾の破片があちこちに埋まっている。
旅団の兵士たちも傷ついている。先週にはロシアの攻撃で数人を失った。
それでも彼らは、まだまだ戦わなくてはならない」
(BBC2022年8月25日)
ウクライナの独立記念日、前線で戦い続く 南部の戦場からBBC記者 - BBCニュース


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BBC

彼らは疲労の極にありながら、こうBBCの記者に語ったそうです。
「子供たちのために戦う」

今年の独立記念日は、プーチン大統領がロシア軍をウクライナに侵攻させてちょうど6カ月目にあたっていました。
プーチンはよもやこの戦争が半年以上続くとは考えていなかったはずです。
しかし、半年を迎えた8月24日も、まだ停戦の見通しすら立っていません。

いやむしろ、現時点での「停戦」は事実上のロシアの勝利を意味することをウクライナ国民は知っています。
ゼレンスキーはこう述べています。

「ゼレンスキー大統領は首都キーウの独立広場でスピーチをする動画を公開し「われわれは国のために最後まで戦う。この6か月間持ちこたえた。目的はただ1つ、ウクライナの独立と勝利を守ることだ」と述べ、徹底抗戦する構えを強調しました」
(NHK2022年8月25日)
ゼレンスキー大統領「独立と勝利守る」ウクライナ独立記念日で | NHK | ウクライナ情勢

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大統領、クリミア奪還宣言 独立記念日に全土空襲警報(共同通信)|熊本日日新聞社 (kumanichi.com)

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、600万人以上のウクライナ国民が国外に避難しています。
同時に、それ以上のウクライナ国民が住み慣れた故郷から砲弾で追われ、域内難民と化しました。

CNNはウクライナの侵攻から半年の被害を、数字でまとめています。

「欧州の若い国としてかつて繁栄したウクライナは今、地域によっては廃虚と化した。以下の数字は、欧州で起きた第2次世界大戦以来最悪の衝突の現状を物語る。
・2022年1月1日のウクライナの人口:4352万8136人
・2022年2月24日~8月16日の間にウクライナから出国した人数:1115万639人
・2022年2月28日~8月16日の間にウクライナに入国した人数:476万7914人
・2022年2月24日~7月23日までのウクライナ国内避難民:664万5000人
・2022年2月24日~8月22日の間に死傷したウクライナの民間人:1万3477人(死者5587人、負傷者7890人)
・2022年2月24日~5月10日の間に攻撃されたウクライナの医療施設:200箇所
・2022年2月24日~6月11日の間にウクライナで失われた雇用:480万」
(CNN2022年8月25日)
  ロシアの侵攻開始から半年、数字が物語るウクライナの惨状 - CNN.co.jp

戦死したウクライナ兵士は9千人と発表されています。
そしてこの墓の脇に、ロシアの兵士たちの墓も立てられるべきかもしれません。

「半年間のウクライナ戦争の犠牲者数は約8万人と推定される。3年間続いたボスニア紛争(1992年3月~1995年11月)の時と同じ状況だ」
(ウィーン大学東欧史研究所のヴォルフガング・ミュラー教授)

戦い続けるウクライナに平和と独立を!

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本日、ウクライナは独立記念日 (ukrinform.jp)

2022年8月26日 (金)

腹を括った岸田首相

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冬に間に合うかどうかのギリギリの時期ですが、岸田さんが決断したようです。
一気に原発の再稼働を7基追加し、懸案だった新型炉の建設もテーブルに乗せました。パチパチ。

「政府は電力の安定供給と脱炭素の実現に向け、原子力発電所の再稼働や運転延長、次世代型の建設などの検討に入る。東日本大震災後、安全審査や地元同意のハードルで再稼働は遅れてきたが、現時点で目標を両立できる電源は他にない。ウクライナ危機もエネルギー調達の課題を浮かび上がらせた。再生可能エネルギーを含めた供給網を早急に整える必要がある」
(日経2022年8月25日)

電力確保・脱炭素へ原発活用にカジ 再稼働7基追加: 日本経済新聞 (nikkei.com)

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資源エネルギー庁

今、再稼働できる規制委員会の審査を通過した原子炉は17基あり、そのうち稼働しているのは半数以下の6基のみです。
うちわけは、川内1号、玄海3号、伊方3号、高浜3・4号、大飯3・4の7基が運転中、高浜3号は一時停止中で6基です

これに特重審査が終わった川内2号と美浜3号が、この8月に動く予定で、これで岸田氏が前に述べた「最大9基」となります。
これに、同じく特重で止まっている玄海4号と、すでに知事が同意している島根2号が動けば、合計11基となります。
来年3月に特重の工事が終わる予定の高浜1・2号の工事を早めれば、今年の冬に稼働可能で、これで最大13基が稼働可能です。

「特重」とは、「特定重大事故等対処施設」のことで、安全性を格段に向上させた堅牢な原子力施設のことです。

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原発テロ対処施設費、膨張 電力3社9800億円、安全工費の4割:中日新聞Web (chunichi.co.jp)

「特重施設は航空機衝突などのテロ攻撃を受けた際も遠隔操作で原子炉の冷却を維持するための施設で、緊急時に遠隔操作可能な制御室や電源設備を備える。
13年施行の新規制基準で設置が義務付けられた
(河北新報2022年1月6日)
女川2号機に特重施設 設置へ協議申し入れ 東北電 | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS (kahoku.news)

特重施設は、従来の基準以上に安全性を向上させたタイプの原子力施設のことで、遠隔操作ができる緊急時管制室と原子炉格納容器の減圧・注水機能を有する設備を持ち、これらを頑健な建物に収納します。
このために工事は長期化すると共にコスト増に電力会社は苦しんできました。
たとえば関西電力、四国電力、九州電力の施設の総工費が合計一兆円弱に上り、安全対策費の四割超を占めることになりました。

この冬の電力予備率は、薄氷といわれる3%を割り込んで、なんとマイナス0.6%にまで落ち込んでいます。
寒波や地震、大水などの天災が襲来した場合、大規模停電が発生する可能性がきわめて高いレベルまで落ちています。

「2022年冬季はさらに広いエリアで安定供給に必要な供給予備率3%を下回る予想が発表されました。
特に、東京では2023年1〜2月の供給予備率がマイナスに転じています。中部から九州エリアまでも軒並み2%台と、電力需給が綱渡りの状況に直面するとの予想です。また、東北も3%を上回ってはいるものの、厳しい状況であることに変わりありません。
こうした電力需給の見通しは、2012年以来でもっとも厳しいものであるとされています
REiVALUE Blog 2022.04.22

2022年夏季、電力需給ひっ迫の予想。今冬は広範囲で予備率3%割れ | REiVALUE Blog 

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REiVALUE

 日経は「再エネの整備が急がれる」などと寝ぼけたことを言っていますが、予備率がマイナスに落ち込んだ状況下で、いったん大雨などの曇天が続いたりすれば、あっさりと発電しなくなるのが太陽光です。
かんじんの時にはつかえない電源が再エネなのです。

このようなお菓子系電源に頼らずに済むように、基礎的電源基盤を整備する必要がありました。

電源不足はいつか来るものではなく,もう目の前数カ月に迫った危機がわかっているからこそ電力会社は古い火力を再整備して復活させたり、特重施設化することに耐えてきたわけです。
特に首都東京を預かる東電管内の柏崎刈羽6・7号は、運転員の不祥事で「是正措置命令」が出ているため、委員会が命令を解除しないと運転できない状況で、先日の「最大9基」には含まれていません。

再エネ大好きの日経すらこう書いています。

「三条委員会には内閣が「助言」しかできないので、萩生田経産相が更田委員長に助言すれば、技術的には運転可能です。柏崎の再稼動が実現すれば、東電管内の予備率は5%上がり、冬は乗り切れます」
(日経前掲)

そうです。政府が規制委に「助言」すればよいだけですが、腰が重かったのは政府の側だったのです。
今年の夏は、季節外れの熱波が襲い、電力供給が逼迫したために節電要請を出したり、ポイント制などを政府が言い出して失笑を買いました。

いままでならば、石炭やLNGで凌げましたが、共にロシアからの輸入に頼ってきたために、これも使えません。
欧州では、日本よりもさらに電力不足のひどい冬が来ることが予想されています。
原油や天然ガス価格は軒並み高騰し、ロシアからパイプラインで天然ガスを輸入する欧州の指標価格のオランダTTFは、8月中旬に1メガワット時当たり250ユーロ台と、侵攻直後の3月より高い値段をつけました。

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読売

「【ロンドン=池田晋一】26日の欧州ガス市場で、代表的な指標となる「オランダTTF」の先物価格が一時、前日終値から2割上昇し、1メガ・ワット時あたり211ユーロをつけた。ロシア産天然ガスの供給不安が強まり、3月上旬以来、4か月半ぶりの高水準となった。
ロシア国営ガス会社、ガスプロムが25日、ドイツにつながる海底パイプライン「ノルトストリーム1」による天然ガスの供給能力を2割まで落とすと表明し、市場が不安視している。ガスプロムは、タービンの修理を理由にしているが、ロシア側が制裁を強化するドイツなどに揺さぶりをかける狙いがあるとみられる」
(読売2022年7月22日)
欧州ガス価格が一時2割上昇、4か月半ぶり水準…ロシア「天然ガス8割減」で供給不安 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

さすがにこの状況を受けて、原発を止めようという動きはヨーロッパではピタリと止まりました。
反原発を党是としていたはずのドイツ政権与党・緑の党も妥協を余儀なくされています。

英国は30年までに最大8基を新設する方針を掲げ、フランスも50年に向け大型原発を最大14基建設する方針です。

今後、この冬を乗り切って、さらに日本政府が国際公約した2030年度の温暖化ガス排出量を13年度から46%減らす目標は、もはや原発ぬきには考えることさえ愚かです。
試算では、発電量のうち再生エネを36~38%に、原発を20~22%に高める必要があり、そのためには電力会社が稼働を申請した27基すべてが運転してどうにかなるかならないか、という数字です。
その次には2050年度には実質ゼロにするという公約も控えています。

ゼロカーボン公約を守ろうとすれば、岸田氏がいう「運転期間の延長など既設原発の最大限活用 」という場当たり的発想ではどうにもならず、より安全で効率の高い新型炉にリプレイス(置き換える)する必要があります。
そこで、首相が言う「次世代型の建設などの検討」が意味を持つわけです。
これはかねてからの高市氏の持論でしたが、岸田氏が採用したようです。

腹をくくりましたね、岸田さん。
これでメディアは岸田氏が、薄ら甘いリベラルだと思って手加減してきたことを止めて、安部-菅を継ぐ者だとはっきりと認識したはずです。
参院選前までなにもしないのに60%台の支持率があったのは、メディアが様子見をしていたからです。
立て続けに、全数把握も止め、入国制限も撤廃し、そして今回の原発の再稼働宣言です。
メディアはやっと岸田という政治家が、「決断と実行」できる人物だと気がついたようです。
遅まきながら、この私もですが。

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おそらくメディアは、全力で旧「統一教会」叩きで岸田政権を潰そうとするでしょう。
ただし、メディアは自分も「旧統一教会汚染」をしていたことがバレてしまいましたから、どうなりますことやら。
尻をまくった岸田、頑張るきゃありません。

 

 

2022年8月25日 (木)

行き過ぎた統一教会バッシングは全体主義を招く

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ほんとうは書きたくないのですが、書かざるをえないほど、今の旧「統一教会」バッシングは常識を逸しています。
旧「統一教会」と分裂後の「世界平和統一家庭連合」(家庭連合と略)をごちゃ混ぜにするのはまだいいほうで、関連団体とのつながりがあるだけで反社会的勢力と関わったとされるのですから、そのうち「家庭連合」の信者と街頭ですれ違っただけでバッシングされるようになります。

岸田氏は、後援会長が統一教会「系」と関わっていただけでアウト。
森雅子首相補佐官が統一教会「系」で挨拶すれば、もちろんアウト。
「家庭連合」の信徒も国民である以上、自身の政治活動や信条についてしゃべってくれといわれれば、そりゃ行くでしょう。
それとも、どこかの法律に「家庭連合には基本的人権は認められないから、彼らの前でしゃべってはいけない」とでも書いてあるようです。

メディアの最終目標は、もちろん故安倍氏と安部派です。
いつのまにか故安倍氏は、メディアでは旧「統一教会」の票をとりまとめる巨悪だったということになっているようです。
旧「統一教会」の霊感商法に止めを刺したのが、2018年に安部政権が作った消費者契約法だったのですが、まったく無視されています。
とどのつまりは、巨悪アベの国葬を許すな、アベを倒した「山上義士」を救え、という方向に印象誘導されていきます。

ここまで煽りのエスカレーション・ラダーを上げてしまうと、必ず己にも火の粉は降りかかってきます。
立憲はこのていたらくです。伝統芸の大ブーメラン炸裂です。

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「立憲民主党は23日、枝野幸男前代表など所属議員14人が旧統一教会と何らかの関係を持っていたとする調査結果を発表した。
立憲民主党の調査では、枝野前代表は、2006年に旧統一教会系の「世界日報」に座談会の記事が掲載され、岡田克也元副総理も、2002年まで3回記事が掲載されていた。
この他、旧統一教会の関連会合に祝電を打つ、秘書が出席する、会費を払うなど、関係を持った議員はあわせて14人に上った。
西村幹事長は、「すべての人が旧統一教会の関係と認識していなかった。今後は、一切関係を持たぬよう徹底していく」と述べた」
(FNN8月23日)
枝野前代表ら14人が旧統一教会と関係 立憲民主党が調査結果を発表(フジテレビ系(FNN)) - Yahoo!ニュース

こういう攻撃対象の無制限拡大の仕方をすれば、たぶんもっと出るでしょうね。
メディアも無傷なはずがありません。
「家庭連合」は、いままで関わりがあったメディアを暴露すると宣言しました。

「安倍元首相の事件で問題が浮上する前に協力していた報道機関を調査し、公表する構えを見せている点だ。仮に「反社会的」な団体だったとすれば、報道機関はまったく関わらないように注意を払ってきたはずなのに、そうではなかったと説明する。
「それどころか、当法人および友好団体等が開催するイベントへの取材活動を始め、協賛、後援、寄付、ボランティア派遣等を通じて、実に多くの報道機関が密接に関わって来たことは疑いようのない事実です」
「現在、各報道機関と当法人および友好団体等とのこれまでの関わり等について、過去に遡って詳細な調査を進めております。調査結果がまとまり次第、全面的に公表させていただく予定です」
(弁護士ドットコム 8月21日)
旧統一教会がメディアを挑発「かつて関わりあった報道機関を調査、公表する」敵対心あらわ(弁護士ドットコムニュース)

「家庭連合」は信徒の基本的人権を擁護するために、どんどんおやりになったほうがいいでしょう。
たぶんすでに判明している毎日新聞を初めとして、根こそぎ出てくるはずです。
そしてメディアは、立憲の言い訳よろしく口を揃えて「旧統一教会とのつながりを知らなかった」と回答するのでしょう。
おいおい、そう答えている自民党議員をこれでもかとバッシングしているのは、あなた方ですぜ。

いうまでもなく、私は旧統一教会に対して強く批判的な立場です。
特に冷戦以降、共産主義と戦うという理念を捨て去り、日本の信徒を供給源として北に資金提供し続けたことは許しがたい犯罪的行為だと思っています。

今なお、この北へのすり寄りを指導した文鮮明教祖に対して、北のおぼしめしはおよろしいようで、つい最近もこのように述べています。

「北朝鮮のウエブサイト「わが民族同士」は今月13日、同国の朝鮮アジア太平洋平和委員会が「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の創設者・文鮮明師の死去から10年に向けた追悼文を遺族に送ったと報じた。
同委員会は追悼文の中で、「民族の和解と団結、国の統一と世界の平和のために傾けた文鮮明先生の努力と功績は末永く追憶されるだろう。世界平和連合の全てのことがうまくいくことを望む」と記述している」
(ウィーンコンフィデンシャル8月21日)
北メディア「朝日の情報操作」を暴露 : ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.jp)

こんな北の支援団体と化した「家庭連合」などを擁護する気はいささかもありませんが、それはあくまでも言論の範囲内のことで、ヘイトしろということではまったくありません。

ところで「家庭連合」ヘイトのとばっちりをもっとも恐れているのは、創価学会と公明党でしょう。
山口代表はこう言っています。

「公明党の山口那津男代表は23日の記者会見で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治の関係をめぐり、「政治と宗教一般ではなく、明確に区別して議論を進めることが大切だ」との認識を示した。
同党は宗教法人の創価学会を支持母体としている」

山口氏は、宗教団体の政治活動について「憲法上、完全に保障されている」と強調。その上で、旧統一教会が悪質商法などの不法行為を指摘されていることを踏まえ、「トラブルを多数抱える宗教団体との関係は慎重に対応すべきだ」と述べた
(時事8月23日)
旧統一教会「宗教一般と区別を」 山口公明代表(時事通信) - Yahoo!ニュース 

山口氏が恐怖を覚えるのはわかります。
いまや、「家庭連合」には基本的人権や言論の自由を剥奪すべし、という憲法学者すら登場しているからです。

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九州大学南野森教授

九州大学の南野森教授(憲法学)は、TBS報道特集の中で、「統一教会は反社会的だから解散命令を出すべきだ」と発言し、「反社会的な団体には「信教の自由や言論の自由などを持ち出して議論をしてはならない。統一教会は暴力団体だからだ」と発言しているそうです。
宗教法人格取り上げ程度では生ぬるい、それではただ経済的な打撃を与えるだけだ、言論の自由や信教の自由も剥奪して根絶やしにせよ、ということのようです。
スゴイね。百人以上も殺し合った過激派ですら、団体解散はおろかいまでも元気にデモしているというのに、旧統一教会「系」は根絶やしの極刑だそうです。

南野氏の言うことを実行しようとすれば、いまある法規では破壊活動防止法で団体解散を命じるしかないと思いますが、どうするおつもりなのでしょうか。

かつて邪教の極み反社の帝王格だった オウム真理教 が破防法適用を免れたのは、私の古い記憶では、弁護士会と江川紹子氏などの共産党系文化人が強力に反対したからではなかったかしら。

ところで私は、こういった旧「統一教会」系ヘイトの狂奔を見ると、この人らは宗教をまじめに考えたことがあるのだろうかと思えてなりません。
たぶん南野氏のような頭デッカチの人は、宗教とはこの世のものとは思えないほど清廉潔白で、シミひとつない存在だとでも思っているのでしょう。
とんでもない。宗教ほど血と汚濁、そして金銭にまみれたものはありません。
特にカルト宗教だけがそうだというわけではなく、「普通の宗教」も例外ではありません。
しかしそれでも人は惹かれて救済を求めるのです。

山口代表と南野氏は「統一教会は普通の宗教団体ではない」と断言していますが、ではお二人に逆にお聞きしたい。
「普通の宗教団体」と「反社的宗教団体」は、どこで区分けされるのでしょうか。
そしてその線引きをするのは、いったい誰なのでしょうか。

もし仮に線引きをするのが国だとするなら、宗教の教義内容に国家が介入することが可能になります。
では民間団体に任せるとなると、その公平性、透明性をめぐって延々と議論をせねばならなくなるでしょう。
なにせ南野氏の言うことは、憲法における基本的人権の重要な柱である信教・結社・言論の自由を頭から否定することですからね。

いちおうカルト宗教の定義らしきものは、フランス政府が作っています。
ちなみに、こんなことを政府ができるのは、先進諸国ではフランスだけです。
フランスにおいてライシテが法制化されたのはナポレオンによる帝政や王政復古を経て第三共和制が確立された1905年のことで、フランス共和制がカソリックとの激烈な闘争の結果生まれた歴史的経緯によります。

いかなる宗教も政治、教育に干渉できないとするライシテがあったからこそ出来たのが、このカルト10原則です。

なお、フランスがここでセクトといっているのは、カルト宗教のことです。

  ●「セクト(宗派)構成要件10項目」
①精神の不安定化(洗脳マインドコントロール
②法外な金銭的要求(多額の寄付金要求)
③住み慣れた生活環境からの断絶(監禁出家など)
④肉体的保全の損傷(精神的暴力も含む暴力)
⑥反社会的な言説
⑦公秩序の攪乱
⑧裁判沙汰の多さ
⑨従来の経済回路からの逸脱
⑩公権力への浸透の試み
「セクト構成要件の10項目」
カルト - Wikipedia

実は、大部分の「普通の宗教」も、多かれ少なかれこの10の構成要件を持っているか、かつて持ったことがあります。
なぜなら多かれ少なかれ「宗教」とは、そういった市民社会とは隔絶した価値観を有するものだからです。
①のマインドコントロール、それに伴う③の出家、修行による監禁は、キリスト教においても仏教においても常識であって、その中で時に④の肉体的暴力、⑥の罵倒などが高位の者から与えられることも特に珍しいことではありません。
高野山や修道院に行ってごらんなさい。
世俗の信徒と、宗教に帰依した者は厳然と区別されるのです。

また俗世の信徒も、みずからの信仰を明らかにするために多額の寄付金を出したりすることは、あたりまえすぎてとりたてて言う必要もないほどです。

「残念なことだが、宗教団体には民事、刑事訴訟を抱えている団体は少なくない。その代表格は13億人以上の信者を誇る世界最大のキリスト教会、ローマ・カトリック教会だろう」
(ウィーン発コンフィデンシャル前掲)

カソリックでは、家が買えるような額の寄付をすることも珍しいことではなく、家族から教会が訴えられる民事訴訟もままあることです。
さらにキリスト教社会の暗部とでもいうべきは、聖職者による未成年者への性的虐待が頻発していることです。

「世界各地の教会で聖職者による未成年者への性的虐待事件が発生し、教会指導部がそれを隠ぺいしてきたことが明かになっている。聖職者の性犯罪件数は5桁、数万件にもなる。アイルランド、フランス、ドイツ、米国など世界のカトリック教会で聖職者の性犯罪が暴露され、裁判にもなっている」
(ウィーン発コンフィデンシャル前掲)

比べるのもばかばかしいですが、旧「統一教会」の霊感商法と、カソリックの聖職者にはびこった未成年に対する性的虐待とどちらを重罪にすべきなのでしょうか。
安野氏は、カソリックは「反社会的組織」だから、彼らの信教の自由や言論の自由を剥奪すべきだと言うのでしょうか。
たぶんそうはならないはずです。
なぜならカソリックと旧統一教会は、比較することさえ愚かなほど規模が違いますし、背負っている歴史の厚みがまったく違うからです。

私が言いたいことは、カソリックも罰せよ、反社にしろということではなく、宗教とはこんなものだという一種の諦観です。
歴史的に、このような暗部を含んで宗教は成り立ってきたし、暴き出せばきりがないほどの負の部分もあったのです。
ただし、善男善女に対して、それ以上の救いを与えてきたことが事実な以上、宗教はなくなりません。
南野氏が言うように、特定の宗教の信教・言論の自由を剥奪し、宗教法人格を取り上げたとしても、地下に潜ってかえって先鋭化するはずです。

そして安倍氏憎さのあまり行き過ぎた旧統一教会叩きに狂奔すれば、やがてそれは社会から民主主義と活気を奪っていくことにつながっていくのです。

 

 

2022年8月24日 (水)

橋下さん、個人請求権はどうぞ韓国政府のほうに

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橋下徹氏という人は、理路整然とヨタ話をする人物なことで知られるようになってきました。
彼は歯切れよく、間違ったことを大きな声で言う人のようで、深く考えない人のようです。

その橋下氏が、韓国が唱えている個人請求権についてかつて、かつてこんなことを言っていたことを思い出しました。
https://blogos.com/article/335611/ 
橋下氏の上記サイトのまとめを、更に簡潔にしてみました。 

①日本政府は平和条約などでは個人の請求権は消滅しないと言っていた。 
②日本の最高裁も、個人の実体的請求権の完全消滅までは言い切っていない。
③世界では宗主国が旧植民地に対して悪しき効果が残存している場合には責任を負う流れにもなっている。 

なるほどねぇ。 彼らしく理路整然と間違っていますね。
橋下氏は、認識の大前提として「宗主国が旧植民地に対して悪しき効果」があるとお思いのようです。
日韓関係は真逆なケースだとおもいますが、ここにこだわると先にいきませんので、よい機会ですから特に彼への反論としてではなく、個人請求権について整理しておきましょう。

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橋下徹:フリーランスこそ、徹底して「仕事の相場観」にこだわるべきだ |FinTech Journal (sbbit.jp)

橋下氏が言うには、1965年の日韓請求権協定と経済協定によっても、個人の実体的請求権は消滅していないから,、徴用工の訴訟もその判決も間違っていない、ということのようです。
橋下さん、それは勘違いです。
仮に日本の最高裁が「請求権の消滅」とまでは言っていないとしても、だからなんなんですか。 
請求権が残っていたとしても、なにも日本側の結論は変わらないのです。 

なぜなら、徴用工の個人請求権は消滅していないとしても、訴える相手の方角を間違えているからです。 
彼らが訴える先は、日本企業でもましてや日本政府でもなく、韓国政府なのです。
元自称「徴用工」(元慰安婦も同じですが)などが個人補償を貰っていないのなら、どうぞ韓国政府にご請求下さい。

ご説明しましょう。
多くの人が誤解している節があるのですが、日本政府は日韓請求権協定の交渉で、個人の請求権を拒否するどころか、むしろ直接に日本政府が支払おうと、言っていたくらいです。
問題は、請求権協定で定まった後に、しかもその支払いがとうに終わっているにもかかわらず、後出しジャンケンよろしく今になって日本政府にいって来るのは、お門違いだということにすぎません。

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「徴用工訴訟」で三菱重工の資産差し押さえへ 日本が「対抗措置」取れば文政権は奈落の底 - zakzak

ところで日韓請求権協定は1966年にまとまるのですが、なんとまとまるまで14年間というマラソン交渉をしています。
その時の舞台が、日韓で1952年に作った協議機関の「財産権請求委員会」でした
この時に韓国政府が日本に突きつけたのが、「対日請求要綱」で、全8項目の5項目目には、「被徴用韓国人の未収金およびその他請求権を返済すること」を求めています。 
ね、韓国はすでに1952年の時点で個人請求権を対日要求に入れているのですよ。

で、日本はそれを突っぱねたでしょうか?
とんでもない、一部を除いて丸呑みしたのです。 
わかりました、被徴用にあった慰安婦や徴用工の未払い賃金についてはお支払いますと、日本政府は言っていたのです。
イメージだけで慰安婦や自称「徴用工」訴訟を見ていると、日本が頑なに彼らの未払い賃金について知らん存ぜぬと言っているようにきこえますが、今から70年前に払う用意があると明言しているのです。

またここで論議されているのは、一般的な賠償金はなく、あくまでも「未支払い賃金」だということも頭に置いて下さい。
実際に、多くの慰安婦や自称「徴用工」の訴訟内容も、未払い賃金、ないしは軍票が反故にされたことに対しての金銭的保証です。
一般的に、私らは被害者だから賠償せよではないのですから、お間違いなく。

ところで、日本政府が個人の請求について払うと言ったのはいいのですが、どうやって払うかとなると問題が出ました。 
韓国政府に対して支払うのか、個人に支払うのか、の2択しかありませんが、ここでもめたのです。
日本側は、韓国が上げた対日債権である韓国人軍人軍属、官吏の未払い給与、恩給、接収財産といった個別償還を認めたうえで、一括政府支払い方式を提案しました。 

ここでの韓国の言い分は実にムシがいいものでした。
個人請求分は、韓国は政府一括でもらう、しかもなおかつ個人請求は残るとしたのです。
なんのことはない二重取りです。

韓国の主張の主張がとおると、条約締結後も個人請求権が残ってしまいます。 
日本側としては韓国政府に対して個人賠償分を払って、その後にまた訴訟を起こされるたびに韓国人個々に払うという二重払いになってしまいます。 
これではなんのために延々と請求権のマラソン協議をしてきたのか、その交渉意義さえわからなくなってしまいます。
だから日本側は、個人賠償を韓国政府に一括で支払うのはいいが、すべてをこの日韓交渉で処理して終わりにすべきだと主張したのです。 
つまり日本は個別請求権も含めて、その全額を韓国政府へ一括で支払うとしたわけです。
これは国際法的にも認められている、「一括補償協定」(Lump-sum-settlement)方式と呼ばれるものです。

具体的には、韓国側が要求した金額は、61年の交渉で韓国徴用被害生存者1人あたり200ドル、死者1人あたり1650ドルずつ、計3億6400万ドルでした。 
日本は無償で3億ドル支払っていますから、(別に有償で2億ドル、民間借款で3億ドルが追加されて合計8億ドル)、ほぼ満額回答です。
支払った額も、当時の日本の国家予算の半分に達する膨大なものでしたが、その名目についてもひと悶着ありました。
韓国は「植民地支配の補償」とすることを要求しましたが、日本は譲らず「新独立国への経済協力」とすることを主張しました。
なぜなら、韓国は諸外国の海外に持つ植民地とは違って、国と国の合邦によったものだというのが建前だったからです。

で、結局どうなったかといえば、韓国は実を取り、日本は名を取ったのです。
金額は韓国のご要望どおり丸呑み、ただし日本は「植民地」ではなく合邦だったのいうのが建前ですから、あくまでも「経済支援」(独立祝い金)、個人請求権は払うが、それは政府一括とするとなったのです。 

この交渉結果を反映したのが、請求権協定のあの有名な文言です。


「両国は請求権問題の完全かつ最終的な解決を認める」
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本

付帯する日韓請求権協定合意議事録2のgにはこうあります。
http://www.f8.wx301.smilestart.ne.jp/nihonkokai/zaimusyo/zaimusyo-2/139.pdf


「同条1にいう完全かつ最終的に解決されたこととなる両国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題には、日韓会談において韓国側から提出された「韓国の対日請求要綱」(いわゆる八項目)の範囲に属するすべての請求が含まれており、したがつて、同対日請求要綱に関しては、いかなる主張もなしえないこととなることが確認された」

もうお分かりでしょう。
橋下氏は日本の最高裁判決文は読んでも、ちゃんとこの請求権協定の交渉経過を追っていないし、条約に付随する交渉議事録も読んでいないから、ああいうことが言えてしまうのです。
日本の最高裁が、「個人の実体的請求権の完全消滅までは言っていない」のはとうぜんです。
なぜなら日本政府は、個人請求権が「完全消滅した」なんて過去も現在も一度も言っていませんからね。
言っているのは、個人請求権は一括して韓国政府に支払ったので、もう「(韓国政府は)いかなる主張もなしえない」ということになります。

請求するなら、一括で個人の代わりに受け取ってしまい、それを国民に周知することもせずに、うやむやにしてしまった韓国政府に言え、ということです。

 

2022年8月23日 (火)

自称「徴用工」最高裁現金化判決延期

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韓国の「外交」とは、要は国内向け政治ショーのことです。
これは中国や北朝鮮と同じです。
一見、日本に対してわーわー言っているようでも、わが国なんか眼中になく、見ているのはひたすら国内の支持者です。
これは韓国の兄弟国家の北が、ミサイルを撃っているのは実は国内向けのパーフォーマンスなのと一緒です。
日本と戦っているふりのひとつもせにゃ、国内が落ち着かないのです。

これは先日、なんの脈絡もなく新大統領のユン・ソンニョルが突然ホワイト国に戻せと、言い出したことでもわかります。

「韓国政府が4日の日韓外相会談で、輸出管理で優遇措置を与える「ホワイト国(優遇対象国)」への復帰を日本側に求めたことが20日、分かった。いわゆる徴用工訴訟問題をめぐり韓国最高裁による日本企業資産の「現金化」に向けた手続きが進む中で、日本側の前向きな姿勢を引き出すことで尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の「解決策」に韓国国内の理解を得る狙いがあるとみられる。日本側は徴用工問題とホワイト国復帰は別問題として要請に応じない姿勢を示した」
(産経8月20日)
<独自>徴用工問題 韓国が「ホワイト国」復帰要請 日本は「別問題」と拒否 - 産経ニュース (sankei.com)

なにを言っているのやら。
ご承知のように「ホワイト国」待遇は、日本企業が軍事転用可能な先端材料や電子部品などを輸出する際に、手続きを簡略化する優遇措置のことです。
よく韓国が「輸出規制だ」などと大げさに言うので誤解される向きもありますが、別に禁輸なんかはしてはいません。
とうぞお買い上げくださいな、ただし怪しげなテロ支援国家に大量破壊兵器の材料と部品となるようなものを転売してもらっては困りますから、管理を徹底してくださいね、というただの「輸出管理規制」です。

おそらくサムソンなどの大手はいまでも日本企業から堂々と正面玄関から買っているはずで、要は日本側の検証に耐えうる輸出入管理をしてくれればよいだけのことです。
こんなことは世界すべての国にお願いしていることで、特に韓国を標的としたわけではありません。
むしろいままで韓国が杜撰な輸出入管理をくぐって、第三国を通してイランや北に核兵器材料を転売していたことを、見て見ぬふりをしてきた上に、ほとんどすべての国に出していない「ホワイト国」という優遇措置をしていたほうがおかしかったのです。
日本は北に対する日米韓三カ国連携を重視して準同盟国扱いにしていましたから、甘い対応をしていたのです。
しかしこの信頼関係が崩壊した以上、今さら優遇措置などする道理がないので止めたのです。

それを日本にすれば、なんで今の時期に「ホワイト国に戻せ」なんて言われなきゃならんのか、さっぱりわからなかったことでしょう。
ユン政権は口では友好を唱えながら、竹島周辺を複数回測量させているのですから、本気で日韓関係を修復する意志があるのかわかりません。修復する意志があるなら、自称「徴用工」判決を韓国政府は認めないというべきでしょう。

自分が蒔いた種は自分で刈ってから握手を求める、それが常識ではありませんか。
さすがのリン外相も、この二枚舌に対してこう言うはずです。

「これに対し、林芳正外相は「徴用工の問題とは別だ」と拒否した。そのうえで「現金化に至れば、深刻な状況を招くので避けなければならない」と重ねて伝えた」
(産経前掲)

さて、本丸の自称「徴用工」訴訟ですが、ひとりで勝手に煮詰まって七転八倒しているようです。
ムン閣下が自称「徴用工」判決を、韓国最高裁を使ってまでやろうとしたのも、国内で凛々しく日本と戦ってくれてるステキなムンおじさんという評判を高めたかったからにすぎません。
いわば思いつきですから、ムン閣下にはこれをしたら日本がどう出る、米国はどう動くなどという高級な思考回路はまったくなかったようです。
ただひとつの望みは、外務省と自民党内にいる日韓議連の連中が、いち早く妥協の線を画策し、日本側のほうから落とし所を差し出すくらいのことでした。
いままで、延々と日本はこの「大人の解決」をし続け、する必要もない謝罪を重ね、出す必要もないカネを支払い続けてきたのですから柳の下にドジョウは何匹でもいると勘違いしたのでしょう。

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徴用工訴訟の韓国最高裁判決:日韓関係への深刻な脅威 | nippon.com

ところがあいにく、安倍政権は1ミリも妥協しませんでした。
日本が頑として譲歩しなかったために、訴訟自体が展望をなくして失速し、いまや座礁寸前のありさまです。
原告団はムンの後ろ楯があって訴訟に乗り出したものの、ムン政権崩壊後は二階に登って梯子をはずされたようなものです。
これはムン政権の手先として動かされた最高裁とて一緒で、どうするのだぁ、オレが悪者になるのかとお嘆きのことでしょう。
で、とりあえず先延ばしにしてみましたが、早々に結論を出さないわけにはいきません。

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3件だけではない「元徴用工裁判」 最高裁で9件、地裁で20数件が係争中 原告人は約1千人!(辺真一) - 個人 - Yahoo!ニュース

「韓国大法院(最高裁判所に相当)は19日、日帝強占期の徴用判決を拒否した日本企業が韓国国内に持つ資産の現金化に関する最終決定を先送りした。しかし大法院の決定が近く下されるのは間違いないため、外交面での解決策を急きょ取りまとめるべきとの指摘も出ている。日本は「現金化が行われ日本企業に実質的な影響が出た場合、韓日関係は取り返しのつかない破綻に陥る」とかねてから主張してきた」
(朝鮮日報8月20日)
韓国大法院、徴用問題めぐり日本企業の資産現金化決定を延期-Chosun online 朝鮮日報

このように韓国も、置かれた状態をわかって来てはいるのです。
判決を実体化したら、日韓関係は永遠のジ・エンドになるくらい分からなければどうかしていますからね。
日本はやみくもに門前払いしたわけではなく、協議を提案して韓国側に蹴られたという経緯を重視しています。

日本はこの2018年10月30日と11月29日の韓国最高裁が日本企業2社に対し、違法な損害賠償を命じたことを受けて仲裁手続きに入りました。まず、この状態が「韓国が意図的に作り出した違法状態」ととらえて、これは「国際社会における法の支配」を覆す事態だと考えました。
そしてこの解消のために、日韓請求権協定第3条(1)に基づく「外交的協議」を呼びかけ、次に同(2)(3)に基づく「仲裁手続」への付託を韓国政府に通告しました。

当時の茂木外務大臣の談話が残っています。
ちょっと長いのですが、メディアには日本側が一方的に可哀相な元徴用工のおじぃさんらの訴えを蹴った日本政府というセンチメンタルなことを言う人がいるので、基本的なわが国の対応を知るために収録しておきます。
※外務大臣談話 『大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について』
令和元年7月19日
大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について(外務大臣談話)|外務省 (mofa.go.jp)

「2 それにもかかわらず,昨年一連の韓国大法院判決が,日本企業に対し,損害賠償の支払等を命じる判決を確定させました。これらの判決は,日韓請求権協定第2条に明らかに反し,日本企業に対し一層不当な不利益を負わせるものであるばかりか,1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって,極めて遺憾であり,断じて受け入れることはできません。
3 我が国は,国際社会における法の支配を長く重視してきています。国家は国内事情のいかんを問わず国際法に基づくコミットメントを守ることが重要であるとの強い信念の下,昨年の韓国大法院の判決並びに関連の判決及び手続により韓国が国際法違反の状態にあるとの問題を解決する最初の一歩として,本年1月9日に日韓請求権協定に基づく韓国政府との協議を要請しました
4 しかしながら,韓国政府がこの協議の要請に応じず,また,韓国大法院判決の執行のための原告による日本企業の財産差押手続が進む中,何らの行動もとらなかったことから,5月20日に韓国政府に対し,日韓請求権協定第3条2に基づく仲裁付託を通告し,仲裁の手続を進めてきました。
しかしながら,韓国政府が仲裁委員を任命する義務に加えて,締約国に代わって仲裁委員を指名する第三国を選定する義務についても,同協定に規定された期間内に履行せず,日韓請求権協定第3条の手続に従いませんでした。

しかし、韓国政府はこれらの手続のすべてをすべて無視し、2019年7月19日には、「違法状態解消のための日本政府からの要求を完全に無視した」という意味での国際法違反も確定しています」

日本が要請した仲介手続きに韓国が応じて話し合いに応じていれば、ここまでもつれなかったのです。
それを両国関係がもつれることが戦うことだと錯覚しているムン政権は話あいにも応ぜず、この「国際社会における法の支配」を覆した除隊を4年間も放置しました。
日本側からすれば、平然と国際法のルールに従わない韓国に愛想が尽きたということです。
以後日本は、本件訴訟で一貫して、「『旧朝鮮半島出身労働者』が勝訴し、日本企業に不当な不利益が発生するような事態が生じれば、日韓関係に深刻な事態を招く」と厳しく警告し続けてきました。

この間の日本の非妥協姿勢を見て、これがただの脅しではないとわかってきたので、駐日韓国大使もこんなことを言いだす始末です。

「尹大使は日本企業の資産を現金化した場合「韓日関係がどうなるか想像もしたくないが、おそらく韓国企業と日本企業の間に数十兆、数百兆ウォン(数兆-数十兆円)に達するビジネスの機会が失われる恐れがある」との見方を示した」
(朝鮮日報前掲)

ま、だから、韓国大使は財団を作るから日本に協力しろ、という妥協を要求してくれ、という「和解案」を出しました。
言うに事欠いて、日韓関係はオシマイだぞ、だから徴用工財団を作って、お詫びの言葉とカネを出してくれ、とりあえず韓国政府が建て替えとくからさぁ、というのですが、もうお忘れか慰安婦財団の顛末。
ちょっと前に他人様に煮え湯を飲ましておいて、またぞろ同じことを言い出しなさんな。
ついでにホワイト国に戻してもらえれば、ユン政権の得点となって万々歳。
あんたねぇ、ここまで来てもまだわからないのですか。
いつまでそんなムシのいいこと言っているのでしょうか。

そもそも現金化なんて言っても、押さえたのは知的所有権で、(三菱重工の商標権と特許権)をどこにどうやって売るんだつうの。馬鹿ですか。
前々から書いてきてはいますが、本気で日本に自称「徴用工」訴訟を戦うつもりなら、こんな知的所有権など狙いません。

差し押さえを司法が認めているのですから、転売することが簡単な資産はいくらでもあるはずです。
在韓の事務所や土地のような不動産、預貯金、債券類、株式、あるいは車両でも、機材でもよかったのです。
よく差し押さえすると、債権者らが事務所の機材にベタベタと札を貼っている、アレです。
それをなぜか原告団は、わざわざもっとも売却しにくい商標権と特許権を標的にしています。

そんなもん売れるわきゃないしょ。
三菱重工の商標を買う馬鹿がどこかにいますか。買ってどうするのでしょうか。
三菱マークをつけた粗悪品でも売りさばくしか使い道がありません。

あまりに馬鹿げた「現金化」戦略だったために、私はすでに中国企業あたりと売買の手筈が済んでいると裏読みしてしまったほどです。
というわけで、ここで最高裁が「現金化」のゴーサイン判決を出したら、かえって困るのは原告団と出した司法の方なのです。

こんがらがった糸玉をどういじりまわしても無駄です。
迷った時は初めに戻りなさい、韓国さん。
日韓請求権協定第3条(1)に基づく「外交的協議」を受け入れることです。

 

2022年8月22日 (月)

ムン政権、日本哨戒機には照準レーダーを照射しろと命じていた

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さぁ夏休みも終わり再開です、とおもったら過去記事を手違いでアップしてしまいました。(夏ボケかぁ)
もうしわけない、気を取り直してこちらが本記事です。

韓国とつきあっていると、韓国の最大の資源こそ反日ネタではないかと思うのですが、なにせコリアン・マイダス王が触れると、触ったものすべてが反日ネタになってしまうのですから、これは一種のマジックです。 
たとえば、慰安婦問題、徴用工判決、そして今回のレーダー照射事件、火のないところに煙をたて、それを日韓のメディアが扇ぎまくって大火事にするという手口ですから、日本はこんな馬鹿げた手には乗りませんよと、終了を宣言してしまいました。

自称「徴用工」最高裁現金化判決も延期だそうですが、これでこちらも詰みましたね。
これについては次回に。

現在日韓は防衛当局間のテーブルが存在しない状況です。
理由はひとつです。
このレーダー照射事件を日本は軍事威嚇行為とみなしており、その原因究明がないかぎり、同じテーブルに座るつもりがないからです。
韓国側は「障害があれば」などとおとぼけですが、レーダー照射事件の原因究明が必至だということは、今年4月にユンが大統領就任前に日本に派遣した政策協議団に対して岸信夫防衛相が直接に伝達しています。

また、6月にシンガポールで行われた「シャングリラ会合」の日米韓防衛相会議では、岸防衛相はイ・ジョンソプ(李鐘燮)国防長官と目も合わせなかったと伝えられています。
日韓関係には、自称「徴用工」訴訟だのなんだのと小骨がたくさん引っかかっていますが、このレーダー照射事件も日本は決してうやむやにする気はないということです。

さすがの韓国もそれはわかっていて、ユン・ソクヨル大統領も「関係正常化に意欲」を持っているそうですが、あいかわらず「日本側のスタンス」が問題だそうです。
やれやれ、今さら日本になにをしろというんでしょうか。日本側はその主張を理路整然と証拠資料つきで事件直後から開示しているのですが。

「【ソウル聯合ニュース】韓国の国防部関係者は25日、2018年以降事実上中断している日本との局長級による政策実務会議を再開させる方針を明らかにした。「障害があればそれも改めて検討する協議を本格的に推進する」という。
韓国政府は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、日本との外交関係改善に意欲を示しており、国防当局の関係正常化にも乗り出す考えとみられる」
(聯合022年7月25日)
韓国国防部 日本との高官級協議再開推進 | 聯合ニュース (yna.co.kr)

さて、そうこうしているうちに、レーダー照射事件の裏側を、中央日報が報じてしまいました。
ちなみに、この事件についても、日本は誠意ある対応が得られないとして協議の打ち切りを宣言しています。
これが今に至る日韓国防レベルの協議中断の始まりです。

「防衛省としては、韓国駆逐艦による海自P-1哨戒機への火器管制レーダー照射について、改めて強く抗議するとともに、韓国側に対し、この事実を認め、再発防止を徹底することを強く求めます。更に、これ以上実務者協議を継続しても、真実の究明に至らないと考えられることから、本件事案に関する協議を韓国側と続けていくことはもはや困難であると判断いたします。
 本公表が、同種事案の再発防止につながることを期待するとともに、引き続き、日韓・日米韓の防衛協力の継続へ向けて真摯に努力していく考えです」
(防衛省 『韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案』)
海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを向けた韓国海軍艦艇の事件に関|防衛省 (mod.go.jp)

韓国政府と海軍は大騒ぎを演じて、日本軍にいじめられたと、国際社会にまでイガンジル(触れ回る)したのですが、今は種も尽き果てたとみえて沈黙していました。
ところが実際は、日本にだけは特別な交戦規定があったようです。まさに赤恥です。

「8月17日、与党「国民の力」の申源湜(シン・ウォンシク)議員によると、2019年2月軍当局は「日哨戒機対応指針」を海軍に通達した。これはその年1月に作成した「第三国航空機対応指針」とは別途の指針だ。
「第三国航空機対応指針」は公海で第三国の航空機が味方艦艇に近づいた場合、段階的に対応するよう指示する内容を含んでいる。第三国航空機が1500フィート(約457メートル)以下に降りてきて近くまで接近すれば、味方艦艇は相互を識別した後、通信で警告するなどの4段階の手続きに従って行動するよう定めている。1次警告が通じなければさらに強硬な内容のメッセージを2次として発信しなければならない。
ところで「日航空機対応指針」は「第三国航空機対応指針」と比べると、1段階さらに追加された5段階となっている。日本軍用機が2次警告通信にも応じず近距離を飛行した場合、「追跡レーダー照射」で対抗するように規定した。追跡レーダーは艦艇で艦砲やミサイルを狙うために標的の方向や距離、高度を測定するレーダーだ。射撃統制レーダーと称したり、日本では火気管制レーダーとしても使う」
(中央日報日本語版2922年8月18日)
文政府「日本哨戒機に追跡レーダー照射しろ」…事実上の交戦指針(1) | Joongang Ilbo | 中央日報 (joins.com)

簡単に説明しておきます。
ここで中央日報が「追跡用レーダー」と呼んでいるのは、下の写真のアンテナ中央で電波ビームが集中できるようにとんがっている指向性レーダーのことです。ちなみに「火気」は誤植で、正しくは「火器」ですが。

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使い方も一般の海上警戒用レーダーとは違って、探査ビームをクルクルまわさずに、標的に対して真正面からぶつけて速度や方位などを測定し、瞬時にデーターを対空ミサイルに送って誘導するのが仕事です。

当時日本側は、照射を受けた際、P-1搭乗員が韓国駆逐艦の火器管制レーダーが作動しているのを目視で確認しており、日本機に向けられた写真もあります。
下写真の赤丸で示したのが火器管制レーダーですが、日本機を指向しているのがわかります。

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防衛省
韓国海軍レーダー照射事件について日本側が最終見解を発表(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

当時P-1は、発射の意図を韓国側にただしましたが、応答はありませんでした。
韓国側は、日本側の無線による問い合わせにも後日、無線が微弱で聞こえなかったとのお粗末な言い訳をしていましたが、日本がキャッチできなかった北朝鮮の漁船の救助信号をとらえているくらいに優れた無線機をお持ちなのに、おかしいですね。
低空で威嚇を受けたと主張しておきながら、頭上で送信されたような日本機の問い合わせ通信を受信できなかったとは、不思議ですね。

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防衛省

防衛省は補足説明資料で「レーダーの種類と特徴」を解説しており、事件当時の韓国レーダー波を公開して、航海用レーダーとは別種の火器官制レーダーが発射されたことを明らかにしています。

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防衛省

ところでこの火器管制レーダーを標的に向けて発射することは、戦闘準備行為だと国際的に認識されています。
いわば、安全装置をはずした銃を相手に向けて、あと少し引き金に力をいれれば銃は発射されるという状態がこのレーダー照射でした。
これは潜水艦が魚雷発射管の扉を開けるのと同様に、国際的には戦闘準備行為だとされています。
対空ミサイルが発射された場合、これだけの至近距離からの攻撃を回避するすべはないので、自衛隊機は瞬時に撃墜されていたはずです。

ならず者国家らに国際法を講義してもセンないのですが,この事件発生位置は日本の準領海であるEEZです。

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先日、中国のEEZに向けての弾道ミサイル演習でも説明しましたが、EEZで許されているのは漁船や貨物船などの航行で、軍用艦船は無害通航することはできても、沿岸国の承認なくして軍事行動をとることはできないことが国際海洋法で定められています。
管制用レーダー照射は立派な戦闘行為ですから、国際法違反なことはいうまでもありません。

しかも、防衛省が公表した当該艦の写真を見ると、韓国海軍所属であると示す海軍旗・軍艦旗の類が掲揚されていません。(2枚上の写真参照)
通常、軍艦は航行中に海軍旗を掲揚するのが国際ルールで、ましてや他国のEEZ内を航行する際に掲揚していないのは所属を隠匿し隠密裏に行動する意図があったと思われてもいたしかたない行動です。
ま、この韓国軍艦は、北朝鮮の不審船と落ち合って何事か行い、それを監視にきた沿岸国航空機に向かって逆ギレして「お前、落とすぞ」と凄んだわけですから、まことにぶっとんだ所業です。
相手が自衛隊という世界で一番紳士的なところでよかったですね、さもなくばこの韓国軍艦は今頃沈められても文句はいえませんでしたらね。

さて当時、韓国は、日本のP1哨戒機が、超低空で威嚇飛行をしたからやむなく警告でレーダー照射したと言い張って、下写真のようなわけのわからない合成写真を世界に配布しました。 
どーでもいいですが、よく見るとこの韓国駆逐艦は甲板に一般客を大勢乗せていますね。
大勢客乗せて作戦行動してたんだ、面白い国だなぁ。

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韓国政府動画

ちなみに韓国が「救助活動」をしていたという海面は、初めは大荒れといいながら、実は写真でもわかるようにベタ凪。
救助対象の北朝鮮の漁船らしきものには、不審船によくみられるアンテナが林立しているといった具合に、いったいなにしていたのやら。
まぁ、常識的に考えれば、他人さまに見られたくない密事をしていたと考えるのが妥当でしょうが、ほんとうのところはわかりません。

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織田邦男元空将は、海面の曲率を勘案しても、機体の長さ38mから推測すれば、高度約266mであったと推測しています。 
私はP1が飛んできた厚木飛行場の脇で育ったもので、滑走路に低空で進入してくる航空機は子供の時から日常的に見てきました。
くだんのP1と同サイズのP3Cの着陸風景もなんどとなく見ていますが、韓国はP3Cのような横幅が30.4mもある4発エンジンの大型機が高度60mで頭上を通過するすさまじさを実感で分かって言っているのでしょうか。 

下から見上げると、実感としては空を覆い尽くすといったかんじです。下の写真は、それを合成してみた韓国のJTBCの映像です。

Jtbcikaku1_2http://netgeek.biz/archives/135469

誤解なきように。、これはあくまでも真上を、韓国の言っているとおり60mで頭上を通過したらこういう感じだということです。
しかし、韓国が言うように距離は韓国の主張でも、韓国艦と日本機の距離はこのようなものでした。


「高度60から70メートルで距離1.8キロ、22日は、高度30から40メートルで距離3.6キロまで接近したと説明しました」
(NHK2019年1月23日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190123/k10011788661000.html

韓国側の主張を丸飲みしたとしても、両者の距離は「国際民間航空機関」(ICAO)が作った国際民間航空条約(シカゴ条約)の規範よりもはるかに遠くに離れています。 

Raderiiwake6 防衛省HPhttp://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/28z_1.pdf 


「●国際民間航空条約第2付属書
第4章  有視界飛行規則
a)都市又は集落の過密地上空、人野外会場で航機から半径600m以内。最も高い障害物300m(1,000 a)」

シカゴ条約では通過する対象から半径600m離れろと言っているわけで、韓国の主張どおりだとしても最接近距離で1800m~3600mです。 
はて、なんの問題があるんでしょう、韓国さん。

いえいえ、問題などあろうとなかろうと、ムン・ジェイン政権は初めから「日本の哨戒機が接近したら場合によっては火器管制レーダーを照射すべし」という「日哨戒機対応指針」を韓国海軍に出していたのです。
楽韓さんは、こう書いています。

「うん、まあ。ムン・ジェイン政権だったらやりかねないな、とは思います。
 そもそもムン・ジェインが側近であったノ・ムヒョン政権時代にも同様の話はありまして。
 ノ・ムヒョンは「韓日関係に対する特別談話」というものを出したことがあります。
 中味はかなり抑えたものになっているのですが。
 本来であればほぼ宣戦布告に等しいものが出されていたのだという話があります。当時の官僚がほぼ全員で説得して当たり障りのない内容にしたと。  竹島に近づく日本艦船は撃沈せよ、との命令を出していたとの話も出ています。
同時期に駐韓アメリカ大使は「韓国が狂った行為に及ぶのではないかと憂慮している」との本国に公電を打っていたことがリークされています。
ムン・ジェインはそのノ・ムヒョンの劣化コピーでした。
 なので、こうした指針が出されていても不思議はないですし」
(楽韓8月18日)
ムン・ジェイン政権、「日本の哨戒機が近づいてきたら火器管制レーダーを照射しろ」との指針を大統領府が作成していた: 楽韓Web (rakukan.net)

まぁ、そんなところです。
ムンが直接に落とせという命令を出しており、それがもっとも悪いタイミングで発見されてしまったために度を失った海軍司令部がレーダー照射を命じたのでしょう。

憶測になりますが、これが初回ではないはずです。
情報畑を歩いてきた、元空将補の鈴木衛士氏は、自衛隊は日常的に瀬取り監視を強化している最中に、韓国艦艇の不審な動きにぶつかったとして、こう述べています。


「今回、防衛省が動画を公開したことによって韓国は「想像以上に自衛隊がこれらに関わる多くの情報を入手している」という事実に気付かされた。なぜならば、公開された動画で「クルー員らの音声が公開されなかった部分にこそ、問題の本質に迫る重要な情報が含まれている」ということを察知したからである。
これは、日米韓の軍事中枢で活動している情報将校なら容易に想像がつくことであり、韓国軍にも日米の情報に精通した情報将校はそれなりに存在している」
http://agora-web.jp/archives/2036878.html

海自の哨戒機が能登半島沖を監視飛行していたのは、この海域で韓国艦艇がなんどとなく不審な動きをしており、それが北の瀬取りと関連があると推測していたからです。 
この当該のクァンゲト・デワンは4回も監視活動に引っかかっていて、この船が出す電波情報は哨戒機によって、何回となく正確にモニターされていたと考えられます。 
おそらく、既に火器管制レーダーすら複数回照射されていたかもしれません。 
今回あえてレーダー照射事件の公開に日本が踏み切ったのは、かねてから不審な動きがあった韓国艦艇が、北の不審な「漁船」とドッキングしていた現場を押さえたからです。
こういう背景があるから、当時から嘘八百並べ立て、いまも日本の対応次第だ、なんて言っているのかもしれません。

かくして、またひとつ韓国の反日ネタが自爆していきました。チャンチャン。

 

 

 

2022年8月21日 (日)

日曜写真館 ほのぼのと夜明けつ嵐あとの花

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さえざえと水蜜桃の夜明けかな 加藤楸邨

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また吾も野鳥の群と夜明け待つ 森田智子

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人の世に月見草あり夜明けあり 星野立子

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波を食う巨人が歩く夜明けの浜 金子兜太

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虫の音に風誘ひ夜明け来るらし 高橋馬相 

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野の朝日山の夕日を夏休 三橋敏雄

 

2022年8月15日 (月)

暑中お見舞い申し上げます

 

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暑中お見舞い申し上げます。
本日から土曜日まで夏休みをとらせていただいております。
再開は日曜日からです。

                           ブログ主敬白

2022年8月14日 (日)

日曜写真館 幾たりか我を過ぎゆき亦も夏    

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ゴビの夏悟空のごとく飛びにけり  佐治玄鳥

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高根より礫うち見ん夏の海 池西言水

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 われら十二歳の夏にしあれば川鋭し 清水哲男 

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弟子となるなら炎帝の高弟に 能村登四郎

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夏迎ふペプシの缶を振りながら 櫂未知子

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火のようにさみしい夏がやってくる  近三津子 

〇お知らせ
明日8月15日月曜日から20日土曜日まで6日間、お盆休みをとらせていただきます。
再開は21日日曜日からです。
皆様もよい夏休みをお過ごし下さい。
                                                    ブログ主敬白

2022年8月13日 (土)

ウクライナ戦争の教訓に学ばない中国軍

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では実際に、今の中国軍は台湾攻略をどう考えているのでしょうか。
福島香織氏が、環球時報に掲載されている元南京軍区副司令の王光洪中将の記事を紹介しています。
※王光洪 環球時報2018年3月27日『台湾武力統一はどのように戦うのか、六種の戦法で三日で攻略できる』(『武统台湾怎么打?解放军中将:六种战法三天拿下』)
武统台湾怎么打?解放军中将:六种战法三天拿下|解放军|台湾|武统_新浪军事_新浪网 (sina.com.cn)
福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.857 2022年8月11日

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王洪光中将 環球時報

王元中将は、台湾侵攻の主力を担う南京軍区でしたから、景気のいい大風呂敷を拡げています。
なんせ48時間で台湾の主要地点を制圧してみせると言うんですから、まるで4日間でキーウ陥落させまーすと宣言して侵略を始めたロシア軍とそっくりです。

台湾海峡を簡単に通過できると思っていることのほうが、かえって驚きです。
よしんばできても、侵攻軍が今のロシアのウクライナ侵攻のように長期化した場合、海からの補給線を遮断されて孤軍になりますが、いいのでしょうか。
台湾は地続きのウクライナと地続きのロシアよりいっそう兵站構築が難しいのですが、ロシア軍がなぜ4日間でウクライナを落とせなかったのか、少しは学ぶのですな。

ここで王は、「六種の戦法」を開陳しています。要約するとこのようなもののようです。

①火力戦。解放軍ミサイル部隊によるミサイル攻撃を中心に、空軍ミサイルの補助的攻撃で台湾の重要目標(軍事施設)の三分の一を破壊し、制圧する。48時間以内でその機能を喪失させ、その後、無人偵察機で上空から監視し、散発的に復活した軍事力を殲滅する。

②目標戦(上陸戦)。戦争開始前に決めた目標を、破壊、制圧、奪占していく。すでに火力戦で戦闘能力を無力化しているので市街戦の必要もなく、4-8万の兵力で72時間以内に可能。

③立体戦。海岸線からの上陸だけでなく、空挺部隊による敵後垂直上陸、港湾、飛行場への上陸と複数の方法を組み合わせる。台湾海峡の台湾に近いところに何十隻かの揚陸艦とヘリコプター搭載準空母を配置する。

④情報戦(電磁、ネットを含む)。味方の通信ネットワークを保護しながら、敵方の通信を攻撃破壊し、制通信権をうばう。これは制空権、制海権を奪う前提となる。

⑤特殊作戦。わが軍各戦区にはすべて特殊戦旅団があり、台湾作戦に集中することがよい演習の機会となっている。特殊戦任務は、まず斬首作戦(トップ、司令官の殺害)である。

⑥心理戦(法律戦、世論戦を含む)。火力によるハードキルと、心理によるソフトキルを組み合わせる。ハードキルの攻撃と威嚇のもと、脆弱になった台湾軍の心理状態を利用し、心理攻撃を許可する。

ざっと読んだだけで、書かれたのがウクライナ戦争前なことを考慮するとしても、あまりにもウクライナ戦争を学ばなさすぎます。
内容は一見盛りだくさんですが、どれもこれも今までチョイ出ししてきた中華流戦法を体系的に並べただけのものです。

そもそも②の目標戦(上陸戦)で、「4万から8万の兵員で主要目標を72時間以内に制圧できる」とあっさり書いていますが、昨日見てきたようにそれ台湾軍や米軍が無抵抗で、どうぞどうぞお渡り下さい、と台湾海峡を通過させた場合の楽観的最大値にすぎません。
ありえないっしょ、そんなこと。

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環球時報

③の立体戦(ヘリボーン・空挺作戦)ですが、これが成功する唯一の条件は、完全な奇襲攻撃が成立し、航空優勢が確保できた場合だけです。
低速のヘリや輸送機が近代的防空網を有する敵を真正面から強襲した場合、瞬時に壊滅するのは襲った側のほうです。
これはウクライナ戦争でも明らかで、いまやロシア軍のヘリはウクライナ兵のスティンガーに怯えて姿を隠してしまいました。

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④の情報戦ですが、いかにも超限戦大好きの中国軍らしいものですが、これはいままでさんざんやってきた宣撫工作と偽情報発信の延長線上で、侵略をしながら今さらナニ言っているんだという類です。
たぶん、デタラメな情報をスマホやフェイスブック、SNSの偽装サイトから発信したり、時には電波を乗っ取った島内のテレビ・ラジオ局の放送を通じて、攪乱するつもりでしょう。
また、「統一国家法」に基づき、国家分裂罪を台湾民進党に適用し、指導者たちを拘束、殺害することを呼び掛け、戦争状態においてこれを実行したものはには報奨を出すくらいのことはするはずです。
さしずめ山上某など、人民英雄勲章と報奨金をもらって、銅像の一個も作ってもらえることでしょう。

このような情報攪乱、偽情報の拡散、指令網の攪乱といった偽旗作戦は、2014年のクリミア侵攻では有効でしたが、今回はウクライナ側によって徹底的に研究され尽くしており、さっぱり効果が現れませんでした。
むしろウクライナ側の発信する宣伝のほうが、はるかに強力でした。

台湾も、いままで絶え間なく60年近く中共の宣伝工作を受け続けてきた国です。
日本と違って情報工作に対してひ弱ではありません。

王は、電磁パルス兵器、カーボンファイバー爆弾を必須の武器だ、と書いていますが、台湾は代替の指揮系統網を用意しているはずですし、そんな電磁パルス兵器を使用すれば、必ず米軍から同種のもので報復を受けます。試してみますか、王さん。

⑤の特殊戦ですが、具体的には斬首作戦を指します。
ゼレンスキーをワグネル軍団を使って真っ先に暗殺しようとしましたが、英軍のSASによって一蹴されました。
この斬首作戦を、中国は台湾指導部への恫喝の手段としてさんざん見せびらかしたために、いまや鉄壁のガードが出来上がっているはずです。

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環球時報

このように見てくると、おそらく中国軍が一番頼りにしているのは、どうやら最初の①の「火力戦」(ミサイル攻撃)のようです。
これも、ウクライナ戦争の教訓をさっぱり学んでいません。
ロシアがウクライナに雨あられとばかりにミサイルを打ち込んだことは、よく知られています。
その数、実に3千発と言われています。

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【ウクライナ侵攻軍事シナリオ】ロシア軍の破壊的ミサイルがキエフ上空も圧倒し、西側は手も足も出ない|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

実際に西側でも、ウクライナ戦争が始まる前までロシアのミサイルの脅威に対してこう考えられていました。

「ロシア軍はウクライナの首都上空を埋め尽くすほどのミサイルを援護に使いながら、ウクライナの奥深くまで進軍するだろう。空からの攻撃を得意としてきた米軍やNATO軍はもはや、近づくこともできないかもしれない。(略)
米シンクタンクのランド研究所でロシア軍の研究をしているダラ・マシコットは、「イスカンデルは、相手に壊滅的な打撃をもたらす」と指摘する。「飛行場や軍の基地などの標的に対して用いられ、その破壊力はかなりのものだ」
だが専門家たちが真に注目しているのは、イスカンデルと同時に用いられる可能性がある、そのほかの武器だ。たとえば自走式多連装ロケットランチャーBM27「ウラガン」や、戦車に搭載可能な自走火炎放射システム「TOS1」などだ。「(これらの武器が使われれば)ウクライナの防衛能力に大きな打撃と混乱をもたらすことになるだろう」とマシコットは述べた」
(ニューズウィーク2022年1月21日)

実際にこの最新鋭イスカンデルを始め、大小ありとあらゆる種類のミサイルがウクライナに打ち込まれましたが、いまウクライナはどうなっていますか?
「空を覆い尽くすような」ミサイル攻撃に耐えきれずに白旗を掲げたでしょうか。
いえ、凛として戦う姿勢を保ち続けています。

では、ウクライナが世界でも飛び抜けて優秀な防空システムを持っていたのでしょうか。
いえ、むしろ劣っていました。
ウクライナの防空システムは、旧ソ連の旧式なもので、亜音速の目標に対してはそれなりに有効でしたが、高速で飛来するKh-22巡航ミサイルや軌道を変化させるイスカンデル弾道ミサイルなどには手も足もでませんでした。
そのうえ、ウクライナの防空陣はロシア軍に発見されることを恐れて、レーダー波を断続的にしか出せないため、いっそう苦しい防空戦を強いられました。

ですから、発射された3千発のミサイルはことごとく命中したはずですが、ウクライナの損害は限定的で西側が予想したような「大きな打撃と混乱」は起きませんでした。
ロシアは民心を揺さぶる目的で、ショッピングモールやアパート、学校、病院などの民間施設をミサイルの標的にしました(もちろん戦時国際法違反です)が、命中した箇所の被害は甚大ですし、その後の火災で大きな被害が出ましたが、ビルが倒壊したりする例はほとんどありませんでした。
下の写真のアパートも倒壊を免れています。

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「恐ろしかった」キエフで生活…民間人の苦悩 取材で見えたロシア軍“無差別攻撃”の実態 (ntv.co.jp)

それは弾道ミサイルの破壊力は案外小さく、通常の爆弾の1個分しかないからです。
弾道ミサイルはバカデカイ図体ですが、その大部分は推進薬とエンジンによって占められ、先にちょこんと爆弾がついているようなものだからです。
破壊力だけなら、いま東部戦線で多用されている多連装ロケットランチャーHIMARSのほうが凄まじいのです。

王は「弾道ミサイルで48時間以内に軍事目標を破壊できる」と豪語していますが、まったく不可能です。 

「通常弾頭のミサイル攻撃では航空基地を叩ききれず、永久使用不能に追い込むことはできません。滑走路に穴を開けても直ぐに埋められてしまいます。しかし実は一時的にでも使用不能に追い込むことこそが目的だとも言えます。
開戦直前にアメリカから警戒情報を得たウクライナ空軍は戦闘機を空中退避させて初撃を回避し、整備中で動かせなかった機体などを除いて多くが残存することに成功し、その後は出撃基地を転々と変えながら今も戦い続けています。
ウクライナ空軍機が継続して戦い続けられているのは、味方の防空システムもまた残存し、地対空ミサイルを恐れてロシア空軍機が積極的な活動をしなくなり、航空優勢をロシアに確保されてしまうことを阻止できたことが大きいと言えます」
(JSF 8 月4日)
3000発のミサイル攻撃を受けても屈服しないウクライナと「敵基地攻撃能力」の是非(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

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空爆で制空権 衛星写真・SNSで見るウクライナ侵攻 : 日本経済新聞 (nikkei.com)

上写真は、開戦直後の2月24日のウクライナ南部のムィコライウ空軍基地行場の衛星画像です。
この基地は弾道ミサイル攻撃を受けて、赤丸部分に被害が確認できます。
しかし、ウクライナ軍は空軍基地の滑走路に開けられた穴をたちまち埋めてしまい、数日後には完全に復旧してしまいました。

ですから、王が言うように、弾道ミサイルを打ち込んでやったから台湾空軍は壊滅したなどと思って空軍を出すと、ロシア軍のような手ひどい損害を食うことになるでしょう。
このようにウクライナの戦訓からみれば、弾道ミサイルに対する過信は危険なのです。

福島氏は、この王の「6種の戦法」が実際実施されるかとなると、はなはだ怪しいと述べていますが、私も同感です。
これら「超限戦」は、登場した頃こそ、正規軍がここまで汚いことに手を染めるのかと驚きを持って受け止められましたが、いまや西側はハイブリッド戦として咀嚼してしまっています。

今回の演習も、あまりに作戦意図が見え見えなために、ほんとうにここまで手の内をバラしていいのかという疑問が生まれるほどです。
演習区域をあんな台湾島周辺に配置したら、海上封鎖で来ると誰もが思いますからね。
では、オーソドックスに王の「6種の戦法」で来るのかといえば、ウクライナの戦訓から見るとそれも多大の犠牲を払ってまでするものではないはずです。
ならばどうするのかといえば、はっきり言ってもう手はないのです。
だから習近平用の「筋肉ショー」(福島氏命名)として海上封鎖のまねごとをしてみた、というのが軍部の本音だと思います。
まぁ、絶対に認めないでしょうが。

このように、ウクライナの奮戦は、ロシアと中国の戦法がいかに陳腐化しているのかを満天下に暴露してしまったのです。

 

2022年8月12日 (金)

中国、渡海侵攻から海上封鎖にシフトか

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米国は、中国が台湾に対して渡海攻撃をしかけるのではなく、海上封鎖を狙う方針に転換したのではないかと見ているようです。

「米国の歴代大統領の軍事顧問を務め、戦略研究家としても知られるジャック・キーン米陸軍退役大将は8月4日、ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」が開いた「台湾の将来」というシンポジウムで注目される発言をした。
中国人民解放軍が台湾を攻略する作戦を年来の海上上陸から封鎖へと変えてきたようだ、と言うのである。そうなると戦争と威圧との区別が難しくなり、日本にとっても重大事態である台湾有事の意味も異なってくる」
(古森義久8月10日『中国の台湾攻略方法、「上陸」から「封鎖」に方針転換か』)

中国の台湾攻略方法、「上陸」から「封鎖」に方針転換か 大規模軍事演習では海上輸送路、空路を実際に封鎖 JBpress

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米退役陸軍大将が、アメリカによる戦争の悪影響を警告 - Pars Today

キーン大将は、この前段でペロシ訪問台湾について、巷間言われるように米軍が反対してはいなかったとあっさり言っていますが、それは省きます。
反対するもしないも、米軍はペロシの乗った政府専用機をビッチリと戦闘機で取り囲み、海上には空母打撃群が並走していたのですから、やることはキッチリやっています。

むしろ大事なことは、このジャック・キーン退役大将の見立てでは、中国が台湾侵攻手段を従来のノルマンディ上陸作戦のようなDデイ型上陸作戦を放棄し、海上封鎖にシフトしたのではないかという見立てです。

キーン元大将はこう述べています。

「・中国人民解放軍は最近、習近平国家主席の指令により、年来の大量の陸海空軍が台湾海峡を渡って台湾に上陸する作戦から、台湾を空と海で包囲し封鎖して台湾側を屈服させる封鎖作戦への切り替えを始めたようだ。
・この封鎖作戦は、中国側が今回、米国議会のペロシ下院議長の台湾訪問に抗議するとして始めた大軍事演習ですでに実際に示された。同演習は台湾を囲む6カ所の空海域での実弾発射などにより、台湾への通常の海上輸送路や空路を遮断した。
・習近平主席は中国首脳としては毛沢東主席以来、対外的に最も攻勢的な人物であり、台湾に対しても、台湾首脳部を奇襲により一気に抹殺する「斬首作戦」も考慮してきた。
だが最近の中国側の戦術研究では、Dデイ型の水陸両用の大規模上陸作戦は中国側の犠牲も巨大だと推定され、台湾の封鎖や隔離により、軍事だけでなく経済面での屈服を目指すことが効率的だという判断が、政治の最高レベルでも採択されたとみられる」
(古森前掲)

このような敵前上陸から海上封鎖へのシフトは大いに考えられます。
かねてから私は、中国軍による渡海作戦は物理的に不可能だと考えてきました。
表面的には、台湾と中国との戦力比は、大人と子供ほどもあります。202104_china_taiwan_2897x1024

政経電論

ただしこの戦力比がモノをいうのは、場所と時を選びます。
想定戦場は広大な中国大陸の平原大陸であり、かつ、現況では大陸全体の軍区に広く薄く分散している中国軍を一カ所に集結でき(それ自体大変ですが)、台湾軍と真正面からぶつかる会戦型戦闘に限定されます。
はっきりいえば、そのようなあつらえたような戦争は、台湾軍が大陸に上陸でもしない限り起きようがありません。

実際には、中国軍が対戦しているベトナムではジャングル戦を強いられて惨敗し、インドとはヒマラヤ高原で棒で殴り合いを演じる始末です。
台湾とは、中台間に広がる幅130~180kmの台湾海峡をなんとかして渡海して、やっと台湾にたどり着けるわけです。
ですから、中国がいくら戦車が5600台あるぞなんて威張ってみても、では台湾にどうやって運ぶんでしょうか、方法をみつけて来て下さいね、というお話です。

なにかといえば中国軍は上陸演習をして見せますが、元自衛隊関係者がボソっと「まだあんな幼稚なことやってんだ」と苦笑したレベルだそうです。

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台湾への上陸作戦を想定か 中国軍が演習公開 - ライブドアニュース (livedoor.com)

台湾を攻略するためには、おそらく100万人規模の侵攻軍が必要だろうと、小川和久氏は見ています。
それも1っカ月かけて、のんびりと100万人を送り込むのではなく、有効な戦力とするには、一時に集中的に100万人を送り込まねばなりません。

「中国側には台湾海峡上空で航空優勢(制空権)をとる能力がなく、1度に100万人規模の上陸部隊が必要な台湾への上陸侵攻作戦についても、輸送する船舶が決定的に不足しており、1度に1万人しか出せないのです。そしてなによりも、データ中継用の人工衛星などの軍事インフラが未整備のままなのです」
(NEWSを疑え!第995号(2021年10月11日特別号)

ではもう少し詳細に、中国軍の渡海能力を調べてみましょう。
第一波を送り込むのが強襲揚陸艦ですが、中国はこれを大小37隻保有していますが、これに乗せることができる兵員数は最大で1600名です。
それを40隻保有するとして約6万人程度ですが、実際は大きな戦闘車両も共に乗せますので、兵員はその3分の2以下の数のはずです。
075型強襲揚陸艦 - Wikipedia

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南海艦隊に同時就役した艦艇3隻を専門家が解説 (2)--人民網日本語

「中国の人民解放軍海軍は今年4月、初の強襲揚陸艦となる075型(推定排水量3万6000~4万トン)を就役させた。同型艦の建造を急ピッチで進めており、上陸作戦能力の向上を図っている。
ただ、米国防総省の20年の年次報告書によると、中国軍の揚陸艦は19年時点で計37隻。台湾の国防安全研究院の今年7月の論考は、強襲揚陸艦を含む中国の揚陸艦隊による「第1波」の輸送能力は約4万人で、「台湾の厳密な防衛(態勢)に対しては、まだ不足している」と分析している」

このように見てくると、中国海軍を使った渡海能力はこのようになると推測されます。

●中国海軍の強襲揚陸艦による輸送能力
・揚陸艦艇の総数                                   ・・・約370隻
・うち大型艦艇(大体満載排水量500トン以上・・・約70隻
・これによる輸送可能兵員数                      ・・・約2万数千人

固く見積もって、2万人プラスアルファていどであろうと推測できます。
こんな数では話になりませんので、恥も外聞もなく、民間のフェリーや漁船を徴発して兵隊を詰め込むしかなくなります。
実際に中国は民用船舶動員準備法、民用船舶動員計画が制定して、徴用可能な民間船には、その積載量や船主などをきちんと政府に届け出るよう義務付け、動員できる船の能力とリストを平時から把握するようにしています。
こうした制度作りの甲斐あって、中国の船舶徴用体制は充実していると言われています。

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上の写真は民間の1556トンのフェリーを改造して車両ランプをつけて26トンの水陸両用装甲車両ZTD-05の運用に対応できるよう改造したものですが、これで一度に運べる戦闘車両はせいぜいが数台にすぎません。
またこのような民間船が投入されるのは、第一波が橋頭堡を築いた後に本隊を送り込む段階に達してからのことで、真っ先駆けて、中国軍が漁船で乗り込んだら大笑いです。
実際に国共内戦時には、台湾領に押し寄せた共産軍はすべて漁船に乗っていました。

「中国軍が台湾侵攻時の海軍の揚陸艦の数量不足を補うため、民間の大型船舶を活用する方策を計画している。軍事演習では実際に活用され、数十隻単位で存在が確認されている。こうした民間船は砲弾が飛び交う最前線ではなく、強襲上陸が成功し港湾を確保した後、後続部隊を輸送する任務を負うとされてきた。だが、上陸作戦用に改修された船が確認され、米台の軍事研究者が注目している」(産経2021年10月11日)【中国軍事情勢】台湾侵攻能力を補う民間貨客船 作戦用に改修も - 産経ニュース (sankei.com) 

●民間徴用船による輸送能力
・民間徴用船数                                            ・・・63隻
・徴用船による輸送可能兵員数                       ・・・約3万~4万人

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人民解放軍空挺部隊は9個旅団体制へ - ツイッターのオタクの備忘録 (goo.ne.jp)

これに、空からのヘリボーン(ヘリによる空挺)や空挺部隊が加わりますが、見た目はハデでもたいした数ではありません。
空挺演習で空を覆う白いクラゲをみるとうわっと思いますが、一回にせいぜい一個大隊規模(300人)ていどです。
しかも軽装備なので、長期間の戦闘は不可能です。
ですから、空挺やヘリ降下を投入するとすれば、ロシアがウクライナでしたように空港などを先制制圧する目的で使われることでしょう。
ちなみにウクライナでは、待ち構えていたウクライナ軍にさんざん叩かれて、最精鋭の空挺部隊が大打撃を受けて撃退されました。
ロシア軍は空港を占領して後続の本隊を入れる予定だったのですが、それに頓挫したためにキーウ占領に失敗しました。

・空挺部隊の輸送能力
・ヘリコプター+落下傘降下兵員            ・・・数千人
・強襲揚陸艦+民間徴用船+空挺の総計   ・・・約5万人~6.5万人

しかも、中国侵攻軍は、なにも起きない平和な海を渡ってくるわけではなく、逃げようがない狭い台湾海峡を船団を組んで低速で渡ってくるのですから、いらっしゃーいの標的です。
当然、空と海中から徹底的な攻撃を受けることとなります。
台湾海軍と米海軍は潜水艦を使ったウルフパック(狼の群れ)で歓迎委員会を作って待ち受けているでしょうし、地上発射の対艦ミサイルは間断なく降り注ぐはずです。
ちなみに中国海軍がもっとも苦手なのは対潜水艦作戦であることはつとに有名です。
中国軍はハデな空母づくりに熱中して、こういう対潜や掃海といった地味な分野は手抜きしているのです。
したがって、このわらわらと押し寄せる艦船のうち、まともに無傷で台湾海峡を渡ってこれるのはどれだけになるのでしょうか。

かつてなら、兵隊は使い捨てで、国共内戦や中越戦争では、戦友の屍を踏んで突撃するような狂信的人海戦術をとりましたが、いまや兵士の質も大きく変化しました。
一人っ子政策で青年層が減少したために、人海戦術などやりたくてもできません。
一人っ子政策世代の「小皇帝」を数万単位で殺せば、政府批判は抑えきれなくなるからです。

実は中国軍は戦争が大好きなわりには実戦経験に乏しく、直近の大規模な実戦経験は1979年の中越戦争で、以後40年以上戦火をくぐったことがありません。
それがパレード用軍隊、習皇帝陛下のオモチャの兵隊と揶揄されるゆえんです。

このような実態を分かっているからこそ正面戦を諦め、サイバー攻撃に力を入れたり、首脳部にテロを仕掛けるスネークヘッド作戦を考えたりしたのだと思われます。
あるいは中国軍は台湾の航空戦力を無力化し、台湾上空の航空優勢を確保することで、自在に空から攻撃をすることができることを誇示することも念頭にあるかもしれません。
多数の艦船で海上封鎖をして日干しにすることもありえます。
しかし、これらの方法はいずれも搦手であって、決定打たりえません。
習近平が、「祖国統一を達成した」と宣言できるのは、唯一陸上兵力が台湾を制圧した時のみだからです。

ただし海上封鎖されると、平時のエスカレーションラダー(エスカレーションの階段)を戦争前で寸止めしたようにも見えるために、自由主義陣営の対応は難しくなるでしょう。

「米海軍太平洋艦隊司令部の前顧問で現在はワシントンの研究機関「AEI(アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート)」の上級研究員を務めるエリック・セイヤーズ氏は、「今後、中国軍が台湾に対して今回のような空海封鎖につながる軍事演習を30日とか90日の長期にわたり実施すると言明した場合、米国や台湾の対応は難しくなる。台湾にとっては経済面での重大な封鎖や損失につながるが、この封鎖を中国による軍事攻撃や軍事侵攻とみなすことは難しい。そのため米国の軍事対応も複雑かつ困難となる」と解説していた」
(古森前掲)

海上封鎖作戦をとられた場合、空路遮断も含みますから、与那国は海上封鎖線の内側に入ってしまい、八重山、宮古にも甚大な影響がでることでしょう。

 

2022年8月11日 (木)

唯一の華は高市氏の経済・安保大臣就任でした

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いかにも岸田さんらしい「改造」でした。
改造といっても、なんのために「改造」したのかよーわからんが、面白い部分もあるといったところでしょうか。
ま、こんな顔ぶれです。

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防衛相に浜田氏、経済安保相に高市氏起用へ 内閣改造10日実施

●新閣僚の出身派閥
・岸田派・・・3
・安倍派・・・4
・麻生派・・・3
・茂木派・・・3
・二階派・・・2
・無派閥・・・2※高市・浜田
・公明   ・・・1

よく言われることですが、これは、自民党が連合党が故に、各派閥からその議員数に応じて配分しないと、党内統治がガタつくからです。
党内の派閥はこのような議員数です。

●党内派閥議員数
・安倍派・・・97
・茂木派・・・57
・麻生派・・・52
・岸田派・・・43
・二階派・・・43
・菅G    ・・・16
・石破派・・・9
・森山派・・・7
・谷垣G・・・7
・無派閥・・・28
・不明  ・・・24

岸田氏は哀しくも第4派閥と中型派閥なので、数がモノ言う党内政治ではホドホド感満載です。
ミドル級の総理を、安倍派の松野官房長官、茂木派の茂木幹事長、副総裁の麻生派の麻生御大が支えるという構造になっています。
注目されていた菅氏の副総理は流れたようです。残念。

こういう連合党、寄り合い所帯ですから、党内の力関係を配慮しない閣僚人事はありえません。
安倍氏が長期政権足り得たのは、いうまでもなくひとりの政治家としての傑出した政治力量と世界を見通した透徹した戦略眼にありますが、泥臭い党内政治においても圧倒的多数派を占めていたからです。

安倍派は、安倍総理の逝去にも関わらず、むしろ選挙前と比べて勢力を拡大しており、今回の参院選で当選した生稲晃子、井上義行、古庄玄知の各氏はが安倍派に所属することになって100名を超えるようです。
それ以外にも、高市氏や青山氏のように無派閥でありながら、安倍氏と近い志を持った議員も数多くいました。
しかし安倍氏亡き後も安倍派は分解しないでしょう。
数が力であることを、安倍派諸公は身に沁みて知っているからです。

安倍氏が最後にバトンを託したのが高市氏でした。
高市氏は、趣味が政策立案という生まれながらの政務会長という性格で、通常の閣僚の3倍以上働きましたが、今回は経済安全保障担当大臣というバックの官庁がつかない特命大臣です。
安倍派との派閥的折り合いが悪いとされているようですから、安倍派が外務や防衛といった要職に押さなかったのかもしれません。
安倍派は元来が一枚岩ではなく、安倍氏と考え方が違う議員も相当数いましたので、こういうことになります。

どうやら今回の組閣の目的は、安倍氏カラーを排除することにあったようです。
組閣のキモとなったのは、いうまでもなく外務と防衛でしたが、外務は林氏留任ですから話になりません。
あそこまで無能なことがわかっていて、しかもいまや米国から不信感さえもたれている人物が留任とは呆れます。
国葬前に交代するわけにはいかないというのが表向きの理由ですが、この男だけは替えないと、日本が間違った外交シグナルを送ったと誤解されます。

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浜田靖一防衛相 産経

また、非常に優れた防衛大臣であった岸を退任させ、古くさいタイプの国防族浜田氏を再登板させました。
岸氏が体調が優れず、あのくだらない統一教会スキャンダルで攻撃の的になっているというのが理由ですが、この時期に浜田氏で大丈夫かどうかどうか、小野寺氏という選択肢もあったのにと思います。
早速浜田氏は、目の上のたんこぶである安倍氏側近の島田和久氏を閑職の省顧問に降格して、安倍氏カラーを排除してしまいました。

「浜田靖一防衛相は10日、前事務次官で大臣政策参与兼防衛省顧問の島田和久氏について、大臣政策参与としては退職し、省顧問として留任する人事を指示した。島田氏は安倍晋三元首相の首相秘書官を6年以上務めた元側近。7月に事務次官を退任後は、岸信夫前防衛相の判断で大臣政策参与兼省顧問に着任した。事実上の降格となるが、浜田氏は兼務は分かりにくいと指摘したという」
(産経8月10日)
島田前次官「参与」は退職 浜田防衛相が指示 - 産経ニュース (sankei.com)

浜田氏が2%反対派なのは知られていますので、これで防衛費2%は一気にわからなくなりました。

ところで党人事はこのようになっています。
茂木氏が残留し、高市氏が内閣入りしました。
高市氏は政務会長のままでも経済安保政策の司令塔でしたので、あえて内閣に入れたのは閣外に置いて自由な発言をすることを恐れたのでしょう。
なお、荻生田氏が総務会長です。

         ●党人事
         ・幹事長 ・・・茂木敏充(茂木派)
         ・政調会長 ・・萩生田光一(安倍派)
         ・総務会長 ・・遠藤利明(無派閥)
        ・選対委員長 ・・森山裕(森山派)

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高市早苗経済安保大臣 産経

ただしこのズータラした組閣の唯一の華が、高市氏の経済安保担当相であることは確かです。
高市氏は、今米国とすぐに協議せねばならない経済安全保障担当ですから、日米2+2で半導体サプライチェーン問題、機微技術などの輸出管理問題、セキュリティクリアランスなどの制度設計と法改正問題などといった主要分野で、たっぷり見せ場があります。
高市氏は政調会長時代から、経済安保政策の推進役でした。

「自民党の高市早苗政調会長は28日、宮崎市で講演し、政府が来年の通常国会に提出を目指す経済安全保障推進法案の早期成立に意欲を示した。米中両国の覇権争いが続く中、必要性が高まっているとして「しっかりと議論し、一刻も早く成立させるのが今ほど重要なときはない」と強調した」
(産経2022年2月10日)
高市氏、経済安保室長更迭「残念だが早く法整備を」 - 産経ニュース (sankei.com)

うまく運べば、安全保障補佐官の岸前防衛大臣を側近に置いて、日米・台湾を結ぶ機軸になりえるキイポジションかもしれません。
私は外務、防衛で高市氏の手腕を見たかったのですが、風当たりが強い両大臣よりはこのシフトのほうがよかったのだ、と考えましょう。
そう考えないとやってられんわ。

岸田さんに「無風の3年」など来そうにありませんね。

〇お知らせ
すさまじい暑さ、いや熱さで、ジジィは相当にへばっております。
昨日も炎天下に外仕事を してクラっと。ああ、みっともない。
来週8月15日月曜日から20日土曜日まで6日間、お盆休みをとらせていただきます。
再開は21日日曜日からです。
よろしくお願いいたします。
                                                    ブログ主敬白

 

 

2022年8月10日 (水)

岸田氏の「ヒロシマ・アクション」の虚しさ

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8月になると季題のようにやって来るのが、「核兵器廃絶の願い」です。

「長崎市の田上市長は、ニューヨークで開かれているNPT=核拡散防止条約の再検討会議で演説し「長崎が最後の戦争被爆地になるように」と述べ、国際社会に向けて重ねて核兵器廃絶を訴えました。
ニューヨークの国連本部では、今月1日からNPT=核拡散防止条約の再検討会議が開かれていて、長崎市の田上市長は5日、核兵器廃絶を目指す世界の自治体で構成される「平和首長会議」を代表して演説しました」
(NHK2022年8月6日)
長崎市長 NPT再検討会議で訴え “長崎が最後の戦争被爆地に” | NHK | 核兵器禁止条約

私は、広島の平和公園に押し寄せて、ギャーギャーと喚くことが「核廃絶運動」だと勘違いしている運動家のみなさんより、広島・長崎の首長さんのスピーチのほうがよほどマシとは思っているのですが、聞かされるたびに虚しい気に襲われます。

原爆がなくなって欲しいという気持ちは、同じ日本人としてよくわかります。
ただし気分の上だけでは、です。
ただの気分ではなく、これに具体的政治アクションの衣を着せると、岸田氏のようになります。

岸田首相は広島選出ということもあって核廃絶に熱心で、おそらく野党に居たら核兵器禁止条約推進を叫んでいたことでしょう。
岸田氏は、NPT再検討会議でこのような演説をしました。

「日本の首相の出席は初めてだ。首相は被爆地・広島選出で核軍縮をライフワークとしている。首相は演説の冒頭、ウクライナを侵略したロシアが核による威嚇を行ったことに触れ、「核兵器の惨禍が繰り返されるのではないかと深刻に懸念している」と批判し、「核兵器による威嚇、使用はあってはならない」と訴えた。行動計画は「ヒロシマ・アクション・プラン」と名付け、〈1〉核兵器不使用の継続〈2〉透明性の向上〈3〉核兵器数の減少傾向維持〈4〉核兵器不拡散と原子力の平和的利用〈5〉各国指導者らの被爆地訪問の促進――の5本柱を掲げた」
(読売8月2日)
首相、核軍縮へ「ヒロシマ・アクション・プラン」表明…若者の被爆地訪問基金に1000万ドル拠出 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

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読売
善意だけは伝わってきますが、ほとんど無意味な善意です。
ざっと読んでも、この岸田氏の「アクションプラン」は核保有国、ないしは核兵器願望国の自己拘束に多くを依存しすぎています。
これらの国は核を保有することによって巨大な国益を確保しているわけであって、彼らが突如善意に目覚めて自主的にそれを手放すことはありえません。
たとえば「透明性の開示」といいますが、イランや北朝鮮が善意で核開発の進捗状況を見せてくれますか、考えるまでもなくまったく無理な注文でしょう。
もっともリアリティを求められる「核兵器数の削減」に至っては、ロシアはこのNPT再検討会議に合わせてまるであてつけのように、核軍縮の査察を拒否しています。
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「ロシアは8日、「新戦略兵器削減条約(新START)」に基づいた戦略核兵器の査察の受け入れを「一時的に」停止するとアメリカに通告した。
ロシアの外務省は、アメリカがロシアを出し抜こうとしているとともに、アメリカ国内の核の査察を行う機会をロシアから奪ったと主張した。また、ウクライナ侵攻を受けた対ロ制裁により、アメリカとロシアの関係性が変わったと述べた。
新STARTは2011年に発効。米ロ間で交わされている唯一の軍縮合意で、長距離核弾頭の配備数の上限をそれぞれ1550基と定めている」
(BBC 8月9日)
ロシア、核兵器査察の受け入れ一時停止をアメリカに通告(BBC News) - Yahoo!ニュース

長崎市長や岸田氏が訴えるそばから、オレはもう核軍縮から降りたと、ロシアが言っているのです。
しかしまだ核軍縮のテーブルに着いているロシアはまだましです。
世界でひとり核兵器を増産し続けて、いまだいかなる核軍縮条約のテーブルに着かない中国を、一体どうやって軍縮協議の椅子に座らせるのでしょうか。
特に中国が力を入れたのは、グアムや日本を標的にした中距離核という「使える核」の開発で、これは米露間の中距離核戦力全廃条約(INF)の盲点を突いたものでした。
これに気がついた米国はINFから脱退し、ロシアも追随したわけですが、このような中国の核を問わない核廃絶は、中国の核暴走を容認し、ひいては世界的な核軍拡の道をひらくことと同義なのです。

また北朝鮮の核には「不拡散で国際連携」といいますが、今やっている北朝鮮に対する国連制裁決議以上のものがあるなら、ぜひ岸田氏にご教示願いたいものです。
このように核開発に邁進する国、あるいは大量の核兵器を絶対手放したくない、手放したら負けだと考えている国、核軍縮の盲点をついて核軍拡に励む国々に対して、岸田氏のアクショプランがどう聞こえるのでしょうか。
残念ですが、たぶん何も聞こえないか、チラっと横目で見て、日本のような草食系国家がナニ寝言言ってやがるでお終いでしょう。

このような核保有国、ないしは核保有熱望国に対して、「核廃絶への善意」を求めるのはまったく無意味です。
核の先制不使用すらロシアは投げ捨て、核による脅迫を現実の国際政治の中で使っているのですから。

さて、シニカルに聞こえたらお許し願いたいのですが、本気で東アジアにおいて核戦争を起こさず、「長崎を最後の被爆地」にしたいのならば、米国は台湾を自国の核の傘に入れると明言すべきです。
朝鮮半島において、北朝鮮が核兵器使用をためらう唯一の理由は「核廃絶の願い」ではなく、米国から核報復を受けるからです。
だからある意味で、米国は絶対に正恩が核兵器の鞘を抜かないと信じています。
同じことは日本に対しても言えます。
日本が核開発の技術的能力は十分に持っていても各開発に踏み切らない理由は、信じられようと信じられまいと、米国が核の傘を差しかけているからです。
よく米国の核の傘など信じられるかと言う人が右にも左にもいますが、ならば試してみますか、というだけのことです。
これが、お前が核を使えばオレも使う、だから相互に使わないでおこうという相互破壊確証(MAD)です。
この相互破壊確証の関係が、東アジアでは成立しています。

ただし、台湾だけはその枠外に置き去りにされています。
ここに台湾の不安定要因の源があります。
台湾は、どこの国の核の傘の下にもいない、中国の核の脅迫の下に裸でさらされている国です。
だから、中国が弾道ミサイルを発射した場合、それに核弾頭が搭載されることを想定して対応せねばなりません。
しかし台湾には弾道弾迎撃能力(ミサイルディフェンス・MD)が不完全です。
PAC-3は配備途上で、弾道ミサイルを探知する長距離早期警戒レーダー計画(SRP)は未完成です。
しかもこれらのMDが整備されたとしても、まだ不十分です。
というのは、MDはあくまでも弾道ミサイルを打ち落とすためのシステムであって、撃たせないためのものではないからです。
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「中国は短距離・中距離弾道ミサイルあわせて1500発を台湾海峡に配備している。中国は戦闘機や潜水艦隊の増強を図り、台湾侵攻能力を高めている。
しかし、台湾のミサイル防衛システムの不備を考えれば、空爆や海峡封鎖よりもミサイル攻撃の方が中国にとってリスクは少ない。また、中国の水陸両用戦能力は依然として限定的なものである。
アメリカは、台湾が領空内の航空優勢をもはや維持できないと見ている」
台湾の弾道ミサイル抑止・防衛力‎ (ジェームズタウン財団)
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中国はリスキーな渡海作戦という手段をとるより、大量の弾道ミサイル攻撃を行うことでしょう。
開戦と同時に1000発を超える弾道ミサイルが降り注ぎ、その中に少数の核弾頭を混ぜておくかもしれません。
あるいは、ウクライナのように台湾の抵抗が強靱で、手こずった場合、ためらいもなく戦術核を使用する可能性があります。
そして米国の台湾支援に対しては、中国はロシアがウクライナで使った核兵器使用をほのめかして手を引かせるかもしれません。
だからこそ、ウクライナのようにすでに戦争が始まる前に、米国は核の傘を差しかける用意があると明言せねばならないのです。
それが、おそらく中国の台湾侵攻に対する最大の軍事的抑止となるはずです。
ペロシが国に帰って、議会において現行の台湾関係法で供与できる武器類に加えて、核の傘の提供もうたう改正法を出す動きをしただけで、きわめて強力な抑止となります。

なぜこのようなことができないのかと言えば、それは米国の歴代政権が取ってきた「あいまい戦略」を自ら放棄することになるからですが、ペロシが台北空港で踏み出した一歩は、これを見直すという宣言だったはずです。
ならばペロシはより具体的に、どうしたら台湾侵攻を断念させうるかまで説く責任があります。

そしてさらに台湾問題のみならず、仮に中国が軍事侵攻を開始した場合、核による報復も反撃のオプションとして存在すると明言することによって、初めて米中間の軍縮交渉が始まるのです。
いままでいかなる核軍縮にも乗らなかった中国にとって、初めて核軍縮を真剣に考えるきっかけとなることでしょう。

 

2022年8月 9日 (火)

与那国の緊急事態に備えなくてよいのか

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昨日はEEZ着弾について、国際法上のことに絞ってお話しましたが、今回、さっぱり話題に登ってこないのが、中国軍によって事実上の「海上封鎖」を受けた与那国です。
中国軍の演習海域は、与那国などを挟み込む方で展開されました。

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中国演習「中間線」越え、台湾近海で「常態化」指摘…軍事力「海峡危機」より拡大(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

上図で与那国島の位置を確認して下さい。
これに八重山列島・宮古列島の地図を重ねてみます。

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幻想諸島航海記/イキマ島[上] (coocan.jp)

今回の中国の軍事演習は、台湾島を海上封鎖することを想定しています。
ですから、そのためにいままで偶発的戦闘を避けるために引かれた台湾海峡の中間線を無視してひんぱんに越境してみせ、ADIZ(防空識別圏)などなきもののごとく戦闘機、爆撃機、艦艇を侵入させました。
その数実に22機。
演習も長期化し、常に台湾に脅威を与え続けようと目論んでいます。
つまり「有事の恒常化」が始まったのです。

またもうひとつの演習の特徴は、かつて日本軍が残していった海軍の軍事拠点である台湾島北端の基隆港と台北港、東部の花蓮港、そして南部の高雄港の眼前に訓練海域を設定したことです。

「軍事演習は台湾を封鎖する形で行われており、軍事的な圧力だけでなく、「経済封鎖」の試みという指摘もある。演習場所は、北部の主要港である基隆港と台北港、南部の高雄港の沖合に設定され、海運に影響を及ぼすことが考えられる」
(読売8月5日)

台湾の主要港湾の位置を確認しておきましょう。

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台北港が正式供用、「海洋台湾のハブ」期待 - NNA ASIA・台湾・運輸

この5つの大型港湾は海軍の基地であると同時に、台湾の海上輸出の一大拠点ですから、中国は台湾侵攻にあたって真っ先にここを攻撃し、海上封鎖をかけることでしょう。
台湾海峡を渡海して侵攻することは、中国海軍の戦力投射能力から見て簡単ではありませんが、海上封鎖をかけることは比較的容易です。
同時に空域も封鎖されますから、これを実行された場合、台湾は輸出入共に凍結された状態になります。

また私は台湾有事において、中国軍が台湾島東部を攻撃するために、宮古、八重山をのいずれかを攻撃する可能性があると思っています。
直接攻撃を受けないまでも、海上封鎖線の内側に入ってしまいます。
また現代の戦闘機の空戦においては与那国はもちろんのこと、八重山、宮古上空まで、わずか数分で到達してしまい、これらの離島上空は空戦空域となります。
台湾有事は日本有事であるというのが、亡き安倍氏の持論でしたが、まさにそのとおりとなることでしょう。

与那国島は1700人の住民がおり、250人の自衛隊員が駐留しています。
この封鎖は台湾だけでなく、日本領土に及ぶ封鎖です。
少なくとも、政府は早急に与那国島民の避難計画を策定する必要がありますが、具体的進展は見られていません。

「島民からは不安の声が上がる。その代表格は、糸数健一町長だ。
「これだけで島を守り切れるのでしょうか。電子戦の専門部隊とはいっても車両2台分くらいの増派で大丈夫なのでしょうか。もっと増やしてもらいたい」
「島民の避難も大きな課題です。島内での避難は防災訓練で実施していますが、島外への避難は全然やっていません。陸路では逃げられないのでフェリーと航空機で、ということになりますが、フェリーは120人程度、航空機は50人程度しか一度には乗れません。とても間に合わない」
(清水克彦2022年5月27日)
「台湾有事の最前線」に行って分かった、“日本の防衛力”の不安な実態 | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

真っ先に県民保護を訴える責任があるはずの、沖縄県知事はこんなことを他人事のように言っています。

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琉球新報

「中国が米国のペロシ下院議長台湾訪問に対抗して台湾海域に向け複数の弾道ミサイルを発射したことに、沖縄県の玉城デニー知事は4日、「米中の覇権争いをあおる状況になっては絶対にいけない」と危機感を示した。
知事は、冷静かつ平和を構築する外交が重要と強調し「中国と台湾、中国と米国の関係において、県民や国民がその不安に巻き込まれることは絶対にあってはならない」と述べた。
また、政府に対して「不測の事態はあってはならず、常に冷静かつ信頼の構築を重ねていくことを中国や米国に申し入れてほしい」と求めた」(沖縄タイムス8月5日)
沖縄・デニー知事「不測の事態あってはならず」 米中の「覇権争い」に危機感(沖縄タイムス) - Yahoo!ニュース 

はぁ、そうですか、「冷静かつ信頼関係の構築」ねぇ。
あのね、デニーさん、そもそも侵略の意志を露骨に示した中国と、それを防ごうとしている米国は、いわば火付け盗賊と消防士、台湾は一方的被害者の関係なのです。
それを全部同列に並べて「冷静かつ信頼の構築」ってどういう意味になるのでしょうか。
火付け盗賊と消防士が「信頼関係の構築」できるとでも(笑)。
消防士にや被害者に向かってナニをしろというのですかね、台湾を守るのを止めろ、防ぐのをよせ、やらされるままになれとでも言うのかしらね。

米中の覇権争いですか。わかったようなことを。
米国が、台湾を切り捨てて出来たのが今の米中関係です。
文革で疲弊の極にあった中国を救済し、国連常任理事国の地位まで与えて超大国の道を開いたのも、当時の米国です。
しかしそれは、米国は中国が台湾を武力併合しない、覇権主義には立たないという大前提があったからそうしたまでのこと。

しかしその結果、どうなりました。
強大化した中国は、約束を破って台湾を武力で併合するという姿勢を露骨に見せ始めたから、こうなったのです。
この軍事演習は、覇権主義特有の「危険な火遊び」なのです。
つまり「米中の覇権争い」ではなく、中国の覇権主義こそにすべての問題の根があります。
こういうどっちもどっち、お互いに冷静になんていう評論家づらした物言いは、中国の要求に屈しろということと同じです。

なんの解決にもならないばかりか、中国を支持することととまったく同じです。
日頃から、駐留米軍を沖縄から追い出すことにだけ熱中してきたデニー知事は、もっとはっきりとモノをいうべきですね。中国加油、他妈的台湾とね。

政府に求める必要なんかありません。
だって、リン外相はデニー氏と同じ立場ですから。

「林芳正外相は2日の記者会見で、アジア歴訪を開始したペロシ米下院議長が同日夜にも台湾を訪問するとの観測が強まっていることについて、「日本政府としてコメントする立場にない」と述べた。その上で、「一般論として申し上げると、わが国としては米中両国の関係の安定は国際社会にとっても極めて重要である」と語った」
(産経8月2日)
林外相、ペロシ氏訪台「コメントする立場にない」(産経新聞) - Yahoo!ニュース

こんな米中を同列に並べて自制を求めるようなことを言ってしまったために、米国は怒ったそうですよ。お前はどっちの味方なんだ、とね。
こんな男を内閣改造でも再登板させ、バランスを取っていた岸防衛相と高市総務会長を降ろせば、岸田政権の外交姿勢が米中どちらを向いているのかわかろうというものです。
そんなくだらないことを言うより、県知事としてやらねばならないことの第一は、沖縄県を圧迫している中国軍の不当な軍事演習に強く抗議すること。
次に、海上封鎖にさらされている与那国町長が要請している避難計画を、早急かつ具体的に国と共同で作ることです。
くだらない講釈を垂れている時じゃないのですよ、デニーさん。

 

 

2022年8月 8日 (月)

中国ミサイルを「落下」と書く日本メディア

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今回のペロシ訪台は、いままでの台湾などは見えません、見えませんとばかりにスルーを決め込んできた日本の政治やメディアに衝撃を与えたと思ったのですが、そうでもないようです。
政界やメディアはコトリともせずに、何事もなかったかのように無風で、新聞は社説で扱ったのは産経と日経のみでした。
他紙はすべて無視を決め込み、中国の弾道ミサイル着弾を「落下」と書く始末です。
安倍氏暗殺は「銃撃」と書いて、統一教会スキャンダルに逸らしてしまい、中国弾道ミサイルは「落下」と書いてごまかす。
ほんとうに言霊の国、ここにありですが、中国に弾道ミサイルを撃ち込まれても、何事もなかったかのように統一教会スキャンダル一色で時が流れていきます、私はこの現実のほうが恐ろしい。

たとえば朝日。

「中国の弾道ミサイルが日本のEEZ内に落下したのは初めてという。ただ、他国のEEZ内での軍事演習は国際法上は違反とは言い切れない」
(朝日8月4日)
中国の弾道ミサイル5発、日本のEEZ内に落下 外相会談急きょ中止:朝日新聞デジタル (asahi.com)

朝日はこともなげに「国際法条は違法とは言い切れない」なんて書いていますが、本当にそうでしょうか。
実は日本の抗議を受けた中国は同じように「国際法上合法だ」と王毅も言っています。
というか、中国は国際法なんか守る必要はないとまで言っているのです。
G7外相会談での、共同声明に対する王毅の反応です。

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「逆らう者は必ず罰せられる」中国政府 米ペロシ下院議長の訪台に…- 名古屋テレビ【メ~テレ】 (nagoyatv.com)

「王毅国務委員兼外交部長(外相)は4日、ASEAN関連外相会議出席のため滞在中のプノンペンで、台湾地区に関するG7外相声明に断固たる反論を行った。新華社が伝えた。
王部長は、「台湾海峡情勢が緊迫化した経緯は明確であり、是非曲直は一目瞭然だ。問題を引き起こしたのも、危機を作り出したのも、緊張をエスカレートさせ続けているのも米国だ。米側による公然たる挑発は悪しき前例を作った。もしこれが是正されず、これに対抗しないなら、それでも内政不干渉の原則を必要とすべきだろうか?まだ国際法を守る必要があるのだろうか?そして地域の平和を如何にして保障していくべきなのだろうか?」と指摘」
(人民網8月5日)
王毅部長が台湾地区に関するG7声明に断固反論--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn) 

スゴイね。ハナから「内政干渉原則の前には国際法など遵守する必要はない」とまで居直られてしまっては身も蓋もありませんが、そもそも中華人民共和国は建国以来一度たりとも台湾を統治したことがないことを都合よく忘れているようです。

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【チャイナ・アンセンサード】台湾・金門島:中国本土の鼻先にある戦いの最前線 - YouTube

建国以前から台湾は「中華民国」という別な国であって、武力併合しようとして台湾海峡を押し渡る「火遊びをして悲惨な結果」を迎えたのは中国の側でした。
台湾島は歴史的に一貫して中華民国が実効支配してきました。これが事実です。

では、今回、この弾道ミサイルを9発撃ち、5発をわが国のEEZに着弾させた中国の行為を、国際法上どう見たらよいのでしょうか。
一般論として他国のEEZ(排他的経済水域)内で軍事演習を行うこと自体は、通常であれば国際法上は合法です。
国連海洋法条約(UNCLOS)は、「領海」とEEZを分けて考えています。
「領海」は沿岸国の主権が及ぶ海域ですが、EEZは沿岸国の権利は、魚介類や鉱物などを含む天然資源の探査、開発、保存、管理などに限定されています。

だから「排他的経済水域」という和訳が当てられているのですが、では、沿岸国に一切の考慮を与えることなくEEZ内で勝手にドンパチ軍事演習をしていいのかといえば違います。
国際海洋法第58条にはこうあります。
海洋法に関する国際連合条約 (doshisha.ac.jp)

第58条1項は、「他国にも船舶、航空機の運用の利用の自由」を掲げています。

「第五十八条 排他的経済水域における他の国の権利及び義務
1 すベての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、この条約の関連する規定に定めるところにより、第八十七条に定める航行及び上空飛行の自由並びに海底電線及び海底パイプラインの敷設の自由並びにこれらの自由に関連し及びこの条約のその他の規定と両立するその他の国際的に適法な海洋の利用(船舶及び航空機の運航並びに海底電線及び海底パイプラインの運用に係る海洋の利用等)の自由を享有する」

これが王毅が合法だと言い張っている理由で、日本メディアはそれに追随しています。
しかし同じ第58条3項では、こうも述べて制限をかけています。

「3 いずれの国も、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この部の規定に反しない限り、この条約及び国際法の他の規則に従つて沿岸国が制定する法令を遵守する」

つまり、EEZで中国が「自国の権利」を行使するならば、沿岸国、つまり日本の「権利と義務に妥当な考慮を上払え」と言っているわけです。
いうまでもなく、日本の「権利」とは平和で安全な生存を営む権利です。
この大前提を侵しておいて「利用の自由」はありえません。
事前通告しているから、王毅が合法だと言い張っているようですが、そもそもわが国が了解してもいない一方的通告をしたからといって正当化できないのです。

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asahi.com(朝日新聞社):DF15短距離弾道ミサイル - 中国建国60周年軍事パレード -

この国際海洋法58条1項の「自由利用」原則が意味を持つのは、弾道ミサイルを撃った国に政治的意図がない立場で、たまたま沿岸国のEEZ内に「落下」したという場合だけにすぎません。
したがって、ある国がある国のEEZに威嚇目的で弾道ミサイルを打ち込んだ場合、EEZ 「自由利用」原則の枠外なのです。 

中国は今回の弾道ミサイルを撃ったのは、台湾を支援するなという「脅迫」であることはいうまでもありません。
国際海洋法の上位法である国連憲章は第2条4項でこう言っています。
国連憲章 (doshisha.ac.jp)

「第2条4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」

この国連憲章第2条4に照らして見ると、中国は日本に台湾有事において台湾を支援するなという政治的要求のために「威嚇または武力の行使」をしたわけですから、国連憲章に対する明瞭な違反です。

ですから、日本のEEZにたまたま「落下」したのではなく、そこを狙って撃ったのですから「着弾」が正しい表現です。

 

 

2022年8月 7日 (日)

日曜写真館 夏草にまだ夕暮の日の光

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夕暮は人美しく杜若  高木晴子

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夕暮ややうやう霞む町の鐘 吐月

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暮れんとす夏の夕暮尊しや 高木晴子

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夕暮や夏の柱の倚り心 尾崎紅葉

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花火待つ子等に夕暮永かりし 池辺治子

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水鳥の川わかれては夕日さす 羽公 

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夕焼けて みんな詩人に なりたがる 

 

2022年8月 6日 (土)

戦狼の遠吠え

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どうしてこう毎回毎回好戦的なのでしょうか、この中国という国は。呆れます。
習近平からすれば、秋の党大会前に、戦狼外交の効果があがらないことを糊塗するためでしょうが、こいうことばかりやっていると、次はもっと派手な軍事ショーを人民が要求するようになります。
「神聖な領土を犯されて怒れる中国人民」は、殴られ役も台湾だけではなく、今回のように日本を殴られ役に望んでくるかもしません。

事実、今回の中国の軍事演習区域A3とA4との間に、日本の与那国島、石垣島、宮古島が挟まってしまっています。
これは明らかに日本に対しての軍事的挑発であるとしか、とりようがありません。
このようなエスカレーションの階段を登れば、ロシアのように本気で戦争というバクチに手を延ばすことになります。

まるで、満州事変以降の日本を見るようです。
中国にとって南シナ海の要塞化は満州事変であり、国際司法裁判所の裁定はリットン調査団でした。
ここで国際法に従いさえすれば、中国は戦狼化する必然はなかったのです。

ところが中国は南シナ海と台湾へ向けての軍事エスカレーションの道を選択し、空母は作るわ、弾道ミサイルを飛ばすわ、大規模軍事演習をするわ、まるでシナ事変から足抜け出来ずに、米国に経済制裁を受けて戦争を始めた70年前の日本のよう。
その経済制裁は、昨日触れたように始まっていますから、この制裁と経済の崩壊が共鳴しながら中国社会を襲うことになるでしょう。
そのとき、敵は外部にいるとばかりアジって来た習近平はがどうするのか、いちど頭を冷やして日本近代史を読み直してみるのですね。
オーイ、習近平よ、その先は戦争だぞ。国を滅ぼしていいのか。

さて具体的には、台湾上空を通過し日本のEEZに着弾した弾道ミサイルはこのようなものでした。

「岸信夫防衛相は4日、中国が台湾周辺海域で予告していた軍事演習で弾道ミサイル9発を発射し、うち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)の内側に落下したと推定されることを明らかにした。中国の弾道ミサイルが日本のEEZ内に落下するのは初めて。政府は中国へ外交ルートを通じて抗議した。
中国は4日午後3時ごろから午後4時過ぎにかけ、9発の弾道ミサイルを発射し、うち5発について中国が公表していた沖縄県波照間島の南西に設定された訓練海域の中のEEZ内に落下。他の4発はいずれもEEZ外で、1発は沖縄・与那国島の北北西、2発は台湾南西、1発は台湾北部に設定された各訓練海域に落下したと推定される。船舶や航空機への被害情報は確認されていない」
(産経8月4日)
中国ミサイル、波照間島南西に 岸防衛相「強く非難」 - 産経ニュース (sankei.com)

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防衛省

防衛省のプレスリリースです。

「中国は、本日15時頃から16時過ぎにかけて9発の弾道ミサイルを発射した模様です。
そのうち5発が我が国の排他的経済水域(EEZ)内に落下したものと推定されます」
(防衛省)
mod.go.jp/j/press/news/2

中国は9発の弾道ミサイルを発射し、うち2発が台湾上空を飛び越えて、5発が日本のEEZに弾着しました。
1発は与那国島の目と鼻の先でした。
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「弾道ミサイルの幾つかは台湾の台北市の上空を飛行して台湾東部の海上に着弾しました。中国のミサイルが台湾の上空を通過するのは初めてになります。
使用された弾道ミサイルは中国側の発表動画内で短距離弾道ミサイル「DF-15B(東風15B)」の発射が確認できました。推定されている最大射程800kmの性能を持ち、DF-15の精密誘導型で機動式再突入体の弾頭を持ちます。なお今回の弾道ミサイルの発射数については各国の発表で食い違いがあります。
日本防衛省の発表 9発(うち4発が台湾上空通過)
台湾国防部の発表 11発(台湾上空通過を当初説明せず)
中国人民解放軍東部戦区司令部の発表動画内の説明CG 16発
弾道ミサイルの高度によっては遠距離からでは地球の丸みの影に隠れてしまい観測できないので、日本側と台湾側の観測数値の差はおそらくこれで説明できるでしょう」
(JSF8月5日)
台湾海峡危機:中国の弾道ミサイルが台湾上空を通過(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

こういうことをしてしまっては、日中外相会談は吹き飛ぶべくして吹き飛びました。
林外相が初めから腰砕けだったのはこの日中外相会談を控えていたからでもあるのですが、大丈夫、リン先生ならモゾモゾと下を向いて官僚が作ったペーパーを読み上げるだけですから。
しかしそれを中国の方から蹴ってしまいました。会談を蹴る意味って、わかってやっていますか。
これで会談を拒否したのは中国ということになり、外交的には日本に加点されることになります。
本当に余裕のない国です。この余裕のなさがコワイ。

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「日本政府は4日、台湾周辺で軍事演習を実施していた中国軍の弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと発表した。軍事演習はペロシ米下院議長が台湾を訪問したことへの対抗措置。カンボジアでは同日、日中外相会談が行われる予定だったが、中国側の申し入れで、急きょ中止になった」
(朝日2022年8月4日)

中国の弾道ミサイル5発、日本のEEZ内に落下 外相会談急きょ中止:朝日新聞デジタル (asahi.com)

それにしても、中国はわきまえがなさすぎます。
下院議長は米国民が選んだ、議会を人格的に象徴する存在であって、その人物に対して中国国家がこぶしをふりあげて台湾を全包囲した軍事演習をやるなど、米国民を武力で脅迫するに等しい行為なのだとわかってやっているのでしょうか。
民主主義を建国以来持ったことがなく、選挙がないから議会の意味すらわからない中国は、連邦政府と下院議長の立ち位置すらわかっていないようです。

米国は大統領と議会のバランスで成立しています。
今はたまたま両者共に民主党ですが、トランプ政権では激しくペロシは下院議長としてバトルしていました。

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トランプ演説原稿「破り捨て」は、再選阻止を誓うペロシの宣戦布告|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

中国で習近平が演説している後ろで、全人代議長がその演説文書をビリビリと破り捨てたらたぶん死刑だろうな(笑)。
米国ではそれが出来るし、議会は政府のコピーではなく、厳然と別個の存在なのです。
ペロシの「米国は台湾を見捨てない」というメッセージに対して、米国議会は超党派で支持を与えました。
ペロシが専用機で台北松山空港に降り立った数分後、待ってましたとばかりにマコーネル上院院内総務ら共和党議員25人が、連名で訪問を評価する共同声明を発表し、これが米国民全体の声であることを強くアピールしました。

これを「米国」で一括りにして、下院議長にさえ牙をむくのですから、危ない危ない。
習近平は、今回、あれは議会人のやったこと、いままでの議員外交と一緒だ、とスルーしておけばよかったのです。
身体はデカイが余裕もなければ脳味噌もない。

ところで日本ではなんだたかだか演習じゃないか、という者もいるようですが、とんでもない間違いです。
演習と名付けて大規模な軍隊を一定地域に集結させ、攻撃開始の命令一下、そのままの陣形で雪崩をうって戦争に突入することが可能です。
ウクライナ戦争においても、東部に近接するロシア領や、ベラルーシに十数万の大軍を「訓練」名目で展開させ、2月24日に一斉に国境を超えて侵攻したことは記憶に新しいことです。
つまり、「演習」と「戦争」の境は極めて低いのです。

日本も含む先進7カ国(G7)外相が出した共同声明が「各国議員の海外訪問は通常のこと」との認識を示したうえで、「それを攻撃的軍事行動の口実にすることは正当化されない」と指摘していますが、これは中国が「演習」目的で侵攻する可能性があるという国際認識があるからです。

台湾へ侵攻した場合、ウクライナ侵略規模の国際的金融・経済制裁が課せられることでしょう。
そして南シナ海は、ザ・クアッド海軍+英仏海軍によって管理されることになります。
これはすでに決まった動きで、6月のG7エルマウ・サミットでの共同声明はこう述べています。

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G7エルマウサミット共同声明 該当部分

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このG7共同宣言を現実に実体化したのが、ザ・クアッド+英仏海軍ですが、この「国際艦隊」は、南シナ海を封鎖することでしょう。
英国と日本が第2次日英同盟結成寸前なのは知られた事実です。
今後、中国がこのような愚かな緊張を高め続けるなら、同盟結成を阻むものはいません。
フランスは海外領土の大部分を南太平洋に持っており、太平洋が安定していることが絶対条件な以上、この動きに加わると見られています。

このようにいまや台湾問題は、ウクライナ戦争以降一気に自由主義陣営全体の問題として共有化されてきているのです。
これを見誤っているのが習近平です。
いくらアフリカにチャイナマネーをバラ撒いて一帯一路を作ろうとアフリカはあまりに遠く、海軍力はゼロに等しい。
台湾侵攻で舞台となるのは、あくまでも海洋なのです。

ですから仮に台湾有事が起きても、中国海軍はともに戦ってくれる者とてなく、丸裸で日米濠印+英仏と対戦せねばならなくなります。
米国一国でも到底勝負にならないのにねぇ。
え、ロシア太平洋艦隊あるって。あれはごみ箱艦隊です。

それはさておき南シナ海を自由主義諸国の「国際艦隊」が封鎖し、さらに大陸沿岸を機雷で封じ込めた場合、中国はたちまち干上がります。

中国の石油備蓄はわずか60日分しかないと言われており、軍事用が手一杯で、民生用にはまったく回らなくなることでしょう。
痩せても枯れても世界第2位の産油国であるロシアは、ギリギリで持ちこたえられますが、中国がどれだけ持つかはお慰みです。

残念ですが我が国の反応をみると、松野官房長官は3日の記者会見で、中国軍が台湾周辺で行う軍事演習に日本の排他的経済水域(EEZ)が含まれる点について中国側に「懸念を表明」したという言い方にとどまっています。

「松野博一官房長官は3日の記者会見で、台湾周辺の緊張の高まりについてこう述べた。中国の軍事演習に関しては「対象地域の海域にはわが国の排他的経済水域(EEZ)が含まれている。実弾射撃訓練という軍事活動の内容も踏まえ、中国側に対して懸念を表明した」と明かした」(産経8月3日)
訪台「沈黙」動かぬ日本 「弱腰外交」自民で高まる不満 - 産経ニュース (sankei.com)

林外相にいたっては「コメントする立場にない。第三国がでしゃばってはいけない」だそうで、こういう時は大いにでしゃばりなさい。

「ペロシ氏の訪台をめぐっては、米側から事前に通告があった。外務省幹部は「緊密に意思疎通は図ってきた。今回の訪台は米側のポリシー(政策)で決めたことだ」と語る。ただ、中国が猛反発する中、米ホワイトハウスがペロシ氏の訪台について「権利はある」と主張する一方、松野氏や林芳正外相は「コメントする立場にない」と明言を避け、対外発信には日米に温度差があった。外務省幹部は「基本的には米中の問題だ。第三国が出しゃばってはいけない」と語る」
(産経前掲)

内心はペロシの訪台をノット・グッド・アイデアだと思っていたバイデンですら、「それは米国の権利だ」と言い切ったのですから、岸田政権もそれに倣って「それは米国議会人の権利だ」くらい言ったらどうですか。
一部に林外相にはいままで中国との太いパイプがあるからという声もあるようですが、ならばミサイルをEEZという日本の庭先に打ち込む荒技をする以上、水面下で事前通告があったはずですが、そのようなものはなかったようです。
そんなものは林氏にないのですよ。あるのはおもねることが外交だ、低姿勢でいれば中国様のお怒りが治まるということなかれ主義だけです。
この腑抜けめ。

 

 

2022年8月 5日 (金)

尾身氏、事実上の5類見直しを提言

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遅かったくらいですが、しごく常識的な方針転換の要求が、専門家会議の中心メンバーの「有志」から出てきました。
「有志」の代表は、なんと会長の尾身氏ですから、ならば会議名で出せばいいのにと思いますが、なんかあったんでしょう。
内容的にもある意味衝撃的で、要は全数把握を止め、一般外来も受診できるように5類指定にしろというものです。

実施時期も、将来的になどと悠長なもではなく、2段階でというクッションはつけていますが、7波終息まで待てる状況ではない、即座に緩和すべきだと言っています。

「新型コロナウイルス政府対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志は2日、今後の新型コロナ対策を巡り、感染者の全数把握の見直しや、診療する医療機関の拡大などの対策緩和を2段階で進める必要があるとの提言を公表した。感染者の全数把握を見直し、重症化が懸念される入院患者らの情報把握に限定することを盛り込んだ。現行法の弾力運用で保健所や医療機関の負担を軽減して流行「第7波」に対応し、その後、法改正による抜本的な対策も視野に社会経済活動を続けられる体制を目指す」
(産経2022年8月2日)
コロナ専門家有志「全数把握見直し」を提言 - 産経ニュース (sankei.com)

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どうなってるの?尾身さんが「有志」としてコロナ対策の緊急提言 | アゴラ 言論プラットフォーム (agora-web.jp)

この緊急提言「有志」はそうそうたるメンバーで、これまでのコロナ対策の専門家サイドの中核メンバーの揃い踏みです。

  • 尾身茂・公益財団法人結核予防会代表理事
  • 脇田隆字・国立感染症研究所長
  • 岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長
  • 阿南英明・神奈川県医療危機対策統括官
  • 武藤香織・東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授
  • 今村顕史・都立駒込病院感染症科部長
  • 中島一敏・大東文化大学教授

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2類から5類に変更するという案は、民間から多く出ていたはずですが、それに対して頑固に2類維持を主張していたのが尾身氏でしたからね。
その彼が、緊急に5類へ変更しろ、7波終息なんぞ待っていられるかと言っているのですから、ありりゃという皮肉な気分にもなろうというものです。

この尾身氏の危機感は、感染症の専門家らには共通だとみえて、あの「ダイヤモンドプリンセス号」対処で政府に噛みついた倉持仁氏も、こう述べています。

「倉持氏は現場の状況として、「7月半ばくらいから急速に患者さんが増え出しまして。過去24年医者やっているんですが、過去最大の外来受診者。一人数分、極力短時間で診察して、なんとか400-500人の患者さんを診察している状況が続いていて。いつまで持つのかという感じになっている」と語った」(リアルライブ8月3日)
コロナ感染、軽症の判断で高齢者が亡くなっている?「国は至急戦略を変えて」現場の医師が批判|ニフティニュース (nifty.com)

倉持氏は、国がPCR検査を怠っていると告発してメディアの寵児になっていた人ですので、今でも検査を拡充しろって言っています。

「倉持氏は、国のコロナ対策には「当初からの戦略ミス」があったと指摘。PCR検査の拡充が行われておらず、「重症者のみに検査を絞り、治療対象を重症者だけでいいという方針で戦ってきているので。悪くならないと病院に入れない状況になっている。ですから、まだ元気で軽症のうちに治療介入すれば助かるのに、そういう仕組みになってないんですね」とコメント」
(リアルライブ前掲)

違うと思いますよ。倉持氏が言うように2年前のパンデミック初期に「PCR検査を拡充」なんかしてしまったら、全数把握の感染者数がむやみやたらと激増して、コロナ専門病床はたちどころに埋まってしまい、医療機関は崩壊してしまったはずです。
実際に欧米では検査重視路線でしたので、医療崩壊を起こした国が続出しました。

だからいきなり病院に行かせないで、いったん保健所で状態を観察してからにするというワンクッション入れたのです。
その結果、倉持氏が言うように自宅療養は定期的に医師が往診してくれるのですが、その間に悪化して死亡に至ったケースもあったようです。
そしてそんな病院のまねごとをさせられた保健所職員にも迷惑な話で、こちらもパンク。

自宅療養を指示された者は外出も禁じられているので、買い物にもいけず、ドーンと自治体から送ってきた食料品が入ったダンボールの中身で食いつなぐことになります。
経験者によれば、カップラーメンやおかゆのレトルトが入っていたとのこと。
そして感染者についても保健所が陽性判定者をカウントして全数把握して国に上げる仕組みになっています。

では、ダイレクトに病院に行けばいいのかといえば、現行の法的立て付けではコロナはエボラや結核と同じ2類対応ですから、陽性判定を受けると、重症あらば即刻隔離病床行きとなります。
いまや季節性インフルエンザより無害化したBA5に、こんなエボラ対応もどきが要るのか、という話です。

現行の仕組みは、それなりによくできた仕組みではあるのですが、ガラス細工のようなものでした。
感染者が数百人の時にはきれいに回りますが、いったん数万人の桁になるともういけません、完全にショートします。

これが今の段階です。コロナ対応の病院は完全にショートしかかっています。

ただし重症者や死者は増えていません。
感染力は以上に強力だが毒性が低い、これがオミクロン株の特徴だからです。
そのうえちょっとした街には気軽に検査できるブースが増設されましたから検査数自体が増え、いっそう見かけの感染者数は史上空前の数を計上します。

メディアは大喜びで世界一の感染爆発だぁ、と煽っています。もちろん重症者や死者は増えていません。

「国内では3日、新たに24万9812人の新型コロナウイルス感染が確認された。1日当たりの新規感染者は7月28日の約23万3000人を上回り過去最多を更新した」
(時事8月4日) 
国内感染、最多24万人超=東京3万8940人―新型コロナ|ニフティニュース (nifty.com)

これ完全な誤報、甘く言ってもミスリードなのですよ。
だって世界の主要国はとっくに全数把握はおろか、カウント自体を止めていますから、馬鹿正直に全部数えていますというのはうちの国くらいなもので、そりゃ「世界一の感染国」になりますがな。
どうしていつもいつも自分の国を貶めたいのか、病気だね。

明らかにコロナは感染力を強めに反面、毒性をなくしていく、という従来から知られてきた感染病のコースを辿り始めたのです。
ですから、尾身氏は自説を変更するかのように、将来ではなく今の感染激増期にやれ、と言っているわけです。

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「尾身氏は記者会見で、「感染が収まってからやるというのは、今の状況にはふさわしくない」と述べ、早急な対応を求めた。
新型コロナは感染症法で「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられ、危険度が2番目に高い「2類相当」の措置に加え、より厳しい対策も実施している。しかし、流行「第7波」では感染者が急増。保健所などを通じた全数報告や、行政が指定した医療機関による診療が立ちゆかなくなっている。
提言は①医療現場②保健所・行政③感染状況④高齢者福祉施設⑤旅行者-の5項目について、直ちに行うべき「ステップ1」と法改正による抜本的な見直しを想定した「ステップ2」の2段階に分けて対応をまとめた」
(産経前掲)

専門家会議の中もまとめられないで、なにが会長だ、いままで言ってきたこととの整合性がないだろう、などとテレビのコメンテーターは怒っているようですか、いいじゃないですか、過ちは改むるに憚ること勿れです。
そういう個人の責任論などは、今はどうでもいいことで、終わった後に検証しましょうよ。
今のコロナ対応がズレきっていることを、他ならぬ尾身さんが認めて、メンツを捨てて修正を提言しているのですから、一歩前進じゃないですか。

 

2022年8月 4日 (木)

中国戦狼外交の敗北

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訪台したペロシは、明確な宣言を発しました。

「[台北 3日 ロイター] - ペロシ米下院議長は3日、台湾の蔡英文総統と会談し、自身の訪台は米国が台湾を見捨てないことを明確に示すものだと伝えた。
米国が台湾と団結することがこれまで以上に重要になっているとし、台湾と世界の民主主義を守るという米国の決意は揺るぎないと語った」
(ロイター8月3日)
ペロシ米下院議長「台湾見捨てず」、蔡総統は謝意 | Reuters

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ペロシ氏、台湾を見捨てないと明白にするため訪問-蔡総統と会談 - Bloomberg

そうなんです、まさにここなんです。自由主義陣営の指導者が台湾に行って発せねばならない一言は「世界と台湾の自由を守る」という価値観そのものなのです。
一般的な「平和」ではなく、誰と戦って得られる「自由」なのか、誰と抗して持ちこたえている「平和」なのか、それゆえ我々は誰と戦わねばならないのか、これを明確にすることです。
コメントでふゆみさんが書いておられましたが、それはあくまでも台湾が戦う意志を貫いているから成立するものです。

「ペロシ訪台はどうしても米中のみの意向がメインで語られがちですが、台湾自体がアクティブに振舞う「戦う覚悟を見せる事で攻めさせない」、これがあっての全ての関係性なのです。
日本の論壇はウクライナへは少しは「ウクライナは闘う、それを支える」へ寄り添えてきましたが、台湾に対しては台湾を主語に語ることは稀です。
「闘う意志のないものは支えようがない」日本自身の問題を語りたくない故なのだと思います」
(ふゆみさんコメント)

そのとおりです。蔡英文はこう言っています。

「蔡総統はペロシ氏が重要な時期に台湾を支援する具体的な行動を取ったと謝意を表明。軍事的脅威が高まっているが、台湾は引き下がらないと述べた。ペロシ氏は台湾の最も献身的な友人の一人であり、国際社会での揺るぎない支持に感謝するとも発言。
台湾は信頼の置ける米国のパートナーであり、安全保障、経済発展、サプライチェーンの分野で引き続き米国との協力を強化していくと述べた」
(ロイター前掲)

この決意があるからこそ、ペロシもこう答えられたわけです。

「ペロシ氏は蔡総統との合同記者会見で、台湾が常に安全保障面で自由を保持していることを望むと発言」
(ロイター前掲)

お分かりでしょうか。仮に口先芸人の橋下某が首相だとして、「戦う一択でいいのか。逃げろ」などという国など、どこの国も助けません。
日本は安保条約第5条があるから守られているのではなく、自由を守ろうとする姿勢をいまだ持ち続けている人々がいるから、専制主義国家の軛につながれることを望まないから、米国は同盟を組むことができるのです。
自国の自由を守るために戦う意志を持ち、その備えをし、常に警戒を怠らない国だからこそ、支える意味が生まれるのであって、決して逆ではありません。

さてこのペロシの訪台は、習近平の強烈な脅迫の下で行われました。
6月28日には、バイデンと習近平が2時間以上のテレビ電話会談をしましたが、中身は空疎でした。
バイデンは習に言われっぱなしだったようで、とうとう習に「火遊びすると自分も燃えるぞ」という宣戦布告にすら取れかねないことを言われる始末でした。
ダメだって、スリーピー・ジョー、こんなことを言わしては。「燃えるのはそちらだ。試してみるか」くらい言い返しなさい。

現実にも中国は、台湾を取り囲むような「演習空域」を設定し、中国軍機をパトロールさせてペロシを台湾に寄せつけない策謀を巡らしました。

「中国はペロシ氏の訪台を非難し、台湾周辺で「長距離実射」を含む一連の軍事演習を実施すると表明。2日夜にも開始し、4日以降もさらなる演習を行うとした。中国国営中央テレビ(CCTV)は3日早く、中国が海軍と空軍の合同演習を台湾周辺で開始したと伝えた」
(ブルームバーク8月3日)
ペロシ氏、台湾を見捨てないと明白にするため訪問-蔡総統と会談 - Bloomberg

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上図は中国国営新華社通信が公表した4~7日に軍事演習が計画されている台湾周辺の区域を示す地図ですが、中国軍による台湾島をぐるりと取り囲む包囲網が作られています。
ペロシ訪台時にこの陣形を作られていたかどうかは不明ですが、おそらく既にあったと考える方が自然でしょう。
ですから、ペロシを台湾に入れまいとする中国と、台湾に着陸して蔡と手を握りあって支援を誓おうとする米国の強烈な力のせめぎ合いの中、今回のペロシ訪台がなされたのです。

結局、ペロシの決断によって、中国の脅迫は空振りに終わりました。
ペロシ専用機に中国軍戦闘機をつき沿って飛ばしてやれ、共に台湾領空に入ってやるぞ、などと環球時報の胡錫進が煽っていましたが、現実には台湾海峡の中間線に接近するのが関の山だったようで、渤海北部や南シナ海での軍事演習に終始したようです。
実際に戦闘になれば、逆立ちしても米海軍にかなわないことを知っているからです。

戦狼外交は戦う姿勢を崩さない相手には、無効だとバレてしまいました。

「戦狼外交で戦争をほのめかせて脅しても、相手が怯えない、牽制効果がないのは、すでに中国の国力に口でいうほどの実力がないことが見透かされているからです。
かりに、習近平が戦狼外交の限界を認めることになれば、三期目の任期継続は難しくなるでしょう。
では限界を認めず、戦狼外交の牽制効果を回復するにはどうしたらいいか。それはやはり、核兵器をちらつかせて脅すような瀬戸際外交、北朝鮮化の道を進むしかなくなる」
(福島香織の(中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.582 2022年8月3日)

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中国の軍事パレードを無視することは、なぜ愚かな間違いなのか | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)

そもそもこの戦狼外交は、中国国内の動揺する経済的、社会的状況を背景に始まりました。
決して余裕でやっているのではなく、頼みの経済がガタガタとなり、河南の預金封鎖や不動産業の爛尾楼化などで表面化したように、国民の不満のガスが蓄積されていることが背景にありました。
そしていまやそれが上海のロックダウンと、不動産バブルの崩壊で火を吹いています。
中国共産党政権は、この内部の不満や、解決不能になった矛盾の矛先を、米国や台湾に向けさせることで、習近平政権に向けられそうな不満を逸らそうとしてきたのです。
つまり戦狼外交とは、米国や台湾、あるいは日本に向けたものではなく、自国の内部に対するジェスチャーにすぎなかったのです。

ただこのような愚かな戦闘的姿勢を続けていると、やがて自国世論をおさえきれなくなり、彼らの声に尻を押されるようにしてほんとうの戦争に発展しないともかぎりません。

「実際、元環球時報主筆の胡錫進が、ペロシ機を撃墜してやれ、とかペロシ機と一緒に解放軍機がとんで、台湾領空内に入れ、とか言いすぎると、ネット世論では、解放軍にそうするように求める声が大きくなり、それをやらなければ、今度は弱腰、口先だけと政権に批判が返ってくることもある。この方法での人民の不満のガス抜きは諸刃の刃でもあります」(福島前掲)

中国は「巨大な北朝鮮化」の淵にいるのです。
中国経済が発展したのは西側の自由な参入を歓迎したからでした。
だからドイツのように、フォルクスワーゲンが4割の車を中国で売り、ドイツ政府も身も世もなく中国に媚びるようなことになったのです。
日本も例外ではありません。
しかしそれは偽りの自由貿易であって、内実は技術の提供を命じられたり、資本の移動の自由がないものであることがわかってきました。

いま、米国はじわりと中国を経済で追い込もうとしています。

「米国は中国に対し、半導体製造装置へのアクセス制限を強化していると、同装置の主要サプライヤー2社が明らかにした。中国の経済的野心に歯止めをかける米政府の取り組みが浮き彫りになっている。
米政府は既に、線幅10ナノメートル(nm)以下の半導体が製造可能な装置の大半について、中国最大の半導体メーカーである中芯国際集成電路製造(SMIC)に許可を得ず販売することを禁止している。
今回はこの制限の対象を14nm以下の半導体が製造可能な装置に拡大したと、ラム・リサーチのティム・アーチャー最高経営責任者(CEO)がアナリストに明らかにした。今回の制限はSMIC以外にも拡大し、台湾積体電路製造(TSMC)など受託半導体メーカーが中国で稼働する製造施設も含まれる公算が大きい」(ブルームバーク8月1日)
米、中国への半導体製造装置の輸出規制強化-主要サプライヤーに通知 - Bloomberg

これは米国が、今後中国に半導体を作らせないということを意味しています。
世界有数の台湾の半導体メーカーのTSMCなども、中国では台湾を製造できなくなり、撤退を強いられます。
中国が戦狼外交をエスカレーションすれば、米国は半導体製造装置だけではなく、製品そのものも戦略物資指定して輸入を凍結してしまうでしょう。

半導体がなくなれば携帯電話や電気自動車も作れなくなり、あらゆる製造業がマヒするかもしれません。
その中には、中国軍拡を支えてきた航空機産業や造船業も含まれます。
これで中国は戦えますか?
いよいよ戦前の日本が辿った道を、そのままトレースしているようです。

いずれにせよ、ペロシの訪台は、米国外交の金字塔でした。
日本の馬鹿なコメンテーターたちはこれを中間選挙のための運動だと矮小化しています。
安倍氏暗殺事件を統一教会一色で報じているようだから、なにも見えないのですよ。
米国では共和党議員らが諸手を上げてペロシを支持しました。

私が次期共和党大統領候補として一番ふさわしいと思っている、前国務長官マイク・ポンペオはこうツイートしました。

‎「ペロシ議長が本日の台湾訪問をフォローしているのを見てうれしく思います。アメリカは中国共産党から命令を受けたことがないし、これからも決して受け取らない。そして、台湾の主権国家と自由を愛する人民を常に支持する」

本来、これはポンペオ時代に仕上げておくべきでしたが、パイデンに代わったために途切れたままでした。
バイデンも腰が重く、今回は慎重姿勢を崩しませんでした。
しかしペロシがそれを押し切るようにして台湾の地を踏んだことは、すばらしいことです。
これでポンペオが言うように、「中国に命令されるような」余地を残した従来の「あいまい戦略」は事実上終了しました。

次の中間選挙の共和党候補たちは、ペロシを凌ぐ対中強硬方針を唱えねばならなくなったのです。
つまり共和、民主を問わず、ペロシの勇断がボトムラインとなったのです。
これは中国にとって悪夢ではありませんか。

そして米国内だけではなく、世界の指導者たちの、訪台のハードルが一気に下がりました。
福島氏によれば、英国下院議会が年内に台湾訪問を計画していることがすでに発表されているそうで、ウクライナと並んで台湾を訪れることが自由主義諸国指導者のステイタスシンボルとなっていくかもしれません。
問題はうちの国ですが、秋の安倍元首相の国葬儀に蔡英文総統が来たいといった場合、私が知っている岸田氏なら腰砕けになるでしょう。
少なくとも林外相にはできないことだけは確かです。
受け入れねば、訪台湾を予定していた安倍氏がどれだけ悲しむか、岸田氏は思い致すことです。

 

2022年8月 3日 (水)

ペロシ訪台

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ナンシー・ペロシが台湾入りしたようです。

「ワシントン=渡辺浩生】ペロシ米下院議長は2日、台湾に到着後に声明を発表し、「私たちの台湾訪問は、台湾の活力ある民主主義に対する米国の揺るぎない関与を履行するものだ」と表明した。
ペロシ氏は、今後予定される台湾の指導層との対話について「私たちのパートナーへの支援を確認し、自由で開かれたインド太平洋の進展を含む共通の利益を促進するものだ」と意義を強調した。
また、「世界が専制主義と民主主義との選択に迫られる中、米国の2300万人の台湾住民との連帯は今日、かつてなく重要になっている」と指摘。台湾への軍事的威圧を続ける中国やウクライナに侵攻を続けるロシアを念頭に、そうした現状変更勢力との最前線に台湾が置かれている現状に危機感を訴えた
(産経8月3日)
ペロシ氏訪台「台湾の民主主義への米国の揺るぎない関与」 - 産経ニュース (sankei.com)

いままでペロシを褒めたことは一度もありませんでしたが、今回は素直に拍手いたします。

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訪台への敬意を表して、ワニ婆と呼ぶのを止めて、一番チャーミングな写真をアップしておきましょう。
夏色のナンシー、ス・テ・キ。

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ペロシがきれい!若い頃の美人画像がモデル級で可愛いすぎると話題に! | ネットブレイク (hikari-iyashi.com)

非公式にペロシはツイッターで、台湾に行く、と言っていたために、大騒動に発展しました。
おー、腐っても米国リベラル、日本のサヨクとは一味違うぞ、パチパチと思っていたら、ツアーに出るや不透明になりました。

行かねば、バイデン政権が台湾を見捨てたということになり、自由主義陣営や共和党からはやっぱりね、バイデンは弱腰だね、と言われてしますし、行けば行ったで米中関係の基本である「ひとつの中国」をよくも壊したな、と習近平様は激怒なさって台湾海峡で軍事演習など始めています。

いうまでもありませんが、ペロシが座っている米国下院議長という職責は、大統領の継承順位3位であり、大統領、副大統領(上院議長兼任)に継ぐ政権大黒柱であり、ただの上院議員が民間機で訪台するのとはわけが違います。
ペロシが政府専用機で正式に訪台すれば、これは米華条約が廃棄されて以来初のこととなります。
ですから、いままで議会が台湾旅行法やTAIPEI法、アジア再保証イニシアチブ法など様々な法律で米台間の関係を強化し、トランプは事実上の在台大使館を拡張して海兵隊を置くという台湾支援の流れが、ここで完成されことになります。

さて米国の台湾への態度は、ひとことで言えば「あいまい戦略」でした。
米国は、台湾侵攻に対抗して軍事介入するかしないかをあえて明確にしないことで、中国による台湾侵攻を抑止する一方、台湾が一方的に独立に向けて緊張を高める事態を防ぐ二重のあいまい路線をとっていました。

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「ニクソン絶対困ってる」箸を持つアメリカ大統領の写真。実は「中華料理」の意識を変えるきっかけだった | ハフポスト WORLD (huffingtonpost.jp)

1972年2月の米中国交交渉時に、ニクソンが中国と交わした「上海コミュニケ」には、①両国は平和五原則を認め合い、②両国の関係が正常化に向うことはすべての国の利益に合致すること、③両国はアジア・太平洋地域で覇権を求めるべきでなく、他のいかなる国家あるいは国家集団の覇権樹立にも反対することが盛り込まれていました。

米国は、泥沼化したベトナム戦争から足抜きするために、最大の支援国中国をなんとか切り崩したいと考える一方、中国は文革の焼け野原の中にあり、国民全員が人民服を着て自家用車など夢のまた夢、覇権国家になるのはとうてい無理といったありさまで、西側の資金と技術を渇望していました。
だから、③の覇権国にならない、なんて簡単に約束しちゃったのです。
いまの中国なら、「アジア・太平洋地域の平和と安定の責任を負う」くらいは言うことでしょう。

このように思惑が違う二国が手を握るに当たって、喉に引っかかった小骨になったのが台湾の処遇です。
米国は、抗日時代から国民党政権を支援して唯一正統な政権と認めてきており、戦後も長く米華条約を結んで防衛義務をうたっていました。
この「唯一の正統政権」の地位を台湾から中国共産党政権に移しかえねば、米中国交回復ができないわけですから、ニクソンも頭が痛かったわけです。

ここで苦し紛れに考えたのが、こういう外交的言い回しです。
「すべての中国人が中国は一つであり、台湾は中国の一部であると考えていることを『認識』(acknowledge)し、この立場に異議を申立てない」という外交的表現です。
これは米国が、中国が「台湾の一部だ」という認識を持っていることを、米国は「理解」しましたよ、しかし同意したわけじゃありませんからね、聞き置いた(テイクノート)だけですからね、という意味です。
これで当時の中国は「ひとつの中国」を米国が認めたとして納得しました。
つまり米国は「ひとつの中国」を認めてはいないが、そういう中国の建前は尊重するということです。

これで中国は国連の「中国」枠から台湾を蹴落として、以後常任理事国として権勢を振るうようになっていきます。
方や台湾は、国際社会から弾きだされ、国交を結ぶ国は激減し、国連機関にも加盟できないようになっていきました。
情けないことに我が国も、米国に追随し、このときに台湾とは断交しています。
しかし国際社会から孤立する一方で、台湾は李登輝の指導の下で民主化を促進し、いまやアジア有数の民主主義国家に生まれ変わっています。

つまり、米国や日本は最悪の専制主義国家の覇権を助け、自由主義国家を捨てたのです。

それでも米国は台湾基本法を作って、有事の防衛義務の道は残しておきました。
つまり米国は、独立されては困るが、台湾が併合されることは許さない、台湾はつぶれない程度に支援していく、という究極の現状維持路線だったわけです。
これが米国の台湾「あいまい戦略」でした。

ところがあれから半世紀。中国はスーパーパワーに肥大化し、露骨な覇権国家への意志をむき出しにしていることは、ご承知のとおりです。
中国は台湾へ武力侵攻を執拗に宣言し続けており、台湾海峡は常に緊張状態にあります。
ここで、バイデンがとった対中戦略は、上海コミュニケ以来の伝統的なものでした。

「「四不一無意」はバイデン大統領が習近平国家主席に2回の米中首脳会談で約束したとされるもので、「四不」は、米国側が(1)新冷戦を求めない(2)中国の体制変更を求めない(3)同盟関係の強化を通じて中国に反対することをしない(4)台湾独立を支持せず台湾海峡の現状変更を求めないことを意味する。「一無意」とは、米国に中国と衝突する意図がないことを示したもの。中国側によると、これらに加えて「中国共産党の執政地位への挑戦をしない」ことも加えられた」
(レコードチャイナ 2022年23日)
米中が近く首脳会談、「対立」から「融和」に動く=経済相互依存で一致、甦る『上海コミュニケ』 (recordchina.co.jp)

要するに、現状凍結です。
中国の内政干渉はしないし、台湾独立も支持しない、というずいぶんと中国に配慮した内容となっています。
しかし同時に、先日の5月末の訪日時に行ったザ・クアッドでは、日米豪印4カ国の枠組みで、サプライチェーン(供給網)から中国排除をうたい、米国主導の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」も打ち出して対抗色を強めています。

さらに情勢を複雑化させているのは、ウクライナ戦争です。
中国は義兄弟のロシアを表面的には支援していません。
習近平は、せっかくオレが苦労して東欧に作った一帯一路の拠点国のウクライナをめちゃくちゃにしやがって、と怒っていたはずです。
そもそも2014年のクリミア併合時から、これは中国が掲げる「主権と領土の完全」の原則に逆らうものだとして、いまだクリミア半島をロシア領土とは認めていません。
同じく、ロシアが侵略地域でそこかしこに雨後のタケノコよろしく作った、なんじゃら人民共和国も承認してはいないようです。

ここにつけこんだのが米国で、米国は中国にロシアへの軍事支援や技術・金融支援をしないで欲しいと要請して、中国はとりあえず今のところはそれに従っているようです。
だから米国は、正直、ウクライナ戦争絡みでは中国を刺激したくはないのです。

こういう状況でペロシは台湾訪問をしたわけですが、当然中国は猛反発しました。
いつも中国の本音を言う環球時報前編集長の胡錫進は、こう威勢よく叫んでいます。

「台湾に入るペロシ氏の搭乗機を米軍戦闘機がエスコートすれば、それは侵略だ。人民解放軍には警告射撃や妨害を含め、搭乗機と戦闘機を強制的に駆逐する権利がある。効果がなければ、撃ち落とせ」
(東京7月31日)
「ペロシ氏を撃ち落とせ」中国著名論客が英語でツイート、後削除 米下院議長の台湾訪問をけん制:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

バカですか。ペロシの米政府専用機を落としたら、即刻戦争です。
ただし、本当にやりかねないので、今回のペロシの政府専用機は、中国軍の警戒線を迂回して台湾入りしたようです。
あの「戦狼外交官」の趙立堅報道官は、ぺロシ氏の台湾訪問した場合、ただじゃおかねぇからなと凄んでいました。

「中国外務省の趙立堅報道官は台湾訪問があった場合を想定し、中国として「真剣に準備」していると指摘するとともに、「主権と領土の一体性を守るため断固とした強力な措置を講じる」とした先の公式表明の内容に言及した」
(ブルームバーク7月26日)
中国、ペロシ下院議長の台湾訪問計画をけん制-米中首脳会談控え - Bloomberg

一方、負けてはならじと第7艦隊も出動しました。
すでに台湾の沖には、米海軍強襲揚陸艦USSトリポリが待機しています。

「ペロシ米下院議長の台湾訪問の可能性を巡り米国と中国との緊張が高まる中、米空母「ロナルド・レーガン」を中心とする空母打撃群が南シナ海に入った。米海軍第7艦隊はもともと予定していた演習だったと説明している。
日本に拠点を置く米海軍第7艦隊の報道官、ヘイリー・シムズ中佐は、ブルームバーグ・ニュースの問い合わせに対し、「ロナルド・レーガンと打撃群はシンガポールへの寄港を成功裏に終えた後、南シナ海を航行中だ」と回答した。「自由で開かれたインド太平洋をサポートするための巡回の一環として、通常の、また予定通りの演習を続けているとも付け加える」とした」
(ブルームバーク7月28日)
米空母が南シナ海入り、予定した演習と第7艦隊-台湾巡り米中緊張 - Bloomberg

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FreeAndOpenIndoPacific #navypartnerships @US7thFleet

米国本土を出発したペロシ氏が搭乗した飛行機は、ハワイ、グアムを経由して、まずはシンガポールに到着しましたが、「ロナルド・レーガン」はピタリとペロシをガードする位置にいます。
嘉手納基地には、空中給油機や空母搭載機などが増派されており、備えを確実なものにしています。

こういう緊張した二国間関係で中国が「強力な措置をとる」とは、なんらかの軍事行動をとるという意味だととられても仕方ありません。
有体にいえば局地紛争ですが、そこまで習近平は踏み切ることは難しいでしょう。

「ニューヨーク在住の評論家、虞平はVOAに対し、中国がいかなる反撃をしても、それは外国に対する国力ショーであり、国内向けの政治的態度で、中国の国際社会への発信力を強化するものに過ぎない。ペロシが予定どおり訪台しても、中共は台湾海峡で戦端を開くようなことしたり、米中間で衝突があるようなことはあえてしない、との見立てを語っていた。
「党大会が間もなく開催される。中共としては、米中の対立を完全になくすことはできない。この対立は党大会に影響を与える。だから、中共はこの危機をコントロールし、台湾海峡危をコントロールする動機がある」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.580 2022年8月1日)

一方、バイデンは、こういう言い方もしているようです。

「バイデン氏は7月20日、ペロシ氏の訪台について「米軍はいい考えだと思っていない」と述べた。ラトクリフ氏は「バイデン氏はペロシ氏が台湾に行く権利を支持しなかったことは明らかだ」と強調した」
(日経8月1日)米元高官「中国対峙に備え空母を」 ペロシ氏台湾訪問を想定: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ラトクリフは前政権の米国家情報長官で、ペロシをバイデンが止めてしまったらかえって中国は図に乗るぞ、と警告しています。

「バイデン大統領が訪台案を支持しなかった結果、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が「米国の弱み」につけ込んで強硬姿勢に出ていると指摘した」
(日経前掲)

一方、習近平にとっても3期めを確定する時期に当たっており、引くに引けません。
米国のニューヨーク・エドフィ大学文理学院長で政治学教授の王維は、ボイスオブアメリカ(VOA)に対してこう語っています。

「もともとは第20回党大会前の敏感な時期に、習近平は米中大局を重んじて、この会談でバイデンから両国の経済問題などのテーマでうまく討論したいという思惑があった。しかし習近平は外交辞令を言わず、気勢を上げて人を責めるタイプの人間であったので、この会談ではなんらコンセンサスはえられなかった。
習近平は下手な戦狼外交で、非常に強引な話をした。習近平は自分を高みに置いた。党大会前に彼は安定的に第三期目の任期を継続したいなら、中米関係をうまくすることが絶対重要だ。
結果は思いもよらず、習近平は今回の会議で、「火遊びをするものは自らを燃やす、などと言ってしまった。習近平は米国が台湾問題を扱う態度を火遊びと形容した。それで、彼の発言は彼の部下の戦狼外交と何らかわらないものになってしまった。中国外交は現在上から下まで全部強硬派だ」
(福島前掲)

本来は緊張緩和をせにゃならないのに、習は「火遊びをするものは自らも燃やす」という天に唾するようなことを言ってしまいってバイデンを怒らせてしまいました。
会談内容は秘密ですが、バイデンの答えは、習とのビデオ電話会談後、下院は28日に「チップス・アンド・サイエンスアクト」(半導体チップと科学法案)を可決したことに現れています。
この法案は、米国は軍事ハードウェアとその他の製品を中国と外国のチップに依存せず自国製を目指すとしたもので、バイデンの署名後、早ければ今週にも施行されます。
この法案とペロシの訪台により、台湾の重要性が増し、米台関係は政治・経済・技術的にいっそう接近するでしょう。
ホテルを爆破するとか、専用機を落とすとかいろいろな罵声が、台湾海峡のアチラから聞こえてきますから、どうぞ無事にお帰りください。


2022年8月 2日 (火)

中国は新型コロナを作った「指紋」をそこら中につけていた

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さて新型コロナは、2019年末に武漢で発生していました。
これがコロナの世界的パンデミックの始まりですが、この新型コロナと遺伝子情報が96%以上も合致するRaTG13ウィルスを作っていたのが、発生現場のすぐそばにある武漢ウィルスラボ(WHCDC)でした。

武漢ウィルスラボでは、自然界にいるコウモリの糞から採集されたウィルスを持ち帰って培養し、「手なずけ」(機能獲得実験)してRaTG13ウィルスを作っていました。
このチームリーダーが、武漢ウィルスラボの石正麗主任研究員です。

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武漢ウィルスラボ WSJ

いまでこそ、米国メディアはコロナウイルスの起源が、かぎりなく武漢ウィルスラボだということを報じていますが、この説が登場した当時、それを公表したのがトランプ政権だったことから、トランプ憎しに燃える米国リベラルメディアは、ミソモクソも一緒にして葬ってしまいました。
本来は科学的知見で判断すべきことが、政治的ポリコレと化していたわけで、反知性主義は一体どっちなんだい、と言いたくもなります。
当時の雰囲気は、武漢ラボ説を唱えただけで、極右陰謀論者とレッテルを張られるような空気が充満していました。

ところが、トランプがいなくなってタブーがなくなると、新型コロナウイルスが武漢市街でコウモリから人に感染したという従来の動物原性感染説の科学的論拠がないことがわかりました。
いくら探しても、武漢の市街地でコウモリからヒトへ感染が移った証拠がまったく出てこないのですから仕方がありません。
今や米国大手メディアのほぼすべてが何らかの形でこの起源説に同意しており、あいもかわらず「報道しない自由」のぬるま湯で昼寝しているのは、わが国のメディアくらいなものです。

そこで中国が苦し紛れに言い出したのが、コロナウィルス米軍持ち込み説です。
この新型ウィルスがそろそろ武漢でうごめきだす、2019年10月18日にあった第7回軍人オリンピックがあった、オレたちは米軍のウィルス攻撃にさらされた被害者なんだぁ、ということのようです。図々しいにもほどがあります。

「中国外務省の趙立堅報道官は12日夜、ツイッターで感染が拡大している新型コロナウイルスについて「アメリカで初めての感染はいつ発生し、何人が感染したのだろうか?この感染症は、アメリカ軍が武漢に持ち込んだものかもしれない。アメリカは透明性をもって、データを公開しなければならない。説明が不足している」などと書き込みました」
(NHK2020年3月13日)

「感染症は米軍が武漢に持ち込んだかも」中国報道官が投稿 | NHKニュース

中国側がいかにも因果関係があるかのように言っている、軍人オリンピックも、そこで9000回ものドーピング検査がされたといいながら、ここでもサンプルひとつ残っていません。
つまり自分らが発生源だという軍人オリンピックにも、なにひとつ証拠がないということになります。

仮に軍人オリンピックが関係しているとしても、それは米国からコロナウィルスを「持ち込まれた」のではなく、米国などに「持ち込んだ」原因となったことによります。
つまり「入った」のではなく、「出た」のでしょう。

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米軍ウイルス持ち込み」の根拠は?新型コロナウイルス感染源めぐる米中

実際にこの大会参加者の中には、かなりの数のインフルエンザのような症状の患者が発生しています。
参加したカナダの選手は「街はロックダウン状態だった。私は到着後、12日間、熱と悪寒、吐き気、不眠に襲われ、帰国する機内では、60人のカナダ選手が機内後方に隔離された。私たちは咳や下痢などの症状が出ていた」とカナダ紙に証言しています。
マッコーネル報告書は、この軍人オリンピック大会の競技会場も、6つの病院も、さらには大会参加後に体調不良を訴えた選手がいた場所も、すべて武漢ラボの周辺に位置していたことを指摘しています。

地図で確認してみます。

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上図で赤点が武漢ウィルスラボ、黒点が軍人オリンピック会場、青点が軍人から出た患者が収容された病院、緑点が選手のホテルです。
この2019年9月の軍人オリンピックにより、新型ウィルスは世界的に拡散し、パンデミックを引き起こしたとマコーネルは報告書で結論づけています。
たしかに米国はCDCの指揮で、真っ先に武漢から米国人を専用機で引き上げさせていますから、あるいはそれ以前の軍人オリンピックで持ち込まれたのかもしれません。

次に、新型ウィルスが流出した可能性としては3ツ上げられます。
①実験動物の流出、②実験動物に噛まれたヒトから③生物兵器説などです。
華南理工大学・生物科学与工程学院教授・肖波濤教授 は②の実験動物に噛まれたという説を唱えています。

「WHCDCは研究の目的で所内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの1つは病原体の収集と識別に特化したものであった。ある研究では、湖北省で中型コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、また他の450匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。ある収集の専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。
さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが、2017年と2019年に全国的な新聞やウェブサイトで報じられている。そのなかでこの専門家は、かつてコウモリに襲われ、コウモリの血が皮膚についたと述べていた。感染の危険性が著しく高いことを知っていた専門家は、自ら14日間の隔離措置を取った。コウモリの尿を被った別の事故の際にも同じように隔離措置を講じたという。ダニが寄生しているコウモリの捕獲で脅威にさらされたことがかつてあった、とも述べていた。
(こうして)捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよびRNAの抽出とシーケンシング(塩基配列の解明)のために採取されたという。組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供給源だった。これらは、海鮮市場からわずか280メートルほどのところに存在したのである」
(華南理工大学・生物科学与工程学院教授・肖波濤教授 2020年2月6日、研究者向けサイト「リサーチゲート」 )

武漢ラボはフランスが作った最新のP4施設ですが、大きな落とし穴がありました。
いかにも中国らしいのですが、施設はピカピカでも、実験動物の管理や実験後の汚物処理が前近代的なまま温存されていたのです。
管理は下請けの労働者に任され、杜撰で不潔でした。
農業大学では、実験動物を逃したことが明るみになっています。

武漢ラボでも多数の実験用コウモリが、ケージの外に逃げ出して、ヒトを噛んでいる映像すら残っています。

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https://www.youtube.com/watch?v=ANRs4DojOek&feature=emb_imp_woyt

この動画には、武漢研究所内でケージに入った大量のコウモリが映っており、素手でコウモリに餌をやるシーンや、防護服グループがコウモリを追いかけたり、見学者たちの帽子に止まったり、時には噛みつく様子まで撮影されています。
また別の実験用コウモリを素手で扱い、噛まれて手が腫れ上がる映像も出ています。
「米紙ニューヨーク・ポストは28日(現地時間)、WIVの研究者が手袋やマスクなどの保護具を着用せずにコウモリとその排せつ物を扱う様子が映る中国中央テレビの映像を公開した。
2017年12月29日に中国で放映されたこの映像で、半袖・半ズボン姿の研究者たちは、手袋以外は保護具を着用しないまま、感染性が高いコウモリの排せつ物を採取した。

同研究室で一部の研究者は手袋を着用しないままコウモリの研究サンプルを受け渡しした。研究室の中で一般的な衣類を着て、頭に保護具をつけていない姿も映像にある。
この映像で、ある科学者は「コウモリが手袋をかみ切って私をかんだ」「針でジャブ(jab)をもらった気分だ」と言っている。この映像にはコウモリにかまれた部分がひどく腫れている写真も登場する。
映像で、研究者たちが素手でコウモリを扱う姿が出ると、番組司会者は「負傷の危険性は依然として存在している」「研究者たちは現場調査前、狂犬病の予防注射を受けた」と説明した」
(ニューズウィーク2021年6月16日)

そして武漢ラボ研究関係者から、2019年に既にCOVID-19の患者が2名出て、受診していることがわかっています。
原因はわかりませんが、考えられるのは実験動物との不用意な接触です。

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武漢研究所からのウイルス流出疑惑、中国紙「WHOの調査メンバーは

③の生物兵器説については決定的なことはいえません。
現時点では、その可能性も捨てきらないという段階です。
ただし、中国軍は超限戦(ハイブリッド戦争)という戦略思想を持っている国で、あらゆるものを兵器化することで知られています。

「言うまでもなく、人為的に作った地震、津波、災害をもたらす気候、あるいは亜音波、新生物・化学兵器などは新概念の兵器で、通常言うところの兵器と大きな違いがある。しかし、これらの兵器もやはり軍事、軍人、武器商人とかかわる、直接的な殺傷を目的とする兵器だ。こうした意味から言うと、これらの兵器は、兵器のメカニズムを変え、殺傷力や破壊力を何倍にも拡大した、非伝統的な兵器にすぎない」
(喬良人民解放軍国防大学教授・空軍少将『超限戦』)

ここで書かれた「新生物」というのが、新たに人工的に作り出されたウィルスのことなのはいうまでもありません。
現実に、中国国防大学は、人民解放軍が発行している「軍事戦略の科学」2017年版の中で、「特定の遺伝子を使用した攻撃」という新たな種類の生物戦争に言及しています。

「国際評価戦略センター(バージニア州)のリチャード・フィッシャーは本誌に対して、「未来の戦争においては、中国が(標的を絞って手を加えた)コロナウイルスやその他の病原体を使って、特定の民族グループ、年齢グループや国を攻撃することも予想される」と述べた。
フィッシャーは、2020年に世界の多くの地域がパンデミックで大きな打撃を受けたことは、生物兵器が効果的な兵器だという考え方を裏づけていると指摘する。「超限戦(際限なき戦争)」を信条に掲げる中国軍は、国家を、さらには文明さえをも殺しかねない生物兵器を使用することに、良心の呵責を覚えることはないだろう。次のパンデミックが起きた時、生き残るのは中国だけかもしれない」
(2021年6月1日 ニューズウィーク )

このような生物兵器すら使用する、しかも平時においても解禁するという発想は、全体主義国家でなければ到底不可能なことです。
民主主義国家において、そのよう条約やぶりは必ず発覚しますし、議会やメディアの攻撃に曝され、政権が吹き飛びます。
情報が極限まで国家によって統制可能な全体主義国家でなければ、できないことなのです。

英紙デイリー・メールは9日、「米国務省が対外秘としている報告書のなかには「武漢ウイルス研究所の研究員を含む中国の科学者は、2015年からコロナウイルスの軍事的可能性に関する研究を開始した」と記載されている」と報じました。
Sスパイクを操作し、人間のACE2受容体と結合できるようにして実験した事は既に2015年に『Naturre』誌で大論争になっていたのです。

新型コロナのパンデミックが始まって、まっさきに武漢にきたのが人民解放軍の生物戦担当官の陳薇少将でした。
陳少将が生物兵器であるとまで考えているのかどうかはわかりません。
陳は生物兵器をブロックする側であって、製造する側ではないからです。
しかし間違いなく、この武漢パンデミンクが自然発生したものではなく、人為的拡散されたと考えたことでしょう。
なぜなら、このような低毒性でありながら感染力が強い新しいタイプの生物兵器こそ、他ならぬ武漢ラボで研究していた超限戦用生物兵器だからです。

「たとえば同研究所は、1500株以上のコロナウイルスを保管しており、危険な機能獲得実験(特定の病原体の致死性もしくは感染力を高める実験)を行っていた。安全対策には不備があったし、新型コロナの最初の感染例が報告された場所のすぐ近くにある。ちなみに最初の感染例は、武漢の生鮮市場とは何のつながりもない。同感染症の「動物由来説」を信じる人々が、生鮮市場が感染源だと指摘しがちなだけだ」
(NW前掲)

 この武漢ラボも人民解放軍の指揮下にあり、意図的に使用したか否かは別にして、COVID-19が生物兵器、ないしはそれに対抗するウィルス防御ために作られたことまではかなり確かであろうと言えます。
このように整理できるでしょう。

①中国は自ら「第1次世界大戦は化学戦争、第2次世界大戦は核戦争なら、第3次世界大戦は明らかにバイオ戦争となる」(『超限戦』)という戦争観と戦略思想を持っていた。
②「超限戦」という戦略下で、生物兵器を作る計画がを持ち、武漢ラボでコウモリウィルスから新型ウィルスを作出する機能性獲得実験を着々と積み上げていた。
③その結果、COVID-19に遺伝子配列が酷似したウィルスが出来上がったが、何らかの理由でそれが流出した。
④武漢でのパンデミックに恐怖した国家機関は、この証拠の隠蔽を命じた。

果たしてこれが偶然でしょうか?
つまり実際に「やった」という「自白」だけが欠落しているにすぎません。
ウィルスが漏洩したり、意図的に生物兵器として使用した証拠は見つかっていません。
仮にそれが見つかれば、中国は世界に対して天文学的賠償を支払わねばならず、国際的地位は地に落ちることでしょう。

ただし仮に生物兵器として作っていても、それを意図的に使用したかまでは今の時点ではなんともいえません。
米国やロシアにおいても化学兵器やウィルス兵器は研究されていますが、それは攻撃を仕掛けられた場合の防御のためだとされています。

中国が意図的に新型コロナウィルスを作った科学的証拠は9割9分積み上がっており、後は石正麗などの実際に武漢ラボでこのコロナウィルス実験に関わった科学者の証言と、パンデミックの後にそれの隠蔽を命じた国家機関の証言だけが揃わないだけです。

最後に、中国政府ご推奨の発生源がこれです。
中国は軍人オリンピックだと初めに言っていましたが、かんじんな血液サンプルが消失して証拠なし。
次に海鮮市場発生説にすがりましたが、WHOの調査団からも否定されてしまい、ヤケのヤンパチ最後に言い出したのが外国からの冷凍海産物が原因だったという爆笑ものの説でした。

あの中国にベタ甘だったWHO調査団は、冷凍倉庫まで視察させられ、報告書にその説も記載していますが、本気にはしてないと思いますよ。

「北京 11日 ロイター] - 中国山東省の煙台市当局によると、遼寧省大連市の大連港に荷揚げされた輸入の冷凍魚介類から新型コロナウイルスが検出された。冷凍魚介類は煙台市にある3社の事業者が海外から輸入したもので、ウイルスは包装の外側に付着していた。
どこから輸入されたものかは明らかにしていない」
(2020年8月11日)

中国で輸入冷凍食品から新型コロナウイルス、一部が輸出用に加工 | Reuters

どこから輸入したかわからないですってさ。それがハッキリすれば、発生国は決まりじゃん。
これはあまりにくだらないので、詳述はやめておきましょう。

とまれ中国はこれだけ大規模な「超限戦」に手を染めてしまったために、うかつにも「指紋」をそこら中に着けまくってしまいました。
やがて「指紋」が特定され、新型コロナが生物兵器であったという結論がでても、なんの驚きもありません。
中国がいつまでも逃げきれると思ったら大間違いです。

 

2022年8月 1日 (月)

中国の仕掛けたコロナ情報戦

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今回のコロナの世界的パンデミックに対して、中国は大規模な情報戦を仕掛けました。
中国はコロナで、ウクライナにはロシアが、中東に関してはイランが、というような黒謀略情報三大巨頭揃い踏みです。

「ニューヨーク・タイムズ(3月28日)は、ロシアと中国とイランのデマ拡散工作が互いに連動して、アメリカ社会の分断と弱体化が促されていると指摘している。
同記事によれば、今回はとりわけ中国が積極的だという。これまで中国は、台湾や香港、チベット問題などに関する政治的プロパガンダには積極的に資金を投入してきたが、陰謀論の拡散にはあまり関与してこなかった。
にもかかわらず、今回は「ウイルスの発生源はアメリカ」「ウイルス封じ込めに成功した中国共産党のシステムは優れている」といった言説を、発信源を隠して拡散している。コロナ問題で責任の矢面に立つきわめて不利な立場に追い込まれたことで、ロシアの情報戦略の有効性を認識し、模倣を始めたということだろう」
(黒井文太郎2020年5月1日)
中国・ロシアのデマ拡散工作の実態をEUが公表。「大手製薬会社の陰謀」「そもそも感染は起きていない」 | Business Insider Japan

「中国のシステムはウィルス封じ込めで優れていた」なんて、ずいぶんこの数年聞かされました。
中国は世界でもっとも早く、かつ大量に国民にワクランを接種しているぞ、なんだスガはなにもしていないじゃないか、こんな言説がはびこりました。
そして彼らは中国のゼロコロナ政策の成功に学べと主張しました。
そういえば、日本でも立憲なんじゃら党がゼロコロナを主張しまくっていましたよね。

さらには反ワクチン説、製薬会社の世界支配だ、ビル・ゲイツの世界人口を減らす陰謀だ、〇〇は(たとえば牛乳や亜鉛)がコロナに効く、うんぬんなどの情報が世界を駆けめぐったとEUの外交機関「欧州対外活動庁」(EEAS)が指摘しています。

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Screenshot of New York Times websit

ニューヨークタイムスは、EEASレポートが中国の圧力を受けて軟化したと報じているようです。
さらにドイツ政府に対しては、中国のコロナ政策を称賛するようにと圧力をかけたというドイツメディアの報道もあります。
中国に圧力を受け、E.U.はCovid-19偽情報に関するレポートを軟化させる - ニューヨークタイムズ (nytimes.com)
Corona: China versucht, deutsche Beamte zu Lob zu drängen - WELT

「独ウェルト(4月12日)によると、中国当局はドイツ政府関係者に対し、中国の新型コロナウイルス対策を称賛するよう要求していたという。中国当局は否定し、ドイツ外務省はコメントを控えているが、ウェルトは外務省の極秘文書にもとづく確かな情報だとしている」(太字原文ママ)
(楠井前掲)

ただし、中国はいくつかの西側サイトを経由して、彼らに拡散させます。
黒井氏によれば、この中国の情報工作を受けたサイトは幅広く、トランプ支持者がたむろするアレックス・ジョーンズのサイトだったり、逆に米国が全部悪いとする反米運動のサイトだったりするようです。
これらのサイトが発信源となり、それを情報連鎖させて、それを何度も繰り返すうちにソースがわからない「政府が隠す真実」が一人歩きするようになります。
反ワクチン運動の発信源は20ていどのSNSですが、それがヨーロッパでは数十万人を動かす反ワクチン運動に成長していきました。
日本でも今年の1月頃に、全国でデモが行っています。

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東京でノーマスク、反ワクチン訴えデモ|ARAB NEWS

このデモの参加者は、緊急事態法反対、ワクチン反対とノーマスクで叫んでいたようです。
ただし日本の場合、メディアと野党が、スガのワクチンが遅い、と煽ったために、今さらワクチンに反対できなくなり、運動はサークル規模にとどまっています。

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仏“ワクチン義務化”反対 11万人超が抗議デモ(2021年7月18日) - YouTube

また日本の場合、ワクチン接種はあくまで任意であり、予防接種法9条に明記されているとおり「努力義務」にすぎず法的拘束力はありません。
また、接種証明、あるいは陰性証明で行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」も一時停止されたままです。
緊急事態法も守るも守らないも任意にすぎませんから、暖簾に腕押しです。

ですから日本の場合、せいぜい反ワクチン運動は数百人規模ですが、米国、ヨーロッパでは一大勢力をなしています。

「反ワクチンデモは世界中で先鋭化している。フランスでは、1月8日、新型コロナウイルスのワクチン接種を義務化する政府法案に抗議するデモが各地で行われ、政府側の推計でおよそ10万人が参加。ドイツでも、現在の医療従事者らのみという接種義務の対象が広がる可能性が高まったことから、昨年末から特に一部の州で抗議デモがエスカレート。
接種反対派による政治家の殺害計画が明るみになり、警察当局が武器を押収するなど、過激化が懸念される事態になっている」
(アラブニュース2022年1月24日)

彼ら反ワクチン運動家は、米国では右派保守層の中に多く、特に米国ではトランプ支持者の中に根を張っています。

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