橋下さん、個人請求権はどうぞ韓国政府のほうに
橋下徹氏という人は、理路整然とヨタ話をする人物なことで知られるようになってきました。
彼は歯切れよく、間違ったことを大きな声で言う人のようで、深く考えない人のようです。
その橋下氏が、韓国が唱えている個人請求権についてかつて、かつてこんなことを言っていたことを思い出しました。
https://blogos.com/article/335611/
橋下氏の上記サイトのまとめを、更に簡潔にしてみました。
①日本政府は平和条約などでは個人の請求権は消滅しないと言っていた。
②日本の最高裁も、個人の実体的請求権の完全消滅までは言い切っていない。
③世界では宗主国が旧植民地に対して悪しき効果が残存している場合には責任を負う流れにもなっている。
なるほどねぇ。 彼らしく理路整然と間違っていますね。
橋下氏は、認識の大前提として「宗主国が旧植民地に対して悪しき効果」があるとお思いのようです。
日韓関係は真逆なケースだとおもいますが、ここにこだわると先にいきませんので、よい機会ですから特に彼への反論としてではなく、個人請求権について整理しておきましょう。
橋下徹:フリーランスこそ、徹底して「仕事の相場観」にこだわるべきだ |FinTech Journal (sbbit.jp)
橋下氏が言うには、1965年の日韓請求権協定と経済協定によっても、個人の実体的請求権は消滅していないから,、徴用工の訴訟もその判決も間違っていない、ということのようです。
橋下さん、それは勘違いです。
仮に日本の最高裁が「請求権の消滅」とまでは言っていないとしても、だからなんなんですか。
請求権が残っていたとしても、なにも日本側の結論は変わらないのです。
なぜなら、徴用工の個人請求権は消滅していないとしても、訴える相手の方角を間違えているからです。
彼らが訴える先は、日本企業でもましてや日本政府でもなく、韓国政府なのです。
元自称「徴用工」(元慰安婦も同じですが)などが個人補償を貰っていないのなら、どうぞ韓国政府にご請求下さい。
ご説明しましょう。
多くの人が誤解している節があるのですが、日本政府は日韓請求権協定の交渉で、個人の請求権を拒否するどころか、むしろ直接に日本政府が支払おうと、言っていたくらいです。
問題は、請求権協定で定まった後に、しかもその支払いがとうに終わっているにもかかわらず、後出しジャンケンよろしく今になって日本政府にいって来るのは、お門違いだということにすぎません。
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ところで日韓請求権協定は1966年にまとまるのですが、なんとまとまるまで14年間というマラソン交渉をしています。
その時の舞台が、日韓で1952年に作った協議機関の「財産権請求委員会」でした。
この時に韓国政府が日本に突きつけたのが、「対日請求要綱」で、全8項目の5項目目には、「被徴用韓国人の未収金およびその他請求権を返済すること」を求めています。
ね、韓国はすでに1952年の時点で個人請求権を対日要求に入れているのですよ。
で、日本はそれを突っぱねたでしょうか?
とんでもない、一部を除いて丸呑みしたのです。
わかりました、被徴用にあった慰安婦や徴用工の未払い賃金についてはお支払いますと、日本政府は言っていたのです。
イメージだけで慰安婦や自称「徴用工」訴訟を見ていると、日本が頑なに彼らの未払い賃金について知らん存ぜぬと言っているようにきこえますが、今から70年前に払う用意があると明言しているのです。
またここで論議されているのは、一般的な賠償金はなく、あくまでも「未支払い賃金」だということも頭に置いて下さい。
実際に、多くの慰安婦や自称「徴用工」の訴訟内容も、未払い賃金、ないしは軍票が反故にされたことに対しての金銭的保証です。
一般的に、私らは被害者だから賠償せよではないのですから、お間違いなく。
ところで、日本政府が個人の請求について払うと言ったのはいいのですが、どうやって払うかとなると問題が出ました。
韓国政府に対して支払うのか、個人に支払うのか、の2択しかありませんが、ここでもめたのです。
日本側は、韓国が上げた対日債権である韓国人軍人軍属、官吏の未払い給与、恩給、接収財産といった個別償還を認めたうえで、一括政府支払い方式を提案しました。
ここでの韓国の言い分は実にムシがいいものでした。
個人請求分は、韓国は政府一括でもらう、しかもなおかつ個人請求は残るとしたのです。
なんのことはない二重取りです。
韓国の主張の主張がとおると、条約締結後も個人請求権が残ってしまいます。
日本側としては韓国政府に対して個人賠償分を払って、その後にまた訴訟を起こされるたびに韓国人個々に払うという二重払いになってしまいます。
これではなんのために延々と請求権のマラソン協議をしてきたのか、その交渉意義さえわからなくなってしまいます。
だから日本側は、個人賠償を韓国政府に一括で支払うのはいいが、すべてをこの日韓交渉で処理して終わりにすべきだと主張したのです。
つまり日本は個別請求権も含めて、その全額を韓国政府へ一括で支払うとしたわけです。
これは国際法的にも認められている、「一括補償協定」(Lump-sum-settlement)方式と呼ばれるものです。
具体的には、韓国側が要求した金額は、61年の交渉で韓国徴用被害生存者1人あたり200ドル、死者1人あたり1650ドルずつ、計3億6400万ドルでした。
日本は無償で3億ドル支払っていますから、(別に有償で2億ドル、民間借款で3億ドルが追加されて合計8億ドル)、ほぼ満額回答です。
支払った額も、当時の日本の国家予算の半分に達する膨大なものでしたが、その名目についてもひと悶着ありました。
韓国は「植民地支配の補償」とすることを要求しましたが、日本は譲らず「新独立国への経済協力」とすることを主張しました。
なぜなら、韓国は諸外国の海外に持つ植民地とは違って、国と国の合邦によったものだというのが建前だったからです。
で、結局どうなったかといえば、韓国は実を取り、日本は名を取ったのです。
金額は韓国のご要望どおり丸呑み、ただし日本は「植民地」ではなく合邦だったのいうのが建前ですから、あくまでも「経済支援」(独立祝い金)、個人請求権は払うが、それは政府一括とするとなったのです。
この交渉結果を反映したのが、請求権協定のあの有名な文言です。
「両国は請求権問題の完全かつ最終的な解決を認める」
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本
付帯する日韓請求権協定合意議事録2のgにはこうあります。
http://www.f8.wx301.smilestart.ne.jp/nihonkokai/zaimusyo/zaimusyo-2/139.pdf
「同条1にいう完全かつ最終的に解決されたこととなる両国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題には、日韓会談において韓国側から提出された「韓国の対日請求要綱」(いわゆる八項目)の範囲に属するすべての請求が含まれており、したがつて、同対日請求要綱に関しては、いかなる主張もなしえないこととなることが確認された」
もうお分かりでしょう。
橋下氏は日本の最高裁判決文は読んでも、ちゃんとこの請求権協定の交渉経過を追っていないし、条約に付随する交渉議事録も読んでいないから、ああいうことが言えてしまうのです。
日本の最高裁が、「個人の実体的請求権の完全消滅までは言っていない」のはとうぜんです。
なぜなら日本政府は、個人請求権が「完全消滅した」なんて過去も現在も一度も言っていませんからね。
言っているのは、個人請求権は一括して韓国政府に支払ったので、もう「(韓国政府は)いかなる主張もなしえない」ということになります。
請求するなら、一括で個人の代わりに受け取ってしまい、それを国民に周知することもせずに、うやむやにしてしまった韓国政府に言え、ということです。
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最高裁判決では「「いわゆる個人の財産・請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」という趣旨を言っていましたが、橋下は判決文や物事の全体を見ないでツマミで物事を判断するクセがあって、しかも辺野古関連訴訟における県側弁護団にも見られる「左派リベラル系の独善的思考方法」そのままである点がイタイですね。
そもそも外国人である原告の請求権を日本法で「請求権そのものがない」なんて判決を出せるはずもなく、そのうえ橋下は東アジア贔屓にして、国境概念を曖昧にして思考する点も左派リベ特有の心情持ちです。
政府は「両国間の請求権の問題は最終的かつ完全に解決した」としており、それは「日韓請求権協定の規定がそれぞれの締約国内で適用されることにより、一方の締約国の国民の請求権に基づく請求に応ずべき他方の締約国及びその国民の法律上の義務が消滅し、その結果救済が拒否されることから、法的に解決済み」(柳井条約局長)とする見解と最高裁判決は抵触するものでなく、一貫しています。
また、要約③の「旧植民地に対する宗主国側の譲歩が世界的な流れ」という点も、イタリアVSドイツなどの事例を見ても最新の決定と相違していて、決して橋下が言うような「流れ」になっていません。
例外的な小さな和解事例を大きな潮流であるかのようにフレームアップさせて喧伝する左派リベ特有の詭弁法を使って、当たり前のように発信する橋下の言論には今後も要注意です。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年8月24日 (水) 04時48分
嘘を大声で語るとそのことが本当に思え、信じてしまう。詐欺行為のパターンです。
しかも元府知事で弁護士の肩書きがありますから影響力はそれなりに強い。
ここ1〜2年、彼が出ているテレビ番組は見ないようになりました。
彼の言葉の全てが嘘くさく聞こえるからです。
韓国政府の汚いこと、強欲な国民性があらわれてます。
投稿: 多摩っこ | 2022年8月24日 (水) 06時13分
山路さん、早いっすね。おはようございます。
私は元々橋下さんは嫌いじゃ無かったんですよ。ちょいちょい理屈が通らないことを言いつつも、とにかく歯切れよく受け答えするので分かりやすい。
むしろずっと維新は右派だと思われてきたのに、ロシアのウクライナ侵攻で完全に馬脚を表しました。「命が大事!」そりゃそうだ、だが領土譲って逃げろ!「戦争ハンターイ!」って···ウクライナは無条件降伏しろですよね。困ったものです。
で、日韓問題についてもこんなスタンスなのに過去のイメージが強いから左派リベラルの顔が思いっきり見えてるのに、未だにあの右派の橋下ですらこんなこといってる!と変な誤解が生まれるのが困ったもんです。
テレビタレントや政治家(元)という立場を捨てて一介の弁護士(もう若手ではない)先生に戻られるのが良いかと。。
メディアは取り上げるし、ギャラもいいんだろうけど。。。
投稿: 山形 | 2022年8月24日 (水) 06時51分
「両国は請求権問題の完全かつ最終的な解決を認める」という一文は慰安婦合意の「最終的かつ不可逆的な解決」と全く同じ構造ですね。
あの合意には当初かなり不満があったのですが、後になってこの文言が生きてきて、これを無視して慰安婦財団を解散させたムン政権と韓国に対する日本人の認識が一気に深まることになりました。
後追いですがGOOD JOBだったと思います。
同様に、この請求権問題についてもこの条文をしっかりと認識させないと、とおもいます。
投稿: ゆん | 2022年8月24日 (水) 07時18分
橋下徹は歯切れの良い逆張りおじさんですからね…
ウクライナもそうだし、最近も統一教会がらみでも頓珍漢なこと言ってた気がします
投稿: ねこねこ | 2022年8月24日 (水) 08時17分
昨今話題の日韓間各種問題については、既に、或いは最初から韓国の国内問題となっていることばかりなのは管理人さんやコメントの皆さんの仰る通りです。
韓国さん
「輸出管理優遇措置対象国に戻せ!」
→ホワイト国じゃないとやりたいようにできないじゃないの!
「日本企業の差し押さえ資産を現金化するよ?いいの?」
→日本がもろもろ全て譲歩して旨味を差し出しなさいよ!
「個人請求権がある!」
→美味しいものは何度でもおかわりさせなさいよ!
新聞テレビ教の信者さんでもない限り、多くの方々は、→以下の韓国さんの本音、考え方はもう大体理解しているでしょう。
いや新聞テレビ教の教祖・幹部クラスさんたちや重用される兵隊記者・タレント・学者さんたちだって理解しているから、韓国自身の問題である点には触れずに、日本に瑕疵がある標準設定に拘るのでしょう、たぶん。(え?違うの?あれらで正当だと信じてるの?)
ちなみにですね、先日アメリカ議会で「インフレ削減法案」が成立しまして、北米で最終組み立てされる2022/2023モデルの電気自動車で、かつ中共製部品の使用率が一定以下という条件を満たした車種に補助金が出ることになりましたが、その補助金対象リストに韓国車はひとつも入りませんでした。
これが嫌なら、条件クリアに向けて努力するとか、非関税障壁にあたらないのか相互確認を求めるとかが常識的な反応かと考えます。
ところが韓国国会議長は駐韓米国大使に対して、韓国企業による対米大規模投資が遅れる可能性があると圧力をかけたとな。
https://www.chosun.com/politics/politics_general/2022/08/19/G5U7Q73W7JFG5MC7EN5P7UUDEQ/
(韓国語なのでご興味お有りの方は自動翻訳でお楽しみくだされ)
韓国さん、対日に限らずどこまでもミーイズムなわけですが、態とというよりはナチュラルに「私は悪くないし、誰よりもトクをしたい」気持ちが勝つ性向を国としてお持ちのようで、相手と互恵を目指し何かを実現することも、そのような話し合いをすることも、韓国さんの方がお嫌なのでしょう。
投稿: 宜野湾より | 2022年8月24日 (水) 11時57分
どんなに筋が通ってなくてもへっちゃらで、論破されても平気で何周も主張ループできる。
あのメンタルにバカ負けしないスタミナをつける必要が日本の正論側にはあります。
投稿: ふゆみ | 2022年8月24日 (水) 17時01分