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2022年9月

2022年9月30日 (金)

EU、ノルドストリームの流出をロシアの破壊工作と断定か

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昨日お伝えしたウクライナ4地域でのロシア「住民投票」とノルドストリーム2の破壊工作について、EUは直ちに反応しました。
EUはこのふたつを、特に後者のノルドストリームへの破壊工作をEU自体への攻撃と捉えています。


「27日、デンマークのフレデリクセン首相は会見を開き「当局は、これは事故ではなく、意図的な行為だと明確に判断している。誰が背後にいるのかを示す情報はまだない」と述べました。
また、スウェーデンのアンデション首相も会見を開き「スウェーデンの諜報機関、そしてデンマークからの情報に基づき、これはおそらく意図的な行為だと結論付けた。おそらく破壊工作だろう」と述べ、事態を非常に深刻に捉えているとしています。
ノルドストリームで起きたガス漏れについて、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表は28日、声明を発表し事態に懸念を示しました。声明では「あらゆる情報は、このガス漏れが意図的な行為によるものだということを示している」と指摘しています」
(NHK9月28日)
ロシアとドイツ結ぶパイプラインでガス漏れ 原因に関心高まる | NHK | ウクライナ情勢

ドイツ国防研究所のジュリアン・ポーラックはこのように述べています。

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ロシアとドイツ結ぶパイプラインでガス漏れ 原因に関心高まる | NHK | ウクライナ情勢

「ガスパイプラインは、特にそれらが非常に新しいときに、偶発的に壊れることは知られていません。
ノルドストリーム1は2011年に操業を開始し、それ以来、大きな事故もなく運営されています。ノルドストリーム2は2021年に完成したばかりです。パイプライン破損箇所はどこの領海でもないがオランダのEEZです。
検証したオランダ専門家はこう言っています。
①技術的に潜水艦と爆弾を仕掛ける潜水夫がいないと起こり得ない爆発である。
②この状況でガス供給市場を不安定化させてメリットがある国は一つしかない。

2つの破損はデンマークの排他的経済水域(EEZ)内にあり、1つはスウェーデンのEEZにあります。この地域の海深は約50mです。1)海底ケーブル(パイプラインではない)が船のアンカーや漁網によって中断されることは頻繁にあります。しかし、これは非常に硬い鋼鉄パイプラインではそれほど簡単ではなく、同じ日に3つのポイントでの破損はありえません。

2)ごく最近、#submarine#Belgorod特別な目的を発見しました。
Fdpyuybxgaiivgu
この潜水艦はOSCAR IIIの潜水艦を改造したもので、海底通信を妨害できると言われています。
ケーブルだけでなく、パイプライン破壊にも使用できます。
またもっとも適した仕事は
「母潜水艦」として偵察し、#seabedに干渉する追加のユニットを運ぶことです。
しかし#Balticは、そのような巨大なユニットを海中で検出されずに動作させておくことは難しいので、除外することができます。
3)スパイ船、無人水中車両(UUV)、ダイバー。海軍と共にそれを維持すると、ロシアの「調査船」は、#NorthAltanticのように、海底ケーブルの隣を徘徊しているのが頻繁に観察されています。その一例がヤンタルです。
さらに、船舶や潜水艦は、潜伏して戦闘ダイバーや、水面下や海底での作戦のために無人の水中ビークルを展開することができます」
Julian Pawlak Twitter

ロシアがどのような手段を使って破壊工作をしたのかは今後にゆずるとして、EUはロシアの破壊工作だと認識したということが大事です。
ロシアは今回、オランダのEEZという微妙な地点で、ノルドストリーム3カ所を同時に破壊することでEUに強烈な警告を与えたつもりになっています。
NATO第5条にある自動介入条項が発動されないギリギリの線を狙ってEUを攻撃したのです。

市民語に翻訳してみましょう。ロシアはこう言っています。
こるらぁ西側共め、これ以上ウクライナを支援すれば、次はノルドストリームをバッサリと切断してやるぞ。
そうしたらお前らは酷寒にふるえるだろう。
忘れるなよ、オレ様は核も持っているんだぜ、といったところでしょうか。
脚色
しましたが、暴力の信奉者であるならず者らしい台詞です。

さて、EUは直ちに反撃を開始しました。
もっとも信頼できるウクライナ観察者のひとりである東野篤子筑波大教授は、このようにツイートしています。

「さきほど発表された欧州委員会の対ロシア制裁案(第8次)、かなり踏み込んでいます。フォンデアライエン委員長は、ロシアによる東部・南部4州の「住民投票と称する行為」が「ウクライナ侵略を新たなレベルに引き上げた」と明言し、ロシアは「このエスカレーションの代価を払うべき」として上記に加えて、
・ 戦争に関する偽情報の流布、あるいは支配地域に対する資金援助なども、制裁の対象となる可能性
やはりEUにとっては、動員よりも「住民投票と称する行為」が制裁のトリガーに。
また、この制裁発表の直前に明らかとなったノルドストリームの件も、EUはロシアによる攻撃とみなしており、対ロシア姿勢をさらに硬化させています」
東野篤子 Atsuko Higashino(@AtsukoHigashino)さん / Twitter

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ブリュッセルのEU本部での記者会見に出席した欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長  ウォールストリートジャーナル

ロシアは先日の「部分動員令」演説で西側の「脅威」を叫び、真の敵はウクライナではなく西側なのだと言い始めました。


「国民向けのビデオ演説でプーチン氏は、ウクライナ政府を支援する西側諸国によって、ロシアの「領土的一体性」が直接脅かされていると述べた。
また北大西洋条約機構(NATO)に対し、核保有国であるロシアはあらゆる兵器を使って、西側の「核の脅迫」に対応できると警告した」(BBC9月22日)
【解説】 ロシア軍の予備役部分動員、何を意味するのか? - BBCニュース

ここでプーチンが言う「領土的一体性」とは、まことに都合いい表現で、おそらく今回の「住民投票」で併合する地域まで含んでいると思われます。
ロシアは軍事占領したウクライナ領土はすべて「神聖不可侵なロシア領土」であり、これを奪還しようとしているウクライナ軍とそれを支援するEUや米国はロシアの「領土的一体性を攻撃する」、つまりロシア領土を侵略する許しがたい敵と見なしています。
ああ、なんてアブナイ発想。

ほんとうは自分の侵略がそもそもの発端なのにそれを認めず、自分はネオナチに攻撃されている被害者なのだ、と突然被害者ヅラを始め、大敗すると今度は国民に神聖な祖国を守る為に立ち上がれ、全員徴兵だぁとやってしまう。
妄想に陰謀論が加味されただけでも十分に居直り強盗なのに、負けているとわかると有り金残らずそこにつぎ込もうとする、まともじゃありません。
負けているのにエスカレーションラダーを自分からどんどん登っていってしまうのですから、危険な馬鹿です。

ウォールストリートジャーナルは、制裁についてこう報じています。

「欧州連合(EU)の幹部は、海上ロシア産原油の国際価格上限を可能にするために法改正を推し進めると述べ、ウクライナの新しい部分を併合するというクレムリンの最近の動きに続いて、ロシアに対する新しい制裁パッケージを提案した。
欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は水曜日、記者団に対し、新しい措置は、EUへのロシアの販売の70億ユーロ(約70億ドル)の輸入を禁止すると述べたが、詳細はほとんど明らかにしなかった。27の加盟国すべての承認を必要とするこのパッケージは、ウクライナでの戦争で軍が使用できる多くの商品のロシアへの輸出も禁止するだろう、と彼女は言った」
(WSJ9月28日)
EU Proposes New Sanctions on Russia Over Ukraine Annexation Plan - WSJ

第8次ロシア制裁の内容はこのようなものになりそうです。

・ロシアからの鉄鋼および鉄鋼製品の全面輸入禁止
・紙、機械および器具、化学薬品、プラスチックおよびロシアのタバコの輸入の禁止
・輸出禁止としてタイヤやブレーキなどの航空に使用される商品、製油所で使用される褐炭、電子部品
・クレムリンが支援するウクライナの国民投票と戦争に関与したとされる約30人の人々に対する制裁
・EUはまた、自国民がロシア国有企業の取締役会で職に就くことを禁止することを提案

ちなみに外相のラブロフが、突然日本に対してもこんなことを言い始めました。

「タス通信によると、ロシアのラブロフ外相は28日、第2次大戦の歴史をめぐり「日本の軍国主義の犯罪は時効がないものであり、忘れてはならない」と表明した。
ラブロフ氏は日本について「残念なことに、アジア太平洋地域の国々への侵略に対する反省の弁がない一方、全く根拠のないばかげたロシア非難が聞こえてくる」と指摘。「歴史に対するこうしたアプローチは、国連中心の世界秩序を損なうもので、受け入れられない」と主張した」
(時事9月28日)
「日本の戦争犯罪に時効なし」 ロシア外相、歴史でけん制(時事通信) - Yahoo!ニュース

どの口で言うのか、ラブロフ。
いつ我が国がロシアと「戦争」をしたというのでしょうか。
我が国は、ロシア(旧ソ連)によって一方的侵略を受けて、多くの満蒙開拓団の婦女子を虐殺され、50万人にも及ぶ日本兵が強制労働に拉致されたのです。
しかも5万人は帰らぬ人となり、北方領土は奪われたままです。

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(282) ▼「ペルソナ・ノン・グラータ」露が日本総領事館の領事を拘束▼高橋元理事3度目の逮捕…検察の異常なやり口~2022/9/27(火)ニッポン放送「辛坊治郎ズームそこまで言うか!」ニュースしゃべり残し解説~ - YouTube

また、ロシアは国葬に合わせてウラジオストクの日本領事を逮捕しました。
しかも外交官なのにもかかわらず頭を押さえつけ手錠をかけ、取り調べ風景まで撮影し、あまつさえそれを公開しています。
ウィーン条約で保護されている外交官特権に対する重大な侵害行為です。

「ロシア連邦保安庁は、報酬のために秘密情報を受け取った在ウラジオストク日本国総領事館領事、Motoki Tatsunoriの拘束について報告した。同秘密情報部は、日本の外交官が「ロシアとアジア太平洋地域のある国との協力関係、沿海州の経済状況に対する欧米の制裁政策の影響など、話題性のある情報を金銭報酬のために限定的に受け取っている最中に現行犯逮捕された」...とビデオで自白した」
ロシア保安庁が日本国領事を逮捕拘束の現場動画❗️ | Indigo 1st -syugen (ameblo.jp)

これをただの抗議にとどめておいてはいけません。
ロシアに理解できる外交言語は、抗議ではなく制裁なのです。
我が国も直ちに欧米の第8次制裁に準じる制裁に入るべきです。

 

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ウクライナに平和と独立を

2022年9月29日 (木)

プーチン「宮殿」に逃亡か?

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ロシアは東部のルガンスク州とドネツク州、南部のヘルソン州とザポロジエ州 で実施した自称「住民投票」で賛成多数だったとしています。
実態は、想像どおりロシア兵が家庭を回って賛成票を強要するという「選挙」とはほど遠いものでした。

「ロシア軍が制圧するウクライナ東部や南部でロシア当局が、ロシア編入の是非を問う「住民投票」を開始している。現地のウクライナ人によると、武装したロシア兵が住民を戸別訪問して、編入への賛否を直接確認して回っているという。
南部エネルホダルに住む女性はBBCに対して、「やってきた兵士に口頭で、(ロシア編入に賛成か反対か)答えなくてはならない。兵士はその答えを記入した用紙を持ち帰る」のだと話した。
南部へルソンでは、街の中心部に投票箱を持ったロシア兵が立ち、住民の投票を集めているという」
(BBC9月24日)
ウクライナ「住民投票」、ロシア兵が戸別訪問で編入の賛否を「集計」と現地住民 - BBCニュース

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ロシア、ウクライナ4州の「住民投票」で勝利主張 西側は「茶番」と非難 - BBCニュース

軍事占領下での自国領編入を目的にする政体の改変は国際法違反です。
西側はこのような茶番を認めていませんが、この後、「圧倒的賛成を得た」としてロシアへの編入を宣言する可能性が強まりました。

また、ロシアからドイツに天然ガスを送る海底パイプライン・ノルドストリーム2でガス漏れ事故が発生しましたが、意図的な「破壊行為」との見方が強まっています。

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ロシアからヨーロッパへの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」でガス漏れ 破壊工作との見方も(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース

「[コペンハーゲン 27日 ロイター] - デンマークのフレデリクセン首相は27日、ロシアと欧州を結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」と「ノルドストリーム2」で発見されたガス漏れについて、「意図的な行為によるもので、事故ではない」という当局の判断を明らかにした。
フレデリクセン首相はその上で、意図的な破壊工作の「背後にいる存在を示す情報はまだない」とし、当局はデンマークに対する直接的な軍事上の脅威とは見みなしていないという考えも示した」(ロイター9月28日)
ノルドストリームガス漏れ、意図的な行為によるもの=デンマーク首相 | Reuters

現時点ではロシアが関与しているかどうかはわかりませんが、冬場にむけてEUを脅したいプーチンが考えそうなことです。

さて未確認情報ですが、この緊迫した時期にプーチンは「宮殿」に逃げ出しているようです。
この「宮殿」は、プーチン個人が所有する膨大な富の一部です。

プーチンとその取り巻きたちは、ロシアを丸ごと乗っ取り、旧ソ連の資産とロシアの国有資産を、彼らの懐に入れる作業に熱中しました。
そして彼らは、計算することさえ不可能なミリオネアになっていきます。
彼らは海外のタクスヘイブンに資産を移し、パナマ文書にもその何人か顔をだしています。
このあたりの腐り切った国家私物化の構図は、今の中国と酷似しています。

もっとも有名な「宮殿」は黒海に面したものですが、それ以外にも複数の「別荘」を所有しており、今回はモスクワとサンクトペテルブルクの間にあるヴァルダイ湖に建つ宮殿のようです。
Watch: Putin has escaped to a secret palace in a forest amid anti draft protests in Russian cities - YouTube

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プーチン宮殿」、ロシア野党指導者が告発も本人は否定 - BBCニュース

このお気に入りの「宮殿」で疲れた心身を癒しているそうですが、いまモスクワを離れる余裕があるとはとても思えません。
よほど身体が悪いのか、と政敵たちに教えるようなものです。
政治家にとって健康は武器ですから、こういう修羅はでの「夏休み」はさまざまな憶測を呼びます。

プーチンはいまや一切を失おうとしています。いやロシアは、かもしれませんが。
ロシアは、ウクライナの大敗によって、唯一の力の源泉だった軍事力が自慢するほどではないことが暴露され、その「世界最強軍隊」はウクライナの東部と南部で瓦解の危機の淵にあえいでいます。

30万人の素人同然の連中の動員など役立たずの上に、かえってただでさえ途絶しがちな補給にさらなる圧力をかけるにすぎません。
西側軍事筋で、30万人の「新兵」が戦力回復につながると予想する者は誰ひとりいません。
彼らを訓練するために、いまやロシア軍で貴重品になってしまったベテラン将校や下士官を前線から引き抜かなくなるほうがよほどマイナスだからです。

下の写真はクリミア半島セヴァストポリで動員されたロシア軍兵士ですが、なぜか年寄りばかりに見えます。

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民兵の訓練なのでしょうか。いずれにしても兵員の余裕はまったくないようです。

欧米からは強力な経済制裁され、国際社会からの評価は地に堕ち、いまやただの天然ガスを売るだけが能の(それも売れませんが)発展途上国に成り下がろうとしています。
この責任は誰あろう、いうまでもなくプーチン氏一人にあります。
上海協力機構の会議では、構成国から無言の態度を取られ、インドのモディ首相からは、「戦争している場合ではないと思う」と忠告されるありさまでした。

9月15日と16日、ウズベキスタンで行われた上海協力機構の首脳会議における習近平とプーチン会談で、プーチンはやつれ果てた姿をさらしました。
いままでプーチンの得意のポーズだった冷徹な眼と他者を見下す態度は影をひそめました。
9月15日の会談でのプーチンの様子を観察した元自衛隊情報関係者の西村氏は、このように述べています。

「ネクタイの色は紺系だ。特徴的なのは、眼光が弱い、額には皺が多い、髪の裾が少し伸びていて整髪されていないことだ。
これほど精彩がないプーチン氏を見たことがない。これまで無表情で見下す様子がよくあったが、今回だけは、自信がなくなって弱々しい表情だ」
(西村金一9月27日)
プーチンの表情に明らかな変化、敗北の不安くっきりと ウクライナ侵攻前から現在までの写真を徹底分析(1/5) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

下の写真は上海強力機構の会議から帰国した9月21日にロシア北西部の都市ノヴゴロドで撮られたものです。
開戦初頭のものと比べて見てください。
ひどいやつれぶりで、意志的なものは姿を消してしまいました。
西村氏の指摘どおり眼光は弱々しく、口元は緩んでいます。
この男がいかに追い詰められているのかわかります。

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ロイター/アフロ 9月21日撮影

次は開戦初頭の春のものです。

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共同通信写真  2月21日と3月5日撮影

いまやプーチンを守ってきた軍隊は雲散霧消しつつあります。
これまで連邦を構成する共和国には強力な軍を配置して抑え込んできましたが、それも辺境地域から優先的にウクライナ戦線に投入してしまったためにがら空き状態です。
共和国はいままで自分らだけにかけられてきた動員令を忌ま忌ましく思っており、さらなる動員令には反抗的対応をとろうとしています。
全国を対象とした「部分動員令」によって、大都市部の市民が背を向けました。
いままで眠りこけていたロシアの国民に敗退していることを自白してしまったからです。
勝っている軍隊が30万、いや100万とも言われる動員をするはずがありませんからね。

彼らは漠然とテレビの前で、勝ってはいないものの、大ロシアが負けるはずがないとなんとなく信じてきたわけです。
それが一挙に崩れ去り、火が自分の足元に広がっているのを初めて知りました。
彼らはあわててフィンランドなどの国境ゲートに向けて逃げ出しましたが、受け入れ国はドイツくらいなものです。

プーチンにとって、いままで彼の帝国を作ってきたオルガルヒは戦争に反対したので殺しまくってしまい、シロベッキはクーデターを企んでいるかもしれないと、疑心暗鬼になっています。
いまや己が身を守るのは、わずかの護衛だけになりつつあります。
プーチンの耳に滅びの鐘が聞こえてきたようです。

 

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ウクライナ軍の反転攻勢 その「勝因」はなにか - 山下裕貴|論座 - 朝日新聞社の言論サイト (asahi.com)
ウクライナに平和と独立を

 

2022年9月28日 (水)

安倍晋三元首相の国葬における菅義偉前首相の追悼の辞

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NHK

すばらしい弔辞です。私はいくども涙が止まりませんでした。
記事を急遽差し替えました。

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ありがとう 安倍元総理 デジタル献花プロジェクト

 

                                                            ~~~~~

7月の8日でした。

信じられない一報を耳にし、とにかく一命をとりとめてほしい。あなたにお目にかかりたい。同じ空間で同じ空気を共にしたい。その一心で現地に向かい、そしてあなたならではの温かなほほ笑みに、最後の一瞬、接することができました。

あの運命の日から、80日がたってしまいました。

あれからも朝は来て、日は暮れていきます。やかましかったセミはいつのまにか鳴りをひそめ、高い空には秋の雲がたなびくようになりました。

季節は歩みを進めます。あなたという人がいないのに、時は過ぎる。無情でも過ぎていくことに、私はいまだに許せないものを覚えます。

天はなぜ、よりにもよってこのような悲劇を現実にし、生命(いのち)を失ってはならない人から生命を召し上げてしまったのか。

口惜しくてなりません。悲しみと怒りを交互に感じながら、今日のこの日を迎えました。

しかし、安倍総理とお呼びしますが、ご覧になれますか。ここ武道館の周りには花をささげよう、国葬儀に立ちあおうと、たくさんの人が集まってくれています。

20代、30代の人たちが少なくないようです。明日を担う若者たちが大勢、あなたを慕い、あなたを見送りに来ています。

総理、あなたは今日よりも明日の方がよくなる日本を創りたい。若い人たちに希望を持たせたいという強い信念を持ち、毎日、毎日、国民に語りかけておられた。そして、日本よ、日本人よ、世界の真ん中で咲き誇れ。これがあなたの口癖でした。

次の時代を担う人々が未来を明るく思い描いて初めて経済も成長するのだと。いま、あなたを惜しむ若い人たちが、こんなにもたくさんいるということは、歩みをともにした者として、これ以上にうれしいことはありません。報われた思いであります。

平成12年、日本政府は北朝鮮にコメを送ろうとしておりました。私は当選まだ2回の議員でしたが、「草の根の国民に届くのならよいが、その保証がない限り、軍部を肥やすようなことはすべきでない」と言って、自民党総務会で大反対の意見をぶちましたところ、これが新聞に載りました。

すると、記事を見たあなたは「会いたい」と電話をかけてくれました。

「菅さんの言っていることは正しい。北朝鮮が拉致した日本人を取り戻すため、一緒に行動してくれればうれしい」と、そういうお話でした。

信念と迫力に満ちたあの時のあなたの言葉は、その後の私自身の政治活動の糧となりました。

そのまっすぐな目、信念を貫こうとする姿勢に打たれ、私は直感いたしました。この人こそはいつか総理になる人、ならねばならない人なのだと、確信をしたのであります。

私が生涯誇りとするのは、この確信において、一度として揺らがなかったことであります。総理、あなたは一度、持病が悪くなって、総理の座をしりぞきました。そのことを負い目に思って、二度目の自民党総裁選出馬をずいぶんと迷っておられました。

最後には2人で銀座の焼鳥屋に行き、私は一生懸命、あなたを口説きました。それが使命だと思ったからです。3時間後にはようやく、首をタテに振ってくれた。私はこのことを「菅義偉、生涯最大の達成」として、いつまでも誇らしく思うであろうと思います。

総理が官邸にいるときは欠かさず、一日に一度、気兼ねのない話をしました。今でも、ふと一人になると、そうした日々の様子がまざまざとと蘇ってまいります。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に入るのを、私はできれば時間をかけたほうがいいという立場でした。総理は「タイミングを失してはならない。やるなら早いほうがいい」という意見で、どちらが正しかったかは、もはや歴史が証明済みです。

一歩後退すると勢いを失う。前進してこそ活路が開けると思っていたのでしょう。総理、あなたの判断はいつも正しかった。

安倍総理。日本国はあなたという歴史上かけがえのないリーダーをいただいたからこそ、特定秘密保護法、一連の平和安全法制、改正組織犯罪処罰法など難しかった法案を、すべて成立をさせることができました。どの一つを欠いても、わが国の安全は確固たるものにはならない。あなたの信念、そして決意に、私たちはとこしえの感謝をささげるものであります。

国難を突破し、強い日本を創る。そして真の平和国家日本を希求し、日本をあらゆる分野で世界に貢献できる国にする。そんな覚悟と決断の毎日が続く中にあっても、総理、あなたは常に笑顔を絶やさなかった。いつもまわりの人たちに心を配り、優しさを降り注いだ。

総理大臣官邸で共に過ごし、あらゆる苦楽を共にした7年8カ月。私は本当に幸せでした。私だけではなく、すべてのスタッフたちがあの厳しい日々の中で、明るく生き生きと働いていたことを思い起こします。何度でも申し上げます。安倍総理、あなたはわが国、日本にとっての真のリーダーでした。

衆議院第1会館1212号室の、あなたの机には読みかけの本が1冊、ありました。岡義武著『山県有朋』です。

ここまで読んだという最後のページは、端を折ってありました。そしてそのページにはマーカーペンで、線を引いたところがありました。しるしをつけた箇所にあったのは、いみじくも山県有朋が長年の盟友、伊藤博文に先立たれ、故人をしのんで詠んだ歌でありました。

総理、今、この歌くらい、私自身の思いをよく詠んだ一首はありません。

「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ」

「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ」

深い悲しみと寂しさを覚えます。総理、本当にありがとうございました。どうか安らかに、お休みください。

 

【動画】【安倍元首相国葬】菅義偉前首相「真のリーダーでした」 友人代表の追悼の辞全文 - 産経ニュース (sankei.com)

2022年9月27日 (火)

ロシア人は逃げるのではなく、戦争を止める努力をしろ

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ロシアは戦後初の「部分動員令」を出してしまい、これが巨大隕石クラスの衝撃をロシア国内に与えています。

「第二次世界大戦以来、ロシア初の軍事動員を命じるウラジーミル・プーチン大統領の動きは、ロシア全土で抗議行動を引き起こし、軍人年齢の男性の群れが逃げるのを見て、国境での航空券を売り切れさせた。
複数の報告書はまた、特別な軍事スキルや戦闘経験を持つ者だけが召集されるというセルゲイ・ショイグ国防相の保証に反して、兵役に就いていない人々が命令書を暴露しており、超忠実な親クレムリンの人物でさえ公に懸念を表明するよう促している。
ロシアのトップ2の国会議員、どちらもプーチンの親密な同盟者で、動員運動の展開方法に対する国民の怒りにはっきりと言及した」
(ロイター 9月25日)
Putin allies express concern over mobilisation 'excesses' (yahoo.com)

人権団体によると、今週これまでに数十の都市で動員に反対する集会で2千人以上が拘束されており、日曜日にはロシアの極東とシベリアでさらに多くの抗議行動が起きたとされています。
しかもデモの拘束者は警察署で徴兵令状を執行されて、即座に徴兵を言い渡された例もあるようです。

「同団体「OVDインフォ」の報道担当者によると、拘束者の1人は軍への編入を拒めば立件すると脅されたという。
ロシア政府は徴兵を拒否した場合、禁錮15年を科す方針を明らかにしている。首都モスクワの検察当局は21日の声明で、抗議活動への参加者は最長で禁錮15年の刑が言い渡される可能性があると警告していた」
(CNN9月23日)
動員令に抗議のデモ参加者、拘束後に直接徴兵か ロシア(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース

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再び反戦デモ、700人超拘束 呼び掛けの団体捜索 ロシア(時事通信) - Yahoo!ニュース

独立系の通信は、ロシア各地の徴兵事務所が襲撃されたことを伝えています。

「軍の登録および入隊事務所とさまざまな行政機関の最初の放火が9月21-22日の夜に始まったことは注目に値する。
サンクトペテルブルクでは、見知らぬ人物が軍の登録・入隊事務所の窓から「モロトフカクテル」を投げつけ、消防士が到着する前に火が部屋全体を包み込んだ。彼らは、サマラ、オレンブルク、ニジニ・ノヴゴロド地方、トランス・バイカル地方の徴兵事務所に火を放った。
9月23日、少なくとも4件の軍登録・入隊事務所と管理棟の放火が判明した」
(ロシアタイムスハブ9月25日)
ロシア軍の登録・入隊事務所で多くの火災が発生(写真) - タイムズ・ハブ (thetimeshub.in)

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この動員令は、ロシア連邦を構成する各共和国にも命じられています。
イスラム教圏のダゲスタン共和国では強烈な抗議運動が起きました。動画によれば、住民が動員を阻止するため道路を封鎖し、これを解散させるため警察が威嚇射撃を行っている光景が撮影されています。
住民は警官に「ウクライナがロシアを攻撃したのではなくロシアがウクライナを攻撃した」と問い詰める様子が見られています。

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Дагестане протестующих против мобилизации разгоняют стрельбой - YouTube ダゲスタン共和国での徴兵抗議運動

ダゲスタンのメリコフ首長はつぎのような声明を出しています。

「ダゲスタンのセルゲイ・メリコフ首長は25日、共和国内での動員に「誤りがあった」とメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した」
(ロイター9月26日)
ロシア南部ダゲスタン共和国で動員反対デモ、100人拘束 | Reuters

ショイグ国防相の説明と異なり、軍務経験のない人や幼い子どものいる親が招集されたという報告が複数なされており、メリコフはこのことを「誤りだ」と言ったと思われます。
また同様の騒乱は、サハ共和国の首都ヤクーツク でも確認されており、拡大の様相を見せています。

 ただしこの動員令は、高官の師弟には無効のようで、ペスコフ大統領報道官の息子は応じないそうです。

「独立系放送局「ドシチ」はこの日の生放送で、司会者が徴兵施設の担当者を装い、ペスコフ大統領報道官の息子ニコライ氏に電話。「翌朝10時に出頭するように」と迫ると、ニコライ氏は姓を名乗った上で「当然応じない」と拒否したという」
(時事9月21日) 

こういった高官師弟がいる一方、徴兵逃れをしたとされる者に対しては厳罰化が待っています。

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徴兵逃れで23歳の住民に対する刑事訴訟開始 サハリン捜査当局 - 北方領土の話題と最新事情 (hatenablog.com)

さらにプーチンは9月24日、降伏あるいは脱走を試みたり、戦闘を拒否した兵士に対し、最大10年の禁錮刑を科す新たな法案に署名しました。
徴兵に応じれば地獄のウクライナ戦線、降伏しようとしても牢獄、逃げてもやはり牢獄というわけです。
すでにこの徴兵拒否厳罰化法はこの春から施行されおり、逮捕者も相当数出ています。

「ロシア連邦捜査委員会のサハリン州ドリンスク地区当局は、法的根拠がないのに徴兵を逃れたとして23歳の地元住民に対する刑事訴訟を開始した。当局の調査によると、容疑者は兵役に適していると宣言され、ロシア連邦の軍隊に徴兵された。2021年9月に住民は市の軍事委員会に出頭するよう通知されたが、正当な理由なしに指定された時間に現れず、徴兵を回避した」
(citysakh.ru 2022年4月29日)

いままで徴兵範囲が都市部を除いた僻地にかけられていたのを、徴兵の全国化に伴って、一気に全国化しました。
同時にプーチンは、1年間兵役についた外国人にロシア市民権を与えることを定めた法案にも署名しました。
これで徴兵に応じれば、ロシア市民権を得るために通常義務付けられる5年間の居住実績が免除されることになります。
懲役者からも徴兵しているようで、大戦中の囚人大隊のようなものでも作る気でしょうか。
もはやなりふりかまわぬ全力動員です。
いかにロシアが深刻な兵力不足に直面しているのかを示しています。

さて、プーチンと現地軍司令部との間で大きな食い違いが見られるようになってきました。
プーチンが特にこだわっているのは、南部ヘルソンの死守です。
ヘルソンは、プーチンの栄光の源泉であるクリミア半島を制する要衝です。
ヘルソンを失うと、クリミアは一気に孤立化することになるために、プーチンは住民投票を急いで併合しようと企んでいます。

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ウクライナ軍は8月下旬、ヘルソンに対してロシア軍に対して本格的な反攻を開始しました。
これは後の9月の東部反攻の陽動作戦でもあったと同時に、後の南部反攻への足掛かりでした。
攻防の焦点となったのがこのヘルソンで、ロシアは甚大な被害を出し、現地司令官はプーチンに対し、ロシア軍がドニプロ川を渡って秩序正しく撤退することを認めるよう要請しました。
要するに、撤退要請です。
秩序ある撤退によって、東部戦線で見せたような兵隊が散を乱して我がちに逃亡したり、装備を放棄するようなことにならないからです。

しかしプーチンから返ってきた答えはノー。ヘルソンを死守せよでした。
このことによるロシア現地軍の士気の低下は、すさまじいものだったそうです。
そりゃそうです。すでにヘルソンのロシア軍部隊は東部から南部に伸びる補給拠点をウクライナ軍に奪還されているのですから、武器・食料・補充兵員といった補給が受けられません。
その上プーチンは、反抗的なヘルソン市民に住民投票を強いて領土化を急げというのですから、たまったもんじゃありません。
このままいけば、ヘルソンの市民の抵抗が強まり、頭上からはたえまなくウクライナが砲撃をしかけてくる、そして援軍はゼロ、武器弾薬は払底しつつあるのですから、お察しします。もはや早めの投降しかありません。

実は今のロシアには、ヘルソン現地司令官が要請したような補充兵を送る人的余裕がないのです。ない袖は振れない。
あれば政治的にリスキーな大都市部での動員をする必要がなかったし、1年間兵役についた外国人にロシア市民権を与える必要もがなかったはずです。

また、この部分動員令は、ロシアにとどまってきた企業に最後の決断をさせてしまいました。
ウクライナ侵略に伴い、多くの企業が活動を停止しましたが、従業員に対する責任から全員解雇にはせずに判断を先延ばしにしていたところが多かったようです。
しかしこの動員命令で勝利の見通しがないこと、仮に勝利したとしても甚大な損害を食いロシア経済が立ちいかなくなる可能性が高まったことがハッキリしたために、この動員令を区切りとして企業解散に走るところが増えたようです。
そもそも、ロシアの製造業は軍事産業しかなく、西側の電子製品の輸入が途絶えたために作りたくても作れず、売り上げは6分の1にまで減少しています。

いままで、国民が不安をかかえながらなんとかプーチンの言うことを聞いてきたのは、これは「戦争」ではない「特別軍事作戦」だから短期に終わる、戦闘による損害も少ない、動員は契約軍人だけだ、それも大都市は少ない、残虐行為はしていない、経済は西側の制裁を跳ね返しているゾ、と言ってきたことを信じてきたからです。
これらの政府の言ってきたことがまるごとウソだと、プーチンが白状してしまったのですから、どうにもなりません。
小泉悠氏が、核兵器の使用と並んで、これはしないだろうといっていた動員令の破壊力はそれほど巨大だったのです。

なお、多くの徴兵年齢の青年が、外国へと逃亡しようとして周辺国と摩擦を起こしています。 

「ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアはEUビザ所有のロシア人入国を禁止済みで、プーチン大統領の発表した動員令から陸路で逃げるためにはフィンランド、ジョージア、カザフスタンなど向かうしかないのだが、フィンランドはロシア人に発給する観光ビザを大幅に制限、カザフスタンも兵役を逃れるための亡命申請は認めない方針で、ジョージアでも「ロシア人へのビザ発給を規制すべきだ」という声がが上がっている」
Russian Vehicles Flock To Georgian Border Following Partial Military Mobilization - YouTube

リトアニアのシモニーテ首相は「侵攻は2月24日に始まったのでロシア人はこの戦争について十分考える時間があったはずだ。ソファに座りテレビを通じて戦争を見ているときは大丈夫だと考え、戦争が身近に迫ると国外に逃げ出そうとするロシア人を人道的な理由では受け入れてはいけない。他の国もロシア人を動員から助けるべきではない」と冷徹な発言をしています。
ランズベルギス外相も「我々は責任逃れが目的の亡命者を容認しない。ロシア人は祖国に留まってプーチンと戦うべきだ」と主張しました。
まことに正論です。

 

  ●デジタル献花をしてきました。
ありがとう 安倍元総理 デジタル献花プロジェクト

 

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ソーシャルメディアに流れたウクライナ国旗を掲げる兵士らの画像 - CNN.co.jp

ウクライナに平和と独立を

2022年9月26日 (月)

テロリストに何も与えない。名前もだ

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やがて国葬がおこなわれますが、すでに失敗しています。
なぜなら国が執り行う最高の儀礼としての国葬の「魂」ないしは背骨とでも言うべき部分が、大きく欠落したままだからです。

岸田氏は、国葬の理由をこのように説明しています。

「岸田首相は安倍元首相が憲政史上初最長の首相在任者だったこと、震災復興や経済再生に尽力したこと、日米同盟を基軸とした戦略的外交を主導したこと、諸外国で議会の追悼決議や服喪のほか日本国民へも弔意が示されたことから、「葬儀を国の儀式として実施することで、海外からの敬意・弔意に礼節を持って答える必要もあると思う」と国葬を決定した理由を話しました」
(ビジネスインサイダー9月8日)
岸田首相、“国葬”で「丁寧な説明」は…。野党から基準、法的根拠への疑問相次ぐ【閉会中審査・詳報】 | Business Insider Japan

こんな説明で国民が納得すると思う岸田氏も岸田氏です。
最長政権だったから、ふざけるのもいいかげんにしてほしい。
そこですか、安倍氏の命をかけてた仕事は。長期政権をダラダラ続けたために安倍氏は命まで狙われたのだとでも。
経済再生や震災復興に尽力したのは、あまりにその前の民主党政権がその対局だったからがんばらざるを得なかっただけです。
海外からの賛辞に至っては、首相が国民に伝える言葉でしょうか。
海外が絶賛しているから、安倍氏を讃えようということになりはしませんか。

ズレ切っています。根本的に岸田氏は勘違いしています。
安倍氏が上げた膨大な業績を偲ぶために国葬をするのではありません。
海外からの賓客が来るから国葬をするわけでもありません。

弔問外交は重要な外交ファクターですが、他ならぬ安倍氏がそのホストならともかく岸田氏では力不足。
ならば国際社会に対してわが国が示さねばならないのは、一般的友好ではなくテロへの戦いへの覚悟なのです。

ところが岸田政権は、安倍氏が暗殺されたことに腰砕けしてしまいました。
無能な上に、テロリストの情報を小出しにリークして情報操作を企てた奈良県警を放置したのです。
事件直後に奈良県警から警視庁公安部に取り調べを移管すべきだったのに、それすらしないために山上某の取り調べはリークされ放題です。

そしていまや安倍氏暗殺事件は本質から大きくはずれて、旧統一教会狩りと化してしまいました。
これは自民党の旧統一教会問題に対する危機管理の根本的失敗のためです。
そのうえに泥棒に負い銭よろしく、暗殺発生から国葬までの重要かつセンシディブな時期に、自民党自ら旧統一教会調査をしますとまで言ってしまうのですから、どうしようもありません。

安倍氏の業績について言い出せば、今回のように安倍氏をめぐる評価の議論に入ってしまいます。
そんなことは、後から歴史家がやればよろしい。
いま必要なことは、「テロとの戦い」を宣言する場として国葬を執り行うことです。
それに尽きます。

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「ニュージーランドは男に何も与えない 名前もだ」アーダーン首相 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン

2019年、ニュージーランドでイスラム教の礼拝所が襲撃され50人が死亡した事件でのアーダーン・ニュージーランド首相はこう言いました。
やや長いですが、引用します。

「事件後初めて開かれた19日のニュージーランド議会には、イスラム教の宗教指導者が招かれ、冒頭、アラビア語で祈りの言葉をささげました。
続いて、黒いスーツに身を包んだアーダーン首相が登壇し、13分間にわたって演説しました。
首相は、初めにアラビア語であいさつしたあと「事件のあった金曜日は、ニュージーランドにとって最悪の日となったが、被害者の遺族にとっては最悪という言葉では表現しきれない日となった。私たちは遺族の悲しみを完全に共有することまではできないかもしれないが、ともに歩むことはできる」と述べ、遺族にあらゆる支援を尽くすことを誓いました。
そして、容疑者の男について「テロの目的の1つは、悪名をとどろかせることだ。だから私は今後、男の名前を言うことはない。むしろ命を奪われた人たちの名前を呼ぼう。ニュージーランドは男に何も与えない。名前もだ」と述べたうえで、容疑者に勇敢に立ち向かった人たちとして、パキスタン出身の男性と、アフガニスタン出身の男性の事件当時の状況を名前とともに紹介しました」
(NHK2019年3月19日)

岸田氏の国葬の説明と比較してみるといいでしょう。あまりの格調の違いに情けなくなります。
アーダーン首相は、テロリズムをその被害者の宗教、政治思想に関わりなく、広く社会が全力で戦うべきものとして演説しました。
岸田氏は、テロリズムについてなにか発言したでしょうか。
ひとこともない。だから山上某を「義士」だとするような阿呆がうまれるのです。

この国民すべてが等しくテロリズムの脅威を共有し、それに対して国と社会が全力を上げて戦う、この原則的姿勢なきところで国葬をするから、いまのように6割の国民が反対するのです。
岸田氏は、安倍氏がコレをやったアレをした、海外では、などとつまらない長広舌をふるうのではなく、ひとこと、ここで国葬をするのはテロリズムに対する日本国家の姿勢を明確にする、とだけ言っていればよかったのです。

しかし岸田氏はテロリストに「名を与えて」しまいました。
テロリストはアーダーン首相が言うように「名」を欲しています。
己の行為が、私的な怨念ではなく崇高なものだと主張したい、自分は社会悪と戦ったのだと知ってほしい、これは古今東西すべてのテロリスト共通の真理だからです。
これがテロリストの真の報酬です。
アーダーン氏の言う「テロの目的は悪名を轟かせること」です。

だから絶対にテロリストに「報酬」を払ってはなりません。
しかしどうですか、岸田氏はこの1カ月かかってテロリストに膨大な額の「報酬」を支払ってしまいました。
いまこの男は「名を与えぬ」どころか、メディアの助けを得て、その「報酬」を得ました。
いまや映画まで真正テロリストの赤軍映画監督に作ってもらえるとのこと。
そしてそれを褒めたたえたメディアまでがでました。朝日です。

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朝日

朝日にいわせると、この赤軍監督の映画は「客観的な映画」なのだそうです(苦笑)。

「父の自殺、兄の失明、そして母の統一教会(現世界平和統一家庭連合)入信。進学の道を断たれた川上が統一教会への怒りを募らせ、精神的に行き詰まっていく様を丁寧に追っている。暴力に訴えた川上に対し、彼の妹が批判的な視線を向けるなど、客観的に容疑者を描こうとしている」
(朝日9月22日)
山上容疑者モデルの映画を緊急上映 元革命家の監督「英雄視しない」:朝日新聞デジタル (asahi.com)

私はこのようなものを論評したくありません。

 笑劇も極まれりです。
すでに山上某は目的を達したのです。



 

 

2022年9月25日 (日)

日曜写真館 うつりきてお彼岸花の花ざかり

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曼珠沙華咲いてここがわたしの寝るところ  山頭火

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お彼岸のお彼岸花をみほとけに 山頭火

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この旅、果もない旅のつくつくぼうし  山頭火

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悔いるこころの曼珠沙華燃ゆる 山頭火

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彼岸花さくふるさとはお墓のあるばかり 山頭火

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いつまで生きる曼珠沙華咲きだした 山頭火

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歩きつづける彼岸花咲きつづける  山頭火

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捨てきれない荷物のおもさまへうしろ 山頭火

 

 

 

2022年9月24日 (土)

もはや解体寸前ロシア版NATO

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ウクライナにおけるロシア大敗の余波は多方面に及びました。
そりゃ兵隊が装備も戦車も捨てて逃げ出し司令官までがとっ捕まり、ドネツク・ルガンスク、ヘルソンの支配が危うくなったのを見ちゃったのですからね。
そのうえに続々と占領地での残着行為が明らかになれば、初めに言っていたネオナチをやっつけるなんていう「大義」はだれひとり信じてはいないでしょう。
ナチは自分のほうですから。

そして止せばいいのに、ロシア国内で30万人動員をかけてしまいました。
動員かけて予備役招集しても、いまでもロシアは年間20万人くらい徴兵しているので、そのうえに30万人分の訓練施設があるわけではありません。
どうするんでしょうかね。徴兵した兵士にメシも食わさんで野宿させていると、兵士母の会は怒り心頭です。

これでいままでプーチンが言ってきた「特別軍事作戦」というウソがバレて、ほんとうの戦争で大敗しており、勝つ見込みはほとんどゼロということが国内に知れ渡りました。
無風に見えたロシア国内も騒然としてきました。

一方ロシアがウクライナとの戦争に手一杯の状況は、ロシアが押さえ込んでいた南コーカサスや中央アジアでの地殻変動を生み出しました。
アルメニアとアゼルバイジャンは戦闘を再開し、なんとか停戦にはこぎつけたものの、アゼルバイジャン軍はアルメニア領から撤兵していません。

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アゼルバイジャン、ナゴルノカラバフめぐり軍事衝突 アルメニア軍49人死亡|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

怒ったアルメニアは、集団安全保障条約機構(CSTO)の第4条に基づき「軍事行動を含むあらゆる支援」を加盟国に要求しました。
CSTOとは、ロシアの衛星国であるアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの軍事同盟です。
もちろん軍事的にはロシア&アザーズといった力関係ですから、CSTOに介入を要請したといっても、盟主のロシアにSOSを出したのです。
ところがロシアはウクライナ戦争でテンパッているためにそんな余力があるはずもなく、他の加盟国も揃って援軍を送るどころかカザフスタンのように平和維持軍の派遣すら拒否するといったありさまです。

失望したアルメニアは、CSTOなど屁のつっぱりにならんとばかりに、ペロシ米下院議長のアルメニア訪問を受け入れました。
ブリンケン国務長官はアゼルバイジャンに「アルメニア領からの即時撤退」を要請し、エレバンを訪問したペロシ議長は「アルメニアの領土保全、主権、民主主義は我々にとって価値のあるものだ」と述べて、なんだったら仲介の労をとってもいいとほのめかしています。
この訪問に随行したパローン議員はもっと露骨に、「アルメニアの安全保障がロシアとの取り決めの一部であることは承知しているが、米国はアルメニアの安全保障を非常に懸念している。我々に出来ることは何でもしたい」と言って、なんだったらロシアと縁を切ってNATOに加盟してみますか、とささやいたようです。

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CSTOはもう1年ヘッドレスのままに - レポート|ユーラシアネット (eurasianet.org)

また中央アジアの雄であり、ロシアに次ぐ経済規模を持ち、資源も豊かな国カザフスタンは、ソ連時代からの腐れ縁でロシアの衛星国家として、CSTOに加盟をしてきましたが、離脱が噂されています。

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JETRO

2022年1月に起きたカザフスタン騒擾は、逮捕者約8000人、死者227人を出す結果となりましたが、このときはロシア軍が素早く軍事介入しました。
これは中国に向けての勢力の誇示でもありました。

「ロシアは旧ソ連諸国を自国の「影響圏」ないし「責任圏」とみなしている。そのなかでも、ロシア語やロシア系住民のプレゼンスが高く、ロシアを中心とした多国間枠組みに積極的に参画する一方、中国とロシアに挟まれるカザフスタンは後者にとっては自身の影響圏に留めたい国である。そして今回の介入により、カザフスタンに対してロシアがゆるぎない影響力を有していることを中国にも誇示したといえよう」
(齋藤竜太 JETRO2022年4月9日)
2022年カザフスタン騒擾――国際関係の視点から見えてくる「プーチンが引いた境界線」――(齋藤 竜太) - アジア経済研究所 (ide.go.jp)

しかし、いまのロシアには逆立ちしても、そんな力はどこにもありません。
カザフスタンは国境を接する中国からの浸透が激しく、経済は中国圏内にとっくに入っていますから、ここで役立たずのCSTOを見限って中国と軍事同盟を結ぶのではないかという噂も出ていました。

カザフスタンが中国に接近した場合、ロシアは中央アジアの「責任圏」を完全に喪失します。
結果として、ロシアと中国の間で大きな対立が発生する可能性が高まるでしょう。
表向きは蜜月関係素に見える中露ですが、実態はかつての中ソ対立の昔から互いに潜在的脅威と見なしていました。
世界最長の国境を接し,共に相手の首都を狙える核ミサイルを持つ国同士に友情は存在しません。

ただ「敵の敵は味方」の論理で擬似的同盟を組んでいただけにすぎません。
これがロシアの大敗で、一気に力関係が崩れました。
今後ウクライナ戦争でロシアが負けようものなら、この擬似的中露同盟はたちまち雲散霧消するかもしれません。

というわけで、プーチンの残る頼りは、死なばもろともを誓ったベラルーシだけとなりました。
プーチンはウクライナ戦争の獲得目標を、EUやNATOの結束攪乱に置いていたはずですが、蓋を開けてみたら、よもやと思っていたはずのフィンランドとスウエーデンが中立政策を捨ててNATOに加盟してしまい、自分の軍事同盟であるCSTOのほうは空中分解寸前という結果になりました。
いまやロシアは、自分の縄張りだと信じて疑わなかった南コーカサスや中央アジアまで中国と米国に侵食されています。

ああ、負けたくないもんだね。目も覚めるような失敗でした。
ガンバレ、ウラジミール、まだムネオがいるぞ。

 

 

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AFP
ウクライナに平和と独立を

 

 

2022年9月23日 (金)

泣くな、プーチン!

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戦争というのは負けたくないもので、プーチンはさんざんなメにあっています。
あまりに多くの兵員と装備を失ったために、予備役に30万人の動員をかけるそうです。

「[ロンドン 21日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は21日、軍の部分動員令に署名したと明らかにした。動員令は第2次世界大戦以来で即日適用される。西側が「核の脅し」を続けるなら、ロシアは兵力の全てを用いて対応すると警告した。
国民に向けたテレビ演説で「わが国の領土保全が脅かされるなら、われわれの市民を守るためにあらゆる手段を用いる。これは脅しではない」と述べた」(ロイター9月21日)
プーチン大統領、軍動員令で30万人召集 西側の「核の脅し」批判 | Reuters 

グレンコ・アンドリー氏は30万人動員を3回かけて100万の軍団をつくる予定だとみているようです。

「道理で、動員30万人の中途半端な数字は変だと思いました。30万人で戦い慣れたウクライナ軍に勝ち、60万平方キロのウクライナ国土を占領できるわけないのです。実際はプーチンは3回に分けて30万人ずつ動員して、最終的に約100万人の征服軍を編成するつもりです」
グレンコ アンドリー Twitter

とまれ、これ「特別軍事作戦」で戦争じゃなかったよね。
わざわざ「特別」とつけているくらいだから限定的紛争対応ていどの意味のはずなのに、予備役動員って不思議だなぁ、ボクわかんないや。

プーチンはわざわざ大都市圏の兵役をせずに辺境地域からの兵隊だけをウクライナに送り込むという姑息なことをしていたのが、とうとうあい続く大損害で兵力不足を来しました。

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ウクライナ侵攻のロシア軍に未熟な徴兵者、母親ら批判 プーチン政権、火消しに躍起:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)

もっともプーチンは3 月 8 日の国際女性デーで、「ウクライナの特別軍事作戦に予備軍が召集されることはない」「携わるのはプロの兵士たちだけだ」とって演説していたのですから、モノ忘れが激しいこと。
それに 自分で「派兵されるのはプロの将兵である契約兵のみ だ」と言っていたように、何万徴兵しようと訓練されていない兵隊などウクライナ戦線では足手まといになるだけのことです。
自衛隊が教育期間を2年間としているのは、この程度の長さがないと兵士として通用しないからです。
しかしいまのロシア軍には、自衛隊の総数より多い30万もの新兵を教育する施設も、教官もいませんからどうする気なんでしょう。

ロシアの「兵士母の会」がこんなことを言っています。

「100人の徴集兵 ドルビノ駅の構内で飢えている 兵士の母の会連合会のホットラインに、ドルビノ駅(ウクライナ国境沿いのロシア西部の駅)の構内に、第4親衛戦車師団(司令部・モスクワ州)の契約兵と徴集兵が100人以上いると、地元住民から連絡があった。兵士たちはすでに5日もとどまっており、自腹で食料を買っているが、金がつきた兵士もいるという。
兵士用の携帯食はどこにもなく、いつ届くかもわからない。住民が証拠の写真を送ってくれた。たくさんの戦士が、缶詰に入ったニシンのように、狭いところにいる。タイルの床にじかに寝ている。食料も手を洗う水もない」
兵士の母の会連合会
朝日gloveプラス(2022年3月15日)

ろくにメシさえ食わせないで戦争しろというのはむりです。
こんな銃を持った不満だらけの者を、モスクワに集めたらアブナイですよ。
ロシア革命は、ボロボロになったロシア軍兵士によって引き起こされたことをお忘れのようです。

ついでに「核の脅し」をしたのは自分だよね。
いつのまにか主客逆転して自分が被害者になってらー(棒)。

と、謎だらけですが、やっと遅まきながら眼が覚めたのがロシア国民でした。
ひょっとして負けているんじゃないか、そう思った市民は街頭にくり出しました。
勝ってればこんなデモは起きません。
情報統制国家でも、様々な地下ルートでウクライナ戦争のことは漏れ伝わるものなのです。
特に負け戦は。

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CNN

「(CNN) ロシアの独立人権監視団体「OVDインフォ」が21日に発表したところによると、ロシアの20以上の都市で行われた反戦デモの取り締まりで、少なくとも1045人が拘束された。
OVDインフォがSNS「テレグラム」で公開した写真には、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで警察がデモ参加者に対し警棒を使用している様子がうつっている。また、ビデオ映像ではイサキエフスキー大聖堂に集まった群衆が「動員反対」のシュプレヒコールをあげる中、警察が群衆を柵の向こうに封じ込めようとしている」
(CNN9月22日)ロシア、反戦デモ取り締まりで1000人超拘束 人権団体が報告 - CNN.co.jp

ちなみに、ロシアではデモすると全員無条件でブタ箱行きですから、そうとうの覚悟がいります。
外国に脱出しようとする若者らが空港に殺到しているようで、男性は出獄ができなくなったようです。

「海外へのフライトは、プーチンの部分的な動員に続いて売り切れた。
ジャーナリストのアミール・ツァルファティによると、ロシアの航空会社は、国防省から渡航許可の証拠を提示できない限り、18歳から65歳のロシア人男性へのチケット販売を停止した。(略)
ロシアから利用可能な外国の目的地へのすべてのフライトは、ウラジーミル・プーチン大統領がロシアの2500万人の予備役兵の「部分的な」動員を宣言した後、水曜日に売り切れた」
ロシアのトップ旅行計画ウェブサイト aviasales.ru によると、9月21日のモスクワからグルジア、トルコ、アルメニアの首都へのフライトは、プーチン大統領の発表から数分以内に利用できなかった」
BREAKING ロシアの航空会社が18歳から65歳までのロシア人男性へのチケット販売停止を命じる - AIRLIVE

そしてプーチン演説は最後にはお定まりの核の脅しで、わざわざ「これは脅しではない」とまで付け足しています。
ルトワックは、大都市近辺からの動員もできないようなプーチンが核を使用できるはずもないと喝破しています。

なんせウクライナ・ハルキウ州では、まことにアッパレな負けっぷりで、大量の武器弾薬が手つかずで遺棄されていました。
これを見た自衛隊の元将官は、「撤退に際しては敵に武器弾薬、情報を渡さないのが大原則。持ち去ることができないなら爆破するのが世界の軍隊の常識で、信じられないような軍規の崩壊ぶりだ」と言っていましたっけね。
軍服を脱いで、ママチャリを盗んで逃げたロシア兵もいたとか。

ウクライナ国防省は、「最新のロシア戦車T-90Mがハルキウ地域で完璧な状態で発見されました。所有者はウクライナ陸軍に連絡するよう、お願いします。確認のためのサインはあなた方の掲げる白旗になります。大砲の弾は元の持ち主の頭上にお返しいたします」というツイートをしています。

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「解放を祈っていた」 ウクライナ軍が奪還した街、現地の様子は CNN EXCLUSIVE(3/3) - CNN.co.jp

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ウクライナ軍に鹵獲されたロシア軍の最新鋭戦車T-90M、損失は3両目 - YouTube

大砲の弾ならまだしも、最新鋭戦車T-90M プロルイヴや電子戦装置までが手つかずのまま遺棄されており、こちらはウクライナから米国やNATOへの貴重な返礼品となるでしょう。
そもそもT-90Mのようなロシア軍が少ししか保有していないお宝を前線に投入すること自体が、いかに戦車の数が不足しているのかを物語ってんます。

さて未確認情報ですが、弱り目に祟り目のプーチンですが、どうやら暗殺されかかったようです。
ソースは英国のタブロイド紙のザ・サンで、ここはよく飛ばしますので、話半分で。

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「ウラジミール・プーチンのリムジンは、ウクライナでの戦争が猛威を振るう中、暗殺未遂の可能性があるとして攻撃されたと、クレムリンのインサイダーは主張している。
ロシアの暴君の車は、左前輪に「大きなバン」音がして、その後に「重い煙」が続いたと、指導者に近い情報源は主張している。
プーチンのリムジンは、無傷で大統領と安全に運転された - しかし、彼の治安機関から複数の逮捕があった、と主張されている。
GVRテレグラムの一般チャンネルによると、69歳の彼の動きに関する秘密情報が侵害されたという主張の中で、彼のボディーガードの一部が姿を消したと報告されている。
反クレムリン・チャンネルは、プーチンが治安上の恐怖の中で、おとりのモーターケードで公邸に戻っていたと主張している。
「バックアップ」車列は5台の装甲車で構成され、プーチンが3台目だったと主張されている」
(ザ・サン9月14日)
ウクライナ侵略に対する'暗殺未遂'で、ウラジーミル・プーチンの車が'爆弾で攻撃'された'と、クレムリン内部関係者は主張|(thesun.co.uk)

現在のロシアは表向き平穏が保たれていますが、「プーチンの戦争」に反対するオリガルヒの一連の謎の死に対して、彼らは強い反発をもっており、彼らとFSBの一部のシロベッキが暴君暗殺を狙う可能性は、戦争当初からささやかれていました。
ここまで大敗すると、泥船から逃げ出す連中も多いことでしょう。

 

※後半はテーマが別なので次回に分割しました。

 

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決然たる不服従でロシア軍に対峙、占領地で広がる抵抗運動 ウクライナ(2/2) - CNN.co.jp
ウクライナに平和と独立を

 

 

 

 

2022年9月22日 (木)

立憲、旧統一教会に解散命令をだせと言い出す

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とうとう立憲は旧統一教会の宗教法人格を取り上げろ、と言い出しました。

「立憲民主党の安住淳国対委員長は14日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐり、宗教法人法に基づき解散命令を請求するよう政府に求める考えを示した。「宗教法人としての適格性について大変な疑念がある。解散手続きを裁判所に起こすべきだとの意見が立民内で大勢になる」と国会内で記者団に述べた。
同時に、日本維新の会や共産党など他の野党とも連携して対応する意向を強調。「臨時国会で一定の結論を得た方がいい」と語った。先送りした場合は「自民と旧統一教会との関係も終わらない」と指摘した。来月召集見込みの臨時国会で「徹底追及する」とした」
(産経2022年9月14日) 
旧統一教会「解散命令」を 立民・安住国対委員長 - 産経ニュース (sankei.com)

宗教法人格を取り上げて解散命令を出せ、と政府に迫りたいのだそうです。
反対するに決まっている公明との板挟みで、自民を苦境に陥れたいのでしょう。
ただし、本気で旧統一教会を解散まで追い込む意気込みとも思えません。
モリカケサクラ統一教会という具合に、政局パーフォーマンスをしたいのでしょうね。

というのは、元々こんな解散命令の実施例はかつてのサリンテロを働いたオウム真理教くらいしかなく、十数年前に盛んだった霊感商法ていどでは役不足です。
しかも教団本体はとうに分裂していますし、関連団体も多いので、どこまでかけろと言っているのでしょうか。

第2に、効果のほどが見えません。
なぜなら、一見コワモテに見える宗教法人格取り上げしても、たんに課税対象からはずれていた恩恵がなくなり、一般と同じ課税対象になるだけのことにすぎません。

別に破防法の組織解散ではないので、公安調査庁の執拗な監視があるわけでもなし、団体がなくなったら今度は任意の宗教組織に衣替えすればよいだけのことだからです。
あのオウムですら、アレフという別組織で松本をいまでも拝んでいますから、旧統一教会もそうしないわけがありません。
別組織に看板掛け替えをされた場合、解散命令は空振りとなります。

すると出てくるのが、フランスのカルト規制法もどきを作れという動きです。

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毎日

「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡り、カルト規制法制定の是非が議論になっている。野党は立憲民主党が中心となり、フランスの反セクト(カルト)法も参考にした法整備を主張するが、旧統一教会問題の「当事者」である自民党と、宗教団体を支持母体に持つ公明党は慎重な姿勢。10月召集の臨時国会の焦点の一つとなりそうだ」
(毎日 2022年9月15日)
反カルト、立法に温度差 野党は法整備主張、自公は慎重と警戒 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

このような意見はファーライトの人たちも言っているのですが、そうとうに無理筋です。
何度か言ってきていますが、こんなカルト法を作れるのは、フランスくらいなものだからです。

そもそもこういうことを言う人は、「政教分離」という概念をよく分からないで使っています。
「政教分離」(Separation of Church and State)は、あくまでも「教会と国家の分離」のことを意味します。
ここで言う「教会」は、カソリック教会のことです。
「政」とは政府、つまり国家のことで、政治活動一般や議会選挙まで含みません。
つまり、あくまでも「政」=国家が、特定の「教」=宗派に特典や恩恵を与えるな、という意味です。
下図のフランス革命前夜のように、市民の上に貴族があり、さらに最上階にカソリック聖職者が君臨する、こういう仕組みは作らせない、ということです。

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フランス革命をどう教えるか① : 山武の世界史 (exblog.jp)

一方、日本国憲法は、第20条「信教の自由」で「政教分離」をうたっています。

●憲法第二十条
1信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

問題は、この1項の「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」という条文を、まるで宗教者が政治参加することを禁じたように解釈してしまうことですが、正しい解釈ではありません。
革命前のフランスのような身分秩序自体が存在しない世俗国家において、国民のひとりとしての宗教者、あるいは信徒が政治に参加したり、政党を作り、はたまた政党を支持する活動をすることは、なんの問題もありません。

これを第20条の文節の前段の「国から特権を受け」の部分を読みとばして、後段の「政治上の権利を行使してはならない」だけ抜き出すから、宗教を信じる者が政治と関われないという意味に歪曲されてしまいます。
これでは宗教者はすべからく政治活動もできないし、選挙権・被選挙権もないというとんでもないことになります。
あくまでもこの文節の前段に「国から特権を受け」てはならない、とあることを見落とさないように。
「国から特権を受ける」ことが問題であって、信徒が政治に参加するのはなにが問題なのですか、ということです。

にもかかわらず、旧統一教会が政治家に講演を依頼した、祝電をもらったというだけで大騒ぎしています。
おいおい、信徒が政治家から話を聞くことが犯罪的なのでしょうか。
こういうメディアの報じ方の根っこは憲法第20条1項の歪曲から始まっています。
国葬が精神の自由を奪うと言って反対しておきながら、政教分離を歪曲してとらえて、旧統一教会狩りをするような連中に「立憲」などと名乗ってほしくはありません。

よく安易に旧統一教会に「反社会的団体」というレッテリングをしていますが、その規定も間違っています。
「反社」という概念はあいまいな使用をして拡大解釈をしないために、キチンとした定義があります。
反社とは暴力団のことです。

「反社会的勢力(以下「反社」といいます。)は、「集団的又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体等」とされています。(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下暴力団対策法」といいます。)2条、9条など参照)。
「威力を示して金品等の経済的な利益を要求する団体」ともいわれ、お金や経済的な利益を得るための手段として暴力等のおどしを使う団体です」
反社会的勢力とは?定義や暴力団との違い・見分け方を解説 (best-legal.jp)

暴力団対策法
第2条第2号
(暴力団とは)その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む)が集団的にまたは常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。

仮に、立憲が主張するように、 とことん旧統一教会を反社勢力として規定して地上から抹殺したいのなら、彼らに暴対策法2条2項のようなことをしてもらわねばなりません。
ここまでやれば立派な反社ですから、晴れて「暴力団対策法」(暴対法)にを適用することは可能です。
もちろん旧統一教会はそんなことをしているわけではありませんから、「反社団体」の拡大解釈なのです。

しかしこの暴対法によっても、暴力団は消滅しませんでした。
憲法の結社の自由に抵触する恐れがある、という左翼法曹界の意見に押されてそこまでできなかった、ということもありますが、地下に潜っただけだったのです。

「本法によって、暴力団員の数は減少し、暴力団事務所の撤去も進んだ。また、対立抗争事件数も減少し、その継続期間も短縮傾向にある。さらに、暴力団員による資金獲得活動も困難になった。
本法の施行の結果、暴力団の活動が法律に触れぬように巧妙になり、一般企業社会への進出(企業舎弟の増加)や組織擬装が増加するなど、組織の不透明化・地下組織化・マフィア化が進んだ。また、組織犯罪の国際化や、暴力団の寡占化や政治的殺害も進むことが懸念される」
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 - Wikipedia

誰の眼にも明らかな反社勢力である暴力団ですら組織解散に追い込めないのですから、宗教団体はなおさら無理です。
宗教団体は経済的利益の獲得を目的とした勢力ではなく、宗教的教義の実践を目的とした団体である以上不可能です。

信教の自由と結社の自由、政治活動の自由といった基本的人権を侵す危険性を承知の上で、特定宗派を壊滅させようとするなら、フランスのラシイテ(徹底した政教分離)のような国家原理がなければ無理ですが、何度も言ってきているように日本にはなじみません。
ラシイテあってのフランスのカルト宗教禁止法ですから、革命国家ではないわが国では100%無理なのです。

いまや旧統一教会の信教の自由や言論の自由を剥奪すべきだ、という憲法学者すら登場しています。

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九州大学南野森教授

九州大学の南野森教授(憲法学)は、TBS報道特集の中でこう言っています。

「統一教会は反社会的だから解散命令を出すべきだ。(反社会的な団体には)信教の自由や言論の自由などを持ち出して議論をしてはならない。統一教会は暴力団体だからだ」

いままで憲法学者らは、憲法は一字一句変えてはならない不磨の大典であるゾとしてきたのに、旧統一教会だけは除外するというのですから、おいおい護憲ってこんなていどのご都合主義だったのねと思います。
しかし現実の法の適用に当たっては、組織的暴力を振るっていないのですから暴対法でも無理、暴力的国家転覆も図っていないので破防法適用は論外、カルト禁止法すらできない以上、「旧統一教会は反社だから一点も接触を持つな」というのは暴論にすぎません。
そんなことを知ってか知らずか、「一点でも旧統一教会と接触していたらアウト」という自民党執行部の気が知れません。

私は旧統一教会に一点もシンパシーを持っていません。
文鮮明を拝むくらいなら、イワシの頭を拝むほうがましなくらいです。
しかし彼らに対するメディアや立憲のバッシングは過熱化し、もはや民主主義の破壊と化しています。
いかなる接点も持つな、解散させよ、取り締まる法律を作れとなると、次にくるのは信徒を予防拘禁せよ、ということになるのでしょうか。
山上のテロを正義化し、故安倍氏の死を貶める目的で始まったこの旧統一教会バッシングは、もうこの一歩手前まできているように感じられます。

 

 

2022年9月21日 (水)

宗教を知らないメディアと岸田氏

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メディアは旧統一教会を反社団体に指定し、これとわずかでも接点を持てばお前も同罪だと言い出しました。
一種の連座制ですから、おおよそ民主主義国家のメディアとは思えません。
岸田氏はたちまち日向のアイスのように崩れてしまって、こんなことを言い出すありさまです。

岸田文雄首相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との「絶縁」を宣言した。教団と党所属議員の関係が次々と明らかになり、内閣や党に対する世論の批判が強まっていることへの危機感からだ。ただ、具体的な対応策をめぐっては実効性を疑問視する声が早くも出ており、問題の幕引きにつながるかは不透明だ」
(時事2022年9月2日)
旧統一教会問題、幕引き見えず 「絶縁」宣言、実効性に疑問―自民:時事ドットコム (jiji.com)

え~なになに「実効性のある対応が疑問視」ですって、疑問もなにもあるわきゃないでしょう、そんなもん。
しかし岸田氏はこんな「対策」をとるとしています。だから優等生はいやだ。

「いわゆる旧統一教会に関連する問題について申し上げます」として、まず、私個人は、知り得る限り、当該団体とは関係がないということを申し上げます。
社会的に問題が指摘されている団体との関係については、国民に疑念を持たれるようなことがないよう十分に注意しなければなりません。国民の皆さんの疑念を払拭するため、今回の内閣改造に当たり、私から閣僚に対しては、政治家としての責任において、それぞれ当該団体との関係を点検し、その結果を踏まえて厳正に見直すことを言明し、それを了解した者のみを任命いたしました」
令和4年8月10日 岸田内閣総理大臣記者会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)

具体策はこういうことのようです。

「首相は会見で(1)党所属議員と教団の関係の点検結果をまとめて公表(2)関係を断つよう党内に徹底(3)社会的に問題とされる団体と関係しないよう党のチェック体制を強化―の3点を党に指示したと説明した」(時事前掲)

要は自主的にチェックします、というだけのことです。
所属議員に「あなたは旧統一教会となんらかの接触がありましたか」なんてマヌケな質問状でも送付するのでしょうか。
ほんとうにメディアがいうように、旧統一教会が自民を陰で操っていたなら、絶対に「私は旧統一教会のエージェントです」なんて名乗り出るはずがありませんけどね。

たぶんいろいろなメディアにも信徒はいるはずです。
別にかれらは霊感商法をしていたわけではなく、普通の社会人ですからね。
特に宗教を明らかにする必要がない我が国では、どこにも普通にいてあたりまえなのです。
それをまるでユダヤ人狩りのように探し出して、彼らとの接点を明らかにしろという、たいした民主主義国家です。
そうだ、いい案があります。いっそ旧統一教会信徒は服にそれとわかるワッペンでも付けさせましょうか。
メディアはわかっていないようですが、あなた方がやっていることはそのようなことなのです。

いいでしょうか、岸田さん、これはメディアが仕組んだあなたの政権を潰すための罠なんですよ。
メディアが粗雑に使い回す「旧統一教会系」という概念はどこまでを指すのか、概念規定がないところで「党内チェック」なんかやってもゼッタイに後から後から「接点」が見つかって、その都度ワイドショーはうれしげに「疑惑は深まる一方です」とやることでしょう。目に見えています。

 現にその後も見つかって、「報告漏れを指摘されています」とやられています。

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TBS

「旧統一教会との関係をめぐり、党としての調査結果を公表した後も、議員との新たな接点が発覚している問題で、自民党の茂木幹事長は、「党としてわざと出さないなんてありえない」と述べ、時期を見て追加で公表する方針を示しました。
自民党は、今月8日に党所属の国会議員と旧統一教会との関係を調査した結果、179人が接点があったと公表しましたが、その後も、報告漏れが明らかになるなど不備が指摘されています」
(TBS9月20日)
旧統一教会の調査 「党としてわざと出さないことは有り得ない」 追加報告めぐり茂木幹事長 (msn.com)

あたりまえじゃないですか、調査自体が無意味なのですから。

自民党が旧統一教会に乗っ取られていた、アベがその利権配りのドンだったなんて書いている者もいますが、たった2万の団体にそんな力はありません。
できるのは信徒であることを隠して、選挙ボランティアにもぐり込む程度のこと。
ないことを充分にわかって、メディアはさぁさぁ絶縁してみろ、調査後見つかったら大騒ぎしてやるからな、という趣向です。
だって、いわゆる「旧統一教会系」ってどこまでを指すのかだれも明確にしていないのです。

旧統一教会と関連団体は、「世界平和統一家庭連合」のほか「国際勝共連合」などの政治団体だけで29、社会団体15、文化団体8、教育・学術団体21、メディアでは「UPI」、「世界日報」、「ワシントンポスト」など23団体。
宗教団体9、医療団体4、関連企業30と、すそ野まで合わせるとわかっているだけで140にも達します。

これらの旧統一教会との関わりは、濃淡があって、ほとんど無関係に等しいところからゴリゴリのところまで多種多様です。
世界日報などルーツは旧統一教会かもしれませんが、とうにただの保守系新聞に変質していて、宗教臭さなどみじんもありません。

はるかに大きな信徒を持つ創価学会など膨大な係累団体を持っていて、3桁では済まないはずです。
あたりまえではありませんか。宗教はメディアが思うような辺境の修道院に住んでいるわけではなく、私たちも生きている現実の世俗に住んでいるのですから経済活動もし、社会活動もしているのです。

宗教というものが世俗にひろがっていて、信徒といえどただの社会人なのですから、あたりまえといえばあたりまえです。

メディアも岸田氏も、宗教を知らなさすぎます。
宗教はどこか天上界にある。崇高なる存在ではなく、普通の(時にはそれ以上に)カネと欲にまみれた世俗的存在なのです。
だから、スッパリと宗教と世俗を切ってしまえません。

岸田氏の誤りは、これらを一括して漠然と「当該団体」としてしまったことです。
しかしこれをメディアとリベラルは、「旧統一教会系」で一括りにして岸田氏の言葉を借りれば「社会的問題が指摘されている団体」であると決めつけ、なんの証拠もなくすべて「反社会的団体」と決めつけたわけです。

唯一の「反社会的団体」の根拠らしきものは霊感商法ですが、いつの話ですか、そんなもの。

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Shin HoriさんはTwitter

上のグラフを見てわかるのは、もっとも霊感商法が花盛りだったのは民主党政権となる前後の時期で、安倍政権になって急減しています。
山上某の母親も引っかかったのは20年前のことです。
グラフを見ると霊感商法が急減し始めたのは2009年を境にしていますが、これは霊感商法に刑事罰が課せられたからです。

そして霊感商法を消滅に追い込んだのは、メディアに旧統一教会とズブズブだったといわれている故安倍氏です。
2018年7月に安倍政権が消費者契約法を改正したために、霊感商法の契約を無効にすることができ、被害者救済の道が拓けました。
メディアはこのことを隠して「アベは旧統一教会とズブズブの関係だった」と言っていますが、もしそうならばこんな霊感商法に対する規制法を作る道理がありません。

メディアによれば、旧統一教会は自民党を支配しているそうなのに、どうしてこんな霊感商法規制法を作らせたのでしょうか。

そもそも、山上というテロリストが出てきたので、今になって旧統一教会を自民党を操る影の司令塔のように言っていますが、モリカケの頃は森友学園の籠池氏が日本会議役員だから、安倍政権は便宜を図ってやったんだ、なんて報じていませんでしたっけね。(遠い眼)
モリカケ当時は旧統一教会など影も形もありません。
自民党も操る影の司令塔が多くて大変です。

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籠池理事長、日本会議の役職も嘘だった。日本会議が「7年前に退会済み」と発表 | netgeek

朝日は民主党政権時代が霊感商法のピーク時だったことを伏せたうえで、それを撲滅に追い込んだ故安倍氏にこんなことを言って糺弾しています。

「国民の暮らしを守るべき政治家が、霊感商法や高額な献金が社会問題となっている教団の活動に、お墨付きを与えるようなことはあってはならない。岸信介元首相以来の付き合いといわれ、歴代の党幹部や派閥のトップが関わりを持ってきた自民党の責任はとりわけ重い」
(朝日新聞社説 8月3日)

いつもながら、「お墨付きを与える」とか「つきあい」といった曖昧模糊とした表現で、責任を追及するのですからたまりません。
モリカケの時は「忖度」などというテレパシーで、安倍氏が官僚を操っていたそうですから、まるで安倍氏は超能力者のようです。
朝日の政治部記者に、政治家が宗教団体とどういう「つきあい」をしているのか、よく社内取材してみるといい。
政治家は支持者を拒めませんから、頼まれればスピーチのひとつもします。
その程度の社交的行為が「お墨付きを与えた」というなら、野党には北朝鮮の建国記念パーティに出席して、大いに「お墨付き」を与えた者が多くいるはずですが。

それはさておき、この画期的法律でこれで霊感商法はパッタリと立ち行かなくなりました。
以降、「世界統一平和家庭連合」に改称してからは、宗教法人として不法行為が認定されたのは民事の2件だけで、刑事事件はゼロです。

しかし、メディアと野党に押されて自民党は「当該団体と無関係である」まで調査すると言い出しました。
意味がわかって使っているのでしょうか。
140団体ちかくある旧統一教会系の諸団体との「関係」など、叩けばかならずひとつやふたつ出てきます。

こういうところが、自民党リベラルのダメなところです。打たれ弱すぎます。
故安倍氏のように理不尽なことを言うメディアと戦おうとする気がまるでなく、初めから白旗を掲げて言うがままになっています。
原発政策や外交、国葬で、おお案外やるじゃないかと思っていた矢先ですから、なんだかなぁという気分です。
優等生すぎるのです。だから文雄クンはケンカができないようです。

 

2022年9月20日 (火)

国葬に法的根拠がないだって?

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なにやら国葬に国民の過半数が反対だとか、へぇーと言う気分です。
我が同胞の「空気に支配される」弱点が丸出しです。
わが国はかつての大戦に「空気に支配され」て突入し、危うく国を滅ぼしかかりましたが、いまだ根治していないようです。
モリカケだと煽られるとその気になって疑惑が深まったと思い、サクラだと煽られればやはりそうかアベのヤローがとうなずく。
山上某は気の毒な被害者で、諸悪の根は旧統一教会と癒着した自民党なのだとワイドショーで連日聞かされれば、国葬などにするな、鳥葬にしてしまえ、と思う。
かくして、社会全体に心静かに安倍氏を送ることさえできない「空気」を作ってしまうわけですが、おいおい、それでいいんでしょうか。
メディアが煽る「空気」で動いた結果、戦争になったのではなかったのですかね。

ちなみに、国葬についての世論調査の年齢別分布では、このような結果がでています。

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この間の選挙などに特徴的な、青年層保守支持、高齢層になるに従っていわゆるリベラル支持、という傾向が見られます。
ひと昔前はジジババは保守、若者は野党と決まっていましたが、いまや逆転しています。
これは先の沖縄知事選と同じ分布です。

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沖縄の若者、直面する「壁」 知事選出口調査から - 沖縄:朝日新聞デジタル (asahi.com)

国葬を決意した岸田政権は、支持率ダダ下がりです。
NHKの9月の世論調査によれば、内閣支持率40%、自民党支持率36.2%ですから、青木率は計76.2%です。
青木率とは、政権支持率と自民党支持率を足した数字のことで、これが50%をきると赤信号だという経験則のことです。
まだ3割弱ていどの余裕があるようです。

ここで一気に政権交代するには立憲に頑張っていただかなくてはなりませんが、この追い風時期にすらマイナス0.7%という情けないていたらくです。

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各党の支持率は NHK世論調査 | NHK | 選挙

ちなみにかつて政権交代した前後の政党支持率の推移をみてみましょう。

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「政権交代2・0」の時代が始まった - 牧原出|論座 - 朝日新聞社の言論サイト (asahi.com)

交代直前の2009年を見ると、政権支持率、自民の支持率共に2割を切って50%を大きく割り込み、一方民主党支持率はなんと5割にも達していました。
この自民と野党第1党の支持率の完全逆転こそが、政権交代の絶対条件です。
ただ自民と政権が支持率落としただけでは、必要十分条件の片方だけなのです。
現時点では岸田政権はじり貧になってはいますが、いかんせん代わりとなるべき立憲が5%に満たないのですから、政局的にはなにも起きません。
起きるとすれば、いくまでたってもキリリとしない岸田さんに背を向ける輩が党内に出てくることでしょう。
安倍氏が存命ならば、たぶんなにか起きたかもしれませんが、安倍派は求心力をなくしていますからこのままズルズルと続くかもしれません。

さて床屋政談は置いて、話を国葬に戻しましょう。
予想どおり、もっとも多くの情報に接しているはずの青年層は常識的な判断をし、情報弱者が増える高齢層になるほどメディアが作る「空気」に縛られているようです。
日本人は歳を取るほど知恵者にはならず、依怙地なばかりにイデオロギーにしがみつくという体質がよくわかります。
下の国葬反対デモを見ても、なぜか高齢者ばかりのようです。

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安倍元首相の国葬巡り、市民団体が「NO!」 閣議決定など差し止めの仮処分申し立て - 弁護士ドットコム (bengo4.com)

さて、朝日が国葬について反対理由を整理していますので、見ていきましょう。

「今回の国葬の問題のひとつは、根拠になる法令がないことです。戦前には国葬令がありましたが、戦後の1947年に失効しました。
戦前の国葬では、日露戦争で功績のあった東郷平八郎元帥や太平洋戦争の連合艦隊司令長官だった山本五十六元帥も対象となっており、戦意高揚に使われた面がありました。国葬令がなくなったのは、国民主権や平和主義を柱とする日本国憲法下の社会にふさわしくないと考えられたものと思われます」
(朝日2022年9月16日)
反対が増える安倍晋三元首相の国葬 → 国葬って何が問題なの?|一色清の「このニュースって何?」|朝日新聞EduA (asahi.com)

最大の反対理由は、法律的根拠がないということのようです。
戦前の国葬令は「日本国憲法の下の社会にはふさわしくない」ので排ししたのに、なぜまた国葬をするのかという理由です。これと同じことは立憲が言っていて定番の批判です。

なにか朝日は深い誤解をしているようですが、国葬は朝日が言うように「戦意高揚」とは関係ありません。
たまたま日本は大戦期間に国葬が出たのでそう思えるだけのことです。
英国女王や米国大統領の葬儀は、無条件で国葬ですし、そうでない国もあり、スポーツ選手を国葬にする国さえあります。

つまり、各国政府が裁量でする範疇の公的儀式でしかなく、反対派が言うような「国民に弔意を強要する」なんてことはありません。
「神格化だぁ」だなんてアホ言っている人がいますが、安倍氏の御真影を拝めなんて言っていますか。
式典に出席しろとも言っていないし、学童に弔意の時間を作れ、安倍氏について追悼文を書け、なんて政府は命じていないでしょう。

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「国葬」各国では? 慣例、法制化、スポーツ選手…生前辞退も|【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)

国葬の法的根拠がないというのは、ただのデマです。
国葬は政府が説明しているとおり、政府が独自で判断できる自由裁量権の範疇にある内閣府設置法4条を法的根拠としています。

●内閣府設置法4条
三十三 国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)

この所掌事務としての「国の儀式、内閣の行う儀式」に国葬儀が含まれるというのが岸田内閣の解釈で、内閣法制局と東京地裁も同様の見解を示して、国葬差し止め訴訟に対して東京地裁は「訴えは不適切」と門前払いしています。

「判決は9日付。岡田裁判長は、予算執行の差し止め申し立てを可能とする根拠法は存在しないと指摘した。仮差し止めの申し立てについても同様に却下した。
 国葬実施の閣議決定については「国民に何らかの行動を義務付けたり、権利義務を形成したりするものではない」と判断。弔意の強制につながるとの市民側の主張は、「国民の意に反して、弔意やこれに沿った行動を強制する効果があると解すことはできない」と退けた」
(時事9月12日)
国葬差し止め訴訟、却下 「訴えは不適法」―東京地裁:時事ドットコム (jiji.com)

つまり司法はこの岸田内閣の法的解釈に問題ないとしていますが、なぜかほとんど報じられていません。

朝日は、47年前に法制局が「法制度がない」と言ってたじゃないか、とこんなことも書いています。

「1975年に佐藤栄作元首相が死去した際、当時の吉国一郎内閣法制局長官(故人)が国葬について「法制度がない」「三権の了承が必要」との見解を三木武夫首相に示していたことが分かった。自民党の実力者だった前尾繁三郎衆院議長の秘書を務めていた平野貞夫元参院議員が朝日新聞に証言した。こうした指摘を受けて三木政権は国葬を見送り、国民葬とした」
(朝日9月7日)
国葬は「三権の了承必要」、過去に内閣法制局長官が見解 関係者証言 [国葬]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

三木内閣ですか、はて、いつのことを言っているのやら。
政府は内閣府設置法を根拠法にしているのですから、内閣府設置法がいつ現行のモノに変更されたのか少しは調べればよさそうなものを。
知らないでこの記事を書いていればとんだマヌケ、知っていて書いていれば悪質な誘導です。
なぜなら内閣府設置法が出来たのは1999年7月なんですから、その前の法制局見解を古証文よろしく出されてもねぇ。

「内閣府設置法(ないかくふせっちほう、平成11年法律第89号)は、内閣府の設置、その任務・所掌事務を定めるとともに、その所掌事務を能率的に遂行するため必要な組織に関する事項を定めることを目的とする日本法律である。1999年(平成11年)7月16日に公布された」
内閣府設置法 - Wikipedia

わが国は、1999年7月16日に現行の内閣府設置法を公布しました。
ですから、内閣府設置法が公布された1999年の24年も前の三木内閣の時に法制局が「法制度がない」といったのはあたりまえです。
この内閣府設置法によって、省庁横並びを改め、内閣府を旧総理府から上位の格付けに位置づけ直して、同時に権限も整理し直しました。

このことで1999年をもって、内閣府の業務権限が明確になり、「国の儀式」が設置法第4条33として位置づけられたのです。

政府の中央省庁等改革推進本部事務局内閣班が作成した「内閣府設置法コンメンタール(逐条解説)」にも、「国葬を国の儀式として執り行えるという解釈」が書かれています。
国葬は「国の儀式」平成12年の政府作成文書に規定 - 産経ニュース (sankei.com)

「内閣設置法4条では、内閣府の所掌事務として「国の儀式、内閣の行う儀式および行事の事務に関すること」と定めているが、逐条解説には、「国の儀式」には①天皇の国事行為として行う儀式②閣議決定で国の儀式に位置付けられた儀式-の2種類があるとしており、②の具体例として「『故吉田茂元首相の国葬儀』が含まれる」
(産経前掲)

つまり国葬令があるなしとは関係なく、政府は「国の儀式」として政府の裁量権の範疇で実施できるのです。
1999年以前の法制局が「法制度がない」なんて言っていたと鬼の首をとったように言うほうがバカ丸出しです。
時系列を無視してなに書いているんだろ、この新聞。

ただし、ここをキッチリと国民に説明しない岸田氏も岸田氏です。
旧統一教会問題でもそうでしたが、安倍氏のように真正面から受け止めるのではなく、初めから身体が斜めになって腰が引けているから、いっそうワイドショーにつつき回されて窮地に陥ります。
ああ、やはりこの人は有事の宰相ではないようです。

また政府の決める「国の儀式」である以上、立法府は無関係です。
しかも1999年の内閣府設置法の時に国会は賛成している以上、国会にはなにも言う権限がないのです。
内閣府設置法には立法府の同意を求めよなどとは一言も書いてありませんから、閣議決定だけで十分に事足ります。
立法府のもっとも大きな仕事は予算の審議ですが、今回は予備費を使うので、一般会計にも無関係ですから出る幕がありません。

出る幕は唯一、きちんと社会人らしく国の行事に参加することだけです。

 

 

 

2022年9月19日 (月)

イジュームでも見つかったロシア軍の戦争犯罪

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解放されたイジュームには、ロシア軍の大規模な虐殺跡が残されていました。
ロシア軍が占領地でなにをしていたのかが明瞭になりました。
ロシア軍は民族浄化と「ロシア化」をしていたのです。

「ウクライナ北東部ハルキウ州のシネフボウ知事は17日、ロシア軍が撤退した同州南東部イジュームで発見された集団埋葬地から、地元警察の専門家らが同日に計59人の遺体を発掘して収容したと明らかにした。民間人の男性16人と女性26人、軍人17人だった。大半の遺体は殺害された形跡があるという。
シネフボウ氏はイジュームには集団的に埋葬された450人分以上の墓があるとしており、発掘作業は今後も続く。同氏はSNSに「半年間の占領の悲劇的な、むごたらしい結果だ。世界はロシア人たちの犯罪を知らなければならない。罪を犯した者すべてが罰を受けるように」と投稿した」
(朝日2022年9月18日)
【速報中】イジュームの埋葬地から59人の遺体を発掘 殺害の形跡 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

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ウクライナが奪還のイジュームに集団墓地 440人埋葬か: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「今日発掘された遺体のうち、99%が暴力的な死の兆候を持っている。
両手を背中の後ろで縛られた遺体が数体あり、一人は首にロープを巻いて埋葬されている。明らかに、これらの人々は拷問され、処刑されました。埋葬された人々の中にも子供たちがいる。
同時に、ハリコフ地方警察の捜査部門の責任者、セルヒイ・ボルヴィノフは、金曜日に22人の死んだ民間人が発掘され、専門家に運ばれ、ウクライナ軍の17人の軍人全員が集団墓地から運ばれたと述べた。
「死亡した民間人の一人は、首にロープを巻きつけ、指の指骨を損傷していた - 調査は拷問のバージョンをチェックしている。兵士の一人は両手を縛られていた」とボルヴィノフは語った」
(ウクライナプラウダ、9月16日)
OVAは、レーズンから発掘された人々の99%が暴力的な死の兆候を持っていると述べて|ウクライナプラウダ (pravda.com.ua)

これらの埋葬された死体は、現地住民が「自分たちが遺体を見つけて埋葬した」と証言しているとおり、路上や家屋に放置されたままの死体を埋葬したもので、ロシア軍兵士は捕虜や民間人を虐殺して、そのまま遺体を街中に放置していたと考えられています。
彼らはウクライナ軍の進撃があまりに急だったために、戦争犯罪の証拠を隠蔽する暇もなくそのまま捨て去ったようです。

ロシアは占領すると、直ちに「選別キャンプ」(フィルターキャンプ)を作り始めます。
まだ戦闘が終結する前から、ロシア軍は貴重であるはずの兵力を割いて住民をこの「選別キャンプ」に送り込みます。
その指揮を取るのがロシアの秘密警察であるFSBです。

マウリポリでは、人道回廊と悪趣味な名をつけられたルートで送り込まれた住民を待っていたのが、この選別キャンプでした。

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【証言】マリウポリ市民が体験した ロシアへの“強制連行”と“選別” (nhk.or.jp)

マウリポリでは、実に4万人以上がこの選別キャンプに送り込まれました。
このような収容所は、人権団体「ボストークSOS」によれば、「数を正確に把握するのは難しいが、東部ドネツク州を中心に数十は存在し、学校の校舎やテント村、拘置所や刑務所などがキャンプとして使われている」(産経9月6日)そうです。
【ロシア深層】「ろ過キャンプ」で住民選別 遠藤良介 - 産経ニュース (sankei.com) 

「米エール大の調査グループが8月25日に公表した報告書は、フィルター・キャンプが21カ所特定されたとしている。衛星写真の解析から、キャンプ近くに遺体の埋葬場所を疑わせる掘削跡が確認されたケースもある。調査グループは、キャンプには機能別に①住民の登録②収容③二次尋問④拘留-の4種類があるとみている」
(産経前掲)

この選別キャンプで行われたのが、占領地住民の尋問と思想チェック、交遊関係の洗い出しでした。
この「尋問」には容赦ない暴力が用いられ、拷問により殺害された者も多数出ました。
いま、私たちが眼前にしている多数の虐殺された民間人は、手は縛られ後ろから射殺された者が多く出ていますが、それはこの「尋問」の間に発生したと想像できます。

これを経験した住民の証言です。

「イエヴヘンさん
「職業は何か、知人や親戚にアゾフ大隊や軍人、警察などがいないか調べていました。 携帯やSNS、写真をチェックされ、それは誰なのか、写真が何なのか説明しなければなりませんでした。
ロシア側に)亡命を求めた人は身分証明書がとりあげられました」
( NHK4月26日)
【証言】マリウポリ市民が体験した ロシアへの“強制連行”と“選別” (nhk.or.jp)

選別が終わると、ロシアへの移送が始まります。

「3月にロシア政府が公表した文書には、ウクライナの市民10万人をロシア連邦内の85の地域に移送させる計画が記されています。移送先はウクライナに近い西部地域だけでなく、ロシア全土。サハリンなど極東の地域にも7,000人以上を送るとしています」
(NHK前掲)

下の写真は、3月にロシア政府が公表した文書にある移送計画です。
ウクライナの市民10万人をロシア連邦内の85の地域に移送させる計画が記されています
この移送先は、ウクライナに近隣のに西部地域にとどまらず、サハリンなどの極東地域にまで7千人を送ると記されています。

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NHK

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NHK

このような民族強制移動はソ連時代頻繁にとられた支配方法でした。
住民を住み慣れた土地と家、畑、友人親類から引き剥がし、まったく縁もゆかりもない辺境に流刑するというのは、その人たちの精神を確実に破壊しました。

「1930年代から1950年代にかけてヨセフ・スターリンNKVD長官のラヴレンチー・ベリヤに命じて実行したソ連における民族階級単位での人々の強制移住政策について述べる。これらの強制移送はクラーク(富農)の追放など"反ソビエト的な"人々の強制移送、民族そのものの強制移住、労働力移転、民族浄化が行われた地域への新たな入植などのために行われた」
ソビエト連邦における強制移送 - Wikipedia

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ウィキ    スターリン時代の民族移動図

この強制移住は、少数民族と思想犯の浄化や富農(クラーク)の絶滅を目的として行われました。
追放地はシベリアなどの辺境の過疎地でした。
その結果、推定で450万人もの犠牲を生みました。

「1930年~1931年には180万人のクラーク、1932年~1939年には農民と少数民族中心に合計100万人、1940年~1952年には少数民族を中心に350万人もの人々が強制移送の対象となっている」
(ウィキ前掲)

今回のウクライナ占領地の強制移住はこのスターリン時代のそれが、今だロシアにおいてなくなっていないことを示しています。
今回のロシアによる占領政策は「ロシア化」と呼ばれ、傀儡国家づくりを目的としています。
これはこのようなプロセスです。
静岡県立大学准教授西恭之氏によれば、このロシア化はこのようなプロセスで進行します。

●ロシアの占領政策
①占領地の反乱・抵抗の鎮圧は、ロシア連邦保安庁(FSB)と国家親衛隊が主力となる。
②占領地ではFSBが反乱・抵抗の鎮圧の指揮をとり、通信傍受・捜査・防諜が任務です。手足となるのは国家親衛隊を中心にして、内務省の警察部隊、コサック部隊、民間警備・軍事会社を合わせて、ロシアは今回ウクライナに50万人近くを占領地警備投入したと見られている。
③令状なしの家宅捜索により押収した文書の情報をもとに、ウクライナ軍の情報機関・警察その他の機関の公務員や政治家が逮捕・尋問する。彼らの多くは収容所に送られ「行方不明」となる。
④通信と情報の遮断。マスメディアと私的通信はロシアが検閲体制を敷くまで完全に検閲されて封鎖される。
⑤ロシアの発行する身分証明書を渡され、以後常に携帯することを義務づけられる。
⑥密告制度が推奨され、よそ者探しや反露的人物をさがしだすことを命じられる。
⑦ウクライナ貨幣と外貨の禁止。通用するのは占領機関の発行した軍票。ロシアルーブルが使われることもある。

そして、⑧大規模な住民移送です。

そしてこの占領が安定化すると、次の段階で住民投票を行って「独立国」となり、数年でロシアへ併合を住民が「自発的に要請」することになります。
住民の「自由意志」でロシアの一共和国になるという体裁をとります。
ロシアが負けなければ、やがてウクライナ人はいなくなり、すべてロシア人となったはずです。
これがロシアの占領政策、すなわち「ロシア化」なのです。

このウクライナの現実こそが「抵抗をすれば命だけは助かる。侵略者が来たら政府は白旗を上げろ」、と言っていた人たちへの回答となります。
ロシアのような全体主義国家の軍隊に軍事占領された場合、いかなることが起きるのか、その実例がブチャであり、このイジュームなのです。

 

 

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ウクライナ200日間の戦いの日々
在日ウクライナ大使館(@UKRinJPN) Twitter

 

 

2022年9月18日 (日)

日曜写真館 祈りとは膝美しく折る晩夏

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晩夏光足やむ友を遠近に 松村蒼石

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晩夏光君を忘れて橋の上 塩見恵介

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遠くにて水の輝く晩夏かな 高柳重信

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男来て晩夏へ放つブーメラン 坪内稔典

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木洩日の翳りの色の晩夏かな 坂井建 

 

 

 

2022年9月17日 (土)

逃げ出すロシア、追うウクライナ

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おもわず笑ってしまったのですが、クリミア半島でFSB関係者と自治政府の関係者が、あわてふためいて逃げ出しているそうです。
しかも、彼らは地元住民には移動制限をかけているうえに、情報統制を強いているのですから、さすが全体主義国家。
オレは逃げるが、お前らにはなにも教えんというわけ。

「ウクライナ軍の反転攻勢を見て次はクリミアの番だと恐れたロシア人は、慌てて家族を逃そうとしている。
ロシアが併合した南部クリミア半島を、ウクライナ軍がまもなく反攻の標的にするという報道を受け、ロシア系住民は逃げ出しはじめている。(略)
半島に滞在するのは安全だと当局が保証しているにもかかわらず、クリミアを占領する行政機関の代表者やロシア連邦保安庁(FSB)職員、ロシア軍部隊の司令官たちは、ひそかに家を売り、親族を半島から緊急避難させようとしている。
報告書によると、クリミア自治政府は、民間人が家を売ったり、地域外に旅行したりすることを禁止しようとしている。また、ウクライナ軍の反転攻勢に関する情報も厳しく規制されているという」
(ニーューズウィーク 2022年9月14日)
ひそかに家を売り...クリミアからロシア人が逃げ出しはじめた|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

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ニューズウィーク   クリミアの親ロシアデモ

クリミア半島は2014年、プーチンがわれながら天才的だと思っている密かな軍事浸透とハイブリット戦争によって軍事制圧し、その後住民の「自発的意志」による住民投票で、ロシアに併合されてしまった土地です。
気をつけましょうね、この住民投票とか自治政府という甘い言葉。
字ズラは、なんとなく民族自決とゴッチャになりますが、まったく違うんです。

ロシアや中国が使うと、この「住民投票」は外国製力が他国を内側から切り崩して、導き入れるトロイの木馬として使われます。

ロシアが占領地でなにをしているかを、ヘルソンを例にとって見てみましょう。

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ウクライナ軍幹部、南部州「年末までに奪還目指す」: 日本経済新聞 (nikkei.com)


「ロシア軍当局はヘルソンで、選挙によって選ばれていたイーゴリ・コリハエフ市長を解任した。占領軍に「協力的ではなかった」からだと、ロシア国営RIA通信は伝えた。
ヘルソンとその周辺地域には、親ロシア派の行政機関が設置された。
ウクライナのテレビ番組へのアクセスは遮断され、インターネット・サービス・プロバイダーはロシアのものへ変更された。
ヘルソンの住民は、親ロシア派のラジオ局のニュースを聞くよう促されている。
ロシアの目的は、「自分たちのうそのプロパガンダを、競合のいない情報源にすること」だと、ウクライナは指摘している」
(BBC2022年5月11日)
ロシアは占領地でどんな支配を進めているのか ウクライナ・ヘルソンの変化 - BBCニュース

ロシアは軍事占領したウクライナ領のヘルソン、マウリポリ、ドネツク、ルガンスクなどで、このクリミア方式を踏襲し傀儡国家を作り続けました。
もちろんウクライナはもとより国際社会は、一切これを認めていません。

それが今になって、ロシア系と秘密警察関係者からロシア本土に逃げ出すというのですから、その理由はたったひとつしかありません。
足元に火がついてしまったのです。
劇的なハルキウ州解放は、ウクライナ戦争すべての情勢を大きく塗り替えました。
ウクライナ戦争で、ロシアがほんとうに叩きだされそうな勢いとなったのです。
私は要衝マウリポリがアゾフスタル製鉄所の悲壮な陥落によって落ちた後、東部ハルキウからドネツク、南部マウリポリ、ヘルソン、クリミアに至るL字型の占領地域を確実に獲得してしまったと考えていました。
いったん守りに入ったロシア人はここにでっち上げ国家を作って既成事実化し、遠からずロシアに併合していくだろうと悲観していたのも確かです。
こういう私の弱気をものの見事に覆してくれたのが、先週のハルキウ州における大進撃でした。

下の写真は占領されていた村に入ったウクライナ兵です。
抱き合って歓迎されています。涙ぐましい風景です。
いまやハルキウ州全域でこの風景が見られたことでしょう。

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客観的戦況について、もっとも冷静な観察者であるISW(米戦争研究所)の分析です。

「ロシア攻勢作戦評価
ウクライナ軍はロシアに大規模な作戦上の敗北を負わせ、迅速な反撃でほぼ全てのハルキウ州を奪還した。
ウクライナの成功は、HIMARSのような欧米兵器システムの影響を最大化する努力を含む、巧みな作戦計画と実行の結果である。
(略)

ウクライナの指導者たちは、南部での攻撃を大きく取り上げて、ハルキウ州での彼らの意図について、ロシア人を混乱させることに成功した。
欧米の兵器システムは必要だったが、ウクライナの成功を確実にするには十分ではなかった。ウクライナが、よく設計され、よく実行されたキャンペーン(作戦)で、これらのシステムを採用したことがハルキウ州での反撃作戦の目覚ましい成功を生み出した。
ウクライナによるイジュームの奪還は、ロシアがドネツク州で表明された目的を達成できるという見通しを終わらせた」

戦争研究所 (understandingwar.org)

「10日深夜(米東部標準時)の時点で「ハルキウ州におけるウクライナ軍の反攻はロシア軍を追い詰め、ロシア軍が占領する東部ドンバスの北軸を崩壊させつつある。ロシア軍は統制がとれないまま撤退しており、イジューム周辺で包囲されるのを避けるため急いで逃走している」

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速報中】ロシア軍はパニック状態で撤退? 貴重な装備品を放棄 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

つまり、ハルキウ州の電撃作戦前に行われていた南部ヘルソンへの執拗なウクライナ軍の攻撃は陽動作戦で、東部解放の準備を隠すのが目的だったということのようです。
そして時が満ちて、一挙に大量の機甲部隊と砲兵をハルキウ州に投入し、電撃的奇襲を敢行したわけです。
虚を突かれたロシア軍とドネツク兵たちは、装備も捨てて我がちに逃げてしまったようです。

さらに戦争研究所(ISW)は衛星写真の検証結果に基づき「ロシア軍はクビャンスクを放棄して後退した」と指摘しました。
上の地図の右側青色地帯(ウクライナ支配地域)のハルキウとイジュームを結ぶ道路の途中にあるのがこのクビャンスクですが、ここが要衝イジュームの防衛最前線でした。
イジュームはロシア軍の南北に縦断する最重要補給ラインのターミナルで、ここが陥落すると南部のロシア軍は補給を断たれます。

ISWは「ヘルソン市を守るロシア軍に大きな影響を及ぼすだろう」と書いていますが、イジュームの失陥は東部戦線のみならず、南部戦線も重大な影響を被りました。

しかもこの際に、ロシア軍の西部軍管区司令官シチェヴォイ中将とおぼしき人物も捕虜となっているていたらくです。(異論も存在します)
すでに将軍クラスが12名(!)も戦死したうえに、しかも今回ひとりが捕虜となったとなると、怒り狂うプーチンの火事場の金時のような顔が目に浮かびます。

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「9月9日にSNSに投稿された映像には後ろ手に手錠を掛けられ、跪く2人の兵士。2人の恰幅の良い兵士は右目あたりから血を流している。この男性、ロシア軍西部軍管区司令官アンドレイ・シチェヴォイ中将とされている。彼は中佐の階級章が付いた軍服を着ているが、身分を隠すために下級将校の制服に着替えたとされている。
シチェヴォイ中将は7月20日に、西部軍管区司令官に任命されている。中将という将軍クラスが捕虜となれば、第二次大戦以来の大戦果となる。これまで12人の将軍クラスの将校が戦死しており、このクラスの戦死は非常に稀だが、捕虜となるのは更に稀だ。しかし、シチェヴォイ中将の捕虜についてはウクライナ、ロシア双方ともに公式発表はない」
(ミリレポ9月13日)
捕虜となったロシア軍中将、代わりの中将は就任から16日で更迭、ハリキウで敗走したロシア軍の情報は錯綜│ミリレポ|ミリタリー関係の総合メディア (sabatech.jp)

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ウクライナ軍 ロシア軍の西部軍管区司令官を捕虜として捕まえたか - ライブドアニュース (livedoor.com)

とまれロシア軍の士気の崩壊は覆いがたい事実のようです。
ロシア軍が逃げ去った後には、膨大な装甲車両の残骸の山と装備品が散乱していました。
軍隊が装備品を捨てて逃げたら、もうオシマイです。

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戦争研究所は12日の分析で、衛星画像により親ロシア派武装勢力の大半がキセリョフカから撤退したと確認したと説明。「ヘルソン市の防衛能力が低下し、この地域のロシア軍に差し迫った脅威があることを示唆している」と分析していました。
おそらくヘルソンの奪還は時間の問題だとかんがえられます。

しかもヘルソン州を押さえることで、ウクライナ軍はここからドネツク州を西側から包囲することが十分に可能ですし、さらにここから南部戦線への進撃路も開けました。
ドネツク傀儡軍の慌てふためいた退却ぶりは、次に落とされるのが他ならぬ我が身だと怯えているからでしょう。
次の段階でウクライナ軍は、いままでウクライナ軍が圧力をかけ続けてきた地図左側赤色と青色がせめぎ合っているヘルソンに東側から包囲し、遠からずヘルソンを奪還すると思われます。

さて政治的な意味も考えてみましょう。
奪還したばかりのイジュームに、ゼレンスキーが直ちに訪問して将兵を労ったことでも想像がつきます。

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Офіс Президента України イジュームに入ったゼレンスキー大統領

今月2日、英国王立防衛安全保障研究所は「ウクライナは冬が到来する前に受け取った支援の有効性を西側諸国に示しておかなければならない」と述べており、数カ月後に訪れるヨーロッパのエネルギー不足による寒い冬を前に、「ウクライナにはロシアを追い出す力がある」ことを世界に示す必要があったからです。
自由主義陣営にはすでに支援疲れが見え始めており、プーチンがロシア産石油・石炭を人質にすることで脅迫した場合、結束が揺らぐ可能性があります。
バイデンも、戦争は長期戦になるだろうと述べ、ウクライナにクリミア半島を攻撃可能にする射程のミサイルの供与には消極的だった経緯もあります。

このような弱気に釘を刺す意味で、ゼレンスキーは冬を前にして大きな目に見える戦果を獲得する必要があったようです。

そしてもちろん国内の引き締めもあるでしょう。
この戦果によって、国民の約9割が「どんなに戦争が長引いても領土を奪い返す」ことを支持しています。

「ウクライナの世論調査会社「キーウ国際社会学研究所」が15日、発表した最新の世論調査結果で、回答した人の87%が、どんなに戦争が長引いても領土をロシアに提供することを「認めない」と答えた。5月時点より5ポイント増加したという。ウクライナ軍が今月に入って東部と南部で領土を奪還したため、国民の士気が高まっているとみられる」
(毎日9月16日)
領土割譲「認めない」87%に ウクライナ世論調査 軍の攻勢で | 毎日新聞 (mainichi.jp)

このようにハルキウ州を電撃的に解放することによって、ふたつの進撃路が拓けました。
ひとつは、東部のロシアの傀儡国家である自称「ドネツク人民共和国」を壊滅に追い込むことで、ゼレンスキーは「ドネツク全体が解放されるだろう」と目標に掲げていました。
そしていまひとつは南部への進撃路です。
後者は、2014年のクリミア侵攻の結果生まれた擬似的国境線を揺り動かし、クリミア半島の奪還という大きな政治目標が初めて現実のタイムテーブルに乗ることができることとなりました。

 

 

 

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ウクライナに平和と独立を

 

2022年9月16日 (金)

山路啓介氏寄稿 知事選のあとにその5

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 ありがとうございました。今回が寄稿最終回となります。
 ずしっとくる連載になりました。
今日は下地氏への論考2回目ですが、昨日分にまとめようかとも思ったのですが、長いので分割いたしました。

あすから通常の更新に戻ります。   

                                               ブログ主 

                                                   ~~~~~

                                                 知事選のあとに
                                                                           山路啓介

承前

下地氏のように辺野古軟弱地盤は技術的に施行できないと考えている県民は、何とも多く存在しています。県でさえ最近ではそういう事は言っておらず、膨大な埋め立て用土砂の必要性やジュゴンが何とかの問題などで、事実上無理だ、と言っているに過ぎないようです。つまり、「県があの手この手で、邪魔するから工事はできないよ~」と言っているに等しいのであって、技術的な問題はありません。

そのうえで、沖縄県寄りの報道に良く見られたように、防衛局はあらかじめすべき調査を怠っていたとか、隠していたとか、そういう類推的な事柄からの批判は当たりません。
そもそも地下を工事したら、軟弱地盤など大抵出て来るもの。深さにより、その厚さとか土質などをあらかじめ正確につかむ事は困難です。大体の推計で設計し、工事が進むにつれて調査を行ない、設計変更を行なって精度を上げて行くのがいちばん効率的かつ合理的です。そもそも地下深くの軟弱地盤は工事をする前から、その上に載っている土砂の重さを支えています。よくマヨネーズがどうとか言われたように、底なし沼か何かのようにズブズブと沈んで行くイメージではありませんし、そのような事はありません。深い所にある軟弱地盤ほど、上に新たにのせる荷重の増分が元々かかっている荷重に対する比率は小さくなります。

つまるところ、沖縄県が過去埋め立てして来たいくつもの工事と同じであり、関空や羽田でも同様の部分が存在していたと言う事です。
また、高層建築でも立てるなら岩盤に届く杭が必要ですが、レベル2と言われるまでの基準であるなら問題はありません。我々が木造屋を立てるさいにも地盤調査は必要とされますが、問題があっても地中1メートルの土砂交換や土質改良で済む、あるいはベタ基礎対応でだけで良しとされるのも同じことでしょう。

裁判の方ですが、防衛局が県に提出した変更申請について、8月に国交省が下した県への是正命令が国地方紛争処理委員会によって適法と認められました。続けて沖縄県は高裁に提訴しましたが、県側の勝ち目はないでしょう。というのは、国地方紛争処理委員会でもそうでしたが、今回の訴状も長ったらしいだけで中身がありません。「取り消し訴訟」でケリがついて久しいはずの国の「固有の資格性」にこだわり、そこに有識者の意見を加える程度で、総じてこれまでの主張を繰り返しているだけだからです。おそらく司法の場での判断は、これまで以上にスピードアップされるでしょう。

サンゴ移植訴訟の方も県側の負けが確定して、県が「許可=不許可、何らの処分をしない事が違法である」との最高裁判断が決定しました。県は判決を受けてようやく不許可の処分を下しましたが、「以下同文」とでも言うコースでみじめな負け戦を繰り返して行くでしょう。
肝心な事はすべて「取り消し訴訟」で終っていて、今後県側に有利な判決が出ようもありません。
最も辺野古問題とはオール沖縄のネタ化してしまっているので、徐々に反対派が飽きてくるまで裁判でもしとこうか、っていう程度でしか無くなっているのでしょう。

                                                                                                                                                                  了

                                                                                                                                  文責 山路 敬介

 

 

2022年9月15日 (木)

山路啓介氏寄稿 知事選のあとにその4

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                                                         知事選のあとに
                                                                           山路啓介


承前

■「大きな志のためなら勝敗の別さえ乗り越え、泥濘の中をものともせずに突き進む」、そんなイメージを下地幹郎氏に対して描いている支持者は少なくありません。
しかし、今回の知事選の下地氏立候補ほどワケの分からないものはなかったのではないでしょうか。
お膝元と言われる宮古島市では24人の市会議員のうち佐喜真支持17人、デニー支持7人で、下地支持は0でした。また立候補にさいし、最大の支援者で下地氏の自民党復党に腐心してきた國場組にも相談がなく、「出馬は寝耳に水。支持する予定はない」とされるなど、根回しも何もなく、ハナから当選する意思すらが怪しいものでした。

自民党関係者にとっては「(保守票を割る事)そうまでして自民党や佐喜真候補を勝たせたくなかったのだろう」、あるいは「デニー候補と結んだ立候補だった」と見る向きが多く、そのどちらもが多くの真実を含んでいると考えます。
持ち味はストレートさとシンプルさ。彼の熱情的スタンスからそう勘違いしている支持者には残念ですが、実のところ絶えず複雑な狡知さを用い、裏側から選挙結果に影響を与えることを企図した絶望的に小狡い「政治屋」であるに過ぎません。向後、自民党が下地氏を拾うような事はなく、かといってオール沖縄内主流派の革新勢力とは決定的な溝が存在します。

前回の衆院選では、「国政こそが私が生きる道」「知事選に打って出る事はない」として「背水の陣」である事をアピールしていました。落選後、「次期衆議院議員」なる奇妙な肩書の名刺を配布して笑われましたが、次回衆院選に期す強烈な熱意と意思表示、と取る向きもありました。けれど、YouTubeの当人の番組では「前回衆院選で落選が決まった。その開票日の夜に知事選出馬を決意した」というのです。いったい何が本当なのか? 下地氏の感覚は理解しようがありません。

彼がかかげた経済政策もかなり怪しげなものでした。
「国からのお金がなければ沖縄の経済が成長しない、というのはナンセンス」という主張には、百歩譲って条件付きで同意もします。続けて「橋や港湾などの高率補助事業は(補助率が)一律になるし、その他の事業はすべて社会資本整備(PFI)で公共事業をする」と言っていて、「そのために100人規模の担当課を作る」と主張しました。
PFI積極活用の主張はかつての大阪維新が財政再建のために掲げましたが、効果を上げたのは公務員改革や行財政改革の方です。しかし、下地はかつての維新主張の表面ツラだけ拾って「国の補助は必要なく、(だから)国との信頼関係などは必要ない」と飛躍してしまいます。どうしてここまで頭が悪いのか? これで票が釣れると考えたなら、よほど県民を馬鹿にした主張です。

PFIのように民間企業が事業として公共事業を担うのであれば、企業にとっては収益性が見込める事が必須条件です。図書館や公民館などの施設の場合、収益性を確保する難しさがPFI事業導入の主要な問題点です。収支計画の誤りから失敗した事業は全国にいくらもあり、その後始末は結局、自治体が尻拭いするしか方法はありません。また、担当公務員が100人いようが200人いようが、ようはビジネスの領域です。商売上の「責任」という負荷がかからない公務員に、この問題に対する知恵が出てこようはずもありません。なんとも思い付き、口先だけのナンセンスな主張でした。

ところで、収益性以外に別の恣意的目論見をもって、他国において事業を行なわせようとするのは中国共産党くらいのもの。そこで、橋下徹氏のひそみに倣うなら「入札でWTOルールでは外国企業を排除出来ない」とします。そこまでは言えないとしても、日本に登記がある中国系日本法人なら取り分け排除は困難です。最近は合同会社という、問題のある会社形態を利用した中国資本参入の実態も見られています。
橋下氏は自身の著書の中で、その主旨は違いますが「(沖縄の港湾施設の一部を)中国政府に解放して、中国軍艦の寄港も認める県民投票を実施せよ」と言いました。中国企業からもらった100万円を政治資金として記載していなかった下地氏の事なので、と考えたなら穿ちすぎでしょうか。

くわえて、安全保障問題もメチャクチャでした。
彼の公約は「辺野古軟弱地盤部分の埋め立ては絶対にさせない」と。いや、「埋め立ては技術的に不可能だ」と言っています。そこで、訓練と基地を分離して訓練を馬毛島へ持って行こうと言うのですが、そのような案は実効性の担保が一切ありません。本土との信頼関係は眼中になくても、なにやらワシントンに自信がある強力なルートがあるように仄めかしつつ、あたかも実現可能性があるように振舞う姿は異様でした。
鳩山政権末期の徳之島「腹案」騒動の前、早々に馬毛島案は遠すぎて使えないので断念しています。訓練だけなら分離できるだろうという話でもありません。下地がヘンな公約をするので、自衛隊予定地の馬毛島を擁する西之表市は反対派から「そういう可能性があるのか? それなら防衛局の説明と違う」と言った声が上がっています。「沖縄主体の方法で物事を進めるべき」というのが下地氏の公約の根本にある流れですが、そもそも辺野古という場所選定も、埋め立て中心に建設事業をなす事も、主体的な沖縄側の要望によるものです。足して二で割るような思い付きの公約を下地が掲げるのは、ただ単に「新しい考え」や両者の中間点的落としどころを狙っただけのもの。

下地の狙いは自身の政策集団「そうぞう」のよき時代に戻す事でしょう。
それは自民党に復帰しても内側から出来る自信があったし、デニー氏は「そうぞう」のメンバーでもありました。これからも無意味な立候補は続くと思いますが、ついていく地方政治家もなく、國場はじめ支持者離れも顕著です。しかし引き続き保守票をいくらかでも喰えるなら、オール沖縄側にとっては利用価値がある。
零落した下地氏が最後は宮古島市長にでもなろうとしないとも限らない。それだけは御免です。

                                                                                                                                (次回終了)

                                                                                  

 

 

2022年9月14日 (水)

山路啓介氏寄稿 知事選のあとにその3

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                                                   知事選のあとに
                                                                         山路啓介

承前

※尖閣を徘徊する中国海軍やその支配下組織となった海警局が漁船を追い廻す問題について、デニー氏は「中国公船がパトロールしているので、故意に刺激する事は避けなければならない」と言って、石垣市議会から抗議決議を出され謝罪に追い込まれています。
※ツイッターでは「中国が沖縄を侵略している事実はありません」などと、事実に反する発信を行なった事もある。
※訪中のさい胡春華副首相に「一帯一路の出入り口として、沖縄を活用して欲しい」と公式に要望。
※衆院議員時代には「沖縄の一国二制度についての可能性」についてなどと馬鹿げた質問をし、各方面から失笑を買った。

※先の与那国沖日本のEEZ内に中国ミサイルが落とされた事案を問われ、「日本の米国への関与が行き過ぎている事が原因」という主旨の発言をしています。
※日本の抑止力向上にも常に反対の立場。
※今回の選挙中にも、デニーの後援会長である仲里利信氏が「琉球を救うには、習近平や中国共産党との友好関係を推進する以外ない」との異様な演説を行なっています。

メモを見ずとも、ちょっと思い出せる限りでかようにあるのですが、これだけの事実を見ただけで、孤立化を深める中国共産党が手をたたいて喜びそうな事ばかり。
かつて環球時報編集長だった胡錫進はカネやドラを鳴らすように「沖縄は中国領土」との宣撫キャンペーンを張っていた事がありました。しかし今は、その上の共産党機関紙である人民日報が「琉球は日本に奪われた国」「回復は地政学上の要請」などと、いわゆる核心的利益への格上げまでもう一歩といったところです。
このような状況とデニー氏の言動をかんがみれば、どこかの誰かが「玉城デニーは中国共産党の勢力」と言ったところで、違和感のある感じは少しもありません。

二紙にはむしろ、デニ―氏にインタビューして「こういう意見があるが」と、為政者側を糾す姿勢が必要でした。それが新聞本来のリベラル性の担保、役割や重要なあり方であるでしょう。
デニーのような権力者にべったり一体化して、批判精神を失ったままであるなら、戦争を煽った戦前の朝日新聞と本質的に変わるところはありません。今さらやっきになって狩人のように一般人の言論をツブして廻るというのも「選挙の公平性」や「ファクト」云々というよりも、もともと中立的立場を踏み越えてデニー氏支持に偏向する政治的理由以外の何物でもないのでしょう。

                                                                                                                          (続く)

 

 

2022年9月13日 (火)

山路啓介氏寄稿 知事選のあとにその2

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                                                 知事選のあとに
                                                                             山路啓介


  承前

■ 今回の選挙中、最も滑稽で可笑しかった事は、デニー氏支持の沖縄二紙や市民団体、それに引きずられた本土メディアの明かな「デニー氏寄り」とも、「中国寄り」とも取れる報道姿勢でした。
それは度々「ファクトチェック」という名や形式を借りたカウンター的な言論としてあり、ある日にはヤフーニュースの一覧の中に一度に二紙による三つもの同種記事が見られたほどに徹底されていました。
SNS中の無名者の小さなつぶやきにまで琉球新報や沖縄タイムスが容赦なく「デマ」の烙印を貼り、次々と葬り去っていく様はさながら思想警察の取り締まりのようで圧巻でした。呆れるとともに、むしろ、その「必死さ」に笑ってしまいました。

例えば「もうすぐ人民解放軍が来る」とした雑でイケてないSNS発信に対し、大の沖縄タイムスが本気で発信者の基をだどり音声を分析。「根拠不明」などとの烙印を貼り、沖縄の「今そこにある危機」を無いものとする結論に持っていくための不断の努力には感心せざるを得ません。しかし、そこに付くコメント欄での意見の多くは「常態化した中国海軍の宮古海峡の横断、尖閣周辺への軍事的干渉、EEZ内へのミサイル等々、「すでに人民解放軍は来ている」と言った方がいいのでは?」とのまことに説得性のある意見にあふれていました。

また、大阪府泉南市会議員の議員が「沖縄を中国の属国にしたいデニー候補。ウイグル・チベット・モンゴルのように日本民族も強制収容所に入れられ虐殺されます」とSNSに投稿したところ、市民団体が「投稿内容は事実ではなく、悪質な選挙妨害で、差別扇動」との抗議申し入れと刑事告発まで行なったとの事。その議員はなかなかブッとんでハデな事を言ったものだと思うし、デニー氏に対しては期間中でもあり軽微な選挙違反に該当する可能性もあります。
ただ、「差別扇動」という批判はあたらず、議員本人が言うように「印象操作」のようなものに過ぎないものです。中国のウイグル人等への苛烈な人権侵害は国連のバチェレ高等弁務官報告によって、公式に認定されたところと言ってよく、中国を批判をする事と中国人一般への人権侵害はイコールではありません。
告発したのは「奈良-沖縄連帯委員会」と「共生社会を考える会」で、例によって「原発ハンタ~イ」の人たち。前者は京大に対し沖縄戦没者遺骨返還を強行にせまるなど、リベラル系にあって人権問題や国籍問題を盾にした沖縄差別原理主義的な運動体と私は認識しています。

これらの団体から議員が噛みつかれた要因は別にあります。
泉南市での国際交流員の選定にあたり、議会で議員が「市民目線でいえば、(母国文化などを学校で児童に接して教える)半分公務員である職業に中国籍の人が就くのはどうなのか。あり得ない、怖い。という声をもらっている。」と質問した事に端を発しています。議会側は「市民の声」として質問している議員に対し、「市民の差別と憎悪を扇動する」として謝罪と撤回を求めました。しかし、この事を最初に問題化して主導したのは議会ではなく、山本市長自身と教育委員会の行政側です。
31才の山本市長は言うまでもなく大阪維新出身であって、議会は維新・公明・共産党が主軸です。
議員の発言は中国の「国家情報法」の存在と内容を真面目にふまえたもので、この事に対する自治体側の認識をスルーしたままで、中国人一般への「人権問題」にすり替える事こそ問題だと私は考えます。
正直、大阪での維新の伸長と同時に府内各市で親中国的なスタンスが助長されていて、物理的な安全保障面の心配をする必要がないだけに、むしろ沖縄よりも深刻な状況ではないかと考えざるを得ません。

もう一つ、面白い記事がありました。
SNSで「玉城デニーは中国共産党の勢力とフランス当局が認定している事をご存知ですか?」との産経新聞の記事を参考に引用した一般人の投稿をめぐり、8/30琉球新報から「玉城デニーは中国共産党の勢力は誤り。 リンクの新聞記事に玉城デニー氏の名前は出てこず」と表題した記事が出ました。
ところが琉球新報の記事本文では、ご丁寧に産経新聞のネタ元であるフランス軍事研究所の元文を引用していて、「沖縄には既に米軍基地に敵対する独立派が存在している。島民の大多数は反東京、反中央政府だ。知事に玉城デニー氏(長年、アメリカのプレゼンスに反対してきた人物)が2018年10月に誕生したことからも明らかだと説明している」と書いてしまっているのです。

つまり、原文には玉城デニーの名前が記されてあっても、投稿は産経新聞からの引用によるものなので、その産経新聞には書いてないから「名前は出てこず」であって「誤り」であるという、ひろゆき真っ青の本質ずらしの詭弁ぶり。「いわゆる見出し詐欺」は長く二紙を見ている当方にはお馴染みで、見出しの「勢い」と、それに相反する記事本文の内容相違など日常茶飯事です。
よく見る過激な見出しは二紙にとっては起こった事象の「まとめ」でも「要約」でもなく、印象操作です。辺野古問題などが特にそうで、本文の最後の方にちょこっと防衛局の見解をアリバイ的に載せていたりします。最後まで良く読むと、私など「なるほど防衛局の言い分が正しいだろうな」と思えるのですが、それじゃ見出しは何だったの?となります。
ようするに、見出ししか見ない傾向が強い県民読者の特徴を逆手にとったつもりでしょう。
しかし、記事本文を読めば、フランス軍事研究所が「中国勢力に侵食されている」とする自国領のニューカレドニアと、私たちの沖縄を同じ視点で見ている事に何も知らない県民はかえっておどろくのではないでしょうか。

また、たしかに「デニー氏は中国共産党の勢力」というのは雑で軽率な表現だと思います。
しかし、このブログをお読みになる皆さんなら良く知っているように、デニー氏あるいは支持者には独立志向を隠さないグループが密着していて、デニー氏の日頃の言動や異常な親中姿勢も良くご存知だろうと思います。また、「独立=中国共産党支配下になる事」というのも理の当然です。おちゃらけた平和主義者が考える事とは違いますが、それ以外あり得ません。
かつてデニー氏が「アメリカからも、日本からも沖縄を取り戻す」と言った事は選挙中の勢いだったと私は思います。けれど、言葉の自然な解釈として「独立の主旨」と捉えられても何ら不自然では有りません。このような不用意な発言の責任は誤解を与えたデニー氏の側にこそあり、沖縄二紙はその時点で真意を問い糾し記事にして県民に明らかにすべきでした。

                                                                                                                     (続く)

 

2022年9月12日 (月)

山路啓介氏寄稿 知事選のあとにその1

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 山路啓介氏より寄稿を賜りました。
4回分割で掲載させていただきます。

                                             ブログ主

 

                                                         知事選のあとに 
                                                                                                          山路啓介

意外に早い時間にデニー氏当選確実の報が出てしまいました。
自民党の情勢調査でも一度も佐喜真リードがないなか、後半選では佐喜真氏がかなり追い上げているとの情報があったので、かなり残念です。
佐喜真氏の統一教会問題だとか、辺野古移設問題だとか要因を報道ははやし立てますが、そういうものではないでしょう。自治体の首長の再選率はもともと87%とも90%ともされる高確率であって、よほどの失敗がない限りデニー有利は揺るがなかったと見るべきです。差の6万票は大差とも小差とも言えませんが、二期目の首長を相手としたケースでは「良く戦った」と言える部類になるのではないでしょうか。宜野湾市の松川市長も二期目をモノにしています。
仄聞するところでは、佐喜真氏は当初候補になるのを渋っていたとの事。しかし、どのような場合でも自身の主張とその先への道筋を付けるために、避けては通れない立候補だったと聞きました。
また、下地幹郎氏は衆院選で國場幸之助氏が一区だけで取った五万四千票さえ下回る、五万三千票しか取れなかった事は衝撃的な惨敗でした。もはや泡沫に近い存在になってしまったようです。

選挙中、デニー氏は法定ビラに「公約達成率97%」なるウソの表記を二紙に突っ込まれ、本当の達成率としては4%程度との事実が露呈しています。仕掛かりで言えばたしかに97%なのだけれど、これらの7割以上は達成する事はないし、辺野古移設も止める事は出来ません。
今回の選挙ではセーフティネットだとか、大学までの授業料無料だとかブチ上げていましたが、そんな金はどこから出て来るのか。これからは二紙など革新勢力からの突き上げが厳しくなり、デニー氏にとって茨の道の4年間になりそうです。

玉城デニーという人は稚気とファンタジーの人で、リーダーシップもありません。故翁長氏ふうのカリスマ性を発揮する演技力もなく、何かをするには何処を押せばいいか、そういう事を全く分からず知事になった人です。政府や関係省庁とすれば、仲井眞知事のような怖さは全くなく、翁長氏のようなワケの分からなさもない、いわば「御しやすい人」であるようです。
沖縄関係資金がごっそり削り続けていられるのも、辺野古問題のみならず提案と計算に暗く、強くネゴ出来るだけの資質がないデニー氏が知事のゆえだと見られています。
しかし、あまり心配もしていません。大した願いもない。何もしないのがデニー氏の長所ですから、それは慣れました。どうか何もせずに、昼行燈でこれからも静かに4年間を過ごして下さい。好きな「何とかキャラバン」とか、そういう方面で全国を遠征していてくれればいいです。

この間、調べてみたら、ビックリするほど都会化した那覇市は、生産額で言えば群馬県第三位の太田市よりも下なんです。かなり意外でした。
太田市というのは高い建物なんかはあまりなく、那覇市と違い空港や港湾なんかももちろん無い。
モノレールも新幹線の駅もない。ちょっと行けば、田んぼや畑です。
なのに、この生産額の優位性の違いは何か? というと、太田市にはスバルの工場がある事ですね。
製造業というのは設備投資額も旺盛で地域に根差す事からも、観光業よりも生産性ははるかにいい。太田周辺地域には下請けやその協力業者、良質な労働資源も控えています。
観光業のテコ入れをデニー知事は公約しましたが、観光業は雇用機会は増やせますが、他業種よりも賃金が安いのです。また、群馬県の場合は保守王国と言われるくらい政治的に安定しています。
これは企業にとって、相当なメリットです。かつて沖縄返還した時も、革新が強すぎて沖縄には大きな製造業が来ませんでした。いくら沖縄資金が投入されたとしても、こうも不安定な政治状況がつづくのでは、佐喜真氏が言っていた企業誘致も出来る土壌が整わないのだろうと思います。もっとも、デニー知事にはその意欲もないでしょうが。

翁長氏は後継指名のさい、デニー氏とともに金秀の呉屋氏を後継指名しました。これで分かる事は、二人とも革新系でなく、革新系の知事誕生には警戒さえしていたという事です。呉屋氏はデニー氏の後援会長にまわり、最終的にはオール沖縄を離脱しました。今回の選挙では佐喜真陣営に姿がありました。呉屋氏の離脱の原因はデニー氏が革新系にふれすぎるからだと言われていて、その事は故翁長知事の意図とは違った方向にデニー氏が転換してしまったのです。

いずれにしてもまだまだ続く泥濘の4年間ですが、安全保障問題は特に頭が痛い。何も台湾危機がそこにある時期にデニーさんであろうとは、そんな案配でなくともいいのに。
ですがもう、デニー知事が仕事さえしてくれなければ良しとしましょう。

                                                                                                                          (続く)

2022年9月11日 (日)

日曜写真館 透明な沖の残光青バナナ

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青バナナづしりと垂れし秋暑かな 中村汀女

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老いらくの美醜是非なしバナナ食ふ 藤田湘子

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青きバナナ部屋の真中に吊りておく 金子兜太

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青バナナ逆立ち太る硝子の家 西東三鬼

 

 

2022年9月10日 (土)

共に「非常時の君主」を生きたエリザベス2世陛下と昭和天皇

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エリザベス女王陛下が薨去されました。衷心より哀悼の意を表します。
英国民にとって、エリザベス2世陛下は昭和天皇のような位置にある御方でした。
BBCはこれ一色の報道でした。


「8日に死去した英女王エリザベス2世の長い治世は、王位と国民に人生を捧げるというその強い義務感と決意が結実したものだった。
イギリスの影響力が低下し、社会が様変わりし、王室の役割そのものが疑問視される中、女王は多くの人にとって、急速に変化する世界の中で唯一変わらない定点のような存在だった。

しかし、女王が生まれた時には彼女が王位に就くとは、だれにも予想できなかったはずだ。それだけに、激動の時代の中で君主制を維持したその功績はとりわけ目覚ましい5
(BBC9月9日)
【評伝】 エリザベス2世、強い義務感が支えた長い治世 - BBCニュース

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立派なお顔です。唇は引き結ばれ、意志的な眼は真正面を見ています。
エリザベス2世は、昭和天皇と同時代を生きました。
昭和天皇は『昭和天皇独白録』 の中で、皇太子として訪英した際に、エリザベス2世の祖父にあたるジョージ5世から親しく立憲君主のすべきことを教えられたと述べられています。

わが国で昭和と呼ばれている時代は、君主制が激動期にどのように生き、国民と接し、政治や国際社会といかに対応するのか、を問われ続けた時代でした。
英国王ジョージ5世は、公正中立な権威として君臨すべきだと考えておられましたが、昭和天皇はそれを十分すぎるほど理解しながらも政治的中立を許されませんでした。
『昭和天皇実録』には、張作霖爆殺事件のことで田中義一首相を厳しく叱責した後に、自室に戻って疲れ果てたと述べられています。
それは田中が日本軍の仕業ではないと虚偽の説明をしたことを、昭和天皇は許せなかったためです。

昭和天皇は軍が中央の統制に服さずに、大陸で独走する姿勢に強い危機感を持っていました。

その後も昭和天皇は、この張作霖暗殺事件への対応に対して、「立憲君主の振る舞いとしてやりすぎではなかったのか。立憲君主の則を超えているのではないか」という自責で悩む姿が描かれています。
この叱責事件の後、田中は苦悩の末に亡くなっています。

しかし昭和天皇は、その後の2・26事件の時も、クーデター部隊の鎮圧をお命じになりました。
もはや戦争へ流れ込む1930年代は、君主が公平中立な政治の蚊帳の外にいられる時代ではなかったのです。
終戦時においても、本土決戦を叫ぶ一部将校が天皇の和平の意志を踏みにじって抗戦を叫びました。
しかもその中心は、陛下の足下にあらねばならない近衛師団でした。
彼らは昭和天皇を排し、秩父宮殿下を擁立しようとすら考えていました。

このような時代に立憲君主国として存続していくためには、あえて非常時における君主として振る舞わねばならない、そう陛下は決意されたのです。
そして日本を破滅の淵から救われたのです。

昭和天皇の苦悩は、ジョージ5世の王女として生まれ、しかし時代のいたずらから「非常時の女王」の責を負わねばならないエリザベス2世陛下と同じものでした。

エリザベス2世陛下は先の大戦で、常に先頭に立って国民を鼓舞しつづけました。

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BBC

「第2次世界大戦中、ラジオ放送を行うエリザベス王女(右)と妹のマーガレット王女。王女たちは、第2次世界大戦の戦火を逃れて国外に疎開した子供たちに、ラジオ番組「子供の時間」で語りかけた。バッキンガム宮殿で収録したこの番組の音声が、後の女王の声の記録として最も古い」
(BBC前掲)

そして大戦が終わり、両君主はにこやかに共に歩くことを許される時代になりました。

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しかし世界は再び大きく変わろうとしています。
第2次冷戦が始まったのです。

第2の鉄のカーテンが降り、世界は自由主義陣営と全体主義国家に二分されようとしています。
この時代に、冷戦を終結させ、ソ連に引導を渡す役割を果たしたゴルバチョフが亡くなったのは象徴的です。

新国王となったチャールズ3世は、ダライラマ14世の永きに渡る支援者のひとりであり、親中派のキャメロンが習近平を国賓で宮中に招く企みをした時には、晩さん会に欠席しました。
またエリザベス2世も、穏やかに習に批判的なそぶりを見せたと聞いています。

エリザベス2世の長年に及ぶ公務のしめくくりは、これ以上ない中国批判派であり、ウクライナ支援の急先鋒であるトラスの認証だったことは象徴的です。

 

 

2022年9月 8日 (木)

デニー知事の失敗・首里城炎上

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デニー氏は勝利を確信しているようですが、最大の失政はつごうよく忘れたようです。
思い出してもらうため、2019年11月12日の記事を再録します。
この首里城炎上の原因には、今の沖縄県政の矛盾が凝縮されています。

これを問わない県知事選とは、いったいなんなんなのでしょうか。

                                                            ~~~~~

沖縄県は、首里城炎上の責任は国にあると誘導したいようです。
沖縄県準広報紙の沖縄タイムス11月7日の記事からです。

「「大家さんは国だ」 首里城、スプリンクラーが未設置だったワケ
[失われた象徴 首里城炎上](6)夜の屋内火災

 「国が整備した施設で、消火設備は、きちんとしているはずなのに」。10月31日、午前7時半すぎ、県幹部は、県庁で首里城の正殿が焼き尽くされていくテレビニュースの映像を横目に、うなだれた。別の県幹部は、「今回の火災は、想定外だった」と声を落とした。閉館後の正殿のように、人がいなくても火災を早期に感知し、自動的に消火するスプリンクラーは、設置されていなかった。
 首里城を整備した所有者の国によると、「正殿復元はできるだけ昔使われた材料と伝統的な工法を用いて、往時の姿に戻していく」考えが基本にあった。法律を順守し、「厳正な復元を目指した」とスプリンクラーが設置されなかった経緯を説明。消火設備の妥当性については、「法律を順守した」との立場だ」(沖タイ11月7日)

すっと読むと「大家」の国が杜撰な防火設備しかない施設を残したから、県は「心の象徴」を燃やされてしまって大きな損害を被った、あげて責任は国にある、再建費用とは賠償金のことだ、とでも読めてしまいます。
この私の邪推が正しければ、今本土に来ている那覇市長や、火災があってあたふたと駆けつけたデニー知事などは、実は陳情ではなくて、「賠償要求」に来たんですかね。
いくらなんでも違うと思いますが、ここまで被害者意識丸出しで言い募られると、ひょっとして、と勘繰りたくなります。

沖タイさん、問題をすり替えないで下さい。
「大家は国」、では国が首里城の管理責任を持っているとでも?
ならばこの首里城火災原因がなんと推定されているのか、そこからいきましょう。

発火したのは正殿1階北東側からです。そこには分電盤がありました。
そして焼け跡には、分電盤から2本の延長コードが延びていて、溶けた痕が30数カ所残っていました。
※1本は床下配線、1本は延長コードでしたので、訂正します。

「電気系統設備が最も集中している正殿北東の部屋が出火場所とみており、その部屋の分電盤の床下配線と、分電盤側面のコンセントに取り付けられていた延長コードが見つかった。その両方に、溶融痕があったことを明らかにした」(琉新11月8日)

火の気がない夜間の火災の原因の多くは、電気配線からの発火です。

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https://sonaeru.jp/hazard/fire/residential-fire/h-...

当時正殿は鍵がかかっており無人でした。
ストーブなどの火の気はありませんでしたから、原因はこの分電盤から延びた2本の1本の違法(※)コードとみるしかないのです。
しかも2本とも杜撰な素人細工で、市販品のコードを廊下に放置して見学者が多数通る床にのたくらせてありました。
※違法判定についてはひこーさんのご意見を頂戴して「違法とまではいえないが適切な使い方ではない」とします。

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通常、こういう電源の延長工事をする時には、専門の電気工事士に依頼して、分電盤の漏電遮断器を経由して取るものなのです。
しかし電気について無知な財団職員がやったのでしょうか、漏電遮断器を通さずに電気をとってしまいました。
結果、電気コード自体の損傷か、あるいは電線に取り付けた器具の不具合によって発火したと考えられています。

では誰がこんなものを取り付けたたのでしょうか。いうまでもありませんが、管理財団です。

沖タイさんは「国が大家」と言っていますが、それはあくまでも国有財産だというだけのことで、管理は完全に県に委譲されていました。
あの違法延長コードも県に委譲されたとたんに取り付けられたのです。
それは琉球新報も認めています。

「一方、延長コードは今年2月から正殿内に取り付けられていたことも関係者への取材で分かった」(琉新11月8日)

裏返せば、国が管理してさえいれば、こんな違法工事はやらせなかったということです。
これは私もイベント関係者の間接的聞き取りで確かめています。

国有施設だった当時は、電気関係の管理にはことのほかうるさく、分電盤から電気をもらったりすることは御法度だったそうです。

それが県営に移管されたと同時に、すべてが「ゆるやかに」なったそうです。

沖タイは「国が大家」だから出火の原因も 国 にあるとでも強弁したいようですが、短絡するにもほどがあります。

出火の責任は県にあります。ここから逃げては話になりません。
今後再建についての具体的作業に入るでしょうが、再建される新首里城は国が管理しきるしかないでしょう。
とてもじゃないが、沖縄県にその能力はありません。

次に防火体制についてですが、こう沖タイ記事は書いています。

「実際の管理運営を担う沖縄美ら島財団は、「(既存の)設備を前提に、指定管理を受けているので、これを最大限に活用して対処する」との立場。県も財団も、スプリンクラーなど、屋内の出火に対応する自動消火設備の検討はしてこなかった。
文化庁は、今年4月、パリのノートルダム寺院火災の発生後、文化財の防火対策の徹底と点検を呼び掛けていた。通知の対象は国宝と重要文化財の建造物で、首里城は対象外だった。
木造建築物への防火意識が高まる中でも、国や県は、体制の見直しを行っていない。県幹部は「大家さんは国だ」と例え、「スプリンクラーなど、勝手には新しい設備は付けられない」と、所有者と管理者の関係性を説明する」

「勝手につけられない」という言い方で、スプリンクラーの設置を国が認めていなかったような言い分ですが、果たしてそうでしょうか。
文化庁は、ノートルダム火災を受けて今年4月に文化財の防火についての見直しを進めていました。
この対象から首里城がはずれたということで、県は免れたと勘違いしたようです。

問題は「国が大家」であるかないかではなく、「沖縄の象徴」とまで首里城を言うならば、防火体制に万全期するべきだったということです。
文化庁がいやスプリンクラーが室内の文化財を濡らすというなら、不燃ガスによる消火など別の手段で対案を出し、国と協議すればよかったのです。
それでもなお国が、これ以上の防災システムなんかいらない、つけるべきではないと頑迷なことを言うなら、その時こそ国としっかりと対決すればいいのではありませんか。
それを低い水準で妥協して、あれは「大家が国だから」と小声で愚痴をいう、それが「沖縄の象徴」を守る者の言葉だとすれば、恥ずかしい。

沖縄県は、首里城をただの観光スポットとしてしか考えていませんでした。
だから夜間はおろか、昼間にもまともな消防訓練をしていません。
国が管理していた2018年には消防訓練も行われています。

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https://sonaeru.jp/hazard/fire/residential-fire/h-...

この2018年1月8日の消防訓練の設定はなかなか現実的で、早朝に正殿から出火したと想定しています。
この時に放水している放水銃の位置を確認してください。
現実の火災時には、すべての放水銃は稼働できず、左端の放水銃(下写真赤丸)もまた使用されていませんでした。

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その原因も地元紙にかかると「国が撤去したからだ」ということになって国のせいだぁとなるわけですが、だとしても全部が使用不可能というのはいったいどうしてでしょうか。

現時点で分かっているのは、警備員が熱気と煙で接近出来なかったからだと言っていますが、そこまで火災が拡がったのは燃えてから警備員が駆けつけるまで相当時間が経過していて、正殿内部は手もつけられない状況になっていたからです。
そもそも一般的には、感知器が適正に作動して、それに連動して室内・屋外の消火装置が自動消火を開始するのが定石なのです。
それを建物に接近できないくらい燃え盛ってから、消防訓練もしていない素人の警備員が手持ち式の消火器を持って行ってもなんの役にも立たなくてあたりまえです。
文化財の自動放水銃など珍しくもない施設ですから、「大家の国」と話合ったらいかがだったのでしょうか。

さらによしんば警備員が近づいて放水銃にとりついたとしても、役目を果たせていたかどうかはなはだ疑問です。
というのは、ビジネスジャーナル(11月6日)によれば、当夜、イベント準備が前庭で行われていて、大規模なステージが建設されていたからです。

それが 下写真の正殿前舞台です。

ただし、今回のイベント用舞台は更に大規模だったようです。

「特に御庭にあったステージはかなり大きく、高さも正殿の半分くらいあった」
(ビジネスジャナル11月6日 )

焼け焦げた大規模な舞台と大型照明機材が多数設置してあるのが確認できます。

何度か書いていますが、これだけのイベント設置をしていれば大量の電気が必要なのはあたりまえですので、分電盤から電気を貰った可能性が高まります(※)。
※ひこーさんのご指摘どおり、正殿裏の分電盤からは遠く、他の棟からとったようですので、この可能性はありません。

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正殿付近で実況見分が行われる首里城。奥に御庭とステージが見える(毎日新聞社/アフロ)Business Journal 11月6日

ビジネスジャーナルはこう報じています。

「大手キー局社会部記者は次のように話す。
「どれだけ影響があったのかわかりかねますが、西の『御庭』にあった2基、東側の1基の計3基の放水銃格納庫と正殿の間に、当日まで開催されていたイベントのステージや工作物が設置してありました。現場を取材した記者によると、放水銃の上にその瓦礫が崩れていたそうです。
 那覇市消防局に放水銃と工作物の位置関係を尋ねたところ、次のように説明があった。
「確かに地面下の放水銃格納庫の扉は開くようにはなっていました。ただ、かなり工作物が(格納庫に)迫っている状態だったことは確認が取れています」。

 会社の非常口を形だけ空けて資料を積む。防火水槽指示位置の枠に入っていないけれどギリギリまで寄せて車を駐車する。そして、イベント設営の際に放水銃や消火栓設備の規制ラインギリギリまで寄せて工作物を設置する。明確に違法行為ではないが、万が一の際にそうした行為が命取りになるのは、これまで多くの火災が実証してきた」( ビジネスジャーナル 11月6日)

たぶんそのとおりです。放水銃格納庫の扉の上にはイベント準備の機材は置いていなかったものの、仮に放水銃を警備員が使えたとしても、その前にそそり立つような巨大な舞台がそびえ立って妨害したことでしょう。
だとするならば、観光イベントのほうが防災より重要だったと県が考えていたことになります。

このようなていたらくで、「大家は国だ。われわれは国に言われたとおりにしていただけだ」と言い張れる人たちの厚顔無恥ぶりに呆れるばかりです。

 

 

失敗した危機管理、旧統一教会問題

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私が岸田自民党に心配していたのは、今のような事態でした。
打たれ弱いというのか、集中して叩かれ続けるとズルズルと後ずさりしていってしまいます。
岸田さん、私がいちばん恐れていたのはここなのですよ。
呆れるほどひ弱です。

党を守るべき茂木幹事長も、「政治家は支持者を選べないんだからしかたないじゃないか」と言った二階氏のようなしぶとさがないために、どこで防衛戦を敷くのかという定見が欠落したままズルズルと後退してしまいました。

共産党を引き合いに出して反撃したまでは結構です。
この旧統一教会問題をここまでひどいありさまにした原因のひとつは、カルト政党がカルト宗教を攻撃している倒錯にもあるからです。
ならば、もう少し正確にやりなさいよ、茂木さん。

指摘内容が間違っています。
「共産党が過激団体と関係を持っていた」のではありません。そんなことを言うから小池書記局長あたりに「極左暴力集団といちばん戦ったのは共産党だ」という反論を受けてしまいます。
霊感商法で高額で壺を売っていたなどという生ぬるいものではなく、共産党自身が暴力革命を志向し、殺人や放火をしていたのです。
反社と関係を持っていたのではなく、自らが反社だったのです。

元共産党員(板橋区議)の松崎いたる氏はこう書いています。

「1951年、日共は暴力革命をめざして、いわゆる「51年綱領」を採択し、51~52年にかけて実際に数々の暴力・騒乱事件を起こしている。年配者にはすでに周知の事実だが、さかんに「平和」を叫ぶ現在の日共の姿しか知らない若い人には、意外なことかもしれない。しかも当の日共は現在、「暴力事件は分派の仕業で党とは無関係」と主張し、「51年綱領」すら認めていない」

いやそんなことは過去のことだというなら、旧統一教会も過去のことで現在でも霊感商法をやっているわけではありませんが、いまなお旧悪で悪魔化されています。
共産党が問題視されるのは、それをいまでも改めるどころか、「敵の出方次第でまたやる」という言い方をしている、そここそが問題なのです。
だから、完全に暴力革命路線を否定しきったとは見なされず、いつまでたっても破防法監視団体措置を解除されないのです。
反撃するなら正確にお願いします。

とうてい産経に「最悪の事態を想定した危機管理を信条とする首相」、と評された人がやることとは思えません。
岸田派ナンバー2というだけで外相に抜擢された林氏など、「安倍(呼び捨て)は生きている時もモリカケで党に迷惑をかけたが、死んでもこうだ」と言い放ったとか。

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茂木派54人に、岸田派は43人 自民各派、入会相次ぐ:時事ドットコム (jiji.com)

結局、対応を小出しにした結果、さらに悪い状況に陥っています。
最悪のリスクコントロールです。
これではとてもじゃありませんが「黄金の3年」どころか来年すら見通せません。
野党とメディアは、政権初期の融和的態度をかなぐり捨て、今後延々とこのてのスキャンダルをやられ続ける宿命になるはずです。
これに耐えられますか、岸田さん。安倍さんは奥さんまで袋叩きにされたのですよ。

岸田さん、あなたが「黄金の3年」を最後までなし遂げたいなら、こんな旧統一教会スキャンダルごときでつまずいては仕方ありません。
こんなていどのことで参っていたら、今後、同じようなことが何度起きることか。
野党とメディアは、スキャンダルでしか自民党を攻撃できなくなっているのです。
あなたも内閣の一員として、安倍氏が四六時中ストーカーのようなモリカケサクラで攻撃にさらされていたのを横で見ているはずです。

しかし執拗なスキャンダル攻撃を受けながらも、安倍氏はやることはしっかりやってきました。
立ち遅れていた集団的自衛権を安保法制で整備し、外国から情報をもらえなかったゆるい軍事機密保持を特定秘密法で対処し、米国が降りてしまったTPPを独力で牽引し巨大な自由貿易圏を作り出し、そしていまや自由主義陣営共通の世界戦略にまでなったザ・クアッドを構想し実現しました。
そのかたわら、アベノミクスの金融緩和政策で景気を建て直そうとしています。

まさに超人的な仕事ぶりです。
いままでの内閣で、このひとつでもなし遂げた内閣がいくつあったでしょうか。
一内閣一懸案で、辞任と引き換えにひとつ通すのがやっとでした。
いかに安倍政権が桁違いなまでに有能だったかわかります。

それゆえ反対陣営からは、これほどまでに憎まれた人物はないと思えるほどの憎悪を一身に浴びてきました。
彼らはこぞって安倍氏を政権から引きずり下ろそうとしましたが、真正面からは勝負にならないので、搦手の週刊誌的スキャンダルで攻めてきました。
立憲の安住淳・国対委員長は、8月30日、安倍総理の国葬儀を巡る閉会中審査に岸田文雄首相の参加を求めるなどして、追及姿勢を強めるそうです。

「立憲民主党の新執行部が政府・与党への対決姿勢を鮮明にしている。安住淳国対委員長は「戦う国対」を掲げ、野党合同ヒアリングを実施するなど、故安倍晋三元首相の国葬などで政府の対応を追及。従来の提案型野党から転換し、党立て直しのため反転攻勢に出る構えだ。
安住氏は30日、日本維新の会の遠藤敬国対委員長と国葬に関する閉会中審査について協議。自民党が岸田文雄首相の出席に否定的なことを踏まえ、「首相への質疑は不可欠との認識で一致した」と記者団に明らかにした」
(時事8月31日)
立民「対決路線」鮮明 新執行部で反転攻勢:時事ドットコム (jiji.com)

予想どおり、泉代表が掲げた「提案型野党」は1年にも満たないうちに放棄されて、またもや週刊誌片手の追及型野党に逆戻りです。
内閣支持率が下がったのを、絶好のチャンスと見たのでしょう。

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日刊ゲンダイ

ただし立憲も支持率は下がっています。

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2022年6月21日

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2020年8月11日

そもそも、かく言う安住氏自身を含めて、多くの立憲民主党議員が旧統一教会と関わっていたのは知られており、確実にブーメランとなるはずですが、これもいつか来た道です。

「立憲民主党は23日、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)と関わりがあった党所属国会議員について、枝野幸男・前代表や安住淳・元財務相ら新たに6人が判明したと発表した。関連が明らかになった立民の国会議員は計14人になった」
(読売8月23日)
旧統一教会と関わり、枝野氏・安住氏ら立民6人判明…泉代表「ごまかそうとしているのが自民」 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

笑えるほど、なにひとつなにも学ばない人たちです。
旧民進党は分裂して、提案型野党に変化する部分は国民民主党になっていきました。
そしてのこされたのは、今の立憲民主ですが、泉代表がいくら提案型を唱えようと、その能力も気概もない連中だけが残り粕のように滞留しているのがこの党なのです。

安住氏はこんなことを言っているようです。

「立民が対決路線にかじを切るのは、提案型野党の在り方が参院選の敗因と総括したためだ。報道各社の世論調査で内閣支持率が下落傾向にあることも追い風とみる。ベテラン議員は「風向きが変わるかもしれない。きっちり政権批判すればいい」と指摘した」
(時事前掲)

ほー、いつ立憲が自分らの政策を政府に対して対置したのでしょうか。
維新や国民民主が政府予算に賛成しようものなら、野党を止めたのかなどというような体質だからダメでのです。
提案型に変化できず、メディアが餌のように持ってくるスキャンダルをむさぼり食って「追及」とやらにうつつをぬかすから、国民は参院選で答えをつきつけたのです。

話を戻します。
もし岸田氏に安倍氏の背中を追う気があるのなら、時間を味方にすることです。
こんな旧統一教会「疑惑」ごときですべったのころんだのと言っている場合ではない。

もっと高みを望んで仕事をすべきです。

いちばんいけないのは、疑惑追及が生じた時、相手におもねることです。
彼らが言う「疑惑」とやらは、タマネギのようなものにすぎません。
皮を剥いていったら、最後はなにも残らないのです。

初めにきっちりと危機管理の線を立てておけば、こんなことにはなりませんでした。
ところが、8月31日の総理記者会見で、岸田氏は「実態を明らかにして関係を断つ」と言ってしまいました。
おいおい、どうやって「関係を断つ」のでしょうか。
いま、党員の務所のメンバーにひとりひとり江戸時代の宗門改めもどきのことをする気なのですか
おいお前、旧統一教会に入信しちゃいないだろうな、参院選のスタッフやボランティアにも信徒がいなかったろうな、しらみつぶしに調べてこい、とでもやるのかしらね。

ハッキリ言って馬鹿です。
こんな調査自体が信教の自由原則に反します。
答える義務はありませんし、よしんば旧統一教会信徒だったとしても不利益を被る理由にはなりません。
旧統一教会が犯した誤りは誤りとして、個人の内面の問題である信教の自由まで侵される理由にはなりません。

自民党は、旧統一教会と宗教の自由問題を切り離して対応すべきだったのです。
ここで妙にメディアに煽られた世論に迎合して、できもしないことを約束するから、また攻撃を受けることになります。
どこまでで線を引くか、明確にしていただきたいのです。

たとえば「自民から排除する」とまで言ったのは、あくまで霊感商法に手を染めていた旧統一教会との直接の関わりについてなのか、それはスピーチや祝電といった議員社交まで含めるのか、またその後継団体である世界家庭連合まで同一視するのか、世界日報といった十数年前に袂を別ったメデイアまで含めるのか、信徒は無条件にすべて排除なのかなど、しっかり議論しておかねばならないでしょう。
さもないと信徒と握手しただけで、旧統一教会との接点とやられますよ。

 

2022年9月 7日 (水)

「置き換え地図」でみるロシアの実力

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ロシアというのは、中国と並ぶ「異形の大国」です。
この二国には類例がありません。

あえていえばトルコとイランですが、共に大帝国の末裔であり、いまも帝国の復活を夢見ているところなどは一緒です。
これらの国はかつて、そしていまも広大な領土を持っていることが、彼らの自尊心の根源になっています。
ロシアは、かつてナポレオンとヒトラーを国内奥深くに導いて滅亡させたというのが、いまだ自慢の種です。

つい最近もカムチャツカに来て、ほんとうの日出ずる国はロシアだ、とブイブイ言わしていました。

「「日出づる国」は日本ではなくロシア―。プーチン大統領は5日、訪問先の極東カムチャツカで若者の自然保護団体のイベントに出席した際、こう述べた。カムチャツカが「日本より東にある」からだとしている。タス通信などが伝えた。
これに対し、ウクライナのコルスンスキー駐日大使は6日、ロシアは国の歴史や文化、土地、穀物など「全てを盗む」と主張した上で、今回のプーチン氏の発言を、相次ぐ盗みの「最後の一撃」とツイッターで批判した。
 「日出づる国」というフレーズはロシアや欧米では日本の別称のように扱われている」
(共同9月6日)
プーチン氏、日出づる国はロシア 訪問先のカムチャツカで:中日新聞Web (chunichi.co.jp)

この大国幻想の行き着く末は、旧帝国の版図の復活です。
あの、もうそこ今は独立国ですから、と言ってやっても無駄。
ウクライナとロシアは同じ民族族だぁ、なんて言って侵略してしまいました。

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毎日新聞

プーチンによればいまや独立国となっている旧ロシア帝国とその末裔であるソ連帝国の版図のすべては、今のロシアが正当な権利を持つわけです。
国境線の力による変更を禁じた近代国際法など、この前にはまったく無意味です。
アメリカの国連大使は、プーチンは過去にロシア帝国だったのすべての地域、つまりウクライナ、フィンランド、ベラルーシ、そしてポーランドとトルコの一部に対して正当な権利を持っていると主張しようとしていると述べたことがあります。

中華帝国の復興を目指す習近平と一緒で、あんたまだそんな夢に酔ってるんでっかという類の妄想にすぎません。
ただしロシアは昔大帝国だった時ほどの国力はないので、ミニロシア帝国をごく一部で再現してみせるにすぎませんが。
そして2014年に打ち負かしたひ弱なウクライナならもっと領土を強奪できるだろうと踏んで始めたのが、今回のウクライナ戦争でした。
ところがひ弱どころか、ウクライナ人は恐ろしく手ごわく、外交もしたたかな国でした。

では、まずは人口から見た世界地図をみてみましょう。
下の世界地図は、人口の多さの縮尺で地図上の大きさに置き換えてあります。
今日はこのテの「置き換え地図」をたっぷり登場させますからね。

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人口の多さで世界地図を描き変えたらこうなった(画像) | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)

中国がバカデカイのはともかくとして、日本は大きな島に変貌。
おーいロシア、どこにいっちゃったんだーい。
じつはロシアの人口は1.4億人と、日本より2千万人多いだけでいい勝負です。
しかもこれはウクライナ領クリミアまで入っています。
ウィキにもこう皮肉られています。

「ロシア国内ではしばしば「ロシアはヨーロッパではない。ユーラシア国家だ」と主張されており、その主張に沿うと、ユーラシアにある中華人民共和国インドと比較するべきであり、中華人民共和国やインドに比べてはるかに人口が少ない、人口小国である(ロシアは面積が広く地図上の印象が強い割に 、人口が少ない。日本の総人口が世界11位であり、日本と大差は無い」
ロシアの人口統計 - Wikipedia

次に富から見ていきます。
経済規模で見る世界地図にすると、米国は真っ赤に膨れ上がり、緑色の日本も膨張、紫色のロシアは栄養失調のイワシのようにのたくっています。

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「富の大きさ」で世界地図をつくると、日本はこう姿を変える【画像】 | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)

しかも、富の源泉は何かといえば、工業製品は皆無で、あえていえば武器類くらいなもの。
中村逸郎氏流に言えば、「ロシア人は働かず、地べたから湧きだすもので食っている」のです。
ロシア経済は、原油による地下資源の開発に依存する不労所得型経済と、小麦などの農業によって支えられています。
下図はロシアの輸出入を見たものですが、機械類を買って、原油・鉱物を売るといった極端な原油依存型で、おおらそ先進国ではなく、むしろまるで発展途上国型モノカルチャー経済です。

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ロシア経済、潜在力は魅力だが、見えない「近代化」策

原油輸出こそが、ロシア経済の基幹産業で、主立った輸出先はヨーロッパと中国です。
ヨーロッパを「原油の罠」で縛る一方、ガッチリ中露同盟を作るのが、プーチンの戦略でしたっけね。

製造業は軍事産業だけ、頼みは原油というていたらくですから、IT化は遅れきっています。
下図は、その国のインターネット人口の実質数を、地理的な大きさに置き換えたものです。
全人口における比率を色で表した構成になっています。
ロシアは薄いピンクで中国の上に、これまたイワシ雲しています。
日本は例によってバカデカイ。

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国の大きさをネット接続人口の多さに置き換えた世界地図 : カラパイア (karapaia.com)

このように原油と鉱物資源の二枚だけのカードが、プーチンの戦略を決定しています。
開発途上国型経済構造と言ってかまわないでしょう。
しかも地べたを掘れば湧いて出るというグータラな構造をいったんを作ると、ロシア人が突如製造業に目覚めてモノ作りに励むことは考えにくいのです。

したがって、プーチンを支えるのは、石油新興財閥(オルガルヒ)と、出身母体KGBの後裔であるFSBなどのシロベッキといった連中でした。
つまり原油と鉱物資源を売って、そのカネを人口に見合わない強大な軍隊でハリネズミにする、これがプーチン・ロシアのビジネスモデルです。

軍事費と身の丈、つまり経済が釣り合っていないのです。
軍事費は堂々世界3位です。
世界中の軍事費(2020年ドルベース換算)で赤い国はGDP比率4%以上の国です。
米国は世界1位ですが、3%ていどで、日本は世界でも少ない1%で緑です。

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防衛費・軍事費の傾向ーその2 - 海洋立国論 (hatenablog.com)

巨大な軍隊と貧弱な国力。まるでかつての日米戦に突入する直前のわが国のようです。

 

しかし忘れてはならないのが、ロシアの自尊心の源が、核兵器の量と領土の広さです。
これだけは堂々世界一だと豪語しています。
核兵器だけに関してはそのとおりです。
ただし、現実には使えない兵器だったはずが、負けがこんで窮したプーチンは、核兵器を使って「手を出したら核ミサイルをブチ込むからな」と正気の沙汰とも思えないことを言い出しました。正気ですか。

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世界の核兵器保有数(2019年1月時点) | 国際平和拠点ひろしま〜核兵器のない世界平和に向けて〜 (hiroshimaforpeace.com)

次に領土の広さですが、これが大きな錯覚なのは「メルカトル魔法」による視覚的効果があるからです。
たしかにメルカトル図法で見ると馬鹿げて広い。

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ロシアと周辺国の地図 - 旅行のとも、ZenTech (travel-zentech.jp)

ところが、これは「メルカトルの魔法」を使って膨張した地図なんですね。
実際の面積ではなく、極点に行けば行くほど大きくなるメルカトル独特のトリックなのです。

メルカトル図法で見ると、極点に近いグリーンランドなどまるで大陸ほどに膨れ上がり、ロシアはユーラシア大陸の7、8割も占める用に見えています。

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にゃんこそば🌤️データ可視化さんはTwitterを使っています: 

メルカトル図法ではなく、実測面積で地図上に描くと下図のようになります。
メルカトルでは中国(青色)を圧する巨大な国のはずが、いきなりシュリンクしてしまいました。(笑)
上のメルカトルと比較すると、ウソだろーというほどの縮小ぶりです。
気の毒、プーチン、自尊心ズタズタ。

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にゃんこそば

「メルカトル図法で描かれた地図は本来球形である地球を平面に投影するため、高緯度に向かうにつれ距離や面積が拡大されてしまう。よって大国イメージのあるロシアやカナダなど高緯度の国々も、実際は我々が抱くイメージほどには大きくないのだ」
(にゃんこそば)

ではどうてこんなおかしな膨張をしてしまったのでしょうか。
メルカトル図法の地図中に半径250kmの赤い円を置いてみると。緯度が下がるに連れて急激に縮小するのがわかるでしょう。
米国はあまり変わらず、カナダは小さくなります。

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にゃんこそば

「赤道直下の円を北緯60度まで動かすと、見かけ上のサイズ(面積)が4倍になる。
北緯80度なら33.8倍、北極点ならなんと無限大に(実際には北緯85度までしか描けない仕様になっている)。メルカトルの魔力は強い」
(にゃんこそば前掲)

なーんだ、ロシア領土ってメルカトルで膨らんでいたわけですね。(またまた笑)。
このロシアは事物博大、どこまで行っても尽きることない母なるロシアなんて、ロシア人は自己陶酔していたわけですが、錯覚だったのです。

ちなみに我が日本列島も、実測面積にすると下図のようになります。
ロシアほど劇的ではありませんが、北海道がチンマリしました。

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にゃんこそば

よく歴史ドラマで、信長などが、わが国の小ささを見よ、と宣教師から送られた地球儀を指すシーンがありますが、なんの日本列島はヨーロッパ地図に乗せると、かなりの大国となります。
人口は1億2千万いますから、ヨーロッパにあったら、うちの国はそうとうにいいところに行ったんじゃないかなんて夢想してしまいます。

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にゃんこそば

プーチンよ、執務室からメクカトル地図をはがしてから、ウクライナ侵略をすべきでしたね。

 

 

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ロシアの侵攻に備えて海岸沿いに砂の入った袋を積むオデッサ市民
「勝利信じて戦う」 迫るロシア軍、住民はバリケード―ウクライナ南部要衝オデッサ:時事ドットコム (jiji.com)

ウクライナに平和と独立を

 

 

 

2022年9月 6日 (火)

ザポロジエ原発、外部送電を再び喪失

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昨日の記事の続報です。
ザポロジエ原発がロシア軍によって送電線を破壊されて、外部電源を喪失しました。
「外部電源喪失」、この福島事故の記憶も生々しい言葉をまた聞くとは思いませんでした。
ザポロジエ原発は、8月25日から26日にかけても外部の送電網から切り離され、ディーゼル燃料で稼働する非常用の予備電源に切り替わって事なきをえていました。

ザポロジエ原発は3日夜の砲撃で、原発と外部をつなぐ4つの電力系統のうち、最後の1つが途切れたために、外部電源喪失状態に陥っています。
現在は、予備電源で冷却している状況です。
この予備電源もロシア軍のさらなる攻撃で失えば、原発はすべての交流電源を喪失し、炉心を冷却することができなくなり、炉心融解(メルトダウン)を起こします。

「IAEAは3日の声明で、ザポロジエ原発に「外部から本来の送電網を通じた電力が供給されなくなった」と明らかにした。ただ「予備の送電網で電力は供給され続けている」と強調した。6基ある原子炉のうち稼働しているのは1基だけだ。
国際原子力機関(IAEA)は3日、ロシア軍の占拠下にあるウクライナ南部ザポロジエ原発が、外部送電網との接続を再び喪失したとウクライナ側から通知されたと発表した。ただ、IAEAは、予備の送電線を通じて同原発で発電された電力が外部に供給されており、必要に応じてこの送電線で同原発への電力供給を維持できることを、同原発に滞在中のIAEA職員が確認したとした」

(産経9月4日)
原発、外部と再び切断 ウクライナ通知、予備送電線は維持(産経新聞) - Yahoo!ニュース

このことから、事務局長が急遽本部に帰国したのは、この第2のチョルノービリ(チェルノブイリ)事故になりかねない事態にたいして協議するためであったと憶測されます。
同様に5名のIAEAスタッフを残留させたのも、査察の継続もさることながら、この綱渡り的な状況を保全するためだと思われます。

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日経 ザポロジエ原発を訪れたIAEAの専門家チームら(2日)=IAEA提供・ロイター

「5号機は1日にも停止し、2日に再開したばかりだった。IAEAやウクライナ国営原子力会社エネルゴアトムによると、3日夜の砲撃で、原発と外部をつなぐ4つの電力系統のうち、最後の1つが途切れた。ほか3系統はこれまでの戦闘で既に失われている。
付近の火力発電所とつながる予備の電力系統を通じ、6号機から国内の送電網への電力供給は保たれている。必要が生じた場合はこの予備系統を通じて原発自体の運転に必要な電源も供給できるという」
(日経9月4日)
ウクライナ・ザポロジエ原発、攻撃受け再び運転停止: 日本経済新聞 (nikkei.com) 

敷地内には原子炉のほかにも、使用済みの核燃料を貯蔵する施設や、放射性廃棄物を取り扱う施設などもあります。
下図はザポロジエ原発を南北に見た配置図です。

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焦点:ウクライナ侵攻 ザポロジエ原発、2人常駐 IAEA、週内に報告書 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

エネルゴアトムの下図の配置図によれば、赤い線で囲ってあるのが原子炉が納められている建屋です。
上図の縦に伸びている黒点がそれにあたります。
下図は使用済み燃料プールの位置を示しています。(緑線の囲い)

 

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エネルゴアトムによる配置図  NHK

6基がおよそ100メートル間隔でほぼ南北に一列に並んでいます。

ザポロジエ原発に砲撃か ロシアとウクライナが非難合戦:時事ドットコム (jiji.com)

8月以降の砲撃で、管理棟南側と1号炉東側、6号炉東側に、3発の砲弾ないしはミサイルが着弾しています。(上図赤い星状の点)
8月下旬の時点では、2基が運転中でしたが、9月1日にうち1基が外部電源喪失で緊急停止しました。
いわゆるブラックアウトで、これは外部電源喪失のことです。
まちがってほしくないのは、ただの「ブラックアウト」と「ステーション・ブラックアウト」は別の概念だということです。
ここを脱原発派の人たちは、きちんと整理しないで論じるから、わけのわからなくなります。

外部電源が喪失して非常用電源に切り替わって、自動緊急停止(スクラム) することはまったく正常な工程です。
「異常事態」と呼べるのは、外部電源がブラックアウトして、かつ非常用電源が起動しない全交流電源喪失状態(SBO)の時だけです。

「ブラックアウト」は、人間の失神のような時にも使いますが、電力の場合、「停電。特に、発送電システム(発電送電変電配電を併せた電力の供給システム)の全系崩壊」(ウィキ)状態を指す用語です。
原子力発電の場合は、今回のザポロジエ原発のような外部電源喪失を指します。

一方、似た表現なのでゴッチャにしている人が往々にいますが、まったく次元が異なるのが「ステーション・ブラックアウト」(station blackout・SBO)です。 
こちらは火力や水力では用いられず、唯一原子力にだけに用いられる用語で、「原子力施設における全電源喪失状態」(ウィキ)のことです。
多重防護されているはずの外部電源はもちろん、非常用ディーゼル発電機に至る全交流電源すべてがオシャカになった状態です。
福島第1事故がこのケースでした。
SBO - Wikipedia - ウィキペディア   

今回のザポロジエ原発は4系統の送電線がすべて一時的に使えなくなりましたが、非常用電源にに切り替わって冷却を続けています。
もちろん望ましい状態にはほど遠いですが、だからといってすぐに大事故にはなりませんからご安心を。
ただし、今後ロシア軍が意図的にひとつ残っている送電線を砲撃したり、非常用電源装置を破壊したりすれば、ステーションブラックアウトになりえます。

敷地内の北東、北端の6号炉から約200mに、使用済み核燃料プールがあります。
使用済み核燃料は、「キャスク」と呼ばれるコンクリート製の容器に入れられ、屋外で保管されています。
下写真は、東電福島第2の3号炉の使用済み燃料プールですが、j 同じようなものがザポロジエ原発にもあると考えてよいでしょう。
使用済みといっても、ここも炉心と一緒で恒常的に冷却する必要があります。

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福島第二原発3号機使用済み燃料プール冷却水停止から見える変わらない東電体質、社会との対話が必要不可欠(吉川彰浩)

日本原子力産業協会によれば、ザポロジエ原発には8月時点で174基のキャスクにおよそ4000体の使用済み核燃料が保管されているということです。
原子炉建屋の東側100メートルには、放射性廃棄物を取り扱う施設が2棟あります。(青線の囲い)
IAEAによれば、8月下旬の砲撃によって、この放射性物質処理施設が被害を受けた模様です。
被害状況は下の衛星写真でも確認されています。

それにしてもロシア軍はどういう神経をしているのか・・・。
使用済み燃料プールは、原子炉建屋とことなり、はるかに脆弱ですから、ここを破壊したら大量の放射性物質が空中に拡散されてしまいます。(ちなみにわが国のそれは建屋内部にありますが)
まともな国なら絶対にしない所業です。

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ロシア軍がザポロジエ原発に攻撃、火災発生-ウクライナ外相 - Bloomberg

やや分かりにくいですが、赤いドームの原子炉建屋の右側にある処理施設の屋根に破孔が見えます。(引用者拡大)
ウクライナ軍は、このサポロジエ原発の奪還を何度か試みているようで、ロシア国防省は9月3日、250人規模のウクライナ軍部隊が奪取を試み、2日夜にモーターボートなどで同原発周辺などに上陸を図ったが、撃退したと主張しています。
真偽は不明ですが、原子炉を楯にされているためにHIMARSなどの面制圧兵器を使用できないために苦慮しているようです。

 

 

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ウクライナに平和と独立を

 

 

 

 

2022年9月 5日 (月)

ザポリージャ原発のIAEA査察とロシアの思惑とは

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ロシア軍が占拠しているウクライナ南東部のザポリージャ原発の初視察を終えたIAEA(国際原子力機関)のラファエル・グロッシ事務局長がいったん本部のあるウィーンに戻りました。
グロッシ事務局長によるトップ査察ですから、いかにIAEAがこのザポリージャ原発のロシア軍占拠を重く見ているのかわかるでしょう。
そりゃそうです。原子力発電所が、外国軍隊に占領され要塞化されたうえに、電気を強奪されるなんて事態は、世界の原子力発電史上空前のことだったからです。

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NHK

「国際原子力機関(IAEA)の調査団が1日、ウクライナ南部でロシア軍が掌握するザポリッジャ原子力発電所に到着し、施設内を初めて視察した。調査団のうち数名は現地にとどまるという。
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は、「原発とその物理的な完全性」が「何度も損なわれた」と指摘した。
視察を終えてウクライナの支配地域へと戻ったグロッシ氏は、「我々はどこにも行かない。IAEAはいま原発にとどまっており、そこから動くことはない」と述べた。ただ、何人の調査員がどれくらいの期間、原発にとどまるのかについては明らかにしなかった。
ロシアのインタファクス通信は、8人から12人程度の調査員が原発に滞在すると伝えた。一方、ウクライナ原子力発電公社エネルゴアトムは調査員5人がとどまるとしている」
(BBC 2022年9月2日)
IAEA、ウクライナのザポリッジャ原発を視察 調査団数名が滞在へ - BBCニュース

ちなみに、ロシアがグロッシ事務局長に送った案内人が評判を呼んでいるようです。
下写真左側のスキンヘッドにサングラス、見るからにいかがわしそうな男は、原子力などなにも知らない人物でした。
おいおい、原子力の知識がなにもない男を送るなよ、ロシア。

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「IAEAの茶番ミッションのお相手はクルチャア「ロスアトム顧問」。 検索すればすぐ分かるが、彼は原子力の専門家でもなんでもない。 2年前はアブハジア要人の毒殺未遂に(FSBの依頼で)コメントする「政治学者」であったり、その前は16歳の少年を轢き殺しても裁かれなかったムルマンスクの役人」
(保坂三四郎ツイート)
Sanshiro HosakaさんはTwitterを使っています

「ザポリージャ原子力発電所でラファエル・グロッシに同行しているロシアの「専門家」は誰なのか疑問に思うなら。これは、ロサトムのトップの顧問であり、工学の教育を受けていない「社会学者」であり、曖昧な背景を持つレナト・カルチャアです。彼らがどのような「証拠」を提示したのか、私には想像することしかできない」
Maria Avdeeva(@maria_avdv)さん / Twitter

彼はFSB御用達「政治学者」のレナト・クルチアのようで、プーチンの口先三寸でIAEAを丸め込みたいという気持ちが透けて見える人選です。

ところで、活動家今回のウクライナ戦争で無力さをさらけ出してしまったために、私は国連機関への強い懐疑論に傾いていました。
おそらく国連には中露が関わる限り、戦争を止める力はないし、かといって硬直して肥大化するだけの国連を改革する自浄能力もない。
しかしその機関のトップに誰が座るかによって、事態をいっそう悪くすることを遅らせるていどのことはできる、今回そう思うことにしました。
保坂三四郎氏は「茶番」と決めつけますが、今回のIAEAによるザポリージャ査察自体が丸腰で戦場に乗り込むに等しい勇気ある行為であり、残った5人の職員は残留決死隊のような役割だと私は見ています。

IAEAが5人のスタッフを残留させた理由は、外国軍隊が軍事占領している状況ではウクライナ気象当局の放射線監視部門の幹部が言うように「短期間の訪問では問題の解決はできない」ためであり、いま、原発で何が起きているのかを調査し、安全を確保するためにも、一過性の視察ではなく、長期にわたり現場で活動を継続する必要があったからです。
さもないとロシア軍は全体主義国の習性で、「見せたいものだけ見せる」「見せたくないものは隠蔽する」「邪魔者がいなくなるや元に戻る」という対応を平気でとるからです。

その悪しき典型がWHOの重慶調査団でした。
このWHO「調査団」には人選からして、重慶ウィルスラボとの利益共有者までもが紛れ込んでいるうえに、自由に査察する権限を奪われていました。
こちらに習近平同志の偉業に感謝する展示がございま~す、こちらがウィルスが中国に侵入した冷凍倉庫でございま~す、と中国当局の案内するがまま連れ回されただけのことです。

一方、グロッシ事務局長は、WHOのようにアリバイ工作に利用される気はさらさらないようです。
それはWHOと違って、IAEAはNPT(核拡散防止条約条約)によって保障された強い査察権限を持つからです。
今回はいくつか査察拒否に遭遇したとされていますが、本来は当該国には査察を拒否する権限は一切なく、要求されたものを包み隠さず開示せねばなりません。
通常のIAEA査察は、「保障措置」と呼ばれてきわめて強い強制力を持っています。
原子力規制委員会はIAEAの査察について、こう述べています。

「査察とは
国及びIAEAの査察官は、実際に原子力施設に立ち入り、以下の査察活動を実施しています。
・施設に保管されている記録と、国に報告された計量管理報告の内容に矛盾がないかを確認します。
・記録どおりに核物質が存在することを、刻印番号、核物質からの放射線の測定、採取した試料の化学分析により確認します。
・封じ込め/監視の結果の確認と必要な装置の保守をします。
査察とは|原子力規制委員会 (nra.go.jp)

IAEAの査察を受け入れることは、原子力施設をもつ国の義務であり、要求されるいかなる場所、文書、帳簿などは無条件で開示せねばなりません。
日本もたびたび査察を受け入れており、直近では福島第1の処理水(汚染水と呼ばないこと)についても厳重な査察がなされ、問題がないことが明らかにされています。
だから中韓や日本のメディアがいかに騒ごうと、処理水の放出措置が揺らがない権威があるのです。

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IAEAによる東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の安全性に関するレビューが行われました。 (METI/経済産業省)

また、本来はこの間の事情をもっともよく知っているウクライナ人作業員は家族への報復を恐れてIAEAの聴取に口を開かないだろうと、ハイノネン元IAEA事務次長は述べています。


さてロシア軍は現在、サポリージャ原発を楯にした軍事要塞化を目指しているようで、すでに500人以上の兵員と軍用車両を駐屯させています。
もちろん国際法上あってはならないことです。

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「エネルゴアトム(ウクライナ原子力公社)のコティン総裁は、NHKの取材に対し、ロシア軍が原発の敷地にミサイル発射装置などを持ち込み、原発を盾にして、ウクライナの町を攻撃していると訴えました。
これに先だってエネルゴアトムは、原発の敷地内には500人以上のロシア軍兵士や軍用車両が配置されているとも指摘。
ロイター通信が配信した、ザポリージャ原発の建物で撮影されたとする映像でも、ロシアの軍事侵攻のシンボルとなっている「Z」の文字が書かれた、ロシア側のものとみられる車両が確認できます。
また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、
「ロシア軍は『核の盾』として原発を利用している。原子力事故に対する欧米の恐怖心をあおり、ウクライナへの軍事支援を行う意欲を低下させようとしている」
とも指摘しています。
原発を盾として利用することで、ロシア軍は軍事侵攻を優位に進めようとしているのではないかと批判されています」
(NHK9月2日)
ウクライナ ザポリージャ原発でなにが? | NHK

このロシア軍は、ザポリージャ原発の冷却水用の貯水池に地雷を設置し、原子炉建屋の陰にミサイルまで配備していると見られています。

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ザポリージャ原発の接収を示唆 ロシア副首相 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

「作業員や住民、ウクライナ当局者らによると、3月にザポリージャ原発を制圧した500人超のロシア兵は、このところ重火器を配備し、原子炉6基の冷却水を収めた貯水池沿いに対人地雷を敷設した。ウクライナ軍は約5キロメートル離れた対岸の町に陣取っているが、原子炉周辺での砲撃戦の危険性を踏まえると、原発への攻撃は一筋縄では行かなそうだ。
ザポリージャ原発は新たな兵器の導入によって、事実上ウクライナ軍の反撃から守られている。原発を徐々に軍の駐屯地化するという、原発業界が予想もしなかった事態が現実のものになっている。ロシア軍は原発周辺に日ごとに重火器を配備し支配を固めている」
(2022 年 7 月 6 日ウォールストリートジャーナル)
ウクライナ最大の原発、ロシアが軍事基地化 - WSJ

またもう1つ指摘されている原発占拠の理由は、ウクライナへの送電を遮断し、ロシア側にのみ流すことのようです。
サポリージャ原発は、ここだけでウクライナの総発電量の2割を賄っていますが、ウクライナへの送電を切断し、ロシアが不法占拠しているクリミア半島南部に供給する計画がある、とエネルゴアトムのコティン総裁は指摘しています。

「(ザポリージャ原発の職員の話として)ロシア国営の原子力企業ロスアトムの技術者が、電力を占領した地域に回すことについて議論していた」
(ウォール・ストリート・ジャーナル 8月14日)

いままで国際社会は、原発に対するテロ攻撃は想定してきましたが、このように長期間に渡って他国の原発を軍事占領し、あまつさえ自国占領地に送電するという電力強奪は想定外でした。
それを踏まえて、本来はこの原発の運営をロシアから取り上げて、IAEA自らが行うことも視野に入れて、5人残したと思われます。
公共政策調査会の板橋功研究センター長はこう言っています。

「原発を冷却する機能を維持し続けるために、当事国だけでなく、第三者の客観的な機関が入って運営していくことが必要になってきている。できれば調査だけでなく、IAEAの調査官などが常駐することが必要だ。
非常に危険な戦闘地域ではあるが、ウクライナとロシア双方で合意を得て、スタッフに危害を与えない担保を取った上でスタッフを常駐させ、常に客観的に状況を把握して、データを送信できるようにする必要があると思う」
(NHK 2022年9月2日)
ウクライナ ザポリージャ原発でなにが? | NHK

今回のサポリージャ原発の査察は、当初から砲撃によって妨げられました。
移動ルートに砲撃がなされ、調査団は予定より遅れて現地入りすることになりました。
その後も自由な査察は許されず、常に武装したロシア兵に連れられて査察をすることになったようです。
査察の間も戦闘が止むことはなかったようです。


「重機関銃や迫撃砲による攻撃が2、3回あったことは明らかだ。我々全員にとって本当に、非常に気がかりなことだったと思う」
(BBC前掲)

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爆笑ものの一幕としては、地面に突き刺さったままのミサイルを見てIAEA調査団が「これはロシアからの方向から撃ち込まれているね」と問い質すと、くだんのロシア側案内人答えていわく、「ウクライナ軍のミサイルは着弾寸前に180度向きをかえているのだ」そうです。(笑)
そんなもんあるわきゃないでしょう。

 

 

 

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「ウクライナ国民の98%は自国の勝利を信じ最大限結束」ウクライナ国営通信社 日本人編集者が語る(ニッポン放送) - Yahoo!ニュース

ウクライナに平和と独立を



2022年9月 4日 (日)

日曜写真館 灯がひとつずつ澄み旅の夏暁

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四方から青みし夏の夜明哉 正岡子規 

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まつさらの夏の朝にもう触れえず 平井照敏

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朝焼のうつくしさおわかれする 種田山頭火

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朝焼ほのか藪ひたす水のあふれ落つ 種田山頭火 

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目覚めたることの淋しき夏暁かな 山田みづえ

 

 

2022年9月 3日 (土)

どこの国の知事なのか、デニー知事

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デニー氏は沖縄県を独立国にしたいような発言をしました。
ならば、何より自分の沖縄県は自分で守るくらいできなくては、「独立国」の態をなしません。
去る8月4日、ペロシ米下院議長の台湾訪問への報復として、中国は台湾を取り囲む6海域で激しい軍事演習を実施し、さらにあうことか我が国EEZに5発の弾道ミサイルを打ち込むという軍事的脅迫までしています。

その着弾海域は、沖縄県西端の与那国島からわずか60キロほどの至近距離でした。

いいでしょうか、デニーさん、あなたが独立したいという「琉球国」のすぐそばに無警告で弾道ミサイルを打ち込まれたのです。
習近平が3期めも共産党のボスに君臨すれば、何らかの形で必ず台湾に手を出してくるでしょう。
大挙して海を渡ってくるもしれないし、弾道ミサイルを打ち込んでくるかもしれません。
その中で、いまもっとも可能性が高まっているのが、海上封鎖です。
その場合、中国軍の台湾東海岸の封鎖海域・空域に与那国島がかかってしまいます。

しかし、沖縄における有事対応措置はなきに等しく、ようやく自衛隊の警備部隊が小規模駐屯しているのみです。
住民約1600人を抱える与那国町長の糸数健一氏は、訪問したデニー知事にこう訴えました。

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玉城知事、現状を確認 与那国視察2日目 港や製氷施設など | (yaeyama-nippo.co.jp)


「国は国民保護法でさまざまな状況を想定していますが、住民に避難するよう指示できるのは、武力攻撃事態が認定されてからで、軍事侵攻が始まる段階です。それでは遅すぎます。小さく狭い島には地下壕もありません。何としてでも住民の島外避難が重要ですが、町だけの力ではできません」


そのとおりです。なぜ与那国町長が県知事であるデニー氏に訴えたのでしょうか。
それは国民保護法における武力攻撃事態において、自治体が主体となって避難計画を策定して避難させるような立て付けになっているからです。

「●国民保護法
(国と地方公共団体との役割分担)
第七条 武力攻撃事態等への対処の性格にかんがみ、国においては武力攻撃事態等への対処に関する主要な役割を担い、地方公共団体においては武力攻撃事態等における当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とするものとする」
武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 | e-Gov法令検索

実際にデニー知事が避難計画の無視をきめこんだため、業をにやした糸数町長が直接国に問い合わせたところ返ってきた答えがなんと「県を通してくれ」とのことでした。ダーっです。
離島避難計画は、地方自治体の無為と腰が引けた国の対応の狭間に落ちてしまっているのです。

国も避難においては自衛隊や警察を出動させて島民の安全を守るでしょうが、それは避難計画があってのこと。
計画を武力事態になる、いま作っておかねばならないのです。

(安全の確保)
第十七条 政府は、地方公共団体及び指定公共機関が実施する対処措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。

あくまでも主体は自治体なのです。
だから糸数町長は、19日、与那国島を訪れたデニー知事に「台湾有事は日本有事、沖縄有事だ。住民を危機回避で島外に避難させる手立てをしてほしい」と迫りました。
それに対してデニー氏の具体的返答はこう答えたそうです。

「この件については世界中のウチナンチュー(沖縄人)に呼びかけて、どの国とも仲よくするのが大事だ。沖縄県は福建省と姉妹都市だ」

トンチンカンというより、真面目に答える気がありませんね。
「どの国とも仲良く」とは、米国以外の国、はっきり言ってあげれば「姉妹都市福建省」があり、そこの省長だった習近平の国のことです。
つまりは、避難計画なんぞ作って、習近平様を刺激したくないというだけのことじゃありませんか。

自分のところの県民は危険のまま放置して、週習近平大人にはへりくだるというわけです。
県民は二の次三の次、大事なのは習近平閣下なのです。

また、デニー氏は石垣島でこうも言っています。

「石垣市でデニー知事は、自衛隊のミサイル基地建設に反対する団体や環境保護団体などの市民と懇談。街頭演説では、台湾で中国軍の演習が活発になっていることに触れ、「平和あってこその経済だ。平和を維持するためにはミサイル配備などという抑止力だけのやり方ではだめだ。外交努力が必要だ」と訴えました。
また石垣市の自衛隊配備について、「住民投票で意見を集約することすら認めていない。配備ありきで強引なやり方を進めては絶対にいけない」と訴えました」
(しんぶん赤旗2022年8月20日)
外交努力こそ必要/沖縄知事選 デニー氏が訴え/与那国・石垣 (jcp.or.jp)

「平和あっての経済」という意味は、通常考えられるように、安全保障をしっかりして経済を守るという意味ではありません。真逆です。
中国の一帯一路に参加して、「平和あってこその経済」を得たい、そのためには自衛隊の配備に反対する、米軍は追い出す、という逆の意味です。
デニー知事は、一帯一路への参加への意欲を、かつてこんなふうに言っていました。

「玉城氏は16日から19日までの日程で、日本国際貿易促進協会に同行して訪中。中国の胡春華副首相との会談で玉城氏は「一帯一路」について「日本の出入口としての沖縄の活用」を提案した。胡氏からは「沖縄を活用することに賛同する」と発言があったという。
 玉城氏は沖縄と中国の観光交流の促進、IT企業間の連携強化なども求めた。商務部の担当者との会談では、農作物の輸出拡大を要請し、中国側からは歓迎するとの返答があったという。
 玉城氏は胡氏に対し、G20で訪日する習国家主席の沖縄訪問も要請した。習氏は過去に福建省の省長を務めており、沖縄と中国福建省の友好関係を考慮したという」
(八重山日報 2019年4月27日)
「一帯一路へ関与模索」 習氏の沖縄訪問に期待 玉城知事 | (yaeyama-nippo.co.jp)

あいにく、その一帯一路は崩壊寸前です。
たとえば、返すあてがないカネを一帯一路から借りていたスリランカは、「債務の罠」にはまって港や空港をとりあげられ国家破綻をきたし、親中派の大統領は国民に追い詰められて国外逃亡しました。

今、やっとIMFの緊急融資についての暫定合意ができあがり、48か月にわたってIMFの監視の下で財政再建を進めることになります。
「債権者との債務の減額」と引き換えに、厳しい財政健全化が求められることになります。
スリランカに似た「債務の罠」にかかった国にはパキスタンなどもあり、スリランカをモデルにした救済がが始まるかもしれません。
いずれにしても、これで一帯一路はもうオシマイです。

こんな「債務の罠」に、こともあろうにこちらから飛び込んでいく愚か者がデニー知事だったわけです。
我が国の自治体でよかったですね、これが「デニー首席」率いる「琉球共和国」だったら、今頃はどうなっていたことか。 
「日米からとりかえした」那覇軍港や嘉手納、下地は、いまごろ百年租借地になっていたかもしれません。

デニー氏は、一帯一路に入って中国経済と一体化して、さらに中国マネーを沖縄に入れたいから、自衛隊の八重山配備は目の上のたんこぶだ、中国様が嫌がるのだから与那国の避難計画、知るかそんなこと、与那国島民は中国に守ってもらえ、ということだったわけです。
だから、避難計画ひとつ作らずに、唯一の守りの警備隊まで追い払い、駐在のお巡りさんのピストル一丁で島を守れということです。
どっちを向いて仕事をしているのか、この男は。どこの国の知事なんでしょうか。

外交努力で侵略を防げ、9条で守れ、という言いぐさをデニー知事やが共産党はよくしますが、ウクライナ戦争の後もまだ言いますか。
なんの外交的紛争がない燐国に対して、ロシアは侵略したいから侵略しただけのことです。
ロシアや中国のようなならず者国家は、平気でそんなことをするのです。

ウクライナには外交的交渉をする余地などまったくありませんでした。
ウクライナは9条の精神よろく、どこの国とも同盟を組まずにいたからこそ好餌にされてしまったのです。
デニー氏は「日米を沖縄から取り戻す」と言っていますが、それは日米同盟を潰すという意味ですね。
ウクライナがNATOに入っていれば、戦争は起きなかったのです。

いったい「世界のウチナンチュー」に、なにをしてくれというのでしょうか。
散り散りになって逃げた八重山島民を引き受けてくれとでも。
話になりません。

糸数町長は、デニー知事があまりに無責任を決め込むために独自案をかんがえました。
まず、島民を隣の大型滑走路を持つ宮古の下地島に移す、しかし与那国のちいさな空港で小型機定期便で運べる人数が一回50人にすぎません。
これをなんとか30回反復し、漁船なども使ったとしても何日かかるのか。
その間、島付近で海上封鎖がなされた場合、海域・空域が封鎖されてしまったら、もうどこにも逃げ場がありません。

弾道ミサイルや爆弾も降ってくるでしょう。
ひっとしたら中国兵が上陸するかもしれません。
9条を書いた御札を入れたお守りを、島民に配るのでしょうか。
避難シェルターも必要ですが、どこにそんなカネが与那国町にあるのか。
町長はため息をつきながらこう言っています。


「有事の際の島民退避に目途がつかない以上、町長としては、危険が迫ったら早めに家族や親戚のいる所に一時的に身を寄せて下さいと言うしかない。飛行機代や当座の出費として、1人100万円支給すれば何とかなる。1600人で16億円。そのための基金の準備を考えています」

ここまで与那国町長を追い込んでおいて、なにが「米国と日本から沖縄を奪い返す」ですか。
この知事選は、今後6年、すなわちもっとも台湾有事が考えられる時期の首長選びです。

間違っても、こんな人が台湾有事の時に県知事にいてほしくはありません。

 


 

2022年9月 2日 (金)

デニー知事は「日米から沖縄をとりかえしたい」そうです

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デニー知事が選挙演説で、「この選挙で日本政府からアメリカから、沖縄を取り戻す!」と言ったというのでSNSで騒がれています。
新聞の切り抜き写真はあるのですが、肝心な元の記事のほうが見つかりません。
琉球放送の映像がでているので、ほんとうに言ったのだと思います。あれあれ。

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まぁ、いかにもデニー知事が言いそうなことではあります。
彼は前回選挙の時も同じコトを言っていますから、「沖縄を米国と日本から取り戻す」という琉球独立論まがいの考えが、この人の持論なのでしょう。

「普天間基地は閉鎖・返還です。戦争で奪われた土地は、沖縄県民に返すべきです。私たちはこの県知事選で改めて誓いましょう。この選挙で玉城デニーとともに日本政府から、アメリカから、沖縄を取り戻す。ウチナーンチュの手に取り戻す。青空を子どもたちのために取り戻す。そのことをしっかり誓いましょう
(しんぶん赤旗2018年9月23日)
辺野古新基地 絶対阻む/デニー候補の訴え(要旨) (jcp.or.jp)

馬鹿ですか。この台湾情勢が緊迫度を増している時に、日米両政府が台湾有事をにらんだ普天間を閉鎖することがあると本気で思っていたらアホウです。
新たに作っている返野古は、ハンパな軍事機能しかありませんから、どうぞくだらないサボタージュに勤しんで下さい。
やるにしてもすべて翁長時代にやり尽くしていますし、最高裁判決でまで出ているのですから、無駄に公費を濫費するだけなのですが、とりあえず勝手におやり下さい。
沖縄県の遅滞工作によって、海兵隊はズっと普天間に居られるのですから文句は出ないでしょう。、
いずれにしても、県の移設反対闘争とは、県も戦っているフリができ、国も米軍も喜んで、これぞ三方両領得というヤツなのです。
もちろん当のデニー知事はそれをわかっていて、「オール沖縄」というタニマチのためだけにやっています。
つまりは、移設反対運動など、山路氏のいう筋書きが決まった「田舎プロレス」なのです。

デニー氏は沖縄を日本と米国から奪い返すというのですから、これは県知事ではなく独立党党首選の選挙演説にすべきでした。
そもそも行政の首長には、日本から「独立」するもなにも、そんな権限はまったくないし、言われた「日本政府」(独立派の皆さんはこういう言い方をよくしますが、外国人みたいですね)のほうも困るでしょう。
権限がない一介の知事から、オレはお前からでていく、なんていわれてもね。
苦笑いをして、ご冗談もホドホドに、というしかありません。

本気で「日米から沖縄をとりかえ」したい人が、「沖縄の魂」の首里城が全焼した時に、真っ先に首相官邸に駆け込むんじゃありませんよ、
恥ずかしい。

「沖縄県の玉城デニー知事は1日、菅義偉官房長官を首相官邸に訪ね、火災で焼失した首里城(那覇市)の再建へ国の支援を要請した。菅氏は「沖縄県民に心からお見舞いを申し上げる。財政的措置を含めてやれることは全てやる」と応じた。首里城は国営公園内にあり、政府は2019年度補正予算への関係費用計上も視野に、再建を後押しする方針だ」
(nippon com 2019年11月1日)

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政府、首里城再建へ補正計上も=沖縄知事、菅官房長官らに要請

※関連記事『デニー氏の仕事は「心の喪失感」を訴えることではない』

またコロナ拡大が手におえなくなって、全国ワーストになるや、自衛隊医官の覇権を要請してしまいました。

デニー知事が宮古島で発生したクラスターに自衛隊の看護師を要請し、自衛隊は災害派遣として既に活動を開始しています。

「新型コロナウイルスの感染拡大で医療体制がひっ迫している沖縄県宮古島市で、医療支援のため現地入りした自衛隊の看護官らが31日からの活動に向け事前の訓練を行いました。
人口およそ5万5000人の沖縄県宮古島市では、29日までの4日間で110人を超える新型コロナウイルスの感染者が新たに確認され、医療体制がひっ迫しています。
沖縄県からの災害派遣要請を受けて現地に入った陸上自衛隊の看護官らは30日、宮古島に駐屯する部隊と合わせて40人の災害派遣隊に編成されました
(NHK2021年1月20日)

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沖縄 宮古島市 感染拡大で医療体制ひっ迫 支援の自衛隊が訓練 | 新型

独立は自立の極北のことです。
なにからなにまで本土政府に尻ぬぐいしてもらっている者が、言うことではありません。

 

※すいません。改題し、後段は切り離して明日に回しました。



 

2022年9月 1日 (木)

ヘルソン奪還作戦始まる、ゲームチェンジャーの登場

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長い膠着状態を打ち破って、ウクライナ南部戦線で大きな動きが出たようです。
ロシアによって戦争初期に占領された、南部の枢要な都市ヘルソンの奪還作戦が始まったことは確かなようです。

詳細は軍事機密としてウクライナ軍も秘匿しているために不明ですが、ロシア軍の第1防衛ラインが突破され、ヘルソン近郊のいくつかの街を落とされたことは確実なようです。
このウクライナ軍の攻勢によって、自称「ドネツク人民共和国」軍は逃げ出し、この支援に当たっていたロシア空挺部隊も撤退をしたようです。
動画ではロシア兵が「多くの損失があり、ヘルソンを失うリスクがある」と言っているものまで発信されています。
ウクライナ軍は、ヘルソン地域におけるロシア人の防衛の最前線を突破|ウクライナ・プラウダ (pravda.com.ua)

ISW(米国戦争研究所)はこのように述べています。

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ウクライナがヘルソン奪還へ前線突破か「作戦終了まで市民は隠れて」 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

「ウクライナ軍当局者は8月29日、ヘルソン州でウクライナの反撃を開始すると発表した。ウクライナ当局者は、ウクライナ軍がヘルソン州の不特定地域での防衛の最前線を突破し、何週間にもわたるウクライナのHIMARS攻撃によって引き起こされたロシアの地上通信回線の混乱を利用しようとしていると報告した。
ウクライナ当局者はロシア占領地の解放を認めなかったが、ロシアのミルブロガーや西側の報道機関と話している匿名の情報源の一部は、ウクライナ軍がヘルソン市の西と北西、インフレーツ川に架かるウクライナの橋頭堡の近く、ヘルソンとドニエプロペトロフスク州の国境の南にあるいくつかの占領地を解放したと述べた」
(ISW 2022年8月29日)
戦争研究所 (understandingwar.org) 


ウクライナ軍参謀本部は、いままでロシアの情報攪乱を警戒して、一貫して厳しい情報統制を敷き、自軍の作戦行動については沈黙を続けてきました。
今回のヘルソン奪還作戦の詳細についても、固く口を閉ざしており、国民に忍耐強さを求めている。
ただし、地域司令部はわずかに報告を公表しており、それによればこのような状況のようです。


「8月30日には、ウクライナ軍の「南部」司令部が「陣取り合戦」が続いていると報告。ドニプロ川にかかる3つの橋を破壊し、使えなくしたという。ウクライナ軍はこのところ、アメリカから供給された高機動ロケット砲システム「ハイマース」を使い、ロシア軍が架けた浮橋や司令塔、武器庫などを攻撃している。
こうした動きは、ドニプロ川西岸にいるロシア軍を孤立させ、部隊や武器の供給を断つのが目的だとみられている」
(BBC2022年8月31日)
ウクライナ軍のヘルソン奪還作戦で「激しい戦闘」 長引く可能性と専門家 - BBCニュース

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HIMARS - Wikipedia

ウクライナ軍は、米国らから供与されたHIMARS(ハイマースM142 高機動ロケット砲システム )による攻撃を仕掛けており、大きな爆発がノーバ・カホフカで上がっている動画が確認されています。

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HIMARS はまさにゲームチェンジャーの名にふさわしい兵器で、戦局を大きく転換するだけの力を持っています。
ウクライナ軍がこの数カ月、大きな作戦行動をとらなかった理由は、このHIMARSの前線への到着を待っていたためだと思われます。
米国はこれを20両提供し、クリミアやロシア領内を攻撃可能な長距離射程のATACMも提供したようです。

HIMARSは、射程70km超のGPS誘導ロケット弾GMLRSを6発、あるいは約300kmもの射程を有するATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)1発を発射できます。
当初は面制圧兵器で無誘導のロケット弾を雨あられと降り注ぐものでしたが、いまは一発一発にGPS精密誘導装置がつけられた精密爆撃兵器に進化しています。
そして装輪式なために、大きな機動力を持ち、発射した後、直ちに陣地変換が可能です。

ウクライナ軍はこれをドニエプル川にかかる橋梁攻撃に使用し、完全に破壊したと思われます。
これでクリミアとヘルソンにを占領するロシア軍は、補給路を遮断されました。

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ウクライナ軍のヘルソン奪還作戦で「激しい戦闘」 長引く可能性と専門家 - BBCニュース

「ウクライナ軍は13日、ロシア軍が占領する南部ヘルソン州で移動に欠かせない主要な橋をまたひとつ破壊したと発表した。ウクライナは、ロシアが侵略開始から間もなく占領したヘルソン州を奪還しようと、激しい戦闘を展開している。
ウクライナ軍によると、ノヴァ・カホフカのダムにかかる橋はもはや通行不能だという。この主張の客観的な検証はされていない。南部軍管区はフェイスブックに、「ノヴァ・カホフカのダムにかかる道路橋の破壊が確認され、使用できなくなった」と書いた。
ウクライナ軍は7月末にも、ヘルソン州を流れるドニプロ川の渡河に重要なアントニフスキー橋を通行不能にした。西側消息筋は、アメリカ製の高機動ロケット砲システム「ハイマース」によって、この橋は「使用不能になった」としている。
イギリス国防省は13日、連日定例の戦況分析で、ウクライナ軍による8月10日の精密攻撃で、重い軍用車両はノヴァ・カホフカの道路橋でドニプロ川を渡ることができなくなったと指摘した。ノヴァ・カホフカは、ヘルソン市から約55キロ北東にある」
(BBC2022年8月14日)
ウクライナ軍、ロシア占領の南部ヘルソンで主要な橋をまた破壊と 移動に不可欠 - BBCニュース

またヘルソン近辺の街の軍事目標にもHIMARSを投入しており、独有の連続した爆発が観測されています。 

HIMARS はまさにゲームチェンジャーの名にふさわしい兵器で、戦局を大きく転換するだけの力を持っています。
ウクライナ軍がこの数カ月、大きな作戦行動をとらなかった理由は、このHIMARSの前線への到着を待っていたためだと思われます。

とまれ、まだまだ長い時間かかるでしょうが、ウクライナ全土解放まで一歩進んだようです。


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戦うウクライナに平和と独立を


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