デニー知事の失敗・首里城炎上
デニー氏は勝利を確信しているようですが、最大の失政はつごうよく忘れたようです。
思い出してもらうため、2019年11月12日の記事を再録します。
この首里城炎上の原因には、今の沖縄県政の矛盾が凝縮されています。
これを問わない県知事選とは、いったいなんなんなのでしょうか。
~~~~~
沖縄県は、首里城炎上の責任は国にあると誘導したいようです。
沖縄県準広報紙の沖縄タイムス11月7日の記事からです。
「「大家さんは国だ」 首里城、スプリンクラーが未設置だったワケ
[失われた象徴 首里城炎上](6)夜の屋内火災
「国が整備した施設で、消火設備は、きちんとしているはずなのに」。10月31日、午前7時半すぎ、県幹部は、県庁で首里城の正殿が焼き尽くされていくテレビニュースの映像を横目に、うなだれた。別の県幹部は、「今回の火災は、想定外だった」と声を落とした。閉館後の正殿のように、人がいなくても火災を早期に感知し、自動的に消火するスプリンクラーは、設置されていなかった。
首里城を整備した所有者の国によると、「正殿復元はできるだけ昔使われた材料と伝統的な工法を用いて、往時の姿に戻していく」考えが基本にあった。法律を順守し、「厳正な復元を目指した」とスプリンクラーが設置されなかった経緯を説明。消火設備の妥当性については、「法律を順守した」との立場だ」(沖タイ11月7日)
すっと読むと「大家」の国が杜撰な防火設備しかない施設を残したから、県は「心の象徴」を燃やされてしまって大きな損害を被った、あげて責任は国にある、再建費用とは賠償金のことだ、とでも読めてしまいます。
この私の邪推が正しければ、今本土に来ている那覇市長や、火災があってあたふたと駆けつけたデニー知事などは、実は陳情ではなくて、「賠償要求」に来たんですかね。
いくらなんでも違うと思いますが、ここまで被害者意識丸出しで言い募られると、ひょっとして、と勘繰りたくなります。
沖タイさん、問題をすり替えないで下さい。
「大家は国」、では国が首里城の管理責任を持っているとでも?
ならばこの首里城火災原因がなんと推定されているのか、そこからいきましょう。
発火したのは正殿1階北東側からです。そこには分電盤がありました。
そして焼け跡には、分電盤から2本の延長コードが延びていて、溶けた痕が30数カ所残っていました。
※1本は床下配線、1本は延長コードでしたので、訂正します。
「電気系統設備が最も集中している正殿北東の部屋が出火場所とみており、その部屋の分電盤の床下配線と、分電盤側面のコンセントに取り付けられていた延長コードが見つかった。その両方に、溶融痕があったことを明らかにした」(琉新11月8日)
火の気がない夜間の火災の原因の多くは、電気配線からの発火です。
https://sonaeru.jp/hazard/fire/residential-fire/h-...
当時正殿は鍵がかかっており無人でした。
ストーブなどの火の気はありませんでしたから、原因はこの分電盤から延びた2本の1本の違法(※)コードとみるしかないのです。
しかも2本とも杜撰な素人細工で、市販品のコードを廊下に放置して見学者が多数通る床にのたくらせてありました。
※違法判定についてはひこーさんのご意見を頂戴して「違法とまではいえないが適切な使い方ではない」とします。
通常、こういう電源の延長工事をする時には、専門の電気工事士に依頼して、分電盤の漏電遮断器を経由して取るものなのです。
しかし電気について無知な財団職員がやったのでしょうか、漏電遮断器を通さずに電気をとってしまいました。
結果、電気コード自体の損傷か、あるいは電線に取り付けた器具の不具合によって発火したと考えられています。
では誰がこんなものを取り付けたたのでしょうか。いうまでもありませんが、管理財団です。
沖タイさんは「国が大家」と言っていますが、それはあくまでも国有財産だというだけのことで、管理は完全に県に委譲されていました。
あの違法延長コードも県に委譲されたとたんに取り付けられたのです。
それは琉球新報も認めています。
「一方、延長コードは今年2月から正殿内に取り付けられていたことも関係者への取材で分かった」(琉新11月8日)
裏返せば、国が管理してさえいれば、こんな違法工事はやらせなかったということです。
これは私もイベント関係者の間接的聞き取りで確かめています。
国有施設だった当時は、電気関係の管理にはことのほかうるさく、分電盤から電気をもらったりすることは御法度だったそうです。
それが県営に移管されたと同時に、すべてが「ゆるやかに」なったそうです。
沖タイは「国が大家」だから出火の原因も 国 にあるとでも強弁したいようですが、短絡するにもほどがあります。
出火の責任は県にあります。ここから逃げては話になりません。
今後再建についての具体的作業に入るでしょうが、再建される新首里城は国が管理しきるしかないでしょう。
とてもじゃないが、沖縄県にその能力はありません。
次に防火体制についてですが、こう沖タイ記事は書いています。
「実際の管理運営を担う沖縄美ら島財団は、「(既存の)設備を前提に、指定管理を受けているので、これを最大限に活用して対処する」との立場。県も財団も、スプリンクラーなど、屋内の出火に対応する自動消火設備の検討はしてこなかった。
文化庁は、今年4月、パリのノートルダム寺院火災の発生後、文化財の防火対策の徹底と点検を呼び掛けていた。通知の対象は国宝と重要文化財の建造物で、首里城は対象外だった。
木造建築物への防火意識が高まる中でも、国や県は、体制の見直しを行っていない。県幹部は「大家さんは国だ」と例え、「スプリンクラーなど、勝手には新しい設備は付けられない」と、所有者と管理者の関係性を説明する」
「勝手につけられない」という言い方で、スプリンクラーの設置を国が認めていなかったような言い分ですが、果たしてそうでしょうか。
文化庁は、ノートルダム火災を受けて今年4月に文化財の防火についての見直しを進めていました。
この対象から首里城がはずれたということで、県は免れたと勘違いしたようです。
問題は「国が大家」であるかないかではなく、「沖縄の象徴」とまで首里城を言うならば、防火体制に万全期するべきだったということです。
文化庁がいやスプリンクラーが室内の文化財を濡らすというなら、不燃ガスによる消火など別の手段で対案を出し、国と協議すればよかったのです。
それでもなお国が、これ以上の防災システムなんかいらない、つけるべきではないと頑迷なことを言うなら、その時こそ国としっかりと対決すればいいのではありませんか。
それを低い水準で妥協して、あれは「大家が国だから」と小声で愚痴をいう、それが「沖縄の象徴」を守る者の言葉だとすれば、恥ずかしい。
沖縄県は、首里城をただの観光スポットとしてしか考えていませんでした。
だから夜間はおろか、昼間にもまともな消防訓練をしていません。
国が管理していた2018年には消防訓練も行われています。
https://sonaeru.jp/hazard/fire/residential-fire/h-...
この2018年1月8日の消防訓練の設定はなかなか現実的で、早朝に正殿から出火したと想定しています。
この時に放水している放水銃の位置を確認してください。
現実の火災時には、すべての放水銃は稼働できず、左端の放水銃(下写真赤丸)もまた使用されていませんでした。
その原因も地元紙にかかると「国が撤去したからだ」ということになって国のせいだぁとなるわけですが、だとしても全部が使用不可能というのはいったいどうしてでしょうか。
現時点で分かっているのは、警備員が熱気と煙で接近出来なかったからだと言っていますが、そこまで火災が拡がったのは燃えてから警備員が駆けつけるまで相当時間が経過していて、正殿内部は手もつけられない状況になっていたからです。
そもそも一般的には、感知器が適正に作動して、それに連動して室内・屋外の消火装置が自動消火を開始するのが定石なのです。
それを建物に接近できないくらい燃え盛ってから、消防訓練もしていない素人の警備員が手持ち式の消火器を持って行ってもなんの役にも立たなくてあたりまえです。
文化財の自動放水銃など珍しくもない施設ですから、「大家の国」と話合ったらいかがだったのでしょうか。
さらによしんば警備員が近づいて放水銃にとりついたとしても、役目を果たせていたかどうかはなはだ疑問です。
というのは、ビジネスジャーナル(11月6日)によれば、当夜、イベント準備が前庭で行われていて、大規模なステージが建設されていたからです。
それが 下写真の正殿前舞台です。
ただし、今回のイベント用舞台は更に大規模だったようです。
「特に御庭にあったステージはかなり大きく、高さも正殿の半分くらいあった」
(ビジネスジャナル11月6日 )
焼け焦げた大規模な舞台と大型照明機材が多数設置してあるのが確認できます。
何度か書いていますが、これだけのイベント設置をしていれば大量の電気が必要なのはあたりまえですので、分電盤から電気を貰った可能性が高まります(※)。
※ひこーさんのご指摘どおり、正殿裏の分電盤からは遠く、他の棟からとったようですので、この可能性はありません。
正殿付近で実況見分が行われる首里城。奥に御庭とステージが見える(毎日新聞社/アフロ)Business Journal 11月6日
ビジネスジャーナルはこう報じています。
「大手キー局社会部記者は次のように話す。
「どれだけ影響があったのかわかりかねますが、西の『御庭』にあった2基、東側の1基の計3基の放水銃格納庫と正殿の間に、当日まで開催されていたイベントのステージや工作物が設置してありました。現場を取材した記者によると、放水銃の上にその瓦礫が崩れていたそうです。
那覇市消防局に放水銃と工作物の位置関係を尋ねたところ、次のように説明があった。
「確かに地面下の放水銃格納庫の扉は開くようにはなっていました。ただ、かなり工作物が(格納庫に)迫っている状態だったことは確認が取れています」。
会社の非常口を形だけ空けて資料を積む。防火水槽指示位置の枠に入っていないけれどギリギリまで寄せて車を駐車する。そして、イベント設営の際に放水銃や消火栓設備の規制ラインギリギリまで寄せて工作物を設置する。明確に違法行為ではないが、万が一の際にそうした行為が命取りになるのは、これまで多くの火災が実証してきた」( ビジネスジャーナル 11月6日)
たぶんそのとおりです。放水銃格納庫の扉の上にはイベント準備の機材は置いていなかったものの、仮に放水銃を警備員が使えたとしても、その前にそそり立つような巨大な舞台がそびえ立って妨害したことでしょう。
だとするならば、観光イベントのほうが防災より重要だったと県が考えていたことになります。
このようなていたらくで、「大家は国だ。われわれは国に言われたとおりにしていただけだ」と言い張れる人たちの厚顔無恥ぶりに呆れるばかりです。
« 失敗した危機管理、旧統一教会問題 | トップページ | 共に「非常時の君主」を生きたエリザベス2世陛下と昭和天皇 »
コメント
« 失敗した危機管理、旧統一教会問題 | トップページ | 共に「非常時の君主」を生きたエリザベス2世陛下と昭和天皇 »
この騒動ですっかり吹き飛んでしまいましたが万国津梁会議に関係する斡旋疑惑もどうなったんでしょうね?
知事が接待を受けたり、得体のしれないペーパーカンパニーに受注させたり事情説明させようとした関係者が雲隠れしたりと限りなく真っ黒なやつでしたが首里城焼失にかこつけてすっかり報道されなくなりましたね。
ハッキリ言って今の統一教会以上の問題だと思うのですが。
投稿: しゅりんちゅ | 2022年9月 9日 (金) 08時02分
大方は現職の続投で決まりみたいですね。左翼が強い沖縄とは言え、ここまで趨勢が明らかだと面白みがないですね
投稿: 中華三振 | 2022年9月 9日 (金) 12時25分
首里城でのイベントには沖タイが関与したんじゃなかったですかね。その辺に触れることはないでしょうが。いろいろと無能ぶりしかみせていない知事さんですが、また4年も続けるんでしょうかねぇ。選挙活動している方々は佐喜真陣営のほうが明らかに若いんで若者がどれだけ投票してくれるかにかかっていると思うんですが。
投稿: クラッシャー | 2022年9月 9日 (金) 17時04分
結局現実はかくも冷たかったですね。
このような失態を犯した知事が再選されるのですから。
選挙結果は尊重されなければなりませんが、シナチスと言う脅威が身近にある事を沖縄の有権者はどれだけ真剣に考えているんでしょう。
投稿: KOBA | 2022年9月11日 (日) 21時39分