ロシア人は逃げるのではなく、戦争を止める努力をしろ
ロシアは戦後初の「部分動員令」を出してしまい、これが巨大隕石クラスの衝撃をロシア国内に与えています。
「第二次世界大戦以来、ロシア初の軍事動員を命じるウラジーミル・プーチン大統領の動きは、ロシア全土で抗議行動を引き起こし、軍人年齢の男性の群れが逃げるのを見て、国境での航空券を売り切れさせた。
複数の報告書はまた、特別な軍事スキルや戦闘経験を持つ者だけが召集されるというセルゲイ・ショイグ国防相の保証に反して、兵役に就いていない人々が命令書を暴露しており、超忠実な親クレムリンの人物でさえ公に懸念を表明するよう促している。
ロシアのトップ2の国会議員、どちらもプーチンの親密な同盟者で、動員運動の展開方法に対する国民の怒りにはっきりと言及した」
(ロイター 9月25日)
Putin allies express concern over mobilisation 'excesses' (yahoo.com)
人権団体によると、今週これまでに数十の都市で動員に反対する集会で2千人以上が拘束されており、日曜日にはロシアの極東とシベリアでさらに多くの抗議行動が起きたとされています。
しかもデモの拘束者は警察署で徴兵令状を執行されて、即座に徴兵を言い渡された例もあるようです。
「同団体「OVDインフォ」の報道担当者によると、拘束者の1人は軍への編入を拒めば立件すると脅されたという。
ロシア政府は徴兵を拒否した場合、禁錮15年を科す方針を明らかにしている。首都モスクワの検察当局は21日の声明で、抗議活動への参加者は最長で禁錮15年の刑が言い渡される可能性があると警告していた」
(CNN9月23日)
動員令に抗議のデモ参加者、拘束後に直接徴兵か ロシア(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース
再び反戦デモ、700人超拘束 呼び掛けの団体捜索 ロシア(時事通信) - Yahoo!ニュース
独立系の通信は、ロシア各地の徴兵事務所が襲撃されたことを伝えています。
「軍の登録および入隊事務所とさまざまな行政機関の最初の放火が9月21-22日の夜に始まったことは注目に値する。
サンクトペテルブルクでは、見知らぬ人物が軍の登録・入隊事務所の窓から「モロトフカクテル」を投げつけ、消防士が到着する前に火が部屋全体を包み込んだ。彼らは、サマラ、オレンブルク、ニジニ・ノヴゴロド地方、トランス・バイカル地方の徴兵事務所に火を放った。
9月23日、少なくとも4件の軍登録・入隊事務所と管理棟の放火が判明した」
(ロシアタイムスハブ9月25日)
ロシア軍の登録・入隊事務所で多くの火災が発生(写真) - タイムズ・ハブ (thetimeshub.in) 。
この動員令は、ロシア連邦を構成する各共和国にも命じられています。
イスラム教圏のダゲスタン共和国では強烈な抗議運動が起きました。動画によれば、住民が動員を阻止するため道路を封鎖し、これを解散させるため警察が威嚇射撃を行っている光景が撮影されています。
住民は警官に「ウクライナがロシアを攻撃したのではなくロシアがウクライナを攻撃した」と問い詰める様子が見られています。
Дагестане протестующих против мобилизации разгоняют стрельбой - YouTube ダゲスタン共和国での徴兵抗議運動
ダゲスタンのメリコフ首長はつぎのような声明を出しています。
「ダゲスタンのセルゲイ・メリコフ首長は25日、共和国内での動員に「誤りがあった」とメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した」
(ロイター9月26日)
ロシア南部ダゲスタン共和国で動員反対デモ、100人拘束 | Reuters
ショイグ国防相の説明と異なり、軍務経験のない人や幼い子どものいる親が招集されたという報告が複数なされており、メリコフはこのことを「誤りだ」と言ったと思われます。
また同様の騒乱は、サハ共和国の首都ヤクーツク でも確認されており、拡大の様相を見せています。
ただしこの動員令は、高官の師弟には無効のようで、ペスコフ大統領報道官の息子は応じないそうです。
「独立系放送局「ドシチ」はこの日の生放送で、司会者が徴兵施設の担当者を装い、ペスコフ大統領報道官の息子ニコライ氏に電話。「翌朝10時に出頭するように」と迫ると、ニコライ氏は姓を名乗った上で「当然応じない」と拒否したという」
(時事9月21日)
こういった高官師弟がいる一方、徴兵逃れをしたとされる者に対しては厳罰化が待っています。
徴兵逃れで23歳の住民に対する刑事訴訟開始 サハリン捜査当局 - 北方領土の話題と最新事情 (hatenablog.com)
さらにプーチンは9月24日、降伏あるいは脱走を試みたり、戦闘を拒否した兵士に対し、最大10年の禁錮刑を科す新たな法案に署名しました。
徴兵に応じれば地獄のウクライナ戦線、降伏しようとしても牢獄、逃げてもやはり牢獄というわけです。
すでにこの徴兵拒否厳罰化法はこの春から施行されおり、逮捕者も相当数出ています。
「ロシア連邦捜査委員会のサハリン州ドリンスク地区当局は、法的根拠がないのに徴兵を逃れたとして23歳の地元住民に対する刑事訴訟を開始した。当局の調査によると、容疑者は兵役に適していると宣言され、ロシア連邦の軍隊に徴兵された。2021年9月に住民は市の軍事委員会に出頭するよう通知されたが、正当な理由なしに指定された時間に現れず、徴兵を回避した」
(citysakh.ru 2022年4月29日)
いままで徴兵範囲が都市部を除いた僻地にかけられていたのを、徴兵の全国化に伴って、一気に全国化しました。
同時にプーチンは、1年間兵役についた外国人にロシア市民権を与えることを定めた法案にも署名しました。
これで徴兵に応じれば、ロシア市民権を得るために通常義務付けられる5年間の居住実績が免除されることになります。
懲役者からも徴兵しているようで、大戦中の囚人大隊のようなものでも作る気でしょうか。
もはやなりふりかまわぬ全力動員です。
いかにロシアが深刻な兵力不足に直面しているのかを示しています。
さて、プーチンと現地軍司令部との間で大きな食い違いが見られるようになってきました。
プーチンが特にこだわっているのは、南部ヘルソンの死守です。
ヘルソンは、プーチンの栄光の源泉であるクリミア半島を制する要衝です。
ヘルソンを失うと、クリミアは一気に孤立化することになるために、プーチンは住民投票を急いで併合しようと企んでいます。
ウクライナ軍は8月下旬、ヘルソンに対してロシア軍に対して本格的な反攻を開始しました。
これは後の9月の東部反攻の陽動作戦でもあったと同時に、後の南部反攻への足掛かりでした。
攻防の焦点となったのがこのヘルソンで、ロシアは甚大な被害を出し、現地司令官はプーチンに対し、ロシア軍がドニプロ川を渡って秩序正しく撤退することを認めるよう要請しました。
要するに、撤退要請です。
秩序ある撤退によって、東部戦線で見せたような兵隊が散を乱して我がちに逃亡したり、装備を放棄するようなことにならないからです。
しかしプーチンから返ってきた答えはノー。ヘルソンを死守せよでした。
このことによるロシア現地軍の士気の低下は、すさまじいものだったそうです。
そりゃそうです。すでにヘルソンのロシア軍部隊は東部から南部に伸びる補給拠点をウクライナ軍に奪還されているのですから、武器・食料・補充兵員といった補給が受けられません。
その上プーチンは、反抗的なヘルソン市民に住民投票を強いて領土化を急げというのですから、たまったもんじゃありません。
このままいけば、ヘルソンの市民の抵抗が強まり、頭上からはたえまなくウクライナが砲撃をしかけてくる、そして援軍はゼロ、武器弾薬は払底しつつあるのですから、お察しします。もはや早めの投降しかありません。
実は今のロシアには、ヘルソン現地司令官が要請したような補充兵を送る人的余裕がないのです。ない袖は振れない。
あれば政治的にリスキーな大都市部での動員をする必要がなかったし、1年間兵役についた外国人にロシア市民権を与える必要もがなかったはずです。
また、この部分動員令は、ロシアにとどまってきた企業に最後の決断をさせてしまいました。
ウクライナ侵略に伴い、多くの企業が活動を停止しましたが、従業員に対する責任から全員解雇にはせずに判断を先延ばしにしていたところが多かったようです。
しかしこの動員命令で勝利の見通しがないこと、仮に勝利したとしても甚大な損害を食いロシア経済が立ちいかなくなる可能性が高まったことがハッキリしたために、この動員令を区切りとして企業解散に走るところが増えたようです。
そもそも、ロシアの製造業は軍事産業しかなく、西側の電子製品の輸入が途絶えたために作りたくても作れず、売り上げは6分の1にまで減少しています。
いままで、国民が不安をかかえながらなんとかプーチンの言うことを聞いてきたのは、これは「戦争」ではない「特別軍事作戦」だから短期に終わる、戦闘による損害も少ない、動員は契約軍人だけだ、それも大都市は少ない、残虐行為はしていない、経済は西側の制裁を跳ね返しているゾ、と言ってきたことを信じてきたからです。
これらの政府の言ってきたことがまるごとウソだと、プーチンが白状してしまったのですから、どうにもなりません。
小泉悠氏が、核兵器の使用と並んで、これはしないだろうといっていた動員令の破壊力はそれほど巨大だったのです。
なお、多くの徴兵年齢の青年が、外国へと逃亡しようとして周辺国と摩擦を起こしています。
「ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアはEUビザ所有のロシア人入国を禁止済みで、プーチン大統領の発表した動員令から陸路で逃げるためにはフィンランド、ジョージア、カザフスタンなど向かうしかないのだが、フィンランドはロシア人に発給する観光ビザを大幅に制限、カザフスタンも兵役を逃れるための亡命申請は認めない方針で、ジョージアでも「ロシア人へのビザ発給を規制すべきだ」という声がが上がっている」
Russian Vehicles Flock To Georgian Border Following Partial Military Mobilization - YouTube
リトアニアのシモニーテ首相は「侵攻は2月24日に始まったのでロシア人はこの戦争について十分考える時間があったはずだ。ソファに座りテレビを通じて戦争を見ているときは大丈夫だと考え、戦争が身近に迫ると国外に逃げ出そうとするロシア人を人道的な理由では受け入れてはいけない。他の国もロシア人を動員から助けるべきではない」と冷徹な発言をしています。
ランズベルギス外相も「我々は責任逃れが目的の亡命者を容認しない。ロシア人は祖国に留まってプーチンと戦うべきだ」と主張しました。
まことに正論です。
●デジタル献花をしてきました。
「ありがとう 安倍元総理 デジタル献花プロジェクト」
ソーシャルメディアに流れたウクライナ国旗を掲げる兵士らの画像 - CNN.co.jp
ウクライナに平和と独立を
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ネット生配信でペスコフの息子に電話は笑った!You Tubeに転載されたのを観たけど真偽は分からんです(ヤラセの可能性もありますから)、日テレが流してましたね。
ウクライナの占領地でも動員始めたそうですけど、完全に国際法違反。
あくまでもロシアの領土だ!としたいがために住民投票と国土化を急いでるんだろうけど、そんなこと通用しないだろうに。
いきなり徴兵したところで、ロクに訓練もせずに前線に出すんですかね。死体の山ができるだけだろうに。
ウクライナ国内での徴兵動員は肉の壁が目的ですね。
ゼレンスキーの「逃げるか投降すれば命は助かる」という呼び掛けは見事です。
ヘルソンは死守せよ!死守せよ!
って、プーチンの戦争指導がますますヒトラーじみてきたなあ、と。
刑務所からの徴兵は政府ではなくロシア政府自体は存在を認めていないワグネルが主導。こっちは本当にスターリンが憑依したんじゃないかと。
投稿: 山形 | 2022年9月27日 (火) 06時45分
今日所用で午後1時頃JRの四ツ谷駅で降りたのですが、安倍さんへの献花の列がそこまで伸びていて、驚きました。
4時近くなっても最後尾はその辺りだったそうで、どれだけの人が花を献げたのか⋯
あらためてテロリスト許すまじの思いが
囚人兵士はすぐ投降するけど、ロシアが引き取り拒否でウクライナ側も扱いに困っているとのツイートを見ました⋯
投稿: 柳樽 | 2022年9月27日 (火) 19時05分
今から徴兵なんて、経済的観点からは、
「オレ、今日から仕事辞めて生活保護になりまーす」
を国が推進しているのだから愚行も極まれり、というものです。
只でさえ経済のお荷物と化し、降伏したら敵の駒だし、逃亡したら銃殺刑だし、死んだら年金(払うんかいな)だし、本当に、何のメリットもありませんね。
私の大学で国際交流イベントがありましたが、ウクライナの留学生3人が支援を求めていましたが,同日に日露友好団体代表1人のプレゼンがあり、衆寡敵せずボッコボコにされていました。混ぜるな危険は今時常識だろうに。
ウクライナ=正義、ロシア=悪というステレオタイプには一片の疑念を持っていましたが、ここまで侵略地で略奪・虐殺・徴兵と繰り替える国は早く追い出すべきでしょう。
投稿: プー | 2022年9月28日 (水) 00時31分
スノーデンがロシア国籍を取得したとの事ですが、果たして当人にとってそれで良かったのか。当局は「兵役経験の無い者を招集しない」と言ってますが、「裏切り者」の扱いは古今東西世界中何処でも変わらないと思いますがね。
投稿: KOBA | 2022年9月28日 (水) 00時34分