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2022年10月 8日 (土)

日本の「殴り返す力」(対抗抑止)について

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うちの国は、ウクライナ人のグレンコ・アンドリー氏が評するにこのような国です。
•元総理が真っ昼間にテロリストに暗殺される国
•敵国のICBMが空を飛んでいる国
•自国民が敵国に拉致される国
•全ての隣国と領土問題抱える国
•毎日のように領海侵犯と領空侵犯される国
•敵国は全部核兵器保有国である国
まったくそのとおりです。さらに付け加えるなら
・元首相が白昼に暗殺されても、殺したほうの責任が問われない国
・敵国のICBMが上空を飛んだのでアラートを出したところ「軍備強化のためだ」と批判される国
・自国民が敵国に拉致されたことにもっとも献身的努力をした元首相の功績がまったく知られていない国
・毎日のように領海侵犯をしている国のほうが、我が国の漁船を領海侵犯だと取り締まっている国
・敵国が全部核兵器保有国なのに、「核のない世界」を訴えている国
さて今日は、日本が中国や北朝鮮、さらにはロシアの核搭載弾道ミサイルの脅威に対して対抗抑止を持つために、どのようなことが可能なのか、今日はもう少し踏み込んでみることにします。
米ハドソン研究所の村野将氏の優れた論考を基に考えていきましょう。

●参考資料
・村野将・岩間陽子 『日本の「抑止力」とアジアの安定と日本に欠けている戦略的コミュニケーション』)

日本の「抑止力」とアジアの安定 | 政策シンクタンクPHP総研
・峯村健司『ミサイル増強すすめる中国軍、なのに具体的な議論ができない日本の問題』
朝日新聞グローバルプラス
ミサイル増強すすめる中国軍、なのに具体的な議論ができない日本の問題:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)

結論からいえば、米国と中距離ミサイル戦力を共に作り、日米が一体化した対抗抑止システムを作る必要があります。
独自核武装は実現できないのか、という疑問もあるでしょうが、米国から独立した核武装をすることは米国の核の傘からはずれること、すなわち日米同盟の終焉を意味する現在、それをするのは今ではありません。

現時点において、日米同盟なくして日本の防衛を語ることは不可能である以上、米国と共同して対抗抑止力を獲得するほうがはるかにメリットがあります。

私たちが考える以上に日米防衛の一体化は多方面で進んでいて、たとえば海自がもっとも力を入れている対潜水艦作戦においては完全な米海軍との共同作戦が前提となっています。
むしろ日本が対中防衛構想を牽引している部分すらあって、宮古島など島しょ部への対艦ミサイル部隊の展開に米海兵隊のほうが触発されて、同様の対艦ミサイル部隊を作り、第1列島線に展開する構想もあります。
2020年3月のバーガー海兵隊総司令官(当時)の発言です。
やや長いですが、従来の海兵隊のイメージを大きく刷新する内容ですので引用します。
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「【ワシントン時事】米海兵隊トップのバーガー総司令官は23日、時事通信との電話会見で、2027年までに対艦ミサイルなどを装備した「海兵沿岸連隊(MLR)」を3隊創設し、沖縄とグアム、ハワイに配置する考えを明らかにした。総司令官は3月、海兵隊が今後10年間で目指す方針を示した「戦力デザイン2030」で、戦力構成を抜本的に見直し、対中国にシフトする姿勢を鮮明にしている。
海兵隊の構想によると、沖縄を拠点とする第3海兵遠征軍傘下の海兵連隊を軸に再編成を行い、MLR3隊を創設する。バーガー総司令官は、既にハワイでは1隊目の編成が始まっており、沖縄とグアムに設置予定の残る2隊についても「27年までに完全な運用体制が整う見通しだ」と明言した。
MLRの設置時期が明らかになったのは初めて。既存の海兵連隊を再編するため、沖縄に駐留する総兵数が増えることはないという。
MLRは1800~2000人規模とみられ、長距離対艦ミサイルや対空ミサイルを装備する。有事の際には島しょ部に分散展開し、陸上から中国軍艦艇を攻撃して中国軍の活動を阻害。米海軍による制海権確保を支援するのが主な任務となる。
バーガー総司令官は、自衛隊が水陸両用車や輸送機オスプレイ、最新鋭ステルス戦闘機F35など相互運用性のある装備を保有していると指摘。「(海兵隊と)完全に補完し合う関係だ」と強調し、南西諸島での自衛隊との合同演習にも意欲を見せた。
今回の海兵隊再編が「日本に影響を与えるのは間違いない」と認め、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着くのを待って日本を訪問し、今後の改革などについて直接説明する考えを示した」
(時事7月25日)
27年までに「新ミサイル部隊」=対中国、沖縄に展開―米海兵隊トップ会見|


そのために海兵隊部隊と装備の再編が行われます。

①戦車部隊の全廃・砲兵部隊・オスプレイ・水陸両用車両・F35Bの削減
②1万2000人削減
③ロケット部隊(HIMARS) を7隊から21隊に増強し、「海兵沿岸連隊」(MLR)を沖縄島しょう部に配備

これは従来の敵前上陸・ヘリボーン作戦から、今やウクライナの救世主となったハイマース(HIMARS)への転換です。
この海兵隊の改変構想は、自衛隊の対艦艇ミサイル部隊との共同が大前提となっています。
ですから、新たな中距離弾道ミサイルシステムというと一見唐突に聞こえますが、現場においては先行して基盤が作られているのです。
むしろ最大の問題は、日本人の意識です。
たとえば辺野古移設問題は、もはやただの外交的約束にすぎなくなりました。

いつできるかわからず、中途半端な短い滑走路ふたつの「新基地」は、軍事的にはほとんど無意味です。
辺野古移設構想が始まったのが1996年ですから、それからなんと26年。
緊迫した国際情勢が、国内政局に左右される移設構想を追い抜いてしまったのです。
まぁ、ダラダラ作っているうちは普天間が使えるのですから、いつまでも趣味的に反対していて下さい。
あまり好かんタコと思っていますが、ひろゆきなる人物が、「座り込み3011日」をオチョくって炎上したとのこと。
Suwarikomi
ダメだってひろゆきサン。ここですわり込みをすることに生き甲斐みつけている人と争っちゃ。
いいじゃないですか、反米好事家が好きでやっているんだから。
構想と着工までの期間ならともかく、いいかげん3011日間もやってもまったく効果がないとわかるべきなのにね。
「新基地を断念せよ」ですか、ここまでできたので放棄したらもったいないので、軍民共用の第2地方空港くらいにはなるかもしれませんよ。
もちろん反対運動の功績とは無関係に、前述したように国際情勢が激変しそれに応じて海兵隊のドクトリンが変更されたからですけど。
なお「不屈の座り込み」の様子はこの動画から。
https://twitter.com/i/status/1577789823909183489


話を戻します。下図は中国軍の弾道ミサイル発射基地の分散状況を示しています。

図表3:中国の潜在的な重要軍事施設と地上発射型中距離ミサイルの位置関係
村野氏による

一見してお分かりのように、中国軍の弾道ミサイル基地の大半は沿岸部に集中して配置されています。
大陸奥深く配備されているのは、彼らが全面戦争に備えた大陸間弾道ミサイルだけですからわが国はこれを無視してよいでしょう。
また同様に、航空基地、海軍基地、潜水艦基地、陸軍基地なども捨象します。
わが国にはそこまで広範囲を攻撃する力はないし、その必要もないからです。
私たちは中国と全面戦争するのではなく、私たちの頭上の刃を取り除くだけに集中すればよいのです。
長距離弾道ミサイルは米国に届くが故に、米軍の領域と割り切りましょう。

したがって、わが国が対抗せねばならないのは、この中国の軍事施設・重要拠点5万箇所のうち約70%が集中する沿岸から400km地点以内の弾道ミサイル発射基地群です。
具体的にはこれらは、日本から2000㎞以内に納まっています。
仮に九州に射程2000kmの準中距離弾道ミサイルを配備すれば、中国沿岸から約1000km以内の弾道ミサイル基地を13分以内に攻撃することが可能となります。
まず日本は、この沿岸部の中国ミサイル基地を攻撃可能な準中距離弾道ミサイルを保有すべきです。

現実問題として中国軍の中距離弾道ミサイルは、移動式発射装置に乗せられている場合が多く、これらを探知して破壊することはほぼ不可能です。
これを破壊するためには、目標を指示する誘導員を潜入させ、航空機でピンポイント攻撃をするしかありませんが、そのような能力は日本にはありません。
日本が限られた予算と時間しか持たない対抗手段の中で、もっとも実現不可能な行き止まりに入っています。

日本ができるのは、「日本が弾道ミサイルに対して対抗抑止を保有したという事実」です。
ルトワックの分かりやすい表現を使えば、対抗抑止とは「殴り返す力」のことです。

完全破壊を目指すのではなく、わが国が米軍と一体化した中距離弾道ミサイルという「殴り返す力を持った」という政治的宣言です。
これはわが国が中露北に対して発する間違いようがないメッセージです。
この宣言を発しただけで、中国は日本がすでに米国と一体化した中距離弾道ミサイル戦力配備計画を立案していることを知っている以上、日本に対して今までのような対応をとることはできなくなります。

なお、この「戦略的コミュニケーション」には硬軟あって、このようなこちらの戦略抑止をデモンストレーションするものから、軍同士の交流、外交チャンネルを使った対話まで幅広く存在します。
ただしなにを対話するにしても、こちらが一方的に力負けしているような状況では外交にならないということです。

よく野党はなんとかの一つ覚えのように「軍事的圧力を止めて外交交渉で解決しろ」と言いますが、軍事と外交は二項対立するものではありません。
力の信奉者である中露北のような国との外交交渉が実を結ぶのは、外交が軍事力によって担保されている時だけです。
いままでの日本は軍事が欠落し、外交のみに頼ってきた結果として、どうしようもない媚中外交に終始したのです。
さて同様の中距離弾道ミサイルの増強を進めている国が、中国の進攻圧力を日常的に受けて続けている台湾です。

「【台北=中村裕】台湾の行政院(内閣)は16日、最大2400億台湾ドル(約9500億円)にのぼるミサイル調達の特別予算を組むための法案を閣議決定した。中国からの軍事的圧力が強まるなか、対中抑止力の向上へミサイルの大量配備を進めるのが狙い。ミサイルでは異例の規模の予算を計上し、中国に対抗する。
海空戦力提昇計画採購特別条例が同日、行政院を通過した。今後、議会承認のため立法院(国会)に送られる。議会では与党・民主進歩党(民進党)の議席が過半を大幅に上回っており、承認は確実だ。対艦や対空ミサイルなどの量産に充てられる。法案は2022年から5年間が対象。
台湾は現在、射程600キロメートルの中距離ミサイル「雄風2E」などを配備しているが数は少なく、大半は同40~200キロメートルの短距離ミサイルだ。中国への抑止力には足りず、特別予算の編成で中距離ミサイルの配備も急ぎたい考えだ」
(日経2021年9月16日)

台湾は1兆円弱の特別予算を組んで、この5年間で中距離弾道ミサイルの大増強を計る予定のようです。
おそらく台湾は軍事拠点のみならず、沿岸部大都市の政治・経済インフラまで攻撃対象に加えているはずです。

このような動きは米軍にとっても大きなメリットを生むでしょう。

「日本の防衛は、あくまで日米双方のもつアセットの総体による抑止力によって達成されるものだ。日米の計画立案レベルでの連携が深まれば、米軍の負担を減らすことができ、その分移動目標への攻撃など、より高度な任務に集中できるようになる。さらに、「米軍にさえ手を出さなければよい」と中国が日米(台)を分断(デカップリング)できると誤認するのを防ぎ、抑止力の強化にも貢献する」
(村野前掲)

日米が協力して中距離弾道ミサイル配備計画をたてれば、もうひとつのよい副産物ができます。
それは日本が敵基地攻撃能力を保有することに対して、米国が事前協議を要求することに対する答えになるからです。
勝手に日本に戦争を始められては米国が意図しない戦争に引きずり込まれる可能性がでるために、米国が消極的だというのが敵基地攻撃論を考えるうえでの難題でした。

しかし、十数分で飛んで来る弾道ミサイルに対しての報復は、 相手が 撃った瞬間に反撃を決意せねばならないわけですから、今の周辺事態法を国会で審議することなどまったく不可能です。
米国との事前協議すら無理です。

この問題を解決するには、中距離弾道ミサイルシステムを完全な共同運用にする以外ありません。
ヨーロッパで実施されているニュークリアシェアリングのようなものをイメージすればよいでしょう。
このシステムを共同で立ち上げ、共同で運用することは、日米の信頼の絆ともなります。
今回の中距離弾道ミサイルシステムは通常兵器を想定していますが、核弾頭へと発展する場合も、信頼の担保となるでしょう。

わが国がこの方法を取るためにやらねばならないことは山積しています。
ただしその大部分は政治の領域に属するものばかりです。
別の言い方をすれば、政治が責任を持って解決すべきことばかりなのです。
「抑止とは、軍事力のみによって達成されるものではない。危機に至るまでの緊張のエスカレーションの段階に日本社会が耐える能力、戦略的レジリエンスの強化も必要である。そこには「緊急事態」への法的・制度的準備も含まれるだろうし、民間防衛能力をあげることも含まれる。日本国民がパニックに陥り、社会システムが麻痺してしまうようであれば、それだけで中国側は低いコストで危機のエスカレーションを行なうことができる」
(村野前掲)
いうまでもなく、この対抗抑止の強化は単独であるわけではなく、憲法改正、緊急事態条項、民間防衛、スパイ防止法など多方面の社会の強靱化を含む大きな課題の一角にすぎません。
これらはひとつひとつがかねてから議論されてきた大きな問題ですので、ここでは論じませんが、この中に中露北の中距離弾道ミサイルに対する対抗抑止を加える時期が来たと思います。

それを先伸ばしして日米同盟の中で眠りこけてきた結果が、核の刃を振り回し恫喝の炎を吐く中国のようなモンスター国家を育ててしまったのですから。


※2021年10月23日記事に大幅加筆しました。

 

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ウクライナに平和と独立を

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コメント

私の村野先生を管理人さんに取られた(私のじゃない
ああ、痒いところに手の届く本日のエントリー。
我が国が真の独立国であれることを夢見た日が、かつて私にもありました。
けれども、そこで止まっていつまでも同じではいられない。
人と装備と金と地勢のリソース有効利用と抑止効果の確立強化において、「日米が一体化した対抗抑止システム」による我が国の対抗抑止力保有とその表明が今や必要であること、仰る通りと考えます。
「話し合え!外交で解決しろ!」の人たちは、「話し合え!どう話せば解決するかもおまえらが考えろ!」なので、彼らにも成功のセオリーは何ひとつありませぬ。よって放置。時間がもったいない。
そして同時に我々社会のレジリエンス強化も重要な鍵になる。
自然災害と個別の酷い事件は度々起きるも、誰かの努力と我慢で世の中の便利は拡充され、己の身に及ぶ侵略を受けることは長くないまま過ごせているうちに、我々社会は不便の許容度がダダ下がりして、悪い予報や警報が当たらないことに文句を言うようになりました。
ウクライナとウクライナ国民が今引き受けている現状から、我が身を振り返る時でもありますね。

あとひとつ蛇足を。
インドは「核兵器の先制不使用方針を支える確実な最小限の抑止力を保持する国策」に沿って、アグニ5で中共全土を射程内に収め、半身ではロシアへの制裁に反対しながら、同時にもう半身でロシアに説教する。
こういうことができるインドの重要さを安倍さんが理解して米欧に説いて気付かせたことは、のちのち教科書に載ってもいいレベル。

弾道ミサイルへの迎撃ミサイルにすら、「外れた場合に中国大陸にフラフラ飛んでいって大陸に着弾したらどうするんだ!」とイチャモンつけたのは…福島みずほでしたっけ、土井たか子でしたっけ。

日本への攻撃はしっかり全て撃ち落とします、その上で攻撃を発した本土の基地、兵隊にもしっかり血を流してもらいます。ここまでやって初めて国防ですよね。

しっかりやれよ、岸田。ボンクラ息子に一千万のお小遣いあげることに腐心してないで。

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