団派の終焉、胡錦濤強制退場
中国共産党大会の続報です。
新しい政治局常務委員の顔ぶれについては福島香織氏の速報がありますので、一番下をご覧ください。
全員が習近平のイエスマンです。
結論から言えば、李克強は引退し、団派はほぼ壊滅したようです。
特に衝撃的だったのは、胡錦涛という団派の長老が衆人環視のなかで退席させられる様子でした。
この光景は、党内において団派の壊滅を告げる象徴のようにみえたはずです。
日本のメディアはこれを「退場」と書いていますが、動画をみればあきらかのように強制的に引きづり出したのです。
※動画【胡锦涛动作显示不自愿地被带离场】
理由は、健康上の理由にかこつけるでしょうが、誰が見ても胡錦濤が李と汪の名がない中央委員会名簿の採択直前のことですから、これに反対しかねないことに対する予防検束でしょう。
動画を見ると、胡錦濤は会場係に抵抗するそぶりを見せ、習の机の上の資料に手をかけようとして習と軽くもみあっています。
最後に望みを託すように李克強の肩に手を置いた姿と、驚いたような彼の表情が印象的でした。
【本日のYahooフォーカス】 结局「大勝版」習家軍が大権力を握った
【AFP=時事】(更新)中国の胡錦濤前国家主席が22日、北京の人民大会堂で行われていた共産党大会の閉幕式を突然退席させられた。AFP取材班が確認した。
胡氏は最前列の習近平国家主席の隣に座っていた。職員に腕をつかまれそうになると振り払い、その後、脇の下に両手を入れられて立たされた。
映像には、習氏の机にある書類を胡氏が取ろうとするのを習氏が押さえて防ぐ場面も映っていた。
胡氏は習氏および李克強首相と1分ほど言葉を交わし、ほとんどの出席者が前方をじっと前を見つめる中、李氏の肩を軽くたたき、会場外に連れ出された」((AFP10月22日)
胡錦濤前国家主席、党大会閉幕式を突然退席(AFPBB News)【AFP=時事】(更新)中国の胡錦濤前国家主席
この会場を去っていく胡錦濤の姿は、テレビでは報じられなかったようですが、ある種の公開処刑といってよいでしょう。
かつて正恩によって会場から引きずり出され、高射砲でバラバラにされた叔父の張成沢をおもいださせました。
全体主義国家らしい粛清風景です。
いずれにせよ、これで鄧小平以来続いた改革開放路線と国際協調路線は終わり、習の戦狼外交と民間企業統制政策を柱とする独裁体制が確立することが確実になりました。
「閉会式に先立ち、約200人の中央委員が選出され、7人いる最高指導部、中央政治局常務委員会のうち4人の退任が明らかになった。その中には、李克強(Li Keqiang)首相および同氏の後継と目されていた汪洋(Wang Yang)人民政治協商会議主席らが含まれていた。
李氏と汪氏はともに67歳。68歳で引退するという党内の「定年」には達しておらず、政治局常務委員としてとどまるか、別のポストに就く可能性が取り沙汰されていた」
(AFP10月22日)
習近平氏3期目入り確定、李克強氏は最高指導部を退任へ 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
この8月の北載河会議前後、「習下李上」(習近平が引退し、李克強が総書記になる)という噂がでていましたが、和残に打ち砕かれて、真逆の方向にいったようです。
「第20回党大会が終わり、新しい中央委員会メンバーが発表されましたが、李克強と汪洋の名前がありませんでした。
つまり次の指導部(政治局常務委員)に、李克強も汪洋も入らず、ひょっとすると胡春華も入らない可能性があります。共青団派は一人も入らないかも。それどころか、開幕式中に長老の胡錦涛が退場させられる、という一幕もありました。共青団の権威の失墜を象徴するような出来事でした」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.641 2022年10月22日)
福島氏によれば、「習近平の引退に望をかけていた改革開放派の知識人たちは、独裁者を甘くみすぎていた」と言っている」そうです。
彼ら改革開放派にとって衝撃だったのは、汪洋が政治局常務委員に残留するという予測とも願望ともつかない希望が完全に砕かれたことでした。
下は毎日新聞の当初の人事予想です。(まったくハズレでしたが)
中国発 世界不況:習近平政権 国家主席3選に暗雲 次の指導部候補が浮上=坂東賢治 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)
図右の政治局常務委員からふたりの共青団派(団派)の李克強と汪洋、韓正、栗戦書の名前はなく、胡春華(副首相)の去就は不明ですが日和見的人物で、大会前から習にすりよっていましたから、案外残った可能性があります。
もっとも福島氏は「もし、胡春華が政治局常務委員入りできたら、李克強と汪洋は自らの引退の代わりに、十分若くて能力のある胡春華に共青団派の未来をすべてを託してねじ込んだ」という見方も示しています。
「こうした中、最高指導部入りが取り沙汰されるものの、習氏との距離が指摘される胡春華副首相(59)は会議で、「『二つの確立』は、全党、全軍、全国人民の共通した願いだ」と発言。習氏への忠誠を懸命にアピールしている」
(産経10月18日)
習氏側近多数、最高指導部入りか 党大会で忠誠アピール相次ぐ(産経新聞) - Yahoo!ニュース
団派は一掃された代わりに「習家軍」と呼ばれる丁薛祥、李希、李強、黄坤明、陳敏爾、蔡奇妙、楼陽生といった習近平の腹心はほぼ全員が中央委員会入りしました。
あとはごますりの李鴻忠などです。
「習家軍」とは、習が作った取り巻き集団のことです。
「習近平は、福建省、江蘇省、上海などで勤務していた旧省や、清華系同窓生や故郷の河北省の役人を利用し、「之江新軍」、「江蘇省新軍」、「新北西部軍」、「軍工系」、「清華系」、「浦江新軍」などの親書クラスを創設した」
(大紀元
習家軍の6つの派を暴き|新時代週刊誌|は、あなたと手をつないで新しい時代に入る (epochweekly.com) 。
この「習家軍」は、主要な地方都市である上海市、北京市、重慶市、糞圏、遼寧、香港、海南、天津、山西、黒竜、湖南、河北を押さえ、軍事委員会も制しているようです。
つまり党・軍・政を完全制圧です。
「この大会以降、この「習家軍」が名実共に中国の中核となります。民主化雑誌「北京の春」名誉主筆の胡平は、ボイスオブアメリカ(VOA)にこうコメントしているそうです。「習近平は強い独裁権力を持つだろう。自分と意見を異にするもを排除してしまった。(略)目下のところ、習近平は慎重に人事配置をして、長期独裁の目標を達成するだろう。これは個人崇拝、個人独裁の捲土重来を意味し、国内党内に対しても厳格な監視コントロールを行い、ファシスト式統治を実行するということになろう。対外的にも戦狼外交が継続され、さらに攻撃的になり、中国は世界に危害を与えることになるだろう」(福島前掲)
この大会で壊滅した団派は、鄧小平の改革開放路線を継承した官僚を中心としたグループです。
団派の外交路線は、鄧小平の韜光養晦(とうこうようかい) 路線を基本としています。
これは当時90年代の国際的孤立から爪を隠して国際社会での存在空間を広げつつ、経済力もつけようとする路線です。
いわば合理主義路線といってよいでしょう。
この間の中国共産党内部では、世界覇権を握ろうとする習家軍と、この協調路線との間の隠然たる戦いでした。
そしてこれに決着が着いたのが、この大会だったということのようです。
これで習近平は誰の掣肘も受けることなく、自分だけの意志で戦狼路線を進め、早晩台湾に手をかける可能性が強まりました。
私は台湾を軍事制圧するのは軍事的に不可能だと見ていましたか、この連れ出される胡錦濤の姿を見て、考えを変えました
習は合理主義的判断に立たない人物です。
遠くない将来、習はプーチンの轍を踏むかもしれません。
■速報
新しい政治局常務委員の顔ふれです。露骨なまでの習のゴマスリが占めました。
「23日の北京時間正午過ぎ、党大会で選出された中央委員会による第一回中央委員会全体会議が終了した後に北京で記者会見が行われ、第20期新指導部メンバー(政治局常務委員会)がお披露目されました。
習近平、李強、趙楽際、王滬寧、蔡奇、丁薛祥、李希の7人です。
序列から想像するに習近平総書記(国家主席、中央軍事委員会主席)、李強総理(現上海市書記)はほぼ決まり。趙楽際(現中央規律検査委書記)が全人代常務委員長、王滬寧(現・中央精神文明建設指導委員会主任=宣伝担当)が現職続投か政治協商委員会主席に?。
蔡奇(現北京市書記)が(宣伝担当か、政治協商委員会主席?)、丁薛祥(宣伝担当?か国家副主席?)、李希(中央規律検査委員会書記)といった感じでしょうか。
政治局25人はこの7人を除いて、馬興瑞(ウイグル自治区書記、宇宙工学系)、王毅(外相)、伊力(福建省書記)、石泰峰(社会科学院長)、劉国中(陝西省書記)、李幹傑(山東省書記、原子力系)、李書磊(中央宣伝部副部長)、李鴻忠(天津書記)、何衛東(東部戦区司令)、何立峰(国家発展改革委主任)、張又侠(軍事委員会副主席)、張国清(遼寧省書記)、 陳文清(国家安全部長)、陳吉寧(北京市長、たぶん次の北京書記)、陳敏爾(重慶書記)、袁家軍(浙江省書記)黄坤明(中央宣伝部長)。
ほぼ全員が習近平のゴマすり集団です。
このメンツをみると、外交担当は楊潔?が引退したので王毅が担い、経済担当は劉鶴が引退したので、何立峰が担い、中央軍事委副主席は張又侠と何衛東が担うということでしょう。
また、女性の孫春蘭に代わる人物が入っていないので、もう、中国で女性が活躍しているなんて世迷言をいう人もいなくなるでしょう。ごりごり男性社会です。
ウイグル弾圧で悪名をはせた陳全国は失脚。政治局も習近平の子分で固めてきました。それどころか中央委員会メンツも団派、改革開放派がほとんど排除されています」
福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.642 2022年10月23日
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ゼロコロナ政策、続けるのですかね。
企業統制とともに中共経済が落ち込んでいくと、我が国にとって悪くないと同時に、習が自分で自分を派手な花火の打ち上げに追い込む可能性が高まります。
プーチンと似て転落の恐怖や老衰の恐怖に突き動かされるならば、行動の制御は難しい。
中共は気になる情報を片っ端から集めているでしょうが、日本の防衛費の方向性から、沖縄県における「オール沖縄」衰退の流れと、天皇皇后両陛下のご訪問を歓迎する沿道旗振りや奉祝パレード、両陛下と沖縄の若者世代の交流の様子、それらが醸す雰囲気などなど、どんな風に習氏に伝わっていくのでしょうかね。
投稿: 宜野湾より | 2022年10月24日 (月) 10時07分
却って良いのではないでしょうか。これで中共に味方するのは金や女で懐柔された阿呆、と簡単に見分けがつくようになりました。明確な新冷戦で、世界中の誰にでもわかりやすい二元論で対峙できるというものです。
投稿: あいうえお | 2022年10月24日 (月) 11時43分
胡錦涛への、この公開見せしめ処刑は衝撃的でした。
この後、習近平は「マスコミは公正な報道をするように」との要請をしましたが、この意味するところが一層おぞましさ全開です。
今後、台湾有事は確定して早まり、中国経済の凋落もまた早まった、という事で間違いないんでしょう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年10月25日 (火) 01時54分