ともに仕掛ける海上封鎖戦
では、台湾に侵攻した場合、西側はどう対応するでしょうか。
まずは、ロシア制裁規模の国際的金融・経済制裁が課せられることは間違いありません。
ただし西側は返り血をたっぷりあびることになりますが。
つぎに軍事的には、南シナ海と台湾海峡は、ザ・クアッド海軍+英仏海軍によって海上優勢が図られることになります。https://foimg.com/00049/sOaiVa
このG7共同宣言を現実に実体化したのが、ザ・クアッド+英仏海軍ですが、この「国際艦隊」は、南シナ海と台湾海峡を封鎖することでしょう。
英国と日本が第2次日英同盟結成を視野に入れていることは知られた事実です。
またANZAS(豪NZ米国安全保障条約)に日本も加入しないか、という噂もたっています。
豪とはすでに準同盟関係ですからあながち夢想ではありません。
いまや台湾問題は、ウクライナ戦争以降一気に自由主義陣営全体の問題として共有化されてきており、 行動に移るまでにさほどの時間はかからないと思われます。
むしろもっとももたつくのが、恥ずかしながらうちの国でしょう。
もうひとつの問題が、台湾の国際的地位のあいまいさです。
台湾は別個の独立国として日米は承認していません。
それは中国との外交関係が破綻することを恐れているからですが、中国から台湾侵攻した場合、ウクライナ戦争以降の国際世論はこれを「独立国への侵略」として認識するでしょう。
習近平が先に侵略を仕掛けた場合、米国はためらうことなく台湾支援に入ります。
そのことはなんどもバイデンは口にしています。
かねてから台湾の防衛を約束した台湾関係法がありますが、いまやそのレベルではないからです。
一気にいままでの懸案だった台湾の国家承認と集団的自衛権を済ませることでしょう。
そのくらいウクライナ戦争前と後では、侵略に対する意識は一変しているのです。
侵攻が差し迫って台湾が覚悟を決めて明示に「独立」に踏み踏み切った場合も、米国が直ちに国家承認し、これで国連憲章上の集団的自衛権を公然と援用して台湾を支援できるようになります。
当然米中関係は破綻しますが、もはやこの段階でそのようなことを気にするわけがありません。
我が国もまた安保条約上の義務を履行し、さらに台米を助ける集団的自衛権行使を真剣に検討せねばなりませんが、いまの岸田政権に台湾有事は日本の有事という安倍氏のような覚悟があるかは疑わしい限りです。
では、具体的な台湾防衛はどうするのでしょうか。
当然のことながら、攻防の想定戦場は台湾海峡以外ありえません。
中国の侵略を封じ込める方法としてもっとも安上がりで、もっとも効果的な方法が機雷戦です。
「『ネイバル・ウォー・カレッジ(Naval War College Review)』の最新2022年冬号には、「中国に対する攻撃的な機雷敷設作戦」と題するマシュー・カンシアン(Matthew Cancian)氏の論文が掲載された。マシュー・カンシアン氏は、元海兵隊大尉の退役軍人であり、マチューセッツ工科大学で政治学の博士号を取得。現在は、ネイバル・ウォー・カレッジで軍事作戦を研究している人物だ。
彼の論文によると中国の台湾侵攻を阻止するには、台湾海峡に機雷原を敷設することが、戦闘的作戦よりもリスクの低い危機対応の方策だとして、中国が台湾に侵攻しようとする危機が発生した際に機雷敷設が行えるよう、平時の備えをすべきだと主張している。
中国の貿易の60%は海路で行われ、海上輸入は世界の海上貿易の4分の1を占めている。台湾海峡を封鎖すればその影響は、廈門(アモイ)、泉州、福州の各港にも及び、中国国内の貿易を混乱させるのには十分だ。費用対効果にすぐれた機雷戦を台湾海峡に仕掛けることで、台湾防衛を果たそうとするのがこの論文の主旨である」
(山崎文明 hanada10月7日)
台湾有事は「機雷戦」で起こる|山崎文明 | Hanadaプラス (hanada-plus.jp) 。
海底地図 海上保安庁海洋情報部提供。海底地形名称・海上保安庁発行海図「南西諸島(No.6315)」に基づく笹川平和財団https://www.spf.org/islandstudies/jp/info_library/senkaku-islands/03-ocean/03_ocean001.html
画面右下から画面左・北東にかけて斜めに濃い青色で伸びているのが、沖縄トラフです。
画面左半分の白く見えるのが中国大陸で、そこから連なる大陸棚が白っぽく表示されていますが、 大陸棚の水深はわずか200mていどで、極めて浅い海域だと分かります。
そのために大型船が使う港は、年中浚渫しつづけないと埋まって使い物にならなくなってしまうそうです。
まさにあつらえたような機雷を敷設するに適した浅海です。
とくに台湾海峡は浅い上に、狭い海峡です。
台湾海峡の地形と位置を押さえておきます。
「台湾海峡は、福建省と台湾の海岸の間に位置し、福建省の黄岐半島の北端のツイ(福建省海壇島の北端)と、台湾島の富貴角との結びつきを北の国境とする、中国の南北の海上輸送の要である。
南界は、台湾島の南端の猫の鼻から福建省の安安頭(ガチョウの鼻と南オーストラリア島の南端)を結ぶ。 台湾海峡は、南北約370kmの南北に、ほぼ東と南に向かっています。
海峡の北は幅が狭く、北口は幅約200km、南口は幅約410kmで、最も狭いのは台湾の白沙岬(台湾新竹の北西海岸)と海壇島の間で、約130kmです。 海峡の面積は約83,000平方キロメートルです。中国東海大陸棚の台湾海峡は、北の水深60~80メートル、南の水深40~50メートル、平均水深約60メートルの起伏がある。
海峡には、台湾の浅瀬、台中浅瀬、湖列島からなる北東から南西の隆起帯があります。 東西に20メートルと50メートルの水深を持つ2段階の土地がある」
台湾海峡の地形図 (weibo.com)
習近平が侵攻の構えを見せた場合、米軍はかつてと違ってこんな狭い海域に空母打撃群を入れるようなことはしません。
対岸に中国が有効な対艦ミサイルを多数配備している上に、こんな狭い海域では大所帯の空母打撃群は身動きがとれないからです。
その代わりに、B!・B2爆撃機などを使用した航空機雷の場合、短時間で台湾海峡は封鎖可能です。
「台湾海峡は浅く狭いため、機雷を敷設するのに適した地域とされている。台湾海峡は、長さ約300キロメートル、幅は平均180キロメートル、最も狭いところで130キロメートルである。水深は平均60メートルで、最も深いところでも100メートルしかない。海峡の航路は、水深20メートル、幅8キロメートルの帯状に集中している。こうした地形と現在の米軍の能力を考えると、空中投下型機雷が使われることが想定される」した地域とされている。
台湾海峡は、長さ約300キロメートル、幅は平均180キロメートル、最も狭いところで130キロメートルである。水深は平均60メートルで、最も深いところでも100メートルしかない。海峡の航路は、水深20メートル、幅8キロメートルの帯状に集中している。こうした地形と現在の米軍の能力を考えると、空中投下型機雷が使われることが想定される」
(山崎前掲)
クイックストライク-ER
たぶんMK62クイックストライク航空機雷が台湾海峡に敷設されることになるでしょう。
そして中国の出方を見ながら、エスカレーションの必要があるなら、大陸沿岸の主要港、海上ルートすべてに機雷が敷設されていきます。
機雷を敷設された場合、旧式装備しか持たない中国海軍は手に負えないはずです。
一方、中国もミサイル攻撃だけで台湾が陥落するとは思っていないでしょうし、上陸作戦をする能力が低いことも知っているはずです。
軍事に疎い習近平が海上突撃をさせた場合、狭い台湾海峡は修羅場に変わるはずですから、残る方法は海上封鎖です。
ただし、習近平が直接に戦争指導まで口バシをつっこんだら、派手な上陸作戦をやりたがるかもしれません。
プーチンなど独裁者はパーフォーマンスが好きなのでやりかねませんが、確実に失敗します。
海上の決死隊 東海艦隊の掃海艇編隊が機雷除去_中国網_日本語 (china.org.cn)
「2009年に米海軍大学中国海洋研究所から発刊された『中国の機雷戦(Chinese Mine Warfare)』には、最も現実的なシナリオとして、機雷戦を取りあげている。
今年8月のペロシ米下院議長の台湾訪問への抗議として行われた中国人民解放軍の海軍、空軍、ロケット軍、戦力支援軍、統合後方支援軍が参加した台湾周辺の6箇所の空域及び海域での大規模な軍事訓練のようなものではなく、実際の中国の台湾への侵攻は、台湾の抵抗を硬化させず、死傷者と物理的損害を局限化する方策として機雷戦を計画している可能性が高いとしている」(山崎前掲)
しかしここでも問題となるのが、台湾の国際的地位の問題です。
中国が海上封鎖をした場合、皮肉にも台湾を交戦団体として認知してしまうことになります。
海上封鎖ラインが領海の外に出た瞬間、中国は台湾を「国家承認」したことになるからです(苦笑)
中国にマトモな法務官僚がいれば、台湾の地位承認に結びつきかねない封鎖を回避して、同様の効果を狙う交通路遮断作戦を選択するかもしれません。
いずれにしても、火薬庫につながる導火線はどんどんと短くなっていることだけは確かです。
« 台湾侵攻は早まるだろう | トップページ | ヘルソン陥落間近 »
機雷なんて大嫌い!
なんてのは冗談で、実際に事に及べば機雷封鎖戦が最良で容易です。まあ、終わってからの後始末が大変ですけど。海上自衛隊は今でも大戦中の機雷を爆破処理してるし、実は自衛隊で最も死者が出ているのは掃海部隊です。ああそうかい。って何か今日は調子がおかしい。寒い。現在の外気温3℃。
中国では10年以上前から「沖縄トラフまでは我が大陸棚なので領土だ」という主張が出ていましたからね。これは覚えて置かなくてはなりません。
時の政権では尖閣で海保とゴッツンコ事件で仙谷さんが勝手に乗組員返しちゃったりと無法なことやって滅茶苦茶でしたね。あれが2010年。
先日感動的な安倍氏への弔辞を読んだ野田総理がバカ正直に尖閣諸島国有化を宣言して(それは正しいことだけど)、極端に関係悪化しました。
現場の石垣島の漁師さんはもっと怒って良いです。
投稿: 山形 | 2022年10月26日 (水) 06時40分