もっと日本国民は怒っていい
北朝鮮がまたまた弾道ミサイルを打ちました。
新聞の見出しを見るとEEZに着弾せず、とか書いていますが、そこですか、問題は。
EEZに落ちれば、我が国の主権に直接にかかわりますが、日本列島の上空を飛び越えられておいてEEZがぁ、とはのどかなことよ。
「浜田靖一防衛相は6日朝、防衛省で記者団に対し、北朝鮮が同日午前6時ごろと同6時15分ごろ、同国内陸部から計2発の弾道ミサイルを東方向に向けて発射したと述べた。このうち同6時15分ごろに発射された2発目について浜田氏は「変則軌道で飛翔した可能性がある」と述べた。ミサイルはいずれも日本の排他的経済水域(EEZ)外の北朝鮮東岸付近と日本海に落下したとみられ、これまでに航空機や船舶の被害は確認されていないという。」
(毎日10月6日)
ミサイル2発目は「変則軌道の可能性」 北朝鮮に厳重抗議 防衛相(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
米国は素早く反応し、日本海に空母「ロナルドレーガン」を展開しました。
「【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮が4日に日本上空を通過する弾道ミサイルを発射したことを受け、米韓両軍は5日未明、対抗措置として、日本海に向けて地対地ミサイル4発を発射した。9月下旬の米韓合同演習に参加していた米原子力空母「ロナルド・レーガン」が再び日本海に展開するなど、米韓は挑発の水準を高めつつある北朝鮮への軍事的圧力を強めている。
米韓両軍が発射したのは戦術地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」。韓国軍は「北朝鮮がいかなる場所から挑発しても、挑発拠点を無力化できる能力と態勢を備えていることを示した」と強調した」
(産経10月5日)
米空母が再び日本海へ、米韓はミサイル4発で対抗 北朝鮮は「沈黙」 - 産経ニュース (sankei.com)
言う必要もありませんが、北の弾道ミサイル発射は国連制裁決議違反です。
しかし百回ウソを言えばウソでなくなるように、百回違反すれば罷り通ってしまうようです。
米国は国連安保理にかけるといっていますが、中露がいるかぎりなにもできないでしょう。
北はそれを十分知っています。
中露によって機能不全になっているのが国連なのですが、国連改革などできない相談でしょう。
中露を常任理事国に据えているのは国連憲章で、ここから変えないとダメだからです。
改革案に賛成するのはEUと日米だけ。他のアジア・アフリカ諸国は反対か棄権に回るでしょう。
というわけで、毎回毎回堂々と国連決議違反されても、なにもできないのが国連です。
火星12号 聯合
ちなみに韓国も米軍と協調して弾道ミサイルを発射したところまではよかったのですが、自分の基地内に墜落して炎上するというお笑いを演じてしまいました。
こういう緊迫した状況で、場をほぐすべく心温まることをしてくれるのが我らが韓国です。
死者が出なくてよかったですね、と言って上げたいところですが身を張った自虐ギャグはやめたほうが。
韓国のミサイルが力のショー中に基地に墜落 - BNOニュース (bnonews.com)
「ミサイルが落下する際に発生した強い閃光に驚いた北東部・江陵の住民の問い合わせが役所やメディアに殺到した。軍から「訓練」という案内がなく、混乱が続いた。オンライン上では爆発と見られる炎が収められた写真と映像が拡散した」
(聯合10月5日)
韓米両軍 北への対抗措置で地対地ミサイル4発=弾道1発は失敗 | 聯合ニュース (yna.co.kr)
では、正恩の核についての発言に耳を傾けてみましょう。
2016年5月、第7回朝鮮労働党大会における金正恩の宣言です。
「わが国は責任ある核保有国として、侵略的な敵対勢力が核兵器でわれわれの自主権を侵害しないかぎり(略)こちらから核兵器を使用することはしない。
国際社会の前で負う核拡散防止条約の義務を誠実に履行し、世界の非核化を実現するために努力する」
(磯崎教仁『北朝鮮入門』2017年)
今世界でもっとも核軍拡に励んでいる国から、「世界の非核化を宣言する」などといわれると、吹き出してしまいそうになりますが、まぁ置きましょう。
いつも修飾語である「火の海にしてやる」とかいわないと、案外まともなこと言っていることに逆に驚かれるかもしれません。
この正恩の「核先制不使用宣言」のキモは、冒頭の「責任ある核保有国」という部分です。
先制使用(preemptive use)という概念は、まだ核戦争か始まらない前に先に核兵器を撃ってしまうことですから、それをしないということを宣言したわけです。
先日の火星ミサイルの標的は、グアムでした。もちろん米国のアジア・太平洋地域の拠点があります。
中国は執念深くグアムを狙って、執拗に空母「遼寧」を送ったり、爆撃機編隊を接近させたりしていますが、北の場合は弾道ミサイルです。
つまりここで正恩がいう「責任ある核保有国」とは、核兵器の国際ルールに従うということで、具体的にはいきなり日本やグアム、あるいは米本土西海岸に弾道ミサイルを発射することをしないという意味のようです。
もっとも核の先制使用などしようものなら、米国領土への直接攻撃ですから倍返しどころか、数十倍返しにあうでしょうが。
つまり、核兵器という武器体系の最大の特殊性は、「持ってナンボ、持たにゃ大国になれんが、使ったら最後自分も滅ぶ」というきわどい政治的兵器なことですから、やっと正恩も理解に達したと褒めてやるべきでしょう。
北朝鮮はやっていることはクレージーですが、頭の中には常に冷えた打算があるようで、北の核ミサイルを自分の国の潜水艦に積んで共同運用したいなどという馬鹿丸出しの構想を密かに持っていたムンジェインよりよほど「マトモ」です。
それはさておき、正恩が考えている今後の展開はこうです。
①核弾道ミサイルを、米国に着弾するまで伸ばす。
②対米核抑止力を得たと宣言する。←いまここ
③印パのように国際社会、なかでも米国に「核保有国」だと認めさせる。
④核保有国同士として米国と対等な交渉テーブルに着く。
⑤国連制裁決議を撤回させ、朝鮮半島の「安定と平和」について交渉をもつ。
現在、この②の最終段階で、北はすでに核大国になったと 自称しています。
おそらく年内にあと数回のICBM実験を行い、核実験も再開するでしょう。
そして「対米核抑止力を獲得したぞ」と高らかに宣言し、③印パのように「本来許されないが、手放さないのだから仕方がない」という奇妙な地位を得ることを目指します。
こうなれば、④米国と核保有国同士として「対等な交渉」が可能だ、と北は考えます。
では、国際社会はどう対応するでしょうか。
米国内部にも北の核許容論がありますし(別記事にするかもしれません)、ヨーロッパ諸国はウクライナで精一杯です。
なにぶんヨーロッパには、北のミサイルは届きませんから脅威とあまり感じていないかもしれません。
本音では、東の辺境のイカレた王様が危険なオモチャをいじっている、ていどの認識です。
残りの中露は話の外です。
そもそも中露が北の核開発の影の支援者でした。
ロシアにとって米国を牽制でき、しかも日米同盟に楔を打ち込むことが可能なので、最後まで国連制裁にすら反対し続けるでしょう。
中国は口では困ったもんだていどのことは言っても、いままでなにもしてこなかったし、今後も何もしないでしょう。
むしろ「北を唯一説得できるのは中国」という幻想を、外交的武器として使い回すはずです。
北朝鮮が北京に核ミサイルを向けないかぎり、印パのように地域の枠組みに平穏に納まってくれれは、日米同盟が分断されるうまみをもっとも得ることができるのは、この中国です。
問題はわが国です。
今回もそうでしたが、米国が空母を日本海に派遣し、地対地ミサイルを売って示威をしてくれたのでかっこうがつきましたが、日本は事実上なにもしていません。
いまや北に大きくロケット技術で遅れをとった韓国のほうがよほどマシです。
我が国について、ウォールストリートジャーナルはこんなことを書いています。
「【東京】日本はミサイル防衛で守りに徹するだけでは不十分だとの考えに傾きつつある。ここにきて攻めの姿勢も視野に入れ始めた。
北朝鮮は日本上空にミサイルを飛ばすことで、隣国を脅かしうる存在であることを改めて浮き彫りにした。だが、軍事専門家は北朝鮮のミサイル迎撃能力は限られると指摘する。このぜい弱さこそが、日本政府が12月に公表を予定している新たな防衛戦略で方針転換を促す重要なテーマになっている。
自民党の佐藤正久外交部会長は「北朝鮮はミサイル防衛に限界があるので、(日本が)反撃能力を持ったほうが抑止力になる」と話す」
(WSJ 2022 年 10 月 6 日)
北朝鮮の「弱み」に照準、日本は抑止強化に傾く - WSJ
このようなテーマについて、米紙はいままで常にこの右翼めといったトーンで報じてきたのですが、今回は好意的な書き方をしています。
問題はウクライナ戦争を経ていっそう鮮明になってきています。
侵略は独裁者の機嫌ひとつで戦争は起こり得る、それもある日突然に、ということがわかってしまったからです。
ウクライナが侵略されたのは、ウクライナが「9条の国」だったからです。
軍隊は弱体であり、頼りにできる同盟国はなく、集団安保体制であるNATOからも加入を拒否されており、さらには最後の切り札とも言える核もとりあげられていました。
だから、ロシアは赤子の手をひねるより簡単だと考えて、侵略に踏み切ったのです。
日本が野党のいうとおりに「非武装中立」などとやっていたら、60年前に「極東のウクライナ」になっていたはずです。
さて、日本は北朝鮮によって国土を飛び越える弾道ミサイルを発射されたうえに、それに搭載可能な核弾頭まで開発されてしまいました。
このように書くと、いやあれはEEZに落ちていないとか、高高度だから領空ではない、などと聞いたような口を叩く人がいるようですが、馬鹿ですか。
それは北朝鮮の代弁そのままです。
わが国は無通告で核弾頭が装着されている可能性すらある弾道ミサイルに、国土を蹂躙されたのです。
いかに高高度であろうとなかろうと、主権国家の領土上空を事前通告なしに通過するミサイル投射は戦争行為に準じるものと国際常識では理解されます。
逆を考えてご覧なさい。 米国が無通告で日本海から朝鮮半島をまたいで渤海に落す弾道ミサイル訓練をしたら、正恩はためらいもなくこれを宣戦布告だと受け取って、ただちに戦争に突入するでしょう。
そうならなかったのは、ひとえにやられた相手が世界に稀なる「草食系国家」の日本だから、こんななめたまねが出来ただけです。
残念ですがひとつの国家として考えた場合、日本のほうが異常であって、北朝鮮のほうがまともな主権国家の態をなしています。
Jアラートにすら、かつては「アベは空襲警報を鳴らした」と言う者が現れ、今回も「緊張を煽るだけだ」という政党がでました。
こういうお前どっちを向いてしゃべっているんだという者がいるのが、わが日本です。
もっと日本国民は怒っていいのです。日本人には怒る権利があります。
今現在、圧倒的に優位な力関係に立っているのは正恩の国のほうであって、日米は打つ手がありません。
トランプの直接会談の魔法が解けてしまった今、バイデンになにができるでしょうか。
たぶん正恩は、年内に完全核保有国宣言を発し、世界もそれを追認せざるをえないこととなるはずです。
そうなった場合に、日本に何ができるのか、何を今すべきか、真剣に考えねばなりません。
こういう袋小路の状況において、幕末の草莽の志士風にいえば「狂を発する」必要があります。
維新の志士上がりで、明治まで生き残った山県有朋は奇兵隊の隊長だった時、「山形狂介」と名乗っていました。
実は山県は慎重すぎるほど慎重な男で、到底狂えない体質の自分の尻を「狂介」という名乗りで蹴り飛ばしていたのでしょう。
私たち日本人も「狂を発する」必要があります。
「狂を発する」とは、正しく怒ることです。
そのガムシャラな力で、閉塞した状況そのものを揺さぶって突破口を見つけ出すことを意味します。
正しく怒り、その怒りを日本の独自核武装論の議論につなげて行くべきです。
この際できるできない、国際社会からどう見られるか、NPT体制を脱退するのか、技術的に兵器級プルトニウムができるのか、といった醒めた議論はとりあえず置いておきましょう。
ここに引っかかってしまうと、一歩も先に行きません。
ご承知のように、私は一貫して独自核武装反対論者でしたが、ことここに至って、核武装と中距離弾道ミサイルをまったく度外視した対北・対中、対露核抑止はありえないのではないかと思うに至っています。
したり顔でやり過ごすのではなく、立ち止まって真剣に議論すべき時期に入ったのです。
戦後最大のタブーであった独自核武装論をリアルに議論できる時期は、今をおいてしかないはずですから。
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この「正しく怒る」が難しいところですね。
戦後教育の失敗のひとつなんでしょうか、殊にある世代以上の方々にとっては。
いや、声と態度のデカさのせいかもしれないので、先輩方が皆そうだとは申したくないのですが、ミスリードする者に点火されると客観性も論理性も無視して燃え盛る傾向があるのは、旧統一教会問題でも明らかです。
正しく怒るどころか、北朝鮮と接点のある極左暴力集団の参加や仕切りを排除できない平和運動や〇〇反対運動に勤しんだり、同調したりなわけですし。
私個人的には、シルバー左翼の皆さんにはやり甲斐の思い出を持たせて、最後の花火のうちに逝ってもらうまで持ち堪えたい、この社会が持ち堪えてほしい、できるだろうか?としょっちゅう考えます。
一方我々日本人の多くには、静かに参加したり去ったりすることで、声も態度も控えめだけれども確かな意思表示をする傾向もあり、これはある者たちに脅威を与えること、もっと手間ひま掛けて意思を示す必要があること、両面ありますね。
正しく怒るためには、正しい情報、ありのままの情報、根拠と内容がより正確に更新された情報が必要ですが、それらは不足しているどころか、提供される情報には間違い、客観と主観の混同、誤訳、過不足などがあり、日々専門家やネット上の集合知によって根拠を持って指摘解説される現実を、我々はそれすら客観性を以て見ながら上手に楽しく利用して、メリハリつけた意思表示をしたいと考えます。
拉致問題は今や誰もが知るところですが、陰謀論に塗れた声や紙面で叫ぶ連中が、他国に来て人を攫うような国のことにはおとなしいのを見ても十分「疑惑は深まっている」と思える通り、宗教だけでなくメディア、政党、政治家、社会運動から出版、物販通販、観光、遊興、興行などなど、我々の社会にどれだけ北朝鮮が入り込んでいるか、我々が払った金がどう流れているか、それを知りたいのですが、自称社会の木鐸マスメディアさんたちは、やれんのですかね。
そういえば思い出した、観光関連で沖縄にも接点があったマダム朴、朴敬允さんていたっけなぁ。
今どうしてるか知らんけど。
投稿: 宜野湾より | 2022年10月 7日 (金) 13時11分
「北朝鮮が発射したミサイルは日本列島を飛び越えたものの、領空侵犯をしていない」とか、発射の意図については「正恩はロシアの劣勢とプーチン後の露・朝関係を憂慮していて、自分がチャウシェスクのようになる事を恐れているから」など言う言論が多くあり、それらは事実として正しかったり、専門家による合理的な推論であったりします。
けれど、何か違う。
その「何か」とは、日本自身がそれに対し何をすべきか?が問われている時に、日本としてどう対処すべきが有効か?こそが一般に議論されるべきなのに、最も重要な事は他人まかせの気配しかありません。
先島では国がシェルター設置を考えていて、それに反対する勢力があります。その理由は「戦争を誘発する事になるから」だそうで、その転倒した理論の馬鹿々々しさは火を見るより明らかで、ほとんどの人たちはそれは分かっています。しかし、その種の声高な少数者たちに担がれた知事が、これを突破して設置に前向きになる事は考えづらく、少なくも途方もない時間が浪費される事でしょう。
この事の日本外交に及ぼす影響は計り知れませんし、また、そういう意図を持った運動である事もあきらかです。
国連安保理改革の必要性を岸総理は言うわけですが、台湾をオブザーバ参加させないWHOだけじゃなく、世界銀行が「ロシアの景気動向は上向きである」などと恬然として誤謬をまき散らすように、国際機関のほとんどが機能不全に陥っています。
こういう問題に対処すべく日本こそが分担して汗を流すべきですが、日本人は主体性も共同性も失って久しく、せいぜいが米国にしがみついて安心している所の政治家しかいないのが現状です。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年10月 7日 (金) 17時06分
私は、日本国民は怒ってはイケナイ派ですわ。誠に残念ながら、日本国民の怒りほどアテにならないものはないと、ついこの前に思い知らされたばかりなもんで。
前記事で管理人さんが書いていたように、先の安倍元首相の射殺事件で多数の日本人の怒りがテロに向かわずに一宗教団体の非難に集中するばかりで、アベガーの皆さんに至っては「アベの自業自得だ、アベが悪い」と怒っている様子で、もうワヤですわ。
私も、日本が核武装するのがベストだと思って来ました。次点が、米国などと核兵器の共有をすること。平和ケンポーやヒカク原則とやらから射つ遺憾砲なんてまったく効きませんわ、国内向けのガス抜きにもならずに逆にイライラしてきます、世の中ナメてますわ。
残念なことに日本の世論というのは、昼のワイドショーなど、マスゴミが誘導というか、視聴率稼ぎのために大衆の隠れた願望(浮世のウサ晴らし)に沿って制作された番組の影響があまりに大きいと思われます。不特定多数の一時の感情や気分からの怒りなんて、いったい何処へ向かうのか、そりゃ全然分ったもんじゃないですわ。
日本本土にミサイルが落ちても、今だコロナをマジ恐してる報道体制じゃ、「うわぁ、何人も死んじゃったぞ! 中共や北朝鮮の言うことをよく聞いていれば彼らも日本に向けて発射しなかったのだ、大切なのは聞く力だ!」 「誰だ、核武装をしろって言う奴は! トンデモナイ野郎だ」、とかいう世論が大勢を占めそうですわ。
世論形成はもう情報戦でもあるのに、それに日本の報道機関が機能してないなんて、もう酷過ぎますわ。日本でテレビジョン放送が始まり、「これで大衆も多くの情報を得られて聡明な国民が増える」と言われた時に、「一億総白○だ」と言った人、あなたは偉かった。
投稿: アホンダラ1号 | 2022年10月 8日 (土) 00時32分