ウクライナがミサイル攻撃に耐えられたのはシェルターのおかげです
なにもやっていないようですが、岸田政権もあるていどのことは進めています。
昨日みたトマホークもそうですし、シェルターを全国に作るということを浜田防衛大臣が言っています。
「浜田靖一防衛相は26日、産経新聞の単独インタビューに応じ、他国からミサイル攻撃などを受けた際に国民を保護する緊急一時避難施設(シェルター)の整備について、「(必要経費の)積み上げの中で思い切って取り組むことは重要だ。年末に向けた議論の中で強く言っていきたい」と述べ、シェルター整備を所管する内閣官房だけでなく、防衛省も含めた政府全体で検討する考えを示した。政府は年末までに国家安全保障戦略など「安保3文書」を改定し、防衛力の抜本的強化を目指しており、防衛省は自衛隊施設の活用も念頭に検討を進める。
浜田氏はシェルターや自衛隊施設の整備について「(予算不足のため)計画を立てて少しずつ対応してきたが、それでは遅い」と指摘。その上で、「『(ミサイルを)撃っても(日本には身を守る設備が整備されているので)無駄だ』と(相手に)伝える広い意味での抑止手段とも考えられる」と説明した。防衛省は令和5年度当初予算の概算要求で、老朽化した庁舎や隊舎の整備や司令部の地下化などを進める方針で、地下施設のシェルター活用を進める内閣官房とも連携する」
(産経10月26日)
防衛省、シェルター整備検討 浜田靖一防衛相インタビュー - 産経ニュース (sankei.com)
けっこうなことです。
遅まきながら政府も、「反撃能力」(対抗抑止能力)とシェルターがワンセットだということに気がついたようです。
ウクライナがあれだけのミサイル攻撃を受けながら、どうして耐えられるのか考えたことがおありでしょうか。
下の写真は、ウクライナ・ハリキウにある子供病院地下にあるシェルター施設です。
西日本新聞
ウクライナには、ソ連時代に作られた核シェルターが多数存在します。
大規模なものは、工場、行政機関、公共施設の地下深くに造られており、大都市の地下鉄駅は初めから市民のシェルターとして建設されています。
小規模なものは、学校、病院にも備えることが義務づけられてています。
住宅地に砲撃、ICCが戦争犯罪の捜査開始 初の都市制圧 ウクライナ侵攻7日目 - BBCニュース
上の写真は、今年3月2日に撮影された、キーウ・ドロホジチ地下鉄駅の避難風景です。
この地下鉄駅シェルターは、深さ105.5メートルと世界でもっとも深い駅として造られていました。
たまたま大深度の地下鉄駅があるからシェルターに利用したのではなく、初めからシェルターにも使う設計でした。
これらのシェルターには、爆風や有害ガス、核物質から身を守る 換気装置 が付けられており、3日間分の食糧・飲料水は、燃料の備蓄も備えられています。
マウリポリの激戦場で、最後にウクライナ軍が立て籠もったアゾフスタン製鉄所など工場型シェルターの典型例で、地下6階にも及ぶシェルターを備えた地下要塞のような威容を見せていました。食堂、リクレーション施設まであり、外界と複数のトンネルで連絡しています。
マリウポリのアゾブスタル工場 - 9GAG
アゾフスタリ要塞陥落せず: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
同様のシェルターは、人口20万人程度の中都市で数十から100箇所、大都市で数百から1000カ所存在していると言われています。
冷戦後の緊張緩和で、多くのシェルターが倉庫になってしまったようですが、それでも相当数のシェルターが残り、今回のウクライナ戦争で整備され直して復活したと考えられています。
よくひと頃の日本の脳味噌が薄い人士が「逃げろ。降伏するのがもっともいい」と馬鹿騒ぎしていましたが、どっこい当のウクライナ人は、いかにロシアからミサイル攻撃を雨あられと受けても、このシェルターでじっと耐えていたのです。
ですからミサイル攻撃を受けた場合、徒に表で逃げまどうよりも、とどまってシェルターに保護されていたほうがはるかに安全なのです。
スイスやフィンランドなども核シェルターを持っています。
スイスなどは国民の7割を収容する大規模なシェルターを持つことが、法律で定められています。
ウクライナがロシアのミサイル攻撃を耐えられたひとつの理由は、このシェルターの普及にあることをお忘れなく。
ロシア軍の「報復」続く、連日のミサイル攻撃…ウクライナほぼ全土で空襲警報 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
残念ながら、わが国にはシェルターはひとつも存在しません。
日本は世界唯一の被爆国ありながら、ロシア、中国、北朝鮮という敵対的核保有国に囲まれています。
それにもかかわらず、日本の核シェルターの普及率は、わずか0.02%というゼロに等しい普及率です。
ちなみに、スイスやイスラエルが100%、ノルウェーも98%と高く米国もそれに近い普及率ですが、わが国は「戦争のことを考えると戦争になる」「戦争に備えると、軍国主義が復活して侵略を始める」「平和を祈れば平和になる」するという不思議な迷信がはびこっていたために、政府も波風を立てたくないとばかりに知らんぷりをしていたようです。
【世界でニーズ高まる核シェルター 】ゼネコンの開発力に期待/ 核シェルター普及協会代表 深月ユリア氏 | 建設通信新聞Digital (kensetsunews.com)
ですから日本には、シェルターは大都市はおろか、政府施設、自衛隊の基地にすらありません。
首相官邸地下2階の危機管理センター、防衛省の中央指令指揮所、総務省消防庁、警察庁にもシェルターはないようです。
作戦機の大部分は、三沢を除いて普通の格納庫に入れられており、海自の基地にもシェルターは備えられていませんから、わが国が先制攻撃を受けた場合、ほぼ数十分間で戦力の相当部分を喪失し、「反撃能力」をかろじて保持できるのはたまたま海上いた艦艇と水中の潜水艦のみとなることでしょう。
5年ほど前に東京都が「極秘で」地下鉄駅105か所を避難施設として指定したとメディアに報じられましたが、「戦争準備」だといわれるのを恐れてか進展は見られていないようです。
2022年5月の東京都のお知らせです。
国民保護法に基づく緊急一時避難施設の指定|東京都 (tokyo.lg.jp)
●国民保護法に基づく緊急一時避難施設の指定について
このたび、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第148条第1項の規定に基づき、緊急一時避難施設【注】を下記のとおり指定いたしましたので、お知らせいたします。
【注】緊急一時避難施設とは、ミサイル攻撃等の爆風などから直接の被害を軽減するための一時的(1~2時間程度)な避難施設であり、既存のコンクリート造り等の堅ろうな建築物や地下施設(地下街、地下駅舎、地下道等)を想定しています。
地下駅舎 105施設(都営地下鉄55施設、東京メトロ50施設)
地下道 4施設
東京には、大江戸線の六本木駅、東中野駅、千代田線国会議事堂前駅などは地下40メートル前後の大深度を持つ地下鉄駅がありますが、もちろん通信施設、居住空間、医療設備、食料・飲料水の備蓄、発電施設などといったシェルター施設は備えていませんから、一時的避難場所としては使えますが、有事には気休めていどの役にしかたちません。
この東京都の「お知らせ」は、Jアラートを鳴らしただけで、「政府は戦争準備をしている」と騒ぐ野党がいる国では真剣な議論の対象になりませんでした。
まことにのどかな国であります。日本人は、平和と安全がタダだと思っているようです。
一方、右の人たちも独自核武装を唱えるのはいいのですが、こちらにシェルターのひとつもない国が核武装してどうなるんだ、という根本矛盾に気がついていないようです。まずはそこからでしょうに。
直近でシェルターが必要なのは、台湾有事において完全に戦域にかかってしまう与那国と宮古島です。
これらの地域に、避難シェルターはおろか避難計画すらないことは、先日の記事でも書きました。
与那国町長は採算に渡って、デニー知事に訴えてきました。
それは国民保護法における武力攻撃事態において、自治体が主体となって避難計画を策定して避難させるようなたて付けになっているからです。デニー氏はもちろんなにもしません。
彼は「戦争に備えると戦争になる」、というわが国にしか存在しない珍しい宗派だからです。
玉城知事、現状を確認 与那国視察2日目 港や製氷施設など | (yaeyama-nippo.co.jp)
知事が避難計画の無視をきめこんだため、業をにやした糸数町長が直接国に問い合わせたところ返ってきた答えがなんと「県を通してくれ」とのことで、国もまた腰が重かったのです。
このような今までおざなりにされてきた国民保護を、ウクライナ戦争を契機にもう一回見直してみるべきでしょう。
どちらが先というより、本来ワンセットで進行させるべきことなのです。
しかし現時点では「自衛隊設備」に限られるようなので、過剰な期待をしないほうがいいようです。
ウクライナがくびきを断つ日 譲れぬ自立、国民一丸: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ウクライナに平和と独立を
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上のグラフ、韓国が300パーセントというのは恐らく計測ミス(勘違いで水増ししてる)だろうとJSF氏が書いていたかと思います。
日本がほぼゼロという悲惨な現実は、何も変わりませんが一応。
投稿: ねこねこ | 2022年11月 1日 (火) 08時26分
琉球新報の社説では「戦争が始まってしまえば、住民を守る事は不可能で、シェルターに避難する時間もあるまい」としてシェルター建設に反対の論陣を張っています。が、一人でも多くの住民の命を救う事を考えるならば、シェルター建設はとても有用な手段である事を本記事はウクライナという実例から示しています。
琉球新報は「抑止力を持ち出して軍拡競争などしても無駄で、外交力をみがくべき」とも言っており、しかし、これも本末転倒な議論です。
すでに外交で処理出来ないほど狂った中共を相手するにおいて、そのまた危険な武力侵攻を厭わないのが習独裁政権であり、やむなく物理的に住民を守る対処をせずにおれなくなった、というのが現在地。
それとも、「いかな難題を吹っ掛けられても中共の言う事をすべて聞き入れるべき」と考えるなら、琉球新報の意見も筋が通ったものとなるのでしょうが。
また、ノーモア沖縄戦の会なる団体は、「沖縄が戦場になる事を前提とした計画で、県民が多数犠牲になった沖縄戦をほうふつとさせる」などと言ってシェルター建設に反対しています。
この種の団体に付き物の詭弁ぶりと感情論を組み合わせた論調は議論に値する価値すらありませんが、シェルターに関するウクライナでの有用性の事実は変えられません。
こういう方々が考える思考とはつまり、「シェルターを建設することで、政府はむしろ安心して戦争を行う事ができるようになる」と言いたいワケで、常のごとく反政府運動の一貫のようなものに過ぎません。
しかし、こういう連中の言う事を聞いて命を落とすのは、私はまだ御免なので、政府は早急にシェルター建設を進めてもらいたいと願っています。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年11月 1日 (火) 08時27分
一言でシェルター整備といっても
その造成費用・維持管理費用とかの予算策定のゴタゴタ
だけでも5年くらい大騒ぎしそうですね
早晩台湾有事には間に合わないでしょう。
でも整備するという方向性には賛成です。
また、有事には
自衛隊の絶対数が足りないので民間人に初歩的な軍事訓練を行う組織を47都道府県に設置するくらい事態は
切迫してると思いますね。
でも統一教会のほうが大事みたいですね。日本国民は・・
投稿: ぐろっぷす | 2022年11月 1日 (火) 11時01分
「日本は防衛費を3倍に」でお馴染みのエルブリッジ・コルビー元アメリカ国防副次官補は、「日本は中国軍に関心がないかもしれないが、中国軍の方は日本に関心がある」「中国は日本を併合したいとは考えていないだろうが、自国のアジア覇権の下に置きたいと考えていることは妥当な想定」(10月22日Wedge)と述べ、「準備ができていることが中共との戦争を避ける最良のやり方」(8月10日Foreign Affairs)としていて、一昨日もTwitterで、「対中経済戦争/制裁は台湾防衛戦略においては2次的なこと、アメリカは第一列島線における軍事的優位の確保に集中し、ヨーロッパの同盟国は通常の自国防衛に主たる責任を負い、日本は防衛力を大幅に強化する」と提案しています。
こういう現実的で具体的な話で我が国政府も議会もメディアも議論できないのが哀しいと考えます。
有料記事ですが28日の日経新聞によれば、アメリカ国防総省がバイデン政権に対して、同盟国からの意見を集めた上で、軍縮に傾斜しないようクギを刺したとのこと。
また同じく31日の日経新聞によれば、日経欧州総局長の取材に対してドイツのシュタインマイヤー連邦大統領は、アジアの安全保障体制にドイツが「本気で関与」すると強調し、ドイツ軍のアジア派遣を「続けるべき」と明言したとのこと。
またまた日経ですが、ウクライナへの侵略を非難せずにロシアと良好な関係を維持する中共への中・東欧諸国の反発を、秋田浩之記者が伝えています。
好きな場合にだけ出羽守になる人たちや、良い話し方は何ひとつ思いつかないがとにかく話し合えという人たちには、アメリカとその同盟国やその他諸国のこのような現実の意識には、付いていく気は全く無さそうですね。
よって放置で情勢に影響なし、勉強しながら先へ進もう日本。
投稿: 宜野湾より | 2022年11月 1日 (火) 17時15分
今日の記事に賛成です。まず、宮古・八重山にシェルターを構築すべきでしょうね。自衛隊基地から始めたいところですが、民間と同時に工事を進めるほうが大方の賛成は得やすいでしょうね。
沖縄戦において日本軍は米軍の猛烈な空爆、砲撃を受けましたが、日本軍は、空爆や砲撃で直接に殺傷されたよりも、防空壕から出ての戦闘によって多くが戦死したと言われております。防空壕というのはそれほどに防御力が強いということなんでしょう。シェルター論は正しいのでしょう。
シェルターを作ると戦争になるという論理は受け入れられません。万全の備えがすぐにできるわけではありませんが、まずはそこから始めましょう。
投稿: ueyonabaru | 2022年11月 1日 (火) 20時47分
広島で原爆が投下されたとき、爆心地近くの学校は、げた箱が地下室にあって、たまたま遅刻した児童が生き残れたといいますが、地下にいるだけでも生存の可能性が高くなります。
投稿: アミ | 2022年11月 1日 (火) 23時04分