とうとう北朝鮮に泣きついたロシア
先月、北朝鮮が水中発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験をしました。
北朝鮮の弁。
「9月25日に実施したのは、戦術核弾頭の搭載を模した弾道ミサイル発射訓練で、貯水池の水中から発射した、とも伝えた。一般に戦術核とは、敵国の軍事施設や大都市などを攻撃する「戦略核兵器」に対し、敵軍の陣地など軍事目標を爆撃する核兵器を指す。朝鮮中央通信の記事には「戦術核運用部隊」について詳しい説明はないが、核弾頭を搭載可能な弾道ミサイルを運用する部隊とみられ、中・短距離弾道ミサイルの実戦配備を示唆する内容だ。同通信が配信した写真も参考に、韓国の専門家は、計12発のうち、11発は短距離弾道ミサイルで、ロシア製の「イスカンデル」に似た「KN23」や、米国製「ATACMS(エイタクムス)」に似た「KN24」、北朝鮮が「超大型放射砲」(ロケット砲)と呼ぶミサイル「KN25」と分析する」
(朝日10月10日)
「核攻撃能力の警告」と金総書記 戦術核運用部隊の訓練を指導と報道:朝日新聞デジタル (asahi.com)
北朝鮮がダム湖からSLBMを水中発射していたことが判明(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
朝日によれば、なんでも米国の日本海への空母打撃群の派遣や米韓合同軍事演習への警告だとしていますが、そんなことはあたりまえというか、なにを今さらの話です。
もうこのような記念日だからどーした、米国がこーしたから撃った撃たないというレベルの話ではありません。
北は虎視眈々と「核大国」の道を歩んでおり、ウクライナに手一杯の今こそミサイル実験と核実験も済ましてしまおうとしているだけのことです。
何度も書いていますが、おそらく年内には核実験を済まして核の小型化を完了し、現実にICBMと戦術核の実戦部隊への配備を済ませることでしょう。
それにしても静かな湖から突如飛び出すミサイルですか、シュールな風景ですな。ゾっとします。
初めて見ました。
「なお北朝鮮の公式発表文をよく読むと、ダム湖の水中発射場は試験発射設備ではなく実戦用の設備である可能性があります。公式発表文には「訓練の目的は戦術核弾頭の搬出および運搬、作戦時の迅速かつ安全な運用…」という表現で、試験発射を匂わせる内容が無く、実戦に即した内容の訓練になっています。これが実戦用の設備だとすると、世界初のダム湖に固定配備されたSLBMになります」
(JSF 10月10日)
北朝鮮がダム湖からSLBMを水中発射していたことが判明(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
たぶん水中に発射サイロを設置して、そこから発射したようです。
一朝一夕に潜水艦発射弾道ミサイルは実用化するのは困難でも(モノになる潜水艦づくりは大変ですからね)、沿岸の水中にこのような発射サイロを定置しておくことでも考えているのかもしれません。
これはすでに設置型機雷で実用化されている技術ですが、案外潜水艦と違って探知が困難で、しかも生存性が高いかもしれません。
発射された弾種はKN-23・SLBM型と9月28日のKN-23拡大型で、共にロシア原産のイスカンダルをコピーした短距離弾道ミサイルです。
イスカンダルは、ウクライナ戦争で、在庫僅少になるほど撃ちまくって悪名を轟かせているものです。
ただお気の毒にも、ロシア軍はGPSが使えなくなっているようなので、たいした効果は上がっていないようですが民間人虐殺には貢献しています。
今回のウクライナ全土攻撃にも使われたようですが、精密誘導できないミサイルはただの空飛ぶバクダンにすぎないんですよね。
それはさておきこのコリアン・イスカンダルの射程は短くてせいぜい600キロですから、韓国攻撃用だと考えられます。
北朝鮮が新型SLBMを公開、イスカンデル型に酷似(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
このコリアン・イスカンダルは日本には到達しません。
到達させるには日本海のど真ん中にまで発射台を引っ張ってこなければなりません。
気張って潜水艦発射式を開発しても、日本の潜水艦探知技術をもってすれば、隠しとおすのはそうとうに困難かと。
ですから日本には、従来どおり地上発射型のノドンを、移動式発射台(TEL)で撃つつもりでしょう。
さてやや旧聞になりますが、ロシアが恥も外聞もなくいままで見下していた北朝鮮に支援を要請したようです。ああ、恥ずかしい。
西岡力氏によれば、今年3月に打診があったようです。
「ロシアのショイグ国防相が北京で北朝鮮人民軍幹部と秘密会談をしたことを思い出した。ショイグ国防相は訪朝を希望したが、コロナウィルス問題で外国人の入国を拒んでいる北朝鮮が北京での会談を逆提案したという。会談でショイグ国防相は北朝鮮に特殊部隊の派兵やミサイルとその部品の提供を要請し、北朝鮮は検討すると答えた。北朝鮮の金正恩総書記はロシア軍が予想に反して弱いのを目にして、ロシアを全面的に支持すると表明しつつ、戦争への介入を避けるという方針を決めた、と当時情報筋から聞いた」
(西岡力『北朝鮮の対露支援の内幕』2022年9月12日 国家基本問題研究所)
【第963回】北朝鮮の対露支援の内幕 « 今週の直言 « 公益財団法人 国家基本問題研究所 (jinf.jp)
西岡氏によれば、このロシアの要請に対して、北は特殊部隊を労働者に偽装してドンバスなど東部2州に派遣して復興工事にあたらせることを考えたようです。
普段は土木作業をして、いざとなれば戦闘にも参加可能な部隊派遣です。
わが国がカンボジアPKOで施設部隊を送った故事に似ているので苦笑します。
表面的には軍事的支援はしないというそぶりで、実は水面下でしていた、ということです。
おいおい、プーチン、こんな地上戦闘のイロハのイの武器が足りないのかよ、と思います。
まぁ防寒着なし、メシなし、軍歌なし、銃はオンボロ、ついでに訓練なしで地獄のウクライナ戦線に徴集兵を突っ込んでいるんですから、迫撃砲弾くらいなくてもなんのことあらん、でしょうか。
「米政府は、ウクライナ戦争で苦戦するロシアが北朝鮮から数百万発のロケット砲や迫撃砲の砲弾を輸入するための協議の過程にあると明らかにした。国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が9月6日の記者会見で述べた。すでに輸入されたかどうかは未確認としている。また、ロシアは独立を宣言させたウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州で北朝鮮労働者を使う方針を決めた。フスヌリン副首相が既に北朝鮮に対して労働者派遣を要請したことを認めたという」
(東京新聞9月6日)
西岡氏は、このロシア支援の見返りとして残留している北の労働者の未払い賃金をドル建てでもらうことを要求したと見ています。
「ロシアは国連安保理制裁で受け入れを禁止されている北朝鮮労働者をいまも国内に残留させているが、ウクライナ戦争開始後、ロシア通貨ルーブルで支払われる賃金がドルと交換できなくなったため、北朝鮮当局が困っているという情報を得ていた」
(西岡前掲)
これらの北の出稼ぎ労働者は、国連などによると、中国やロシアなど29カ国に約10万人が派遣され、年間約5億ドル(約540億円)を稼ぐ重要な財源です。
ロシアでは森林伐採や養豚場で働いており、本来なら19年に国連制裁を受けて帰還させねばなりませんでしたが、ロシアはこれを無視して残留させています。
※参考過酷なノルマ、ルーブル下落…ロシアの厳しい環境にも耐えて働く北朝鮮の出稼ぎ労働者
そしてなんといっても、北は油が欲しいようです。
ただし、いまだ北とロシアの交渉はまとまっていないようです。
「金正恩の指令を受けて在モスクワ北朝鮮大使館の武官がロシア政府に対し、①ロケット砲と砲弾を提供する用意がある②特殊部隊を労働者に偽装してドンバス(東部2州)に派遣して復興工事にあたらせ、場合によっては戦闘参加もさせる③代価として、ルーブルではなく、ドルか石油(原油でなくガソリンなど精製済みのもの)か食料が欲しい―という提案を行ったという。現在、協議が進行中で最終結論は出ていない」
(西岡前掲)
プーチンは戦争をまったく止める気はないようですが、周辺国の悪魔の下回り連中はそろそろ止めにして欲しい、これ以上巻きこまないでくれよ、と思っているようです。
ロシア兵を待つのは「死のみ」 ウクライナ兵、疲弊も前進誓う(AFP=時事) - Yahoo!ニュース
ウクライナに平和と独立を
« ありがとうウクライナ!北方領土を日本領土だと決議 | トップページ | プーチン、なにをやっても裏目となる »
コメント