ありがとうウクライナ!北方領土を日本領土だと決議
ウクライナ議会がわが国の北方領土について、圧倒的多数で日本の立場を支持する決議をしました。
おそらく外国議会が北方領土で日本支持を決議したのは、今回が初めてのはずです。
ありがとう、ウクライナ!
「ウクライナ最高会議(国会)は7日、北方領土問題において日本の立場への支持を表明した上で、国際社会に対して、北方領土の地位問題の解決を支持するよう呼びかける決議を採択した。
ジェレズニャク最高会議野党「声党」議員がテレグラム・チャンネルにて報告した。
ジェレズニャク氏は、「議会は、2つの国際社会への呼びかけを採択した。(1つは)第8108、日本の北方領土に関するもので、賛成は287だ」(編集注:過半数は226)と書き込んだ。(略)
また、同決議案提出議員団による決議採択の必要性を記した説明文には、ロシアの対ウクライナ全面的侵略により、主権国家の国境画定、独立国家の領土一体性への無条件尊重が国際社会の全ての構成員の然るべき共存にとっての基盤となっていることが確認されたと書かれている。
議員たちは、1945年8月から9月にかけてのソ連による北方領土の違法占領、その後の島民の追放、1956年の日ソ共同宣言における、ソ連の2島返還への同意を喚起した上で、「他方、ソ連の『継承国』としてのロシア連邦は、今も自らの義務を果たしていない」と指摘した。
今回の決議の目的と課題に関しては、説明文では、国際レベルにて、日本の主権領土への支持と1956年合意の実質的実現の加速の必要性に注意喚起をするものだと書かれている」
(ウクライナプラウダ10月9日)
ウクライナ国会、北方領土問題における日本の立場支持を表明 (ukrinform.jp)
※決議文はこちらから
『ウクライナ最高議会による日本の北方領土に関する国際社会へのアピールについて』
07.10.2022 No. 2662-IX
また、ゼレンスキーも7日、北方領土の日本の主権を尊重する」と述べました。
「【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は7日のビデオ演説で、北方領土に言及し「日本の主権と領土保全を尊重する」と述べた。大統領府は北方領土について日本の立場を支持するとの大統領令を公表した。ウクライナ最高会議(議会)も同日、同じ内容の決議を採択した」
(共同10月8日)
北方領土、日本の主権尊重 ゼレンスキー氏がビデオ演説(共同通信) - Yahoo!ニュース
共同の配信はたったこれだけで、おいおいウクライナではこれだけ大きく報じられているというのに、まったくもう。
遠方からこれだけ熱い連帯の議決をもらいながら、トーイツキョーカイのほうが重要のようです。
モノの軽重がわからない困った連中です。
なお、いまから2年前の2020年11月30日には、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使が」「ウクライナは日本の領土一体性を完全に支持しており、北方領土は不法な占拠であり、日本に返還されるべきである」と発言していますので、ウクライナ戦争以前からの一貫した態度が今回も確認されたわけです。
「北方領土は不法占拠、日本に返還されるべき」=ウクライナ大使 (ukrinform.jp)
「(2020年)11月30日、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使が日本記者クラブでの会見時に発言した。
記者から日露関係に関するコルスンスキー大使の考えをたずねると、コルスンスキー大使は、「何よりまず、言わせて頂きたいのは、私たちは日本の領土一体性を完全に支持しているということです。北方領土は不法な占拠であり、日本に返還されるべきです」と発言した。(略)
ロシアとの間で領土問題を抱えていることを喚起しつつ、アジアでは日本もロシアとの間で同様の問題を抱えており、ロシアはそのような政策を意図的に利用しているとの見方を示した。
また大使は、クリミア問題も北方領土問題も必ず終わると確信しているとしつつ、日本にもクリミア・プラットフォームに参加してもらえたらありがたいと思っていると発言した。
その他、大使は、「全ての問題は相互に繋がっている」と述べ、前述の領土問題は「ロシアが世界をどう見ているかの反映である」と指摘した。その上で、日本とウクライナの領土一体性の回復という共通のゴールは両国を連帯させるものだと考えていると発言した」
(ウクライナフォーラム2022年10月9日)
日本は、これに答えてクリミア・プラットフォームに加盟しています。
クリミア・プラットフォーム - Wikipedia
さてここでウクライナ議会決議は「独立と領土の一体性」を強く訴えていることに留意してください。
独立国が独立国であるための最大の条件は、領土を保持する為に戦うことなのです。
いうまでもありませんが、この決議はその2日前の10月5日にプーチンが出したウクライナ4州の併合と、わが国の北方領土を重ね合わせています。
ウクライナ戦争と私たちが抱えもつ北方領土問題は通底していることを、ウクライナ側から教えてくれたのです。
プーチン大統領 ウクライナ4州を併合する調印式で署名(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
[モスクワ 5日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は5日、ウクライナ東・南部4州の併合手続きを完了した。併合される地域はウクライナの国土の18%程度を占め、ロシアにとっては少なくとも過去半世紀で最大の領土拡大となる」
(ロイター10月5日)
ロシア、ウクライナ4州併合手続き完了 プーチン氏が法案署名 | Reuters
こういうロシアの違法な領土拡大を無効化するには、ウクライナ支援だけではダメです。
支援する国も、また戦わなくてはなりません。
日本が北方領土交渉をするには、こういう自らも戦おうとする国際社会の支持が大きな力を持つのです。
日本の北方領土交渉は、国際社会の世論を味方につけるということをヌキに進められてきました。
この欠点は慰安婦問題もも通じることで、韓国に国際社会に嘘八百をイガンジル(いいふらす)されても、なすすべもないありさまでした。
日本対ロシアという二国間交渉でのみ進めたために、ロシアに下手に出て権益のエサをばらまくことが北方領土解決の近道だというような鈴木宗男や佐藤優のような北方領土屋を生み出しました。
安倍氏も、こと北方領土交渉においては根本的ミスをしていました。
ロシアは北方領土を返還する意志は毛頭ないのです。
そこを見誤ってきました。致命的失敗です。
2019年1月、ラブロフ外相は河野外相(当時)に会談の席上、愛想もこそもなくこう言ってのけています。
時事
「会談後、ラブロフ外相が単独で記者会見に臨み、北方領土におけるロシアの主権を認めるよう、日本側に改めて要求したことを明かした。
また、日本の法律で「北方領土」という文言が使われていることについて「受け入れられない」と反発したことや、平和条約について交渉を進めるにあたり、日本側が第2次世界大戦の結果をすべて認めることが必要だと伝えたという」(ハフィントンポスト2019年1月15日)
https://www.huffingtonpost.jp/2019/01/14/meeting-taro-kono-sergey-lavrov_a_23642564/
これがロシアのストレートな本音です。
ラブロフはこう言っています。「北方領土問題などというものはない。この諸島の主権はロシアにあり、日本はそれが第2次大戦の結果であることを認めよ」。
この意味するところは、「戦争の結果に従え」、もっと砕いて言えば、返してほしくば戦争するんだな、できはしまい、だから返さない、ということです。
ロシアという国は、建国の昔から一貫して、戦争で領土を拡げてきた国であることを思いだして下さい。
当時私も、このラブロフ発言を交渉にありがちな高めの球だと軽視してしまいました。
ラブロフは交渉というと必ず課題な要求を出して最後通牒めいたことを言うのが習いなので、また投げやがったと思ってしまったのです。
ところが、これは外交交渉上のレトリックではなく、まさにロシアの真意でした。
その証拠に、2020年にはとうとう憲法に「領土割譲禁止」を入れたくらいです。
ところが2021年になっても、佐藤優氏はこう述べています。
「ロシアのプーチン大統領は4日、昨年7月に改正された憲法に領土割譲を禁止する条項が盛り込まれたことを踏まえ、北方領土問題について「憲法を考慮しないといけない」と述べた。この条項が領土交渉に影響する可能性を認めた格好だ。一方で「(日本との)平和条約交渉を止めるべきだとは思わない」とも語り、交渉継続に意欲を示した」
(毎日 2021年6月11日佐藤優 『北方領土交渉に対するプーチン大統領の意欲』)
北方領土交渉に対するプーチン大統領の意欲 | | 佐藤優 | 毎日新聞「政治プレミア」 (mainichi.jp)
そして佐藤氏は、ロシアが懸念する米国の中距離ミサイル配備を日本が拒否し、4島に固執せずに2島返還で折り合うならば北方領土は返還されると説いています。
「プーチン氏は2000年の大統領就任直後、日ソ共同宣言の履行に前向きな姿勢を示したが、日本側が4島返還を求めたことに反発し、交渉が停滞した時期がある。
一方、「日露とも戦略的観点から平和条約締結に関心を持っている」とも強調。ただ、米軍による日本への中距離ミサイル配備の可能性には改めて懸念を表明した」
(佐藤前掲)
この2島返還論は、鈴木宗男なども盛んに提唱していたもので、この平和条約を進めつつ並行して経済開発で信頼醸成し、2島先行返還交渉を具体化していくという戦略ですが、安倍氏もこの影響を受けています。
当時、私もそれが現実的解決方法だと考えていました。
しかしこのロシアに歩み寄ったかに見える2島先行返還論ですら、幻想にすぎませんでした。
ロシアにはテンから北方領土を返還する気などなく、返してもいいというそぶりはフェイントにすぎず、その裏にはなにかの政治的意図が針のように隠されていました。
それは、日本を北方領土を餌に釣り出して日米同盟を分断させ、さらにはロシア制裁を緩めるように西側陣営に働きかけることです。
にもかかわらず、日本は北方領土交渉においてロシアに対して甘すぎました。
それにはいくつか理由があります。
ひとつには、ロシアが戦後処理を急いでいると考えていたことです。
ロシアにとって残された戦後処理は日本の北方領土交渉だけで、これか喉に刺さったトゲとなって日露平和条約は締結に至っていません。
ここで日本が考える「戦後処理」とは、あるべきものをあるべき者に返還すること以外にありません。
そもそも北方領土は、敗戦のどさくさに紛れて、ロシアの没義道な進攻によって奪われたわが国固有の領土だからです。
いわば「固有領土論」とでもいうべきものです。
ロシアが言っているのはそれと正反対に、「第2次大戦の結果をすべて認めよ」という「戦争結果論」の立場ですからかみ合うはずがありません。
彼らロシア人に言わせれば、第2次大戦の結果とは、今の戦後の国際秩序そのものであり、日本もその中で生きている以上、これを前提にするのが当然ではないか、というものです。
したがってロシアに言わせれば、「国境の変更」を言い出しているのは日本の側であり、ロシアは戦後秩序の守り手なのだというわけです。
プーチンはいくつもの餌を撒きました。
その最大の餌は、プーチンが2001年3月のイルクーツクでの首脳会談での「1956年宣言」の有効性を認め、その履行はロシアの義務だ」という発言です。
地球コラム】プーチン大統領、「2島マイナスα」が本音か:時事ドットコム
「(日ソ)共同宣言の有効性を、ロシア首脳で初めて公式に認めたのがプーチン大統領だ。2001年、イルクーツクでの日ロ首脳会談では声明で、平和条約の交渉プロセスの出発点となる基本的な法的文書と明記した。大統領は日ソの両議会が同宣言を批准したことを重視し、ソ連の継承国として「履行義務がある」と言及している。
ただし大統領は、歯舞、色丹の2島を「どのような条件で引き渡すかは明記していない」とクギも刺している。主権の問題を含めてすべて交渉次第というわけだ」
(日経 2016年10月19日)
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO08527230Z11C16A0EA1000/
この「1956年宣言」とは、鳩山一郎政権時にソ連と締結した宣言で、この時も領土問題で行き詰まっていました。
平和条約を締結するにはまず相互の領土を確定せねばならず、この部分でスッタモンダのあげく、宣言はこういうことで落ち着いています。
●日ソ共同宣言(1956年)
歯舞群島及び色丹島を除いては、領土問題につき日ソ間で意見が一致する見通しが立たず。そこで、平和条約に代えて、戦争状態の終了、外交関係の回復等を定めた日ソ共同宣言に署名した。
→平和条約締結交渉の継続に同意した。
→歯舞群島及び色丹島については、平和条約の締結後、日本に引き渡すことにつき同意した。
外務省『北方領土』
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/hoppo_rekishi.html
つまり、ソ連は日本と平和条約を締結された後に、歯舞・色丹を日本に引き渡す、ということです。
ですから、プーチンがこれは「1956年宣言はロシアの義務だ」とまで言ったということは、平和条約を締結すれば返すという意味以外に取りようががありません。
この理解に基づいて安倍氏はプーチンが危惧するトゲを抜いてやりさえすれば、北方領土は返還されると読んだのです。
このトゲとは、北方領土に在日米軍と中距離ミサイルなどを進駐させないことや、さらには民族主義者プーチンの国内への顔をどう立ててやるかということで、いずれも解決可能なことだと安倍氏は考えていたようです。
プーチン大統領が「シンゾー」と言わないワケ
結局は、この安倍氏の判断が誤っていたのはご承知のとおりです。
プーチンはいかなる妥協も拒みました。
「しかし、2004~05年を境にその発言内容は一変、以降は「南クリルが第二次大戦の結果正式にロシア領になったことは、国際法で認められており、これについて一切議論するつもりはない」、あるいは「1956年宣言には、島を引き渡すとしても、どこの国の主権が及ぶかは書かれていない」、「日本との間に領土問題は存在しない」などという、日本としては理解しがたいレトリックを繰り返し、一貫して強硬な姿勢を示してきた。
特にここ数年のプーチン大統領の発言は、どれも2000年代前半の時分とはかけ離れたものだ。それにもかかわらず、安倍政権は当時のプーチン氏の発言に引きずられてきた可能性が高い。シンガポール合意で、日本が1956年宣言まで下りる決断をしたのも、まさにプーチン氏が当時、1956年宣言の履行はロシアの義務と認めたという一点に、望みをつないだ結果だったと考えられる」
(吉岡 明子 2021年1月13日キャノングローバル研究所)
思えばこのプーチンを日本に呼んで開かれた日露首脳会談時は、すでにロシアの2014年のクリミア進攻が起きていたのです。
訪日に応じたプーチンの胸中にあったのは、2島返還などではなく、日本を西側陣営から領土交渉で釣り出すことだったようです。
まさに西側分断工作の一環だったのですが、安倍氏はそれに乗ったことになります。
日本は根本的に北方領土交渉のやり方を変えねばなりません。
それは北方領土交渉の開かれた国際化です。
なかでもロシアと領土問題を抱えているポーランドやバルト3国、そしてなんといっても侵略を受けている真っ最中のウクライナとガッチリ手を握らねば勝てません。
そういう声を背景に、共同して今回ウクライナ議会が提唱するように「国連やヨーロッパ議会などの国際機関も北方領土が日本の領土であると定めるための一貫した支援と行動をとるよう」訴えねばなりません。
ウクライナが作ったようなクリミア・プラットフォームと同じ性格の「北方領土プラットフォーム」を作り、相互にリンクして別に立って共に戦う仕組みが必要なのです。
これからはウクライナと領土問題でも共同して戦わねばなりません。
その意味からも、ウクライナ戦争は彼岸の火事ではないのです。
ウクライナに平和と独立を
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ウクライナ議員団5人が週末に来日するそうで···要は「日本の北方領土の主権を尊重します。でも今は自国がロシアに侵略されて大変なので助けて下さい!」という分かりやすいサインですわな。
宗男はこれに「迷惑だ」とか言って追い返すんでしょうか?そんな権利も権限もありませんね。もう隠居していい歳なんですから、いくらロシア利権を持っていてもカネは墓には持っていけませんしこれまで散々歳費以外でも溜め込んでるでしょうから、もう引退しなさい!と。
岸田総理はG7緊急リモート会談で完全にロシアを批判しました。当然「聞く力」を発揮してウクライナ議員団と対談されることでしょう。
法的枠組みの問題もありますけど、どこまで「共に闘う」姿勢を見せられるか···ある意味で踏み絵ですね。「心はウクライナの皆さんと共にある」なんてだけの寝ぼけた声明だったらガックシですわ。。
投稿: 山形 | 2022年10月13日 (木) 07時23分
案の定ムネオは「ありがた迷惑」などと言ってますね。コイツも支持者も、頭の中どうなってるんだか。
投稿: ねこねこ | 2022年10月13日 (木) 08時25分
来るロシアの敗戦と混乱は、我が国固有の領土でロシアが不法に占拠している北方領土返還への最大の機会です。
日本はこのチャンスを逃すべきではなく、ウクライナや欧州とともに北方領土返還について、もっと能動的に動くべきです。
ロシアが二度と立ち上がれないところまで追い込む事に躊躇すべきではないし、制裁以外にもそのための役割が日本にあると考えられます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年10月13日 (木) 19時12分
ホント、北方領土奪還のチャンスですわ。狂信的独裁者プーチンの野郎の自業自得でロシアがボロボロになりつつある現在、四島を占領されたままの日本がしっかりと勝ち組に名乗りを上げられるように、ここで戦略的仕込みをしておかない手はありません。
「ウクライナがロシアに四州強制併合されたんなら、俺たちゃもう長いあいだ四島を強奪されたままなんだよォ」と、NATO諸国に強烈にアピールしなきゃダメですわ。物知り顔したムネオやサトウなどの「お前らロシアのエージェントかぁ?」みたいな奴らは、もうお呼びじゃありません。
こんな時は野党各党こそ、「それ見ろ、日和見の自民党じゃダメなんだよ、俺らがNATOへ活動攻勢してやんよ、四島の返還を待ってな」なんて、万年文句タレ爺を卒業できるチャンスなんですわ。立民や共産はどだい無理として、維新や国民が国際政治に羽ばたく機にはもってこいです。
ロシアの敗戦がどういう形になるのか判りませんが、今回は日本の方がドサクサにまみれて四島をナニする番ですわ。でかいチャンスですわ、お見逃しなく!
投稿: アホンダラ1号 | 2022年10月13日 (木) 22時57分