バイデン、よく大敗しなかったものです
米国の中間選挙の投票は終わっていますが、まだ完全な結果は判明していません。
「【ワシントン=坂本一之、平田雄介】米中間選挙は9日、前日からの開票作業が続いた。全435議席が改選される下院では野党の共和党が200を超える選挙区で当選を確実にし、過半数(218)に向け議席を積み増した。上下両院とも民主党の善戦で予想以上の接戦となり、大勢判明が遅れている。民主党のバイデン大統領は9日、ホワイトハウスで記者会見し、共和党のシンボルカラーの赤にちなんだ「巨大なレッドウエーブ(赤い波)は起きなかった」と述べた。
米CNNテレビによると、9日午後8時(日本時間10日午前10時)現在、下院では共和党が207議席、民主党が187議席を得た。補選を含め35議席が改選される上院(定数100)は、非改選を含めた議席数で共和党が49、民主党が48となっている。
産経2022年11月10 日)
【米中間選挙】共和党 下院奪還へ議席積み増し バイデン氏「赤い波起きなかった」 - 産経ニュース (sankei.com)
アメリカ中間選挙、共和4年ぶり下院奪還の勢い 上院は接戦続く: 日本経済新聞 (nikkei.com)
●2022年米中間選挙
上院は与野党接戦、下院は野党・共和党がリード
勝利予測数は以下の通り(日本時間午後4時現在)
上院 :民主48、共和47
下院 :民主162、共和192
州知事選:民主20、共和24
米中間選挙の開票速報 - Bloomberg
バイデンが勝ったではなく、負けなかったということで、米国株式市場は大幅安となりました。
「【NQNニューヨーク=古江敦子】9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、前日比646ドル89セント(2.0%)安の3万2513ドル94セントで終えた。開票が続く米中間選挙は野党・共和党が下院で過半数を奪還する可能性が高いが、上院は接戦となっている。
上下両院で共和党が勝利すれば株高につながるとの期待が後退し、幅広い銘柄に売りが出た。
上院は複数の州で勝敗が読めず、民主党が過半数を維持する可能性がある。米メディアがジョージア州で決選投票になる可能性を報じ、そうなれば上院の議席確定は1カ月遅れる。下院でも民主党が予想以上に善戦しており、共和党は僅差での過半数獲得にとどまる見通しだ」
(日経11月10日)
米国株、ダウ反落し646ドル安 中間選挙後に株高期待が後退 ナスダックは年初来安値に迫る: 日本経済新聞 (nikkei.com)
そしてまた上院の結果は、ジョージア次第にかかってしまいました。
「(CNN) 米中間選挙のジョージア州の上院選は大接戦となり、CNNの予測によると12月6日に決選投票が行われる見通しだ。
開票の結果、今月8日の時点で民主党の現職ラファエル・ワーノック氏、共和党のハーシェル・ウォーカー氏のどちらも勝利に必要な50%の得票率には届かなかった。
ペンシルベニア、アリゾナ、ネバダ各州の結果次第では、上院での過半数獲得の行方がジョージア州の有権者の手で決まる可能性がある。
接戦は今年のジョージア州において、選挙ごとに異なる党へ投票する有権者が多く存在することを浮き彫りにした。CNNの予測によると、知事選では共和党のブライアン・ケンプ氏が民主党のステイシー・エイブラハム氏を大差で退けたが、上院選にその結果は反映されなかった 」
(2022年11月10日)
米中間選挙、ジョージア州上院選は来月6日に決選投票へ CNN予測 - CNN.co.jp
なんか2年前のVTRでも見ているような気分です。
逆にいえば、民主党は海岸沿いのよく米国人にあそこはアメリカじゃないと揶揄されるカリフォルニアやニューヨークなどを押えているにすぎません。
ただ都市部で人口が多いため、カリフォルニアが実に55、ニューヨークが29、この2州だけで84票も押えています。
民主党は全米を駆け回らなくても沿岸部だけで運動すればいいので、効率のよい勝ち方ができます。
前回大統領選で、不正選挙を訴えたテキサスが、なんと別の州を連邦最高裁に訴えましたが、それはミシンガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンと唯一の南軍地域であるジョージアでした。
テキサスを怒らせたのは、ジョージア州知事のブライアン・ケンプが見事に寝返り、部下の州務長官もいずれもリパブリカンだったにもかかわらず、トランプ降ろしを社是としていたCNNに「ワレワレは、ホワイトハウスと共和党から迫害されている」と訴える始末。
この前回大統領選と同時に行われた上院選でも、ジョージア州上院決戦投票で共和党は2議席ともに奪われ苦渋を飲みました。
ケンプはいまだに共和党員のようです。
テキサス州ペンシルベニア州など4州を提訴: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
ジョージアはとりあえず置くとして、全国状況としてはバイデンが言うように「赤い波はこなかった」と言ってよいでしょう。
事前予想では、共和党の大津波と共にトランプ復権だったはずですが、そうはいかなかったようです。
ウォールストリートジャーナルは皮肉っぽくこう書いています。
「米共和党の躍進を表す「赤い波」は来なかった。8日投開票の中間選挙の結果は、どちらかと言うとポタポタと水が垂れる感じに近かった」
(WSJ11月10日)
【寄稿】赤い波来ず、海にさまようトランプ氏 - WSJ
正直に言って、共和党は勝てる試合を落としたといったところでしょう。
バイデンの国内政治の失政は明らかでした。
まず極度のインフレによる生活難をおこしてしまったために、支持率40%という窮地に立っていました。
WSJによれば、7割の米国人が「この国は悪い方向に言っている」と答えているそうです。
強インフレを引き起こして、かつ、先が見えない生活の中で、選挙前の世論調査では、共和党の経済政策のほうがいいと答えた人のほうが民主党より14ボイント上回っていたようです。
米・日株、軟着陸見えた?米インフレ率9.1%に上昇も、原油・穀物は下落 | トウシル 楽天証券の投資情報メディア (rakuten-sec.net)
【アメリカ】「ランチ約2000円で安いと感じる…」消費者物価9.1%上昇…家計圧迫 - YouTube
今年8月のアメリカの大都市部の最新の物価はこのようです。
・マクドナルドのマックミールセット(コンボミール)10ドル(1359円)
・牛乳(1リットル)1.21ドル(164円)
・白パン(500グラム、1ローフ)3.99ドル(542円)
・米(1キロ)7.20ドル(978円)
・卵(12個入り)4.03ドル(548円)
・ローカルチーズ(1キロ)17.13ドル(2328円)
・鶏肉(モモフィレ肉、1キロ)16.44ドル(2234円)
・牛ひき肉(1キロ)20.25ドル(2752円)
インフレが進行するアメリカ・主要都市の物価はどうなっている? (j-seeds.jp)
また同時に産油国でありながら原油価格が約50%も上昇し、世界一の自動車社会である米国人を驚かせました。
ブルームバーク
「米国でのガソリン価格が再び最高値を更新した。夏季のドライブシーズンを迎えたドライバーにとっては新たな打撃だ。
全米自動車協会(AAA)のデータによると、平均小売価格は31日時点で1ガロン=4.622ドル。1カ月前は4.178ドルだった。1年前と比べると50%余り高くなっている」
(ブルームバーク2022年6月1日)
米ガソリン平均小売価格、再び過去最高-ガロン当たり4.622ドル - Bloomberg 。
ガソリン価格高騰の原因は、ロシア制裁の影響なども影響しているので、一概に言えませんが、脱炭素に傾きすぎた民主党のエネルギー政策にも原因はあるはずです。
米国ガソリン価格、過去最高値を更新 高騰が深刻(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース
このような経済混乱の原因は、バイデンが人気とりでやったコロナの経済対策として、札束を配りまくったことが原因でした。
バイデン政権は、トランプ政権下の2回のコロナ経済対策の給付金(1人当たり1200ドル、600ドル)に上乗せして、2021年3月に民主党のみで成立させた米国救済計画法に基づき、追加給付金を1人当たり1400ドルも支給しています。
米国救済計画法は、国民に大受けしたのですが、経済状況を見ないあまりに過剰な給付でした。
その経済的影響は大きく、もらったカネを個人消費に回してしまったために、需要が急増したにもかかわらず働き手がいないため労賃を過剰に上げてしまうことからコストプッシュ・インフレが生まれました。
これがいわゆる「バイデン・インフレ」の原因です。
「経済回復の進む中での1400ドルの追加給付金は、火に油を注ぐ行為でインフレを加速させた失策であったとの見方が有力だ。つまり、アメリカ経済を生産拡大に移行させる規模以上に政権は市場にお金を投入してしまったのだ。一部のエコノミストはそのギャップは対GDP比で約10%にのぼると算出している。追加給付金は短期的には国民に好評であったものの、中長期的には不人気なインフレをもたらしたようだ」
(渡辺亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長 2021年12月15日)
「バイデンフレーション」がアメリカ民主党を直撃 | アメリカ | 東洋経済オンライン
このバイデン・インフレを抑えために、FRBはたびたび政策金利の上昇をかけねばなりませんでした。
「米国連邦準備制度理事会(FRB)は11月1、2日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標3.00~3.25%を0.75ポイント引き上げ、3.75~4.00%とすることを決定した(添付資料図参照)。4会合連続で通常の3倍となる0.75ポイントの引き上げ幅となった。今回の決定は参加者12人の全会一致だった」
(JETROビジネス短針022年11月4日)
米FRB、政策金利を4会合連続で0.75ポイント引き上げ、金融引き締めの長期化を示唆(米国) | ビジネス短
その影響はドルの独歩高となって、米国の輸出を苦しめ、日本経済を未曾有の円安に導くという副産物も生み出してしまったのはご承知のとおりです。
つくづくバイデンは経済がわからない人物のようです。
また犯罪対策では、圧倒的に共和党支持が20ポイントも上回っています。
日本と比較すると、そもそも米国社会の犯罪の多さに驚きます。
日本の犯罪率は低い!: 殺人事件は人口10万人当たり0.2件 | nippon.com
ただでさえ犯罪が多い所に、民主党系首長がBLMの要求どおり警官数削減をしたのですから目も当てられません。
結果、このコロア禍で銃犯罪が急増しました。
治安は悪化し、警官の死亡も増えています。
今年2月4日、NYの中心街を数千人の正装した警官で埋めつくされました。NYの2名の若い警官の死を追悼するためでした。
これは実は葬儀の形をとった警官たちの抗議デモでした。
FNN
「しかし今回、若き警察官の殉職は、別の側面からも報じられた。それは米国で後を絶たない銃犯罪と治安の悪化を、多くの市民が不安に思っているからである。 FBIの調査によると、2020年は2000万丁を超える銃が販売された(推計)。2021年は少し減少したものの、この20年間で、2020年に次ぐ数字となっていて、2年間で4000万丁が販売されたことになる。
銃撃事件による死者(自殺を除く)も2万人を超えていて、こちらも2014年以降で最多だ。理由はさまざまあるが、やはり新型コロナウイルスによる社会不安で銃を買い求めた人が多いとされている。
モラさんの葬儀の様子を見に来たニューヨーク育ちの女性も、「パンデミック以降、銃犯罪が急激に増えた気がする。子どもたちに、“地下鉄やバスに乗るときは気をつけなさい”といわなくてはいけない。私の子どもの頃とは違う」とため息を漏らした」
FNN2022年2月4日 )
NY5番街を埋め尽くす数千人の警官・・・治安対策と「警察批判」に揺れる米国|FNNプライムオンライン
BLMの乱暴狼藉は、まだ米国人の記憶に生々しいはずです。
ミネアポリスにおける警官の黒人殺害事件をきっかけにしてBLM運動が爆発し、それはやがて極左アンティファによる暴動へとつながっていくことになります。
ブラック・ライヴズ・マターは、黒人の成人が彼らを最も助けたグループとして引用|ピュー研究所 (pewresearch.org)
全国各地の南軍の銅像が破壊され、これを容認したのはことごとく民主党系知事でした。
こののち猖獗をふるった、アンティファ暴動を幇助し続けたのもまた同様に民主党系首長たちです。
彼らは、BLMの要求どおり、「反動的な銅像」を撤去し、商店が略奪されても州兵の主導を拒み、むしろ警官には手加減しろと命じました。
極めつけは、シアトル市長のようにアンティファが警察署を含むキャピタルヒル一帯に「自治区」を作れば、「愛の夏が始まった」と歓喜の声を上げたほどです。
トランプ陽性判定とシアトル自治区の「愛の夏」の結末: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
シアトル・CHOP自治区の終焉と大坂なおみが立ち向かう世界 – ページ 2 – 集英社新書プラス (shueisha.co.jp)
しかしこのコンミューンはわずか一カ月で内部崩壊を起こします。
お定まりの略奪・暴行、そして黒人少年が殺害される事件まで起きたからです。
しかし、彼らの共犯者であるシアトル市長と州知事(これも民主党)は、なにひとつ責任を問われることがありませんでした。
島田洋一氏は、このように民主党系首長を批判しています。
「暴徒鎮圧のような、決して綺麗事ではいかない厳しい仕事は保守派に押し付け、自らは安全地帯から綺麗事を言うのがリベラル派の特徴である。評論家ならひたすら、「トランプが対立を煽っている」「力ではなく話し合いで」と嘯いていれば済む。
しかし警察や州兵を動かす権限と義務を与えられた市長や知事となれば、無政府内乱状態を避けるため、どこかの段階で動かざるを得ない。ところがその際にも、リベラル派内部で往々にして責任の押し付け合いが展開される。結果として、いたずらに対応が遅れる場合が多い。その典型を2020年のニューヨークに見ることができる」
(島田洋一2020年8月6日)
【島田洋一】BLMの現実:シアトル「自治区」の迷夢 - WiLL Online(ウィルオンライン) (web-willmagazine.com)
このような治安悪化にもかかわらず、民主党系首長はBLMの要求どおり警察官の削減を決めていったのですから、犯罪が増加して当然です。
このていたらくでよく大負けしなかったものだと思いますが、そのことについては次回に続けます。
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どっちかというと出しゃばり過ぎたトランプの自滅という感じですかね。大勝するはずだったのにやりすぎた失敗。奥さんにまで当たり散らしてるとか。。
投稿: 山形 | 2022年11月11日 (金) 06時12分
ロシアの国営放送がヘルソンから撤退したことについて中間選挙の結果が出るまで撤退を渋っていたと報道しましたね。
ロシアに甘いトランプやその取り巻きが選挙で勝って欲しいというロシアの願望がボロっと出てしまった形です。
投稿: 中華三振 | 2022年11月11日 (金) 10時06分
>奥さんにまで当たり散らしてるとか
それってフェイクじゃなかったですか?
投稿: KOBA | 2022年11月11日 (金) 10時33分
州によってまちまちですが、激戦州ほど選挙行政に問題が生じていますね。特にアリゾナ州マリコパ郡はひどい。またぞろ投票機が同時に十数か所も故障して、ついに投票を諦めて帰った人が十万人以上とか。
これが重要な点で事実なら、行政による重大な公民権侵害です。
こうした事の対策や再発に共和党は何ら対策を打って来なかった。共和党支持者の70%に及ぶ選挙不正への認識をないがしろにして来ました。
このような結果は逆にトランプを利するかも知れません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2022年11月11日 (金) 12時52分