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2022年11月 8日 (火)

核の対抗抑止について定見を持たないバイデン

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実のところ、バイデンは北の核開発には無関心でした。
10月12日、米国の「国家安全保障戦略」が公表されました。
バイデン政権は、2021年3月に暫定的な指針を発表して以来、正式な戦略発表は今回が初ですが、その中で北朝鮮にはほとんど触れられていません。
Biden-Harris Administration's National Security Strategy.pdf (whitehouse.gov)

内容的には新味はありません。
民主党左派の主張そのままに気候変動対策と脱炭素のエネルギー政策を強調し、いまや共和党との境がなくなった中国の台頭に警鐘を鳴らしているだけです。
結局、48ページにもわたる長文の戦略文書でありながら、同盟国との関係強化と米国のリーダーシップが重要と言うに止まりました。
こんなことは、あえて言わなくてもわかりきったことです。

かんじんのただいま現在、大量破壊兵器の開発に狂奔している北に対しては、「非核化への持続的対話」をする、などと寝ぼけたことを言っています。
これは今さら何もすることがない、という無力感の現れなのでしょうか。
それにしても、日本を標的とする中距離弾道ミサイルや、北米全域を射程に入れた大陸間弾道ミサイルは完成してしまっており、それに搭載する核弾頭の小型化、多弾頭化も終わっている北を相手に、いまさらなにを「対話」するというのでしょう。
今、米国がせねばならないのは「持続的対話」などではなく、NPTの原則に従って透明性,検証可能性,不可逆性の原則を速やかに受け入れることを強力に迫ることです。

・2015年NPT運用検討会議
[あらゆる種類の核兵器の更なる削減・将来的な核兵器削減交渉の多国間化]

5核兵器国の会合に留意
戦略・非戦略,配備・非配備,場所を問わず,多国間措置を含めた方法を通じて,透明で,不可逆かつ検証可能な方法で,すべての種類の核兵器の更なる削減及び廃絶を要請
2015年NPT運用検討会議:議長の最終文書案概要|外務省 (mofa.go.jp)

いったいバイデンは、この2年間なにをしてきたのか。

「一方、安保戦略の北朝鮮に関する言及は、核・ミサイル開発を抑止するための米国の選択肢は限られていると強調する部分のみにとどまった。ラッセル氏は、北朝鮮に関して実存的な脅威にほとんど触れておらず、北朝鮮が対話拒否の態度を鮮明にする中で「非核化への持続的対話を追求」する姿勢を示したことは意外だったとした」
(ロイター 2022年10月13日)
バイデン政権の国家安保戦略、中ロに照準 同盟国との協力強調 | ロイター (reuters.com)

これは2017年に出た、トランプ政権の国家安全保障戦略とは対照的です。
米国家安全保障戦略2017.12.pdf (suikoukai-jp.com)

共和党の国家安全保障戦略には、特に一項を設けて真正面から「大量破壊兵器の拡散阻止」を訴えています。

「拡大防止措置の強化
10 年以上の取り組みに基づき、我々は、大量破壊兵器とその関連物質の拡散、搬送システム、技術及び知識が敵の手に渡らないよう、それらを防ぎ、排除し、安全を確保する手段について論議してきた。我々は、国家及び非国家主体が大量破壊兵器の使用に対する責任があると考えている。
大量破壊兵器テロリストを攻撃標的に
我々は、大量破壊兵器スペシャリスト、投資家、管理者及び世話役などのテロリストに対するテロ対応作戦を指示し、同盟国及びパートナー国と協力してすべてを探知し、中断させる」

この戦略指針に従って、トランプは2018年シンガポールで、そして翌年19年にはハノイで、正恩と首脳会談を持っています。
まさに「持続的対話」を追及したわけです。

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史上初の米朝首脳会談、文書に署名 「北朝鮮との関係は大きく変わる」 - BBCニュース

一見無手勝流の思いつきに見えるトランプ流外交ですが、大きな国家戦略の枠組みを押さえた上でのパーフォーマンスだとわかります。
そして何度も強調しますが、北を非核化のためのテーブルに着かせたのは、トランプの前代未聞ともいえるほどの軍事的圧力の成果でした。

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米空母3隻が集結、日本海で軍事演習 - CNN.co.jp

トランプを大嫌いなCNNもこう書いています。

「西太平洋に空母3隻を集結させたことで、米国は核兵器と弾道ミサイルの開発を続ける北朝鮮に対し一歩も引くつもりはないとするメッセージを送ったとみられる」
(CNN2017年11月14日)

そのとおりです。「一歩も引かないメッセージ」こそが、北を「対話」のテーブルに着かせる唯一の方法なのです。
そのうえで微笑を浮かべて、北との「非核化への持続的対話」をすればよい。
この順番を間違っているのがバイデンです。
ニコニコ笑って手を差し伸べることだけが「外交」ではないのです。
対話を拒否する北を力ずくでもテーブルに着かせること、これこそが北に対して必要な「外交」です。

外交が得意とバイデンは言われているそうですが、ならば正恩を交渉のテーブルに着かせるなんらかの動きをしたのでしょうか。
いいえ、なにもしていません。口先でお定まりの非難をするだけで、自分の国民の頭上に落下してくる「火星」ミサイルを完成目前まで持ち込まれておきながら、スケジュールどおりの合同軍事演習で核搭載不可なB-1を飛ばしてお茶を濁しただけにすぎませんでした。

昨日触れましたが、バイデンは外交的メッセージの意味すら理解していないようです。
わかっていれば、3機種ある戦略爆撃機のうち唯一核搭載能力を持たないB-1を選んで派遣すれば、それがどのような意味になるのかちっとはわかりそうなものです。

バイデンは北の露骨な核の恫喝に対して、あらかじめ核による報復を選択肢から外してしまっていると表明したに等しいのです。
それはまるで今年2月のウクライナ侵攻直前の時の「あの一言」のように、です。
思い出していただきたい、今年ロシアがウクライナ国境に19万の大軍を集めて機をうかがっていた2月10日、バイデンがなにを言ったのか。

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【バイデン大統領】米軍のウクライナ派遣を否定「そうすれば世界大戦になる」 - YouTube

「バイデン米大統領は10日、ロシアがウクライナに侵攻した場合、同国内にとどまる米国民の退避のために米軍を派遣する考えはないと言明した。その理由として「米国とロシアが互いに発砲を始めれば世界戦争になる」と述べ、何らかの形で米露の衝突に発展するリスクを避ける考えを強調」
(産経2月11日)
バイデン氏、ウクライナ退避で「軍派遣しない」明言 - 産経ニュース (sankei.com)

この「世界戦争」とは、核戦争を意味します。
それをご丁寧に追いすがって来る記者に、「戦争をしたいのか」とまで捨てぜりふを吐いてしまいました。
2月24日、ゼレンスキーは、「ウクライナはいかなる安全保障同盟にも入っていません。だからウクライナ人の命の代償を以て自分たちを守るしかないのです」と叫んでいました。

彼の表情は悲痛に歪んで、ほとんど泣きそうな表情でした。
プーチンが待っていたのはバイデンのこの「米軍は派遣しない」というひとことでした。
このひとことこそ、バイデンがプーチンに向かって、「米国は止めません」というサインだったのです。

もう少し時系列を遡ると、その前年の9月に米国とNATOは、ラピッドトライデント21 」という6000人を動員した大演習をしています。
そしてウクライナに、ジャベリンも供与開始しています。
そしてこれに対応するかのように、プーチンはこの演習直後の10月末から11月にかけてウクライナ国境に10万の兵員を集結させ始めます。

バイデンがすべきは、ロシアの侵攻を阻止すべくウクライナに小規模でもいいから軍を派遣することでした。
それをした場合、プーチンが侵略をあきらめたかどうかは神のみぞ知るですが、すくなくとも安易な侵攻はありえなかったはずです。
しかし現実には、バイデンはここで日和見を決め込み、ウクライナを見捨てるのです。
しかもなにも言わなければ「軍の派遣」について含みが残ったものを、一言でその選択肢を切り捨てるのですからヘルプレスです。
米国の軍事介入については、その可能性を最後まで選択肢として残しておくべきであるのに、真っ先に排除してしまう、その腰の定まらなさがならず者国家をつけあがらせたのです。
それにまだこの人物は気がついていない、だから今回の北への対応のように何度も繰りかえしてしまうのです。

ウクライナが同盟国ではなかった、というのは言い訳にすぎません。
ウクライナは2017年以来、一貫してNATO加盟を申請し続けており、拒否された理由は東部2州の紛争が理由でしたが、これがロシアの仕掛けた侵略の布石であったことは、当時からわかりきったことでした。
しかし米国はかつてイラクのクウェート侵攻に対して大軍を送って支援しましたが、クウェートは同盟国ではないうえに紛争当事国だったはずです。
この論法でいえば、台湾は同盟国ではなく、かつ、侵攻してくるであろう国は世界有数の核大国ですから、「世界戦争になる」のではありませんか。

したがって台湾有事において、バイデンがウクライナと同様に「中国と米国が発砲すれば、世界戦争になる」とうそぶいて台湾を見捨てても、私はいささかも驚きません。
台湾支援についても威勢のいいことを言うと、その直後に閣僚から失言として修正されるありさまです。

結局、左派のペロシが先に一歩を踏み出してしまいました。
今回のことでもわかるように、バイデンは核兵器に対して明確なポリシーが欠落しています。

たとえばバイデンは来年度の国防予算から、もっとも強力な核の対抗抑止能力であるはずの、海上発射核巡航ミサイル(SLCM-N)の開発予算を全面的に削除してしまいました。

Missiletube

米海軍が潜水艦発射型の新型核巡航ミサイルの配備を検討 - ミリブロNews (militaryblog.jp)

「ところがバイデン政権は2023年度国防予算案で、2018年にトランプ政権が「核態勢見直し」の中で開発を決定した新型の海上発射核巡航ミサイル(SLCM-N)の開発予算を全面的に削除してしまった。
16日の中国共産党大会で習近平総書記が核戦力強化を示し、北朝鮮が「戦術核運用部隊の軍事訓練」と称するミサイル発射を連日のように行い、ロシアがウクライナ戦争で戦術核の使用をほのめかす中で、中露や北朝鮮の核を抑止できる切り札は米国のSLCM-Nである。それ故に、同盟国として日本の安全保障を考えればSLCM-Nの開発を取りやめたバイデン政権の拡大抑止意図に疑念を挟まざるを得ない。
米軍の現役軍人の中でも、マーク・ミリー統合参謀本部議長、チャールズ・リチャード戦略軍司令官、トッド・ウォルターズ欧州軍司令官らが、バイデン大統領のSLCM-N取りやめ決定に反対している」
(太田文雄10月29日)
言葉だけの核抑止重視であってはならない|太田文雄 | Hanadaプラス (hanada-plus.jp)

北朝鮮は、核施設や弾道ミサイル発射基地、司令部、正恩の隠れ家などを深深度に設置しています。
おそらく数十メートル地下に、コンクリートで固めて要塞化していると憶測されます。
米国にはバンカーバスターを保有していますが、確実に仕留めたいと思う中枢施設に対してはバンカーバスターでは役不足です。
地中貫通爆弾 - Wikipedia

そこで2018年、トランプ政権が「核態勢の見直し(NPR)で見直しをしたのは、まさにこの改良された新たな小型核を搭載した巡航ミサイルなのです。
その威力は通常弾頭とは比較になりませんし、地下核爆発なために地上を汚染することも避けられます。
そして、これは北朝鮮がいかなる方法で米国、同盟国を攻撃しようと、相応の覚悟をしておけという意味です。

このトランプ政権が掲げたNPRはこう述べています。
誰に対して言っているのか、考える必要はないでしょう。

https://admin.govexec.com/media/gbc/docs/pdfs_edit/2018_nuclear_posture_review_-_final_report.pdf


「したがって、現在そして将来的に潜在的な敵が米国、同盟国、およびパートナーを核兵器または通常兵器に攻撃、侵略しても、その目標を達成することができず耐え難い結果を招くという高いリスクを確実に負わせるような、柔軟な核戦力を確保することがアメリカに必要である」

正恩はこのトランプが送ったメッセージに背筋が薄ら寒くなったことでしょう。
これをバイデンはいとも簡単に覆しました。

このようなバイデンの姿勢は、今の米国与党民主党の決まらない内情を反映したものです。
左派とバイデンが属する中間派の溝が深く、ひとつにまとまれません。
日本の民主党政権もそうでしたが、民主党の両派にとって最大の敵は党内反対派なのですから、どうにもなりません。

そもそもバイデンが大統領候補になったのは、彼が明確な理念と政策を持ち合わせないグズグズの人物だったからで、ひとつにまとまれない民主党両派にとって「軽い神輿」だっただけのことです。
「決断と実行」が苦手なうちの国の首相に似ています。
こういう人物が、世界がもっとも危険な今の時期に合衆国大統領でいる不幸を世界の人々は味わっています。
バイデンが審判を受けるのは今日です。




 

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コメント

 >、ひとつにまとまれない民主党両派にとって「軽い神輿」だっただけのことです

 日米両民主党とも「似た者同士」だったのですね。

バイデン大統領の中間選挙前最後の訴え、メインは「石炭火力発電の廃止」とか「民主主義の存亡に関わる選挙」でした。聞いてすぐ、生活や経済や中絶問題などへの答えを今欲しているアメリカ国民ならば、肩をすくめるポーズshrugをしそうだなぁと思いました。
 他国民の政治選択をコントロールできると考える勢力もある中、私にはそれはできないので、考えはあれど見守るだけですが。
共和党の中にも'America First'に占める内向き成分増強の傾向はあり、4000万ドルのウクライナ支援策への反対票は、全員が上下院共和党議員だったとのこと。
BBCの記事によれば、10月のピュー・リサーチでウクライナ支援をし過ぎだと考えるアメリカ人は20%に増え、WSJの調査によれば、支援し過ぎと答えた共和党支持者は30%に大きく増えているとのこと。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6bea6df2506802474a620251a96a0207cf94c472

生活費の高騰や必需品の品不足に米国民が悩まされている2022年の現状では仕方なくもあり、ポピュリズムに走り易くもなります。
アメリカがヨーロッパに自衛能力の強化を求め、力を東アジアに傾けていくのか(であれば心強さがある一方で自分の勝手さが恥ずかしい気持ちもあります)、内政優先で米国民を安心させることに力を入れるのか。
他国へ注ぐ力と費用の配分、そのバランスをどう選択していくのか。
上のBBCの記事にあるような、「アメリカではどちらの党も、超党派的な発言で危険を指摘できるだろう」という元駐ウクライナ米国大使の見立て、これがヨーロッパに向けてもアジアに向けても同様に起きることを、世の中は思い通りならないものと知っているのに願ってしまいます。
とはいえ安全保障に切れ目があってはいけないということでしょうか、昨日から嘉手納にグラウラーが5機来ておりまする。

 私は当初、ちょっとはバイデンには期待しておりました。
議員初出馬当時の顛末やら、それからの泥沼を這うようにして上がって来た生き様は、タフなアメリカ人の典型のように思えたからです。

でも、圧倒的に弱すぎました。バイデンが演じる見せかけと違い、バイデン自身が米国衰退論者(あるいは、その容認者)であって、そこがトランプやデサンティスと決定的に違うところ。
そんなバイデン政権を中・露・朝は明らかに狙いすまして次々と問題を拡散していってます。

最近のウソにウソを重ねた二年間の業績誇示にしても、あのCNNに端からファクトチェックされ論破される始末。

岸田さんや林大臣、自民党の弱腰対中姿勢には日々はらわたが煮えくり返る思いですが、こういう米政権のもとでは仕方がないのかも知れません。
議会多数が共和党に代わり、それでどうなるかまだ分かりませんが、誇りある強いアメリカのリーダーシップを取り戻さない限り、権威主義国家群を主体的に叩き潰すことは出来ないだろうと思います。

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