北朝鮮をつけ上がらせたバイデンの罪
ご存じのように、11月2日、北朝鮮がICBMと見られるミサイルを発射しましたが、失敗したようです。
「浜田防衛大臣は午後10時半ごろ防衛省で記者団に対し、北朝鮮が午後9時台に北朝鮮内陸部から弾道ミサイル3発を東の方向に向けて発射したことを明らかにしました。
発射されたのは午後9時34分、39分、そして42分で、いずれも最高高度が150キロ程度、飛行距離は500キロ程度だということです。
落下したのはいずれも朝鮮半島東側の日本海で、日本のEEZ=排他的経済水域の外側と推定されるとしています」
(NHK11月2日)
北朝鮮 “弾道ミサイル3発 いずれもEEZ外に落下か” 防衛省 | NHK | 北朝鮮 ミサイル
NHK
今回もまた日本列島を飛び越える軌道だったにもかかわらず(だからJアラートが鳴ったわけですが)、結局は手前の日本海に落下しました。
この列島超えをとる北朝鮮の弾道ミサイル軌道は、例の「火星」シリーズしかありませんから、またもや大陸間弾道弾の試験をしたもののようです。
ちなみにどーでもいいですが、Jアラートが鳴ったにも関わらず上空に飛来しなかったことで欣喜雀躍して政府を非難している阿呆がいますが、なにいってんだか。
Jアラートはコンピューターが予想した進路に警報を発するようになっていますから、その前で落ちたとしても、よかったねで済むことです。
もっと列島の沿岸近くの上空で爆発していたら、部品や破片が降り注いだ可能性もあります。
だから、その可能性があるかぎり警報は出すべきなのです。
警報を出さないで突然落下してくるのと、警報が出たが落下しなかったのとどちらがいいのでしょうか。軽重をわきまえなさい。
今回の北の弾道ミサイルのデータはこのようになっています。
「1発目は午前7時40分に平壌近郊の順安から発射されています。
韓国軍による観測1発目 最大高度1920km・水平距離760km・速度マッハ15
自衛隊による観測
1発目 最大高度2000km・水平距離750km
(略)
おそらく韓国軍は今朝の発射で切り離されて落ちて来る巨大な第1段ロケットをレーダーで確認してICBMと判断したのでしょう。
1段式の火星12ではありえないタイミングでの部品の分離だったからです。 そして韓国軍は「北朝鮮のICBMは第1段ロケットを切り離し分離した後の第2段ロケットが正常飛行しなかった」と分析しました」
(JSF11月3日)
北朝鮮ICBM発射失敗か(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
では、なぜ今回これほど撃ちまくっているのでしょうか。
よくメディアは、米韓合同軍事演習ビジラント・ストーム への報復だとしたり顔で説明しています。
おいおい、それじゃあ、米韓が悪いのか、となりますね。
この言い方のとおりなら、米韓が北を挑発したからミサイル実験を招いたのだ、というリクツになってしまうでしょう。
米韓日が北を怒らせなければ平和なんだということになり、これでは北の思うつぼです。
この合同演習が始まったのが10月末ですから、火星シリーズの新型を発射を準備する余裕があったとは思えません。
北はかねてから、ある意味粛々と「核武装大国」への道を歩んでおり、綿密な工程表を持っていると考えるべきです。
このスケジュール割りに沿って北は弾道ミサイル実験をしていますから、今日明日の国際動向で変化するものではありません。
たまたま火星ミサイルの最新型の発射実験予定日近辺に米韓合同訓練があったために、政治的プロパガンダを被せることにもなっただけのことです。
また、今の時期は、北にとってかき入れ時でもあります。
現在の国際社会の視線は、ロシアによるウクライナ侵攻に完全に集中しています。
国連安全保理は、常任理事国のロシアが侵略の当事者になったため、完全に機能停止してしまいましたから、北がICBMを発射しようと新たな制裁決議を採択することはできません。
まさにやり得の時期が今なのです。
米国は自国を狙った長距離弾道ミサイル実験に大いに怒っていますが、ロシアと主敵と想定している中国の二股に苦慮しおり、さらに北に対して何らかの制裁行動をとることは体力的にむりでしょう。
できるのは、せいぜいが戦略爆撃機をや原潜を北の近海に展開するか、空母打撃群を朝鮮半島西側の黄海に派遣したことくらいのものです。
遠からずおそらくは中間選挙に合わせて、北は核実験を再開するでしょう。
これで火星シリーズの長距離ミサイルに搭載可能な核兵器が揃ったことになり、チェックメイトです。
ここまで北をつけあがらせた責任の半分は、バイデンにあります。
せっかくトランプが、最大限の軍事的圧力をギリギリかけて米朝会談に持ち込んで核武装を凍結したのに、バイデンが台無しにしてしまいました。
バイデンは、今のウクライナ侵略を事前に抑止できなかった原因をわかっているのでしょうか。
それはあまりに安易に、本来曖昧にしておくべき米軍の軍事力使用の可能性を頭から否定してしまったからです。
これを聞いて プーチンは国境を超えてしまったのです。
同じことをバイデンは北に対して行っています。これが、ここまで北を増長させた原因です。
さてこの間、北は実に20発ものミサイルを撃ちまくっています。
この日も、一番の大物であるICBMには失敗しましたが:近距離ミサイルを6発撃っています。もうやりたい放題、出放題です。
下の写真は、「火星17号」ですが、今回のものはその改良型だと考えられています。
【写真】巨大移動発射台に載せられた北朝鮮のミサイル「火星17」:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)
この火星17号は、北朝鮮が保有する中で最大のミサイルで、今回その発展型には複数の核弾頭(MIRV) を搭載することを狙った可能性もあります。
火星15号の到達した最大高度が4500キロ、火星17号の到達高度が6000キロ、今回が2000キロですので明らかに失敗です。
火星シリーズがこのロフテッド軌道を使って高高度を狙っているのは、通常飛距離に直すと北米に到達可能だからで、初めから米国攻撃のための核兵器なのです。
下図で左側の高く飛び出しているほうがロフテッド軌道、右がそれを通常飛距離になおしたものです。
BBC
ところでやっかいなことには、火星シリーズはさらに「実用的」に改良されています。
そのひとつがミサイルの移動手段です。
米国は固定サイロ式を使っていますが、北は輸送発射装置を(TEL)を使います。
2枚並べてみると違いがわかります。
トランプ氏、ツイッターで「核戦力の増強支持」 真意不明 - WSJ
北朝鮮、大型ICBM「火星17」の発射実験に成功と発表 - BBCニュース
これは固定式発射台と違って、トレーラーに乗せて移動するために、発射地点を特定することが困難です。
火星14号なら16輪、火星15号なら18輪 火星17号は22輪です。
世界有数の巨大トレーラーで、まともなトラックも造れないこの国がこういうものだけはスゴイ。(輸入したのかもしれませんが)
また道路が事情が劣悪な北朝鮮でこれだけの重量物を長大トレーラーに載せてガラガラ引っ張っていくのは相当にキツイはずで、カーブが曲がれないのではないかとまで言われています。
この方式だと移動重量は軽くなり、最短で30分から1時間で充填可能です。
日経
一読しておわかりのように、この日米の対処の流れには、撃つ前に破壊するという項目はありません。
すべて撃ってから発見して迎撃する事後対処です。
ここまで国際社会をなめきって、勝手放題に核保有に奔走する北に対して、もう一歩踏み込んで、発射台の破壊まで視野に入れる必要が出てきていると思います。
上図の最上段の早期警戒衛星の時期に即時に対応せねば、北の意図を挫くことはできまないのです。
米軍が道路上で輸送途中、ないしは発射地点での燃料充填中を破壊するなら、従来の早期警戒衛星レベルの監視に加えてE-8ジョイントスターのような地上監視可能な能力を持つ早期警戒機を、南北国境線スレスレに常時飛ばしておく必要があります。
そこから約400~500キロが探知範囲です。
米国がいまやらねばならないことは、北が核を完成したと想定して、直ちに強力な対抗抑止手段を作ることです。
これについては来週に回します。
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一昨日のJアラートは煩かったけど、まず逃げる場所がありません!
一昨日夜は休日で旅行なのに電車が止まって迷惑だとか、これから結婚式なのに大変だとかいう話を報ステで仙台·山形·新潟のそれぞれ駅前街頭インタビュー流して、「上空通過か?」が訂正された政府への批判。昨夜のNHKも漁協にインタビューしたりして「海じゃ逃げるところがないんでね」と。
Jアラートにはまだまだ改良の余地がありますが、北朝鮮から発射なら数分で飛来するので予測進路が出たら1秒でも早く発出するのが当たり前。
辛口な北村淳さんの昨日の論考では、日本がトマホークを装備してくれれば、米軍は直接対決を避けて支援だけする「現在のウクライナと同じ」状態になるのでバイデンはほくそ笑んでるんだそうです。
ちょっと穿ち過ぎではないかと。日本のアチコチに米軍基地あるんだし。
投稿: 山形 | 2022年11月 5日 (土) 06時17分
これだけ連日花火のように北朝鮮がミサイルをぶっ放してるのに反戦団体の皆さんはダンマリですね。
何故でしょうか(棒)。
投稿: KOBA | 2022年11月 5日 (土) 13時05分
そうですね、アメリカ民主党であれ共和党であれ、バイデン氏であれトランプ氏であれ、このしくじりはWon't happen againにしないと。
何も持たないより遥かにマシなJアラートに文句垂れている我々側も大概ですけれど。
でも、ヴィジラント・ストームにB-1Bを2機送り込むアメリカ軍の「ならばこれでどう?」感はとても好き。
投稿: 宜野湾より | 2022年11月 5日 (土) 18時09分