ポーランドへのミサイル着弾
ポーランドへのミサイル着弾事件について、現時点で分かっていることを整理します。
ポーランド大統領が、ウクライナの迎撃ミサイルだと認めました。
「ポーランドのドゥダ大統領は16日、東部の村に着弾したロシア製のミサイルについて、「ロシアが発射したミサイルであるという証拠は今のところはない」としてウクライナ側の地対空ミサイルの可能性が高いという見解を明らかにしました。(略)ミサイル着弾についてドゥダ大統領は16日、会見で「ポーランドに対する意図的な攻撃であったという兆候はない。ロシア側が発射したミサイルであるという証拠は今のところない」と明かしました。
そして、着弾したのは「S300」というウクライナ側の地対空ミサイルである可能性が高い、という見解を示しました。そのうえで「心配する必要はないことを強調したい」「私たちの安全は保証されている」と国民に冷静な対応を呼びかけました」
(TBS 11月16日)
【速報】ポーランド大統領「ロシア発射のミサイルであるという証拠は今のところない」「私たちの安全は保証されている」 東部の村でミサイル着弾2人死亡受け(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース
このポーランド領に着弾し2名を殺害したミサイルについて、米軍が飛行監視をしていたようなので、たぶん数日以内にポーランドから詳細な情報が提供されるはずだと思われます。
「(CNN) 15日にポーランド上空を飛行していた北大西洋条約機構(NATO)の航空機が、同日ポーランドに着弾したミサイルをレーダーで追跡していたことがわかった。NATOの軍関係者が同日、CNNに明らかにした。
この人物は「(ミサイルの)レーダー追跡の情報がNATOとポーランドに提供された」と語った。
NATOの航空機はロシアのウクライナ侵攻以降、ウクライナ周辺で定期的に監視活動を行っている。15日にポーランド上空を飛行していた航空機はウクライナの様子を監視していた。
この人物はミサイルを発射した主体や発射地点に関する情報ついては語らなかった」
(CNN11月16日)
NATO、ポーランド着弾のミサイルをレーダーで追跡 - CNN.co.jp
これはウクライナ国境付近を飛行して、常時監視しているRC-135AWACS だと推測されますが、この情報が開示されれば誰が撃ったのかという点については解決します。
G20でバリ島にいるバイデンが、こう言ったことを考え合わせると、このミサイルの判定は微妙になります。
「ウクライナに隣接するポーランド東部に15日、着弾したロシア製ミサイルについてバイデン米大統領は16日、「軌道を考慮すると、ロシアから発射された可能性は低い」と述べた」
(産経11月16日)
米大統領「ロシアから発射の可能性低い」 ミサイル、ポーランド東部に着弾 - 産経ニュース (sankei.com)
バイデンは、このAWACSの情報を知って言っているはずです。
ですから当初は、このミサイルがベラルーシ領内から飛来したものだといいたいのか、それともウクライナのものだといいたいのか、これだけではよくわかりませんでしたが、どうやらポーランド大統領の発言と照らすと後者のようです。
事実関係を見ておきます。
ポーランドにミサイル着弾で2人死亡 ロシアは否定: 日本経済新聞 (nikkei.com)
「ポーランドでは、ロシアのミサイル攻撃の失敗と思われるウクライナとの国境近くの農場で爆発が襲った後、2人が死亡し、ワルシャワは軍隊の「準備を強化する」ようになった。
今日の午後、ポーランド南西部のウクライナ国境から5マイルに位置する田舎の村、プシェボドゥフで双子の爆発が鳴り響いた。
匿名を条件に語ったアメリカ諜報機関高官は、致命的な爆発は一対の気まぐれなロシア・ミサイルによって引き起こされたと述べたが、爆破現場は最も近いウクライナの都市集落、チェルボノフラードから10マイル以上離れている」
(英デイリーメイル11月15日)
ロシアのミサイルがポーランドで2人を殺害し、NATO国家での緊急会議を引き起こし|デイリーメールオンライン(dailymail.co.uk)
着弾した位置はポーランドとウクライナの国境から8㎞離れたプシェボドフ付近で、農場に落ちて不幸にも2名が亡くなりました。
ただしこの落ちたプシェボドフは、近隣の街まで16㎞ほどある純農村地帯で、軍事施設やエネルギー施設、官公庁などはありませんでした。BBCは当初から、ロシアの軍事攻撃の可能性は少ないと断じていました。
「ここで大事なのは、意図した目標が何だったにせよ、ミサイルを発射したのは誰か、という点だ。
そしてこれまでのところ、ロシアがウクライナ国境を越えた何かをわざと狙っていたと示すものは、何もない。
そのようなことをすれば、NATO条約の第5条発動に至りかねないと、ロシア政府は承知している。もしそうなれば、NATO全体がポーランド防衛に乗り出す。
NATOは、そのような状態を望んでいない。ましてや前日には、ロシアとアメリカの情報機関首脳たちが会談し、この戦争の不要なエスカレーションを避けるにはどうすべきか、協議していたばかりだ」
(BBC2022年11月16日)
ポーランドにミサイル着弾で2人死亡、ウクライナ防空が原因のようとポーランドとNATO - BBCニュース
ポーランドがNATOに協議要請検討…ミサイル着弾で、バイデン氏「露から発射の可能性低い」 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
ロケットモーターらしきものの残骸が撮影されています。
デイリーメイル ボーランドに落ちたミサイルの残骸
ジャック・ゴドリンは、下のS -300迎撃ミサイルの残骸と比較してよく似ていることを指摘しています。
「ここの残骸はS-300タイプのミサイル(5V55Kなど)のように見えることに注意してください。ウクライナで見た過去の残骸の画像と比較してください」
あるいはウクライナ・ウェポントラッカーは、こうツイートしています。
「利用可能な破片の写真を分析し、それらがS-48 ADシステムの6V5シリーズミサイルの300D300モーターに属しているという明確な結論に達しました」。
S-300タイプのミサイルの残骸
「過去に発見された部品と見比べると、側面のボルト穴やその下の2本の溝、垂直方向の雌ネジの山など、細かい特徴も一致しています。
この部品は5V55迎撃ミサイルの固体燃料ロケットモーターケースの鏡板かノズルの付近の部品である可能性があります。殻にある程度の厚みがあり狭い間隔でボルト穴が大量に開いており、高い圧力が掛かる場所で強固に取り付ける必要がある部品だという指摘がありました」
(JSF11月16日)
ポーランドへのミサイル着弾はウクライナ迎撃ミサイルの迷走か:残骸部品からのOSINT分析(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
S-300迎撃ミサイルは、ソ連時代に開発された長距離地対空ミサイルで、同時に多目標に対応可能です。
ロシア軍はこれをウクライナに持ち込んでいますし、ウクライナ軍も保有しています。
ロシア、地対空ミサイルS300用高射砲をシリアから輸送 クリミアの防空網強化か|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
当初、ロシアのミサイルが迎撃ミサイルによって進路を変えられてポーランド領に落ちたという説がありましたが、だとするならこれはKH-101巡航ミサイルかもしれません。
いずれにしても、ウクライナ軍がロシア巡航ミサイルを迎撃しようとして、その破片がポーランドに着弾した可能性が濃厚です。
KH-101/102 – ミサイル防衛擁護同盟 (missiledefenseadvocacy.org)
以上は憶測の域をでないので、結論はポーランド国防省の発表を見てからにしましょう。
なおNATOはウクライナの迎撃ミサイルだと認めながらも、その責任はロシアにあるという態度を表明しています。
ТРУХА⚡️English ストルテンベルグNATO事務総長
「[ブリュッセル 16日 ロイター] - 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は16日、ポーランドに着弾したミサイルについて、ウクライナの迎撃ミサイルの公算が大きいという認識を示した。
同時に、最終的な責任は戦争を始めたロシア側にあると強調した。(略)
その上で「暫定的な分析によると、ロシアの巡航ミサイル攻撃からウクライナの領土を守るために発射されたウクライナの迎撃ミサイルが原因の可能性が高いようだ」と説明した。
さらに「はっきりさせたいのは、ウクライナの責任ではないということだ」とし、「ロシアが責任を負う。なぜならこれは進行中の戦争と、昨日のロシアからのウクライナに対する攻撃による直接的な結果だからだ」と強調した」
(ロイター11月17日)
ウクライナ迎撃ミサイル着弾の公算、ロシアに最終責任=NATO | Start Magazine (taboolanews.com)
仮にウクライナ軍の迎撃ミサイルであった場合、ウクライナは直ちに事故による過失だと認めることが大事ですが、NATOが言うように、そもそも侵略戦争がなければこんな事故は起きなかったわけですし、国境付近にミサイルを撃ったことがこの事故を招いたのです。
ウクライナ奪還のヘルソン、歓喜と傷心 広場に8ヵ月ぶり国旗、残る地雷…インフラ復興遠く|【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)
ウクライナに平和と独立を
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コメント
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どうやら一日中続いた各地への大規模ミサイル攻撃で西部リビウも停電したそうなので、迎撃に打ち上げたウクライナのS-300が外れてポーランド領内に墜ちたで間違いないようです。
ゼレンスキーはちょっと早とちり会見。
アメリカは開戦直後から頻繁にRQ-4も飛ばして監視しています。
ミサイルの軌道情報はすぐにバイデンの耳に入っていたでしょうが、あんまり詳しいことを言っちゃうとまずいので「世界大戦にはならないよ」というメッセージだけ伝わるような表現になったのだと思います。何故かロシアの方が食いついてきましたけど、それこそ簡単な情報戦でしょう。
投稿: 山形 | 2022年11月17日 (木) 04時17分
ゼレンスキーはどうするのかと思ったら、
NATO見解にはあくまで否定で我々も調査に入れろと言い出しました。
じゃあベラルーシ領内からS-300がドサクサのタイミングで撃ち込まれたと?もしそうだったらそれもなかなか巧みですけど。
まあ、どの道NATOはエスカレーション避けたいですから発射地点は秘匿するでしょうけどね。
投稿: 山形 | 2022年11月17日 (木) 06時16分
ペスコフは「アメリカの態度は評価できる」みたいなこと言い、ロシア政府は「この件にはロシアは無関係」と言い。
お前が撃たなきゃウクライナも迎撃する必要ないんじゃい!
投稿: ねこねか | 2022年11月17日 (木) 09時12分
ポーランドも他のNATO諸国も初期から極めて抑制的な態度であることからも、事態をより正確に掴めていたことがわかります。
これにはロシア、反発もプロパガンダもやりにくい。
https://www.ukrinform.jp/rubric-ato/3616036-zerenshiki-yu-da-tong-lingporandohenomisairu-zhe-dannitsukisorega-sitachinomisairudenakattakotowo-yitteinai.html
こちらにあるゼレンスキー大統領の発言、自軍からの報告が判断材料でありそれを疑うことはできない、現場を見て判断しないと軍の報告を疑えない、「捜査が終わっていない間は、最終的な結論を口にしないでも良いだろうか?」、これらから、ゼレンスキー大統領はロシア攻撃説に固執しているという報道は違うのではないか、という東野先生のご指摘は、今押さえておいた方がよいことのひとつだと考えます。
投稿: 宜野湾より | 2022年11月17日 (木) 09時38分
なぜか日本の主要マスコミは「ゼレンスキーがプロパガンダをしようとしている」という印象をもたれるような切り取りで報道していましたが、東野氏がゼレンスキーの発言の第1ソースからきちんと解説してくれたのは本当に助かりましたね。
あれだけのミサイル攻撃を受けてる最中に正確な情報を常に維持しろというのも無茶な話ですし、むしろG20のまっただ中にも関わらず参加国がミサイルぶっ放して侵略行為を継続している方が遥かに大問題。
維新もいつまでムネオ氏に妄言をまき散らす事を許しているのでしょうか?
国会審議や経済政策では悪くない活動をしているのに彼一人で台無しにしているように感じます。
投稿: しゅりんちゅ | 2022年11月17日 (木) 21時22分