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2022年11月16日 (水)

ロシアのウライナエネルギー兵糧攻め

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早朝、ロシアのミサイルがポーランドに着弾して2名死亡という仰天ニュースが飛び込んできましたが、詳細は不明ですので明日に回します。
ほんとうなら誤射であろうとなかろうと、NATO対しての戦争行為であるとみられてもいたしかたないでしょう。
さてヘルソンのダムを破壊したのは、下流域を水没させるためではなく、ダムの発電能力を破壊するためでした。
ここは南部全体とアゾフ海沿岸地域にも送電しており、とくにザポリージャ原発の4つある送電網の機軸をなしていました。

「ウクライナ南部にあるザポリージャ原子力発電所について、管理している原子力発電公社エネルゴアトムは3日、声明を発表し、ロシア軍による砲撃で、原発の送電線が損傷して外部からの電力供給が2日、完全に失われたと発表しました。
原発では電力を使って原子炉や燃料プールを常に冷却する必要がありますが、現在は非常用のディーゼル発電機を使っているということです。
ただ非常用ディーゼル発電機の燃料は15日分に限られているということで、エネルゴアトムは危機感を示し「原発が占拠され施設の安全確保が難しくなっている」とロシア側を非難しました」
(NHK11月3日)
ザポリージャ原発 外部からの電力供給 完全に失われたと発表 | NHK | ウクライナ情勢

ヘルソンとザポリージャ原発の位置関係を確認してみましょう。

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ウクライナで深刻な原発事故の危機高まる=IAEA - BBCニュース

ザポリージャ原子力発電所は、ヘルソン南東部のザポリージャ州に立地し、原子炉が6基ある、ヨーロッパ最大級の原発です。
ウクライナの原子力発電公社、エネルゴアトムが運営し、すべての原子炉が同時に稼働すれば、その総出力は600万キロワットと、世界でも有数の規模になりますが、現在ロシア軍が不法占拠しています。

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【ウクライナ】米、ウクライナに55億ドル追加財政・軍事支援へ - Bloomberg

ロシア軍は、電力の専門家の指示を受けながら、ウクライナのエネルギー施設の弱い部分を狙って集中攻撃しています。
一見無差別な民間施設への攻撃のように見えますが、暖房需要などが高まる冬を前に、露軍は標的を絞ったエネルギー施設への攻撃を継続しています。

「ウクライナのエネルギー相は同紙に「露軍には(エネルギー施設攻撃のための)工程表のようなものがあり、一度失敗しても何度も攻撃を仕掛けてくる」と述べた。国営電力会社のトップも同紙に、「ロシア側の電力専門家が作戦の立案に関わっている」と指摘した」
(読売10月26日)
電力専門家が作戦関与か、ロシア軍がウクライナ電力網に集中攻撃…需要高まる冬を前に : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp) 

下図はウクライナの侵攻前の電源構成です。

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チェルノブイリ原発事故から35年 ウクライナ、今も依存度が世界3位の理由:ませんでした朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)

上図でわかるように、ウクライナは原子力に53%依存しており、残りが火力37%です。
火力発電に使う石炭や天然ガスは、ロシアから輸入していました。
ですから、ウクライナにとってのエネルギー安全保障とは、脱ロシア依存とイコールであり、自立するためには原子力を中心に据えざるを得ませんでした。
この原子力に半分依存する電源構成を作ったのは親露政権でしたが、彼らですらロシアの天然ガスパイプラインに100%依存する気はなかったのです。
ドイツのように、ロシアの天然ガスパイプラインに命を預けておきながら、今日は脱原発、明日は脱炭素とキレイゴトを追い掛けかけるわけにはいかなかったのです。

これは官民に渡って徹底した認識で、政府も一度として脱原発などと言ったことがなく、脱原発団体もひとつも存在ししいないようです。
ウクライナはチョルノビリ (チェルノブイリ)原発事故のためにチョルノビリ原発こそ停止していますが、それ以外の4箇所の原発の15基の原子炉が稼働しています。
その主力原発がザポリージャ原発でした。
ここにロシアが攻撃を集中し軍事占領したために、いまや停止に追い込まれています。

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ウクライナの原子力発電所の状況 #44 | 一般社団法人 日本原子力産業協会 (jaif.or.jp)

原子力はたしかに自立的電源でしたが、ひとつ盲点がありました。それが核燃料です。
ウクライナが、原発で使う核燃料はロシアの国策会社の露TVEL社から輸入していたのです。
これは、ほかのインフラと同じように、ウクライナ国内の火力発電所や原子力発電所は、古いソ連時代に設計・建設されたものが大多数であり、そこで使う燃料はロシア産のものしか適合しなかったのです。

このため原子炉は、露TVEL社が独占していましたが、それに危機感をもったウクライナは、2000年代以降、米国ウェスティングハウス社スウエーデン工場からの核燃料供給に切り換えようとしていました。

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侵攻前時点では、ロシアTVELからの調達は縮小し、ウェスティングハウス社スウェーデン工場から供給される割合が増えてきている矢先に起きたのがロシアの侵攻だったわけです。

IAEAによれば、ザポリージャ原発は、この一カ所だけでウクライナの総電力の2割をまかなうことができる大規模な原発です。
ですから、現在ウクライナ全土を覆っている電力供給不足を、ザポリージャ原発さえ稼働すれば一気に回復することが可能です。
ウクライナのエネルゴアトムのコティン総裁は、ザポリージャ原発を軍事占領しているロシアの目的は、現在のウクライナの送電網を遮断し、ロシアが一方的に併合した南部クリミアへの電力の供給を計画しているという見方をしています。
実際に、ウォール・ストリート・ジャーナル(8月14日)は、ザポリージャ原発の職員の話として「ロシア国営の原子力企業ロスアトムの技術者が、電力を占領した地域に回すことについて議論していた」という証言を伝えています。

ザポリージャ原発を支配下に置くと、ロシアは専横を振るい始めました。
まず職員全員を拘束し、ロシア軍の強権下に置こうとしました。

「ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムのペトロ・コティン社長は19日、AFP通信に対し、ウクライナ南部ザポリージャ原子力発電所のウクライナ人職員約50人が、原発を占拠しているロシア軍の拘束下にあると明らかにした。ロシアは一方的に宣言した原発の「国有化」を強行しようとしているとみられる。
コティン氏は、原発の所長が9月末に拘束された際、「地下室に3日間監禁され、頭には袋をかぶせられ、イスに座らされていた」と説明した。所長は数日後に解放され、辞意を表明した。
これまでに露軍側に拘束された原発職員は150人以上となっているという」(読売10月21日)
ザポリージャ原発でウクライナ職員50人が拘束下に…ロシアが「国有化」強行か : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

その他にも、IT情報技術部門の責任者と所長補佐がロシア軍に拘束され、連れ去られ、現時点で居場所や安否は不明だといいます。
その際、多くの職員が殴打されたり,頭からビニール風呂を被せられて窒息させられそうになるなどの拷問を受けています。
コーチン氏によれば、すでに職員2名が死亡しているそそうです。

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ロシア、原発職員2人殺害 ウクライナが主張:時事ドットコム (jiji.com)

またこのような拘束された者たちは、ロシアのパスポート取得を強要されています。
これはプーチンがザポリージャ原発を「国有化宣言」を行ったことに対応するためのものです。
武力で他国に押し入り、その国の原子力施設を武力占領してわがものにしてしまう、酷寒の冬にエネルギーを遮断しようとする、人を人とも思わない国がロシアです。

 

 

 

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奪還の兵士を胴上げ、歓呼で迎えたヘルソン住民 市内ほぼ掌握 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

ウクライナに平和と独立を

参考文献
特別寄稿:ザポリージャ原発の現状と今後の懸念事項 | 衛星画像分析プロジェクト | 笹川平和財団 (spf.org)

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コメント

 外道行為を際限なく重ねる露助に対して未だ維新は擁護するつもりなんでしょうか。最近鈴木某のコメントを聞きませんが、「逃避モード」にでも入ったんでしょうか。

本当に非道な集団。アメリカも他NATO諸国も、エネルギー支援はどのくらい本腰入れてやってくれてるんでしょうね。

ちょうど、ポーランドへのミサイル着弾に関するニュースも。バイデンは「ロシアからの攻撃とは考えにくい」とのこと。

バイデンも結局、慎重に慎重にーなんて言いながら、心の奥底では「さっさとウクライナは諦めて降参しろ」と思ってるんですかね。プーチンと同じく。

ひとつを考えている間に次々に何かが起こり、すぐ反応しないで確証が得られるまで待つ…が続くので、判断するのも論評するのもコメントを投稿するのも、タイミングと内容が適切かどうか苦心しますね。
そんな苦心も、侵略を受けている人々の辛さに比べれば、進んで受け入れるべきものですが。
とまれ、家屋家財や家畜を強奪破壊するのも、ウクライナ全土へ約100発のミサイルを撃ち込むのも、ロシアがウクライナ国民の冬を死活的に惨めなものにしてやる意図でやっているのは間違いないでしょう。
今月のG7外相会合でウクライナのインフラ復旧と耐久性強化を支援する仕組みづくりが決定され、アメリカは8日に、ウクライナへの2,500万ドルの越冬支援を表明しました。
我が国からの支援メニューの決定、実施へのスピードを上げてほしいところです。

 通常の戦闘行為で敗退続きのロシアとしては非対称戦のようなものに持ち込んだつもりでしょうが、非人間的な国際法違反の蛮行が次々に明らかになるにつれ、ますます自由主義社会の結束が重要な論点にならざるを得ないでしょう。
日本はウクライナへの越冬資金を率先して援助すべきで、そうする事が終戦後の日本の国益にもかなうハズ。
岸田さんの判断力になど期待しないものの、中谷元人権担当補佐官あたりも、たまには仕事しているところを見せて欲しいところです。

ポーランドに着弾したミサイルについてはウクライナの迎撃ミサイル誤射だった線が濃厚ですが、バイデンのああいう発信の仕方は甚だ疑問です。まるでロシアとの停戦を見据えているかのような印象あり。
まずはNATO事務総長かポーランド政府がすべきところ、バイデンは大敗しなかった中間選挙後の自身の再選に向けた売り込みを画した悪目立ちにしか思えません。

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