• S-018_20241007135201
  • 20241007-140953
  • 20241007-140721
  • 20241007-150515
  • 20241008-022728
  • S-026_20241006091401
  • S18-008
  • 20241006-091911
  • S-050_20241005174901
  • S-106

« 2022年12月 | トップページ | 2023年2月 »

2023年1月

2023年1月31日 (火)

戦争の長期化は新国際秩序「新冷戦」を生み出す

S-113

こころが痛むことではありますが、ウクライナ戦争は長引くでしょう。
一日伸びれば伸びただけウクライナ国民が死ぬことになるので、1日も早い終結を望みたいのですが、相手は痩せても枯れても「世界第2の軍事大国」です。
プーチンが死ぬか、政権から叩き出されない限り、彼らはウクライナの占領地にしがみつくでしょう。
おそらく最短でもこの夏、長期化すればもう分かりません。

そう考えるとやりきれない思いですが、ひとつだけボジティブなことがあります。
それは長期化すればしただけ、国際秩序の再編が完了し、新たな枠組みがしっかりとでき上がってくることです。
ロシアもそれはわかっているとみえて、このところ頻繁にこのウクライナ戦争は欧米勢力との戦いであると強調し始めています。

「[モスクワ 10日 ロイター] - プーチン・ロシア大統領の最側近の1人であるパトルシェフ安全保障会議書記は10日、ウクライナ戦争について、ロシアを世界の政治地図から消そうとする北大西洋条約機構(NATO)との戦いとの認識を示した。
ロシア紙「論拠と事実」に「ウクライナで起きていることはロシアとウクライナの衝突ではない。ロシアとNATO、特に米英との軍事的対立だ」と述べた。
「西側諸国の計画はロシアをばらばらにし、最終的には世界の政治地図から消し去ることだ」と主張した」
(ロイター2023年1月10日)
ウクライナ戦争、NATOとの戦い=プーチン氏側近 | Reuters

このロシアの見方は、たぶんに被害妄想的ではありますが、逆説的には正解です。
この戦争は、ウクライナとロシアとの次元を超えて、民主主義と専制主義との価値観をめぐる戦いなのです。
ウクライナ戦争が、当初のプーチンの目論見どおり4日間で終わってしまっていたら、西側はなにひとつできないまま現状を追認するしかなかったでしょう。
口ではロシアの蛮行を最大限非難しても、実効支配ほど強いものはないからです。

Shutterstock_213253148111052x592

ウクライナ戦争はもはや制御不能か―― レッドラインとエスカレーション | FOREIGN AFFAIRS JAPAN

しかしプーチンが意図した短期戦争という思惑がはずれて、西側は本腰を入れた支援を開始し始めました。
そしてとうとうもっとも親露的だったドイツでさえ、主力戦車を送ることを認めました。
これが分水嶺でした。

戦車はただの兵器であるのではなく、西側の結束して戦う意志を示すアイコンだったからです。

米独仏伊英は戦車を送ることをめぐって緊密な電話会談を行い、ウクライナとの密接な関係を確認しました。
有体に言えば、これは「新冷戦」の構図が出来上がったということであり、世界各国にいずれの陣営につくのかを問う触れ太鼓だったと言ってよいでしょう。

ただし鶴岡路人氏はそう単純ではない、と述べています。

「国際社会が一致してロシアに対峙しているような報道もあるが、対露経済制裁を行っているのは40カ国程度でしかなく、数のうえではロシアは国際社会から孤立していない。
対露制裁の拡大と深化はトレードオフの関係にある。米欧日が結束すれば、民主主義や人権等の価値観が強調されてしまうが、そうした価値観に反発する国々はロシア制裁に参加しにくくなる。
米欧日にとっては「西側対ロシア」の構図でとらえられないようにすることが重要である」
ロシアによるウクライナ侵略が国際秩序に与える影響 (2022年6月9日 No.3547) | 週刊 経団連タイムス (keidanren.or.jp)

たしかに鶴岡氏が指摘することは一面の事実です。
事実、G20でも参加国の大半は日和見で、決議文から価値観を持つ用語を慎重に取り除いて非難決議をだしたほどです。
しかしこういうぬかるんだ国際秩序の中で新たな国際秩序を作り出さねば、第2第3のウクライナが生まれてしまうのです。

202203eca_ukraine_bucha_armoredvehicles

ウクライナ:ロシア支配地域での明白な戦争犯罪 | Human Rights Watch (hrw.org)

では、なぜウクライナが侵略されてしまったのでしょうか。
ウクライナ人のグレンコ・アンドリー氏が常々言っているように、その理由はウクライナが「弱い国」だったからです。
元来ソ連の一国だったウクライナは、独立してもそれは棚ぼたであって、独立意識が薄く安全保障に無関心でした。

「ウクライナでは、安全保障に対する国民の関心が低く、軍の内部は汚職で腐敗し、軍の戦闘能力はどんどん低下していました。さらに2010年に始まった親露派政権の間には、ロシア国籍を持つ人物が防衛大臣に任命されるという前代未聞の事態も起きました」
(グレンコ・アンドリー2022年02月28日 )
ウクライナ人から見たロシアの本質、プーチン大統領の正体——グレンコ・アンドリー|

アンドリー氏はかつてのウクライナの脆弱な安全保障意識は、日本と似ていると語っています。

「それはいまの日本にも言えることです。日本では、自衛隊が人道支援のため海外に派遣されるだけで大騒ぎをし、自衛隊が軍隊であると言うことすらできない状況にあります。また、法律があるわけでもないのに武器の開発を制限したり、「防衛費はGDP比の1%以内に収める」という暗黙のルールをいまだに守っています。
自国の安全は自分たちで守るという意識がない、まともな安全保障の議論ができないという点で、日本とウクライナは共通しています」
(グレンコ・アンドリー前掲)

耳が痛い。まさにそのとおりです。
ただひとつだけ日本がウクライナと大きく違ったのは、アンドリー氏がウクライナの弱点の二番目の理由に上げている「同盟国不在」ということがなかったことです。
日本は日米同盟の形で、米国が代表している民主主義陣営の国際秩序の下支えを得ることができました。
このことは、強調しすぎてしすぎることはないでしょう。

ウクライナはNATO加盟も拒否され、1994年に米英ロの3国がウクライナの安全の保証をうたったブダペスト覚書も反故にされてしまいました。
ブタペスト覚書には、具体的な措置が規定されておらず、抽象的な文言にすぎなかったからです。
その結果、ウクライナは国際秩序の空白地帯となってしまい、あまりにも脆弱な国となってしまっていたのです。

Large_ip221115kaa000083000_20230130061501

ウクライナ奪還のヘルソン、歓喜と傷心 広場に8ヵ月ぶり国旗、残る地雷…インフラ復興遠く|【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)

ところで、今回のロシアの侵略を許したのは、国際秩序の側にも大きな欠陥があったからです。
本来国際秩序を維持する責任がある国連常任理事会が余りに無力であるばかりか、世界の二大ならず者国家である中露が常任理事国であることによって国際秩序のルールがないも同然となっていました。

ですから、ロシアがウクライナの占領地で国際人道法に反する非人道的な民間人虐殺を続けようと、それを裁かねばならないはずの国際法廷が不在でした。
したがって、ロシアはなにをしようとお咎めなし、掣肘する者もいなければ、裁く者もいなかったのです。

「秩序を維持するためにはルール違反を未然に阻止したり、違反国を罰したりできる力(パワー)の下支えが必要です。そう考えると、今回の戦争がなぜ起きたのかという問いは、侵略行為に対して強いペナルティーを与える制度やパワーが存在したのか、という問いに読み替えることができると考えています」
(神保謙 2022年6月27日)
「世界秩序」ロシア・ウクライナ戦争で揺らぐ根幹 | ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明 |

したがって、いまロシアの野望を挫くことができれば、世界秩序は法の支配を維持し、さらにそれを確立していく契機になるかもしれません。
そのために平和のための新たな国際秩序構築が必要なのです。

ところが、米国の腰が引けています。
ロシアが国連安保理事会の常任理事国でありながら核保有国の一方の雄であるために、本来自由主義同盟の指導者でなければならない米国がシャキっとしませんでした。
当初から軍事的オプションを捨ててしまい、支援も逐次投入を続け、戦車供与には尻込みを続け、初めは歩兵戦闘車でお茶を濁そうとしたのです。
なんとドイツのシュルツから尻を蹴飛ばされるようにして、やっとエイブラムスの供与を決めたというていたらくでした。
これでは難題に真正面から向きあっていない、と非難されても致し方がないでしょう。

しかし自由主義陣営は、ドイツが分水嶺を超えたことで結束を固め、すでに新しい「新冷戦」構造の原型を作ろうとしています。
西のNATO、東のファイブアイズやQUADが基礎石となるでしょう。
しかし現実は、この「新冷戦」構造の構築にまったく追いついていません。

ハイマースは弾切れになり、わずか31両のエイブラムスさえすぐに送れず、無理をすると対中抑止に穴があくと言われる始末です。
先日発表されたセス・G・ジョーンズ(CSISの上級副所長) は、台湾海峡での米中戦争を想定したCSISの戦争ゲームで、米国には3週間の戦闘でJASSM(統合空対地スタンドオフミサイル)4000発、LRASM(長距離対艦ミサイル)450発、ハープーン400発、トマホーク陸攻400発が必要だが、紛争開始1週間以内にそれらの在庫を使い果たすとしています。
また台湾へ約束した108両のエイブラムスの供与も、いつになるのかめどもたっていません。
つまり、米国は台湾侵攻において継戦能力がないのです。

これは平時における米国の兵器製造ラインが細々としか稼働しておらず、戦車、ミサイルのラインの多くが閉じてしまっているからです。
たとえばエイブラムスのラインはとうに閉まっており、エジプトとの合同生産ラインだけが動いています。
トマホークもとうにラインは閉鎖されており、日本が新規に千発必要だといってもどこから湧いてくるのか、という状況です。
つまり米国はあいかわらず、この世界の危機の前に眠りこけているのです。

こうした米国の危うい防衛事情を見て、プーチンは西側を侮ったのであり、習近平がそれにならう可能性もあります。
早急に米国は「自由主義陣営」の武器工場の機能を取り戻さねばならないし、それが大幅に遅れているここ数年がいちばん危険な時期なのです。

いずにせよこの戦争が終わる頃には、新たな世界の枠組みができあがって来ると思います。
そのときには、国連の新たな枠組みもまた出来上がってくるはずです。

 

 

 

9_20230130061401

 国連機関「ウクライナで子供含む市民406人死亡」 ロイター報道 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

ウクライナに平和と独立を

 

 

2023年1月30日 (月)

とうとう「大祖国戦争」だそうです

S-005_20230129082001

ロシアのゲラシモフ参謀総長は、今のウクライナ戦争はかつての「大祖国戦争」だと言い出しました。

「ロシアの参謀総長ヴァレリー・ゲラシモフは、彼自身と伝統的なロシアの軍事指揮構造をロシアの真の擁護者として描写するための努力を続けた。ゲラシモフは23月8日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がロシアの「軍事安全保障に対する新たな脅威」に対応するロシア軍の能力を開発するというセルゲイ・ショイグ国防相の計画を承認したことを繰り返し、ゲラシモフはウクライナとNATO諸国がロシアを脅かすことを目的としていると非難した。
ゲラシモフは、大祖国戦争(第二次世界大戦)を含むいくつかの軍事危機を通じてロシアを導き保護する上でのロシアの参謀の歴史的役割を呼び起こした。ゲラシモフは、「現代ロシアはそのようなレベルと激しさの敵対行為を知らなかった」と主張し、ウクライナでの現在の戦争は大祖国戦争以来ロシアにとって最大の脅威であり、したがってゲラシモフのリーダーシップの下でのロシア参謀のリーダーシップと保護が必要であることを強く示唆した」
(戦争研究所2023年1月26日)
ウクライナ紛争の最新情報 |戦争研究所 (understandingwar.org)

_20230129_083539

記憶研究所、終戦記念日に合わせ、ソ連の大戦プロパガンダ解説動画を公開 (ukrinform.jp)

倒錯していますね。
「大祖国戦争」なる呼称は、独ソ戦のロシア風言い回しですが、イデオロギッシュなので他国は使いません。
スターリンとヒトラーとの戦争の時に使った「大祖国戦争」という大時代的な表現まで使って、国民に防衛に対する愛国心を求めているようですが、はて、今回はヒトラー役はプーチンじゃなかったのですかね。

Lwv7laqlzrnslelzxkxhmdngve

ロシアの侵攻、痛烈批判 風刺画展 大阪で始まる - 産経ニュース (sankei.com)

いうまでもなく、祖国防衛戦争を叫ぶ立場なのは、侵略を受けたウクライナ側であって、ウクライナはいまだ一歩もロシア領土に踏み込んでいないと言うのに。
それとも勝手に領土化してどの国も承認していない、ドネツク、ルガンスク、南部のヘルソン、ザポロジエ各州をして「神聖な領土」というなら別ですが。

また新たな民兵軍団を作りましたが、その名も「スターリングラード」で、すでにウクライナに投入されているようです。
部隊が編成されたのは、ロシア西部ヴォルゴグラードで、この都市の旧名称は名高きスターリングラードでした。
第二次大戦時、ドイツの包囲を受けて、これに勝利したことで、同都市はソ連時代英雄都市と呼ばれていました。
今回の民兵組織もその末裔という触れ込みですが、たった百数十名なので戦況には影響しません。
ロシア軍のエライさんらは、ただ「スターリングラード」という名前が欲しかったのでしょう。

ちなみにこの「スターリングラード」部隊は、悪名高き民間軍事会社「ワグネル」の資金援助と指導で作られたもののようで、民兵というより傭兵と考えたほうがよいでしょう。

Swagnerrussiajpg

ロシアのPMCワグネルはウクライナで8000人の戦闘員の内3000人を失った│ミリレポ|ミリタリー関係の総合メディア (sabatech.jp)

ワグネルは、GRUのスペツナズ隊員だったドミトリー・ウトキン元中佐が、2014年に創設した民間軍事会社です。
欧米の民間軍事会社は実際の戦闘には参加しませんが、ワグネルは軍隊とまったく変わらないことを請け負っている傭兵集団です。

しかも正規軍がやりたがらない汚れ仕事をもっぱらとしています。

221107091526yevgenyprigozhinfilerestrict

エフゲーニ・ブリコジン

資金提供したのは、プーチンに重用されていたオリガルヒのエフゲニー・プリゴジンという人物です。
のしあがったのはプーチンの料理人だったからで、本業はレストランとケータリングです。
彼の企業は、政府請け負い仕事を手にすることで巨大化しました。
エフゲニー・プリゴジン - Wikipedia

ワグネルは、ウクライナ戦争前から、表向きはロシアが関わっていないとしたいロシアの利益や対外政策のために活動していました。
しかし訓練はロシア軍施設で行われ、ロシアの軍事諜報機関GRU(参謀本部情報総局)とFSB(連邦保安庁)の下請け部隊として知られています。
メンバーは、ロシア軍出身者に限らずチェチェンや外国の親露派民兵などが集められていて、ネオナチや囚人まで含まれています。
要するに、ならず者国家が汚れ仕事のために作ったならず者軍団です。
ワグネル・グループ - Wikipedia

ウクライナ戦争以前に、ワグネルの行動が確認されているだけでこれだけあります。
その全部が独裁政権への支援だというのも、ロシアの対外政策の性格がわかります。

・ウクライナ西部地域紛争(ドンバス戦争)における親ロシア派設立と支援
・シリア内戦におけるアサド政権への支援
・スーダンにおけるオマル・アル=バシール政権への支援
・2014年リビア内戦におけるハリファ・ハフタル率いるリビア国民軍(LNA)への支援
・中央アフリカ共和国の内戦における政府支援
・ベネズエラにおけるマドゥロ政権への支援
・2020年ベラルーシ大統領選挙への介入

たぶんワグネルは、ウクライナ国内の多数の民間人虐殺に関わっているはずです。
ウトキンは、ナチス信奉者と言われ、名称の「ワグネル」もヒットラーが愛した作曲家リヒャルト・ワグネルに由来したものだとされています。

あれ、ウクライナはネオナチだから、ボク「特別軍事作戦」でやっつけに行くんだ、って言ってたのはどこの誰だったっけかな。

このワグネルのなかでもっとも凶暴な部隊は「ルシッチ」と呼ばれ、破壊工作専門部隊です。
彼らは、2014年から始まったウクライナ東部紛争では、ルガンスクとドネツクの人民共和国の分離主義を煽動し、親露派を軍事組織化する働きをしました。
この時期、ルシッチは、殺害したウクライナ兵の遺体から耳を切り落としたり、遺体に火をつける様子を自撮りしてSNSに投稿したために、世界に悪逆非道の部隊として名を馳せました。

Ee1a2756218aabf1f1ed71814939d76c_1

東京

ワルネルは当初8千人の部隊と呼号していましたが、いまやその半数が戦死してしまい、いまや囚人や感染症患者まで「徴兵」しているようです。

「ロシア政府と関係が深い同国の民間軍事会社ワグネル・グループはこれまでも、恩赦や一時金と引き換えに、受刑者を兵士として採用していると報道されてきたが、ウクライナ国防省情報総局の報道機関は10月25日、ワグネル・グループが、HIVやC型肝炎などの感染症を患う囚人も大量に採用し始めていると伝えた。
「このやり方は広く行われている。例えばある流刑地では、HIVやC型肝炎の診断が確定している100人以上の囚人が、ワグネル・グループに『動員』されている」と情報総局は述べている。
ワグネルは患者をほかの兵士と区別するため、HIVに感染している囚人は赤い腕輪、肝炎の囚人は白い腕輪を着けられ、負傷しても医者は治療を拒否することがある、と情報総局は伝える」
(ニューズウィーク2022年10月27日)
HIV患者や精神病者まで動員、ロシア兵員不足の窮状(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

スゴイね、「人民よ、大祖国戦争に立て!」と叫んでいるだけでも正気の沙汰ではないのに、傭兵、囚人と感染症患者とテンコ盛りです。
まさに「総動員体制」。
詰みましたね。

 

 

K10013542391_2203200514_2203200515_01_02

NHK

ウクライナに平和と独立を

2023年1月29日 (日)

日曜写真館 天高し角力の大鼓鳴り渡る

S20181212-163

これきりと思ふ日もあらん角力取 秋色

S20181212-130

憎からぬたかぶり貌の相撲かな 飯田蛇笏

20181212-115_20230128022901

いかに世をひとり角力のくるはしき 五明

20181212-129_20230129070101

蒼天に髻とけし相撲かな 石鼎

20181212-057_20230128023001

秋場所の力相撲となりにけり 高澤良一

20181212-161_20230128023001

好調は躰に任せとる相撲 高澤良一

S20181212-322

母親に孝の名もあり角力取 正岡子規 

S20181212-176

りゝしさは四つに組んだる角力哉 正岡子規

S20181212-055

負る人勝つ人ともに相撲かな 支考

2023年1月28日 (土)

西側各国、一斉に戦車の供与を表明

040_edited1

山路さん、おかえりなさい!
もうお体はよろしいのでしょうか。お待ちしていました。

さて、ウクライナはいま耐えている状況です。
このウクライナの戦況悪化を受けて、西側各国は最新鋭の戦車の供与を決めました。
単に戦車という装備の供与にとどまらず、核の恫喝にもめげず、西側が結束した意味は大きいでしょう。
おそらくウクライナ戦後についての復興や、ロシア処分、新たな国際的枠組みについて構想が練られる時期に入っているはずです。

ところで森元首相が「こんなにウクライナに力を入れてしまって良いのか。ロシアが負けることは、まず考えられない 」などと放言していたようですが、この男がどう思おうと、プーチンが勝利する可能性は限りなくゼロです。

そもそも「ロシアが勝つ」とは、どういう意味なのでしょうか。
よもやウクライナ全土を征服する、なんて言うンじゃないでしょうね。
再度のキーウ攻撃さえ不可能なのに、広大な西部をどう落とすというのか、森氏にお聞きしたいものです。
百歩譲って、キーウが陥落してゼレンスキーが俘虜になったとしても、西部地域のパルチザンは戦いつづけるはずです。
元々西部のほうがナショナリズムが強いのですから、ロシアは先の見えない泥沼にズッポリと首まで漬かることになります。
いまでも通常戦力の大部分を注ぎ込んでこの体たらくなのに、全土制圧など夢のまた夢です。

それよりもプーチン自身の首を心配したほうがよい。
どこをもって「勝つ」というのか、メドも考えずに戦争を始めたプーチンが愚かなのです。
全体のイメージがないから、今になって終わるに終われない。
こんなことをやっていると、自分が内部の反対派に倒されますよ。

一方ウクライナのほうの「勝つ」イメージは明確です。
2022年2月24日、つまり侵攻前の線までロシア軍を追い込むことです。
あるいは余力があれば、2014年2月23日の時点の本来の国境線を回復することです。
(今気がつきましたが、2022年と2014年は同じ日ですね。ゲン担ぎでもしたのでしょうか)

もはやロシアが勝つ勝たないなどと議論する時期ではなく、どこまでこの地獄をウクライナ国民に味合わせておくのか、いかに早く終結させるか、という時間の問題です。
だから1日も早く終結させるために、西側は戦車という切り札を出したわけです。

「CNN) ドイツは自国の在庫からウクライナに戦車を供与すると発表し、他国からウクライナへの再輸出も承認する方針を明らかにした。ウクライナのクレバ外相はドイツ製の戦車「レオパルト2」を保有する国に対し、「可能な限り多く」の供与を求めている。
ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は先週、CNNの取材に「こうした戦車300~400両」が必要だと説明。これだけの数があれば「戦争のテンポを急加速させ、終盤戦を開始」できると述べていた。
CNNは供与されるレオパルト2戦車の総数を確認できていないが、少なくとも5カ国が供与を約束していることから、ウクライナ軍は数十両を受け取る可能性が高い」
(CNN2023年1月26日)
ウクライナ、レオパルト2を数十両受領へ 各国の約束まとめ - CNN.co.jp

米国も遅ればせながら、M1エイブラムス戦車を31両供与するようです。

_20230127_042803

ウクライナフォーラム

「バイデン氏は、「今日、私は、米国がウクライナの1個大隊に相当する31両の戦車エイブラムスを同国に送ることを発表する」と発言した。
同氏はまた、本件はオースティン国防長官の勧告に従って決めたことだと伝えた。
さらに同氏は、「戦車エイブラムスは、世界で最も強力な戦車であり、使用し、サービスを施すのが極めて複雑なものだ。そのため、私たちは、ウクライナに対して、その戦車を戦場で効果的にサポートする上で不可欠な部品と機材も提供する」と発言した。
同氏はまた、米国はウクライナ軍人のエイブラムス運用訓練を開始すると発言した」
(ウクライナフォーラム1月25日)
バイデン米大統領、ウクライナへの31両の主力戦車エイブラムス提供を発表 (ukrinform.jp) 

31両ですか。整備部品と乗員訓練までセットでやるのはさすがですが、一説によれば、米軍部隊からの抽出ではなく、アプグレイド改造中を回すということで、となると夏以降になってしまいます。
遅い、今いるのです。

そもそも、ここでウクライナが構えようとしている春季のガチンコ勝負にたった31両では屁の突っ張りのようなものです。
一桁少ない、バイデン300両くらい供与せんかい。

さて、現時点での各国の戦車の支援は、CNNなどによれば以下です。

Germany_leopard2_20230126

レオパルト戦車

ドイツ      ・・・レオパルト2を14両提供。なお増やす予定。
・ポーランド・・・1個中隊規模の戦車を送る。なお1個戦車中隊は通常10~14両のレオパルト2で構成される。
オランダ  ・・・ドイツからリースしている18両のレオパルト2を購入し、ウクライナに送る予定。レオパルト2A6×18輌。
ノルウェー・・・レオパルト2を4~8両を供与する可能性。
・スペイン  ・・・自国の保有するレオパルト2A4を供与。数量未定。決定できないとしている。
ポルトガル・・・用意があるが数量不明。
・フィンランド・・レオパルト2A4NO×8輌。 
・ノルウェー・・・同上
・フランス・・・フランスの主力戦車ルクレールの供与を「排除しない」。
・英国     ・・・ 主力戦車のチャレンジャーを12両提供。
・イタリア・・・不明。
・米国・・・M1エイブラムスを31両。時期不明。エイブラムス牽引用戦術車輌8両と120mm砲弾の弾薬、訓練、メンテナンス、これを維持するための資金。

とまれ、ドイツが各国のレオパルド供与を事実上阻んでいたことが、やっと撤回されたわけです。
かくしてドイツの重い腰が上がったために、やっとレオパルト戦車の供与が開始されたわけです。
しかしかんじんの製造元のドイツは、メルケル軍縮でボロボロになっており、供与するのは新しいものから出すと言っていても、整備に3カ月はかかるとのことです。
累計生産台数は3500両余り、その大部分を輸出商品としてきたドイツ自身の足元はグニャグニャだったようです。

この調子では、たぶん春の終わり頃でしょうか。

ここまで他国に輸出したレオパルトについてさえ供与を許可しなかったのは、彼らはこのウクライナ戦争にかつての独ソ戦の悪夢を思い出してしまったからのようです。
ドイツが作った戦車を供与してしまえば、ロシアは永久にドイツを恨むだろう、ひょっとして核の報復もするかもしれない、おーブルブル、というわけです。
だから、シュルツは執拗に米国も共に戦車を供与することを、レオパルトの供与許可の条件にしたのです。
赤信号みんなで渡ればこわくない。

とまれ、これで、「欧州の同盟国はレオパルト2をウクライナに提供して40輌で構成された戦車大隊を2つ編成する予定だ」(シュピーゲル)とと述べているように、ウクライナ軍はレオパルト2だけで2個大隊80輌以上になると思われます。

ウクライナは、当初からレオパルト2を名指しで供与の要請をしていました。
それはレオパルト2はなんといっても、西側陣営で最も優れた戦車の1つというだけではなく、もっとも広く使用されている戦車の1つだからです。

現在、カナダ、デンマーク、フィンランド、オランダ、ノルウェー、オーストリア、ポーランド、スペイン、スウェーデン、トルコなど20カ国ほどで運用されているために、部隊からの抽出が可能であり、保有在庫の一部をウクライナ支援に回すことが可能だからです。

また、単一のモデルを大量に運用すれば、ウクライナにとっては乗員の訓練や整備部品、弾薬などの保守管理が容易になります。 

その他、エイブラムスとチャレンジャーで43両。
合わせて、123両ていどの戦力になるかもしれません。

この春からと予想されているウクライナとロシアの雌雄を決する戦いは、第2次大戦型になるかもしれません。
この戦争は、サイパー攻撃、ドローン、ジャンベリン、ハイマースという最新技術の戦争となる一方、いったん膠着状態に入れば塹壕を巡っての戦いというまるで第1次大戦の西部戦線のような様相も見せていました。

しかし最終的には占領地を奪還し、歩兵が制圧する必要があり、ここにおいて再び第2次大戦型の戦闘が起きようとしています。
そのために必要な装備は、まずは戦車であり、大砲です。

日本も他人ごとのよう見ていないで、90式をヨーロッパ各国並に提供したらどうですか。
といっても、現実には日建が作っている地雷除去機になるでしょう。
1月24日、ウクライナ非常事態庁の職員が、山梨県を訪れ、日建が製造している地雷除去機を視察しました。
視察をした職員は「ウクライナでは多くの場所に地雷が仕掛けられているので、60機ほど必要だと考えている」と語り、除去機に乗って実際に操作をするなどの技術体験を行ったそうです。
日建は、1995年から地雷除去のプロジェクトに取り組んできており、製造した地雷除去機は、これまでにカンボジアなど世界11ヵ国で活躍しているといいます。

岸田さん、どうせあなたに戦車の供与など言う度胸はないだろうから、せめてこの地雷除去機の緊急、かつ大量供与を、すぐにキーウに行って表明していらっしゃい。
そもそもヨーロッパのときになぜウクライナに行かなかったんでしょうか。
息子遊ばせるために行ってるんじゃないゾ。

いちばんためらっていたドイツでさえ腹を括りました。
日本は森氏のような、「ウクライナに肩入れしすぎれば日ロ関係が崩壊しかねない」などという古い認識を改めることです。
この戦争がいかなる形にになろうとも、元の関係には戻りません。
いままでのような北方領土交渉は二度とないのです。
そこをわからずに、連綿と過去の自分とプーチンの仲を回顧しているとは見上げた馬鹿者です。
その意味で、とっくに森氏が描く日露関係もまた破綻しているのです。

 

 

 

_123907599_mediaitem123907597

マリウポリ市民数千人、ロシアに「連行された」 ウクライナが非難 - BBCニュース

ウクライナに平和と独立を

 

2023年1月27日 (金)

ユンさん、レーダー照射事件は終わっていませんよ

306

ユン・ソクヨル大統領は失念されているかもしれないようなので、老婆心ながらひとこと。
自称「徴用工」訴訟だけが日韓の間に刺さったトゲではありませんので、お忘れなきように。
現在、現在日韓は防衛当局間のテーブルが存在しない状況です。

なぜでしょうか。
それは韓国海軍が海自に準同盟国とは思えない狼藉を働いたからです。
海自は、この韓国海軍のレーダー照射事件を、明白な軍事威嚇行為とみなしており、その原因究明と再発防止が徹底されないかぎり、同じテーブルに座るつもりがないのです。
海自は、この問題で韓国が一札を入れない限り防衛当局者間の関係回復はありえないと言っています。

「海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は15日の記者会見で、平成30年12月に起きた韓国海軍駆逐艦による海自哨戒機へのレーダー照射問題に関し「ボールは韓国側にあると認識している。今後、韓国側から整理された回答があると認識している」と述べた。
酒井氏は、レーダー照射問題と韓国による自衛艦旗(旭日旗)の不当な排斥を日韓の防衛当局間の問題として挙げた上で「2つの問題が明確にされない限りは防衛交流を推進する状況ではない」と強調した」
(産経2022年11月15日)
海上幕僚長「ボールは韓国側に」 レーダー照射問題 - 産経ニュース (sankei.com)

韓国側はとぼけきる気のようですが、レーダー照射事件の原因究明が絶対に必要だということは、ユンが大統領就任前に訪日した政策協議団に対して岸信夫防衛相が直接に伝達しています。
また、6月にシンガポールで行われた「シャングリラ会合」の日米韓防衛相会議の席上、岸防衛相はイ・ジョンソプ国防長官(当時)と目も合わせなかったと伝えられています。

165506712835_20220613

シャングリラ対話で韓国と距離置いた日本、自国でも懸念の声 : 日本•国際 : hankyoreh japan (hani.co.kr)

日本人がここまでするというのは珍しいことです。
要は、日韓関係には自称「徴用工」訴訟だの旭日旗騒動だのと小骨がたくさん残っていますが、このレーダー照射事件も日本側は決してうやむやにする気はないということです。
つまり岸田氏が日韓修復に前のめりになろうと、防衛省は同意できないということです。

「防衛省としては、韓国駆逐艦による海自P-1哨戒機への火器管制レーダー照射について、改めて強く抗議するとともに、韓国側に対し、この事実を認め、再発防止を徹底することを強く求めます。更に、これ以上実務者協議を継続しても、真実の究明に至らないと考えられることから、本件事案に関する協議を韓国側と続けていくことはもはや困難であると判断いたします。
 本公表が、同種事案の再発防止につながることを期待するとともに、引き続き、日韓・日米韓の防衛協力の継続へ向けて真摯に努力していく考えです」
(防衛省 『韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案』)
海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを向けた韓国海軍艦艇の事件に関|防衛省 (mod.go.jp)
防衛省・自衛隊:韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案(最終見解) (mod.go.jp)

韓国相手の場合、原理主義的対応を取るべきです。
慰安婦、自称「徴用工」問題すべてにわたってそうですが、あいまいにさせない、うやむやにはおわらせない、韓国がら再発防できない限り原状回復はしないという強い意志が必要です。
いままであいまいな「大人の対応」をして何度煮え湯をのまされてきたことか。

ユン・ソクヨル大統領も「関係正常化に意欲」を持っているといいながら、あいかわらず「日本側のスタンス」が問題だそうです。
やれやれ、今さら日本になにをしろというんでしょうか。日本側はその主張を理路整然と証拠資料つきで事件直後から開示しているのですが。

「【ソウル聯合ニュース】韓国の国防部関係者は25日、2018年以降事実上中断している日本との局長級による政策実務会議を再開させる方針を明らかにした。「障害があればそれも改めて検討する協議を本格的に推進する」という。
韓国政府は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、日本との外交関係改善に意欲を示しており、国防当局の関係正常化にも乗り出す考えとみられる」
(聯合022年7月25日)
韓国国防部 日本との高官級協議再開推進 | 聯合ニュース (yna.co.kr)

韓国はそうとうに追い詰められてきており、ムン政権末期にはこのようなことを言っていたと小川和久氏が伝えています。

①火器管制レーダーは照射していない。海上自衛隊の哨戒機がキャッチしたのはほかのレーダーの電波だ。この点は海軍参謀本部の高官に確認している。
②日本側は民間航空機の基準を適用して高度150メートル以上を飛んだとしているが、軍用機には飛行高度の制限はないので、逆に不思議に思っている。
③(反論動画の公開など)韓国側の対応はまずかったと思っている。
④両国の実務レベル協議の開催地をソウルにするか東京にするかで揉めており、これもバカげたことだ。
⑤なぜ駆逐艦があの海域にいたのか、われわれも不思議に思っている。北朝鮮漁船の救助には海洋警察の新鋭巡視船が派遣されており、駆逐艦は必要なかった。
⑥安倍晋三首相は事件を支持率回復の道具に利用しようとしている。
(小川和久2019年1月14日)
軍事アナリストが断言。レーダー照射事件は「韓国の全面降伏」 - まぐまぐニュース! (mag2.com)

韓国は、あのような馬鹿げた世界への発信は失敗だったと思ってはいるようです。
しかし、根本的にぜんぜん歩み寄る気はないようです。
そもそも、まず①でアレは別のレーダー波だということ自体が話になりません。

あのね、航海用レーダーとはまったく波長が違うのですよ。
サーチライトのように強力な電波を対象にぶつけるのです。
下写真の赤線の波動で、いきなり「強い電波を継続して探知」という部分が火器官制レーダーが海自機を照射していた時間です。

Ijauau74mnlsff2sd5otfk7cbu
防衛省

ここを認めない限り、それ以下のことを議論すること自体無駄です。

あの事件で、韓国艦艇は火器管制レーダーを海自哨戒機に指向しているのは画像で明らかです。
下写真の赤丸で示したのが火器管制レーダーですが、日本機を指向しているのがわかります。

Top_image_20220822064601

防衛省
韓国海軍レーダー照射事件について日本側が最終見解を発表(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

防衛省は補足説明資料で「レーダーの種類と特徴」を解説しており、事件当時の韓国レーダー波を公開して、航海用レーダーとは別種の火器官制レーダーが発射されたことを明らかにしています。

当時P-1は、火器管制レーダーを発射した意図を韓国側にただしましたが、応答はありませんでした。
韓国側は、日本側の無線による問い合わせにも後日、無線が微弱で聞こえなかったとのお粗末な言い訳をしていましたが、日本がキャッチできなかった北朝鮮の漁船の救助信号をとらえているくらいに優れた無線機をお持ちなのに、おかしいですね。
低空で威嚇を受けたと主張しておきながら、頭上で送信されたような日本機の問い合わせ通信を受信できなかったとは(苦笑)。

韓国はいまだ火器管制レーダーのアンテナについている光学観測装置を指向しただけだと言っていますが、これだけ証拠を積み上げられてもこう言っていられる神経を疑います。
返答はしたと言い張っていますが、韓国軍内部ではしていないことがわかっています。

「沈勝燮(シム・スンソプ)韓国海軍参謀総長は7日、韓国の駆逐艦『広開土大王(クァンゲト・デワン)』が所属する海軍1艦隊司令部を訪れ、『外国の航空機との遭遇などの偶発的状況にも国際法にのっとって対応しなければならない』と述べました。
自衛隊機に対して、韓国側から交信を行わなかったことなどを念頭に、現場部隊の不十分な対応を『叱責』したとも取れる発言ですが、韓国海軍はあくまで激励のための訪問だとしています」
(テレ朝2019年1月8日)

では、だれが命じたのでしょうか。
当時CIC(戦闘情報センター)に詰めていた係員のミスという説もありましたが、これは明確な敵対的戦闘行為ですので、よほど韓国海軍の規律が緩んでいないかぎりありえません。
もちろん砲雷長クラスでもダメで、艦長でさえ司令部に命じられてどうにかという高いレベルの判断を要求される事案です。

おそらく艦隊司令部が出しているはずです。
実はムンが指令したものだという文書がでてきてしまいました。
なんと日本にだけは特別な「日哨戒機対応指針」という交戦規定があったようです。おいおい。

「8月17日、与党「国民の力」の申源湜(シン・ウォンシク)議員によると、2019年2月軍当局は「日哨戒機対応指針」を海軍に通達した。これはその年1月に作成した「第三国航空機対応指針」とは別途の指針だ。
「第三国航空機対応指針」は公海で第三国の航空機が味方艦艇に近づいた場合、段階的に対応するよう指示する内容を含んでいる。第三国航空機が1500フィート(約457メートル)以下に降りてきて近くまで接近すれば、味方艦艇は相互を識別した後、通信で警告するなどの4段階の手続きに従って行動するよう定めている。1次警告が通じなければさらに強硬な内容のメッセージを2次として発信しなければならない。
ところで「日航空機対応指針」は「第三国航空機対応指針」と比べると、1段階さらに追加された5段階となっている。日本軍用機が2次警告通信にも応じず近距離を飛行した場合、「追跡レーダー照射」で対抗するように規定した。追跡レーダーは艦艇で艦砲やミサイルを狙うために標的の方向や距離、高度を測定するレーダーだ。射撃統制レーダーと称したり、日本では火気管制レーダーとしても使う」
(中央日報日本語版2922年8月18日)
文政府「日本哨戒機に追跡レーダー照射しろ」…事実上の交戦指針(1) | Joongang Ilbo | 中央日報 (joins.com)

なんと「日機」にだけは、他の国への対処とは違ってレーダー照射してよいという方針です。
軍事的に緊張関係にあるはずのロシア、中国には第三国と同じで警告通信はをするところまでですが、日本にだけはその先の戦闘行為をしてもよい、というお達しです。
ロシアは、早期警戒機A-50が2019年7月23日に、彼らが領土だと言っている竹島上空を2回侵犯し、韓国空軍がスクランブルをかけています。このときは警告射撃までしています。
しかも当時、韓国の防空識別圏を、ロシア戦略爆撃機Tu-95と中国戦略爆撃機H-6が編隊を組んで侵入していました。
にもかかわらず、その中露には警告だけでよい、日本は丸腰の哨戒機にレーダー照射だというのですから、どっちを向いて仕事をしているのか、この軍隊は。

戦争をしたくてたまらない韓国軍の実態がわかります。
軍の判断ミスではなく、ムン大統領府からの指示な以上、根が深いのです。

ちなみに韓国が「救助活動」をしていたという海面は、初めは大荒れといいながら、実は下の写真でもわかるようにベタ凪でした。
救助対象の北朝鮮の漁船らしきものには、日本近海に出没した不審船によくみられるアンテナが林立しているといった具合に、いったいなにしていたのやら。
まぁ、常識的に考えれば、他人さまに見られたくない密事をしていたと考えるのが妥当でしょう。
おそらくは、北となんらかの瀬取りをしていたのだと憶測できます。
それが物資なのかヒトなのかはわかりませんが、日本に見られたくはなかったことだけは確かです。

Wor1901040012p1

 

海自の哨戒機が能登半島沖を監視飛行していたのは、この海域で韓国艦艇がなんどとなく不審な動きをしており、それが北の瀬取りと関連があると推測していたからです。 
この当該の駆逐艦クァンゲト・デワンは4回も監視活動に引っかかっていて、この船が出す電波情報は哨戒機によって、何回となく正確にモニターされていたと考えられます。 
おそらく、既に火器管制レーダーすら複数回照射されていたかもしれません。 
あえてレーダー照射事件の公開に日本が踏み切ったのは、かねてから不審な動きがあった韓国艦艇が、北の不審な「漁船」とドッキングしていた現場を押さえたからです。

ユン氏はいま精力的に親北のスパイを狩りだしています。
けっこうなことですから、ぜひ軍部にも司直のメスを入れて下さい。
たぶんウジャウジャと北朝鮮のスパイが芋づる式に出てきますよ。
日本と防衛当局間の回復をするのは、それからです。

 

2023年1月26日 (木)

ユン政権の「財団方式」のゆくえ

009_20230125041901
昨日の記事は、スクラップばかりで読みにくくて、すいません。
まだ公開情報集めな段階なものでして。
さて私は韓国のことを考えると頭痛がします。
憂慮するとか、怒るのではなく、どうぞご勝手にしたらいかがでしょうか、という気分になるからです。
例のムン・ジェイン時代の、輸出規制強化がらみでGSOMIAを廃棄するからどうこうのと言い始めた時には、もうサジを投げました。
こりゃなにを言ってもどうにもならない、理性的対話が不可能な国であるというのが、当時のかの国への偽らざる見方でした。
行くところまで行って、「高麗連邦」でもなんでも作ってくれ、こちらは備えるだけだからってかんじです。

この国の落下スピードにややブレーキがかかったのは、ユン・ソギョル(尹錫悦)が大統領になってからです。
彼は氷河期の日韓関係を、どうにか改善したいと思っているようでした。

正直言って、迷惑な気分でした。
どうせかの国においては、世論に忖度してまともな解決案を出してくるはずがないのです。
なぜなら自称「徴用工」訴訟は、日本政府が同意しないかぎり完全な袋小路ですから。

そんな状況で、韓国政府からいいかげんな「解決案」を持って来られても、日本が拒否しようものならまたまたチュドーンと再噴火に決まっていますから、ガン無視するしかありません。

2023011200000041jij00024view

徴用工問題「肩代わり」案公表 日本企業の関与明言せず 韓国政府(時事通信) - Yahoo!ニュース

と思って見るともなく見ていると、韓国政府が出してきた「財団方式による並存的債務引受方式」なる案はそれなりによくできたものでした。

「日本企業に代わって原告に損害賠償金を支払うとされているのは韓国の「日帝強制動員被害者支援財団」だ。この財団は日本による植民地支配時代、軍人や労働者、慰安婦として動員された人たちの福祉支援、追悼、さらに強制動員被害に関する文化・学術研究、調査などを目的に2014年に設立された。
韓国政府案ではこの財団に韓国企業が寄付し、それを財源として財団が元徴用工に賠償金などを払う。既に韓国最大の製鉄会社ポスコが100億ウォン(約10億円)の拠出を約束し、すでに60億ウォンを寄付している」
(薬師寺克行 2023年1月23日)
元徴用工問題のボールは韓国から日本に移った | 外交・国際政治 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net) 

 このユン案が一歩前進しているのは、「対日戦争被害者」に対する慰労金を当初のパク・チョンヒ時代のやり方に戻したことです。
今さらそもそも論を言っても始まりませんが、元来1965年の日韓請求権協定で個人賠償まで含めて一切合切解決済みなのです。
日本はこの線から一歩も出ることはできません。
条約は国内法を超越するのです。

ムンが仕込んだ大法院判決がなんと言おうと、それはあくまでも韓国の内政のお話です。
二国間条約をそうそう簡単に変えたりしたら、二度と金輪際こんな国と条約を締結するわけはありませんものね。

それに個人賠償部分を払うという日本に、韓国側がいやそれはウチの国がなんとかするからまとめて支払ってくれと言ったのが、1965年頃当時の経緯でした。
日本は個人補償まで含めて払うといったのに、韓国が拒否して一括支払い方式にしたのです。

当時の韓国は経済を建て直すために、喉から手が出るほどまとまったカネが必要だったからです。
しかしそれはかの国の事情ですから、今になって個人補償を怠ったなんて難クセをつけられても日本は知らん。

韓国政府もそのいきさつがわかっている交渉当事者のパク・チョンヒ時代までは「対日被害者」に慰労金を支給していました。
韓国政府が誠実にズっとこの慰労金名目の個人補償制度を続けていれば、慰安婦問題も自称「徴用工」訴訟も起こりようがなかったのです。
しかし韓国政府はいとも簡単にこの慰労金をフェードさせ、その事情すら説明しようとはしなかったのです。
いまさら実はもらっていました、と正直に国民に言うのが怖かったのでしょうな。

これを一気に二国間紛争の域に持ち上げた愚か者が、韓国の鳩山ことムン・ジェインでした。
彼は大法院院長に北朝鮮の息がかかったキム・ミョンスを抜擢し、三権分立を楯にして自称「徴用工」訴訟をやらしたのです。
政府自身がそれをするのではなく、司法判断だと逃げて迂回攻撃をしかけたのですから、タチが悪い。

特に司法が認めた現金化に踏み切れば、完全に日韓関係は終了となります。
そうなったら実質的に断交でしょうから、リカバリーは効きません。
ですからこれを引き継いだユン政権としては、日本をとの関係をこれ以上こじらせることなく、かつ、ムンが焚きつけた反日感情にも配慮しつつ軟着陸させること以外になかったのでしょう。
お察ししますが、そうとうに解けない知恵の輪のようなものです。

37btuyuftblyzbpe26q6amdoni
<特報>徴用工 割れる韓国 国内調整は破綻…「慰安婦」二の舞いも - 産経ニュース (sankei.com)

そこで出てきた苦肉の策が、この「財団方式による並存的債務引受方式」です。

「徴用工問題の解決に動き出した韓国政府は、1月12日、外交部と超党派の韓日議員連盟の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)会長が出席して公開討論会を開催した。
この公開討論会で、外交部の徐旻廷(ソ・ミンジョン)アジア大洋局長が説明した解決案では「債権債務履行の観点から、判決金(賠償金)は法定債権として被告である日本企業の代わりに第三者が弁済可能ということが(これまでの官民協議会で)検討された」と説明した。要するに、徴用工への賠償は行うが、その賠償金の出し手は、裁判の被告になっている日本政府ではない第三者であってもかまわない、ということだ。「徴用工問題はすでに解決済み」とする日本政府の立場に歩み寄った内容といっていい。
さらに同局長は、第三者による弁済を行う場合、政府として原告の被害者と遺族に直接説明し、受け取りの意思を尋ね、同意を求める過程を必ず経ると強調したという。」
(武藤正敏 2023年1月21日)
 JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp) 

要するに、日本政府や企業がカネを出さなくてもよい、韓国企業と政府がこの財団に拠出するからということのようです。
まぁ、あたりまえのことなので、はぁそうですか、勝手におやりなさいとしかいいようがありません。
日韓請求権協定によって、新日鉄からプラント建設と技術供与まで受けて大企業に発展した鉄鋼大手「ポスコ」などがこの財団に出資するのはとうぜんのことです。
今まで懐手して、三菱重工などが叩かれる様を横目で見ていたほうが図々しい。

ところで今後ですが、この財団が訴訟団に「賠償金」名目でカネを支払っても、彼らは受け取らないでしょう。
訴訟団の弁護士や中心的原告がやりたいのはあくまでも反日運動であって、自分の要求がパーフェクトに満たされない限り歩みよらないでしょう。
しかし、慰安婦問題の時もそうでしたが、被告人は一枚岩ではなく、先がまったく見えない法定闘争をいくらしてもラチがあかない、いま政府が財団を作って慰労金をくれるのだから手仕舞しようと考える者のほうが圧倒的に多いのです。
ユン政権としてはこういうサイレントマジョリティに期待してのことだったでしょうが、うまくいくかどうか。お手並み拝見です。

慰安婦財団の時も、日本政府からのお詫びのカネと手紙を受け取った元慰安婦に対して、ユン・ミヒャンなどの支援団体はしらみ潰しのようにして彼女たちの自宅を襲い、カネと手紙を返却させました。
この挺対協がなんのために元慰安婦支援をしているのかよくわかります。

今回も弁護団は左翼丸出しの人たちですから、ここで解決されてしまっては闘争ができなくなるとばかりに、政府や財団が原告らに面接するのさえ阻止しようとするでしょう。

中央日報の予測はこうです。


まぁ、そうなるでしょうな。
武藤氏は、財団が供託する。すると「供託無効」の訴訟が出る、再度供託する、また供託無効を訴える・・・以下この繰り返しで国内をなだめられない、と予測しています。

そして司法判断は、北にしっかりと浸透されていますから原告有利な判決を出すでしょう。
まぁ考えないことにしましょう。
いずれにせよ、日本とは関係のない韓国の内政問題ですから。

 


2023年1月25日 (水)

自称「徴用工」問題は北朝鮮のスパイたちが作ったようだ

S-026_20230124045701
とうとう韓国左翼の大黒柱である民主労総に司直の手が伸びたようです。
民主労総だけではなく、慰安婦問題の使い込みで糾弾されている正義連(旧挺対協)のユン・ミヒャン議員の補佐官などの従北団体までが芋づる式に出てきたようで、司法にまで捜査が拡大すると見られています。
しみじみと、ああ、時代が変わったのだと思います。
ムン時代には、政権の陰の司令塔としてアンタッチャブルな組織でした。

【ソウル=上杉洋司】韓国の情報機関「国家情報院(国情院)」と警察庁は18日、反米・反日デモを展開してきた急進的労組「民主労総」幹部や市民団体関係者らが北朝鮮の指令を受けていた疑いがあるとして、ソウルの本部など約10か所を国家保安法違反容疑で捜索した。北朝鮮が韓国に「スパイ組織」を構築しようとした可能性があり、保守の 尹錫悦 政権は全容解明を目指す方針だ。
検察出身の尹大統領は、スパイ行為を防ぐ 防諜活動を立て直すとともに、左派の 文在寅政権下で強大化した労組の政治的影響力を弱める狙いとみられる。民主労総は、韓国最大規模の労組の全国組織だ。
対北融和を推進した文政権下では、北朝鮮スパイに対する警察や国情院の監視網が弱体化した。中央日報によると2011~16年に26件あったスパイ摘発件数は、文政権下の17~20年には3件にとどまった。朝鮮日報によると、国情院は北朝鮮と民主労総のつながりを17年から把握していたが、当時の上層部が捜査を事実上、妨害した。北朝鮮との関係悪化を恐れる文政権の意向をくんだとみられる。
今回の一連の捜査は、昨年5月の政権交代後に大きく動いた。韓国メディアによると、国情院と警察は昨年末以降、 慶尚南道 ・ 昌原、 全羅北道・ 全州、南部の 済州道で国家保安法違反容疑で市民団体関係者の自宅などを捜索した。いずれも北朝鮮当局者や関係者と電子メールなどで連絡を取り合っていた模様だ」
(読売2023年1月23日)
反米・反日デモ展開の韓国労組に「北スパイ」疑惑…指令受け地下組織構築か : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)


2023011800000159san0002view
韓国、最大労組に捜査 北指令で反政府活動の疑い(産経新聞) - Yahoo!ニュース

ユン大統領は、就任当初から民主労総と対決姿勢を明確にしていました。
それは民主労総がムン政権を牛耳って、韓国のこの間の反日・反米路線を煽った張本人だからです。
小川和久氏は、民主労総についてこう述べたことがあります。


「韓国の元閣僚と昼食をともにする機会がありました。もともと情報機関の専門家で、しばしば意見交換してきた人です。この日も、貴重な助言がもたらされました。
「文在寅政権の姿は、労働組合に牛耳られてきた1970年代の日本と似ています。
過激な労働組合が文在寅政権を動かしており、労働組合が国民の支持を拡げようと反日的な動きを煽った結果が、今回の一連の動きなのです。心ある韓国の国民は憂慮しています。日本側は毅然たる姿勢で労働組合の策動を打ち砕く必要があります。
文在寅政権が北朝鮮に近いから注意すべきだということは、これまでにも指摘されてきました。しかし、北朝鮮との関係以前に労働組合の性格を把握しておく必要があるというのです。
 この労働組合とは、戦後日本の総評、連合に当たる全国民主労働組合総連盟(民労総)のことです。組合員約70万人。世界的にも戦闘的な労働組合として知られているのだそうです。」
(『NEWSを疑え!』第729号2018年11月26日特別号)

ユンは民主労総の一大拠点である「貨物連帯」のストに対して、一歩も退かずに原則を守り通しました。
敗北した民主労総はストライキを中断しました。

「民主労総全国公共運輸社会サービス労働組合貨物連帯本部(貨物連帯)のストライキが続く中、先週、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が参謀たちとの非公開会議において貨物運送労働者たちのストについて「北朝鮮の核の脅威と同じ」、「原則を打ち立てるべき」という強硬発言を行っていたことが確認された。尹大統領が労働者のストを国家安保に対する脅威に例えるというやり方で労組に対する敵対的認識を表明したことで、対立を悪化させているとの批判の声があがっている
(ハンギョレ2022年12月6日)
「貨物スト、北朝鮮核の脅威と同じ」労働者に敵対する尹大統領(ハンギョレ新聞) - Yahoo!ニュース

 ムン時代には、民主労総を捜査すること自体考えることすらできませんでした。
元駐韓大使の武藤正敏氏はこう述べています。

「文在寅(ムン・ジェイン)政権では、北朝鮮スパイの取り締まりをほぼ放棄していたため、北朝鮮のスパイが市民団体の活動に入り込んだ。また、左翼系弁護士の団体が司法府を支配するようになり、彼らの意向が大法院の判決などを通じ、市民団体の活動を後押ししてきた。
このように韓国の一部の市民団体は、北朝鮮の指示を受け、左翼に支配された司法界と連携し、文在寅政権が提供した補助金を使って韓国社会に大きな影響力を行使してきたのである。これが文在寅政権時に日韓関係が「過去最低」と言われる水準に落ち込んだ大きな要因になっている」
(武藤正敏 2023年1月21日)

徴用工問題をこじれさせた「北のスパイ」と「左翼裁判官」、韓国政府が排除へ 北朝鮮スパイの工作にまんまと乗せられてきた韓国社会、国情院が決死の捜査(1/6) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

また、ムン政権が国情院のスパイ捜査を妨害しただけではなく、スパイ取締の権限を剥奪してしまいました。

「文在寅前政権が書き込み捜査を政治的に利用しながらサイバー安全保障はほとんど犯罪視され、スパイを捕まえる国家情報院の対共捜査は事実上中断した。過去5年間のスパイ捜査は「忠北(チュンブク)同志会事件」がほとんど唯一だ。
昨年5月に尹錫悦政権に入り、国家情報院のスパイ捜査がまた部分的に再開され、あちこちで暗躍したスパイの尾が次々と現れている。済州ハンギル会、昌原民衆自主統一前衛、全州全北民衆行動などが言及され、民主党出身無所属の尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員の補佐官までが登場した。
文在寅政権時代の2020年11月、当時の与党「共に民主党」は巨大議席を武器に国家情報院法改正案を単独で強行処理し、2024年1月からは国家情報院の対共捜査権を警察に移すことを決めた。これは当時の朴智元(パク・チウォン)国家情報院長が主導して進められたものだ」
(武藤前掲)

それだけではなく、国情院はムン政権の意向にそぐわない情報は削除されていました。

「【ソウル=桜井紀雄】韓国のソウル中央地検は29日、2020年に黄海を漂流中の男性が北朝鮮軍に射殺された事件で、南北融和を重視する当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権の意向にそぐわない情報の削除を指示したとして、公用電子記録など損傷の罪などで、情報機関、国家情報院の朴智元(パク・チウォン)前院長と徐旭(ソ・ウク)前国防相を在宅起訴した。
地検は既に、大統領府の安全保障政策の責任者だった徐薫(フン)前国家安保室長を職権乱用などの罪で逮捕・起訴している。文前大統領は当時、事件に関する報告を最終承認したのは自身だとして元側近らへの捜査に反発を示した。事件を巡って現政権と前政権関係者の対立が深まっている」
(産経2022年12月29日)
韓国、情報機関前トップら起訴 北の射殺事件 前国防相も - 産経ニュース (sankei.com)

恐ろしいことには、国情院だけではなく、国防省にも及ぶようです 

民主労総は、北朝鮮の韓国内スパイ組織である「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」から直接に指令をもらっていたことを朝鮮日報が報じています。

「韓国・済州道に作られた北朝鮮のスパイ組織「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」は、尹錫悦氏が大統領選に当選直後の昨年3月29日、「韓米合同軍事演習に反対する大衆闘争を集中展開し、就任を控えた尹錫悦はもちろん米国にも強力な圧迫攻勢をかけなければならない」という内容の指令を受け取った。
また、同日には「民主労総4・3統一委員会、学校非正規職労組済州支部、建設労組済州支部をはじめとする労組と進歩運動団体を組織し、進歩政党候補を後押しする支持運動を展開せよ」という指令も受け取っていたという。
 韓国のリベラル政党幹部は、2017年カンボジアで北朝鮮の対南工作員と会い「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」という地下組織を設立する指令を受け、反政府活動や利敵活動を行ってきた。「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」のメンバーはその後5年3カ月にわたり北朝鮮の対南工作機関である文化交流局の司令部を受け取ってきたことが判明している」
(武藤前掲)

_20230124_043859

読売

韓国の国家情報院は以下の3点を摘発したようです。

(1)Aが北朝鮮から工作金を受け取ったり、不詳の内容物を取引した可能性。
(2)今回の民主労総事件が済州を基盤とする秘密組織の行動と似たパターンという点。総責任者と見られるAが数回にわたり海外で文化交流局所属の工作員と接触したと見ている。
(3)Aは北朝鮮と通信するために済州秘密組織のように北朝鮮文化交流局が開発した暗号プログラムなどで通信した疑い。
(武藤前掲)

朝鮮日報の取材によればこのような経過だったようです。

「韓国のリベラル政党幹部らが2017年、カンボジアで北朝鮮の対南工作員と会い、「済州道に(ハングル字母による)『ヒウッ・キヨック・ヒウッ』という地下組織を設立せよ」という指令を受け、反政府活動や利敵活動を行ってきたとして、スパイ防止当局の捜査を受けていることが8日までに確認された。国家情報院と警察は5年以上事件を追跡し、昨年末に2度の捜索を実施した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足後初めてのスパイ組織事件だ。
 本紙が入手した捜索令状などによると、リベラル政党幹部A氏は2017年7月29日、カンボジアの景勝地アンコールワットで朝鮮労働党の対南工作部署である文化交流局(旧225局)所属の工作員と接触した。
A氏はカンボジアの潜伏先で3日間、北朝鮮工作員から済州道の地下組織「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」の設立と運営計画、暗号通信法などについて教育を受けたという。A氏はその後、済州道の労働界幹部B氏と農民運動をしていたC氏を抱き込み、実際に「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」を組織した。
「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」の意味は捜査中だという。A氏らは昨年11月まで北朝鮮から「民主労総傘下の済州4・3統一委員会掌握」「反米闘争拡大」「尹錫悦糾弾排撃」「韓米軍事訓練中断」「米先端兵器導入反対」「反保守闘争」など具体的指令を受けた。一部の指令は実際に履行したことを北朝鮮に報告したという」
(朝鮮日報2023年1月9日)
【独自】「民主労総・市民団体を使って闘争せよ」…北の指令を受けていた済州のスパイ組織摘発-Chosun Online 朝鮮日報

今まで民主労総と北との関係は疑われていましたが、ここまで明確に指令関係が暴かれたのは初めてです。
北朝鮮の政権初期から対外連絡部、社会文化部、225局などと名前を変え、韓国内に地下組織を作り、従北勢力を扶植してきました。
おそらく他の左翼系団体にも波及するのは必至です。
いままで民主労総が、やりたい放題で動いてこられたのは、ムン政権中枢と一体化していたためです。
ムン政権が操っていたのではなく、民主労総がムン政権を操ってていたのです。

この民主労総は、ことのほか「日韓連帯」に熱心で、度々沖縄に押しかけてデモをしています。
特に彼らの姿がひんぱんに見られるのは沖縄の辺野古で、もはや支援団体の一角に名を連ねているといってよいくらいです。 

Okinawa05

日韓ネット

よくネットで辺野古にハングルがあったと言っていますが、それはこの民主労総です。
そのお返しなのかもしれませんが、日本の過激労組もよくソウルのデモに登場しています。
関西生コンはかねてから北とのダークサイドのつながりを指摘されてきたので、何らかの接点があるのかもしれませんが、詳細はわかりません。

日本の過激派が極少派であることに対して、韓国民主労総は組員約70万人、加盟単産16を擁するナショナルセンターで、日本でいえば連合にあたります。 
ムン政権時代民主労総は急激に拡大しました。

Uid000010_20191231200957f4aacd6a

第32回 民主労総が、韓国の「第一労総」になったニュースに思う – NPO法人 働き方ASU-NET (hatarakikata.net)

「わずか1年で民主労総が26万人近くも組合員を増した結果、1位と2位が逆転したことになります。その結果、労働組合員全体の中では41.5%が民主労総所属で、40.0%が韓国労総所属となりました」
働き方ASU-NET (hatarakikata.net)

ムンジェイン政権を誕生させた「ろうそく革命」も彼らが主役でした。

200806111327421

ソウル太平路すっぽり覆ったろうそく…6・10抗争後、最大デモ決行 | Joongang Ilbo | 中央日報 (joins.com)

特に基幹産業である自動車大手のヒョンダイ(現代)労組のほか、全国教職員労組、全国公務員労組、交通関係労組などを支配しています。 
彼らがいかなる力を企業で持っているかを象徴するのは、民主労総系ヒョンダイ労組組合員が、組合員というだけで世襲で雇用される権利を持っていることでもわかります。
日本では考えられもしません。


「韓国の30大企業のうち現代・起亜自、大宇造船海洋、現代オイルバンク、LGユープラス、現代製鉄、韓国GM、大韓航空の8社は、労使の団体協約に「定年退職者や長期勤続者の子女を優先採用する」というような「雇用世襲」条項を設けている。この事実は、雇用労働部(省に相当。雇用部)の実態調査で確認された」
(朝鮮日報2016年3月4日)

なんと労使間の団体協約に、「世襲条項」(!)があるそうで、その枠は労組幹部が握っているそうです。
しかも、作業工程のボルトの締めつけひとつまで、労組が管理していますから労組の意向を聞かないと、ネジ一本すら締められないことになっているそうです。


「現代自動車労使が締結した団体協約の規定は問題だらけだ。例えば労組が反対すれば下請業者に仕事を渡したり、海外に工場を新設したりすることも難しい。
「Aボルトを締める組合員にBボルトを締めるよう仕事を移すこともできない」とまでささやかれている。
長期勤続退職者の子どもを優先的に採用するなど、代々引き継いで仕事ができる「雇用世襲」条項に対して裁判所で無効判決が出たのが2013年のことだ。
それでも現代・起亜自動車をはじめとするかなりの数の大企業労使でこの条項が守られている。大多数の若年層求職者・失業者は血の涙を流していることだろう」
(朝鮮日報前掲) 

労組幹部ともなると、専従として働きもせずに高給を食み、やることは唯一デモストだけ。 
その上に、子弟は世襲で入社できるというのですから、まさに超格差社会の韓国の勝ち組そのものです。

完成車を出荷させないなどは手ぬるいほうで、いったん暴発すれば下の写真のような暴動まがいの「抗議行動」が見られます。 

Img_0


聯合

「労働運動界の暴力ざたは今に始まったことではない。ソウル・光化門広場で全国民主労働組合総連盟(民労総)が「国全体をマヒさせる可能性がある」として鉄パイプで警察官を殴り、警察車両に放火まで試みたのは2年前のことだ。
その前には「希望のバス」というデモ隊が蔚山で竹やりを振り回して数十人が負傷した。これに比べれば、今回の現代自動車の暴力ざたはささいなことだ。しかし、その内幕にはウミが破れたような労働問題が見え隠れする」
(朝鮮日報前掲)

おいおい、これが労組のやることかよと思いますが、日本でいえば全トヨタ労連に匹敵するヒョンダイ労組が大ぴらにやっているわけですから、どうにもなりません。
こんなことやっていて、激戦の国際自動車市場で生き残れるのかと思いますが、当然のこととしてヒョンダイは経営危機に瀕しています。
韓国政府はこれを規制するどころか、彼らにすり寄り、いいように操られてきました。


「民労総が国際的な労働運動の会議などに出るとき、出張旅費など多額の経費を韓国政府が様々な名目で負担しています。これを見ても、いかに労働組合主導の政権だということがわかるでしょう」
(小川前掲) 

日本でいえば、関西生コンが天下をとってしまったようなものです。

さらに深刻なことには、は労働界だけではなく法曹界にも北朝鮮のスパイ網は延びていました。

「文在寅政権下では、北朝鮮スパイの動きは隠蔽されてきた。また左翼系司法界の支配構造は、三権分立を盾に見過ごされてきた。
しかし、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権になってこうした点を是正する動きが始まっている。特に、最近韓国のメディアを賑わしているのが、北朝鮮のスパイ取り締まり強化である。
他方、司法府の改革については、金命洙(キム・ミョンス)大法院長の6年の任期が今年9月に終了するので、それ以降に本格化するものと見込まれている。まず、大法院の法官を左翼が多く占める状況を改善していくことから始めるであろう。
日米韓の協力体制を強化していくためには、韓国社会の左翼支配の構図を一掃する必要がある。
尹錫悦大統領は、過激労組・民主労総系の貨物連帯のストを「法と原則」を貫いて、基本的な点では譲歩せず解決した」
(武藤前掲)

Kp20210215400x220

窮地の文在寅。大抜擢した韓国最高裁長官“大ウソ発覚”の大誤算 - まぐまぐニュース! (mag2.com)

この大法院長のキム・ミョンス は、2016年に春川地方法院の院長から大法院長官に大抜擢された人物です。
大法院判事の経験がない人物が大法院長に就任するのは極めて異例のことで、彼はムンと政治信条を同じくするので、抜擢されたのでした。
キムは左翼系判事団体の「ウリ法研究会」会長で、大法院院長に着くや、裁判で文在寅政権の意向に反する判決を出す裁判官は昇進させず、代わりに左翼系の「ウリ法研究会」「民主社会のための弁護士会(民弁)」に所属する弁護士だけ司法府の幹部に登用するようになります。
このキム院長がやった大仕事が、例の自称「徴用工」判決でした。

5103591_ext_col_03_4

このような北朝鮮のスパイ組織から指令を受けた民主労総やユン・ミヒャンなどの慰安婦団体が火を着け、それを司法内部のキム大法院院長が司法の独立を楯にして政府に勧告する、これをムン政権が国際化して韓国と日米の間に楔を打ち込もうとしたのです。  
もはやムンジェイン政権時代には、韓国は半分以上北朝鮮によって内部から乗っ取られていたようです。

 


2023年1月24日 (火)

なぜ、共産党は党名変更ができないのか

S-020_20230123151201

もう少し共産党について考えてみましょう。

共産党はどうして「日本共産党」などというカルト的響きのある党名を変更できないのでしょうか。
だってそうでしょう。
「共産党」という一般人にとって禍々しい響きしかない党名は自己満足しているぶんにはいいのですが、おおよその国民にとっては、うわぁ気持ち悪い、コワイでしょうね。
中国や旧ソ連、はたまた北朝鮮(労働党ですが)と同名ですもんね。
「共産党」という党名のでプラスのイメージはナッシングです。
この党名から喚起されるイメージは、虐殺と拷問、飢餓と牢獄、そして戦争のイメージだけです。
あんな血に塗られた共産党なんて看板を、後生大事にしている神経がわかりません。

ある党員からこの党名さえなければ、なんぼか選挙がラクなんだがとこぼされた記憶があります。
たとえば「日本国民党」とか、「ミュージック&エコロジー」(ファッションメーカーかって)みたいなね。
ところが、エライさんはガンとして、そんな現場の声に耳を貸しません。
志位氏など、このアナクロそのものの党名を100年先まで変えないとがんばっています。

「共産党は15日、創立100年を迎える。志位和夫委員長は14日、国会内で記者会見し、「平和と民主主義、社会進歩を目指して、どんなに強大な権力だろうと勇気を持って正面から立ち向かってきた歴史だ」と100年の歩みを振り返った。そのうえで今後について「新たな躍進を勝ち取るべく奮闘する決意だ」と抱負を述べた。
共産党は1922年7月15日に発足した。志位氏は会見で、治安維持法による「弾圧」を受けた戦前や、旧ソ連や中国共産党に従属しない「自主独立路線」を掲げた戦後の歴史を振り返った。党が存続してきた理由について、「どんな困難でも国民を裏切らない不屈性」を持ち、「常に自己改革を進めてきた」ためだと総括した」
(毎日2022年7月14日)
共産党創立100年 志位委員長、「この先100年もこの名前で」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

私は共産党との距離が、あなたが民主主義をどれだけ理解しているのか、あるいは民主主義とどれだけ距離があるのかを計る計測器だと考えてきました。
ひと頃の立憲などはほとんど合体せんばかりですから、きわめて危険な立ち位置にいるのがわかります。
枝野氏は共産党についての今の政府見解を、政権をとったら変更すると言い出しました。

Rpjr18gw

産経

「立憲民主党の枝野幸男代表は16日、共産党が「敵の出方論」に立った暴力革命を選択肢から排除していないとする従来の政府見解について、衆院選で政権交代を実現した場合、変更する可能性を示唆した。国会内で記者に「枝野内閣で変更するのか維持するのか」と問われ、「少なくても私は、今、共産が暴力革命を目指しているとは全く思っていない」と述べた」
(産経2021年9月16日)
「共産は暴力革命方針」の政府見解、枝野内閣で変更も - 産経ニュース (sankei.com)

おいおい、政府を取ったら政府見解を変えるだろうなんて願望ではなく、まず自分の「同盟者」である共産党に問えばいいだけことではありませんか。
志位さん、あなたがたは暴力革命は「敵の出方論」ですよね。
ほんとうにあなたの党は暴力革命論を放棄したのですか、政府の出方次第でまた変えようというんじゃないでしょうね、と。

まぁ、いちおう志位氏は答えてはいるのです。

「一方、共産は8日の中央委員会総会で、暴力革命を排除していないとの受け止められるのを避けるため、過去に使用していた「敵の出方論」と呼ばれる表現を今後は使わないと決めた」
(産経前掲)

な~んだ、今度は「敵の出方」論は、「表現」として引っ込めますというだけのことで、口先でモゴモゴ濁しただけのことです。
変えるのはあくまで「表現」だけで、考え方の「中身」ではありません。
いままで綱領の金科玉条だったマルクス・レーニン主義を「科学的社会主義」にすり替えたように、こんども「表現」の言い換えで目先を変えようというだけです。
でも、それって「偽装転向」じゃないですかね。

とまぁ、今までさんざんこういう言葉のすり替えで凌いできたから、不破時代まで濃厚に引きずってきた暴力革命論と真正面から向き合わなかったのでしょうに。
こういう言い換え詐欺に引っ掛かる立憲のほうが愚かなだけですが。

さて、立憲が共産党と組むことはズバリ劇薬、いや毒を飲むことと一緒です。
なぜなら共産党は昨日も書きましたが、一般の野党と違って、民主主義政党ではなく「カルト」政党だからです。
そもそもこの党は近代的な「政党」ですらありません。 

あらかじめ言っておきますが、私は共産党が左翼政党だからダメだと言っているのではありません。
主張の内容ではなく、この党の組織そのものが民主主義制度とは相いれない「カルト」だからです。

闘争の指導経験もなく、志位氏が立身出世した理由をご存じじょうか。
彼が、時の絶対権力者であった宮本顕治氏に見いだされて出世の糸口となったのが、伊里事件という陰惨な粛清事件でした。

伊里一智が1985年の日本共産党第17回大会に際して、東京都大会で代表となり中央委員会への批判を公表した。日本共産党中央委員会議長を務めていた宮本顕治の辞任を要求し、減少していた共産党の党勢を「立て直そう」と提案する。
これが所属の支部で可決され都大会の代議員として選出されるべく、東大大学院の他の支部にも働きかけ、6割の支持を得て可決された。
これに対し、当時日本共産党中央委員会青年学生対策委員だった志位和夫は宮本顕治の直接の指示を受け、党の規律に背いて他の代議員に対し働きかけた分派活動と断定し伊里を1986年に日本共産党から除名し追放した。
この働きを認められ、宮本顕治による抜擢で1987年(昭和62年)の第18回党大会で准中央委員に選出され、1988年(昭和63年)に書記局員に任命される。」(ウィキ)

当時、宮本氏が絶対的権力を握っていた共産党中央を、東京都委員会代表伊里氏が厳しい批判をしました。
これは都委員会で6割の支持を集めた合法的な批判でしたが、宮本氏は激怒します。
そして宮本氏の意を受け、伊里氏を分派活動として粛清したのが、他ならぬ志位氏でした。
ほら、出てきました「分派の禁止」です。

異論を言うと、査問にかけられ除名。
戦前の非合法共産党時代となんらかわらない陰湿な粛清体質です。
戦前は殺して埋めたのですが、さすがに今はしないだけのことです。

それはさておき、この粛清を指導して出世階段を登れたことが志位氏にとって成功イメージとなったようです。
指導部に対する批判はどのような形であろうと一切許さない、これが志位氏の一貫した政治スタイルですが、その出発点は20代に既にあったのです。
だから志位氏は自分の時代になっても、規約にこう書くことをためらわなかったのです。

「第3条4
4 党内に派閥・分派はつくらない。」

党は頂点の委員長から末端まで一直線に上意下達の命令系統が貫徹する組織でなければならないから、分派などは異端。 
指導部に文句など言おうものなら、異端審問官がよだれを垂らして待っている「査問会」にかけられ、死ぬめに合います。(ブルブル)

悪名高き「民主集中制度」も、共産主義実現のために階級闘争という「戦争」を戦っているというのが共産党のアイディンティティですから、最高指揮官たる党委員長は絶対的な権限を集中せねばならないのです。
共産党は権限が上部に極端に集中する階級社会だともいえます。

かつてソ連はノーメンクラトゥーラという特権階級を作り出しました。
彼らは豪奢な邸宅に住み、庶民が一生味わえないような美味を食い散らしました。
われらの日本共産党も同じです。
代々木版ノーメンクラトゥーラ は、豪邸に住み、高級自家用車や豪邸、ボディガード、お手伝いさんもつけてもらえます。
いったん病ともなると代々木病院の特別室に入院できます。
宮本氏は一流好みで、銀座英国屋で背広を作り英国製の靴しか履かなかったと言われています。
つまり、かつてのオウム真理教が日本の中にオウム王国を作ろうとしたのに対して、共産党は国内に「ミニ共産国家」を作ってきたわけです。

このように見てくると、共産党がいまでもこの100年間も愛用してきたアナクロの極みのような党名を変えないのは、変えてしまうと党外から一般の人たちが入り込んでしまって、この民主集中制を揺るがしてしまうからです。
だって松竹氏が要求しているように、党首選せにゃならんでしょう。
そんなもんしたら、一気にいままで共産党を支えていた独裁の背骨がへし折れてしまいますからね。

Photo_6http://www.jcp.or.jp/akahata/aik/2002-07-13/09_0401.html

西欧最大の共産主義組織だったイタリア共産党は「左翼民主党」と党名変更して、しばらくして消滅してしまいました。
というわけで、志位さんは選挙に負けようとどうしようと、絶対にその「党首」の地位が揺らぐことはないのです。
このような組織体質を持つ党が、先進民主国家の政党として存在し、国会に議席を持っていること自体が驚きです。

 

 

2023年1月23日 (月)

共産党はカルトなのか

012_20230122083301

共産党がお好きな用語は「市民」、「平和」、「自由」、「憲法」そしてとりわけ「民主主義」を愛用しています。
とりわけ「民主」という言い方が大好きとみえて、自分の傘下団体には必ず「民主〇〇」と名付け、敵対する者にはヒトラーとレッテリングします。
故安部氏など何度彼らにヒトラー呼ばわりされたことか。

ただし、他人をヒトラー呼ばわりするこの党ほど「民主主義」と無縁の党はありません。
この党は同じ党内で議論してはいけない、隣の「同志」たちと勝手に連絡をとってもいけない、という極度に風通しの悪い組織なのです。
党員も国民のひとりとして憲法の基本的人権に基づく様々な議論をしたいはずですがダメだそうで、やれば党規約違反で追い出されます。

どうやら共産党は、「自由」主義が根本的に理解できないようなのです。
個人の良心に基づいたルールや、相互理解を得ていくための自由主義社会の価値観がわかっていません。
人々の権力に束縛されない自由意志こそが、社会規範の基盤であることがどうしても気にくわず、ヒトは上から統制できるもの、せねばならないと信じきっているようです。
個の自由意志なき民主主義はありえません。
それこそが民主主義の母親だからです。

ところで、共産党内部から党首選要求が上がったとか。
総選挙結果に関する覚書・了 | 松竹伸幸オフィシャルブログ「超左翼おじさんの挑戦」Powered by Ameba (ameblo.jp)

あながち皮肉ではなく、この党にとってはよいことです。
あの民主主義不毛の凍土に、やっとわずかながら芽が生まれたことは画期的なことにはちがいありません。
日本でもっとも民主化が遅れた巨大組織があるとすれば、それは日本共産党ですからね。

その芽を報じる朝日の報道です。
朝日はことのほかこの動きに好意的で、論座まで提供しています。

2022110700004_5

松竹伸幸氏
私、共産党の党首選に出ます!~「自衛隊活用論」を唱えてきたヒラ党員の覚悟 - 松竹伸幸|論座 - 朝日新聞社の言論サイト (asahi.com)

「共産党の元職員で今も党員の男性が19日に都内で会見を開き、「党首公選」の必要性を訴えた。志位和夫委員長が20年以上にわたって在任していることに異を唱えた形で、内部から執行部批判が出るのは異例だ。
この男性は、松竹伸幸氏(67)。党職員時代は党政策委員会の安保外交部長などを務めたという。会見で党の閉鎖性を指摘したうえで、「現場の党員の声が表に出て議論されることで、党の組織的な課題が解決する」と強調。「党首公選」の導入を主張した。実現すれば、自ら立候補する考えを示した。
党によると、党員数は約27万人。トップの委員長は約200人で構成する中央委員会から選ばれ、一般の党員は直接関わらない。志位氏は2000年に委員長に就いた」
(朝日2023年1月19日)
日本共産党員が「党首公選」要求 20年以上在任の志位委員長に異議 [共産]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

この松竹氏の提言に対する共産党の反論はこうです。

「まず指摘しておかなければならないのは、松竹氏の行動が党のルールに反していることです。党規約では、党員は、「中央委員会にいたるどの機関にたいしても、質問し、意見をのべ、回答をもとめる」(第5条第6項)ことができるとしています。
松竹氏も「党首公選制」を実施すべきだという意見があるなら、中央委員会に対しても幹部会や常任幹部会に対しても、そうした意見をのべる権利がありました。しかし、松竹氏が、そうした行動をとったことは、これまでただの一度もありません。異論があれば党内で意見をのべるということを一切しないまま、「公開されていない、透明でない」などと外からいきなり攻撃することは、「党の内部問題は、党内で解決する」(第5条第8項)という党の規約を踏み破るものです」
(赤旗編集局次長 藤田健 しんぶん赤旗2023年1月21日 )
規約と綱領からの逸脱は明らか/――松竹伸幸氏の一連の言動について/赤旗編集局次長 藤田健 (jcp.or.jp)

答えたのが、問いかけられた当の志位氏でもなければ、幹部会でもない、たかだかといっては失礼ですが、機関紙編集局次長あたりが出てくるというのも、いかにもこの党らしい尊大さです。
格好だけでもいいから志位氏が直接答えれば、ざっくばらんで風通しのよい「民主的組織」を演出したものを。ばかだねぇ。
まず中間管理職を出して、党規約違反だと決めつけて威嚇することから始めるのですから、しょうもない所です。

もちろん共産党の言うように、松竹氏は党規違反に決まっています。
そんなことは松竹氏は百も承知で、共産党のシステム自体を問題にしているのですから、これでは議論になりません。
共産党では、党内部でなにが議論されているか、どう議論されたのか、について党外に話をしてはいけないというトンデモな内規がありますん。

●日本共産党規約
第3章第17条
全党の行動の統一をはかるために、国際的・全国的な性質の問題については、個々の党組織と党員は、党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをしない。」
日本共産党規約 

彼らがファシズムだと決めつけている自民党など、年がら年中党首をくさすものがメディアに登場するのですが、そんなことをしたら共産党では即時アウトです。
ですから、共産党内で今なにが話し合われているのか、機関紙でしかわかりません。
その機関紙には、常に全員一致で決まったとしか書いていないので、内部はべた一枚岩のようです。
まれに窺い知ることができるのは辞めた脱会者からだけで、今回のような現役党員からのものはこの党始まって以来のはずです。
相当に薄気味悪くありませんか。

こういうことができるのも、共産党が近代的政党ではなく、前時代的「秘密結社」だからです。
結社は「特定多数の人がひとつの目的達成のために作った継続的団体」ていどの意味ですが、共産党の体質はむしろ結社の中でも「秘密結社」に近い性質を持っています。
しかも、19世紀にツァーリー支配下のロシアでその原型が作られたレーニン主義型秘密結社です。
このようなタイプの組織のことを、別名でスターリン主義、あるいは全体主義政党と呼びます。

この形の結社は、19世紀に暴力革命を実行するために作られた組織形態です。
組織は「細胞」という単位に細かく分割され、それぞれ上部とつながっていますが、横との連絡はありません。
ですから、ひとつが官憲につぶされても全体は温存される仕組みになっています。
また基本的に暴力革命をするための党ですから、軍隊のように縦割りの指令系統しか持っていません。
実際に、日本共産党も「中核自衛隊」のような秘密軍事組織を有していた時期もあります。

といっても、党は高齢化の一途を辿って、今は暴力革命をする気力も体力もないので棚上げになっているだけのことです。
しかしその組織形態だけは、今なお全体主義的統治にうってつけだったために残存しています。
「共産党」という党名と一緒で、とうに実態が消滅していても、指導部に取って都合がいいので残してあるのです。

共産党は秘密結社特有の閉鎖主義なので、なかなか外からは分かりにくいのですが、それがかいま見られるのは、今回松竹氏が取り上げた「党首」のあり方をめぐってです。
普通の政党ならば、大敗すれば必ず党首の交代が話題になります。
しかしどんな悲惨な負け方をしても、党首の責任が問われない唯一の政党があります。それが共産党です。 

9_20230122154901

共産党創立100年 志位委員長、「この先100年もこの名前で」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

というのは、党首に任期がなく、党首を選ぶ選挙自体が存在しないからです。
こんな政党は、日本でも唯一共産党だけです。
ですから、志位氏はなんと2000年から22年間も党首をしていて、辞めるのは老いさらばえた時だけのようです。
馬鹿げた長さですが、こんなに長期間党首の座に座っていられる党首は、志位氏しかいません。

赤旗編集局次長殿は、反対意見があれば中央委員会なりで言えばよい、なんてしゃらっと言っていますが、中央委員というのは志位氏をトップとする中央委員会が候補者名簿を作成し、党大会で選ばれた人たちです。
共産党でいう「選挙」とは、中国の全人代みたいなもので、あれを選挙とはいいません。

下の写真は党大会の風景ですが、こういう100%全員賛成を不気味だと思わない者のみが、中央委員になれるわけです。
一般人の感覚だと、毎回毎回全員同じ方向を向いているのって気持ちが悪くなるものですが、それをなんとも感じなくなり、やがてこれこそ共産党の力強い前進する姿だと思えるようにならないと党員にはなれません。

060114185511ap1110490

【06.01.14】第24回党大会が決議採択、新中央委を選出し閉幕:日本共産党前衆議院議員 佐々木憲昭オフィシャルサイト (jcpweb.net)

そうやって出てきた中央委員は、当然のこととして志位氏に忠誠を誓ったクローン党員ばかりですから、常に全会一致であたりまえです。
去年始めて保留する者が出たというので、大騒ぎになったくらいです。
ですから編集局次長殿が「ならば中央委員会にでてきて言え」というのは、そもそも不可能なことを知っていて言っているにすぎません。
安倍一強どころではありませんから、委員長を辞めた後も宮本氏や不破氏がそうであったように院政を敷くのですから、ほとんど終生絶対権力者でいることができます。
おいおい、ここは北朝鮮か。

志位和夫 - Wikipedia 

こんなことをしていると組織の新陳代謝が不可能で、党首のクローンしか生き残れません。
脱党した筆坂英世氏はこう述べています。

「共産党という政党は、党内に異論を持つ党員がいたとしても、そういう党員は代議員に選ばれず排除されていくので、最終的には全会一致になるようになっている。私自身、何十年も中央委員を務め、何十回と中央委員会総会に出席したが、全会一致以外知らない。いま中央委員は220人程いる。すべて党本部から給与が支給されている。その中央委員会総会で一人賛成しないというのは、相当、勇気がいる態度なのだ。
その理由は明らかにされていないが、参院選の惨敗やそれを素直に認めない態度に、異論があったのかも知れない。小さな綻びが始まったのか」
日本戦略研究フォーラム(JFSS)

「外部」というのは、党外だけではなく、むしろ党内に対しての異論を言うこともできません。
それは共産党はがもっとも恐れているのが、異論を持ったストリームの誕生だからです。
共産党風に言えば分派の禁止です。

「第3条
4 党内に派閥・分派はつくらない。」

ですから分派ができる可能性がある党内の単位組織が、隣の班と横断で合同討論会やろう、などといったりしたら確実に全員規約違反を問われて追い出されるでしょう。
一昔前の不破時代には、ここは共産圏かというような綱領があったほどです。

「個人は組織に、少数は多数に、下級は上級に、全国の党組織は、党大会と中央委員会にしたがわなくてはならない」

こういう政党が第1党となって政権についた場合、党は政府の上に君臨する事になります。
そして政府の上に「党」があって、その中のことを窺い知ることができなくなります。
かつて宮本委員長は国会議員ではありませんでしたが、党外から党を指揮していました。
このような党は、政権をとれば党の決定がすべてに優先します。
もし仮に日本共産党が国を作ったら、国家社会レベルで同じことをやるでしょう。
ちょうど今の中国共産党が作った社会のようにです。

ところで、今回も共産党は「中央委員会に対しても幹部会や常任幹部会に対しても、そうした意見をのべる権利がありました」と言って、いかにも松竹氏が今まで多くのチャンスがあったにも関わらずその権利を行使しなかっただろうという言い方をしています。
共産党規約によれば、何年かに一度開かれる党大会において、中央委員が選出されます。
中央委員候補は、前任の中央委員会による推薦制です。

        ●日本共産党規約第3章第13条
     「指導機関は、次期委員会を構成する候補者を推薦する。」

この「推薦する」というのが味噌です。
一般の政党における指導部は全党員がなんらかの方法で選挙をして選ばれますが、共産党に限っては指導部が候補者を推薦、つまりは指名するのです。 
すると指導部にとって都合のいい人物しか「推薦」されませんから、初めから誰が指名されるのか定まっています。
指導部に忠誠を誓う党員だけが執行部入りできるのです。

この指導部の「推薦」で選ばれた中央委員から、更に常任幹部会委員が選ばれます。
これが執行部で、20人前後います。中国でいう「チャイナセブン」です。

2020012801_04_1

www.jcp.or.jp

「●第23条 中央委員会は、中央委員会幹部会委員と幹部会委員長、幹部会副委員長若干名、書記局長を選出する。また、中央委員会議長を選出することができる。」

この20人の常任幹部の互選で選ばれるのが書記局長です。
今はあのハワハラで有名な小池晃氏がしています。
まぁあの女性党員への小池氏のパワハラ事件も、党内でやっていることをうっかり外でしてしまっただけなんですがね。
小池氏は東北大で、宮本-不破-志位と歴代委員長は東大と学歴エリートでないと幹部になれない「労働者階級の党」です。
安倍さんや菅さんだと、共産党では出世できませんね(笑)。
また労働者の党と言っていますが、党幹部で労働者出身はいません。
それはさておき、この推薦で選ばれた中から互選で決まるのですから、委員長職を20年間もしていられるわけです。たいした「民主主義」です。

こんな組織構造で異論を持つ党員が中央委員になれるがありません。
実際、松竹氏はなれなかったようです。

Img_ogp

小池晃 日本共産党参議院議員

とまれ、こうして志位氏は自分の息がかかった指導部を作り続けることが可能なのです。
志位氏は東大を出てから一度も普通の職場で働いたことがなく、35歳の若さで書記局長、46歳で委員長になっています。
共産党以外の世界を知らない純正の共産党的人間です。

もちろん「民主」という名がかぶっていますが、この民主集中制はまったく民主主義と相入れない組織です。
共産党はやたら「民主」という言葉を好み、民青、民商、民医連となにかと民主をかぶせますが、なにか隠したいものでもあるんでしょう。
共産党における民主集中制とは、下図のようなシステムです。

J40110g0

日本共産党等の動向

まず第1に、下級機関は上級組織に絶対服従することを求められます。
いったん決定した事項について、下級組織は上級機関の許可なくして論議すら認められません。 
ピラミッドのように作られている共産党組織の下部組織は、疑問を発表することはおろか、持つことも許されません。
ただひたすら指令を実行あるのみです。
こんな組織が民主的なわけがありません。
この日本共産党の組織構造ですが、これを中国共産党と比較してみます。Dk_chinab2_100

 

世界最強の政党「中国共産党」の実像

各級の定員が違うだけで、中国共産党とそっくりなことがお判りでしょうか。
ですから、異論が出る余地がありません。
完全な上意下達、これが中国と日本を問わず共産党という組織の特徴です。

ちなみに共産党は中国共産党の支配下にあった時代があって、その時代に暴力革命を本気でやって失敗しています。
今は「独立」したようですが、いわば似た者同士の兄弟喧嘩のようなものです。

ちなみに、常日頃共産党が一党独裁だと罵っている自民党の組織構造はこうです。

 

Organization_chart

www.jimin.jp

今やっているように、共産党の委員長に相当する自民党総裁は、全党員の参加が可能です。
共産党でいう書記局長は自民党の幹事長に相当しますが、これは総裁の指名です。
しかしこの幹事長は、共産党と違って独裁権限は持たされていません。
共産党と対照的なボトムアップ型組織だとわかります。

しかも派閥ごとに考え方が違い、右から左までさまざまな議員がいます。
よく一党独裁だと野党は言いたがりますが、自民党内で「政権交代」をしばしばやっているわけです。
派閥は諸悪の根源だともメディアは言いますが、その派閥さえつくれないのが共産党です。
共産党の「派閥」はベタで志位派だけ。

このように見てくると、安保政策うんぬんの前に、共産党が自らの党内ガバナンス(統治)を変えない限り、「政党」とは呼ばれるべきではないと思います。
西欧の共産党が壊滅し、共産党が米国で認められていないのは、こういう民主主義そのものを否定する体質があるからです。
やっと日本にもこの共産党民主化の風が吹いてきたという気もしますが、たぶん失敗するだろうな。

 

 

2023年1月22日 (日)

日曜写真館 お稲荷の木暗の姉が呼んでゐる

S-407

初午の朱の塗りたての稲荷駅 辻田克巳

S-459

神木に揺れて鬼の子年を越す 茂里正治

397

冬ざれや稲荷の狐横向いて 山口青邨

400_20230120161301

初冬の狐の聲ときこえたり 泉鏡花

S-445

大鈴を下げて稲荷の茂りかな 猪股清吉

S-478

新甘藷があがりて狸稲荷かな 富安風生

438_20230120161801

初午の禰宜と女と渡し船 政岡子規 

 

2023年1月21日 (土)

中華帝国のレコンキスタ

006_20230120035201

昨日からの続きです。

中国の海洋膨張をもっとも最も嫌ったのが、世界一の海洋国家であり、世界の海洋の自由航行の守護者を自認している米国でした。
かくして、ご承知のように米中対立が爆発しました。

かといって、今さら贅沢を覚えた中国人に豚肉を食わさないわけにはいかず、自動車に乗せないわけにはいかない以上、米国と敵対してでも海洋覇権を確保したいのが、「戦狼」路線を取る習近平なのです。
この流れは、どこかで中国が正気に戻らない限り止まらないでしょう。 

しかし中国経済には市場調整機能が欠落しているために、行くところまで行ってしまうのです。
米国農務省が去年5月12日に発表した最新の需給見通しでは、2021~22年度もこの傾向は継続しています。

驚くべきことには、中国の年間穀物輸入数量は過去5年間でなんと約4000万トン増加したということです。
これは日本の年間穀物輸入数量が約3000万トンですから、毎年丸々日本一国分以上の増加をしたことになります。

 

Img_cd061433d549f1a500ada44f4dd065dc1251

マーケット注目!米中貿易戦争回避の切り札は原油と「大豆」 | トウシル 楽天証券の投資情報メディア (rakuten-sec.net)

たとえば大豆輸入は中国の輸入見通しが300万トン増加して1億300万トンで、日本の年間輸入総量330万トン分が丸々一国分追加された事になります。
またトウモロコシも、2020年~21年度の輸入数量2600万トンで、前年の3.4倍です。

それも要は、中国が自国で生産拡大できればいいだけのことです。
しかしそれは不可能だということが、中国畜産(というよりも農業全体のですが)の根本的欠陥です。

 

Img_fa13905462b958e1b5134dc98bf609f92461

中国国内の大豆の収穫面積(左軸)と単収(右軸)
同上

中国の大豆の1ヘクタールあたりの単収は 2000年代前半をピークにして、生産効率、収穫面積の両面で停滞期に入っています。
つまり中国農業には、畜産を支える力はもはやないということです。

だとするなら、豚肉消費量を抑制するか、農業生産を増やすしかしないはずですが、共に不可能です。
中国がこのような狂ったような爆買いを続けていることから見ても、当分この豚肉フィーバーから醒めないでしょう。

唯一あるとすれば、豚肉バブルがちょうど今の恒大破綻のように弾ける時だけでしょう。
今の穀物爆買いによる豚肉生産奨励政策によって、豚肉生産にIT大手のファーウェイやアリババのような異業種までもが大規模参入してしまった結果、極度の生産過剰となってしまっています。
ファーウェイは高層畜舎を作り、IT管理の養豚を大規模に開始しています。

Chinapigshotel

焦点:「豚ホテル」は中国養豚業界に革命もたらすか | Reuters

「畜産に力を入れる中国広東省で今、“同省お墨付きプロジェクト”として進められているのが「養豚ビル」の建築だ。同省では2~5階建てを中心とした養豚場がすでに158カ所に普及するが、2022年10月には広東省で最も高い「17階建ての高層養豚ビル」が操業を始めるという」
(姫田子夏2022年5月17日)

その上に外国産食肉まで大量に買い占めているのですから、なにを考えているのやら。

どこまで続くのでしょうか?
そうですね、たぶん習がこの食糧問題が、自らの政治的リスクだと気がつくところまでです。
しかし正気に戻る保証はまったくなく、逆に自分の勢力圏で囲い込もうとします。

ではこの一見矛盾する中国の行動をどう評価したらよいのでしょうか。
彼らの海洋進出の裏事情は単純化していえば、中東からのオイルロードが伸びるインド洋、南シナ海と、米国とブラジルからの大豆ロードが伸びる太平洋を押さえる必要があるからです。
中国は自由貿易を根本的に理解できていません。
彼らは、ヒトが自由意志で自由な商取引をし、相互に契約を結ぶという自由貿易がわかっていません。
だから、穀物産地を札束でひれ伏させただけではおさまらず、貿易路までを己の勢力圏に入れるまで安心できないようです。
これが中国の「勢力圏」思想です。

20220515oyt1i500701

中国空母「遼寧」で発着艦、今月3日以降で200回超に…沖縄県沖で : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

皮肉なことには、中国は自由貿易でもっとも利益を得た国です。
鄧小平が主導した開放改革は、自由主義貿易を大前提にしていました。
ウソのような低賃金で外国からカネと技術を呼び込んだのです。
鄧はマルクス主義とは似ても似つかない国家資本主義国家をつくりだすために、先進自由主義諸国の資本と技術、そして自国製品の市場を渇望していました。

しかし同時に彼が押し進めた国内政策は、愛国教育でした。
それはこの開放改革が、ソ連共産党の崩壊と重なってしまったからです。
鄧小平は、共産主義に代わる共産党正当化の精神的大黒柱を欲していました。
それが反日反西欧教育です。

彼の時代に、阿片戦争記念として林則徐記念館、アロー号事件の円明園円史跡、日本に対しては蘆溝橋事件記念館、南京大虐殺記念館、などなど。

_20230120_014041

南京大虐殺記念館を訪れたときのこと(中島恵) - 個人 - Yahoo!ニュース

同時に教科書にも、大きくこれらが共に乗るようになっていきます。
彼を継いだ江沢民は、この反日政策を内政の柱に仕立て上げていきます。
近代国家形成期の国民教育において、外国への憎悪を過剰に注入すれば、かならず歪んで過激なナショナリズムを生み出します。
近代国家を作る初期においては、微量の毒であるナショナリズムは有効な推進力ですが、西欧と日本に対する復讐は身を滅ぼすものであるはずでした。

その結果、中国人の中に「西欧の押しつけられたか民主主義などいらない。西欧が作った世界秩序もいらない。中国を中心とする世界秩序を作るのだ」というという願望が目覚めてしまいました。
そしてそれを実効する超大国パワーも備わったと彼らに思わせたのが、リーマンショックでした。
中国はいち早く立ち直り、混乱が続く自由主義諸国をに追いつき、一気に世界有数の超大国となったのです。
ちなみにこの時期、日本はデフレ地獄にはまったままでした。

Kmishima_sme2_2_w590

GDPの国別推移 名目値 ドル換算
成長しない日本のGDP、停滞の20年で米国は日本の4倍、中国は3倍の規模に:「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(2)(2/3 ページ) - MONOist (itmedia.co.jp)

習近平の脳裏には、今こそ失われた中華帝国の版図を回復し、中華帝国の復権を目指すべきだという思いがあるはずです。
もちろん新しい皇帝は自分です。
中華レコンキスタ(領土回復運動)の誕生です。

_20230120_015741

習近平皇帝 

目的が単に穀物やエネルギーー資源の獲得ならば、安定した平和な自由主義貿易に協力すればいいはずですが、中華レコンキスタはそうは考えません。
巨大な版図と勢力圏がいるのです。
中華レコンキスタが目指す帝国の旧版図とは、かつて冊封関係を持っていた国々を再び属国化することです。
現在の中国における国防方針の第1、第2列島線構想に、この中華帝国の冊封の考え方を組み合わせると全体像が見えてきます。

Ho27sc5j35o6xezocjbsubvry4

「中国艦隊、第3列島線に接近」ハワイ沖で訓練 台湾・国防部 - 産経ニュース (sankei.com)

中国は1992年に「領海法」という国内法を成立させていますが、その内容は、尖閣諸島、南沙諸島、西沙諸島の領有権を主張するものでした。さらに時代を遡って1950年前後には、南シナ界の海域について九段線と呼ばれるエリアを一方的に設定し、自国の水域であると主張してきました。
南シナ海の要塞化で、完全な内海化を完成させました。

Https3a2f2fimgixproxyn8sjp2fdsxmzo892959

南シナ海、揺れる大動脈 中国、岩礁を「要塞」に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

自由主義貿易の安定した一員に納まっていればよいものを、彼らの願望はそれを裏切ってどこまでも膨らんでいきます。
とりあえずは第1列島線内の諸国を屈伏させ、つぎにはグアムまでの第2列島線を征して、やがては第3列島線であるハワイまで到達しようと構想しています。

商業国家ならば、戦後日本のように平和外交に努力することで貿易関係が悪化しないように配慮するものですが、中国は正反対な行動に出てしまったのです。
兵隊が土地を占領しないと気が納まらない、海軍の艦隊が太平洋の制海権を握っていないと落ち着かない、それが陸軍国特有の勢力圏を夢見る中国の哀しい性のようです。

中国の南シナ海内海化は満州国であり、国際司法裁判所の判決はリットン調査団です。
ここで引き返せばよかったのです。
しかし、引き返すことは習近平にとって不可能でした。
それは中華レコンキスタの終焉であり、「中華の夢」の終わりだからです。
そして習近平は、ルトワックが絶対にやるなと言っていた空母の大量生産を開始し、太平洋へと進出したのです。

仮に台湾侵攻が始まれば、米国は穀物を戦略物資指定する可能性が高いかもしれません。
その場合、対中輸出がどうなるかは、考えなくても分かります。
米国は食糧を戦略物資指定して、対中輸出を制限すると同時に、太平洋と南シナ海のシーレーンを封鎖するかもしれません。
中国への穀物輸入シーレーンは完全に塞がれます。
また、大陸沿岸を封鎖するために、機雷が大量に撒かれるはずです。
中国はここで初めて食料を米国に依存しているのに、その米国に喧嘩を売った大失敗に気がつくでしょうが、遅すぎます。

中国は悲鳴をあげるはずですが、もはや引っ込みがつきません。
むしろ米国といまだ体力のある今戦わねば滅亡だ、とすら考えるでしょう。

今の中国の姿は、くず鉄と原油を禁輸され、経済が立ち行かなる一方で大海軍と大陸軍をもっていた大東亜戦争直前のわが国の姿によく似ています。

 

2023年1月20日 (金)

敵国に依存する中国

S-074

一般的に、貿易関係で均衡状態が作られると、経済の相互依存から戦争は起きないとされてきました。
たとえば、それを頭から信じていたのがメルケルで、彼女はロシアから大量の原油とLPGを買っていたので、お得意であるEUとは敵対関係になるはずがないと思っていました。
ロシアと西欧をつなぐノルドストリームがその象徴でした。
だからもうヨーロッパでは戦争はない、軍備を削っても大丈夫だと判断し、「メルケル軍縮」を推進したためにドイツ連邦軍は再起不能一歩手前にまで追い込まれた時期があります。

経済の相互依存があれば戦争を防げるというこの考えが間違っていたことは、ウクライナ戦争が無惨にも証明してしまいました。
経済的合理性をいくら欠いていたとしても、全体主義国家は独裁者の意志ひとつで侵略をするものなのです。

では、もうひとつの全体主義国家である中国はどうでしょうか。
中国と西側自由主義諸国においても、ロシア以上に濃密な経済の相互依存関係が成立しています。
下図は中国の貿易相手国を見たものです。

 

S1_18_2_1_8z

中国の貿易相手国(2017年) 第2章 第1節 世界経済の動向 : 世界経済の潮流 2018年 I - 内閣府 (cao.go.jp)

中国にとって、輸出の最大相手国は米国で、全EUと同じくらい輸出しています。
つまり2割を占める米国市場は、中国経済にとって得難い「顧客」だと分かります。

中国が米国から輸入しているのは穀物です。
豚肉を生産するために必須な飼料である大豆の輸入相手国は下図です。
米国は茶色で、3割のシェアを持っています。

000138746

中国の穀物需給動向|農畜産業振興機構 (alic.go.jp)

中国人が使う大豆のうち、2013年の輸入量はブラジルからが3180万トン、米国が2220万トン、アルゼンチンが600万トンで、そのすべてが太平洋を超えて渡って輸入されます。
ですから米国の大豆なくしては、中国人の食卓は成り立たないのです。
そういえば、トランプの制裁に対して大豆の報復関税をかけたところ、見事に天に唾することとなり、豚肉の高騰によって国民が動揺してしまい、すぐに撤回しましたっけね。
あの大豆騒動は米国に、あの程度の食糧制裁でも中国に強い圧力をかけられることを教えてしまいました。
食糧とエネルギーこそが、中国のアキレス腱なのです。

一方、この構造は合わせ鏡のようになっていて、米国の赤字相手国はダントツで中国で、その半分弱を占めています。
下図は米国の貿易赤字の国別グラフです。

20170115232231

日本は、トランプ政権の主張通り、貿易赤字を減らすべき - SKY NOTE (hatenablog.com)

上図を見ると、トランプが対中制裁をしたくなるのがよくわかります。
裏返せば、いかに米国の消費市場がメイドインチャイナに強く依存しているかがわかります。

さて、ここで素朴におかしいな、とは思いませんか。
中国はいまや米国のパブリックエネミー第1位の国になってしまっています。
これは共和党でも民主党でも変わりありません。
でも、ここでちょっと考えてみて下さい。
自国の輸出の最大顧客にして、食糧の最大輸出国とこんな敵対関係になるなんて、正気の沙汰ではありません。

どうしてこのような矛盾したことをするのでしょうか。
それについては長くなったので次回に続けます。

2023年1月19日 (木)

世にも不思議な国債60年償還ルール

S-035_20230118044901

菅前総理がはっきりと防衛増税をたしなめました。

「自民党の菅義偉前首相は18日のラジオ日本番組で、防衛力強化に伴う岸田文雄首相の増税方針表明について「突然だった」と重ねて苦言を呈した。「特に増税については、丁寧な説明が必要だ」と指摘した。
菅氏はロシアによるウクライナ軍事侵攻などを念頭に防衛力強化の必要性を指摘しつつ、財源論については「例えば行政改革でいくら(費用を捻出した)とか、いろんなことを示した上で、できない部分は増税させてほしいとか、そういう議論がなさすぎた」と語った」
(産経2023年1月18日)
菅前首相、岸田首相に重ねて苦言「防衛増税、突然だった」 (fmworld.net)

安部氏が存命していたならば(仮に入院していたとしても)、岸田氏の増税方針には強く反対をしたはずです。
岸田氏は増税で選挙などと言えたかどうか。

さて、昨日の続きになりますが、三つ目の財務省の奇習は、国債「60年償還ルール」です。
この償還のためだけに「債務償還費」として一般会計のなんと17.5%も使っています。
財務省の広報紙日経はこんなことを書いています。

「財務省が2023年度予算案をもとに歳出や歳入の見通しを推計する「後年度影響試算」が17日分かった。国債の元利払いに充てる国債費は26年度に29.8兆円と、23年度予算案から4.5兆円ほど膨らむ。足元の長期金利を加味し利払い費の見積もりに使う10年債の想定金利を1.6%と前回試算から引き上げた」
(日経2023年1月17日)
国債費、26年度に4.5兆円増 財務省が想定金利1.6%に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「防衛費増額の財源を巡る自民党の特命委員会が16日に始まった。歳出改革や税外収入など増税以外の財源を模索する。国債の「60年償還ルール」見直しで財源を捻出すべきだとの案も浮上する。償還期間を延長・廃止しても、浮いた国債費を防衛費に使えば借金は膨らむ。借金返済の担保が消えれば、市場の信認を失う恐れもある」
(日経2023年1月16日)
防衛財源確保、「国債60年償還」延長論も 自民が本格議論: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ふーん、「国債の償還ルールを守らねば、借金は膨らむ」ですか。
想定金利も1.6% だそうで、なにが根拠かしりませんが、目一杯上振れしています。
ここで日経が「4.5兆円膨らむ」と書いているのは、財務省が債務償還費まで含んで計算しているからです。
この債務償還費は、ただ積んでおくだけの予算で、なににも使い道がありません。
もちろん例によって、これも法律の定めでもなければ、論理的根拠も怪しいもので、勝手に財務省が前例踏襲しているだけの因習にすぎません。
これができたのは日露戦争の頃のことで、当時戦費が枯渇していた日本が、国債市場で国債の信任をとりつけるために作った苦肉の策だったのが始まりです。
そんなものを1世紀も後生大事に持っている財務省はなんと物持ちがいいんでしょうか。

「国債は10年などの満期が来ると、返済する必要があるが、一度に現金で償還することは難しい。このため、大部分は借換債と呼ばれる国債を出して借り換えた上で、毎年の現金償還を国債残高の約60分の1(1・6%)とするのが「60年償還ルール」だ。1966年度に建設国債の発行開始と同時に始まった日本の減債制度で、道路などの平均的な耐用年数から60年とした。戦後の日本の財政制度の根幹をなすルールだ」
(朝日2023年1月11日
国債の返済ルール見直し検討へ 防衛費の財源確保狙い、財務省は警戒 [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

この60年償還ルールという奇習に、日本で最初に気がついたのはエコノミストの会田卓司氏でした。
21世紀政策研究所より政策提言報告書「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換 

この中で会田氏は、1990年以降、一般会計の歳入と歳出のギャップが拡大しているという財政危機を語る人が必ず使う図を引き合いにだして説明しています。
下のグラフだけ見ていると、財務省 の言うように収入と支出の差がどんどん開いているように見えてしまいます。
この開いた口が歳入と歳出のギャップで、俗に「ワニの口」と呼ばれているものです。
なんだか日本がワニに呑み込まれそうでコワイですね。

_20230117_120408

岡三証券 

さて、ここで会田氏が指摘しているのは、こんな「ワニの口」ができる原因についてです。
会田氏はこれが日本の財政運営における「60年償還ルール」にあると喝破しました。
実は、日本の予算(一般会計歳出)には国債の償還費が含まれているのです。
なんと日本は、現在の負債を60年後までに完済することができるようにせっせと毎年国債の元本を積み立てています。

ヘンな話です。60年というのは減価償却の発想から生まれています。
償却客する年数を定めで、積み立てていくわけです。
まるでサラリーマンの住宅ローンみたいな発想です。
しかしよく考えて見てください、庶民は60年後には死んだりリタイアするかもしれませんが、国家はなくなりません(あたりまえだ)。
だから国家が発行する国債は、60年たったら借り換えして先延ばしていけばいいのです。
世界中の国はそうやっています。

しかし日本だけは頑固にこの奇習を守ってきました。
するとこういう項目が予算に堂々と記されることになります。
右が米国の予算ですが、左の日本の予算のように「債務償還費」などという項目はありません。
これが世界ひろしといえど、日本にだけしかない「60年償還ルール」です。

_20230117_122122
岡三証券


「日本政府は国債残高の数%を毎年償還(形式上は返済)してほぼ同額を国債発行(形式上は借入)によって賄う--つまりは債務の借り換えを行っています.どうせ借り換えをしている,さらに別に満期がきたわけではないのだなら借換をする必要もないのに,償還の部分は歳出(=出費)扱いをして,一方の借り換えの部分は歳入(=収入)として取り扱わない.この不可思議な慣習が生んだのが「ワニの口」なのです.
ちなみに米国の予算ではこのような不思議な取り扱いは行われません.景気過熱を防ぐために積極的に債務償還が必要……といった場合以外では歳出として扱われるのは利払い部分のみです.つまりは下図の赤色部分だけ日本の一般会計歳出は「盛られ」ている」
(飯田泰之2022年6月3日 )

ですから、このおかしな積み立てを止めれば、歳入と歳出のバランスは至って健全なものに変わります。
グローバルスタンダードにしてみるとこうなります。

_20230117_122924

岡三証券

あら、不思議。ワニの口などどこかに消えてしまいました。
あるていどの経済成長がされれば、歳入と歳出の差は縮まっていくもので、コロナで大盤振る舞いした米国ですら景気がよいので財政環境は持ち直しています。

だからこの不思議な「60年償還ルール」をやめれば、1兆円など簡単にでてきます。

飯田氏はいみじくもこう述べています。

「ここからも,そもそもこれらのルールは「何か論理的な意味があって存在する」わけではなく,「なんとなくそれっぽい数字を並べて権威付けしているだけ」というのがわかります.
 財政関連ってこの手の「無駄な作法」がやたら多いんです.例えば,徳川幕府では会計を米方(米の収支)と金方(金銀の収支)にわけていましたが,両者の間には謎の繰り入れルールが入り乱れ・・・。
この手の「お作法」って何のためにあるのか.正直,ルールを複雑化して政治家(江戸期なら将軍・老中)が官僚の仕事に口出しできないようにするために存在するんじゃないかしら.いわば実務官僚の「お仕事の知恵」「処世術」と言ってよいのかもしれない」
(飯田前掲)

まったくそのとおりでございます。
岸田氏の防衛増税議論は不毛そのものでしたが、こういう財務省の因習が分かったのだけは、よかったかもしれません。
財務省はたかだか1兆円を騒ぎ立てたために、とんだ藪蛇でしたね。


2023年1月18日 (水)

財務省の不思議な奇習

S193-048_20230118030001

防衛増税という奇怪なことを岸田氏が言い始めたために、いくつか財政の奇習とでもいうべきものがあぶり出されてきました。
そもそも賃上げをめぐって春闘やっている真っ最中に、首相が「オレ、法人税あげるつもりだから、賃上げよろしく」などと言ってしまえば、哀れ経営側の賃上げマインドは酷寒のシベリアへ。
これでは官製春闘ならぬ、官製逆春闘です。
あたりまえだろう。どこの世界に「増税するから賃上げしてくれ」なんて言う阿呆がいるのか。
せっかく安部・菅の両首相が敷いたままに防衛3文書改訂をしても、出来上がったいい絵にベッタリと墨をなすりつけてしまいました。
そのうえこれを巡って選挙までしたいんだとか。
菅氏が動き始めたのは当然の流れです。

しかも防衛費で不足するのはたった1兆なんですから、気抜けします。
1兆円を恒久財源にして、後の世代にツケをまわさない、なんて首相は説明しているようです。
岸田さんは深~く財務省の洗脳を受けておられるようです。

ところで今回も現れたのが財務省の奇習です。
私が奇習と呼ぶのは、主要国でこんなおかしなルールを作っているのはうちの国だけだからです。
もちろん役人の前例踏襲の内規であってほうりつでもなんでもありませんから、政治の力で変えられます。
しかしなにぶん罹ってしまったのが、国家予算の生殺与奪の権限を持つ財務省だからシャレになりません。

おおよそ三つの奇習があります。
1番目が税収弾性値、2番目が国防予算を国債にいれないルール、3番目がいま話題となっている「国債60年償還ルール」です。

まず奇習の1番目は、財務省はなんと税収はゼロ成長を前提にしているのですからたまげます。
日本経済はゼッタイに成長しない、しないといったらしない、なぜならオレラが成長しそうになると潰すからだ、ということのようです。
いつも景気が回復しそうにてると消費増税をしかけて成長の芽をつぶしてきていたのでヘンだとは思っていたのです。
案の定、彼らには彼らしか通用しないロジックがありました。それが「税収弾性値が1.1」ということでした。
税収弾性値とは、「名目GDPが増えた時に税収がどの程度増えるか」という予測値のことですから、財務省の1.1とはゼロ成長で経済を考えていたわけです。

経済を回復させれば税収が増える、という子供にも分かるこの理屈が、東大法学部出身のエリート官僚の皆さんには理解できないようです。
ですから彼らは経済はずっとデフレでけっこうと思っていますから、景気をよくする、雇用を増大させる、収入を増やして個人消費を伸ばすという平々凡々たる経済の道筋が見えません。
仮に景気が上振れして税収が伸びたとしても、そんなことは一時的なこと、税率を高く設定せねば財政は健全化しないぞ、だから税率を高くせねばならないのだ、ありとあらゆる機会を逃さずに増税を、くらいに盲進しています。
与野党を問わず、議員の大半もこの信徒だから困ったもんです。
これが、昨今首相がよく口にする「恒久的財源」論です。

もちろん現実には、税収の伸びが1.1なんてことはありえません。
下図は90年代後半に消費税増税をして以後の、過去15年間の一般会計税収ですが、名目GDPが増えれば税収は1.1どころか3倍ちかくに増大することがわかっています。

Exb1506170930001p1

一般会計税収の推移

ですから経済に冷や水を掛けなければ、1兆円ていどの税収不足など軽く自然の税収増だけで得られてしまいます。
2021年度の一般会計決算概要によると、国の税収は67兆378億8500万円と過去最高だった20年度の税収(60兆8216億400万円)を更新しました。
しかもこのコロナ不況の真っ最中で個人消費がメタメタであったにもかかわらず、予想を3.1兆円も上回りました。しかも2年連続です。

普通に考えれば景気が回復すれば税収は今回の3.1兆円上振れしたようなことが起きるはずですが、彼らの税収弾性値では1.1しか成長しないはずなので、常に財政危機なのです。
経済学者の飯田泰之氏が言っていますが、「何か論理的な意味があって存在するわけではなく、なんとなくそれっぽい数字を並べて権威付けしているだけ」のこけ脅かしにすぎないのです。

次の「奇習」は、防衛費にだけは国債を使わせないというものてす。
大戦の苦い経験からだそうです。
朝日は関野満夫・中央大学教授にこんなことを言わしています。

_20230117_113757

朝日

「――戦時の日本の財政運営の教訓があるとすれば、どんな点でしょうか。
 安易に国債に依存しないこと、だと思います。日本はかつて、無責任な見通しのもとで戦時国債を乱発し、国力がないのに無謀な戦争を続けました。
だから防衛費の議論でも、国民が防衛費を増やす必要があると判断するならば、増税もセットで考えないといけません。政府与党が増税を検討しているのは、一定の合理性のある姿勢だと思います」
「(朝日2023年1月8日)
戦費のための預金は戦後に大きく目減り 国債依存のツケを払ったのは:朝日新聞デジタル (asahi.com)

関氏の意見はまんま財務省のものと同じで、それに朝日が喜びそうな「太平洋戦争の悲惨な記憶」というスパイスをかけて、今の防衛費を国債発行論を批判しています。
まるで防衛予算を国債を使えば、いきなり「軍靴の足音」が聞こえてくるようです。もはや伝統芸ですな。
軍部は侵略戦争をするために大量の国債を刷り、それを国民に買わせたが、負けて紙クズになった、だから戦争に関わるものには国債をつかわせないんだ、これが歴史の教訓だぁというのが朝日の意見のようです。

わが国には外国を侵略する意図もないし、能力もありませんが、それはとりあえず置きましょう。
国防は今年だけで終わるものではなく、後の世代を守るために行っているものです。
だから防衛インフラだけ、橋や港湾などといったものと別にする理由がありません。

そもそも朝日が言うように、日本国債は紙クズにはなりません。
よく財務省は、国債を「国の借金」という間違った表現をして、一般家庭と同列のように説明してきました。
本気で財務省がそう思っていたなら、あんたらが出している通貨や国債はどう説明するんや、と言いたくなります。
国民が勝手に通貨を刷ったら偽札づくりですから、手が後ろに回ります。
国家と民間企業や個人と異なり、国家には「通貨発行権」があります。
ここが国と個人の決定的な違いです。

しかも日本の場合、1000兆円を超えるといわれる国債は、すべて円建て国債です。
しかも買っているのは、多くが国内基幹投資家で、現在は資金がダブついており、彼らが国債を売って資金調達する必然はありません。

ですから日本国債が破綻するには、国内投資家が国債を引き受けてくれず、海外投資家も国債を引き受けてくれず、かつ中央銀行すら国債を引き受けてくれないという三つの条件が揃わねばなりません。
このひとつとして条件に合致する兆候はありません。
なによりも一目瞭然なのは、現在の国債の利回りは10年債で0.28%、20年債でようやく1%をわずかに超えて1.103%、最も長い40年債ですら1.564%に過ぎないことを見れば、理解できるはずです。
ちなみに、下図はちょっと古い2018年のものですが、ブラジルは10%超え、米国ですら2.9%です。
日本は金利0.062%ですから、まちがいなく世界一の低利の国債でしょうが、売れなくて困っている国債がこんな低利にするはずがないじゃありませんか。

A0121375ec34dda7878b95791967c6ef

No.3793 世界各国の10年国債利回りです… - シャープ1億にモノ申す部屋 - FX、為替掲示板 - Yahoo!ファイナンス掲示板

そもそも「防衛国債」なんてないんですよ。
防衛増税反対派もよく防衛国債を使え、という言い方をしますが、そんなものはないのです。

金融商品として建設国債・特例国債という区別もありませんし、なにを買ってもすべて「日本国国債」一本です。
色を勝手につけて防衛は国債から除外だ、なんて言っても、法律に定めがあるわけでもなんでもなく、ただの財務省が勝手に「禁じ手」なんて言っているだけで、いくらでも政治判断で変更可能なのです。

三つ目の奇習は「60年償還ルール」ですが、長くなりそうなので次回に分割しました。

2023年1月17日 (火)

なぜ打たせないトリインフルワクチン

S-082_20230116125401

とうとう殺しも殺したり、トリインフルによる殺処分が1000万羽の大台に乗りました。
トリインフルは年を超えてもまったく衰えるふうもありません。

「各地で猛威を振るう高病原性鳥インフルエンザ。昨年10月に北海道と岡山県の養鶏場で確認されて以降、23道県に広がり、殺処分の対象は過去最多の1千万羽を超えた。国は全国で緊急消毒に乗り出しているが、収束の見通しは立たず、価格の安定感から「物価の優等生」と呼ばれる鶏卵も約30年ぶりの高値に。国際的な飼料価格の高騰による鶏肉の値上がりと相まって年明けの家計を圧迫している。
「非常事態宣言ともいうべきことを発したい」。野村哲郎農林水産相は9日、省内で開かれた対策本部の会合でこう語り、農家や自治体に「最大限の緊急警戒」を呼びかけた」
(産経2023年1月10日)
鳥インフル猛威、殺処分1000万羽超 卵も肉も価格上昇…市民生活に影 - 産経ニュース (sankei.com)

殺処分とは、文字どおり生きている家禽を感染防止のために殺す処分のことです。
一種の破壊消防のようなものですが、殺処分の対象はその感染農場全部、時にはその地域全体に及びますから凄惨な風景となります。
これを黙々と遂行しているのは当然、家保か、当該自治体か農水省のお役人だろうとだろうと思ったら大間違い。
困った時の自衛隊頼みで、災害派遣という名目で自衛隊を酷使しています。
あの自衛隊配備のやることなすこと全部反対するデニー知事すら、2年前の豚コレラ時は自衛隊に出動を要請しています。

_20230116_125238

産経

当時動員された女性自衛官はこう述べています。

「1月8日、松田みずき陸士長(23)に思わぬ任務が舞い込んだ。うるま市と沖縄市の養豚場で豚コレラ(CSF)の感染が確認されたたため、県が第15旅団に災害派遣を要請した。これを受け、同旅団は隷下の第15高射特科連隊を中心に部隊を編成した。任務の内容は、豚の殺処分支援や消毒活動だ。
自衛官数人が豚をベニヤ板で囲い込み、獣医のもとへ誘導する。獣医が電気ショックを与えた後、心臓に注射して安楽死させる。死体を仮置き場に運ぶのは自衛官の役割だ。松田陸士長が最初に担当した豚は、おなかに赤ちゃんがいる母豚だった。
「自分も同じ一人の母親として、すごく心が痛かった」
松田陸士長はこう振り返る。周囲には泣いている同僚もいた。第15高射特科連隊本部管理中隊の野上光3等陸曹(29)も涙を流した一人だ。「豚を育てていらっしゃる方のことを思うと涙が出てしまった。最初はちょっと、やっていけるのかなと思った」と語る」
(産経2020年1月26日)
沖縄・豚コレラ殺処分で自衛官が流した涙(1/3ページ) - 産経ニュース (sankei.com)

こういう無益な殺生だけ自衛隊にやらせる。過酷で無意味な汚れ仕事にだけは自衛隊を使う。
こういうことを、「差別」というのではありませんか。
常日頃は、自衛隊をあざ笑い卑しめていた者が、この時だけ自衛隊にすがる。
反吐が出ます。

あたりまえですが、自衛隊は便利屋ではありません。
本来の仕事の国防の任務をはずれて、当該の役人たちがすべき「汚れ仕事」を代行しているにすぎません。

しかもなんの感謝もリスペクトの言葉もなく、ありがとうのひとこともなく、あたりまえのようにして黙々と。
自衛隊なら文句は言うまい、どうせ殺すことがあいつらの仕事だからな、これに懲りて出て行け、という声が聞こえてきそうです。

農水大臣はノーテンキに「各自治体が最大限の警戒をしてほしい」なんて言っていますが、どうやってやるのかお聞かせ願いたいものです。
この人は、役人からもらったぺーパーを読んでいるだけの大臣です。
「最大限の警戒」ですって?とうにやっています。自分の地域の畜産を根絶やしされたくありませんから。
しかしこれだけ感染拡大してしまったらどうするのでしょうか。
ほとんど全国が感染地域です。

R2_hpai_kokunai367

令和2年度高病原性鳥インフルエンザ国内発生事例について:農林水産省 (maff.go.jp)

どうしてこういうバカなことになったのでしょうか。
農水省が、トリインフルにワクチンを打たせないからです。
それだけではありません。
豚コレラに対しても口蹄疫に対しても、農水省は家畜に対してはノーワクチンです。
だからこいう海外悪性伝染病に対してかくも無力なのです。

そもそも農水省は海外悪性伝染病全体について、平時はもちろん緊急ワクチンの投与そのものを否定してきました。
たとえば、農水省豚コレラ緊急指針にもこう述べられいます。

●農水省豚コレラ緊急対策指針
「第13 ワクチン(法第31条)
1 豚コレラのワクチンは、感染を防御することができるが、無計画かつ無秩序なワクチンの使用は、清浄性確認の際に支障を来たすおそれがある。
このため、ワクチンの使用については、慎重に判断する必要があり、我が国における本病の防疫措置は、早期発見と患畜及び疑似患畜の迅速なと殺を原則とし、平常時の予防的なワクチンの接種は行わないこととする。    

これが農水省の家畜に対する殺処分の考えかたです。
ひとことでいえば、ワクチンを打ったら清浄性確認に支障をきたすから、殺処分一本でいけというわけです。

昔のOIE(国際獣疫事務局)の見解のコピーにすぎず、OIEすらとうに方針を転換しています。
ほんとうの感染と見分けがつかないだとか、接種したら肉が食えないだの、接種範囲が決められないだの、輸出がしんどくなるだの、獣医師が足りないなどとグダグダと言っていても、その気になってやれば、要するに出来るのです。
この中でも特に最後まで固執した理由が、ワクチンをすると自然感染との区別がつかないということでした。
ワクチンを接種するととホントに自然感染した個体と、ワクチン接種した個体に同様に抗体が出来てしまって見分けがつかなくなり、診断が不可能になる、というわけです。
一見もっともらしい理由ですがウソです。

「今月10日時点で野鳥の感染例は過去最多の143件。野鳥を介して養鶏場に感染が広がり、これまで感染例がなかった山形や福島など6県でも報告されるなど「前例のない異常事態」(環境省)となっている。
農水省も昨年12月から全国の養鶏場の緊急消毒などを進めているが、収束の目途は立っていない。
これまで感染は一部のカモ類にとどまっていたが、近年はより幅広い個体群に感染が拡大しているよう」
猛威を振るう理由について、鳥インフルに詳しい鹿児島大の小沢真准教授(ウイルス学)はこう解説する。鹿児島県出水市では今季、ツルの大量死が確認されており、多数の死骸からウイルスが検出された。小沢氏はウイルスの遺伝子変異が起きているとの見方を示した上で、「従来はカモからツルに感染するのが主流だったが、今年はツルからツルへの感染も目立ち、感染爆発が起きているのが特徴だ」と話す」
(産経前掲)

すでにトリインフルウィルスは、野外に常在化しているからです。
いつもトリインフ
ルは野外の鳥類に常に「いる」のです。
ですから、鶏舎だけ守れという農水省の指示はナンセンスです。できるわけないだろうが。
いかなるルートを介してもウィルスは侵入します。
そうなってしまった国においては、防ぐ方法はひとつしかありません、
ワチクンを打つことだけです。
それをさせない農水省はもはや犯罪的ですらあります。

 

 

 

2023年1月16日 (月)

米国が押しつけ、中国が潰した日本型畜産

060_20230116013201

日本型畜産は米国が押しつけ、中国が潰しました。
今回の卵価高騰はのほんとうの原因は、なにが起きた起きなかったというレベルではなく、畜産の根幹を他国に委ねてしまっている日本の脆弱さの結末です。

今の飼料高騰はほんの始まったばかりで、その全体の姿は見え始めたばかりのようです。
下図をご覧いただければわかるように、2020年には節目の6万円/トンを軽々と突破し、21年にはなんと禁断の7万円台に突入、そしてこの22年7月にはとうとう破天荒の9万に達する勢いです。
遠からず、10万円台を突破するという悪夢が現実化する気配です。

Https3a2f2fimgixproxyn8sjp2fdsxzqo207939
日経

かつて私が養鶏を始めた30年前頃は相場は4万円以下で、5万円を突破したときにはJA系の飼料屋に怒鳴りこんだほどです。
いや、私も若かった。今は、正直、戦う元気もありません。
個人が戦ってどうなるというレベルではないのです。

「飼料最大手の全国農業協同組合連合会(JA全農)は22日、2022年7~9月期の農家向け配合飼料の出荷価格を、4~6月期に比べ全畜種平均で1トンあたり1万1400円引き上げると発表した。上げ幅は約14%と過去最大で、新価格は同9万4400円前後とみられる。3四半期連続で過去最高値となる」
(日経6月22日)
JA全農、7~9月期配合飼料1万円超上げ 上昇幅最大に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ともかく値上がりのピッチが異常に速い。
わずか2年で2万円上げられたら、対応のしようがありません。
この高騰の原因は、ウクライナ戦争がどのこうのではなく、中国の爆買いの恒常化です。

中国は世界あらゆる国から、ありとあらゆる穀物を爆買いしています。
その結果、世界の穀物市場は高止まりに貼りついてしまいました。
我が国も例外ではなく、畜産飼料価格が数カ月前の5割増となっています。

「(中国の)穀物の輸入が増えたのは、豚の飼料用の需要が増加しているためだ。2018年から中国ではASF(アフリカ豚熱)ウイルスが流行し、豚肉生産が落ち込んだが、2020年後半からの生産回復に伴い、飼料用穀物の需要が伸びている。
輸入品目の上位15品目(HSコード6桁ベース)を前年同期比で見ると、15品目全てが増加し、14位までの品目はいずれも2桁増となった。中でも、穀物(大豆、トウモロコシ、グレイン・ソルガム)とエネルギー(石油、液化プロパンガス、天然ガス)の伸びが大きかった。追加関税発動前の2017年上半期との比較でも、自動車と飛行機を除く13品目が増加した。 」( JETRO 2021年08月17日9)
上半期の中国の対米輸入、前年同期比55.9%増、穀物とエネルギー輸入が大幅増(中国、米国) | ビジネス短信 - ジェトロ (jetro.go.jp)

まずはトウモロコシから始まりました。

「配合飼料価格高騰の要因はトウモロコシなど飼料穀物価格の相場上昇にある。中国が昨年後半からトウモロコシを大量に買い付け始めた。
トウモロコシのシカゴ定期は3月には1ブッシェル(25.4kg)5.4ドル前後で推移していたが、南米産地の乾燥による作柄悪化懸念や、4月に米国農務省が期末在庫率見通しを下方修正したこと、さらに中国からの強い引き合いを受けて同7.3ドルまで上昇した。
今後の見通しについて全農は、米国の夏場の受粉期に向け天候に左右されるものの、引き続き中国向けの旺盛な輸出需要が見込まれることや、期末在庫が低水準であることから「相場は堅調に推移するものと見込まれる」とする」(全農2021年6月18日)

連動してこの高騰は、大豆にも及びました。

「大豆粕のシカゴ定期は3月には1t440ドル前後だったが、中国向けの輸出増大で大豆の期末在庫率が歴史的な低水準となったことに加え、米国の天候不良による作付け遅れ懸念から480ドル台まで上昇した。その後、作付けが順調に進んだことから現在は430ドルまで下落している。国内の大豆粕価格は為替が円安のため値上げが見込まれる」(全農前掲)

Nous21061837_1

そしてこれに船舶運賃の値上げがかぶりました。

「世界の海運大手各社が5月中旬以降、コンテナの輸送運賃を相次ぎ引き上げた。昨年後半から続く海運費の高騰は、ベトナムでも輸入穀物や鉄などの原材料高騰を招いており、輸出入に依存する大手企業各社の収益を圧迫している。4月下旬ごろに天井を打ち一度は落ち着くかに見えた海上輸送コストの上昇傾向が止まらなければ、新型コロナウイルス感染第4波で需要の落ち込みが懸念されるベトナム経済のさらなる重しになりかねない」(アジア経済ニュース5月28日)
海上運賃再値上げが収益圧迫 コロナ前の数倍、業者「不合理」 - NNA ASIA・ベトナム・運輸

2021092200050266yom0006view

海運コンテナ船の運賃急騰、生活じわり影響…食料品への価格転嫁広がる

結果、これらの輸入穀物価格の高騰は、配合飼料の暴騰による鶏卵、牛豚肉類などの畜産品と、大豆油、菜種油などの油脂類の値上がりを引き起こしました。
畜産は、個人経営がたちゆかないほどの飼料高騰に見舞われています。
私の農場も例外ではなく、経営が極めて厳しい所に追いやられています。

「畜産経営に欠かせない輸入飼料価格が高騰している。飼料用トウモロコシや大豆油かすなど原料の平均輸入価格(4~6月期)は、前年同期の約1.3倍だった。畜産農家は高止まりによるコストの増加を懸念している。
 JA鹿児島県経済連飼料養鶏課によると、飼料用トウモロコシの主産地である米国での不作や中国の需要増が背景にある。原油価格や海上輸送費の上昇も影響しており「農家個人でどうにかできるレベルではない」とする」(西日本新聞8月19日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/88aac107fdef957b962ca08aa5b151c9a3062c57

そして油脂類も、同様の深刻なコスト高による価格高騰に直面しています。
やがて食料品全体の値上げにつながって行くと見られています。
モノが順調に売れて徐々に2%のインフレターゲットに近づいていく「良いインフレ」ではなく、モノが売れないのに価格だけ上がっていく「悪いインフレ」が始まる可能性が出てきました。

As

世界の食料価格、12か月連続上昇…日本でも家計への影響必至 : 経済

「大豆、菜種、パーム油の主要油脂相場は昨年後半から過去最高値に迫る勢いで高騰。搾油採算が急速に悪化している。業界全体では1,000億円規模の原料コスト増が確実な情勢。
国際連合食糧農業機関(FAO)の植物油価格指数=表=は一年前の2倍水準に上昇し、世界的にオイル高が進行している。

大豆、菜種、パーム油ともに生産量が伸び悩む一方、需要面ではコロナ禍からいち早く経済回復した中国が輸入量を増やしており、需給がひっ迫。昨年後半から相場は一変し、大豆は9ドル→14~15ドル、菜種400加ドル後半→800~1000加ドル超、パーム油2000リンギ前半→4000リンギ近辺と、大きく上昇。為替も1ドル110円を突破し、円安傾向を強めていることや、カナダの熱波による影響も懸念され、未曾有のコスト悪化に直面している」
(食品新聞2021年7月7日)
製油業界 1千億円規模の原料コスト増 油脂相場高騰は構造的問題 新たな価格水準へ - 食品新聞 WEB版(食品新聞社) (shokuhin.net)

では、この食糧価格の高騰はどうして起きているのでしょうか。
冒頭に述べたように、中国の破天荒な爆買いが原因です。
そもそも中国は小麦生産量ではEUに次ぐ第2位ですが、単一国家としては第1位(約1億3000万トン)で、コメも約1億5000万トン(精米ベース)を生産し、世界第1位です。
またこれらの穀物の輸入数量は、小麦・コメともに300~500万トンであり、これまでは世界貿易に与える影響も限られていました。
ところが、一昨年頃から状況が大きく変化し、2020年~22年度における中国の穀物輸入量は爆買いに転じました。

Colu21051426_

中国の穀物輸入「激増」と「健康な食事」三石誠司『グローバルとローカル:世界は今』
https://www.jacom.or.jp/column/2021/05/210514-51244.php

●2020年から21年度の中国穀物輸入増加
・小麦       ・・・500万トン→1000万トンへ(倍増)
・粗粒穀物・・・1750万トン→4325万トンへ(2.5倍増)
※粗粒穀物とは、トウモロコシ、マイロ、こうりゃん、えん麦、大麦、ライ麦粟及び雑穀等の飼料穀物のこと。

普通、一国の穀物輸入量が2倍以上に急激にハネ上がるということはありえません。
そういう現象はかつてのソ連で起きたことがありますが、それはウクライナの不作が原因でした。
しかし、今の中国で大規模な台風などによる水害は観測されているものの、パニックになるような穀物恐慌が起きているとは伝えられていません。
にもかかわらず、ひとり爆買い戦争を始めて、国際穀物市場を脅かしているのはなぜなのでしょうか。

正直、その理由はわかっていません。
引き金になったのが、米国にかけた大豆に対する報復関税によって自分の首を締めてしまったことまでは確かです。
大豆の高騰に見舞われて豚肉が暴騰し、国民が豚暴動を起きかねないほどだったことは知られています。

ただそれはあくまでもきっかけであって、大きな背景には中国農業の破綻と自給率の大幅な低下があるようです。
実は、中国で最も重要な穀物はコメではなく、大豆です。
中国人は豚肉を好み、中国で肉と言ったら豚肉を指すほどですが、現在、中国人が食べている豚肉は大豆粕を使って生産されています。

大豆を絞った粕を大豆ケークと呼びますが、これを豚に与え、大豆油は人間が料理に用います。
このように重要な穀物を、中国は自給はおろかいまや完全に輸入に頼りきっています。

S-li

中国が抱える意外な弱み「食料自給率の低下」

上図は中国の大豆自給率ですが、かつて中国は国内で大豆を生産し1980年代には170万トンもの大豆を輸出したことすらありましたが、21世紀に入って自給率は急速に低下し始め、2013年にはわずか16%まで低下しました。
前世紀から中国はエネルギーを漁るために中東やアフリカに進出しましたが、石油と同様に海外から大量に輸入するものが、実は大豆です。
下図は大豆輸入量を見たものですが、中国は日本の20倍を輸入しており、もちろん世界最大の大豆輸入国です。

Wc

大豆輸入量の推移(単位:100万トン、出典:FAO  JBプレス

現在、中国の大豆輸入量は6000万トンを上回り、世界で交易される大豆の実に6割に達する勢いです。
よく我が国は食料輸入大国だと言われていますが、中国の食糧輸入量に較べると可愛いものです。
そのために日本は国際穀物市場においてバイイングパワー(販売力を背景にした購買力)を失い、ことごとく中国に競り負けている状況です。

ただし、中国が最大の敵である米国に依存してしまったことも、また確かなのです。

 

2023年1月15日 (日)

日曜写真館 ぶんぶんをつけて戻りし朝散歩

S-020_20230114154601

あたたかき今日は何せむまづ散歩 新明紫明 

S-018_20230114154701

腐り尽す老木と見れば返り花 正岡子規

S-024_20230114154801

見えてゐる海まで散歩風薫る 稲畑汀子

S2-066
麥を蒔く畑に出でゝ散歩哉 麦蒔 正岡子規

S2-068

枯くわりん老樹とことん冷えにけり 高澤良一  

 

 

2023年1月14日 (土)

瀕死の日本型畜産

014

不勉強なメディアはウクライナ戦争による飼料高騰とトリインフルの大感染を原因に上げていますが、もはやそういうレベルの問題ではなくなっています。
いつもながら浅いですね。

結論から言えば、日本畜産はウクライナ戦争などなくても、すでに半死半生なのです。
トリインフルで多くのトリが殺処分になって、やっとこれで卵価が上がるわい、とほくそ笑んでいるかもしれません。
生むトリの絶対数が減れば供給不足になり、市場価格は上がります。
こういってはナンですが、いままでの低卵価格に慣れきったほうが異常だったのです。

目の前の卵価格が上がるの上がらないという次元の問題ではなく、遠からず和牛や一部ブランド豚、平飼養鶏などを除いて日本畜産は壊滅に追い込まれることでしょう。
かろうじて生きて見えるのは補助金があるからで、ゾンビー業界になりかかっています。
今日は少しそのへんをお話します。

結論を言えば、戦後の日本畜産型ビジネスモデル自体が破綻してしまっています。
日本型畜産が成立してきた条件は三つほどあります。

●日本型畜産のビジネスモデル
①安価な外国産飼料が恒常的に輸入可能であること
②近代化と大型化
③税金による補助金支援

以上の3つが日本畜産が成立してきた条件でした。
まず①の外国製穀物輸入への強依存が大前提で、②の大型化はそれを捌くために必然的に生まれた経営合理化の結果ですし、③はそれを維持するための農水省の支援です。
ですから大前提は外国飼料への強依存にあるのです。

戦後の世界畜産は米国の過剰生産した穀物の捌け口として始まりました。
米国が戦争中に大量に作ったのは軍需用品だけではなく、穀物もそうでした。
ともかくハンパなく作ってくれました。
そして米国という巨人が全力で突っ走ったので、急には止まれなくなったのです。
当然、オーバープロダクト、作りすぎです。

3c122043027d7b29551ff2bad404251e

日本の主食がコメから小麦に変わった背景【連載・コメより小麦の時代へ 第1回】 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」 (smartagri-jp.com)

戦後直ちにこの余剰生産の穀物は米国経済にのしかかりましたが、とりあえずは恩を着せてマーシャルプランでヨーロッパに配りまくってなんとかしのぎました。
しかし再び朝鮮戦争が起きてしまいます。

また同じことの繰り返しで、戦争が終わると再び農産物は余り始めました。
そのうえ空前の大豊作。余った小麦だけで3000万t。ちなみに日本の年間コメの需要が730万tくらいなのでざっと4倍もの余剰です。
しかも生ものですから、長く保管できません。

米国農民に泣きつかれて困った米国は、日本を利用することを考えつきます。
米国が考えたのは、当時日米で結ぼうとしていた安保条約と相互防衛援助法(MSA)を、食糧援助とセット販売で日本に呑ませることでした。 
もちろん食糧援助といってもタダではありません。有償です。
しかし食糧難に陥っていた日本は、1954年にこれに合意し、小麦60万t、大麦11万6000t、総額5000万ドルに及ぶ農産物を受け入れました。
厚生労働省は、この小麦をパンにして学校給食に脱脂粉乳ミルクとともに提供すると同時に、パン食の「栄養改善運動」を展開していきます。
例の「コメを食べると頭が悪くなる」というアレです。
思えば、私たちの世代は余った小麦と、これまた余剰の子豚用脱脂粉乳でスクスクと育ったわけです。

もちろん給食ていどで捌ききれず、やがて畜産全体を輸入穀物依存に転換していく方向に農水省は指導します。
これが今なお続くコメ余りと、外国飼料依存の日本型畜産を作ったのです。
しかし農水省がテメーで作っておきながら、今になって自給率がタイヘンなんですぅ、といってもナニ言ってんだつうの。

そしてそれから60年。下図が現在の穀物輸出量です。
ややシェアを落したといえど、いまでも米国は世界の穀物の37%を生産し、同じシェアを誇っています。

_20230113_083454

世界の食料生産 | 

上図左の生産量をと右の輸出量を見比べて下さい。なにか気がつきませんか。
そうです、左の生産量で20%の生産量を持っていたはずの中国が、輸出シェアでは消えてなくなっていることです。
つまり中国という世界一の豚肉喰い民族は、米国から穀物を輸入しないことには、国民に肉を食わせられないのです。 

元来、畜産は農業生産の余剰で成り立っていました。
芋屑とか野菜クズを豚や鶏にやることが始まりだったのです。
その原型に戻そうとするのが、私がやってきた農業の一部としての小規模養鶏だったのですが、それはさておき、今や畜産は大量のトウモロコシや小麦などを肉や卵に「変換」する加工業のようになってしまっています。

_20230113_083654
同上

上図は、牛肉や豚肉、鶏卵の生産に必要な穀物の量を示しています。
牛肉なら取れる肉の11倍、豚肉なら7倍、鶏卵は3倍といったところです。
かくも畜産とは効率の悪い、ある意味で人がそのまま食すればいいものを奪って、肉や卵に変換して浪費するものでもあるのです。

しかも人類は肉や卵なしで暮らしていけません。
文明化が一定の時期に達すると、法則的に始まるのが肉食で、豊かさのシンボルでもありました。
もはや人類の業のようなものです。
実際に、1961年から50年間で、世界で肉類の消費が約2倍に増加しており、これは中国が開放改革でに踏み切った時期と歩調を合わせています。
今や世界一の豚肉消費国は中国で、日本のざっと20倍、世界の豚肉を喰い尽くしているのはこの国です。

_20230113_095125

世界の国別 豚肉消費量 (2017年) 単位:千トン
同上

このように半世紀の間で、日本は6倍、中国は17倍も穀物を輸入するようになりました。
世界の穀倉を総なめにする中国の爆買いが始まったのです。
このチャイナマネーによる穀物爆買いによって、世界の穀物市場は完全制圧されてしまいました。

この影響は巨大すぎるほど巨大で、日本のバイヤーは半世紀以上つきあってきた米中西部の農家に行って売り渋られ、ブラジルに行っても不調で、いまや中国がゴッソリ買った後の残りを分けてもらうようになっています。

0e361705d706fd3408d38fcfaf7f4550

中国の穀物爆買いは続く【森島 賢・正義派の農政論】|JAcom 農業協同組合新聞

上図は、中国の穀物爆買いの推移ですが、10年ほど前の中国の輸入量は、ほとんどゼロでしたが、最近では日本の輸入量の6倍ほど輸入するようになっているのがわかります。
言い換えれば、穀物世界市場にこの10年間に日本と同じような穀物輸入大国が6つ新しく出現したことに相当するわけですからぞっとします。
そしてこれは中国が元の文革前の経済状況にならないかぎり、どこまでも続く構造的な問題です。

これが、昨今マグロでも言われだしたいわゆる「買い負け」現象です。
マグロは食わなくてもどうにかなりますが、豚肉、鶏卵は台所になくてはならない食品です。
その首根っこを、中国に掴まれてしまったのです。

これによって、戦後日本の畜産のビジネスモデルはほぼ完全に破綻しました。
米国で過剰生産される低価格の穀物を輸入し、徹底した合理化によって国際競争力を持つ畜産品を作るというモデルが、もはや前提から崩れ去ったからです。

ですからメディアが言う、ウクライナ戦争が起きたから、トリインフルが跳梁したからと言うのは、ただのきっかけにすぎず、根幹で日本畜産は詰んでいたのです。
元凶はあくまでも中国ですが、同時に米国の穀物に極端に依存したてきたとうぜんの結末であったともいえるのではないでしょうか。

2023年1月13日 (金)

作られた「物価の優等生」

031_20200116050901

卵価が急騰しています。
年を超えたらおちつくはずだ、なんて野村農水大臣が言っていましたが、みごとハズしてしまいました。

「野村農林水産大臣は、27日の記者会見で「年末にかけて需要が増えて価格が上がっているが、例年の傾向を顧みると、年明けには一旦需要が落ち着き 鶏卵価格は低下する」と述べました。
ただ、鳥インフルエンザの感染がこれまでにない早さで広がっていて、先行きは不透明です。
鳥インフルエンザの感染拡大で2年前はニワトリの処分数が過去最多となったことを受けて、去年は本来需要が落ちて価格も下がる夏場に値上がりしました。
農林水産省は卵の店頭への供給が不足することはないとしていますが、価格の動向は年明け以降も注意深く見ていく必要がありそうです」(NHK2022年12月13日)
卵の値上げなぜ?いつまで? 飼料価格高騰や鳥インフルエンザも影響|サクサク経済Q&A|NHK 

野村大臣は年末年始のいつもの卵価高騰と一緒にしているのですが、たしかに従来は、下図のような正月前に需要が延びて、その反動で1月、2月と低迷するパターンを踏襲してきました。

C5124c6a3f7ee3d9625018f50bece243

JA全農たまごの東京及び大阪のSS~LLサイズ(6規格)の加重平均価格
「物価の優等生」卵はなぜいつも同じ値段なのか──採卵養鶏の実際を知る(上)|マイナビ農業 (mynavi.jp)

ところが今年は、年を越しても高騰は治まりません。

Dcmaxs01347401

「物価の優等生」卵も値上げの波 エサ代高騰に仕入れ値上昇 一方でカツオは豊漁でお値打ちに- 名古屋テレビ【メ~テレ】 (nagoyatv.com)

ところで、今年の高騰の原因に行く前に決まり文句のように「物価の優等生」という言い方が鶏卵に対してされているのかを考えてみましょう。いささか聞き飽きました。
というのは、昭和と価格が変わらないということのほうがヘンじゃありませんか。
自由主義経済はインフレになれば価格は上がり、デフレになれば低落します。
極端に値上がりしない商品価格なんて、決して自慢できるものではなく、むしろ日本が経済の低体温症であるデフレに長くいた証拠のようなものです。

1950年の値を基準値の1.00として、消費者物価指数(CPI)の変動をグラフ化したのが下図です。

Gn2022042305

1950年と比べて8.51倍…過去70年あまりにわたる消費者物価の推移(最新) - ガベージニュース (garbagenews.net)

上のグラフは、1950年に100円だった商品が、2022年には約851円の価格をつけていることを意味しています。約8.5倍ですね。
次に鶏卵価格を見てみます。

Tamago2

【たまごの価格】60年間のたまごの価格推移を見てわかること | 賞味期限・消費期限・日持ち 大事典 (xn--btr874bhs1ao5h.jp)

わ、はは。なんじゃこれは。
2000年代に入って200円台で変わらないじゃありませんか。
初任給が16万だった1974年頃のほうが、いまより高いのです。
これをしてメディアは、「物価の優等生」という美名で呼んでいるのですが、もちろん種も仕掛けもあります。

鶏卵は、コメに並ぶ社会主義計画経済をやっているからです。
それでなくては、自由主義経済でぴたっと一定範囲内で価格が収まる道理がありません。

鶏卵はコメと並ぶ国による生産調整が入っている農産物です。
始まったのは1974年、コメから遅れることわずか4年で、これで農水省は卵の生産過剰を抑えられると考えたようです。
どういう仕組みかといえば、まず基準価格を定め、その水準から価格が下回ったら差額の9割を補填し、さらに下がれば空舎期間をあけさせて、またそれに奨励金を支払うという仕組みです。
スゴイね、私はもらったことなど一回もないが、2段階スライド補償というわけです。

_20230112_102220

同上

これにつぎ込んだ税金が、2020年度の事業予算は約52億円で、21年度も同様の予算が付くそうです。
これが卵が「物価の優等生」でいられた秘密です。
税金の竹馬を履いた優等生というわけです。
つまり一定の生産量に合わせていれば、カネをもらえるという仕組みで、コメの生産調整にそっくりです。
なんのことはない「安い卵」は、税金で底上げされていたわけで、ばかばかしい。

そしてもうひとつの秘密が、鶏卵業界卵ほど寡占化が進んだ業界はないことです。
2段階スライド補填なんて手厚い価格補償を作ってしまえば、この税金で作った砂糖菓子に群がってくる企業も多くでました。

薄利でも補償があれば、大規模な企業がスケールメリットを活かすことが可能ですし、今の養鶏はひとりで百万羽ていどを管理できるような大型化が前提となっています。
ウィンドレス鶏舎は窓がなく、ファンで換気し、室内環境を自動で調整する全自動の鶏舎です。餌やり、水やり、採卵まですべて機械にし、卵をパックに詰めるインラインも機械化されています。人は監視だけ。

ですから、関東では大型ウィンドレス鶏舎を建てる資本を持つI社、T社だけが生き残りました。
この巨大養鶏企業だけで8割のシェアを占めています。
かつて養鶏が盛んだった地域も、100軒ほどあった農家はすべて潰れ、残ったのはこういう企業養鶏だけです。

去年、広島のアキタフーズという巨大鶏卵会社の社長が、農水相に賄賂を贈ったことがニュースになりましたが、あの社長はちょっとした富豪でクルーザーも所有しています。
どうやらあの社長は大臣に、20年度に大規模生産者の損失補填を拡充を要請したり、奨励金を増額したりする制度変更を頼んでいたようです。
それを現金の札束で渡すという、実に古典的手口でやったために東京地検特捜部にお縄になりました。
業界の恥と罵られていましたが、この制度を少し拡充するだけで、いかに巨額なカネを懐にできるのか、はしなくもバレた事件でした。

農家養鶏は年々4~6%減っていき、飼料の高騰に耐えきれずに廃業となる農家も後をたちませんが、このアキタフーズのような寡占業者は1社で700万羽、売り上げは700億円だといいます。
農民は離農しても、「物価の優等生」は続けるというのが、農水省の考えのようです。
同じ生産量調整制度でも、コメは兼業農家と専業農家を同等に扱ってコメ専業農家を育てない政策なのに対して、鶏卵は建前上は同等でも、現実には寡占化に意識的に誘導してきました。

結果、一握りの寡占がだけが生き残り、農家養鶏の廃業した跡地を買い叩き、そこに100万羽規模のウィンドレス鶏舎を建てていっそう巨大化していったのです。

この構造が破綻したのが、今回の飼料価格高騰とトリインフルの感染拡大でした。
それについては次回に。

 

 

 

2023年1月12日 (木)

米軍と共に尖閣・離島を守る時代へ

119-027_20230111160401

海兵隊のシフトが大きく変化します。
ひと言でいえば、いままで中東やアフガンに展開することに最適化された戦力配備から、中国との軍事衝突を真正面に据えた配備に転換します。
そしてその配備の場所は沖縄と奄美です。

なんだ、いまでもいるじゃん、奄美が増えただけじゃないかと思われないように。
同じ駐屯でも、今はアフリカ東海岸以東の中東、アフガンに投入するための前進拠点でした。
ですから、第3海兵師団でキャンプシュワブに駐屯しているのはその3分の1程度で、過半数は常に外国に出張っていたのです。
その意味で、よく共産党が「海兵隊は沖縄を守るためにいるんじゃない」という言い方は部分的に当たっていないこともなかったのです。
ただし沖縄に米軍陸上部隊がいるというその存在感によって、中国は手が出せなかったのです。

米国は沖縄の地政学的重要性はよく理解していたものの、オバマ時代まで離島や尖閣についての認識が欠落していました。
ですから尖閣防衛について、米国はハッキリ言えば無関心で、お義理で日米安保条約第5条の範囲だとリップサービスはするものの、本心は「米国は固有の領土問題には干渉しない。だから尖閣問題に巻き込まれたくはない」と考えていたのです。

いまやこの考えは大きく変換しました。
沖縄とその離島、奄美、そして尖閣は、中国の軍事膨張を食い止めるための最前線であるという認識にやっと米国も辿りついたようです

Qnmvoqzk

読売

それが今回の海兵隊大改革です。
今までのように本島にだけいるのではなく、奄美や離島にも配備され、直接に島の防衛に当たるようになります。
これは大きい。
従来、沖縄には反米知事と反戦団体の反対によって、自衛隊の配備は有効に阻止されてきました。
結果、中国の侵略を真正面に受けている地域であるにもかかわらず、自衛隊の師団は置かれずに小規模の第13旅団しか配備されていません。
これで米軍がいなければ、手もなく侵略を許していたはずです。

ところで後述しますが、この構想は既に2年前に「フォースデザイン2030」に述べられており、その実施時期が2025年と明確になったわけです。
CMC38 Force Design 2030 Report Phase I and II.pdf (marines.mil)

「米政府は、沖縄県に駐留する米海兵隊を2025年度までに改編し、離島有事に即応する「海兵沿岸連隊(MLR)」を創設する方針を固め、日本政府に伝えた。強引な海洋進出を続ける中国への抑止力と対処力を高める狙いがある。11日に米ワシントンで開く日米安全保障協議委員会(2プラス2)で創設を打ち出す方向で調整している。
複数の日米両政府関係者が明らかにした。アフガニスタン戦争などの対テロ戦が本格化した00年代以降、海兵隊は大規模な地上戦に備えて戦車や大砲などの重火器部隊を増強してきた。しかし、近年は中国が東・南シナ海で軍事活動を活発化させていることを受け、島しょ部での戦いに対応できる体制構築を急いでいる。MLRはこの中核を担う機動部隊で、長射程の対艦ミサイルや防空機能を備えることになる」
(読売2023年1月10 日)
米が沖縄に「離島即応部隊」創設へ…海兵隊を25年度までに改編、対中抑止力を強化 (fmworld.net)

今回の海兵隊のシフトは、海兵隊史上空前の大再編です。
従来彼らに与えられていたFirst to Fight(最初に戦う)という突撃隊的な性格から、長距離対艦ミサイルと対空ミサイルを装備した小規模な部隊に分散して中国の正面となる離島で戦うイメージに変更になります。

「バーガー司令官は「戦力デザイン2030」の中で「18年策定の国家防衛戦略は、海兵隊が中東での過激派対策からインド太平洋における大国間競争に任務をシフトするよう求めた」と説明。「内陸から沿岸、対テロ組織から同格の競合国。このような任務の根本的変化は海兵隊の組織や訓練、装備に大幅な変革を必要とする」と強調した」
(時事2020年7月25日)

 戦車全廃、内陸から沿岸部隊へ 中国にらみ変貌―米海兵隊 )

いままでの海兵隊のイメージは、映画『アバター』に出てくるような巨大な上陸用艦船に乗り込んだ荒くれ男たちが、雄叫びを上げて突っ込んでくる、というイメージでしたが、今回はむしろ守る側のネイティブに近いかんじに変化します。
つまり従来の海兵隊の名称の「MEU海兵遠征群」はなくなり、からMLR海兵沿岸連隊(Marine Littoral Regiment:MLR)への転換は既に始まっているのです

「MLRは1800~2000人規模とみられ、長距離対艦ミサイルや対空ミサイルを装備する。有事の際には島しょ部に分散展開し、陸上から中国軍艦艇を攻撃して中国軍の活動を阻害。米海軍による制海権確保を支援するのが主な任務となる。
海兵隊の構想によると、沖縄を拠点とする第3海兵遠征軍傘下の海兵連隊を軸に再編成を行い、MLR3隊を創設する。バーガー総司令官は、既にハワイでは1隊目の編成が始まっており、沖縄とグアムに設置予定の残る2隊についても「27年までに完全な運用体制が整う見通しだ」と明言した」

(読売前掲)

ちょっと驚かされたのは、重くてかさばる装備をあっさりと捨ててしまったことです。
伝統的な重装備であるM-1A1戦車は全廃され、マリーンの象徴的装備だったAAV-7両用強襲車と後継装備は大幅に縮小され、いまウクライナで気を吐いているM-777榴弾砲さえ縮小の対象になります。
オスプレイは縮小ないしは廃止されるので、普天間の代替であったはずのが返野古に飛行場ができる頃には、とうにオスプレイそのものがいなくなる可能性もでてきました。
といっても、有事の増援部隊を受け入れるスペースが返野古にはないので、簡単になくなすわけにはいかないようですが。

M777の代替になるのは、遥かに射程が長いNSM(海軍打撃ミサイル)です。
索敵用にはドローンを考えているようです。

まるで空母のような強襲揚陸艦もマリーンの象徴的装備でしたが、これも海兵隊が敵前上陸するという思想自体が変化して、敵に先んじて部隊を揚陸させる発想に変わったために、海兵沿岸連隊の輸送用として満載排水量は最大4000tていどの小型輸送船に変わるようです。

MLRは、沿岸や離島での戦闘に特化した部隊で1800~2000人ほどの規模を予定しています。
連隊は3つの部隊で構成される。

・沿岸戦闘チーム(LCT)
・沿岸対空大隊
・沿岸兵站大隊

この中で重要なのは沿岸戦闘チームです。
LCTは長距離対艦ミサイル部隊と歩兵大隊を中心に編成されています。
実はこのLCTは、いま自衛隊が奄美、石垣、宮古に展開している対艦ミサイル部隊と相互補完する部隊です。

2021090301_07_0

沖縄本島にミサイル部隊/地対艦 攻撃対象になる危険 (jcp.or.jp)

南西諸島では、地対艦ミサイル部隊は地対空ミサイル部隊とともに、2019年に奄美(鹿児島県)、宮古島(沖縄県)両駐屯地に配備済み。新編される石垣駐屯地(約570人)に22年度中、勝連分屯地には23年度中に追加配備されます。
この海兵隊のMLR構想自体が、自衛隊の対艦ミサイル部隊展開構想に影響されたものです。

 MLRは1800~2000人規模とみられ、長距離対艦ミサイルや対空ミサイルを装備する。有事の際には島しょ部に分散展開し、陸上から中国軍艦艇を攻撃して中国軍の活動を阻害。米海軍による制海権確保を支援するのが主な任務となる。
 バーガー総司令官は、自衛隊が水陸両用車や輸送機オスプレイ、最新鋭ステルス戦闘機F35など相互運用性のある装備を保有していると指摘。「(海兵隊と)完全に補完し合う関係だ」と強調し、南西諸島での自衛隊との合同演習にも意欲を見せた」
 (時事前掲)

自衛隊も海兵隊の再編に歩調を合わせて、陸自を那覇市の第15旅団(約2200人)を3000人前後の師団に格上げすることを決めるなど、強化を急いでいます。
決まってはいませんが、水陸機動団も分遣隊を本島に置くかもしれません。
なお、米海兵隊はスリム化するので、むしろ在沖米軍の兵員数は縮小されるはずです。

とまぁ、かつて尖閣を米国が守るといっているが信じられないと、口角泡を飛ばしていたのが嘘のような変化ではあります。
沖縄とその離島、奄美、尖閣は米軍と共に防衛する時代に入ったのです。
とはいえ、沖縄と離島・尖閣を守るのはあくまでもわが国であって、米軍は自国を守らないような国とは共に戦いませんので、念のため。

 

 

 

2023年1月11日 (水)

大本営発表するようじゃ、オシマイだよ、ロシア

S18-040
ロシアのクリスマス停戦の茶番は、自分がミサイルをぶっ放して御破算になってしまいました。
クラッカーの代わりにミサイルをぶっぱなすんですから、いやなんともかとも。
「ロシア国防省は8日、ウクライナ東部ドネツク州クラマトルスクでウクライナ軍が兵舎として使っている建物をミサイル攻撃し、600人以上の兵士を殺害したと発表した。一方、現地で取材する欧米メディアは「そのような兆候はない」と報道。ロシア側の発表に疑問を投げかけている。 ロイター通信によると、露国防省は攻撃について、今月1日に同州マケエフカで露軍の兵舎が攻撃を受け多数の犠牲者が出たことへの「報復」だと述べた」
(毎日2023年1月9日)
ロシア「ウクライナ兵600人殺害」と発表 ウ軍「プロパガンダ」(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
当初、日本のメディアは「ロシアの攻撃で600人を殺害した」というロシア報道だけを流していましたから、新年早々ユーウツになったのですが、案の定フェークでした。
日本のようにロシアの官製発表をそのまま裏取りしないで流すところと違って、CNNは早速ドネツクに記者を走らせたようです。
メディアは足だよ、毎日さん。
するとミサイルは兵舎からはずれて、ガラスが割れていただけだったそうです。たはは。(気抜)

Aftermathofmissilestrike

CNN
「現地のCNN取材班も、多数の死傷者が出た形跡はなく、市内の遺体安置所周辺などで目立った動きはみられないと報告している」(CNN2024年1月9日)
ロシア軍、「兵士600人以上殺害」と主張 ウクライナは否定 - CNN.co.jp
要するに、プーチンのクリスマス停戦とは、ウクライナが拒否することを前提にした国内向け平和アピールにすぎないことを自白してしまいました。
休戦提案に対してのウクライナの返答が、ハイマースによる兵舎を攻撃でしたが、一挙にロシア兵を600人を全滅させたと発表すると、たぶんプーチンは頭に血が登ったんでしょうかね、すぐに報復しろ同じだけ殺せと命じたというわけです。
ところがこの報復は見事にスカ。
写真を見ると、兵舎のだいぶ外に落下しており、いかにロシアのミサイルが固定目標すら狙えないしろものだとわかってしまう、おまけまでつけてしまいました。
これではまるで「大本営発表」です。

ではなぜこういう大本営発表をするのでしょうか。今日は少しそのあたりを考えてみましょう。
このスカ攻撃は、ウクライナ軍がハイマースで、ロシアの兵舎を撃ってクリスマス気分のロシア兵を600人殺したことの報復だそうです。
600人といえば、1個大隊に相当しますから、ウクライナ戦争開始以来一度に戦死した数としては最大規模となります。
しかも戦闘任務以外で!

ですから、休暇気分で酔っぱらって死んでしまったロシア兵には気の毒ですが、停戦が成立していないにもかかわらず、敵の射程内でパーティを開いていればこうなるのは分かりきっていたことでした。
ウクライナ軍は新年の12時1分に砲撃したそうで、これがプーチンのクリスマクス停戦への冷厳な返答だったのです
いうまでもなく亡くなった兵士たちには責任はなく、そんな危険な場所で兵隊を酔っぱらわせていた上層部の責任です。
だからそのエライさんの責任をうやむやにするために死んだ兵士の数を少なく発表し、さらに報復攻撃をしたとフェークニュースを流すことで仇はとったぜ、とやりたかったのでしょう。
まともな司令部なら、こんな場所でパーティを許可した指揮官を軍法会議で厳重に処分すべきです。
ところが、すでに自浄作用がロシア軍にはありません。
自軍の犠牲者を少なくし、ウクライナ軍の犠牲者数を過大に発表するという小細工でなんとかなると思っています。
ここが致命的です。
ロシア軍は、負ける軍隊の負のスパイラルに突入しているのです。
もちろん戦争の真っ最中ですから、ウクライナも情報統制をしています。
発表されることも必ずしも事実とは限りません。
ただし、ウクライナには常に西側メディアの目が光っていますから、現実とかけ離れた情報は流せません。
そんなものを流せば、西側の支援国の信頼が離れていってしまいます。
一方、ロシアは自分に都合のいい発表しても、西側はまたかと思い、それしか知らないロシア国民はそのまま信じることでしょう。
全体主義のぬるま湯に浸っていられるのです。
ですから、構造的な腐敗の温床になるのです。

たとえばわが国の悪名高い大本営発表も、勝っているうちは正確に伝えていましたが、いったん日本が負け始めるとこうなっていきます。
「どの部署もハンコをなかなか押さなくなった。「そのまま発表すれば国民の士気が下がる」というのは建前にすぎず、「敗北を認めると、その責任を負わされかねない」というのが本音だった。発表が遅れれば、報道部の責任が問われる。報道部はハンコが早くもらえるように、戦果をさらに水増しし、味方の損害を減らした発表文を起案するようになった」
(読売2018年8月15日)
大本営発表はなぜ「ウソの宣伝」に成り果てたか : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
まず、出てくる兆候は戦果の水増しと自軍の損害の隠匿でした。
それが始まるのはミッドウェイ開戦の敗北からです。
4隻自軍の空母が沈んでも1隻、敵に与えた戦果は1隻を2隻に水増しします。
後に昭和天皇から「サラトガは4隻もいるのか」と言われたように、水増しに継ぐ水増しをあたりまえにするようになっていきます。
_20230110_052532
読売
大本営はこの頃から嘘を言うことに良心の呵責を感じなくなったようで、次に待っているのは「言い換え」です。
たとえば、ガダルカナル島からの撤退は「転進」に、アッツ島の守備隊全滅は「玉砕」に言い換えられました。
日本人特有の言霊信仰といえばそれまでですが、「撤退」とすれば大本営の作戦の失敗や、補給の失敗を問われるので言い換えただけにすぎません。
トップがこのような帳尻合わせを始めれば、当然前線の現場部隊もそれに倣うようになります。
すると出てきたのが「員数合わせ」です。
山本七平氏が書いた『一下級将校の見た帝国陸軍』という名著がありますが、彼は日本陸軍が敗北した最大の原因がこの員数主義だと言い切っています。
「員数」とは帳簿上の数のことですが、部隊でなにかの物品が足りないとなると、上官は兵隊に「バカヤロー、員数をつけて来い」と命じるのだそうです。
つまり、隣の部隊から盗んで来いということで、帳簿の数と合わせてしまうのです。
これが悪名高い「員数合わせ」という因習です。
山本氏は、いろいろな例を紹介していますが、彼が所属していた野戦砲兵は砲を馬で引っ張るのですが、その馬がいない。
馬がなければ仕事になりません。
すると「員数合わせ」をして隣から盗んで来いとなるわけです。
実情とは関係なく、作文された報告の辻褄さえ整っていれば、それでよいとされるようになります。
分隊は小隊に虚偽報告し、小隊は大隊に、大隊は連隊に、そして師団は方面軍にと、虚偽を増幅させなからウソ報告がまかり通っていきます。
やがて積もり積もれば、あきれるほど実体は現実から遠ざかり、こういう状態でいざ実際に戦闘になると勝てる道理がありません。
また山本氏が招集された昭和17年段階では、豊橋の砲兵学校で2年間の教育を受けさせてもらえていました。
しかしその翌年の学徒動員が始まると、まともな教育訓練がないまま半年の促成教育で前線に送ってしまうようになります。

ここからひとつの軍隊が敗北の下り坂を転げ落ちた時の、みっつの兆候がわかります。
ひとつは大本営発表、ふたつめは言い換え、みっつめは訓練の軽視です。
どれも根っこは同じで、帳簿上数が揃っていればよいとする員数主義の跋扈です。
これらすべてを今のロシア軍はやっています。
BTG(戦術大隊群)の兵員数や戦車の定数は決まっているのに、それらが消耗し尽くしても平然と1個BTGとして数えています。
ほんとうはスカスカですから、いんたん後方に下げてキチンとした補給と補充をおこなって再編すべきですが、それが兵站が破綻しているために出来ないでいます。
兵員数がたりなければ、素人の国民に動員をかけて一夜で100万人の軍団をつくって見せます。
もちろん数週間のやっつけの訓練と、まともな装備もないまま前線に送ればどうなるかは目に見えていますが。
装備品もミサイルやドローンは撃ち尽くし、イランに土下座するようにしてドローンをわけてもらうようになります。
砲弾すら欠乏し、北朝鮮に融通を依頼するまで堕ちました。
もはや世界第2の軍事大国の面目はどこにもありません。
とうぜんのこととして、こういう状態でやれば必ず負けます。
戦力が骨粗鬆症になっている上に、自分が流したフェーツニュースに自家中毒を起こしているのです。

キーウやヘルソンからの撤退は、別方面への移動だと言い繕うなんぞ屁のカッパ。
かくしてロシアでは、プーチンが聞きたくないことは伝えませんから、いっそうプーチンは王様の耳はロバの耳となっていくわけです。
まさに今のロシアは、大東亜戦争の日本の敗北の轍をしっかり踏んでいるようです。

630_360_1661774675262

ウクライナに平和と独立を

2023年1月10日 (火)

戦争資源が枯渇したロシア

S-039_20230109034201

プーチンがクリスマス停戦を言い出した理由のもう一つが、ロシアの戦争資源の枯渇です。
プーチンは、時間稼ぎをしたかったのです。
現在前線で消耗した部隊を後方に下げ、動員兵によって補充した部隊を送るための再編成のための時間が必要だったのでしょう。
もちろんボロボロになっている兵站ラインを整えて、砲弾や燃料、食糧を送ることも念頭にはあったはずです。

さて、こんな提案をせねばならないほどロシア軍は消耗していました。
去年の夏前には景気よく1日5万発の砲弾を発射していたロシア軍は、いまや1日に最大で2万発を撃てればいいところで、それすら不可能になってきています。
だから恥を忍んで、今まで属国扱いしてきた北朝鮮に砲弾の提供を申し出たのです。
イランには地上ルートを切り開いてでもドローンをほしがっています。
そのために虎の子のスホーイ35を供与するとか。
プーチンの傷つきやすい自尊心は、さぞかし泥まみれになったことでしょう。

「米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は9日、イランが8月以降、ウクライナを侵略するロシアに数百機の無人機(ドローン)を提供し、弾道ミサイル数百発の供与やドローンの共同生産を検討していると記者団に語った。両国関係が「本格的な防衛協力へと変化している」として警鐘を鳴らした」
(読売2022年12月10日)
米高官「ロシアとイラン、本格的な防衛協力へと変化」…ドローン供与に欧米から批判 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

ロシア兵は砲兵の支援があるうちだけは元気です。
下図はロシアとウクライナ両軍の砲撃回数を見たグラフですが、赤線がロシア軍、青線がウクライナ軍です。

_20230109_104219

 

クリックすると大きくなります。

10月19日を頂点として、以後ロシア軍砲撃回数が急降下していますが、それでも8月まではロシア軍が砲撃で撃ち勝っていたのがわかります。
ウクライナ軍兵士が「こちらが一発撃つと10発返ってきた」、と言っていたように、ウクライナは火砲で撃ち負けていたのです。
この重火力不足こそが、キーウでロシア軍を退けたのちの、ウクラナイナ軍が耐えた困難な半年の原因です。
これを一気に覆したのが、東部のハルキウ州で実施された今世紀最大、最長規模のズブロスキ急襲作戦の成功です。

220511armsthumb720xauto430582

ニューズウィーク M777榴弾砲

では、なぜウクライナ軍の戦力が回復して、こんな大作戦ができるようになったのかといえば、理由は明快です。
ゼレンスキーが声を枯らして国際社会に要請していた155㎜榴弾砲とその砲弾が、やっと夏前に到着しはじめたからです。
米国はこのM777榴弾砲90門と310名以上のそれを操作するウクライナ軍砲兵の訓練を込みで供与しました。
訓練も一緒にやってしまえるというのが米軍のすごさです。
他の西欧諸国も同様に火砲を供与し始めました。

その効果は甚大でした。
戦争初期にロシア軍戦車部隊をくい止めたジャンベリンと並ぶゲームチェンジャーになったのが、このM777榴弾砲だったのです。

「イギリスの王立防衛安全保障研究所(RUSI)が4月22日に発表した報告書は、ウクライナ軍の総司令官、ヴァレリー・ザルジニー大将の上席顧問をつとめる人物の発言を引用している。『対戦車ミサイルには、ロシア軍の進軍を遅らせる効果があったが、壊滅させたのは我々の大砲だ。ロシアの部隊を崩壊させたのは大砲だった』」
(ニューズウィーク2022年5月11日)
ウクライナ軍が使い始めた米M777榴弾砲の威力|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

この結果、ロシア軍の戦闘車両、特に陸戦の主役である戦車の消耗は尋常ではなく、主力だったT72は消耗し尽くしてしまったのです。

_20230109_034019

ロイター

ウクライナ戦争の精緻な戦力分析をしている、元陸上自衛隊幹部学校戦略教官室主任教官(1等陸佐)西村金一氏はこのように分析しています。
ロシアの最新兵器はどこへ消えたのか、統計数字の謎を暴く 野ざらしで錆びて使用不能、他国へ横流し、分解され売却・・・(1/8) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

「ロシア軍は、侵攻当初には月に500両を超える戦車の損失を出した。
その後は、再編成後の攻撃、東部南部での一進一退の戦闘、ハルキウ~イジュームでの撤退、へルソンでの撤退の攻防があり、200~400両の損失を出している。
合計2900両の損失だ。
その損耗は、投入数(充足数の90%)約7900両の37%を占めている。
装甲車は、約5800の損失であり、投入数8400両の約70%だ。
ロシア地上軍の戦車の損失は月間約300両、装甲車の損失は月間650両の損失が継続的に出ている」
(西村金一2022年12月14日)

_20230109_033806

JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

また「戦場の女神」とまで言われる、頼みの綱である火砲の損害は以下です。

_20230109_034714

同上

「火砲等の月毎の損失数は、平均250門、9か月後は約2300門である。投入数約4000門の60%を占めている」
(西村前掲)

火砲においても、前掲の両軍の砲撃回数のグラフでわかるように、侵攻当初ウクライナ軍は自前の火砲や対戦車ミサイルなどで反撃していましたが、やがてそれができなくなると、ロシア軍が打ち勝っており、一時的に優勢を確保します。
その後、欧米から供与されたHIMARS(高機動ロケット砲システム)などの長射程砲の射撃成果が現れ、同時に155㎜榴弾砲などの砲弾が供与されると、一気にウクライナ軍が逆転しました。
以後、ウクライナ軍は、HIMARSなどでロシア軍の弾薬庫や兵站拠点を徹底的に叩いており、これがロシアにとってボディブローのように効果を現しています。

5カ月後(2022年7月)からロシア軍の損害が増加し、9カ月後(同11月)には開戦当初以上の損害が出るという傾向は、兵員の損失にも現れています。

_20230109_041446

同上

「ロシア軍兵員の損失は、侵攻当初の1か月間が最も大きかったのだが、5~6か月後から徐々に増加し、9か月後には当初の記録を上回った。 傾向としては、戦車・装甲車、火砲の損失と似ているが、9か月後が特に目立って多い。8か月後から7000人増加して、約2倍に近い数字だ。」
(西村前掲)

おそらくプーチンは、軍部の景気のいい言葉を信用して戦争を始めてしまったのでしょう。
閣下、わが国の戦車数は予備だけで、約1万200~1万7500両、うちT72だけて7000両、装甲歩兵戦闘車など8500両も保管しており、もう佃煮ができるほどでございます。
この数字は、西側のミリタリーバランス2017~2021版にも記載されておりますから、決してふかしではございません。

その口車に乗ったプーチンは戦争を開始したのですが、4日で終わるはずが100日たっても終わらないどころか、去年夏以降は負け戦が立て込んできました。
前述したように、致命的に火砲がない、砲弾がない、ミサイルがない、ドローンがない、戦車がない、それに随伴させねばならない歩兵戦闘車がない、兵員が足りない、しか兵站ラインが寸断されているので送れない。
さっさと前線に戦車を送れ、いえ予備しかありません、そこで
開けてビックリ、見るんじゃなかった。
保管されているはずの戦車は保管庫に入れられていれば万歳、多くは野ざらしのまま放置されているのが実態だったのです。
これが予備か?
戦車って、すぐに錆びるのよね。

515012ca644264b0be738732c54a9266fbb2b

フォーブス

外は錆びていようとまぁ目をつぶるとして、かんじんの砲身内部が塗装されていないので錆びだらけで腐食しており、発射の高圧にたえられません。
無理にやれば砲口内破裂が発生して自爆チュドーンです。
砲塔は回転してナンボですが、回転リングが錆びだらけで動きませんから、こんなもんを予備としてカウントしていたほうが非常識なのです。
どうしてもこの「予備戦車」を使いたいなら、動かして使用したらたちまちジャンベリンの餌食となるので、陣地に埋めてトーチカか対空陣地として使うしかないでしょう。

というわけで、ロシア軍は急速に戦争資源を喪失しつつあります。
しかしだからといって、一気にウクライナが押し返せないのは、同様に砲弾不足と戦車不足に陥っており、西側の支援待ちだからです。
ウクライナ軍の反撃はしばらく砲弾や戦車の備蓄が完了して、この春先からになりそうです。

 

 

Img_790bdccf8dbf4620034ceda1ba1cb16c3503

侵攻から4カ月ウクライナの〝今〟市民生活や士気は? 松田邦紀駐ウクライナ大使に聞く(前編) Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) (ismedia.jp)
ウクライナに平和と独立を

 

2023年1月 9日 (月)

プーチン、クリスマス停戦を言い出す

102_20230108143101

プーチンがクリスマス停戦を言い出しました。
もちろんウソに決まっていますが、言いぐさを聞いてみましょう。
タス通信はこう報じています。

「戦闘地帯の多数の住民が正教会のキリスト教徒であるという事実から進んで、私たちはウクライナ側に、クリスマスイブとクリスマスの日に礼拝に出席できるように停戦を宣言するよう促している、と声明は述べた。
モスクワ、1月5日。/TASS/.ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、1月6日の12:00から1月7日の24:00まで、特別軍事作戦のゾーンでの戦闘関与の全線に沿って停戦を宣言するように指示した、とクレムリンの報道機関は木曜日に報じた。
報道機関が引用した文書によると、「キリル総主教の演説を考慮して、私はロシア連邦国防大臣に、今年の1月6日の12:00から1月7日の24:00まで、ウクライナでの戦闘の全線に沿って停戦を導入するよう指示している」と報道機関が引用した文書によると。
「戦闘地帯の多くの住民が正教会のキリスト教徒であるという事実から進んで、私たちはウクライナ側に停戦を宣言して、クリスマスイブとクリスマスの日に礼拝に出席できるようにするよう促している」と声明は述べた。
木曜日の早い段階で、モスクワと全ロシアのキリル総主教は、ウクライナだけでなく、ドンバスや軍事行動に関与する他のロシアの新しい地域でクリスマス停戦を宣言するよう促す対立する側に演説した」
(タス通信1月6日)
プーチン大統領、正教会のクリスマスに特別作戦区域で停戦宣言を指示 - ロシアの政治と外交 - TASS

もっともロシアは、言っているそばから攻撃をしかけています。

_20230109_030712

実現しなかったクリスマス停戦 ウクライナ・バフムートからBBC報告 - BBCニュース

「ロシアが一方的に設定したウクライナとの「クリスマス停戦」は8日午前0時(日本時間同6時)、36時間の期限を迎えた。ロシアが主張する「停戦」の期間中も各地で砲撃が続き、停戦は実態を伴わなかった。
露国防省は8日、東部ドネツク州クラマトルスクでウクライナ軍の陣地2カ所をミサイル攻撃し、600人以上を殺害したと発表した。
一方、ウクライナ軍参謀本部は同日、東部ドンバス地域(ドネツク、ルガンスク両州)や南部ザポロジエ、ヘルソン両州などで、露軍が過去24時間にミサイル9発を発射したほか、ロケット砲による攻撃を40回、空爆を3回実施したと発表。民間人に死傷者が出たとした。ウクライナ軍も露軍の密集地点20カ所以上に空爆や砲撃を行い、弾薬庫2カ所を攻撃したとしている」
(産経1月8日)
「停戦」実態伴わず終了 露、ミサイル攻撃で「ウクライナ軍600人以上殺害」(産経新聞) - goo ニュース

600人殺したと得意気に発表しながらクリスマス停戦もないもんですが、プーチンは、ねぇウクライナの皆さん、クリマス礼拝に出たいでしょう、共に平和なクリスマス停戦を、と気色の悪い猫なで声をだしていました。
1月になってクリスマスと言っているのは、ロシアでは1月14日が旧正月だからです。
ですからロシアでは年が明けると、新年、クリスマス、旧正月が1週間おきに来るわけで、ロシア兵にとっていっそう厭戦気分がひどくなる時期に当たっています。

それはさておき、「共に正教会のキリスト教徒として祝おうではないか」とプーチンは言っていますが、今のロシア正教会はこんな宗派に変質させられています。

Putin_and_mitropolit_kirill

プーチン大統領の戦争、背後に「ロシア世界」思想 米メディア「ウォールストリート・ジャーナル」が指摘 2022年3月21日 - キリスト新聞社ホームページ (kirishin.com)

「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友であるキリル総主教(75)は、今回の戦争について、同性愛の受容を中心に退廃的であると同師が見なす西側諸国への対抗手段であると考えている。
キリル総主教とプーチン大統領を結びつけるのは、「ルースキー・ミール」(ロシア的世界)というビジョンだ。専門家の説明によれば、「ルースキー・ミール」とは、旧ソ連領の一部だった地域を対象とする領土拡張と精神的な連帯を結びつける構想だという。
プーチン氏にとってはロシアの政治的な復権だが、キリル総主教から見れば、いわば十字軍なのである」
(ロイター2022年3月20日)
焦点:ウクライナ侵攻による正教会の混乱、孤立するロシア総主教 | Reuters

このキリル総主教という人物はとんでもない生臭坊主で、プーチン大統領と癒着した小判鮫のような存在でした。
日本にもお茶の水のニコライ堂などがロシア正教の教会として残っていますが、あれを建てたのは祖国を革命で追われた亡命ロシア人でした。しかしソ連時代に宗教は徹底的に弾圧されて地下に潜り、教会はすべての資産を奪われて事実上消滅していました。
これを再建させたのが、他ならぬプーチンです。

2000年に大統領に就任したプーチンは、共産党の代わりに人の心を掌握する道具建てにロシア正教の復活を考えたのです。
そしてその相手に選んだ のが、キリルでした。
2010年頃には、プーチン政権はソ連が没収していた正教会の資産を教会に返還し、教会はこれで膨大な不動産を所有する大富豪に変身します。
この辺の旧ソ連の遺産を私物化するという構図は、プーチンの取り巻きのオリガルヒ(新興富裕層)と同じです。

この払い下げでもっとも恩恵をこうむったが、その前年に総主教の地位に就いていたキリルでした。
キリルがKGBのエージェントだったという説もありますが、未確認です。しかしそうであっても不思議ではありません。
キリルの腕には、200万円の腕時計が光り、ヨットも所有する生臭坊主ぶりで、しかも宗教に対する不可侵を楯にしているのでどれだけあるのか、計測不能です。

キリルは自分の役割をよく承知しており、プーチンを政治的に支えつづけています。
その象徴がロシア軍主聖堂です。

_20230108_150314

ロシア軍主聖堂が除幕 戦勝75年、祖国防衛たたえ - 産経ニュース (sankei.com)

「(第2次世界大戦の勝利を記念して)2020年にできたロシア軍主聖堂は象徴的だと思う。これはドイツ軍からぶん捕った武器や勲章を溶かして作った鉄骨で建てられている。場所もロシア軍が所有する“愛国者公園”の中に建てた。ここでロシア軍のための祈りをささげる。(中略)
正教会はもともと政治色があったが、それが政治の領域だけでなく軍事や安全保障の領域まで全面的に関与するようになった。つまりこれ以降、教会がプーチン政権の軍事政策のバックアップに回ったといってよい」
(小泉悠TBS2022年4月24日)

このようなロシア正教会は、今回のウクライナ戦争を手放しで礼賛し、プーチンが言えないようなウクライナ人抹殺」くらいは言ってのけるという過激な存在となっています。
プーチンは去年9月30日の4州併合集会演説で、 ウクライナ戦争とは「偉大なロシアを西側に抹殺されないための防衛戦争であって、「ロシアの言語や文化を守る戦い」なのだと位置づけますが、その「ロシア精神」の中心にあるのが、このロシア正教です。
キリル総主教は、プーチンの意のままにウクライナ人を絶滅することを祝福するという宗教者にあるまじき態度を再三示しています。
プーチンが「正教大国ロシアを目指す」と再三主張しているのは、統治理念としてのロシア正教を基盤にしたいためです。

「ロシア正教は、プーチン氏の地政学的野望を支えるイデオロギーの形成に積極的役割を果たしてきた。その世界観は、現在のロシア政府をロシアのキリスト教文明の守護者と見なすものであり、それゆえロシア帝国と旧ソ連の版図にあった国々を支配する試みを正当化する。
この思考はプーチン主義に強い影響を与えている」
(ウォールストリートジャーナル)2022年3月22日)
キリスト新聞社ホームページ (kirishin.com)
参考
ウクライナ侵攻に宗教的動機を与えるキリル総主教(海外通信・バチカン支局)

とまぁ、こういう人物と一緒になって、クリスマス礼拝のために共に同じ正教なのだから停戦しようと言われて、ウクライナがはい、そうですかと言うはずがありません。
そもそもいまやロシア正教会は侵略戦争に加担したために、他のキリスト教諸派からは厳しく批判されています。

「このキリル総主教の言動を、キプロス島の正教会の最高指導者であるクリゾストモス二世大主教は、「ロシア人はまず、十字架を切って、それから殺す」という厳しい表現を使って糾弾した。
エジプトのコプト正教会カイロ中央教区のアンバ・ラファエル主教は、「戦争は、当事者全員の敗北となる。悪魔のみが戦争に満足し、死体の頭の上で喜び踊り、夫を亡くした女性、孤児、嘆き悲しむ母親の苦痛に遊ぶ」と象徴的な表現を使って、ロシア軍のウクライナ侵攻を非難した。(略)
正教会のアレクサンドリア総主教(全アフリカ総主教)セオドロス二世はロシア語を話し、プーチン大統領と個人的な接触を持ち、ウクライナのオデッサで10年間の研究生活を続けたことで知られる。
その総主教が、正教徒であるプーチン大統領に対して、自身を「強権者と信じ、自身の意見を他者に押し付け、現代の皇帝だと思っている」と非難の言葉を発している。「神からの豊かな恵みを受け、自身を超人的と確信し、地上に足を置くことを忘れている」からだ 」

キリル総主教の言動に揺れる世界の正教会 バチカンの平和外交が始動(海外通信・本紙バチカン支局) | 

では、プーチンはほんとうは何をしたいのでしょうか。
たぶんふたつあるでしょう。
ひとつは、ロシアや中国が得意とする情報戦(宣伝戦)です。
われわれロシアは平和を愛するということをアピールし、どうせ拒否してくるに違いないウクライナを見越して、ウクライナは好戦的な姿勢を崩さない、と印象操作をすることです。

1377053

塹壕のロシア兵  タス通信

ISW(米国戦争研究所)はこう述べています。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ロシア軍が正教会のクリスマスのお祝いを遵守して1月6日から1月7日まで36時間の停戦を実施すると発表したことは、ウクライナの評判を傷つけることを目的とした情報操作である可能性があります。プーチン大統領は、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相に、1200年1月6日から2400年1月7日まで「ウクライナの当事者間の連絡線全体」に沿って停戦を開始するよう指示し、ウクライナに停戦を受け入れて「正統派を公言する市民の多数の市民」が正教会のクリスマスの日に礼拝に出席できるようにするよう求めた。
プーチンの発表は、表面上は、モスクワ総主教キリル(クレムリンが支配するロシア正教会の長)による、クリスマスイブとキリストの降誕の日を守るための一時的な停戦の訴えに応えたものでした。
ジョー・バイデン米国大統領を含むウクライナと西側の当局者は、停戦発表の偽善をすぐに強調し、多くの正統派ウクライナ人がクリスマスを祝う12月25日と新年もロシア軍がウクライナの軍と民間のインフラを攻撃し続けたことを強調した」
戦争研究所 (understandingwar.org)
またロシアは前述のように、ロシア正教を基盤としてそれを武器化しています。
たとえば、キエフ-ペルチェスク大修道院での正教会のクリスマス礼拝に出席する制服を着たウクライナ軍人がSNSに公表されると、ウクライナ正教会が軍の力を借りて、ロシア正教会に戦いを挑んでいる、ロシアだけが正教会の唯一の保護者だとプロパガンダをしました。
もちろんそんなことではなく、ウクライナ政府はウクライナ正教会にクリスマス礼拝を公認していますし、そもそもロシアと違って宗教活動に規制をかけてはいないのです。
これはウクライナに限ったことではなく、米軍や英軍などのキリスト教国家の軍隊は基地内に教会があり、いつでも自由に礼拝できますし、日曜日や祝日などには神父や牧師さんによる説教やミサも行われています。
イスラム教国家の軍隊でも同様に、宗教に関わる施設があったり、定時のメッカへの礼拝はむしろ積極的に推奨されています。
むしろ唯一の例外はわが国で、ある幹部自衛官の話によれば、かつて空自の研修で比叡山での座禅がカリキュラムに入っていたところ抗議にあって中止したとのことです。
むしろあまりにも宗教的空白地帯を作ってしまったために、不安を覚えるとのことでした。
そしてもうひとつの理由が、ロシア軍の著しい軍事的衰弱ぶりにあります。
これについては次回に回します。
_20230108_152946
ウクライナに平和と独立を

2023年1月 8日 (日)

日曜写真館 我が生の盛衰流転初詣

S-088

たゞならぬ世に生きるなり初詣 大場白水郎

S-011_20230107171601

初詣空がずんずん進みけり 高澤良一

S-079_20230107170701

戦火なき世のとはにあれ初詣 上田正久日 

107

初詣ことしのひかり射さぬ間を 貞

149_20230107171101

自ら定まる心初詣 高木餅花

S-091

ぬかづきて我も神の子初詣 鈴木花蓑

S-178

初詣みな新しき顔をして 渡辺笑子

122_20230107171901

日の歩み人の歩みや初詣 野見山朱鳥

 

 

2023年1月 7日 (土)

自然界コロナウィルスと新型コロナを繋ぐ機能獲得変異実験

S-052

新型コロナ人工説について、もう少し考えていくことにしましょう。
中国が認めるかどうかなどは二の次です。

国際社会の共通認識として中国を締め上げていくしかないのです。
トランプはそれに熱心でしたが、バイデンはトランプ憎しでその流れを断ち切ってしまいました。

中国は流出疑惑に対して、WHOのトンデモ「現地調査」で終止符が打たれた、これで逃げきったゼと信じていたはずでした。
しかし天網恢恢疎にして漏らさずとはよく言ったもんで、武漢から発生して丸々3年もたった今頃になって大ブーメラン。
しかも世界各国が鎮静化している頃を狙いすましたかのように、ひとり中国一国だけが8億人という巨大パンデミックを引き起こしてしまったのです。悪いことはできませんね。
ですから、今をおいてこの疑惑を解明する時期はないのです。

さて、今回再び中国を襲った新型コロナウィルスは、元来自然界のキクガシラコウモリのRaTG13 に由来しているといわれていました。

(CNN) 中国の研究チームは10日、南西部の雲南省でコウモリから新たなコロナウイルスを複数発見したと明らかにした。この中には、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルス「SARS―CoV―2」に現時点で遺伝的に2番目に近い可能性があるウイルスも含まれる。
発見場所は雲南省内の単一の狭い地域。研究チームによると、今回の結果はコウモリの体内に何種類のコロナウイルスが存在し、何種類が人間に感染する可能性があるのかを示すものだという」
8CNN2021年6月11日)
中国研究チーム、コウモリから新たなコロナウイルスを複数発見 - CNN.co.jp

0001p1_20230107015501
【コロナ 苦闘と共生】コウモリ体内、ウイルス変異 人への感染ルート、謎多く - 産経ニュース (sankei.com)

しかし、自然界のコウモリウィルスが直接に人類に感染することは考えにくいのです。
なぜなら、病原体は基本的には宿主を選んで生存していています。
そして宿主どおしでも、動物は森に住むもの、人は人里に住むものと明確に分かれていました。

ところが乱開発や土地開発によって今までなかった自然界の動物との接触が起きて、新しい病原体を生む原因となってしまいました。
これがエボラウィルスなどのケースです。
このように今までは、なんらかの原因でヒトと濃厚接触して新たなウィルスを生んだとされていました。
ただ、この仮説が成立するには中間宿主の存在が必要です。
いきなりコウモリのコロナウィルスがヒトに侵入するのではなく、なんらかの中間的な哺乳類、たとえば豚などを経由してヒトに感染を拡げる仕組みです。

ところが、この自然界のコロナウィルスと、今回の新型コロナウィルスを結ぶ中間媒介が見つからないのです。
最初に発生源と疑われた武漢海鮮市場ではコウモリは売られていませんでしたし、新型コロナウィルスを持つキクガシラコウモリは武漢から遠く離れた雲南などにしか生息していないのです。
中国当局は、WHO調査団を武漢海鮮市場の冷凍庫に案内し、ここが発生源だと説明しましたが、とんだお笑いです。

すると消去法で、「誰か」がキクガシラコウモリを大量に捕獲して飼育し、「なんらか」の人工的改変を加えてヒトに感染可能な新型ウィルスを作ったとしか考えられなくなります。
これについては「指紋」がベタベタついています。

キクガシコウモリが武漢ウィルスラボで大量に飼育されていたことは映像でも確認されていますし、「誰か」とは武漢ウィルスラボの石正麗であり、「なんらかの」方法とは機能獲得変異実験です。

「ある遺伝子の機能を調べる際にその遺伝子の機能や発現量を増強させることで機能を類推する実験手法を機能獲得実験という」
機能獲得実験 - 脳科学辞典 (neuroinf.jp)

今回疑われているのは表現型実験といって、機能・発現量を増強させる実験で、あえて自然界のウィルスの一部を強力にする実験です。
武漢ウィルスラボは、この機能獲得実験でいっそうヒトに感染しやすく、しかも毒性の高い人工ウィルスを作り出したのです。
この研究は皮肉にも米中の共同作業でした。

米国側からアンソニー・ファウチと中国側からは石正麗という、共に双方の国のウィルス研究のトップクラスの研究者間の秘密の繋がりがあったのです。
ファウチは、ニューヨーク・タイムズ紙によれば「感染症に関する米国の第一人者」です。
国立アレルギー感染症研究所 (NIAID) 所長であり、6代に渡って政権の顧問を努め、今はバイデン政権の主席医療顧問に任命されています。
そしてこの人物と水面下でつながっていたのが、武漢ウイルス研究所の主任研究員である石正麗です。
石は、2017年には「中国のコウモリが運ぶ重要なウイルスに関する研究」論文があり、ウイルスの感染の専門家です。 

O0620037714746646159

武漢ウイルス研究所の主任研究員・石正麗
彼女の専門はSARSとコウモリウィルスの関係についてですが、上の写真は2018年11月14日、上海交通大学において、『コウモリのコロナウイルス(冠状病毒)と異種間感染に関する研究』)と題する基調講演をしたときのもので、コウモリから動物へコロナウイルスが感染することについて講演したといわれています。
新型コロナウィルスは、学術名称としてSARS-CoV-2と呼ばれているように、症状はちがいますが同じコロナウィルス類のSARSの近似種です。
そしてこのSARSととコウモリの関係について研究していた人物がこの石正麗なのです。
ついたあだ名は「バットレディ」(コウモリ女)です。
「SARSに似たウイルスであるSHC014-CoVの病気の可能性を調べます。SHC014-CoVは、中国の馬蹄コウモリの集団で流行しています。逆遺伝学解析システムを使って、マウスに適応したSARSコロナウイルス(SARS-CoV)の基幹に、コウモリのコロナウイルス(SHC014)のスパイクを発現させたキメラウイルスを生成し特徴付けました。その結果は、ヒトの気道細胞で効率的に複製がなされ、伝染病と同等の力を達成できることを示しています」(2015年科学誌ネイチャー掲載の石正麗研究員らの論文
"A SARS-like cluster of circulating bat coronaviruses shows potential for human emergence" (循環コウモリコロナウイルスのSARSのようなクラスターは、人間の出現の可能性を示す」)
  https://www.nature.com/articles/nm.3985
この国際論文で石正麗は、SARSのウィルス類に馬蹄コウモリから採取されたウィルスを加えると、キメラが誕生し、伝染病を引き起こすと堂々と書いています。
したがって私たちからみれば、この馬蹄コウモリがどこで発見され、どこの研究所で飼育され、どうやって機能を強化されたのかを追えばよいことになります。
Ce231bd249bd8b857c536f556ac18c9f_1

まずこの馬蹄コウモリウィルスが初めに発見されたのは、2012年の春、墨江自治県のトングアンの町の近くにある廃銅鉱山でした。
正体不明の肺炎にかかった6人の坑夫が死に、坑道内の馬蹄コウモリの糞を吸い込んだことが原因だとわかりました。
「これらの作業員は年齢が30歳から63歳で、12年4月にこの銅鉱山でコウモリのふんの除去作業を行った。数週間後に、しつこい咳や高熱、頭痛、胸の痛みなどの症状により、雲南省の省都・昆明の病院に入院。最終的に3人が死亡した。(略)
石氏などが20年2月初旬に公表した論文によると、RaTG13が最初に見つかったのは16年で、遺伝子配列が新型コロナウイルスと96.2%共通している。この論文が発表されたのは、武漢で最初に新型コロナウイルス感染症が特定されたわずか数週間後のことだ。

武漢ウイルス研究所の研究者は12年から15年にかけて、この鉱山とその周辺で293種類ものコロナウイルスを発見した。
同研究所は昨年11月、この場所から採取した8種類の「SARS型」コロナウイルスの存在を明らかにした」
(ロイター2021年6月21日)
アングル:中国・雲南省の鉱山、新型コロナ起源探しで注目 | Reuters
これに強い関心をもったのが、武漢ウィルスラボの石正麗らのグループでした。
彼らは、さっそくこの馬蹄コウモリの糞とコウモリを取り寄せ、そこからウイルスを分離しRaTG13と名付けて、飼育していきます。
しかし単独ではこの自然界のコウモリウィルスには、人に感染を拡大するだけの力は持っていません。
「石氏ら研究者は先月の査読前の論文で、この8種類のウイルスの中にRaTG13よりも新型コロナウイルスに近いものはなかったと指摘した。重要なことは、この8種類のウイルスはいずれも、新型コロナウイルスが効率的にヒトへ感染する鍵となる受容体結合ドメイン持っていなかったということだ」
(ロイター前掲)
前述したように、石らは自然界のコウモリウィルスRaTG13を収拾しただけではなく、ヒトへの感染力を強め、致死力を強めていく機能獲得変異実験を施したのです。
石らは多くの馬蹄コウモリを集めて飼育しますが、その場所は、時任兼作 『失踪した中国人研究者の「消されたコロナ論文」衝撃の全訳』によればこのように推測できます。
失踪した中国人研究者の「消されたコロナ論文」衝撃の全訳を公開する(時任 兼作) | 現代ビジネス | 講談社(1/7) (gendai.media)

この新型コロナウィルスの漏洩についての論文を執筆したのは、広東省広州市にある華南理工大学・生物科学与工程学院教授の肖波濤教授らのグループで、2020年2月6日、研究者向けサイト「リサーチゲート」に投稿しました。
ちなみにこの論文は即座に消され、執筆者グループら全員が行方不明となっています。
これは石らの武漢ラボ関係者も同じでことて、彼らは根こそぎ行方不明です。
全体主義国家で、当局の意図に反すると地上から消えてしまうようです。(ブルブル)

ところで肖はこの中で、当時発生源とされた海鮮市場の周辺をスクリーニングした結果、コウモリコロナウイルスの研究を行っている2つの研究所を特定したとして市場から280メートル以内に、武漢疾病管理予防センター(WHCDC)と武漢ウィルスラボ の二つをあげています。
位置関係を見てみましょう。
O1488081514751669248
興味深いのは、海鮮市場が空中写真上端の②、そしてその東側に隣接するのが③湖北省ウイルス病工学技術研究センター(WHCDC 湖北省病毒疾病工程技術研究中心)、そして手前④にあるのがいわゆる武漢ラボです。
まず当初発生源と目されていた海鮮市場ですが、コウモリは売られておらず、食べる習慣もなかったことがわかっていますから、除外してよいでしょう。
肖 はこう書いています。

「WHCDCは研究の目的で所内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの1つは病原体の収集と識別に特化したものであった。ある研究では、湖北省で中型コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、また他の450匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。ある収集の専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。
さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが、2017年と2019年に全国的な新聞やウェブサイトで報じられている。そのなかでこの専門家は、かつてコウモリに襲われ、コウモリの血が皮膚についたと述べていた。
感染の危険性が著しく高いことを知っていた専門家は、自ら14日間の隔離措置を取った。コウモリの尿を被った別の事故の際にも同じように隔離措置を講じたという。ダニが寄生しているコウモリの捕獲で脅威にさらされたことがかつてあった、とも述べていた。
(こうして)捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよびRNAの抽出とシーケンシング(塩基配列の解明)のために採取されたという。組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供給源だった。これらは、海鮮市場からわずか280メートルほどのところに存在したのである」(肖波濤 前掲)

ここで注意願いたいのは、肖が名指しているのは武漢ウィルスラボではなく、もう一つのWHCDC のほうだということてす。
そこで改めて、石正麗の連絡先を確認してみましょう。
Photo_20210531040001
中国科学院武汉病毒研究所HP
肖が漏洩源として指摘しているのがP4施設がある④の武漢ウィルスラボではなく、その本部である湖北省ウイルス病工学技術研究センター(WHCDC )ですが、石のプロフィールの4行目を見ると連絡先としてこちらのほうが記されているのがわかります。
つまり、石正麗はこちらのWHCDCが実際の職場だったとわかります。
O0620034814757390602
湖北省ウイルス病工学技術研究センター
憶測の域を出ませんが、こちらのWHCDC の施設からなんらかの原因で新型コロナウィルスが漏洩した可能性があります。
そう考えるとつじつまが合うのは、環球時報などが妙に自信満々に武漢ウィルスラボからの漏洩はないと言い、証拠を撤去した後だとはいえ武漢ラボのほうは調査団に見せているからです。
あの国の極端な秘密主義を知っているだけに、なにか匂うと思っていましたが、もう一方のWHCDC からの漏洩なら、あちらはP4もなくいっそうありえそうではあります 。
実は、中国はウィルス研究に使った実験動物に逃げられたり(農業大学事件)、不活化が不徹底だったために、2004年にはSARSの終息宣言後であるにかかわらず、北京にある中国疾病予防管理センター(中華疾病预防控制中心)からSARSのウイルスを漏洩させ、9例(内死亡1例)の患者を発生させたりしています。
この武漢ラボの関係者複数名が異常を訴えて入院したのが、2019年11月でした。
おそらく]この初めの患者が出る数カ月前からウィルスが漏洩し始めていたと思われます。
この疑惑に対して国際社会は独立調査委員会を設置して今後も追及を続けるべきでしょう。
うやむやに終わらせてはなりません。

2023年1月 6日 (金)

中国が残した「指紋」

006_20230104023101

正確な衛生当局の発表がないので確実ではありませんが 、北京はピークアウトしたかもしれません。

「中国は3日、仕事始めを迎え、首都北京のオフィス街では通勤者で混雑する光景もみられた。北京は新型コロナウイルスの感染のピークを過ぎたとみられている一方、重症患者の増加による医療体制の逼迫 が一層深刻化している模様だ。中国政府は農村部などへの拡大を強く警戒している。(略)
上海市の病院副院長も、共産党機関紙・人民日報(電子版)が3日伝えたインタビューで、現在救急にかかる人の8割が新型コロナに関連しており、重症者の大部分は、高齢者か基礎疾患があると述べた 」
(読売1月3日)
中国仕事始め、コロナピーク過ぎても重症増加で医療は逼迫…地方では邦人男性死亡 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)  

高齢者と基礎疾患の人に重症化が目立つですか。
日本の感染と重症化傾向と同じですね。
中国の人たちにとって、これは事実上の第1波なのです。
水ワクチンだからいくら打っても効果がなかったので、再び頭をもたげたコロナウィルスは燎原の火の如くです。
mRNAワクチンを接種すれば多くの人々が助かるものを、共産党のメンツが人を殺しています。
愚かさの極みです。

どーでもいいですが、こんな中国をさておいてわれらがWHOが世界最多の感染国が日本だと発表しました。

「世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス感染症の集計で、昨年12月26日から今月1日までの週間感染者数は、日本が94万6130人で世界最多だった。一方、感染拡大が懸念されている中国は韓国、米国に次いで4番目に多い21万人超にとどまっており、WHOは実態を正確に反映していないとみている」
(共同1月5日)週間感染者数「世界最多」は日本 - Yahoo!ニュース 

そもそも世界各国でヘンに生真面目にカウントしているのは、もはや日本だけ。
中国はとうに数えてさえいません。
まぁ8億人もいりゃわけわかんないでしょうし、感染による死者はたった648人だそうです(爆笑)。
だからどうしたって日本だけが世界トップの感染国になっちゃうわけで、ああ、ばかばかしい。
報道する価値もないのに、日本のメディアときたら。

さてそれはさておき、
新型コロナは、2019年末に武漢で発生していました。
これがコロナの世界的パンデミックの始まりですが、この新型コロナと遺伝子情報が96%以上も合致するRaTG13ウィルスを作っていたのが、発生現場のすぐそばにある武漢ウィルスラボ(WHCDC)でした。

武漢ウィルスラボでは、自然界にいるコウモリの糞から採集されたウィルスを持ち帰って培養し、「手なずけ」(機能獲得実験)してRaTG13ウィルスを作っていました。
このチームリーダーが、武漢ウィルスラボの石正麗主任研究員です。

S1kj971_virusl_or_20210521155628

武漢ウィルスラボ WSJ

いまでこそ、米国メディアはコロナウイルスの起源が、かぎりなく武漢ウィルスラボだということを報じていますが、この説が登場した当時、それを公表したのがトランプ政権だったことから、トランプ憎しに燃える米国リベラルメディアは陰謀論として葬ってしまいました。
本来は科学的知見で判断すべきことが、政治的ポリコレと化していたわけで、反知性主義は一体どっちなんだい、と言いたくもなります。
当時の雰囲気は、武漢ラボ説を唱えただけで、極右陰謀論者とレッテルを張られるような空気が充満していました。

ところが、トランプがいなくなってタブーの重しがなくなると、新型コロナウイルスが武漢市街でコウモリから人に感染したという従来の動物原性感染説の科学的論拠がないことがわかりました。
いくら探しても、武漢の市街地でコウモリからヒトへ感染が移った証拠がまったく出てこないのですから仕方がありません。
今や米国大手メディアのほぼすべてが何らかの形でこの起源説に同意しており、あいもかわらず「報道しない自由」のぬるま湯で昼寝しているのは、わが国のメディアくらいなものです。

そこで中国が苦し紛れに言い出したのが、コロナウィルス米軍持ち込み説です。
この新型ウィルスがそろそろ武漢でうごめきだす、2019年10月18日にあった第7回軍人オリンピックがあった、オレたちは米軍のウィルス攻撃にさらされた被害者なんだぁ、ということのようです。図々しいにもほどがあります。

「中国外務省の趙立堅報道官は12日夜、ツイッターで感染が拡大している新型コロナウイルスについて「アメリカで初めての感染はいつ発生し、何人が感染したのだろうか?この感染症は、アメリカ軍が武漢に持ち込んだものかもしれない。アメリカは透明性をもって、データを公開しなければならない。説明が不足している」などと書き込みました」
(NHK2020年3月13日)

「感染症は米軍が武漢に持ち込んだかも」中国報道官が投稿 | NHKニュース

中国側がいかにも因果関係があるかのように言っている、軍人オリンピックも、そこで9000回ものドーピング検査がされたといいながら、ここでもサンプルひとつ残っていません。
つまり自分らが発生源だという軍人オリンピックにも、なにひとつ証拠がないということになります。

仮に軍人オリンピックが関係しているとしても、それは米国からコロナウィルスを「持ち込まれた」のではなく、米国などに「持ち込んだ」原因となったことによります。
つまり「入った」のではなく、「出た」のでしょう。

Rts2rst0

米軍ウイルス持ち込み」の根拠は?新型コロナウイルス感染源めぐる米中

実際にこの大会参加者の中には、かなりの数のインフルエンザのような症状の患者が発生しています。
参加したカナダの選手は「街はロックダウン状態だった。私は到着後、12日間、熱と悪寒、吐き気、不眠に襲われ、帰国する機内では、60人のカナダ選手が機内後方に隔離された。私たちは咳や下痢などの症状が出ていた」とカナダ紙に証言しています。
マッコーネル報告書は、この軍人オリンピック大会の競技会場も、6つの病院も、さらには大会参加後に体調不良を訴えた選手がいた場所も、すべて武漢ラボの周辺に位置していたことを指摘しています。

地図で確認してみます。

Cb47170b

上図で赤点が武漢ウィルスラボ、黒点が軍人オリンピック会場、青点が軍人から出た患者が収容された病院、緑点が選手のホテルです。
この2019年9月の軍人オリンピックにより、新型ウィルスは世界的に拡散し、パンデミックを引き起こしたとマコーネルは報告書で結論づけています。
たしかに米国はCDCの指揮で、真っ先に武漢から米国人を専用機で引き上げさせていますから、あるいはそれ以前の軍人オリンピックで持ち込まれたのかもしれません。

次に、新型ウィルスが流出した可能性としては3ツ上げられます。
①実験動物の流出、②実験動物に噛まれたヒトから③生物兵器説などです。
華南理工大学・生物科学与工程学院教授・肖波濤教授 は②の実験動物に噛まれたという説を唱えています。

「WHCDCは研究の目的で所内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの1つは病原体の収集と識別に特化したものであった。ある研究では、湖北省で中型コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、また他の450匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。ある収集の専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。
さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが、2017年と2019年に全国的な新聞やウェブサイトで報じられている。そのなかでこの専門家は、かつてコウモリに襲われ、コウモリの血が皮膚についたと述べていた。感染の危険性が著しく高いことを知っていた専門家は、自ら14日間の隔離措置を取った。コウモリの尿を被った別の事故の際にも同じように隔離措置を講じたという。ダニが寄生しているコウモリの捕獲で脅威にさらされたことがかつてあった、とも述べていた。
(こうして)捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよびRNAの抽出とシーケンシング(塩基配列の解明)のために採取されたという。組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供給源だった。これらは、海鮮市場からわずか280メートルほどのところに存在したのである」
(華南理工大学・生物科学与工程学院教授・肖波濤教授 2020年2月6日、研究者向けサイト「リサーチゲート」 )

武漢ラボはフランスが作った最新のP4施設ですが、大きな落とし穴がありました。
いかにも中国らしいのですが、施設はピカピカでも、実験動物の管理や実験後の汚物処理が前近代的なまま温存されていたのです。
管理は下請けの労働者に任され、杜撰で不潔でした。
農業大学では、実験動物を逃したことが明るみになっています。

武漢ラボでも多数の実験用コウモリが、ケージの外に逃げ出して、ヒトを噛んでいる映像すら残っています。

Webw210616_wuhanlabthumb720xauto256596

https://www.youtube.com/watch?v=ANRs4DojOek&feature=emb_imp_woyt

この動画には、武漢研究所内でケージに入った大量のコウモリが映っており、素手でコウモリに餌をやるシーンや、防護服グループがコウモリを追いかけたり、見学者たちの帽子に止まったり、時には噛みつく様子まで撮影されています。
また別の実験用コウモリを素手で扱い、噛まれて手が腫れ上がる映像も出ています。
「米紙ニューヨーク・ポストは28日(現地時間)、WIVの研究者が手袋やマスクなどの保護具を着用せずにコウモリとその排せつ物を扱う様子が映る中国中央テレビの映像を公開した。
2017年12月29日に中国で放映されたこの映像で、半袖・半ズボン姿の研究者たちは、手袋以外は保護具を着用しないまま、感染性が高いコウモリの排せつ物を採取した。

同研究室で一部の研究者は手袋を着用しないままコウモリの研究サンプルを受け渡しした。研究室の中で一般的な衣類を着て、頭に保護具をつけていない姿も映像にある。
この映像で、ある科学者は「コウモリが手袋をかみ切って私をかんだ」「針でジャブ(jab)をもらった気分だ」と言っている。この映像にはコウモリにかまれた部分がひどく腫れている写真も登場する。
映像で、研究者たちが素手でコウモリを扱う姿が出ると、番組司会者は「負傷の危険性は依然として存在している」「研究者たちは現場調査前、狂犬病の予防注射を受けた」と説明した」
(ニューズウィーク2021年6月16日)

そして武漢ラボ研究関係者から、2019年に既にCOVID-19の患者が2名出て、受診していることがわかっています。
原因はわかりませんが、考えられるのは実験動物との不用意な接触です。

20210205oyt1i50077t

武漢研究所からのウイルス流出疑惑、中国紙「WHOの調査メンバーは

③の生物兵器説については決定的なことはいえません。
現時点では、その可能性も捨てきらないという段階です。
ただし、中国軍は超限戦(ハイブリッド戦争)という戦略思想を持っている国で、あらゆるものを兵器化することで知られています。

「言うまでもなく、人為的に作った地震、津波、災害をもたらす気候、あるいは亜音波、新生物・化学兵器などは新概念の兵器で、通常言うところの兵器と大きな違いがある。しかし、これらの兵器もやはり軍事、軍人、武器商人とかかわる、直接的な殺傷を目的とする兵器だ。こうした意味から言うと、これらの兵器は、兵器のメカニズムを変え、殺傷力や破壊力を何倍にも拡大した、非伝統的な兵器にすぎない」
(喬良人民解放軍国防大学教授・空軍少将『超限戦』)

ここで書かれた「新生物」というのが、新たに人工的に作り出されたウィルスのことなのはいうまでもありません。
現実に、中国国防大学は、人民解放軍が発行している「軍事戦略の科学」2017年版の中で、「特定の遺伝子を使用した攻撃」という新たな種類の生物戦争に言及しています。

「国際評価戦略センター(バージニア州)のリチャード・フィッシャーは本誌に対して、「未来の戦争においては、中国が(標的を絞って手を加えた)コロナウイルスやその他の病原体を使って、特定の民族グループ、年齢グループや国を攻撃することも予想される」と述べた。
フィッシャーは、2020年に世界の多くの地域がパンデミックで大きな打撃を受けたことは、生物兵器が効果的な兵器だという考え方を裏づけていると指摘する。「超限戦(際限なき戦争)」を信条に掲げる中国軍は、国家を、さらには文明さえをも殺しかねない生物兵器を使用することに、良心の呵責を覚えることはないだろう。次のパンデミックが起きた時、生き残るのは中国だけかもしれない」
(2021年6月1日 ニューズウィーク )

このような生物兵器すら使用する、しかも平時においても解禁するという発想は、全体主義国家でなければ到底不可能なことです。
民主主義国家において、そのよう条約やぶりは必ず発覚しますし、議会やメディアの攻撃に曝され、政権が吹き飛びます。
情報が極限まで国家によって統制可能な全体主義国家でなければ、できないことなのです。

英紙デイリー・メールは9日、「米国務省が対外秘としている報告書のなかには「武漢ウイルス研究所の研究員を含む中国の科学者は、2015年からコロナウイルスの軍事的可能性に関する研究を開始した」と記載されている」と報じました。
Sスパイクを操作し、人間のACE2受容体と結合できるようにして実験した事は既に2015年に『Naturre』誌で大論争になっていたのです。

新型コロナのパンデミックが始まって、まっさきに武漢にきたのが人民解放軍の生物戦担当官の陳薇少将でした。
陳少将が生物兵器であるとまで考えているのかどうかはわかりません。
陳は生物兵器をブロックする側であって、製造する側ではないからです。
しかし間違いなく、この武漢パンデミンクが自然発生したものではなく、人為的拡散されたと考えたことでしょう。
なぜなら、このような低毒性でありながら感染力が強い新しいタイプの生物兵器こそ、他ならぬ武漢ラボで研究していた超限戦用生物兵器だからです。

「たとえば同研究所は、1500株以上のコロナウイルスを保管しており、危険な機能獲得実験(特定の病原体の致死性もしくは感染力を高める実験)を行っていた。安全対策には不備があったし、新型コロナの最初の感染例が報告された場所のすぐ近くにある。ちなみに最初の感染例は、武漢の生鮮市場とは何のつながりもない。同感染症の「動物由来説」を信じる人々が、生鮮市場が感染源だと指摘しがちなだけだ」
(NW前掲)

 この武漢ラボも人民解放軍の指揮下にあり、意図的に使用したか否かは別にして、COVID-19が生物兵器、ないしはそれに対抗するウィルス防御ために作られたことまではかなり確かであろうと言えます。
このように整理できるでしょう。

①中国は自ら「第1次世界大戦は化学戦争、第2次世界大戦は核戦争なら、第3次世界大戦は明らかにバイオ戦争となる」(『超限戦』)という戦争観と戦略思想を持っていた。
②「超限戦」という戦略下で、生物兵器を作る計画がを持ち、武漢ラボでコウモリウィルスから新型ウィルスを作出する機能性獲得実験を着々と積み上げていた。
③その結果、COVID-19に遺伝子配列が酷似したウィルスが出来上がったが、何らかの理由でそれが流出した。
④武漢でのパンデミックに恐怖した国家機関は、この証拠の隠蔽を命じた。

果たしてこれが偶然でしょうか?
つまり実際に「やった」という「自白」だけが欠落しているにすぎません。
ウィルスが漏洩したり、意図的に生物兵器として使用した証拠は見つかっていません。
仮にそれが見つかれば、中国は世界に対して天文学的賠償を支払わねばならず、国際的地位は地に落ちることでしょう。

ただし仮に生物兵器として作っていても、それを意図的に使用したかまでは今の時点ではなんともいえません。
米国やロシアにおいても化学兵器やウィルス兵器は研究されていますが、それは攻撃を仕掛けられた場合の防御のためだとされています。

中国が意図的に新型コロナウィルスを作った科学的証拠は9割9分積み上がっており、後は石正麗などの実際に武漢ラボでこのコロナウィルス実験に関わった科学者の証言と、パンデミックの後にそれの隠蔽を命じた国家機関の証言だけが揃わないだけです。

最後に、中国政府ご推奨の発生源がこれです。
中国は軍人オリンピックだと初めに言っていましたが、かんじんな血液サンプルが消失して証拠なし。
次に海鮮市場発生説にすがりましたが、WHOの調査団からも否定されてしまい、ヤケのヤンパチ最後に言い出したのが外国からの冷凍海産物が原因だったという爆笑ものの説でした。

あの中国にベタ甘だったWHO調査団は、冷凍倉庫まで視察させられ、報告書にその説も記載していますが、本気にはしてないと思いますよ。

「北京 11日 ロイター] - 中国山東省の煙台市当局によると、遼寧省大連市の大連港に荷揚げされた輸入の冷凍魚介類から新型コロナウイルスが検出された。冷凍魚介類は煙台市にある3社の事業者が海外から輸入したもので、ウイルスは包装の外側に付着していた。
どこから輸入されたものかは明らかにしていない」
(2020年8月11日)

中国で輸入冷凍食品から新型コロナウイルス、一部が輸出用に加工 | Reuters

どこから輸入したかわからないですってさ。それがハッキリすれば、発生国は決まりじゃん。
これはあまりにくだらないので、詳述はやめておきましょう。

とまれ中国はこれだけ大規模な「超限戦」に手を染めてしまったために、うかつにも「指紋」をそこら中に着けまくってしまいました。
やがて「指紋」が特定され、新型コロナが生物兵器であったという結論がでても、なんの驚きもありません。
中国がいつまでも逃げきれると思ったら大間違いです。

 

2023年1月 5日 (木)

ワクチン効果が切れた頃に変異株が入ってくるかもしれない

S2-051

もうひとつ見逃せないのが、中国は第1波からドーンと飛んで、今頃になって第2波ですから、以後の株の変異が読めません。
いったいこの「チャイナX」って、いったいなんなんでしょうか。
あ、もちろんこのネーミングは私が勝手につけたものですので、悪しからず。

それはさておき、「チャイナX」がわが国の第7波のようなオミクロンの変異タイプならば、さほど恐れる必要はありません。
さっさと5類扱いにして、季節性インフルと同等にしてほしいものです。
2類扱いだと結核と同等ですから、常に隔離病棟をキープしておかねばならず、それが利権の温床化しているという指摘もあります。

去年からの、日本でのウィルス株の変遷は以下です。

・2021年7月から12月まで・・・デルタ株
・2022年1月から6月まで・・・オミクロンBA1・2
・2022年7月以降          ・・・オミクロンBA5

今流行しているオミクロンについて、あらためて確認しておきましょう。
コロナは、変異すればするほど毒性は低くなる代わりに、感染力はより強力になっていきます。
入院率は各年代ともデルタ株流行期よりも、オミクロン株流行期の方が大きく低下しています。

 

Hospitalization_rate

『データで見る新型コロナウイルスの特性の変化』神奈川県

 致死率についても、デルタ株流行期よりもオミクロン株流行期の方が大きく低下しており、特に90歳以上の患者でも、オミクロン株では5%未満の致死率となっています。

Death_rate

同上

その毒性を見るために、季節性インフルと比較してみましょう。

000964409

同上

60歳未満の重症化率はオミクロンと季節性インフルは同等、65歳以上となるとオミクロンのほうが4倍、致死率は60歳未満では同等、60歳以上ではオミクロンが4倍ていどです。
これをどう評価するかですが、専門家ではないのでなんとも言えませんが、今のような隔離病棟を作って対応するような時期は終わったような気がいたします。
ただ、中国の「チャイナX」の侵入を考慮すると、一定数残して置かねばならないかもしれません。

一方米国では、すでに新たなオミクロンの派生型が発生しています。
この派生型は、米国で感染しているXBB1.5を凌ぐ免疫回避力を持つのではないか、と見られています。

Xbb15uscovid4484376

Covid:米国の症例が1週間で倍増するため、免疫系を回避する新しい亜種に対する警告|サイエンス|ニュース|Express.co.uk

「30日 ロイター - 米疾病対策センター(CDC)が30日に公表したデータによると、直近の週の国内の新型コロナウイルス新規感染者のうち、オミクロン株派生型「XBB.1.5」による感染が40.5%を占めたと推計されることが分かった。前の週からほぼ2倍となった。
XBBによる感染と合わせると44.1%。24日までの週ではXBB.1.5による感染が21.7%、XBBによる感染が4.2%だった。専門家によると、米国で感染者数や入院者数が増加している10州のうち7州が北東部にあり、同州でXBBによる感染が増加しているという」
(ロイター12月31日)
オミクロン派生「XBB.1.5」、米新規感染の40%に=CDC | Reuters

このXBB.1.5株が恐ろしいのはその毒性よりも、ワクチンをすり抜けてしまうことです。
また折りあしく、欧米各国でのワクチン接種の効果が消えつつある今の時期に当たってしまっています。
上海のパンデミックは、このXBB.1.5だという情報もあるようです。
感染拡大の原因がこれだとすると、すさまじい感染拡大が爆発したはずです。

「リーズ大学の准教授であるスティーブン・グリフィン博士は以前、Express.co.uk に、新たな亜変異株は英国にとっても懸念の原因となる可能性があると語った。
「新しいオミクロン亜変異体はますます優勢になり、BA.4/5でさえ夏の間よりも抗体反応を回避する能力がさらに高まっています。私たちの多くはしばらくの間ワクチンを接種していないため、これは重要です, 血中の抗体レベルが自然に低下したことを意味します」
(エクスプレス2023年1月2日).

通常、ワクチンの持続期間はこのように言われています。

Antibody_img_03

新型コロナウイルス中和抗体検査とは?-免疫がついているか知りたい方におすすめ- | 医療法人社団進興会 | 健康診断・人間ドック年間46万人の実績 (shinkokai.jp)

「効果の持続期間については、臨床試験後の追跡調査によると、ファイザー社の従来ワクチンでは2回目接種後2か月から4か月時点での発症予防効果は90.1%であったところ、4か月から6か月時点での発症予防効果は83.7%との報告があり、モデルナ社の従来ワクチンでは、2回目接種後2か月から4か月時点での発症予防効果は94.0%であったところ、4か月から6か月時点での発症予防効果は92.4%との報告があります」
日本で接種が進められている新型コロナワクチンにはどのような効果(発症予防、持続期間等)がありますか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

つまり4カ月から6カ月といったところです。
この私を例にとれば最後の5回目が11月5日でしたから、とりあえず3月ていどまではワクチン効果を期待できますが、まだ接種されていない場合がら空き状態で正体不明の「チャイナX」を迎え入れることになります。

とまれ、肝心の中国がなにひとつ情報を出さないという異常事態であるので、よもやオリジナルの武漢株ではないとは思いますが、変異しているのかどうかさえわからない状態です。
この状況に対して、多くの国は警戒のハードルを上げて、検疫を強化しています。
これに対しての中国当局の言いぐさが、なかなか笑わせてくれます。

「中国は同国からの渡航者に一部の国が新型コロナウイルス関連の制限を課したのは「政治目的」だと主張し、報復する意向を打ち出した。中国政府は感染拡大を容認しているとはいえ、新型コロナが依然として当局にとって政治的に敏感な問題であることが示唆される。
中国外務省の毛寧報道官は3日の定例記者会見で、「一部の国が中国だけを対象に入国規制を導入したのは科学的根拠に欠けると考える。一部の過剰な措置は受け入れられない」と述べた」
(ブルームバーク2023年1月3日)
中国、渡航規制課した国への報復主張-コロナ対策を「政治目的」に操作 - Bloomberg

中国に対する検疫強化は、「政治的」で「非科学的」だそうです(爆笑)。
あんたにたけは言われたかぁないね。マンマその言葉、そっくりをお返しします。

Fllcaqmaeae81tc

ブルームバーク

各国の対応は以下です。

W_20230104110101

中国人旅行者への対応、各国で分かれる 旧正月控え: 日本経済新聞 (nikkei.com)

EUの危機感のなさが目立ちますが、追々イヤでも追随することになるはずです。
ただし、このような水際対策が有効かといえば、怪しいものです。
強いて評すれば時間稼ぎとしてやらないよりましていどのことで、この3年間でわかったことは、中国からの渡航者がドバイや韓国を経由して入ってこられればお手上げだということです。
つまり、中国がいったん渡航を開放してしまえば、防ぐ手だてはないに等しいのです。
だから、いまの感染の原因である「チャイナX」の正体が明らかにならないうちは、中国に対して渡航禁止を要求すべきなのです。

このようにあくまでも中国は戦狼外交のコロナ版をしたいようですが、あいにく国際社会が激変してしまいました。
世界各国は3年前の悲劇を忘れておらず、コロナの感染が中国の情報隠蔽と春節で世界中へ拡散させたことを忘れてはいません。
この3年前の行いによって、中国が自分の利害しか考えない途方もないミーイスト国家であることを理解してしまったのです。

コロナ前と後では、世界の中国に対する眼が大きく変わったのです。
たとえば、EUはいままでの親中的外交を転換し、中国をロシアに並ぶ脅威として考えるようになってきました。
また、一帯一路が出耒た当座は、我を争って加盟に駆け込んだ各国も、実はこれに「債務の罠」が仕込まれており、世界各国をデフォルトに導こうとしていることをわかり始めました。
中国は一帯一路で甘い言葉で巨額融資を持ちかけ、賄賂や利権を駆使して新興国の中枢部を取り込んで来ました。
しかしこれがいまや、スリランカのように新興国のクーデターの火種に転化し始めています。

このような中で、3年前と同じことを平然と繰り返せる習近平の心臓の強さと鉄面皮ぶりにひたすら驚嘆します。
習近平は、なぜコロナの規制解除を白紙運動が求めたのか、まったくわかっていないのです。
彼らが求めているのは情報の隠蔽を止めろということ、つまりグラスノスチ(情報公開)です。
パンデミックがなぜか武漢のウィルス研究所の近辺で発生したのか、そのバンデミックの実像はどうだったのか、2020年3月の制圧宣言はほんとうだったのか、チャイナワクチンは効くのか、PCRだけがどうして重視されたのか、都市封鎖は果たして必要だったのか、彼らが知りたかったのはそういうことだったのです。

 

2023年1月 4日 (水)

基礎再生産数が6だとすると、すでに8億が感染か

S-047_20230104003601

改めまして、明けましておめでとうございます。
昨年中はごあいさつを多数頂戴し、心に染みました。
私が70になったとカミングアウトしたので、驚かれたかたも多かったようですが、いえなに中身はあいかわらずの好奇心の多いガキです。
同年代では、1カ月年上の中島みゆきさん、さだまさし、1歳年下の長谷川幸洋さんなどがおられます。
一緒にしてほしくない同い年としては、小池百合子さんとウラジミール・プーチンが同い年、習近平は1歳年下です。(ヤダなー)。

さて、今年も始まりました。
去年積み残したテーマも、少しずつ片づけていきたいと思います。

まずは中国のコロナの感染爆発のその後ですが、当然ボンボンに燃え盛っています。
成田空港での感染者92名中、90名が中国への渡航歴がある人でした。(全員じゃん)

「厚生労働省は31日、国内の空港検疫で、新型コロナウイルス感染者が92人確認されたと発表した。30日の4人から大幅に増えた。中国での感染拡大を受け、成田空港などで30日から中国本土からの入国者を対象としたウイルス検査が始まったためで、うち90人が中国に滞在歴のある人だった」
(読売12月31日)
空港検疫で92人コロナ陽性、うち90人が中国に滞在歴…国内の新規感染10万6412人 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

Https3a2f2fimgixproxyn8sjp2fdsxzqo278912

日経

「中国で新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、感染症対策を担う専門家は、日本人が多く暮らす上海や日系企業が進出している湖北省などで、感染がピークを迎えていると明らかにしました。
中国では、政府が12月7日に新型コロナウイルスの感染対策を緩和したあと、各地で感染が急拡大しています。
国の感染症対策を担う中国疾病予防センターの専門家は29日、日本人が最も多く暮らす上海や、日系企業が進出している湖北省や重慶などで、感染がピークを迎えていると明らかにしました」
(NHK2022年12月30日)
中国 新型コロナ 上海などで感染拡大ピーク 専門家が明らかに | NHK | 新型コロナウイルス

K10013938191_2212300723_1230072425_01_04

NHK

そりゃー、いきなり一気に規制解除すりゃドカンといくがな。
うちの国の首相は慎重すぎるくらいに慎重居士でイライラしましたが、白紙運動に驚いた習近平のツルの一声で規制がゼロになっただけで驚きなのに、同時に感染者数も公表しないというのですから、異次元緩和もいいところです。
たとえば、そうとうに治まった今でも、日本は自主的に軽めの規制をかけています。
多人数では集まらない、公衆の場ではマスクはかける、大声を出さない、家に帰ったら手洗い励行などは、もはや日本人の第2の国民的習慣にまでなってしまいました。なんせ3年間もやってるからね。

「「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は、会合のあと報道陣の取材に応じ、政府の方針を了承したと述べました。
そのうえで、尾身会長は「今までやってきた対策を踏襲するのではなく、オミクロン株の特徴にあったメリハリのついた効果的な対策が重要だ。これまでの『人流抑制』ではなく『人数制限』というのがキーワードになると考えている。オミクロン株の感染経路の調査で分かってきたのは、多くの人が集まって、飲食して、大声を出し、換気が悪い環境で多くの感染が起きているということだ。感染リスクの高い状況に集中して対策を行うことが重要だ」と述べました」
(NHK2022年1月19日 9分科会 尾身会長 “人流抑制でなく人数制限がキーワード” | 新型コロナウイルス | NHKニュース

我が国は第7波に際して重症化率と志望者数が急減しても、これだけのことはした上で、経済を開けていったのです。
それを段階を踏まず、一気に経済を開けたらどうなるのか、ちょっと考えればわかりそうなはずです。
今まで常時戒厳令を敷いていて、いきなりなんの準備もなく開ければ、有り余っているのはPCRだけなのですから、感染は無人の野を行くが如くなるのはあたりまえです。

本来なら、チャイナワクチンが水なのは知れたことなので、米国に頭を下げてファイザーなりモデルナといったmRNAワクチンと重症化を防ぐ治療薬を大量に緊急輸入するしかなかったのです。
日本はすでにシオノギのゾコーバを100万人分確保していますが、火元の中国ではシオノギの現地子会社がやっと輸入を始めた段階にすぎません。

とまれ中国共産党のエライさんたちは、一昨年、チャイナワクチンを海外にまで上目線で配り歩いたために引っ込みがつかない、彼らの発表では死者は数人だそうなので治療薬なんぞいらんというわけで、独裁者のメンツのほうが国民の生命より優位なようです。
また本来は、発生から3年もたっているのですから、弱い医療インフラを補強すべきでした。
中国は医者の頭数こそ基準に達していますが、看護士やICUが致命的に不足していますから、コロナのような無症状や軽症が大量に発生し、その重症化を防がねばならないような感染症には非力です。

ここにも習の経済オンチぶりが逆説的に現れてしまっています。
経済を開けるなら、それ相応の対策をたて切ってから開放すべきなのです。
それを怠って経済を開くとこうなるという見本です。

かてて加えて、感染が再爆発しても感染者数は公表しない、ゲノム解析は禁止(!)という情報統制国家では、いったい何億人が感染したのか、なんの変異株なのか当の共産党自身ですらわかっていないようですから困ったものです。
3年前に、さすがチャイナ様、自由主義国家よりコロナ制圧がお早いと、ゴマを擦りまくっていた人、黙っていないでなんとか言いなさい。

漏れ伝わる情報では、こんな様子です。

「四川省では感染率が6割を超えたと伝えられている。省の党機関紙・四川日報は28日、衛生当局が約16万人を対象に行ったアンケート調査で、「PCR検査か抗原検査で感染が確認された」との回答が63・52%だったと報じた。19日の段階の調査では46・93%だった。
 同省の高い感染率が全国共通かどうかは不明ながら、中国の全人口14億人にこの感染率を当てはめ「8億人超が感染したと推計される」(香港紙・星島日報)との指摘もある。一方、中国疾病予防コントロールセンターが公表した28日の新規感染者は全国で5102人、新規の死者は1人だった」
(読売2022年12月30日)
中国のコロナ感染爆発、想定以上か…四川省では「6割感染」報道 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

8億かぁ、軽々に信用できない数字ですが、しかしそのていど出て少しももおかしくはないでしょう。
いつも貴重な医学所見を頂いているプー氏は、去年の12月28日にこのようにコメントされています。

「数理モデルとしてはシンプルに解析できます。2020年3月2日のSEIRモデルを再び操作していますが、中国人口14億人で12月20日までに2.5億人も感染したというのは、ゼロコロナ解除後の実効再生産数をオミクロン株の基本再生産数に近い6程度とすると、ゼロコロナ解除の12月13日時点で感染者数は1000万人はいたことになり、そこから爆発的に拡大していると思います。
今後の予測としては、年末年始の1週間にかけて1日1億人前後の新規感染者を出して春節までには殆どの人が既感染となります」

基礎再生産数がぬあんと6!
なお「基礎再生産数」とは、ある感染症にかかった人が、免疫をまったく持たない集団に入ったときに平均で何人に直接感染させるかを表す数値のことで、私たちがよく聞く「実効再生産数」は、手洗いや接触機会の削減といった対策が取られたうえで、1人の感染者が平均で何人に直接感染させるかを表す数値のことをです。
前者が今の中国、後者が日本だと思えばよいでしょう。

ちなみに、2020年の武漢株第1波時の実効再生産数の推移はこのようなものです。

Img_f51a8bde486fb2bbb29908777ed211e38407

政府発表・実効再生産数グラフ

この実効再生産数が上昇するのとパラレルで重症者が急増します。

20201126_n01_01

コロナ重症者数が過去最多を更新し、医療現場がひっ迫 専門家組織「命助けられなくなる」と強い危機感 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 (jst.go.jp)

000281308_1920

ゼロコロナ緩和で市民も当局も混乱 これ程の状況で“死者無し”って… (tv-asahi.co.jp)

中国で感染拡大が止まらない大きな理由は、医療インフラが欠落してしまっていることです。
なにせ病院は一杯、集中治療室は圧倒的にたりないから重症になれば死ぬしかない、では売薬を買いに薬局に走っても解熱薬ひとつ手に入らない、これでは感染が急増して当然です。

「中国で解熱剤など薬の不足が止まらない。新型コロナウイルスの感染急拡大で多くの人が競って薬を買い求めたからだ。一部の薬は通常の18倍まで高騰し、影響は日本など海外にも及んだ。製薬各社は急ピッチで増産に乗り出したが、感染はこれからピークを迎える。薬不足の解消には時間がかかる恐れがある。
中国南部の広東省珠海市。製薬会社の天大薬業が運営する大型診療所では先週末から連日、解熱剤を求める市民の長蛇の列ができている」
(日経12月21日)
中国、止まらぬ薬不足 コロナ需要急増で価格18倍も: 日本経済新聞 (nikkei.com)

このような状況で規制を完全解除すれば、一気に全国化し、全国民皆感染となってもおかしくはありません。
ゼロコロナと称して国民を牢屋に閉じ込めていたのを、一気にゼロ規制にしたことは正気の沙汰ではなかったのです。

 

2023年1月 1日 (日)

明けましておめでとうございます

S12-035

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
皆様方のご健康とご多幸を祈念いたします。

                                             ブログ主

 

※新年の更新は4日からになります。

 

« 2022年12月 | トップページ | 2023年2月 »