岸田氏、キーウに行きたいのはいいのだが
あいかわらず、ウチの国の首相はピントがボケています。
日程を明らかにして、キーウに行くと言い出しました。なにを考えているのやら。
日刊ゲンダイさんの記事です。
「「議長国なのに、G7首脳の中で自分だけウクライナを訪れていないことを岸田総理はとても気にしている。昨年から模索していたものの、安全確保や秘密保護の観点から難しいと断念したのですが、20日にバイデン米大統領がウクライナを電撃訪問したことで、『やはり何としても行く』と言い出した。すぐさま事務方を呼んで『広島サミットまでに訪ウできるよう調整しろ』と指示しています」(官邸関係者)」
(日刊ゲンダイ2月26日)
岸田首相「何としても行く」3月中のウクライナ訪問は日程公開の“逆張り”か|ニフティニュース (nifty.com)
首相動静を当たってみると、なるほど2月21日にはズラっとNSC、防衛・外交関係者と面談しています。
2月21日午前11時2分から同22分までの首相動静
秋葉剛男国家安全保障局長、滝沢裕昭内閣情報官、市川恵一外務省総合外交政策局長、防衛省の増田和夫防衛政策局長、山崎幸二統合幕僚長。同24分から同58分まで、秋葉国家安全保障局長、外務省の森健良事務次官、小野啓一外務審議官。
首相動静(2月21日):時事ドットコム (jiji.com)
バイデンは、キーウ訪問に数カ月かけて準備したといわれています。
ホワイトハウスがバイデンのポーランド訪問を発表したのは2月10日、ポーランド訪問はとうぜんキーウ訪問の足掛かりだと世界は考えました。
それから10日後の2月20日に実際にキーウの地を踏んでいます。
電撃訪問の計画は数カ月前から極秘で計画の策定が始まり、19日午前4時15分に、ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地を出発しました。
読売
「ホワイトハウスの事前公表日程では終日、ワシントンにとどまることになっていた。
同行者はサリバン氏ら側近とカメラマン、医師、警護官らごく少数に絞られた。2人の同行記者団とは訪問終了まで報道禁止とする協定を結び、出発以降は携帯電話を預かった。出発に関する情報を2人に伝えた電子メールでは、情報漏出を警戒して「ゴルフ大会の案内」と偽の表題を付けた。
バイデン氏を乗せた輸送機は、現地時間19日夕にドイツのラムシュタイン米空軍基地で給油した後、ポーランドのジェシュフの空港に同午後8時頃に到着した。
高速道路を約1時間走り、ウクライナ国境に近いポーランド南部プシェミシル駅に移動した後、厳重な警備態勢が敷かれる中、8両編成の寝台列車に乗車した。同9時37分に出発後、国境を越え約10時間後にキーウに到着した」
(読売2月21日)
バイデン大統領キーウ訪問の舞台裏…記者にゴルフ装うメール : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
ご丁寧にも、バイデンは通常の外遊には必ず米国の威信の象徴であるエアフォースワンを使うのですが、一発でバレるので、わざわざC32という「輸送機」を使用するという芸の細かさを見せています。
輸送機といっても「要人輸送機」ですが、大統領はいつもはこの機体を使用することはありません。
コールサインも大統領の搭乗を意味する「エアフォースワン」の代わりに「SAM060」(スペシャルエアミッション)を使っています。
大西洋上からポーランドまでは空軍の護衛がついたでしょうし、現地ではシークレットサービスが武器を携行してガッチリ警護に当たったはずです。
ちなみに他のG7首脳の訪問時もまったく同じで、十重二十重に防護を固めて訪問しています。
共産党あたり「海外派兵だ」なんて言いそうですが、大統領ないしは首相が戦闘が終了していない外国の地を訪れる際には、自国の軍隊を護衛につけるのはあたりまえの国際慣習なのです。
伊メローニ首相がキーウを訪問、ウクライナ支援を表明 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
「最大のハードルは、激しい戦闘が続く現地での首相の安全確保だ。他のG7首脳の訪問時は、軍隊や特殊機関が安全確保のため情報収集や警護にあたったとされる。だが、日本では自衛隊を現地に派遣し、首相を警護させる法的根拠がないという。日本は北大西洋条約機構(NATO)加盟国ではなく、情報収集でも劣る。外務省幹部は「米国は能力が違う」と認める」
(産経2月21日)
ウクライナ未訪問のG7首脳は岸田首相一人に - 産経ニュース (sankei.com)
ところがいやはや、G7の国すべてが情報機関に事前情報を集めさせ、軍に身辺警護させているのに、わが国ときたら「自衛隊を現地に派遣し、首相を警護させる法的根拠がない」からダメだそうです。
もちろん政府専用機の自衛隊機の護衛など望むべくもないでしょうから、もう笑うしかありません。
首相は改憲に前向きなようですから、自衛隊が憲法に位置づけられていないとは、こういうことなのだとお分かりになったでしょうか。
また外務省は、日本はNATO加盟国ではないから現地での情報収集力がないなどと行っていますが、違うでしょう。
そもそも、わが国には対外情報機関という国家に必須の機関が存在しないのですから、「NATO地域では」も何もあったものではありません。
国際情報は、いくつかの機関がバラバラに収集しているだけにすぎません。
こんな国は世界でもわが国だけではないでしょうか。
「公安調査庁は国内の治安維持のために国内外の情報収集を行っており、本年2月には経済安全保障チームを創設し、幅広い調査を行っている。外務省は、国際情報統括官組織を中心に外国の情報を集めているが、情報活動に特化してはいない。
防衛省は、通信傍受やレーダー情報など技術的・軍事的な情報収集が中心だ。海上保安庁は、警備救難部が情報収集を行っているが、情報収集の専門組織ではない。こうして見ると日本において、本格的な対外情報機関や防諜機関と呼べるような専門的な組織はないことが分かる」
(元公安調査庁金沢事務所長 藤谷昌敏)
日本戦略研究フォーラム(JFSS)
首相の身辺警護で同行するのは、おそらく奈良で安部氏を目前で暗殺されてしまうという歴史的汚点を残したSPだけです。
では、外国で要人警護官が拳銃を所持できるでしょうか。
日本がその気になれば可能です。
ウクライナではVIP待遇でしょうから、首相の警護担当者やその荷物については、入国の際、フリーパスです。
受け入れ国は側は、あえて検査をしないというのが外交慣例です。
米国大統領のシークレットサービスは武器を携行してあたりまえですが、知らないふりをするのが外交儀礼です。
ほんとうに発砲してしまった場合、受け入れ国としては一応抗議しますが、それだけです。
それはさておき、官邸の情報管理体制が悲惨なレベルなことは、つとに知られたことです。
例のボンクラ息子の首相補佐官の口が軽いのは知れ渡っており、彼の親父がいちいち政策を内閣外の人に聞くものだから、そこからもだだ漏れの始末です。
おまけに、ロシアから内閣官房がサイバー攻撃を仕掛けられる始末です。
「松野博一官房長官は7日の記者会見で、政府が運営する行政情報のポータルサイト「e―Gov(イーガブ)」がサイバー攻撃を受けたことをめぐり、計4省庁23サイトなどが6日夕に一時閲覧できなくなったものの、同日中に復旧したと明らかにした。その上で「これらのシステムから情報の漏洩(ろうえい)は現時点で確認されていない」と語った。
親ロシア派のハッカー集団「キルネット」が交流サイト(SNS)に犯行声明とみられる書き込みをしたことに関しては「犯行をほのめかしていることは承知しているが、関連性も含めて障害の原因は確認中だ」と説明した」
(産経2022年9月20日)
サイバー攻撃、4省庁23サイトに 松野官房長官「情報漏洩なし」 - 産経ニュース (sankei.com) 8。
たぶん、首相がキーウに行く予定を立てた瞬間、ロシアはそれを知っていることでしょう。
岸田さん、いいでしょうか、バイデンとあなたでは重さがまるで違いますが、バイデンは「戦地を首脳が訪問する」ということの重さを百も承知で、ここまで徹底した情報統制と欺瞞工作をしているのです。
「キーウに行く」というのは、厳重な軍と情報機関、身辺護衛をつけ、日程を欺瞞し、ほとんど数人しか知らないで秘密裏に行くということなのです。
その能力が欠落している上に、どこの世界に、下のようなことをペラペラとイエローペーパーに漏らすバカが政府中枢にいるのでしょうか。
「「どうせなら、統一地方選の前に行って支持率アップにつなげたいという思いもある。国会審議への影響を少なくするため、3月の週末や、18日からの飛び石連休を利用することになりそうです。それでゼレンスキー大統領を広島サミットに招待できれば、大手を振って凱旋できる。総理の頭の中には、電撃訪朝からの帰国を喝采で迎えられた小泉元首相のイメージがあるようです」(前出の官邸関係者)」
(日刊ゲンダイ前掲)
これではその能力も意志もない、と言われてもいたしたかありませんね。
そのうえに首相外遊は国会に届け出しろと、立憲共産党が言っています。今さら怒るきにもなれません。
「立憲民主党の泉健太代表は25日、岸田文雄首相が模索するウクライナの首都キーウ(キエフ)訪問に関し、国会の事前承認が必要との認識を示した。甲府市で記者団に「秘匿して行く必要があるのか。国会の了承を得て堂々と行くのも一つの姿だ」と述べた」(産経2月25日)首相キーウ訪問「国会の事前承認を」 立民・泉氏 - 産経ニュース (sankei.com)
もう彼らを論評するのもイヤです。
こういうふうに見てくると、「キーウ訪問」というのはまるで「9条国家」の縮小版のようなものです。
いざという時に使えないように縛られている自衛隊、「戦地キーウ」までのルートの情報集めもできない情報機関の不在、要人暗殺も阻止できない警護官、ザルのように情報が漏れまくる官邸、いっそ訪問日を明らかにしてしまえという首相、訪問日程を国会に教えてから行けという野党・・・。嗚呼、つくづく平時の国です。
日本がここまで国としてやってこれたことのほうが、私には奇跡のような気さえします。
ウクライナに平和と独立を
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