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2023年2月

2023年2月28日 (火)

岸田氏、キーウに行きたいのはいいのだが

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あいかわらず、ウチの国の首相はピントがボケています。
日程を明らかにして、キーウに行くと言い出しました。なにを考えているのやら。

日刊ゲンダイさんの記事です。

「「議長国なのに、G7首脳の中で自分だけウクライナを訪れていないことを岸田総理はとても気にしている。昨年から模索していたものの、安全確保や秘密保護の観点から難しいと断念したのですが、20日にバイデン米大統領がウクライナを電撃訪問したことで、『やはり何としても行く』と言い出した。すぐさま事務方を呼んで『広島サミットまでに訪ウできるよう調整しろ』と指示しています」(官邸関係者)」
(日刊ゲンダイ2月26日)
岸田首相「何としても行く」3月中のウクライナ訪問は日程公開の“逆張り”か|ニフティニュース (nifty.com)

首相動静を当たってみると、なるほど2月21日にはズラっとNSC、防衛・外交関係者と面談しています。

2月21日午前11時2分から同22分までの首相動静
秋葉剛男国家安全保障局長、滝沢裕昭内閣情報官、市川恵一外務省総合外交政策局長、防衛省の増田和夫防衛政策局長、山崎幸二統合幕僚長。同24分から同58分まで、秋葉国家安全保障局長、外務省の森健良事務次官、小野啓一外務審議官。
首相動静(2月21日):時事ドットコム (jiji.com)

バイデンは、キーウ訪問に数カ月かけて準備したといわれています。
ホワイトハウスがバイデンのポーランド訪問を発表したのは2月10日、ポーランド訪問はとうぜんキーウ訪問の足掛かりだと世界は考えました。
それから10日後の2月20日に実際にキーウの地を踏んでいます。
電撃訪問の計画は数カ月前から極秘で計画の策定が始まり、19日午前4時15分に、ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地を出発しました。

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読売

「ホワイトハウスの事前公表日程では終日、ワシントンにとどまることになっていた。
 同行者はサリバン氏ら側近とカメラマン、医師、警護官らごく少数に絞られた。2人の同行記者団とは訪問終了まで報道禁止とする協定を結び、出発以降は携帯電話を預かった。出発に関する情報を2人に伝えた電子メールでは、情報漏出を警戒して「ゴルフ大会の案内」と偽の表題を付けた。
バイデン氏を乗せた輸送機は、現地時間19日夕にドイツのラムシュタイン米空軍基地で給油した後、ポーランドのジェシュフの空港に同午後8時頃に到着した。
高速道路を約1時間走り、ウクライナ国境に近いポーランド南部プシェミシル駅に移動した後、厳重な警備態勢が敷かれる中、8両編成の寝台列車に乗車した。同9時37分に出発後、国境を越え約10時間後にキーウに到着した」
(読売2月21日)
バイデン大統領キーウ訪問の舞台裏…記者にゴルフ装うメール : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

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C-32 (航空機) - Wikipedia

ご丁寧にも、バイデンは通常の外遊には必ず米国の威信の象徴であるエアフォースワンを使うのですが、一発でバレるので、わざわざC32という「輸送機」を使用するという芸の細かさを見せています。
輸送機といっても「要人輸送機」ですが、大統領はいつもはこの機体を使用することはありません。
コールサインも大統領の搭乗を意味する「エアフォースワン」の代わりに「SAM060」(スペシャルエアミッション)を使っています。
大西洋上からポーランドまでは空軍の護衛がついたでしょうし、現地ではシークレットサービスが武器を携行してガッチリ警護に当たったはずです。

ちなみに他のG7首脳の訪問時もまったく同じで、十重二十重に防護を固めて訪問しています。
共産党あたり「海外派兵だ」なんて言いそうですが、大統領ないしは首相が戦闘が終了していない外国の地を訪れる際には、自国の軍隊を護衛につけるのはあたりまえの国際慣習なのです。

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伊メローニ首相がキーウを訪問、ウクライナ支援を表明 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

「最大のハードルは、激しい戦闘が続く現地での首相の安全確保だ。他のG7首脳の訪問時は、軍隊や特殊機関が安全確保のため情報収集や警護にあたったとされる。だが、日本では自衛隊を現地に派遣し、首相を警護させる法的根拠がないという。日本は北大西洋条約機構(NATO)加盟国ではなく、情報収集でも劣る。外務省幹部は「米国は能力が違う」と認める」
(産経2月21日)
ウクライナ未訪問のG7首脳は岸田首相一人に - 産経ニュース (sankei.com)

ところがいやはや、G7の国すべてが情報機関に事前情報を集めさせ、軍に身辺警護させているのに、わが国ときたら「自衛隊を現地に派遣し、首相を警護させる法的根拠がない」からダメだそうです。
もちろん政府専用機の自衛隊機の護衛など望むべくもないでしょうから、もう笑うしかありません。
首相は改憲に前向きなようですから、自衛隊が憲法に位置づけられていないとは、こういうことなのだとお分かりになったでしょうか。

また外務省は、日本はNATO加盟国ではないから現地での情報収集力がないなどと行っていますが、違うでしょう。
そもそも、わが国には対外情報機関という国家に必須の機関が存在しないのですから、「NATO地域では」も何もあったものではありません。
国際情報は、いくつかの機関がバラバラに収集しているだけにすぎません。
こんな国は世界でもわが国だけではないでしょうか。

「公安調査庁は国内の治安維持のために国内外の情報収集を行っており、本年2月には経済安全保障チームを創設し、幅広い調査を行っている。外務省は、国際情報統括官組織を中心に外国の情報を集めているが、情報活動に特化してはいない。
防衛省は、通信傍受やレーダー情報など技術的・軍事的な情報収集が中心だ。海上保安庁は、警備救難部が情報収集を行っているが、情報収集の専門組織ではない。こうして見ると日本において、本格的な対外情報機関や防諜機関と呼べるような専門的な組織はないことが分かる」
(元公安調査庁金沢事務所長 藤谷昌敏)

日本戦略研究フォーラム(JFSS)

首相の身辺警護で同行するのは、おそらく奈良で安部氏を目前で暗殺されてしまうという歴史的汚点を残したSPだけです。
では、外国で要人警護官が拳銃を所持できるでしょうか。

日本がその気になれば可能です。
ウクライナではVIP待遇でしょうから、首相の警護担当者やその荷物については、入国の際、フリーパスです。
受け入れ国は側は、あえて検査をしないというのが外交慣例です。

米国大統領のシークレットサービスは武器を携行してあたりまえですが、知らないふりをするのが外交儀礼です。
ほんとうに発砲してしまった場合、受け入れ国としては一応抗議しますが、それだけです。

それはさておき、官邸の情報管理体制が悲惨なレベルなことは、つとに知られたことです。
例のボンクラ息子の首相補佐官の口が軽いのは知れ渡っており、彼の親父がいちいち政策を内閣外の人に聞くものだから、そこからもだだ漏れの始末です。

おまけに、ロシアから内閣官房がサイバー攻撃を仕掛けられる始末です。

「松野博一官房長官は7日の記者会見で、政府が運営する行政情報のポータルサイト「e―Gov(イーガブ)」がサイバー攻撃を受けたことをめぐり、計4省庁23サイトなどが6日夕に一時閲覧できなくなったものの、同日中に復旧したと明らかにした。その上で「これらのシステムから情報の漏洩(ろうえい)は現時点で確認されていない」と語った。
親ロシア派のハッカー集団「キルネット」が交流サイト(SNS)に犯行声明とみられる書き込みをしたことに関しては「犯行をほのめかしていることは承知しているが、関連性も含めて障害の原因は確認中だ」と説明した」
(産経2022年9月20日)
サイバー攻撃、4省庁23サイトに 松野官房長官「情報漏洩なし」 - 産経ニュース (sankei.com) 8。

たぶん、首相がキーウに行く予定を立てた瞬間、ロシアはそれを知っていることでしょう。

岸田さん、いいでしょうか、バイデンとあなたでは重さがまるで違いますが、バイデンは「戦地を首脳が訪問する」ということの重さを百も承知で、ここまで徹底した情報統制と欺瞞工作をしているのです。
「キーウに行く」というのは、厳重な軍と情報機関、身辺護衛をつけ、日程を欺瞞し、ほとんど数人しか知らないで秘密裏に行くということなのです。
その能力が欠落している上に、どこの世界に、下のようなことをペラペラとイエローペーパーに漏らすバカが政府中枢にいるのでしょうか。

「「どうせなら、統一地方選の前に行って支持率アップにつなげたいという思いもある。国会審議への影響を少なくするため、3月の週末や、18日からの飛び石連休を利用することになりそうです。それでゼレンスキー大統領を広島サミットに招待できれば、大手を振って凱旋できる。総理の頭の中には、電撃訪朝からの帰国を喝采で迎えられた小泉元首相のイメージがあるようです」(前出の官邸関係者)」
(日刊ゲンダイ前掲)

これではその能力も意志もない、と言われてもいたしたかありませんね。

そのうえに首相外遊は国会に届け出しろと、立憲共産党が言っています。今さら怒るきにもなれません。

「立憲民主党の泉健太代表は25日、岸田文雄首相が模索するウクライナの首都キーウ(キエフ)訪問に関し、国会の事前承認が必要との認識を示した。甲府市で記者団に「秘匿して行く必要があるのか。国会の了承を得て堂々と行くのも一つの姿だ」と述べた」(産経2月25日)首相キーウ訪問「国会の事前承認を」 立民・泉氏 - 産経ニュース (sankei.com)

もう彼らを論評するのもイヤです。

こういうふうに見てくると、「キーウ訪問」というのはまるで「9条国家」の縮小版のようなものです。
いざという時に使えないように縛られている自衛隊、「戦地キーウ」までのルートの情報集めもできない情報機関の不在、要人暗殺も阻止できない警護官、ザルのように情報が漏れまくる官邸、いっそ訪問日を明らかにしてしまえという首相、訪問日程を国会に教えてから行けという野党・・・。嗚呼、つくづく平時の国です。

日本がここまで国としてやってこれたことのほうが、私には奇跡のような気さえします。

 

 

 

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アムネスティ日本 AMNESTY

ウクライナに平和と独立を

 

2023年2月27日 (月)

中国の「和平提案」、ドローン供与で御破算に

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中国はロシアに自爆ドローンを供与する予定だったことが判明しました。
これはいままで行っていた偵察衛星情報を渡していた以上の、本格的武器供与に当たります。
中国の「和平提案」なるものは、習近平が訪露する前に終了の鐘が鳴ってしまったようです。

やや長文ですが、スクープ源のシュピーゲルの原文を引用します。

「DER SPIEGELが入手した情報は、北京とモスクワの間の計画された協力が、ブリンケンが明らかにしているよりもさらに進んでいることを示している。
その情報によると、ロシア軍は、ロシア向けの自爆ドローンの大量生産について、中国のドローンメーカーである西安ビンゴ・インテリジェント・アビエーションテクノロジー(西安冰果智能航空科技)と交渉を行っている。この暴露は、ロシアに対する中国の軍事支援の可能性をめぐる議論に新たな緊急性を生み出した。

伝えられるところによると、ビンゴ社は、ロシア国防省に納入する前に、ZT-180プロトタイプドローンを製造およびテストすることに同意した。軍事専門家は、ZT-35が50キログラムの弾頭を搭載できると信じている。
情報筋は、無人航空機の設計はイランのシャヒード136自爆ドローンの設計に似ている可能性があると思われる。ロシア軍はウクライナへの攻撃に数百人を配備し、イランのドローンを使用して住宅、発電所、地域暖房施設を標的にし、しばしば民間人の死傷者を出した。
さらなるステップとして、ビンゴはロシアに予備交換部品とノウハウを提供し、ロシアが月に約100機のドローンを自力で生産できるようにすることを計画していると伝えられている。
中国は明らかに昨年、ロシア軍にこれまで知られていたよりもはるかに実質的な支援を提供する計画をすでに持っていた。DER SPIEGELが入手した情報によると、中国人民解放軍の管理下にある企業は、ロシアのSU-27戦闘機やその他のモデルの交換部品を納入することを計画していた。

DER SPIEGELは、軍用機の部品を民間航空の交換部品であるように見せるために、出荷書類を改ざんする計画がすでに行われていることを報告で知った」
(シュピーゲル2月23日)
ウクライナでの戦争:伝えられるところによると、中国は神風特攻隊のドローンを供給するためにロシアと交渉している-DER SPIEGEL 

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ロシアに100機のドローンを納入する交渉中の中国企業:デアシュピーゲル|スタンダード (thestandard.com.hk)

またドローンだけではなく、月に100機ほど生産可能な生産設備も込みだそうで、この4月に100機を先行供与にする予定だったそうです。
また、スホーイ27の交換部品も供与する計画もあったそうです。
そして狡猾にも、出荷書類までも偽造していたようです。

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ZT─180あるいはイラン製シャヘド136。 35キロから50キロの爆弾を搭載する。

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【ウクライナ侵攻】首都キーウで“ロシア軍の自爆型ドローン攻撃” 1人の死亡確認と報道 - YouTube

ロシアが使用しているドローンは、軍事目睫ではなくもっぱら民間人殺害に使用されています。
ロシアは執拗な民間インフラを狙ったミサイル攻撃でミサイルを撃ち尽くしてしまい、今はイラン製自爆ドローン「シャヘド136」を使用しているようです。
シャヘド136は1機あたりの価格が2万ドル(約260万円)で、1発の発射に数十万ドルから数百万ドルかかる弾道ミサイルよりはるかに安価で済みます。
そもそも軍事目標の精密爆撃に使用すべきイスカンダルなどを民間インフラ破壊に使ったツケが回って、今になってイランや中国に頭を下げているのですからアホです。
プーチンさん、この後この両国に高いツケを払うことになりますよ。まぁどうでもいいが。
飛行可能距離も2000キロとチープな巡航ミサイルの代替品として使え、戦線の後方から発射することが可能です。
ロシアは、ジャンジャン使っているようですが、蠅のように毎日ウクライナに落とされています。

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ウクライナでロシア軍による使用が確認されたイラン製自爆ドローン「シャヘド136」の兄弟機(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

イランは知らぬ存ぜぬと言い張っていますが、残骸からも明らかです。
下図は、ウクライナが発表したドローンの撃墜数です。
シャヘド136のような大型攻撃用から歩兵部隊が使う偵察用ドローンまで含んでいると思われます。

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ウクライナ軍が破壊したロシア軍のドローン、2022年2月の侵攻直後から11か月で1900機突破(佐藤仁) - 個人 - Yahoo!ニュース

シャヘド136は形状が中国のドローンと酷似しており、得意のコピーではないかと思われます。

ところで、中国はウクライナ「和平案」なるものを出しています。今回王毅がモスクワに行ったのはこの説明をプーチンにするためでした。

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王毅氏、プーチン大統領と会談…独自のウクライナ「和平案」説明か(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

「中国外交トップの王毅(ワンイー)共産党政治局員は22日、訪問先のモスクワでプーチン露大統領と会談した。王氏は、中国がウクライナ側にも示している独自の「和平案」について説明した可能性がある」
(読売2月23日)

この「和平案」なるものは、中国外交部のサイトから読むことができます。
なにを言いたいのかわからない文書なので、主要な部分のみを抜粋しておきましょう。
重要だと思われる1、2、3、4、10,11についてだけは、全文引用しました。

全体に無用に抽象的で、外交的美辞麗句に覆われています。
米留組の外交官僚が書いたのかも知れませんが、中国に「バランスのとれた、効果的かつ持続可能な欧州の安全保障アーキテクチャの構築を支援するべき」といわれてもなんのことやらわかりません。
「アーキテクチャ」のような西側の外交用語を使うからこうなります。
いつもの調子で「平和を愛するロシア人民をNATOと米帝国は追い詰め、プーチン同志は祖国防衛の戦いに踏み切らざるを得なかった」みたいに書けばよいものを。
ま、だれも読まないけどさ。

しかし一方で明瞭なのは、ロシアの侵略に対してはひどく寛容で、撤退しろとも言わず、西側の経済制裁だけを止めろとしていることです。
ただし、このような外交文書には付属文書がついているので、あんがいそこにはもっと具体的な和平案が書いてあるのかもしれませんが、ないでしょうな。

●ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場
2023-02-24
1すべての国の主権を尊重する。
国連憲章の目的と原則を含む普遍的に認められた国際法は厳格に遵守されなければなりません。すべての国の主権、独立及び領土保全は効果的に支持されなければならない。大小を問わず、強国も弱国も、富裕国も貧乏国も、すべての国は国際社会の平等な一員です。すべての当事者は、国際関係を支配する基本的な規範を共同で支持し、国際的な公正と正義を擁護する必要があります。国際法の平等で統一された適用が促進されるべきであるが、二重基準は拒否されなければならない。

2.冷戦の考え方を放棄する。国の安全は、他国を犠牲にして追求されるべきではありません。地域の安全は、軍事ブロックを強化または拡大することによって達成されるべきではありません。すべての国の正当な安全保障上の利益と懸念は真剣に受け止められ、適切に対処されなければなりません。複雑な問題に対する簡単な解決策はありません。すべての当事者は、共通、包括的、協力的かつ持続可能な安全保障のビジョンに従い、世界の長期的な平和と安定を念頭に置き、バランスのとれた、効果的かつ持続可能な欧州の安全保障アーキテクチャの構築を支援するべきである。すべての当事者は、他国の安全を犠牲にして自国の安全を追求することに反対し、ブロックの対立を防ぎ、ユーラシア大陸の平和と安定のために協力する必要があります。

3.敵対行為をやめる。紛争と戦争は誰にも利益をもたらしません。すべての当事者は、理性を保ち、自制し、炎を煽り、緊張を悪化させないようにし、危機がさらに悪化したり、制御不能になったりするのを防ぐ必要があります。すべての当事者は、ロシアとウクライナが同じ方向に働き、直接対話をできるだけ早く再開して、状況を徐々にエスカレートさせ、最終的に包括的な停戦に到達することを支援する必要があります。

4.和平交渉の再開。対話と交渉は、ウクライナ危機に対する唯一の実行可能な解決策です。危機の平和的解決に資するすべての努力は、奨励され、支持されなければならない。国際社会は、平和のための交渉を促進する正しいアプローチに引き続きコミットし、紛争当事者ができるだけ早く政治的解決への扉を開くのを助け、交渉再開のための条件とプラットフォームを作成する必要があります。中国はこの点で引き続き建設的な役割を果たす。

5.人道危機の解決(略)
6.民間人と捕虜(POW)の保護(略)
7.原子力発電所の安全を守る(略)
8核戦争は戦われてはならない(略)

9.穀物輸出の促進(略)

10.一方的な制裁の停止。一方的な制裁と最大限の圧力では問題を解決できません。彼らは新しい問題を生み出すだけです。中国は、国連安全保障理事会によって許可されていない一方的な制裁に反対している。関係国は、ウクライナ危機のエスカレートを緩和し、発展途上国が経済を成長させ、国民の生活を改善するための条件を作り出すために、他国に対する一方的な制裁と「ロングアーム管轄権」の乱用をやめるべきです。

11.産業チェーンとサプライチェーンを安定させます。すべての当事者は、既存の世界経済システムを真剣に維持し、世界経済を政治的目的の道具または武器として使用することに反対する必要があります。危機の波及効果を緩和し、エネルギー、金融、食料貿易、輸送における国際協力を混乱させ、世界経済の回復を損なうことを防ぐために、共同の努力が必要である。
12.紛争後の復興を促進する(略)

ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場 (fmprc.gov.cn)

これについてのウクライナの反応です。

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BBC

「ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は24日、ロシアの侵攻開始から1年を迎えたのに合わせて首都キーウで記者会見を開いた。ゼレンスキー氏は、同国での戦争終結に関する中国政府の提案について協議するため、習近平国家主席との会談を計画していると述べた。
中国は、和平交渉や国家主権の尊重などを提案している。
内外の記者を大勢招き、その質問に2時間以上にわたり原稿なしで次々と答え続けたゼレンスキー氏は、中国の和平案について質問され、平和実現の方法探しに中国がかかわっていることの表れだろうと述べた。
その上で、「中国がロシアに兵器を提供したりしないと、本当に信じたい」とした」
(BBC3月25日)
ゼレンスキー氏、「習主席との会談を予定」 中国の和平案提案を受け - BBCニュース

思いの外「まとも」で、ゼレンスキーも頭から否定はしていません。
しかし、この中国和平提案には地雷がいくつも仕掛けあります。
これだけ冗長な長文にもかかわらず、ロシアがウクライナから自軍を撤退させなければならないとは一言一句書かれていません。
まるでこの戦争が、ロシアの一方的な力による現状変更によって起きたのではないようです。
これではプーチンが賛成するはずです。

ですから、ロシアに対する国際社会の共同の制裁を「一方的な制裁」として非難しています。
これはウクライナに協力する西側諸国を真正面から非難しているのは同じです。
いくら中国が「全ての当事者は、ウクライナの状況が徐々に和らぎ、最終的に包括的な停戦に至ることを目指し、ロシアとウクライナが同じ方向で取り組み、可能な限り速やかに直接対話を再開するよう支援すべきだ」と言ったとしても、この和平提案が経済制裁をやめさせることでロシアを救済し、中国に有利な国際状況にもちこもうとしていることは明白です。

そして冒頭にも述べたように、ドローンの供与予定までがバレてしまっては「和平提案」もなにもあったものではありません。
習近平がこのような和平案を作ってプーチンにもちかけているのは、自分が「国際的スタープレーヤー」になりたいからです。
それをドローン供与が4月から始まることをシュピーゲルにリークする奴が現れて御破算にしてしまうのですから、気球事件でも感じましたが、習近平の支配はまだグラグラのようです。

 

 

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ウクライナに平和と独立を

2023年2月26日 (日)

日曜写真館 まれまれに怒り給いき汝白梅

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光る結飯(むすび) 白梅はもとよりのこと 伊丹三樹彦

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微熱あるかに白梅の花いきれ 上田五千石

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日輪に入り白梅の燃え上り 上野泰

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日おもての花のまぶしさ白梅は 日野草城

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白梅が眼に棲みいのち濃くならじ 斎藤玄

 

 

2023年2月25日 (土)

国連臨時会合、1周年にロシア非難決議を圧倒的多数で可決

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国連総会において、緊急特別会合が開かれ、ロシアのウクライナ侵略を非難する決議案が圧倒的多数で可決しました。
ロシアが併合を宣言した4州についても、無効と認められました。
これで仮にロシアが勝利したとしても、4州のロシア領土化は国際社会では認められません。

「決議は、露軍の即時撤退のほか、電力施設などの重要インフラや民間人への意図的な攻撃の即時停止や、ロシアへ強制移送された子供ら抑留者の帰還などを求めた。また、ウクライナで起きた国際法上の重大犯罪を調査・訴追する必要性を強調した」
(産経2月24日)
国連総会決議、「永続和平」へ露軍撤退求める 賛成141カ国 - 産経ニュース (sankei.com)

このように決議は、和平を双方に促すといった無意味なものではなく、ロシアが行っている重要インフラへの攻撃による生活の困窮や、多くのロシア領に拉致されて洗脳教育をされていると見られる子供たちにまで目配りしています。

【ニューヨーク=平田雄介】国連総会(加盟193カ国)は23日、ロシアのウクライナ侵略を巡る緊急特別会合で、領土保全や主権の尊重など国連憲章の原則に基づく永続的な和平を目指し、露軍の即時撤退などを求める決議案を141カ国の賛成で採択した。反対はロシアや北朝鮮など7カ国。中国とイラン、インドなど32カ国が棄権した。
賛成国の数は、国連総会が昨年採択したウクライナ侵略を巡る決議5本の最多143カ国に迫り、24日で侵略開始から1年となったウクライナへの国際社会の連帯の強さを示した」
(産経前掲)

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世界の勢力図として決議案についての投票動向をみてみます。
反対国は、ロシアとその属国の皆さんです、と言ってあげたいのですが、いまや死なばもろともで、出撃拠点を提供したベラルーシ。
そしてロシアに頼んで自国民を爆撃してもらっているシリア・アサド政権、そして影で弾薬を提供しているとみられる北朝鮮、そして中米のサヨク独裁国家のニカラグアです。

中米ニカラグアは、2021年11月に反米左派オルテガが独裁者となって以降、ロシア軍の兵士や航空機、艦艇の駐留を要請するという決定をしている国です。
かつての同盟国キューバは棄権に回りました。

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国連総会の緊急特別会合、露のウクライナ4州併合は「無効」…圧倒的賛成多数で採択 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

ロシアが同志と頼んだはずのユーラシア共同体の中央アジア勢(カザフスタン、タジキスタン、キルギス)の3カ国は、ベラルーシを除いてみごとにソッポを向きました。
負け戦はしたくないものです。

いわゆるグローバルサウス(南の発展途上国)の動向はこうです。
グローバルサウスとは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

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産経

ザ・クアッドの一角を成すはずのインドは、ことロシアに関してはコウモリで、一貫して棄権の立場を貫いています。
またインドは、中国と並ぶ制裁破り国で、かえって制裁前より輸入を増やしています。

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JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト

このようなことがわかるにつれてクアッドで自由主義陣営に与したかに見えて高まったインドの国際的評価が、また微妙になりつつあります。
ウクライナはこの決議の成立に心から安堵しているようです。

「ウクライナのクレバ外相は「投票結果はグローバルサウスがわが国を支持していないとの言説に逆らうものだ」と指摘し、「ウクライナの領土と支援の輪を損ねようとするロシアの試みは失敗する」と強調した。
ロシアのネベンジャ国連大使は22日の会合で「反露的な考えが続いている」と決議案への反対を呼びかけたが、同調したのはシリアやニカラグア、マリ、エリトリアなどに止まった。同盟国ベラルーシの侵略行為を否定する修正提案は2本とも否決された」
(産経前掲)

戦場での決着はついていませんが、国際舞台ではロシアの完敗です。
覚悟しておくべきは、好むとこのまざると、この国連決議の賛成-反対-危険の分布に沿って、第2次冷戦の陣立てが決定されることです。
では、今回、このロシア非難決議がなぜ臨時特別会合という変則な形で行われたのでしょうか。
このような戦争についての非難決議は、まずもって国連安保理、それも常任理事国で採択されるべきではないのでしょうか。
本来、国際秩序の維持、すなわち力による現状変更を認めない責任は常任理事国にあるはずだからです。
しかしそうはならないのは、ご承知のとおりです。
原因は、その常任理事国自らが平和を攪乱する元凶と化して、あまつさえその武器として拒否権を利用してるからです。
まさに国連の最大の任務である平和構築の敵に常任理事国がなっているという現実を、改めて検証する必要があります。

さて、意外に知られていないことですが、国連憲章23条1項に述べられている安保理常任理事国は、アメリカ、イギリス、フランス、Republic of China(中華民国・台湾)、Union of Soviet Socialist Republics」(ソ連)の名を現在も明記しています。

●国連憲章第23条
安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。総会は、第一に国際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的とに対する国際連合加盟国の貢献に、更に衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って、安全保障理事会の非常任理事国となる他の10の国際連合加盟国を選挙する。

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つまり、本来「中華人民共和国」と「ロシア連邦」は常任理事国ではありません。
それがいつの間にか、「中華民国」と「ソ連」がすり替えられてしまっており、この「いつのまにかすり変わった」二国こそが、世界の平和秩序の破壊者でした。

ソ連の拒否権乱発により機能不全となった国連常任理事国制度に替わってG7が生まれました。
そしてロシアを含めたG8体制になる短い蜜月は、ロシア2014年のクリミア侵略で撤回され、そのまま並立した状況となっています。
一方、新興国G13を含めたG20体制は全く機能せず、いまや形骸化しています。
BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)はどうかといえば、インドと中国は地域的戦争状態にあり、その地域覇権をめぐり、中国とインドは敵対関係にあります。
つまり、いまや世界はG7、そしてそこから派生した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)という価値観を共有した結びつき以外、秩序を守る意志と能力を持った組織はないに等しいのです。

2022年6月の総会で、ウクライナのキスリツア国連大使は、ロシアの代表権の正統性を否定しこう述べています。

「ロシアはこれまで、国連における自らの存在を正当づける努力をしてきたが、ソ連の後身加盟国としての適格性が総会で認められたことは一切ない」

まったくそのとおりであって、国際秩序の擁護者たる常任理事国が率先して拒否権を武器にして国連を無能な存在としている現状を改革しない限り、国連はカラッポの学級委員会のままになることでしょう。
この根本原因が国連安保理常任理事国にあり、本来座るべきではなかった「中華人民共和国」と「ロシア連邦」にある以上、国連憲章第23条1項どおりに正しく運用するべきなのです。

つまり憲章を変更せよと言うのではなく、規約どおりに運用しろ、ということです。
したがって、第23条1項どおりにするなら、「ソ連」は消滅してこの世にない以上抹消。「中華民国」は文言どおり中華民国、すなわち台湾にすればよいのです。
憲章の文言を一言一句変える必要がない以上、国連総会事案ではありません。


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ウクライナに平和と独立を

2023年2月24日 (金)

ウクライナ侵略1周年と第2のU2事件

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今日でウクライナが戦い続けて1年を迎えます。
この1年間のウクライナを思うと、胸が締めつけられる思いです。
まさにこれは「生存のための戦い」でした。
それゆえ、ウクライナ軍の驚異的な士気の高さは世界の人々を打ちました。
特に去年9月のハルキウ反攻は、ロシア軍に戦後始まって以来の歴史的大敗を与えました。
プーチンが見誤ったのは、米国やNATOの支援ではなく、このウクライナ人がウクライナ人であることの深さだったのです。

よく安易に「和平」を口にする者が絶えませんが、いったい誰がどのような形でそうするのでしょうか。
マクロンはとうに舞台から消え、エルドアンも大地震でそのような力はかけらも残っていないはずです。
よもや習近平などを考えているとしたら無駄です。
この人物ができるのは、密かにロシア支援をしたり、制裁逃れを助けたりするていどのことです。
習近平は訪露で、「平和の使者」になると意気込んでいるそうです。
極めつきのブラックジョークです。

唯一、ウクウイナに和平条件を納得させることができるのは、かろうじて米国とNATOしかいないでしょう。
それは彼らの軍事支援が、ウクライナ軍を支えていることは間違いないことだからです。
それ故、この軍事支援がロシア軍に致命的打撃を与えるまでウクライナは抵抗を継続することでしょう。
本来なら2014年のクリミア侵攻の線まで押し戻すべきでしょうが、最低でも2022年2月24日のラインまでロシア軍を撃退させねば、いかなる「和平」もありません。

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ウクライナに平和と独立を!

さて、バイデンは気球事件を「軽く」扱うつもりでした。
ですから、海南島から追跡していた偵察気球が、アラスカに侵入した報告を受けても、北米大陸の直前で落とすことをためらったのです。
結局、民間人に目撃され、悠々と戦略要衝の上空を飛ばれて、やむなく落とす決断に転じたのです。

というのはこの問題をつつきだせば、自分が去年11月にインドネシアで習近平に言ったことを自分の手で覆すことになるからです。

「アメリカのジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席は14日、インドネシア・バリ島で会談した。関係修復を意図した会談となり、バイデン氏は終了後、中国と「新たな冷戦」になることはないと約束した。
バイデン氏は終了後、中国が台湾に侵攻するとは考えていないとも述べた。
両首脳の会談は、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)がバリ島で開幕する前日に行われた。北朝鮮やロシアのウクライナ侵攻についても話し合った。
習氏はウクライナ情勢についてあらためて平和を呼びかけたうえで、「複雑な問題に単純な解決はない」と述べた。
会談後の単独会見でバイデン氏は、「中国が北朝鮮をコントロールできると確信している、とは言いにくい」とした上で、北朝鮮が核実験を繰り返さないよう説得する「義務が」中国にはあると、習氏に伝えたと話した」
(BBC2022年11月15日)
バイデン氏と習氏が対面会談 中国との「新たな冷戦はない」と米大統領 - BBCニュース

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BBC

当時のバイデンには、ロシアの準同盟国であり、かつ、一帯一路で影響力を持っていると習が信じているウクライナの和平交渉に色気があったのかもしれません。
ロシアに軍事支援をしてくれるな、北朝鮮の核開発も止めてくれないかなどと、頼みたかったはずです。
一方、当時の習のほうもデタントに色気がありました。
ゼロコロナの度し難い失敗で国力を落としている上に、不安定な国内状況を作ってしまったからです。
かくして、わずか3カ月間のミニデタントが成立しました。

それを一気に元の冷えきった関係に戻してしまったのは、とにもかくにもこんな時期にこともあろうに偵察気球が撃ってしまったからです。
それも習がブリンケンを中国に招待した後での話ですから、習も頭を抱えたかもしれません。
習が常識的人間なら、招待した国の外相の国に偵察気球を飛ばすのを控えさせるはずです。
すくなくとも、ブリンケンの訪中が終わるまではやらせないはずです。

ところがあろうことか、もっとも米国人が嫌がる米本土を直接に狙ったのですから、いくら気球とはいえど米国人に9.11の悪夢がよぎっいてもいたしかたありません。
これで、さすがのバイデンもシャキっとせざるをえなくなりました。
完全にミニデタントは御破算です。
まさに1960年に起きた、米ソデタントを一発でぶち壊したU-2事件のリバイバル上映です。

しかも当時の米国が、知らぬ存ぜぬ、あれは民間人だと言い張っていたのに、脱出したパイロットがすぐにCIAだとバレるお粗末さまでそっくりです。
今回も、王毅は当初アレは民間のものだと白々しいウソをつきましたが、すぐにバレると一転して、打ち落とすとはけしからんと豹変しました。

あまりにいいタイミングだったので、中国には右手と左手があって、右手が手握手しようとすると左手がそれをねじ伏せているのではないか、という観測すら生まれたほどです。
私は、習の支配は貫徹されておらず、中国内部に深刻な路線対立があってもおかしくはないと思っています。

さて、米国は気球と装置を回収して、徹底的に調べ上げています。

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共同

遠からず、米国は気球についていた監視センサーの情報を開示する予定だそうです。
レトロ感さえある気球を、今、中国が使いだしたのには理由があります。
まずは、気球が飛行する高度です。これが絶妙なのです。

下図は衛星の飛行高度です。

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〈独自〉米の小型衛星群構想へ参加検討 ミサイル防衛強化 来年度予算に調査費 - 産経ニュース (sankei.com)

もっとも高い高度を飛ぶのが気象衛星や早期警戒衛星、静止衛星で、3万6000キロ。
たとえば、早期警戒衛星は北朝鮮のミサイルの動向をこの高度から常に定点で監視していますが、高度が高すぎて解像度が低いのが欠点です。
通信衛星は2万キロ、GPS・測位衛星は1000キロです。
通常の偵察衛星は300キロから1000キロの間の比較的低高度を飛行しています。
ただし、偵察衛星には何点もあって、撮影画像の解像度は高い代わりに周回軌道で回っているために、見たい場所にいつもいるわけではありません。
北朝鮮は偵察衛星が周回する時間になると、見せたくないものはそそくさと隠してしまうそうです。

エドワード・ルトワックは、「偵察気球が飛ぶ2万メートル未満は、両者の欠点を補う存在といえる」としています。
中国の気球はなかなかハイテクで、中国本土から北米大陸の北部太平洋沿岸へ到達するための推進装置が付いています。
偏西風に乗りながら、帆船のように風向きに応じた方向転換が可能で、今回北米の戦略要衝の上空を通貨したのは偶然ではないようです。
そして驚くべきことには、特定の目標の上空で滞空する機能もあり、ここぞと定めた場所の上空に一定期間浮かんでじっくり偵察することが可能です。
もちろん、その間きわめて高い解像度の画像や電波情報を、電波で海南島の基地に送っていました。

そして高度2万メートル近くで飛行するためにこれを迎撃するのはきわめて困難です。

「宇宙空間から詳細なデータを収集できるスパイ衛星に比べれば、高高度に浮かぶ気球は大したことがないように見えるかもしれない。だが、気球には利点もある。製造コストが安価で、何カ月も飛べる。予測可能な軌道を移動する人工衛星と違い、上空を「ぶらつく」こともできる。そして撃墜するのは意外と難しい」
(ニューズウィーク2月6日)
中国「スパイ気球」騒動と「U2撃墜事件」の奇妙な類似...「第2次冷戦の初期」を再確認(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

米空軍は最高のインターセプターであるF-22を使わざるを得ませんでしたし、対空ミサイルを一発はずしています。
空自が同じことをできるかというと、微妙でしょう。

米国は中国がスパイ目的で気球を飛ばしていることを前から知っていたそうです。

「中国がこの偵察システムをしばらく前から使っていて、アメリカはそれを知りながら外交的判断に基づき対応しなかった可能性は極めて高い。この種の侵入は以前にもあったと、国防総省の報道官は記者会見で認めている」
(NW前掲)

ただ今回は民間人が目撃してしまったために放置するわけにもいかなかった、というのが軍の判断だったようです。
今回の気球も海南島から出た段階から追尾していたようです。

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(39) 偵察気球 米軍が1週間追跡 中国の空軍基地から離陸 - YouTube

実は、米国本土の防空システムは弱体化していたようです。
かつての冷戦期には、アラスカからカナダ、北米全域に旧ソ連の戦略爆撃機の侵入を想定したレーダー網や対空ミサイル、迎撃戦闘機からなる強力な迎撃システムがセットされていましたが、冷戦終結後これらは廃止されてしまいました。
ルトワックは、「米国内での航空機の追跡は民間空港のレーダーなどに頼らざるを得ず、過去に気球を見失うケースがあったと思われる」と苦々しげに書いています。

とまれ、これで半世紀前の鄧小平のピンポン外交て始まった米中の平和共存関係は完全に終了しました。
これは1960年に起きたU-2事件と酷似しています。
このスパイ機の撃墜により、当時進んでいた軍縮交渉は御破算になり、米ソは一気に長い冷戦へと突入していくことになります。

「今回の気球騒動は、私たちが「第2次冷戦」の初期にいることを再確認させるものだ。冷戦当時は相互監視が最も緊迫した問題の1つだった。1960年のU2撃墜事件では、ソ連は探知できないはずの偵察機U2を撃墜しただけでなく、パイロットを捕らえてテレビで自白させ、アメリカに恥をかかせた。当時の米ソ関係は比較的良好だったが、この事件のせいで軍縮交渉は台無しになった。パイロットの拘束が判明する前、アメリカはU2機は気象観測用の航空機であり、誤ってソ連領空に入ったと主張していた。今回の中国の説明と不気味なほどよく似ている」
(NW前掲)

いずれにせよ、既に充分悪化していた米中関係は、このスパイ気球事件を節目にして「第2次冷戦」に突入しようとしています。
米中関係は、鄧小平のピンポンで始まり習近平の気球で終わったようです。

 

 

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ウクラナイナにこのような平穏な夜が一日も早く訪れますように。

 

2023年2月23日 (木)

ココムへと向かう中国デカップリング

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中国は米国の半導体規制により、メモリーのCXMT フラッシュメモリーのYMTC(長江存儲科技 )、ァウンドリ (半導体チップ製造工場)のSMICの半導体3社の生産ライン拡大工事が停止した状態です。
また、現行主力世代の半導体製造に関しても、設備の修理営繕ができなくなり、今後の生産に赤信号がともっています。
その影響を被って、すでに半導体関連だけで5700社が廃業危機の状態に追いやられています。

「Hosseini氏は、「SIGの予測では、米国の半導体制裁措置によって生じるウエハー工場用装置の売上損失額は、80億米ドル規模に達する見込みだ。これは、2022~2025年のウエハー工場用装置の1年間当たりの平均売上高予測の8%に相当する。
また、スパコンの分野では、GPU製造の主要パートナーであるTSMCが、約10%の損失を被る可能性がある」と述べている。
 同氏は、「米国は、自国の人材が中国の半導体業界において無許可で働くことも禁止している。この禁止措置により、中国向け製品/サービスの売り上げが失われるため、世界半導体業界では今後3年間で、約100億米ドルの損失が発生することになるだろう」と付け加えた」
(EEタイムス 022年10月27日 )
米国の新半導体規制「中国やグローバル企業に大打撃」:複数アナリストの分析を聞く(2/4 ページ) - EE Times Japan (itmedia.co.jp)

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中国YMTCなど30社超を禁輸リスト 米商務省が発表 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

半導体関係者は、現在はまだ自由主義諸国と中国は複雑に絡まりあった利害関係を持っている状態だが、近い将来、両陣営の半導体関連業界は完全にデカップリング(切り離し)されるだろうとみています。

「今後5~10年の間に、引き続き中国との分断が進んで行くだろう」と述べている。
「グローバル企業は、実際に今後5~10年の間に中国とのビジネスが実際にゼロになる可能性があるという事態に備える必要がある」
(EEタイムス前掲)

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米規制で打撃の中国、パワー半導体に「驚きの投資増」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

この4月から、米国の半導体規制は、二次制裁(セカンダリーサンクション)を課す段階に入ります。
セカンダリーサンクションとは、経済制裁を受けている国と取引する第三国の個人・企業・金融機関などに対する制裁のことで、これに違反すると第三国の当該企業までもが処罰の対象となります。
これによって、中国半導体企業に輸出していた日本や韓国の企業は大きな影響を受けることでしょう。

たとえば、米国は中国でメモリーを生産するサムスンとハイニックスに対して、昨年10月に1年の免許の更新を認めましたが、その後の更新はわからないとしています。
日米蘭の半導体合意により、中国に半導体製造装置を輸出することが不可能になります。

「バイデン大統領は、中国に最先端半導体の技術が流出し、それが軍事転用されるとして、昨年10月に半導体製造装置などを含む最先端半導体の輸出を規制する措置を発表した。
その後、関係国にも協力を求め、今年1月、アメリカ時間の27日にバイデン政権は日本やオランダの当局者とワシントンで協議した。その結果日米蘭は半導体製造装置輸出規制で合意した」
習近平どうする? 日米蘭が対中半導体製造装置輸出規制で合意(遠藤誉) - 個人 - Yahoo!ニュース

この半導体製造分野で日本とオランダは強い力をもっており、日米蘭が禁輸に合意したために、中国は仮に半導体設計をしてもそれを作る装置が入手できなくなります。
そしてこれを利用した各種装置も製造できなくなります。
その範囲は、半導体分野からAI、バイオ、航空宇宙分野などにも広がるとされており、スーパーコンピューターも作れないため、高度演算が不可能となり、科学技術全体が停滞に追い込まれることでしょう。

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上図の表でもわかるように、これらの製品の多くは日本製であり、日本の半導体規制次第ということになります。
半導体の役割分担は、大雑把にいえば、製品設計や技術を米国が担い、製造装置と検査装置の多くが日本、そして最新鋭の露光装置がオランダ製、そしてこれを製造しているのが台湾のTSMCやサムスンという構図になっています。

習近平が訪露すると見られていますが、そこで何らかの支援を口にすれば一気にこの禁輸のステージは上がっていくでしょう。
そして現行のワーセナー協約からココムへと遡行するはずです。
ココム(対共産圏輸出統制委員会)とは、このような冷戦期に作られた輸出管理規制でした。

「冷戦時の資本主義諸国がソ連ワルシャワ条約機構による侵略・侵攻という安全保障上の脅威に対応し、共産主義諸国への技術格差の確立を図るために、共産主義諸国へのハイテク物資の輸出を規制する目的で1949年秋に創設され1950年1月から活動開始した。アイスランドを除く北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国と日本オーストラリアが参加していた。
ココムにおいては、東西の軍事バランスが崩れるような品目を共産主義諸国に輸出することを防止するため、輸出管理当局において仕向地と輸出品目の技術的な使用についてチェックが行われ、最終的に対象品目に共産主義諸国への移転される輸出について原則禁輸となっていた。東西関係や技術水準の変化に合わせて規制の対象となる貨物や技術も変化していった
また、物資や技術の輸出は外貨獲得の手段として期待できることから、輸出統制対象リストを巡り、加盟国間でしばしば対立を起こした」
対共産圏輸出統制委員会 - Wikipedia 

そして「第2次冷戦」が始まります。

 

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ウクライナに平和と独立を

2023年2月22日 (水)

絶妙だった、バイデンのキーウ訪問

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いつ行くのか、もう侵略1周年まで日がないゾ、とやきもきしていたバイデンがとうとうキーウを電撃訪問しました。
プーチンの年次教書演説のわずか2日前、という絶妙なタイミングを選びました。

「【キーウ(キエフ)=遠藤良介、ワルシャワ=渡辺浩生】バイデン米大統領は20日、ウクライナの首都キーウを電撃的に訪問し、同国のゼレンスキー大統領と会談した。バイデン氏のウクライナ入りは昨年2月24日のロシアによる軍事侵攻以降で初めて。侵攻から1年の節目を前に、抗戦を続けるウクライナとの連帯やウクライナに対する支援を継続する決意を示した。
米政府高官によると、米軍が展開していない戦時中の国の首都に現職大統領が訪問するのは初めてという歴史的な訪問となった。バイデン氏は21~22日、隣国のポーランドを訪問する予定だが、キーウ入りに関する日程は安全上の理由から公開されていなかった」
(産経2月20日)
バイデン氏がゼレンスキー氏と会談 キーウを電撃訪問 - 産経ニュース (sankei.com)

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バイデン氏がキーウ電撃訪問、ゼレンスキー氏と会談…「ウクライナも民主主義も持ちこたえた」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

バイデンは数時間前に「不測の事態を避ける」と称して、キーウ訪問をロシアに通告しました。
数時間前ですから、既にポーランドに入っていたはずですが、やるならやってみろというなかなかのタンカの切り方です。
これをあえてリークしてロシアに恥をかかせるというのも、いかにもいかにもです。
ただし、命懸けの。
プーチンが狂気の世界の住人だった場合、攻撃を仕掛けてくる可能性が捨てきれません。
大統領が殺された場合、最悪なら限定核戦争。控えめに見ても米軍が直接参戦に踏み切ったことでしょう。
米国は、プーチンに米国と全面対決する意志があるかどうかを試したのです。

プーチンの年次教書演説の内容がわかってきました。
派手なマッチョを演じるかと思いきや、戦争に耐えるための耐乏生活を呼びかける内容となっています。

出だしからしてこうです。
「困難な時」って、お前さんがひとりで始めたことだろう、って。
歴史を引っかき回し、隣国を支配する「遊び」に手を染めたのは自分だからです。

「プーチン大統領は「私はこの演説を、ロシアにとって困難な時に行っている。それは世界中で根本的に不可逆的な変化の時期で、ロシアと人々の未来を決める最も重要な歴史的なできごとでもある」と述べました。
さらに「欧米諸国はウクライナでの紛争を世界的な対立に変えようとしている。ただ、彼らは戦場でロシアを負かすことは不可能だと理解すべきだ」と述べ軍事侵攻を継続する姿勢を強調しました 」
(NHK2月22日)

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プーチン大統領が侵攻継続姿勢を強調 侵攻後初の年次教書演説 | NHK | ロシア

「ロシアのプーチン大統領は2時間近くに及んだ21日の年次教書演説で、前線での戦況や軍事作戦の見通しに触れなかった一方、軍事作戦に従事する兵士や家族らへの社会支援の拡充を強調した。プーチン氏は米欧側の制裁に対抗できるよう経済改革を進めていく方針も表明。演説からは、プーチン氏が軍事作戦の長期化を見据え、国民理解の維持に腐心している様子が強くうかがわれた」
(産経2月21日)
露の苦戦反映か、戦果触れず プーチン氏演説 - 産経ニュース (sankei.com)

また核軍縮条約については、離脱するとまでは言わず「停止」するそうです。

「ロシアのプーチン大統領は21日の年次教書演説でロシアと米国の新戦略兵器削減条約(新START)について「履行を停止する」と表明した。核の脅威を高め、米欧をけん制する狙いとみられる。プーチン氏は条約からの離脱は否定した。米ロと同じく核保有国である仏英の出方を見極める姿勢を示し、新たな多国間での核軍縮条約の可能性も探りたい意向を示唆した」
(日経2月22日)
プーチン氏、核軍縮条約「履行を停止」 年次教書演説で - 日本経済新聞 (nikkei.com)

条約から離脱せずに「履行停止」とはどのような意味かはわかりませんが、新STARTの下でおこなわれている相互核査察に応じないという意味なのかもしれません。
多国間核軍縮と言いますが、今のロシアに応じるのはせいぜいが中国か北朝鮮くらいのものですが、この両国とも「伸び盛り」の核兵器マニアですから応じるかどうか。

いずれにしても、プーチンにはフィンランド大統領の言葉を借りれば「敗北を認める能力がない」ようです。

「(CNN) フィンランドのニーニスト大統領は10日、ロシアのプーチン大統領について、ウクライナでの戦争における敗北を受け入れることができないとの見方を示した。ノルウェーのストーレ首相との共同記者会見で語った。
ニーニスト氏は「プーチン大統領が何らかの敗北を認めることができるとは、とうてい思えないと伝えた。彼にその能力があるのか。それが問題だ。わたしは、彼には敗北を受け入れる能力はないと思う」と述べた。
ストーレ氏は、交渉による解決やロシアの侵攻停止は望めないとし、残念ながらそうしたことが即座に実現することはないとの見方を示した」
フィンランド大統領、プーチン氏は「敗北を受け入れる能力がない」 - CNN.co.jp

米国は、大統領のキーウ訪問と同時に中国にもガツンとかましました。

「米領空を飛行した気球の問題については、二度とあってはならないと王氏に伝えた。王氏は会談に先立つ数時間前、気球を撃墜した米国の対応を「ヒステリック」だと非難した。
ブリンケン氏は19日放映予定の米NBCニュースのインタビューで、中国がロシアに武器支援を検討していることを非常に懸念しており、王氏に対して「われわれの関係に深刻な結果をもたらすことになる」と伝えたと明らかにした。
「少なくとも兵器を含むさまざまな種類の致死性のある支援が考えられている」と指摘し、米政府は近いうちに詳細を発表するとした」
(ロイター2月15日)
米国務長官、中国外交トップの王氏と会談 ロシア支援巡り警告 | Reuters

ブリンケンと王毅のミュンヘン会談は、当初から正式なものではなく、短時間顔を合わせる程度のものとして設定されました。
というのは、険悪になるのがわかりきっていたからです。
正式な外交責任者間の会談にしてしまうと、共同声明を出さねばなりませんから、互いに言いたいことを言うためには非公式会談だったほうが都合がよかったのです。

米国は、気球事件をむしろ奇貨として、ロシアに軍事援助なんかしやがったら同罪だからな、と言うためにこの会談を開いたようなものです。
とうぜん激しいやりとりがあったようですが、王毅は頑として謝るどころか、気球を落としたことに噛みついたそうです。
それにしても、どうしてここまで突っ張れるのかね、王毅さん。
米国本土にスパイ気球流していて、その現物が捕獲されてしまったら、言い訳きかんだろうが。

王毅は徹底的に習近平におもねることで、外相から常務委員の外交担当にまでのしあがった男です。
従来の外交部は、米中緊張緩和を最優先事項にしていましたが、ここで風向きが変わりました。
習近平は、米国への宥和は絶対許さない方針で、軍部も習近平の顔色を見て南シナ海のフィリピン沿岸警備隊へのレーザー照射などの過激な動きをしています。
本来、習近平の止め男にならねばならないはずの王毅が、とんだゴマスリ男で戦狼スタイルで突っ走るのですから、ディスペレートです。
プーチンのラブロフと同じで、独裁者の外相は皆、戦狼になってしまうようです。

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米国務長官、ドイツなど歴訪へ 中国・王毅氏との会談は実現するか | 毎日新聞 (mainichi.jp)

また福島香織氏によれば、中国がロシアのゴロツキ集団ワグネルに衛星図像や軍事ハードウェアなどの電子産品を提供していたことについてブリンケンは王毅にねじ込んだようです。
ブリンケンは北京に対し、モスクワがウクライナに戦争を仕掛けたとき、「もし中国がロシアに物質的支持、あるいは制裁逃れに協力するようなことがあれば、影響と結果をもたらすだろう(悪い結果をもたらす)」と警告していますから、今の半導体輸出規制をさらに強化するでしょう。

一方王毅は、ブリンケンとの会談の後、盟友ロシアを訪問しています。
習近平訪露への露払いです。

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ロイター

「[21日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領の側近であるパトルシェフ安全保障議会書記は21日、同国訪問中の中国外交担当トップの王毅氏に対し、中国がロシア外交政策の最優先事項で、両国は西側諸国に対し結束する必要があるという認識を伝えた。ロシア国営通信RIAノーボスチが報じた。
パトルシェフ書記は「ロシアと中国を封じ込めを目指す西側諸国によるキャンペーンに対し、国際分野におけるロシアと中国の協力と関係の深化はとりわけ重要」と述べた」
(ロイター2月22日)
中ロシア高官が会談、協力と関係深化巡り協議 西側に対抗へ (ロイター) - Yahoo!ニュース

いうまでもありませんが、ゼレンスキーは妥協するつもりはいささかもありません。
ここで妥協して和平などしたら、待っているのは朝鮮戦争型分断国家です。
ゼレンスキーは、いわゆる「ウクライナ疲れ」をいうイタリアメディアに向けてこう言っています。

「イタリアの世論調査ではプーチンを侵略者だと思うと答えているのわずか50%です。
それについてどう思いますか?」
ゼレンスキーは「その50%が必ずしも親ロシアだとはかぎりません。たぶん、戦争を恐れ、それに伴うエネルギー高騰、インフレを恐れているのです。
面倒ごとはいやだ、と考えるのは正常な反応です。だから、私はなぜウクライナが戦わねばならないかを説明しなければならない。突然強盗がやってきて、ものを盗み、妻や娘を犯し、殺す。それが私たちの国で起きていることです。私もイタリア人と同じ、食べ物をたべ、家族を愛している。これは生存のための戦いなのです」
福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.732 2023年2月22日

まことにそのとおりです。
侵略1周年に当たって、私たちはこのゼレンスキーの「生存のための戦い」という言葉をもう一回かみしめる必要があります。

 

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ウクライナに平和と独立を

2023年2月21日 (火)

北朝鮮、またまた(以下略)弾道ミサイル発射

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北朝鮮が、夏の花火大会よろしくポンポン弾道ミサイルを上げています。

【ソウル=時吉達也】韓国軍合同参謀本部は20日、北朝鮮が同日午前7時と7時11分ごろ、西部粛川(スクチョン)付近から日本海に向け、短距離弾道ミサイル2発を発射したと明らかにした。日本の海上保安庁は20日、防衛省の情報として、北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものを計3発発射したと発表した。日米韓当局はミサイルの種類の特定などを急いでいる。
日本政府関係者によると、ミサイルはいずれも日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したとみられる。北朝鮮は18日にも大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したばかり。米韓が19日に実施した、戦略爆撃機などによる合同訓練に対抗したとみられる」(産経2月20日)
金与正氏「日本越え」警告 韓国軍、北朝鮮の弾道ミサイルは「2発で短距離」  - 産経ニュース (sankei.com)

今回の弾道ミサイルは、日本でもっとも確かなソースであるJSF氏によれば抜き打ちで撃ったと北朝鮮は言っているようです。
部隊名は「第1赤旗英雄中隊」というのだとか。ドン臭いというかレトロというか。
しかし部隊名に「赤旗」とか「親衛」「英雄」などとつくとエリート部隊のようです。
国民や他の部隊が飢餓線上でも、このミサイル部隊だけはいいもの食っているんでありましょう。

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JSF

「2月19日、北朝鮮は前日18日の夕方に発射したICBMについて、既存の液体燃料式ICBM「火星15」だったことを発表しました。事前計画無しの抜き打ち指示による即応発射訓練とあり、新名称組織の「ミサイル総局」の命令を受けて発射したのは第1赤旗英雄中隊、発射場所は平壌国際空港(順安空港)、発表された火星15の飛行数値は以下の通りです。
水平距離:989km
最大高度:5768.5km
飛行時間:4015秒(66分55秒)
 ロフテッド軌道(山なりの弾道)による火星15の全力性能発揮が実施されています」
(JSF2月19日)
北朝鮮発射ICBMは液体燃料の火星15(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

火星15と火星17は、混在してひとつの赤旗なんじゃら部隊に配備されているようです。
両者は大きさが異なるので、移動式発射装置(TEL)も、9軸18輪が6両、火星17用の11軸2輪TELは12両があるようです。
北朝鮮は実に多彩なミサイルを持っていますが、いちばん射程が長い大陸間弾道弾ミサイルは今回発射された「火星」シリーズです。

射程は、今のところロフテッド軌道でポーンと高く上げていますが、通常モードで撃てば1万キロに達すると見られています。

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北朝鮮はなぜミサイルを発射するの?1からわかる!「北朝鮮とミサイル」 改訂版(1)|NHK就活応援ニュースゼミ

射程範囲は下図のとおりです。
北朝鮮を中心に半径1万キロの円を描くと、アメリカのロサンゼルスあたりまで射程に入ることになります。
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NHK

一方、「北極星」「北極星2」「北極星3」の名前がついているミサイルは、SLBMと呼ばれているもので、潜水艦発射弾道ミサイルです。
実はこれが一番やっかいなシロモノで、バカデカイ「火星」ミサイルを北朝鮮の悪路をゴロゴロと引っ張っていれば偵察衛星に必ず探知されるのですが、潜水艦から発射するので秘匿性が高いのです。

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北朝鮮「新型潜水艦弾道弾『北極星3型』の発射実験に成功」 : 政治•社会 : hankyoreh japan (hani.co.kr)

普通は潜水艦から撃つものですが、なんと北はダムから発射して見せました。
こんなところから撃つのは、まともな潜水艦がないからです。
かんじんの潜水艦のほうがまともなものがないので、実用化にはまだ時間がかかりそうです。
2016年のちょっと古い評価ですが、西村金一氏(幹部学校戦略教官室副室長 )のこのような評価があります。

「北朝鮮のSLBNの能力を評価すると、初歩段階である。たとえば、韓国国防省によると、SLBNには1発しか搭載できないという。
 中国やロシアのSLBMと北朝鮮のSLBMとは、射程の違いから大きな差があることから、その運用に大きな違いが生じる。
 中国SLBMのJL-2潜水艦発射弾道ミサイルの射程は8000kmであり、これと比べると北朝鮮のものは500kmであり短すぎる。射程や発射できる弾数から見て、米ロが保有しているSLBMとはまったく異なるものであり、SLBMという用語に騙されてはいけない」
(西村金一)
main (jfss.gr.jp)

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西村金一

SLBMの射程が短いために、米国を狙おうとすれば潜水艦はかなり北米まで近づいて撃たねばなりません。
本来、このような戦略型潜水艦は安全な自国沿岸か、海溝にひっそりと潜って待機しているものですが、こんなポンコツを北米まで引きずって行く間に、確実に日米の対潜網に引っ掛かり、あえない最期を遂げることでしょう。
新型を作ったと誇示していますが、潜水艦技術は簡単に習得できるものとちゃいまんねん。
弾道ミサイルや核兵器のように中露からもらうといっても、潜水艦の開発技術は秘匿性のレベルが極めて高いのです。
弾道ミサイルのように、商品として売買しているものではないために、中露は一昔前のキロ級のものは売っても、現在運用中の静粛性の高い大型戦略原潜を与えることはまず考えられません。
ウクライナ戦争で大いに貸しを作ればあるいは、と思わんではありませんが、常識的にはロシアが虎の子の戦略原潜を供与するとは思えません。

最後に、今回の目的ですが、淡々とスケジュールどおりやっているだけのことです。
産経さんもこの連発が「戦略爆撃機などによる合同訓練に対抗した」と書いていますが、ミスリードです。
左向きの人たちもなにかと、「日米が追い込むから、北はミサイルを撃つのだ」という言い方をしますが、同様に間違っています。
辺真一氏などは記念日に合わせてやっていると言っていましたが、これもアテになりません。
なんせ週刊弾道ミサイルですからね。

北朝鮮は、米韓合同演習をしたからどうのとか、日本海で日米共同訓練をしたからこうのでミサイルを撃っているのではありません。
あらかじめある核戦力獲得の工程表どおり、撃っているにすきません。
ですから、こちらが何をしようとしまいと、ミサイルを撃ち続けます。
あたかも日米韓国が何らかのリアクションをしたからその報復で撃ったのだという言い方を認めてしまうと、今回も与正女史がこう言っていることを、こちら側から追認することになりかねません。

「金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(ヨジョン)党副部長は20日、朝鮮中央通信を通じて談話を発表し「われわれが太平洋を射撃場として活用する頻度は米国の行動次第だ」と強調。日本列島上空を越える弾道ミサイルの発射を警告した」
(産経前掲)

北は、こちらがリアクションを自粛使用としまいと核兵器開発を止めないのです。
彼らのゴールは、核兵器のバランスを取ること、すなわち相互破壊確証(MAD)のようです。
そしてそのゴールは、バイデンの無為無策によって眼前まで近づいています。

 

2023年2月20日 (月)

フェールセーフ思考を知らないメディア記者

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どうしようもないメディアの記者がいたものです。
ご承知のように、2月17日の午前10時37分に打ち上げ予定だった、JAXAの次世代主力ロケットH3試験1号機が、発射直前に突然打ち上げ中止となりました。

私はライブ配信で見ていたのですが、結局、寸前で打ち上げには至りませんでした。
プレスリリースでJAXAは、補助ブースターSRB-3が点火しなかったためと発表し、その後、異常を検知してシステムがSRB-3への着火信号を出さなかったようです。

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H3ロケット試験機1号機/先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)打上げライブ中継 - YouTube

午後2時から行われた会見では、JAXAの岡田匡史H3プロジェクトチームマネージャーが経緯を説明しました。
岡田氏によると、ロケットの自動カウントダウンシーケンスは予定通り開始され、メインエンジンLE-9が着火し正常に立ち上がったあと、ロケット下部(エンジン上部)に設置された1段制御用機器が異常を検知。

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JAXA

SRB-3への着火信号を送らなかったことから、打ち上げ中止としたそうです。
なお、SRB-3側にも異常はなく、制御用機器が検知した異常そのものについては原因究明中だそうです。

この記者会見で、とんだ珍事が起きました。
共同通信の記者がキテレツな絡み方をしたのです。
日刊ゲンダイによれば、失敗を糊塗して逃げ回る大本営のようなJAXAに対して、義憤に駆られた正義の共同記者が、ひとり敢然と食い下がったという図式になるようです。
なるほど、なるほど、へ~、そうだったんだ。

「打ち上げ「中止」なのか「失敗」なのか……SNSでは識者らが、JAXAの「話法」に問題があると指摘している。
太平洋戦争で当時の日本軍大本営は、作戦失敗による退却や撤退でも「退却」「撤退」とは呼ばず「転進」を使った。部隊の「全滅」は「玉砕」と表現した。これらは言葉を操作して組織のメンツを守る話法で、当時の新聞やラジオはこうした大本営発表をタレ流した。
今回批判された記者は、JAXAの“大本営発表”のような説明に納得が行かず、執拗に食い下がったとも取れる 」
(日刊ゲンダイ2月19日)
H3ロケット発射「失敗」を「中止」と…JAXAが一貫した“組織のメンツを守る”話法(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース

ほほぅ、そうですか、私は淡々とJAXAが事実のみをしゃべっていた気がしますがね。
この共同記者とのやりとりは、JAXAが一部始終を中継していたのでネットでも見ることが可能です。
念のために、当該部分を編集なしで書き起こしておきます。
このバカ記者が同じことの繰り返していることをおわかりいただくために、冗長ですがご勘弁を。
太字だけ読んで、飛ばしてくださってもかまいません。

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JAXA

共同 中止という言葉は、みなさんの業界でどう使われているかは別として、一般に意図的に止める、計画を途中で意図してやめる時に中止といいます。今回はカウントダウンも続いているし、飛ぶはずの機体が飛ばないなという状況に見えますが、正体不明の異常が起きて、システムが正常に作動して止まったのかもしれませんが、意図しない異常による中断、中止ということだったのでは。意図的ではなく止まっちゃったよということは一般に言う失敗ではないかと思うのですが、どうですか?
岡田 こういった事象が時々ロケットにはあるのですが、その時に自分たちは失敗と言ったことがありませんので。やはり、われわれが非常識かもしれませんが。
共同 それを失敗と呼ばれたからと言って、何か著しく不具合があるわけではないですよね。みなさんの中では失敗と捉えてないけれども、失敗と呼ばれてしまうことも甘受せざるを得ないという状況ではないですか。どうですか?
岡田 どのような解釈をされるのかは、受け止めた方、受け止められ方はもちろんあると思いますので、そうではないですとは言い難いですけれども、ロケットというものは基本安全に止まる状態でいつも設計しているので、その設計の範囲の中で止まっている、つまり意図しないというのはその設計の範囲を超えて、そうじゃない状態になることは大変なことになると思いますが、ある種想定している中の話なので、そこに照らし合わせますと失敗とは言い難いと思います。
共同 わかりました。確認ですが、つまりシステムで対応できる範囲の異常だったけれども、考えていなかった異常が起きて打ち上げが止まった。こういうことですね。
岡田 ある種の異常を検知したら止まるようなシステムの中で、安全、健全に止まっているのが今の状況です
共同 わかりました、それは一般に失敗といいます。ありがとうございます。
岡田 ありがとうございます。
H3ロケット試験機1号機に関する記者会見 - YouTube

ね、スゴイ粘着ぶりでしょう。
共同が、とにかく「失敗」と言わせたくて、同じことをクドクド絡んでいるのがわかると思います。

それにしても岡田氏は実に辛抱強い。麻生副総理ならとっくにブチ切れていました。
共同の記者は、最後に「わかりました。それを一般には失敗と呼びます」と、まるで自分が世間常識の代表にでもなったようなわけ知り顔で終了させています。
これまで何度となく予定の順延に悩まされながら、ここまでこぎつけたJAXA関係者へのリスペクトなど微塵もなく、「オレはこういうのは失敗と呼んでいるんだ」と素人がマウントするのですから処置なしです。
余りに無礼なので、同業者からも「あの質問はないよ」と言われてしまったほどです。

「JAXAの会見、ヤバい。失敗と言わせたかったのかどうかは分かりませんが、あの捨て台詞はひどいですね。対峙しているのは権力者でもなんでもないですし。仮にそうであったとしても、礼儀というのはある」
須賀川拓 TBS Television🇯🇵 中東特派員 Hiroshi Sukagawa(@HiroshiSukagawa)さん / Twitter

須賀川記者は権力ならいいと言いたいみたいですが、「権力」相手でもダメでしょう。
メディアが事実を伝えるのではなく、自分のイデオロギーで断裁してしまうからです。
知りたいのは、あんたらメディアの思想じゃなく、淡々とした事実なのですよ。
よくイソ子氏あたりが口にする、「権力を監視する」なんていうスタンスですね。
国民のだれも「正義の代弁者」なんて役割をメディアに期待しなくても、当人たちは自己陶酔から醒める気配がありません。
そういう思い上がりが、メディアをダメにしてきたのです。

この共同記者がやらかしたのは、典型的な誘導質問で、自分が言わせたい「失敗」のひとことをJAXAから引き出そうとしています。
これはよく政治家にはひんぱんにやる手口ですが、今回相手が純粋 に工学系の人だったために、糠に釘であせってしまったようです。
工学系が工学的事象について説明する場合、いくら共同記者が「おたくらの業界ではどう言ってるのか知らないが」とケンカを売るようなことを言われようと、工学系の筋を通して発言します。
政治家のように政治的影響に怯えて、いきなりな妙な謝罪などしません。
そんな目先を繕うような謝罪をしてしまったら、この「打ち上げ中止」という事態を解析できなくなるからです。

さて、今回のH3ロケットは、メインエンジンは着火したものの発射はしておらず、打ち上げが見送られた状態ですから、岡田氏が質問に対し答えているように、「失敗というのはいろんな定義もあると思うが、打ち上げにおいてカウントダウンシーケンスで止まったものは打ち上げ中止と思っている」という説明に尽きます。
文科省も認めているように、これは「失敗」ではなく「中断」です。

それとも、中断せずに打ち上げてしまって、搭載した先進光学衛星「だいち3号」と共に空中で爆発したほうがよかったとでも。

この共同記者は根っからの文科系だとみえて、岡田氏のような工学的思考回路についていけなかったようです。
このようなロケットだけではなく、機械やそれが関わる分野には「フェールセーフ」(fail safe)で動いています

「フェイルセーフとは、機器やシステムの設計などについての考え方の一つで、部品の故障や破損、操作ミス、誤作動などが発生した際に、なるべく安全な状態に移行するような仕組みにしておくこと。
故障や誤作動、誤操作は起きるものだという前提に立ち、そのような場合に自動的に安全側に導くような制御方式や動作原理を設計や構造に組み込む考え方を意味する」
フェイルセーフ(フェールセーフ)とは - 意味をわかりやすく - IT用語辞典 e-Words

たとえばAという装置が故障した場合にBが代替して作動する、あるいは全行程をここで止めてしまうという設計手法です。
今回のH3は代替せずに、全行程をここで中断しました。

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JAXA

このフェールセーフが効かないで打ち上げると、1999年のH2・8号機のような事故につながります。
この事故はJAXAのトラウマのようになり、この検証だけで数年かかっています。
また社会的影響も大きく、ドラマ『下町ロケット』にも登場します。
失敗事例 > H-2ロケット8号機打ち上げ失敗 (shippai.org)

この失敗を通じてJAXAは、安全に動作を止めることで周辺の被害を最小限に抑えるフェールセーフ手法を取り入れています。
今回、あえていえば「成功した」ともいえるのは、異常は発生してもそれを正しく自動検知してシステムが正常に停止したためです。

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JAXA

つまり、なんらかの異常が検知された場合、補助ブースターに「着火信号を送らない」という機構が正常に働いたために、 打ち上げ中断後においてもH3ロケットはコントロール可能な状態でキープされています。

「岡田氏も「ロケットがスタートして打ち上げるときは常に安全な状態を確保することが第一優先。そういう意味では安全に止まったということ。非安全な状態で止まったわけではない。異常を検知して安全に止まるシーケンスが正常に働いて安全に停止している状況。直前にLE-9エンジンも正常に立ち上がっているし、異常の検知も正常に行われていると理解している」と述べ、異常状態が制御下にあったと説明している」
(ITmedia NEWS 2023年02月17日 )
打ち上げ中止「H3」会見で共同記者の質問に批判相次ぐ ロケットを救った「フェールセーフ」とは(1/2 ページ) - ITmedia NEWS

共同記者は自分が世間常識の側に立っていると考えているようですが、世の中「成功か失敗か」という二元論でバッサリかたづけられないことがいろいろあります。
たとえば、原子炉は制御装置が停電すると自動的に制御棒が自重で落下して核反応を緊急停止させます。これもフェールセーフです。
原子炉スクラム - Wikipedia

卑近な例でいえば、石油ストーブは転倒すると自動的に消火しますが、これもフェールセーフです。
また電車が信号を無視して走ろうとしてもATS(Automatic Train Stop・自動列車停止装置)によって、強制的にブレーキ制御が起動して絶対に止まれるような仕組みになっています。
かつてオスプレイがパイロットの冷静な操縦で不時着水すると、この時もメディアは「墜落した」と書き立てました。
墜落とはコントロール不能になることですから、最後までコントロールできていていたので、墜落ではありません。
ことあれかしのメディアのほうこそ、大本営発表です。

これらの例が「世間では失敗っていうんだよ」と共同の記者は言いたいのでしょうが、あいにくそうは呼びません。
「異常が検知されたので正常に停止・中断された」と言います。
今回のH3ロケットも、「正常に中断された」のです。

 

2023年2月19日 (日)

日曜写真館 恋猫の瓦一枚ずらし跳ぶ

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天麩羅にからりと揚げて春告げ草 高澤良一

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竹の春吹かれとてとて天麩羅食ふ 攝津幸彦

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小豆干し光と影の宿場町 岡本眸

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二階への階段暗し鱧尽くし 森田智子

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三人の童女を照らす冬瓦 永島靖子

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軒瓦ゆるみしところ雀の巣 渡辺志げ子

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裏町や窮屈さうに飛ぶ燕  正岡子規

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宮も寺も遠き裏町青銀杏 中村草田男

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2023年2月18日 (土)

武漢で1万人を超えるデモが発生、その原因は?

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武漢で大規模なデモが起きたようです。

「香港(CNN) 中国中部の武漢で15日、今月から施行された地元自治体の公的医療保険制度改革に不満を募らせた高齢者が、抗議デモを展開した。
SNSに投稿された写真や動画には、大勢の高齢者が市中心部の公園に集まり、医療給付の削減に不満の声を上げる様子が映っていた。
デモ参加者が革命歌「インターナショナル」を歌う場面もあった。
警察や政府はこの状況について公式にはコメントしていない。逮捕者が出ているかどうかは不明。大勢の警官隊が映った映像もあり、警官隊が群衆を抑え込もうとしている様子だった。
中国ではデモや不満表明が厳格に規制されているが、生活や環境問題に対する不満が小規模な抗議運動につながることもある。
武漢でのデモはこの1週間で少なくとも2回目。先週SNSに出回った動画には、大勢の高齢者が同じ問題で抗議デモを展開する様子が映っていた」
(CNN2月16日)
武漢の高齢者、医療給付の削減に抗議デモ 中国(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース

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中国・武漢で大規模デモ 高齢者ら医療手当の削減に抗議…無料PCRやワクチンが地方財政を圧迫か(日テレNEWS) - goo ニュース

白紙運動が若者主体だったのに対して、今回は老年層です。
白紙運動が掲げた民主化要求がないといいながらも、スローガンには「反動政府を打倒せよ!」というものまであったようです。
知識階層のデモよりも、一般の国民の大規模デモですから、治安当局にとってはこちらのほうが民衆革命につながりかねないのでやりにくいはずです。
香港や白紙デモに見られた暴力的弾圧を手控えており、戸惑っている様子がうかがえます。
もちろん専制主義国家の公安は、このまま見逃すなんて生やさしいことはしません。
首謀者を追跡して拘禁し、「行方不明」となっていくのが、この国の常道です。

「武漢の医療新政反対デモは、ネットでは白髪革命とよばれています。白紙革命から白髪革命へ。
同じような抗議活動、デモは大連でも起きていたようです。そして、警察がデモ参加者をあとから調べて拘束する準備をしている、という噂。白紙革命参加者の学生、若者たちもかなりの数が拘束されたと言われています。今度は、医療保険改革に不満を訴えた老人たちが「失踪」させられるんでしょうか」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.729 2023年2月18日)

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武漢の何万人もの人々が再び集まり、経済的負担を増やす「新しい医療政策」に反対します—北京語ホームページ (rfa.org)

「デモは15日午後8時すぎから始まり、武漢市内の中山公園のゲートから解放大道を通り、万単位のデモ隊が「団結こそパワー」と叫びながら行進。警察官が行く手を阻むように壁をつくり、何人かのデモ参加者は警察車両につれこまれた。
目撃者の話では、警官隊はデモ隊を中山公園内に推しとどめようとしたという。あたりは警官だらけで、私服警官が公園の門の前に立っていたという。
武漢の医療新政反対デモは一週間前の2月8日にも行われた。8日のデモでは、政府が対応を検討しないならば、さらに大規模デモを行うと予告していた。政府は、政策の一時延期を打ち出し、対応を見せたが、広州のようにはっきりと中止を表明しなかったので15日に再度、デモが起きた。
デモは事前に予告されていたので、市政府は武漢の多くのコミュニティを封鎖したが、多くの人たちがその封鎖を破り中山公園に集結したという。地下鉄の入り口も封鎖され、スマートフォンの電波も遮断され、少なからぬ人が拘束されて、ようやく群衆はちりぢりとなった。
警察は早々に準備できたはずだが、意外にも武力を使った取り締まりは行わなかった。身柄拘束者は多くでたが、比較的穏当な形で取り押さえられていたという」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ) NO.728 2023年2月16日)

大規模デモの抗議の対象は、医療手当ての削減です。
今までは診療費や薬代の支払いの有無にかかわらず、医療保険から個人口座に定額が定期的に振り込まれていましたが、この振込額が大幅に削減されました。
自由亚洲电台(ラジオフリーアジア・RFA)はこう書いています。

「先週の水曜日に続く武漢での別の大規模な大衆デモです。 人々は、政府が毎月260元以上の医療補助金を数十元に引き下げることに抗議した。 市内の200万人近くの退職者がこの動きの影響を受け、政府が彼らの要求に応じなければ、人々は水曜日により大きな抗議を行うだろうと言った。
武漢在住の張海氏は同日、同日、政府が導入したいわゆる新医療政策に退職者が集団で抗議したが、満足のいく反応が得られず、「昨夜以来、多くの人々(政府)が中山公園と寿夷路に行かないように言った」と再び抗議した。 今朝、武漢の多くのコミュニティが封鎖されましたが、ここに集まった後、長江橋に沿って行進する準備ができている多くの人々も出てきました」
(RFA2月16日)

中央の方針を受けて地方政府は今年に入り医療制度を改正しました。
新たな医療政策の悪影響では、退職工だけでなく、普通の市民の医療費への補填も削られており、たとえば、毎月400元の医療保険を支払っている人が、病院にいかず医療費を使わなかった場合、以前なら毎月100元が薬局などで自由に使える医薬品補填として保険用口座に入れらていたそうですが、これが打ち切られました。
要するに、医療保険基金に金がなくなったということです。
カネの切れ目がなんとやらで、中国共産党の支配の源泉は、要はカネです。右肩上がりの経済成長があり、共産党は豊かな生活を保証してくれる、と思えるから自由がなくてもやっていられるのです。
しかし、それがなくなったらどうしますか。それが今です。

武漢当局は必死に医療新政策は長期的に見れば、普通の外来診療の待遇がよくなっている、と言っていますが、SNS上では保険料が値上がりしているのに、支給額が削減された、これでは保険を盗まれたようなものだ、という声が多く上がっています。

そもそもこのような医療保険という国民の生活に直結する重要な政策のルールを変更する場合、自由主義国では政府が勝手にやることは不可能です。
議会の承認が必須で、議会の議論のなかから修正案が出されて、大多数の人の賛同を得られるという仕組みがあたりまえにあります。
しかし中国にないのは普通選挙によって選ばれる議会なのですから、どうしようもありません。

議会に自分たちの不満や要求を代弁してもらうことができない以上、怒りはストレートに行政府に行きます。
だから中国では、なにかというとすぐにデモになり(無許可ですが)、棒切れを持った騒乱に発展します。

では、議会を作ったらいいじゃんと私たちは思いますが、すると選挙をせねばならなくなりますから、共産党が支配できるかどうか分からなくなります。
党首選を要求した党員がバッサリ切られた、どこかの国の共産党のようですね。

ところで習近平はゼロコロナ政策に突っ走り、PCRを無料化し、しかも国民に全員受けることを義務化しました。
そのうえにチャイナワクチンも、いかにただの水だとはいえ安くはないのにこれも無料化ですから、医療基金がパンクして当然でしょう。
日本でもどこぞの首長が人気とりでPCR無料化したあげく、財政難で頓挫した、なんてこともありましたね。

それはさておき、地方政府によってバラつきがあるようで、この医療新政策は広州でも実施されかけましたが、反対の声が大きく中止となったそうです。
しかし中央にヒラメの武漢の政府は、必死になってこの新政策を実施しようとしたあげく民衆革命のようなことになってしまったようです。

武漢の商店主はこう言っていたそうです。

「今日は人が多く、道路が封鎖されたが1万人以上は参加した。それは一般住民にも言いたいことがあるからだ。広州ではこの新政策は棚上げになった。しかし武漢はむりやりやろうとしている。この政策変更は私自身も影響を受ける。私は前々月は百数十元の医療費補助を受けていた。今、病院に行って薬を買って、三甲(3A)病院に行っても50%しか補助されない。しかも受診料700元を別に支払ったあとの医薬品に関してのみだ。」
(福島前掲)

そりゃまぁ、医療保険費を値上しておいて医薬補助費を削減し、病院で処方される薬についても、安くて効果の認められている一般的な薬は適用除外にされれば、そりゃあ怒るわな。
政府は慢性病や特別治療を受ける時に得するようになっているのだ、と説明しても、多くの人は納得しないでしょう。

しかも現在中国では急速な少子高齢化が進んでいます。
その速度は日本以上です。
2025年には、15歳から65歳のいわゆる生産年齢が65歳以上の年齢層より少なくなりますから、安い労賃で外資を呼び込み輸出で儲けるという中国のビジネスモデルは崩壊し、高度成長は急速に鈍化します。
これがどの国も通った「中進国の罠」という現象です。

「中国では1970年代後半から一人っ子政策が実施され、出生率を厳しく抑制する策をとった結果、少子高齢化が急速に進行した。総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が7%を超える高齢化社会から高齢社会(14%)、さらには超高齢社会(21%)への移行は、24年、11年と日本とほぼ同じスピードで到達すると予測されている。
中国における人口構造の変化を見ると、65歳以上の高齢人口に対する15-64歳の生産年齢人口の割合は、2025年を待たずして大幅に減り始め、その後そのスピードは加速度的に進むことになる。
長寿化が進む中で(図表2)、2016年1月の一人っ子政策廃止の効果はまだ見られず、出生率は過去最低の状況だ 」
中国の「2025年問題」-人口、財政、社会保障関係費の三重苦【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(36) |ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp)

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ニッセイ基礎研究所  クリックすると大きくなります。

出生率も、中国の生産年齢人口(15-64歳)のピークは2015年で、以後下がり続けています。

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同上   クリックすると大きくなります。

このような中で、近年、財政収入の伸びは低下傾向にあり、財政赤字は習近平政権となった2013年以降、拡大し続けているようです。

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この社会保障費が急激に増加して、財政を圧迫しています。

「社会保障関係費とは、国による年金、医療といった社会保険や福祉などにかかる経費をいう。中国の一般公共予算支出の項目では、「社会保障・就業」、「医療衛生・計画出産」などが主に該当する。これらの項目を合計すると、2015年の社会保障関係費は、前年比18.5%増の3兆972億元、日本円ではおよそ57兆円規模となった」
(ニッセイ研前掲)

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中国は、財政において、中央と地方が役割分担をしており、国防費は中央財政でほぼ全て支出され、社会保障については、地方政府の財政が多くの支出を割いています。
国民の怒りを買っているこの政府の医療保険改革も、少子高齢化が進めばこのままでは制度がもたないためにやる、というのが本音のようです。

そしてこの医療保険制度の寿命を短くしたのが、習近平のゼロコロナ政策だったようです。
この男は、専制支配こそがコロナを乗り切る最良のやり方だということを世界に見せつけるために、ゼロコロナ政策をやり続けました。
とうぜんのこととして、その反動が出ました。
習はどう総括しているか知りませんが、ゼロコロナ政策は習にとっても高いモノについたはずです。

 

 

2023年2月17日 (金)

トルコ・シリア大地震・救助から支援へ

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トルコ-シリア大地震は4万を突破し、国連は5万人という途方もない犠牲者数になろうとしていると警告してます。

「トルコ南部の被災地を視察した国連のマーティン・グリフィス事務次長(人道問題担当)は11日、死者数は5万人近くに達するとの見方を示した」
(読売2月14日)
トルコ地震、国連「死者数5万人近くに」…氷点下の避難生活 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

現地は氷点下であり、仮に長時間倒れた建物などの下敷きになったまま動けなかった人が救助されたとしても、「クラッシュ症候群」と呼ばれるショック症状を呈して死に至るケースが多いとされます。
身体の一部が長時間圧迫され続けた結果、筋肉からカリウムなどが一気に全身に運ばれ、腎不全や不整脈などを引き起こすようです。

被災者も、適切な避難所に収容されていない場合も多く、コンクリートのがれきに座ったまま放置されていると、身体内部の体温(深部体温)が35度以下となり28度以下になると死亡します。
避難施設も多くがテント生活を強いられており、氷点下で長期間生活することによる犠牲が心配されます。
下の写真は、被災地のジュンダリスにおいて、支援団体が食糧を届けているところですが、ご覧のように工場跡地のような場所に身を寄せ合って暮らしています。

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Mays al Reem(@Mays_al_Rim)さん / Twitter

一方、救助活動は続けられているものの、既に地震発生から1週間が立っており、救助から支援の段階になりつつあります。

「トルコ当局は13日、南部で6日に発生した大地震で、3万1600人以上が死亡したと発表した。また、国連も13日、隣国シリアで5700人以上が命を落としたと発表。死者は両国で計3万7000人を超えた。生存者の救出が相次ぐ一方、地震発生から1週間がたち、一部地域では捜索活動が終了し、がれきの撤去が始まった」
(時事2月14日)
トルコ大地震、救出続くも一部で捜索終了 死者3万7000人超に―シリア、越境地点増設に合意:時事ドットコム (jiji.com)

治安状態は急速に悪化しているようで、一部では強盗や盗みが起きています。
盗みが横行するのは、支援物資が来ないためです。
しかしさらに深刻なのは、食料、医薬品以外の商品が強盗にあっていることで、こういう強盗などの現象が現れ始めると、治安が崩壊し始めていることを現しています。
救出活動が行われる一方、ATMが破壊されたり、商品が根こそぎ奪われたりする略奪や強盗が頻発していて、この1週間で98人が逮捕されています。
治安悪化を理由にドイツの救助隊が撤退しました。

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テレ朝

「“治安悪化”理由に…ドイツ救助隊が撤退
 救出活動が行われる一方、ATMが破壊されたり、商品が根こそぎ奪われたりする略奪や強盗が頻発していて、この1週間で98人が逮捕されています。
 商店経営者:「私の店はここです。裏から入って来て、引き出しから7万トルコリラ(約49万円)の現金を盗んで行きました」 住民による自警団が疑わしき人物を血まみれにしています。(略)
こうした治安悪化を理由に、ドイツの救助隊は撤退を決めたということです」
トルコ大地震 “182時間ぶり”に子ども救出も…“治安悪化”でドイツ救助隊が撤退(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

被災地での強盗のような犯罪は、わが国では考えられないだけに(それもそれで世界的に希有なことのようですが)、救援リソースをこのような治安維持に回さねばならないことがなんともやりきれません。

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読売13日、トルコ南部アンタキヤの市街地で、治安悪化に伴い警戒する軍兵士ら

「多数の建物が倒壊した南部アンタキヤでは地震後、損壊した建物の店舗などから金品が盗まれる事件が相次ぎ、発砲事件も起きた。
中心部で乳製品店を営むヤクープ・クシャクさん(52)が13日、地震後初めて店を訪れると、ほとんどの商品のほか、事務用のパソコンもなくなっていた。「みんな腹をすかしているので食品がなくなるのは仕方ない。でも、パソコンまで盗まれるとは。全く油断できない状況だ」と嘆いた。
治安悪化を受け、アンタキヤでは、倒壊した建物で救助活動にあたっていた軍兵士らが、通りごとに巡回を始めた。装甲車も配備されていた」(読売2月14日)
トルコ被災地で治安悪化、16万人が他地域に避難…「手抜き工事」責任追及も:写真 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

今までどこに行っていたのかと思われていたトルコ軍がようやく被災地に登場したようですが、任務は治安維持が主なようです。

一方シリアの被災地の状況に至っては、どうなっているのかさえ掴めてていませんでしたが、ニューヨークタイムズは、なんとご機嫌な様子のアサドについて伝えています。

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NYT

「10年間彼を避けていたアラブの指導者たちは、電話を取り、電話をかけた。国連の高官が彼の事務所を駆け巡り、支援を提供し、写真を撮った。ロシア、イラン、中国などの同盟国だけでなく、以前はアルアサド氏を倒そうとしている反政府勢力に援助(と武器)を送っただけだったサウジアラビアもそうだ。
十数カ国からの大量の援助も到着した」
シリアのアサドは災害外交を利用して世界の舞台に戻る-ニューヨークタイムズ (nytimes.com)

シリア内戦中において、自国民を残虐に爆撃し拷問したことで長い間国際社会から制裁を受けてきたアサド政権にとって、世界からの同情、援助ほどおいしい果実はなかったようです。
アサドはこれを踏み台にして、制裁を解除させ、国際社会に復帰しようとしています。
シリア国民の震災被害は、アサドには念頭にはまったくないはずです。
潰れたビルや破壊され被災地で苦しんでいるのは、アサドから見れば汚らわしいクルド人の反政府派だからです。
むしろ死んでくれたほうが、爆撃する手間が省ける、支援物資は全部オレのものだ、とさえ思っているでしょう。

シリアでは、軍が自分の倉庫に支援物資を集めてしまったことが報告されています。
被災地への救援は本来はシリア国内から行われるべきですが、被災地域がクルド人支配地域のために放置されたままになっているようです。
やむをえず国際機関がトルコからの救援ルートを拓いています。
3本のトルコからの救援物資搬入ルートをアサド政権が許可したと、国連は喜んでいるようですが、トルコルートの国境検問所はすべて反アサド勢力が掌握しているところですよ。
アサドはなにもしていません。

「国連の声明によると、ダマスカスは「人道援助のタイムリーな配達を可能にするために、トゥルキエからシリア北西部へのバブアルサラームとアルライーの2つの交差点を最初の3か月間開放する」ことに同意したと述べています。一週間遅れましたが、大きな安堵です」
Emma BealsさんはTwitterを使っています

広範囲に被災地が分散し、交通と情報インフラが破壊されたことが、いっそう救援を困難にしています。

日本は物的支援だけではなく、耐震建造物のノウハウや、大規模災害時に備える軍についても情報提供すべきでしょう。
エルドアンが聞く耳を持てばですが。

2023年2月16日 (木)

河野太郎大臣、電力会社を叱る

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河野太郎大臣が、消費者担当大臣のご威光で、電力会社を叱ったそうです。

「河野太郎消費者担当相は13日、家庭向け規制料金の値上げを申請している東北、中国、四国、沖縄の電力4社からヒアリングを行った。電気料金の値上げ認可は経済産業省の所管だが、消費者庁とも協議が必要なためで、大臣自らがヒアリングするのは異例という。
4社は顧客情報の不正閲覧が相次いで指摘され、中国電力はカルテルを結んだとして課徴金納付を命じられる見通し。河野氏は冒頭、「効率的にコストを減らしているか、しっかり見極めなければならない」と発言。各社から再発防止策について話を聴いたという」
(時事2月13日)
河野担当相がヒアリング=値上げで電力4社から―消費者庁|ニフティニュース (nifty.com)

河野さん、なにをしているのやら。
なにが「効率的にコストを減らしているか、しっかり見極めなければならない」だ、コストカットが限界だから値上げ申請しているんでしょうに。 くだらないパーフォーマンスは止めなさい。
今、電力会社を悪者に見立てて何になるのですか。

電気料金が上がってしまうのは、カルテルを結んでいるからではないし、なにかよからぬカネ儲けをしているからでもありません。
要は、原発を止めて、原油が上がり続けたシワ寄せが来ているだけのことです。

河野氏は有名な脱原発派ですし、そのことはとやかくいうつもりはありませんが、今の電力会社の窮地をご存じですか。
それはウクライナ戦争の余波で原油価格が高騰したからです。
しかし、電力会社は原発という今まで3割を依存してきたエネルギー源を止められ、そのうえに7割を依存していた化石燃料が高騰、これじゃあどうしようもありません。

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原油市場他:ロシアのウクライナ侵攻に伴うロシアのエネルギー供給に対する懸念の高まりにより、約13年半ぶりの高水準へと上昇する原油価格|JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト

化石燃料は、ウクライナ戦争によるロシア原油の輸入制限と、OPECの減産により一時は1バレル120ドルを突破しました。
いつもは60ドルを超えると高騰だと騒いでいたのですからその倍では、話になりません。

「2022年2月2日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合では、2021年7月18日に開催された当該閣僚級会合で決定した方針に則り、3月のOPECプラス産油国減産措置の規模を前月比で日量40万バレル縮小する旨決定した。
当初予想された程には新型コロナウイルスオミクロン変異株感染者の入院確率及び重症化確率が高くないとの見方が市場で広がったことに加え、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの対立の高まりに伴う、ロシアからの石油供給途絶懸念等により、1月3日に1バレル当たり76.08ドルの終値であった原油価格(WTI)は2月1日には同88.20ドルの終値となるなど概ね上昇傾向となった」
(石油天然ガス資源情報2022年3月14日)

当然のことながら、これは原発停止以降化石燃料に依存していた日本の電力会社を直撃します。


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日本全体の電源構成(2021年速報) 出所:電力調査統計などよりISEP作成

「化石燃料による火力発電の年間の発電電力量の割合は71.7%で、前年の74.9%から減少した。石炭の割合は26.5%、LNGは31.7%で化石燃料はいずれも減少傾向にある。原子力発電は5.9%となり、前年の4.3%から増加した」
(環境エネルギー政策研究所2022年4月4日)
2021年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報) | ISEP 環境エネルギー政策研究所

たとえば関西電力は投資家向け資料でこう述べています。

2022年度の見通し
収入面では、電灯電力料収入が増加することなどから増収を見込んでおります。

一方、支出面では燃料価格の高騰や、それに伴う市場価格の上昇に加え、原子力利用率が低下することなどから、燃料費や他社販売電力料の増加を見込んでおります。
業績見通し|個人投資家のみなさまへ(関西電力グループについて)|株主・投資家のみなさまへ|関西電力 (kepco.co.jp)

売り上げがコロナ下で減収しているのがわかります。


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関西電力

一方、計経常利益も赤字に転じています。

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関西電力

かろうじて、電力他社への助っ人供給で凌いでいるのが現状です。
この傾向は今に始まったことではなく、福島第一原発の事故後、カン政権の2013年9月以降の「全原発停止のお願い」により稼働が順次停止されることから始まりました。
名目は検査と厳格な安全基準を設定し、これを実施するためでしたが、原子力規制委員会に原子力に懐疑的な田中委員長が座り、彼が設定した安全基準は当時電力会社がこれをクリアするのは経営的に不可能とさえいわれていたものでした。

しかしその思惑を乗り越えて、2015年8月から少しずつ一部の原発が稼働を再開しましたが、日本はこの2年間すべての原発が停止に追い込まれていました。
電力会社は原子力の30%の穴をふさぐために、化石燃料に頼らざるをえませんでした。
このことによって電力会社はの経営は悪化の一途を辿り、国富は流出していきます。

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2016年4-6月期の電力会社各社の決算
電力会社の業績悪化が第1四半期から始まった、7社が営業利益を減らす:電力供給サービス(1/2 ページ) - スマートジャパン (itmedia.co.jp)

「電力会社10社の2016年4-6月期の決算がまとまった。売上高は10社合計で前年比12%減、営業利益は29%減に落ち込み、第1四半期から苦しい状況でスタートを切った。10社のうち7社の営業利益が減少する一方で、原子力発電所を再稼働させた九州電力は167億円の大幅な増益を果たした」
(スマートジャパン2016年8月1日) 

ここで目を引くのは、原発が動かせない電力会社と、なんとか一部の原発を稼働できた九州電力との収益の開きです。
原子力依存率が高かった関西電力はマイナス4.9%に対して、稼働に漕ぎ着けた九州電力は3.7%の黒字でした。

そして円安がこの経営難にかぶりました。
今はひとつの会社、あるいは業界でどうなるという問題ではありません。
むしろ今の時期は電力会社を国が支援すべき時なのです。
それを河野さんときたら、メリハリってもんがあるでしょうに。今は締めつける時ではなく、支援を送るときですよ。

 

 

 

2023年2月15日 (水)

大丈夫なのか、屋那覇島中国人買収

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屋那覇島が中国人に買われたそうです。
村有地もありますから全部ではありませんが、買収したのは実は中国人で、日本企業名義で法人代表も日本人でした。
つまりはトンネルでチャイナに買われてしまったようです。

バレたのは、当の中国人女性が「日本の島を買った」と得意気に触れたからで、これがなければわからないところでした。
買ったのはこの女性。

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安全保障上危険な土地の売買を監視する重要土地等調査法の盲点は、このトンネルで買われるとわからないと言われていましたが、案の定、今回も伊是名村役場も議会も知らない内に中国人に買われてしまっていたようです。
屋那覇島は与那国から奄美まで伸びる第1列島線上にあり、現在自衛隊が対艦ミサイル部隊を配置する計画の近くにあります。
また米軍基地の要である嘉手納基地まで直線で60キロですから、ここに密かにDF15B短距離ミサイルでも持ち込まれれば、本島と奄美が丸ごと射程範囲に入ってしまいます。

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中国の弾道ミサイル配備は質・量ともに北朝鮮とは桁違い | TOKYO EXPRESS

位置を確認しておきましょう。屋那覇島はここにあります。

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中国女性「沖縄の無人島を購入」  - Miyanichi e-press (the-miyanichi.co.jp)

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Google Earth
クリックすると大きくなります。

沖縄本島の北西の伊是名島の近くにある0.74平方キロキロの無人島です。

かつて米軍が補助飛行場を作っていたこともありますが、今は村有地と競売にかけられて、今回中国人に買われた土地に分かれています。
もう少しGoogle Earthで寄るとこういうかんじ。

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Google Earth   クリックすると大きくなります。

通常は伊是名島から水上タクシーで渡りますが、東シナ海側からも接近できそうです。
中国が悪意をもってこの島を利用するなら、まずは民間企業をよそおって日本人を立入禁止とし、密かに東シナ海から分解したミサイルの部品を搬入することも可能です。
この島に軍港はできないよと言う人もいるようですが、そんな大規模なものは要りません。
なんらかの方法で沖にデポされた資材を、沖から島に持ち込む船着場程度のものでよいのです。
島の東側は上陸が楽そうな浜辺が続いています。

岸田政権はとんと危機感がないようで、重要土地等調査法の範疇ではありません、というのが官房長官の答えです。

「松野:まずお尋ねの離島についてでありますが、重要土地等調査法は、領海基線を有する国境離島および有人国境離島地域離島について、その機能を阻害する行為の用に供されることを防止するため、国境離島および有人国境離島地域離島の区域内にある土地・建物の利用状況の調査を実施し、機能阻害行為が認められた場合に規制を行うものであります。
ご指摘の屋那覇島は領海基線を有する国境離島または有人国境離島地域離島に該当するものでないことから、本法の対象とはならないものであります。
屋那覇島を中国資本が買収「重要土地等調査法の対象外」松野官房長官会見2月10日

まぁね、そういう杓子定規な話ではなく、外国資本が身元を隠蔽して、沖縄本島のそばの無人島の大部分を取得したということが問題なんですがね。
しかもその無人島には使い道がない、調べようともしないで、規制の対象ではございません、の官僚的ひとことで片づけてしまうのがコワイのです。

そもそもこの重要土地等調査法はザル法です。
第1に、規制区域が限定的で、現実にこの十数年で最も多く買収されてしまった森林・農地が直接の調査区域に入っていません。

そして第2に、仮に規制対象に入っていたとしても、土地利用について国が調査するといっても強制的な立入調査はできません。
第3に、それで安全保障上問題だとわかっても、買収の撤回や土地収用にまで不可能です。
つまりはこの規制法は空テッポウ。紙に書いてあるだけの法律で、現地調査も収容もできないのです。

これを知ってか、中国SNSは、「中国領が増えた」とはしゃいでいるようです。
馬鹿ですか。わきゃないでしょう。

いくら地面を買っても領土権は当該国のもので、いわば利用権を買ったようなもので、あんたらの領土は増えません。
かつてバブル期に、日本はカネにあかせてマンッタンを買い漁りましたが、だからといってニューヨークに領土が増えたわけではないのと一緒です。
いまでも東京のタワマンや北海道の土地を中国資本が買っていますが、それは円安で値頃感があるからで、しょせんは投機目的です。
これを中国の侵略だというのはややオーバーで、領土拡張をしたいからではありません。

ただ、不安が残るのは、中国人は中国人以外立入禁止にできる土地を戦略的に買い占めていることです。

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日経

「中国企業がアジアやアフリカの土地を囲い込んでいる。国外で過去10年に取得・貸借した面積を集計すると、米国をはじめ他の主要国を圧倒する。食糧や資源の供給源である新興国・途上国が経済的に支配されることへの懸念や安全保障上の警戒論も高まっている。
ミャンマー北部カチン州。市街地から離れるとバナナ農園が視界に広がる。高さ3メートルほどの木が密集し、濃い影を落とす。2015年ごろから開発が加速し、見通しだ」
(日経2021年7月11日)
世界の土地囲う中国 農業・鉱業、10年で600万ヘクタール: 日本経済新聞 (nikkei.com)

たとえばこのミャンマーの事例は、中国資本が農産物を生産するために大規模買収をしたケースです。
中国資本から見れば、ミャンマーの土地は二束三文であり、現地住民を低賃金労働で使役すれば莫大な富を生むと考えているようです。
同時期に一帯一路で、港湾を抑えており、そこから海路で中国に運ぶようです。

この中国資本の農地買収と一帯一路はひとつのものです。
背景には中国-ミャンマー間では、重要な経済プロジェクトが動き出しています。

「スーチー国家顧問兼外相が17年12月1~3日に中国を訪問した際、習近平国家主席との間で「中国・ミャンマー経済回廊」に合意した。
これは、中国の昆明(雲南省)と、ミャンマーのチャオピュー(ラカイン州)やヤンゴンを鉄道や高速道路で結ぶ構想だ。
中国側の高速道路は既に開通しているが、ミャンマー側は山岳地帯の難所が多いため、時間がかかっている。中国と同水準のインフラ実現には巨費が必要で、中国側からの借款で賄われるとみられる」
(2月4日『ミャンマーが欧米に圧迫されればされるほど我が方に近づいてくる――中国「内政不干渉」という沈黙のルール』 西岡省二)
https://news.yahoo.co.jp/byline/nishiokashoji/20210204-00220959/

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試される一帯一路「債務の罠」の克服――中国-ミャンマー経済回廊の建設状況から考える(石田 正美) - アジア経済研究所 (ide.go.jp)

こうなるともはや植民地化といってもいいでしょう。

また中国は、オーストラリア・クイーズランド州のケスウィック島で、実質中国領にしてしまったケースもあります。

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ゴゴ通信

「不動産会社チャイナブルームは、「立入禁止」の看板を立て国立海浜公園に通じる道を封鎖して住民の出入りを遮断した。従来のボートの傾斜路の利用を禁止した代わりに、めちゃくちゃに設置した新しいボートの傾斜路だけを開放した。
民間や商業用飛行機の飛行場への出入りも阻止し、島への出入り困難にした。住民は突然島に閉じ込められた捕虜同然の身になってしまった。ある住民は「島に閉じ込められた気分だ。ボートのない住民は往復2600豪州ドル(約20万円)を払い、ヘリコプターに乗らない限り行き来ができない」と訴えた」
オーストラリアの綺麗な島が中国企業に買収されめちゃくちゃに 観光客や住民を締め出す 住民「綺麗な島が中国共産党の物になった」 | ゴゴ通信 (gogotsu.com)

このようなことを中国は世界で展開していて、屋那覇島もそのワンシーンだということです。

では、外資による土地買収について、世界の政府の規制はどうなっているでしょうか。
当の中国は外資の土地取得を認めていません。自分は買いあさるが、自分の土地は買わせない、見事なダブスタです。
インドネシア、フィリピンでは外国人の土地所有は不可です。
インド、シンガポール、マレーシアでは制限付きで、韓国も外資は島嶼地域等の海岸部の取得には、許可が必要です。
米国もハワイ、アラスカなど四割の州で規制しており、2020年2月からはCFIUS(対米外国投資委員会)の審査対象として不動産投資が加わりました。
スイスには連邦法よって、土地の「過剰外国化を阻止する」とまで明記されていて、無許可の取引は無効で登記不可、届出違反の土地は没収という強制措置ができます。
グローバルスタンダードでは、国家として「買われてしまうと国益を損なう物件」は売ってはならず、仮に売られたら政府が没収できるのです。
やっとできた重要土地規制法すら、日弁連から朝日、毎日の皆様は、こう仰せでした。

「最大の懸念は、調査が際限なく広がる恐れがあることだ。国会のチェックは及ばず、政府のさじ加減ひとつでいかようにもなる」
(朝日新聞2021年4月3日)
「妨害工作を防ぐ安全保障上の目的というが、私権を侵害し、正当な経済、活動も制限しかねない危うさがある」
(東京新聞4月7日)

はいはい、特定秘密法についても、居酒屋でオスプレイの話ていたら翌日公安が来て引っくくられる、治安維持法の復活だなんて言ってましたね、朝日さん。そうなりましたかね。
各国がどういう外資の土地規制をしているのか、ちっとは知ってから書きなさいよ。

今回の屋那覇島買収について伊是名村役場も議会もまったく知らないところで進行しているらしく、この中国人企業の目的次第で、地元とのトラブルになるかもしれません。
かつても養殖場開発が環境破壊になるというので村民の反対が起きて失敗に終わり、かといってレジャー施設にするのも難しいところだからです。
村が反対した場合、電気水道その他インフラを伊是名村からもらっているために、一から作る必要があるので、一企業には無理です。
となると、中国の国有企業とか出張ってくるのではないか、といった不安も当然出てくるでしょう。

ちなみに沖縄は日本一島数が多い県で、実に160、有人島は47島、無人島は113島(平成30年1月現在 ) あります。
今後第2第3の屋那覇島ができてしまう可能性があります。

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離島の概況について/沖縄県 (pref.okinawa.jp)

このように多くの沖縄の無人島を、中国資本が密かに買収していたらゾッとしませんか。
しかし残念ですが、現時点では危険を感じても外資の土地買収を防ぐ法律はありません。
基地周辺でもないかぎり重要土地調査法には抵触しませんし、仮にしたとして警察も周辺住民に聞き込みをするだけです。
立ち入り調査ひとつできないし、犯罪的行為が発覚しても所有権を没収できないのが、この国だからです。

 

 

 

2023年2月14日 (火)

独裁政権が放置した地震対策


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マグニチュードスケールで7.8の大地震は、あらゆる種類の建物を平らにし、トルコ南部とシリア北部で何万人もの人々を殺しました。
おそらく死者は5万人を超えるとみられています。

そしてこの悲劇を拡大しているのは、この両国が独裁国家だからです。

トルコはNATO加盟国で唯一の独裁国家で、一方シリアは自国の国民をロシアに爆撃させるような国です。
ウクライナ戦争で、NATOとロシアを天秤にかけて、漁夫の利をはかったのは、トルコ大統領レジェップ・タイップ・エルドアンでした。

ウクライナ戦争におけるロシアの虐殺を検証し続けてきた「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)は、トルコに対してこう述べています。

「エルドアン大統領が先週、女性に対する暴力と家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約からトルコを脱退させたことを受け、トルコが「前例のない」規模で「人権保護を破壊している」と非難した。
この動きは、トルコの検察長官が、野党である親クルド派の人民民主党(HDP)を、「国家と国との不可分の一体性に反する行為」をしたとして活動停止にする計画を発表したことを受けたもので、全国の都市で党員の逮捕が相次いる中での出来事だ」
HRW:トルコは「人権保護を破壊している」|ARAB NEWS  

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インタビュー:トルコ大統領、軍再編を表明 「新たな血を送る」 | ロイター | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

2016年7月 、エルドアンはクーデターを利用して、徹底した反政府狩りを行いました。
反政府的意見を持つとされた5万人以上の人士は、政府内、官僚、民間を問わずパージを受けて逮捕監禁され、公職を追放されました。
特に大きな政治的力であったトルコ軍は、徹底した再編を迫られ、骨抜きになりました。

また、55議席を有する第三党である国民民主主義党(HDP)は、クルドを代弁したとして政府から非合法化を要求され、去年3月17日には最高検 察庁が憲法裁判所がHDPの解党を申請しました。
同時に、HDP所属の議員一人が「テロリストのプロパガンダを広めた」として議員資格を剥奪され、HDPの地区幹部など関係者約20人が当局に拘束されています。
立法府における発言は万全に保証されねばならないにもかかわらず、クルドの立場に理解を示したというだけて解党を宣告されたのです。

また、そしてエルドアンは大統領令を発し、イスタンブール条約からの離脱を宣言しました。
LGBTが伝統的トルコの価値観に合わないという理由ですが、同性愛者は逮捕拘禁の対象にするということです。
これに対しても国連やEUが離脱の撤回を要請したものの、トルコ当局は同条約について、トルコの価値観とは相容れない同性愛を正当化しようとする集団に乗っ取られたという声明文を公開し、離脱を正当化しました。

さすがに見かねた米国務省プライス報道官は、この弾圧について、トルコの有権者の意思を不当に覆し、民主主義を揺るがす、と批判しています。
わが国では、トルコやイランを「親日国」として特別視する傾向が根強くあります。
しかしイランは平然とわが国のタンカーを攻撃しましたし、北朝鮮と核兵器開発と弾道ミサイルの密輸で刎頸の仲です。
トルコについて評論家の石川和彦氏は、エルトゥールル号事件の美談を引き合いに出して両国の「友情の絆」を謳い、自衛隊をトルコに派遣することを提案していますが、人が良すぎるというものです。
トルコは日本なんぞより中国、ロシアのほうが100倍も好きですし、そもそもトルコ軍が災害派遣されていないのに、自衛隊が行ってどうします。

さて倒壊したビルは人々を押しつぶしたまま救助の手が届かない、被災者は露天でたき火で暖をとり、路上でザコ寝といった状況が頻発しています。
食料、燃料、テント、寝袋などの支援物資は届く気配もありません。

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(25) トルコ南部大地震 死者2万4000人超 氷点下での路上生活も - YouTube

こういう時に、もっとも巨大な救援の力となるべき軍隊はどこに消えたのでしょうか。
トルコ軍を待っても無駄です。
トルコ陸軍の規模は48万名とNATO最大規模で、しかも地震大国でありながら、指揮系統や作戦研究として大規模災害を初めからなにひとつ考えていないからです。
我が国では阪神・淡路大震災の苦い事例に学んで、大規模、広域災害に対してはただちに統合任務部隊司令部を設置し、被災地の状況を把握しし、必要な支援と専門レスキュー部隊の投入、翌日には全軍をあげての救援体制に移行することでしょう。
日本の被災地で自衛隊を見ない時はありません。
被災地で自衛隊の姿を見ただけで、国民はああ助かったと思えるほどです。
(25) 日本の自衛隊に捧げます(制作・提供:在日米軍司令部広報部) - YouTube

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画像・写真 | 自衛隊 東日本大震災ほか災害派遣活動 1枚目 | ORICON NEWS

しかし同じ地震大国でありながら、トルコでは軍隊はとんだデクノボーでした。
大災害に直面してもなすすべを知らず、貴重な「生存のための72時間」を失いました。

またエルドアンが極端な中央集権化してしまったために、個々の都市の消防や警察などの救援組織の活動に制限がかかり、まとまった救助対応ができないでいるようです。
ハタイ県の騒乱をみると、トルコ軍は治安維持だけには出動しているようです。

「トルコ南部ハタイ県では、実体不明のグループ同士の衝突が起きているとして、オーストリア軍が11日、捜索活動を一時停止した。同軍は「トルコで派閥間抗争が激化している」とした。
国際捜索救助団体ISARのドイツ支部と、同国の連邦技術救援庁(TSW)も、安全への懸念から活動を一時停止した。ISARは、「異なる派閥間の衝突に関する報告が増えており、発砲も起きている」と説明。食料、水、希望が減るにつれ治安が悪化することが予想されるとした。
オーストリア国防省によると、同国軍が救助活動を停止した数時間後にトルコ軍が警備を提供したため、活動を再開できるようになったという」
(BBC2月12日) 
死者2万8000人超、治安悪化で救助活動に支障も トルコ・シリア地震 - BBCニュース

他国の軍救助隊を守るのがトルコ軍の仕事のようです。恥ずかしくないのか。

多くの救助現場では、近隣住民自らがボランティアの救急スタッフと共にけが人を搬出する風景が普通に見られます。

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トルコM7.8地震 未明の揺れと救助阻む雪 暗闇の中、がれき運ぶ住民|【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)

日本なら自衛隊、消防、警察が連携して救助に当たるでしょう。
下は21年7月の熱海の土砂災害の救援風景ですが、いち早く合同レスキュー組織が組織されて整然と救助に当たっています。

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熱海土石流1週間経過 新たに1人の身元判明:中日新聞しずおかWeb (chunichi.co.jp)

さてこの大地震で、エルドアンは微妙な位置に立たされています。
4万人に達する死者数と、余りに遅い政府対応に国民が怒り心頭だからです。

「トルコ南部を震源とする地震をめぐり、国内でエルドアン政権の責任を追及する声が出ている。災害への備えが不十分だったために初動対応が遅れて被害が拡大したとして、被災者や野党幹部らが批判を強めているからだ。トルコでは5月14日に大統領選が行われる予定で、再選を目指すエルドアン氏は厳しい立場に追い込まれつつある」
(産経2月10日)
エルドアン氏、トルコ地震被災拡大で批判高まる 5月の大統領選に影響 - 産経ニュース (sankei.com)

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ロイター

しかし、エルドアンはさすがに中東風独裁者です。
むしろ「今は団結すべきときだ」と述べ、政権批判は好ましくない、流言飛語を流す者は逮捕してやると息巻いています。
ここでいう「流言飛語」とは、独裁者エルドアンへの批判です。
震災後、支援を送るより先にやったのは情報の遮断ですから、見上げたものです。

「AFP通信によると、マグニチュード(M)7・8の地震があったトルコで8日、ツイッターの閲覧が遮断された。ツイッター上には政府の震災対応の不備を指摘する投稿が出回っており、タイップ・エルドアン政権による情報統制との見方がでている。
トルコでは、エルドアン大統領に批判的な記者が拘束されるなど、表現の自由が著しく制約されている。今年は大統領選が控えていることもあり、政権への風当たりが強まることを警戒し、ツイッターが遮断された可能性がある。ただ、ツイッターは、災害時の情報発信手段として有効なため、野党は、「被災者のニーズを伝えるのに必要」などと反発している」
(読売2月9日)
トルコ地震でtwitterの利用が制限、対応の不備指摘を封じ込めか : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

そもそも震災に対してこれだけ無防備だったこと自体がおかしいのです。なぜなら、トルコは2018年のトルコ北西部大地震以降「地震税」を徴集しているからです。

「18年にトルコ北西部で000,1999人以上が死亡した壊滅的な地震の後、当局は数十億ドル相当の防災と救援を囲い込むことを目的とした地震税を課しました。
「彼らは仲間の手のひらに地震税を塗っています」と野党党首のケマル・キリッチダログルは言います。「そのお金はどこにありますか?なくなってしまったのです」
オゼル氏は、今週の地震への対応において、それは単に「政府側の準備に関するほぼ完全な無能さ」ではないと言います。「さらに悪いことに、それが可能だったとしても、政府は他の組織、市民社会、市民自身、市長や自治体が実際に支援することをほとんど不可能にしています」と彼は言います」
As Turkey earthquake deaths rise, so does criticism of Erdogan government : NPR



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BBC

そして2018年に改訂された耐震基準があるといっても表向きなだけです。


「しかし、2018年に設定された最新の基準を含む法律は、十分に施行されていません。
「問題は、既存の建物の改修がほとんど行われていないことですが、新しい建物に対する建築基準の施行もほとんどありません」とアレクサンダー教授は言います。
BBCの中東特派員、トム・ベイトマンは、南部の都市アダナの人々に話しかけ、そこで倒壊した建物の25つは別の地震で損傷したが、適切な改造なしで残されたと述べた」
トルコ地震:なぜこれほど多くの建物が倒壊したのか?- BBCニュース 


なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
もちろん、耐震基準かできる前までの建物の多くが、昔ながらのレンガを積んだだけで鉄筋がない建造物だったこともあります。
しかしそれでは新しいたてものまでがパンケーキクラッシュした原因が説明できません。
実はその理由は、一定額のカネを国に納めれば耐震基準を値切ってくれる「耐震免除」という奇怪な制度があるからです。



「トルコでは、政府は定期的な「建設恩赦」を提供しており、必要な安全証明書なしで建設された構造物に対して、料金の支払いに対する事実上の法的免除を提供しています。これらは1960年代から可決されています(最新のものは2018年)。
批評家は長い間、そのような恩赦は大地震の際に大惨事の危険があると警告してきました。
トルコ南部の地震地帯全体で最大75,000の建物が建設恩赦を受けたと、トルコ技術者会議所および都市計画者の建築家会議所のイスタンブール長であるペリン・プナル・ギリトリオール氏は述べています」
(BBC前掲)
笑い話のようですが、この大震災のほんの数日前に、トルコでは耐震基準のさらなる恩赦を与える「建設恩赦」案が議会の承認を待っていたのです。
その意味で、このトルコ-シリア大地震は、巨大な天災であるのは事実としても、独裁国家で起きた独裁国家特有の「人災」だったのです。
違法建築をした百十数名を逮捕したと現地メディアはデカデカと報じていますが、まさにトカゲの尻尾切りとはこのことです。

2023年2月13日 (月)

トルコ大地震、地震多発国なのになぜ?

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トルコ-シリア大震災で被害に合われた方のご無事を祈っております。
わが国の支援物資は、厳冬に震える被災者の手に少しでも早く届けられねばなりません。
現時点で、トルコ南部を震源に発生したこの大地震で、トルコとシリア当局などによると、両国で確認された死者は12日、計3万3千人を超えたと報じられています。
おそらく4万に達するでしょう。
トルコ地震、死者3万人超え さらに大幅増か、発生7日目 | 共同通信 (nordot.app)

さて、今回のトルコの状況を見て、驚かされたのはその建物の倒壊の多さとすさまじさでした。
建物の倒壊が発生した都市は7ツもあります。

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【詳報】トルコ大地震 死者1万7000人 72時間以降に救出も | NHK | トルコ大地震

震源地と重ねてみると、この建物の倒壊は地震が発生した線に沿って発生しているのがわかります。

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BBC

しかも下のBBCがドローンで撮った被災地ハタイの画像のように、一区画が丸ごと倒壊したために下敷きで何百人が下敷きになっているのか想像すらできないケースが報告されています。

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被災地ハタイの惨状、上空からドローン撮影 トルコ・シリア地震 - BBCニュース

現代建築技術では防げるはずのパンケーキクラッシュさえ多く見られています。
これは上層階が垂直に下の階を押しつぶす最も危険な現象で、住民は助かりません。

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NHK

「トルコで調査の経験がある東京大学地震研究所の楠浩一教授は、今回の地震による建物の被害について「低層から中層に至るまで多様な建物が倒壊している。中でも柱が瞬時に強度を失い、建物全体が真下に折り重なるように崩れ落ちる『パンケーキクラッシュ』と呼ばれる非常に危険な壊れ方がいくつかの地点で起きている」と指摘しています」
(NHK2月8日)
「パンケーキクラッシュ」で被害拡大か トルコの大地震 | NHK | トルコ大地震

またいかなる理由なのか、軍隊が災害派遣に投入するのが遅れているようです。
被災後、住民が倒壊した建造物の瓦礫に近づくことすら厳しく禁じられねばなりません。

気持ちはわかるのですが、救出しようとしたりすれば、2次災害が引き起こされるからです。
しかし今回は、各地で倒壊したビルの瓦礫に住民らがツルハシで挑んでいる姿が多く見られています。
こんな風景は日本で見たことがありません。


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トルコの被災地アンタキヤ、区画が丸ごとがれきに BBC記者報告 - BBCニュース

精強と言われた65万のトルコ軍は、いったいどこに行ってしまったのか。
この地震で壊滅したシリア国境付近の地域は、クルド人が多く住む地域です。
クルド人は独立を求めて、トルコ政府やシリアと戦い続けてきました。
トルコ軍は再三に渡ってこのクルド人地域に軍事侵攻しており、激しい戦闘が交えられました。





ロイター

上の写真は、反体制派の拠点のひとつであるシリア北西部ジンダリスの9日の状況を伝える貴重な写真です。
シリア側からはアクセスできず、トルコからのルートも閉ざされているために、その状況すら判明していません。
むしろアサド政権は、国際社会の救援を妨害しているようです。
黒井文太郎氏によれば,アサド政権は国際社会の救援物資を中抜きし、さらにはこの機会に半政府勢力支配地域に軍を入れたいという思惑もあるようです。
逆に反政府勢力が、このアサド政権の政治利用を恐れて救援物資を通さないという情報も出ています。

とまれ、シリア側の被災地は、完全に反アサド勢力の拠点地域に入っているために、救援どころか故意に放置されているようです。

「反体制派地域で救助活動にあたる民間団体「シリア民間防衛隊(ホワイト・ヘルメッツ)」のトップ、ラエド・サレー氏は本紙に、「人命救助に必要な機材がない。貴重な時間が失われている」と語った。
シリア民間防衛隊によると、北西部の反体制派地域では2037人が死亡、2950人が負傷した。全・半壊した建物は約1700棟に上る。数少ない医療機関には負傷者が次から次へと運び込まれているという」

(読売前掲)

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シリアの地震援助は強硬派グループによって保留されている、と国連は言う|ロイター (reuters.com)

上の写真は、シリアの反政府勢力が支配する町ジャンダリスです。
シリア軍が被災地を爆撃したという未確認情報も伝えられています。

「英スカイニュースは7日、シリアのアサド政権軍が6日の地震発生直後、反体制派勢力が支配する地域を空爆したと報じた。攻撃されたのは地震で被害を受けたシリア北部アレッポ県マレアで、英下院外交委員長のカーンズ議員は「実に冷酷で凶悪な攻撃」と非難。クレバリー外相も、「まったく容認できない」とアサド政権を批判した。空爆による犠牲者の有無など詳細は不明」
(毎日2月8日)
シリア・アサド政権軍、被災地空爆か 英外相ら批判「実に冷酷」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

にわかには信じがたいニュースですが、トルコ軍の不活発な救援活動を状況をみると、なにかしらの政治的な影があるのは間違いないでしょう。

ところで、今回のトルコ大地震の不思議さはこれだけではありません。
今回のトルコ大震災の被害規模は、東日本大震災を既に上回っていますが、そのマグニチュードスケールは7.8と7.5にすぎません。
あえて「すぎない」と言わしていただきます。それはそのマグネチュードに比してあまりにも被害が大きいからです。

私たち日本人が経験した最大級の地震はいうまでもなく、東日本大震災でしたが、マグニチュード9.0、震度7でした。
マグニチュードが「1」違うと、地震のエネルギーは30倍も違います。

トルコの震災がマグネチュード約8とした場合、見かけは0.8倍ですが、実は30倍の大きさになります。

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気象庁  震度とマグニチュード (jma-net.go.jp)

同じマクネチュード8だった2003年9月の十勝沖地震と比較してみましょう。
十勝沖地震の被害はこのようなものです。

「この地震により,北海道及び東北各県に被害が発生し,行方不明者2名,負傷者849名,住家全壊116棟,住家半壊368棟,住家一部破損1,580棟,床下浸水9棟の被害が発生したほか,合計37,176人に避難勧告が出され,7,429人が避難した」
3−7 十勝沖地震 : 防災情報のページ - 内閣府 (bousai.go.jp)

日本における「全壊」は、住めなくなることをいうので、倒壊とは限りません。
建物全体が倒壊するケースはなく、その一部が崩れたケースが多かったようです。

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2003年9月の十勝沖地震で崩落した釧路町役場の玄…|最後の17世紀の津波からの経過… 写真1/1|zakzak:夕刊フジ公式サイト

上の写真は、十勝沖地震で崩落した釧路町役場の玄関ですが、建物本体は保たれています。

日本で建物倒壊を多数出したのは、1995年1月の阪神淡路大震災でした。マグネチュード7.2、もっとも震源に近かった神戸で震度6でした。
死者は6千人を超えました。
下の写真は阪神淡路地震で倒壊した民家です。

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「阪神淡路大震災で死亡した方の約4分の3は、倒壊した家屋による圧死・窒息によるものだったと言われています。
阪神淡路大震災で被害のあった家屋は、全壊が約10万5千棟、半壊が約14万4千棟に達しました。特に被害が甚大だったのは、東灘区、灘区の阪急電鉄と阪神電鉄の間の断層に沿った地域です」
阪神淡路大震災で10万棟の住宅が倒壊した原因と、その悲劇を生まないための教訓 |

わが国はこの阪神淡路大震災の苦い経験から耐震基準の見直しが図られました。

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「耐震基準とは、建築基準法によって定められた耐震性能の高い建物を建築するための基準です。
この基準をクリアする耐震性の目安としては、

・震度5の地震が起きても建物がほとんど損傷しない
・震度6〜7の大地震が起きても建物が倒壊しない

の2点となっています。
地震の多い日本では震度5の地震は比較的よく起こるため、そのレベルの地震では建物はほとんど損傷せず、また、まれにある震度6強以上の大地震が起きても、命に危険は及ばない耐震性が求められています
耐震基準改正の変遷と耐震診断のすすめ方・費用 | BUILD WORKs|京都の注文住宅・リフォームの工務店・建築設計事務所
 

今回のトルコ大震災を報じたBBCは日本の耐震基準があれば、このような一区画が丸ごと倒壊するなどということは起きなかったとして、わが国の耐震補強の図を載せています。

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BBC

「日本のような国では、大地震の歴史にもかかわらず、何百万人もの人々が人口密度の高い高層ビルに住んでいますが、建築規制が災害時に人々の安全を守るのにどのように役立つかを示しています。
建設の安全要件は、建物の用途と地震のリスクが最も高い地域への近接性によって異なります:単純な補強から、建物全体のモーションダンパー、巨大なショックアブソーバーの上に構造全体を配置して地面の動きから隔離することまで」
(BBC2月10日)
トルコ地震:なぜこれほど多くの建物が倒壊したのか?- BBCニュース 

一方今回のトルコの大地震も、トルコ南東部に延びる「東アナトリア断層」で発生し、北側のアナトリアプレートに向かって、南側のアラビアプレートが北上し、断層にひずみがたまったことで起きたようです。

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日本と同様「地震国」トルコを「他山の石」に 地震への備えと警戒を(鳥取市)(TSKさんいん中央テレビ) - Yahoo!ニュース   

このようなプーレが衝突する追記では地震が多発しますが、トルコも地震多発国でした。

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トルコの地震一覧 - Wikipedia

近年だけでこんなに頻発しています。

・1999年デュズジェ地震
2003年ビンギョル地震
・2010年エラズー県地震
・2011年トルコ西部地震
・2020年エーゲ海地震
・2011年トルコ東部地震 
2023年ガズィアンテプ地震
トルコの地震一覧 - Wikipedia
 

このうち、1999年のデュズジェと2011年のトルコ東部地震は共にマグネチュード7を超えています。
つまりトルコは、日本と同様にいつでも巨大地震が来てもおかしくない国だったのです。

今回、新しい建物でもが簡単に倒壊が発生しています。
マラティヤのアパートの下半分は崩れ落ち、瓦礫の上に斜めに立っています。
しかもこの建物は新しいアパートです。

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BBC

下の画像はこのアパートの倒壊の瞬間をとらえたものです。

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BBC
この建物は最新の地震規制に準拠していたというのがうたい文句でしたが、いとも簡単に倒壊しました。
法律上は2018年の震災基準によって、新たに建てられる建造物は鉄筋で補強され、高品質のコンクリートを使用することを義務づけられているはずです。
また、地震の影響を効果的に吸収し分散させるために柱と梁を補強せねばなりません。
上のような日本の耐震基準に則っていればこのような倒壊事故はありえなかったはずです。

ではなぜこのような大規模な建物倒壊に発展してしまったのでしょうか。
次回に続けます。


2023年2月12日 (日)

日曜写真館 紫の淡しと言はず蘭の花

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ある時は淋しき花と蘭を活け 稲畑汀子

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星空も生者の側に蘭溢れ 花谷和子

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おぼろなる仏の水を蘭にやる 大木あまり

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つと入や蘭の香にみつ一座敷 松瀬青々

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温室せまし洋蘭玻璃にふれ咲きて 田中 七草

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紫の素描にしたり蘭一花 文挟夫佐恵

 

 

2023年2月11日 (土)

日本は「ポーランド」にならねばならない

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やはり例の中国の気球は軍事用だったようです。
撃墜された機体からは、通信傍受用の装置と発信装置が見つかったようです。

「米国務省は9日、中国がこれまで40カ国以上の領空に偵察気球を飛来させているとの分析を明らかにした。米軍が4日に米領空で撃墜した気球の解析を踏まえ、傍受する機器を備え「情報収集活動が可能だった」と結論づけた。関与した中国人民解放軍と取引のある団体への対抗措置を検討する。
国務省高官は9日、気球に通信傍受や位置情報の特定ができるアンテナと電力を生成する太陽光パネルが搭載されていたと指摘。「装備が偵察用なのは明らかだ」と述べ、「民間の気象研究用」とする中国の主張を否定した。偵察活動は中国人民解放軍の指示でなされるケースが多いとも語った」
(日経2月7日)
中国気球40カ国超で 米国「通信傍受用のアンテナ搭載」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

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岐阜新聞

衛星より低空で電波傍受や撮影などを行いつつ相手国の対応を探り、なにもしないようなら日常的に飛ばして偵察するという寸法です。
日本を初めとして、実に40カ国で同様の気球が発見されています。
日本の東北に飛来させた時は、青森県にある米軍の三沢基地、車力の米軍のXバンドレーダーの電波収集、あるいは秋田県の新屋演習場に当時に建設予定だったイージスアショアのAN/SPY-7レーダーの地形データを収集していたのかもしれないといわれています。
飛ばしたのは、内モンゴルにある戦略支援部隊の偵察部門のようです。

「米軍に撃墜された中国の偵察用気球について、中国軍で宇宙やサイバー、電子戦などを担当する戦略支援部隊が背後で運用に関与しているとの見方が出ている。同部隊は、製造コストが低く、撃墜されても人的被害のない偵察用気球を、衛星による偵察を補完する装備品として活用しているとみられる。
撃墜された気球は、同部隊が中国内モンゴル自治区で管理する衛星発射基地から打ち上げられたとの情報がある。同部隊は、戦略に関わる情報の収集を役割の一つとし、偵察衛星を運用して米軍の核兵器施設などの監視を行っているとされる」
(読売2月5日)
中国気球、軍の戦略支援部隊が関与か…「内モンゴルの基地から打ち上げ」情報も : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

米国が撃墜したことで、今後は各国も撃墜方針で臨むでしょう。
ちなみに気球が飛行した高度約2万mの国際法上の「領空」の考え方ですが、現在議論中で明確な定めがないようです。
領空に入るという説と入らないという説、さらにはその機能が軍事目的か、ただの無害通航なのかによるという機能説などがあります。
なお、高度2万メートルは通常の戦闘機では到達さえ困難な高度です。

さて習近平にとっての台湾は、プーチンにとってのウクライナなのです。
そして侵攻が開始されれば、CSISのウォーゲームが描くように北朝鮮までも巻き込む、東アジア地域全体の戦争に発展します。

小泉悠氏はこう述べています。

「もっともあり得べきシナリオは、「台湾有事」。中国にとっての台湾は、ロシアにとってのウクライナに似ている。かつては自国の一部でありながら、現在はアメリカとの距離が近い国。「この国(ウクライナや台湾)を併合しなければわが国は完全体にはならない」という思想を、ロシアも中国も持っている」
(小泉悠 2023年1月15日)

「平和ボケ」日本はウクライナで目覚めよ 小泉悠|文藝春秋digital (bungeishunju.com)

台湾が中国の侵攻を受ける可能性があることを、米国は再三にわたって警告し続けています。

「米国中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は、中国の習近平国家主席が軍に2027年までに台湾侵攻を行う準備をするよう命じたと述べた。
バーンズは木曜日にワシントンDCのジョージタウン大学でのイベントで講演していました。彼は、米国は習主席が自国の軍隊に命令を出したことを「諜報の問題として」知っていると述べた。
彼は、これは中国の指導者が2027年または他の年に台湾を侵略することを決定したことを意味するものではないと付け加えた。彼は、習主席が真剣で野心に集中していることを思い出させるものだと述べた。バーンズは、「台湾に関する習主席の野心を過小評価するつもりはない」と述べた。
局長はまた、習主席はロシアのウクライナ侵攻を注意深く見守っていると述べた。彼は、中国国家主席はロシア軍のパフォーマンスに「落ち着かず」、「少し冷静」である可能性が高いと述べた」
CIA:習主席は軍に2027年までに台湾に侵攻する準備をするよう命じた|NHKワールドジャパンニュース 

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台湾侵攻がなされた場合、米国は民主党であろうと共和党であろうと、はたまたどんなヘタレの大統領だろうと、最低でも台湾に軍事情報を渡したり、軍事物資を送るでしょう。
軍事介入をする判断は大統領が最終的に決断しますが、その確率は高いとかんがえるのが妥当です。

ただし、ウクライナと台湾には似た点がひとつあります。
共に同盟国がないことです。
最大の支援国である米国とは国交すらない状況で、下院議長が訪台しただけで、チャイナ皇帝はたいそうお怒りのようです。
法的には台湾有事の支援を認めた台湾関係法があるだけです。

では、どこの国が「ポーランド」になるのでしょうか。
台湾にとっての「ポーランド」の候補地になるためにはいくつか条件があります。

①台湾に地理的に近く、台湾を支援する意志があること。
②米国と強固な同盟関係を持つこと。米軍の航空基地、艦隊の拠点があること。
③米軍と台湾軍を支えられる補給施設を持つこと。

候補は三カ国です。
フィリピン、韓国、そして日本ですが、まずフィリピンから考えてみましょう。
フィリピンは①②③のすべてで失格です。
米軍は30年前にいったん撤退しており、現在は基地拡大計画は存在しますが、現実化するには時間が必要です。


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BBC

「アメリカはすでに、防衛協力強化協定(EDCA)に基づき、5カ所の基地を限定的に使用できる。米政府によると、使える拠点と使用権の拡大は「フィリピンの人道的災害や気候変動での災害をより迅速に支援し、その他の共通の課題に対応する」もので、この地域における中国への対抗を示唆したものとみられる」
(BBC2023年2月3日) 
米軍、フィリピンで基地使用権を拡大 中国を取り囲む同盟の目的は? - BBCニュース

では、韓国はどうでしょうか。
韓国には、そもそも台湾を支援する意志がありません。

韓国は台湾支援に冷やかであり、むしろ台湾が半導体競争から脱落してしまえばいいとすら願っています。
韓国人に、台湾有事と韓国有事をつなげて考えようという気持ちはさらさらありません。
そんな韓国政府の意志など無視して、台湾有事において米軍は韓国の基地を出撃拠点として大いに利用するでしょうが、大規模な兵站補給施設がありません。

したがって台湾への支援の最前線基地は、わが日本が担うしかないのです。
わが国は①から③までのすべての条件を備えています。

日本は台湾と深い友情で結ばれており、世界一の親日国であり、かつ世界一の親台国です。
そして、距離的にももっとも近い国です。
むしろ近すぎるくらいで、台湾有事には尖閣、与那国はもちろんのこと、宮古、八重山までもが攻撃を受ける可能性があるほど近い。

そして距離だけではなく、世界一安定した同盟と呼ばれている日米同盟が岩盤のように存在します。
日本国内には多くの米軍の軍事基地があり、米軍はここを拠点にして世界戦略を構築しています。
横須賀軍港と佐世保軍港、三沢基地といった戦闘部隊を置く基地だけが注目されがちですが、日本の真の重要性はその兵站施設群にあります。

米国にとっては、原子力空母を修理するドックは世界で4カ所しかありませんが、そのうち2カ所は米国内、そしてあとの2カ所は日本にのみ存在します。
これは横須賀第6ドックと佐世保第4ドックですが、大和級巨大戦艦を建造したドックですので、米国と日本以外にこのようなドック自体存在しません。

米軍の世界最大のオイルターミナルは、鶴見、佐世保、八戸にあります。  
神奈川県鶴見貯油施設、小柴貯油施設は、国防総省管内のうち米本土まで含めて第2位の備蓄量で、第3位は佐世保、八戸(航空燃料)と合わせると、実に1107万バレルを備蓄しています。
これは米海軍最強の第7艦隊全体の10回分の満タン量に相当します。

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鶴見貯油施設

また、横須賀軍港に隣接した浦郷弾薬庫は、日本最大の弾薬庫で、嘉手納と辺野古弾薬庫を合わせた備蓄量を凌いでいます。
これらの第7艦隊の補給を受け持つ弾薬貯蔵施設は、他に秋月、広、川上、嘉手納にあり、その貯蔵能力は実に12万トンを越えます。

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沖合いの錨地に停泊した弾薬補給艦マシュー・ペリーから弾薬を荷卸しされる浦郷弾薬庫

その他多くの支援施設が日本国内に存在しますが、いずれも米軍最大級です。
このようにわが国は米軍、なかでも米海軍の補給-修理の海外インフラを一手に引き受けているのです。
それから比べれば、フィリピンはないに等しく、韓国などショボイ出先出張所ていどの機能しかありません。

したがって、東アジアの米軍がフル稼働を開始して台湾支援を実施した場合、好むと好まざるとにかかわらず、日本はそれを支える最大のロジ最前線基地となるでしょう。
在日米軍の補給基地群の備蓄からは大量の支援物資が送られ、米本土からの物資もいったん横田基地を中継して台湾を目指します。
各国の支援物資も同様のコースを辿るはずです。
つまり、日本は台湾支援の大動脈になるのです。

日本は台湾にとっての「ポーランド」になるでしょう。
これはポーランドがそうであるように「次は自国」だからです。
言い換えれば、台湾防衛にとっての「ポーランド」を自覚して強化することは、とりもなおさずわが国の対中抑止力に繋がることなのです。


※速報
日銀総裁のサプライズ人事です。岸田首相が新総裁に、元日銀審議委員で経済学者・植田和男氏、副総裁は前金融庁長官の氷見野(ひみの)良三氏(62)と日銀理事の内田真一氏(60)の2人を候補とする を起用する意向だそうです。
悪くない人事です。これでいきなりの金融引き締めはなくなりました。

 

2023年2月10日 (金)

プロデューサーは半狂乱、脚本は行き当たりばったり、監督は凡庸、俳優は力不足

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ウクライナ戦争は、日本の安全保障意識の根幹を変えました。
日本人が、営々と70数年間持っていた太平楽な夢を粉々に砕いてしまったのです。
今まで、日本人は戦争はこちらから仕掛けない限り起きないと考えていました。
左派勢力はむろんのこと、保守勢力も無意識に現代ではもはや戦争は起こり得ないと考えていたフシがあります。

だから左派勢力は国内の軍国主義の芽を摘んでおけば戦争にならないと信じて、反米反自衛隊闘争にうつつをヌカしてきました。
一方、保守勢力も吉田茂ばりの軽軍備で充分、なにかあっても米国がなんとかしてくれるだろうと思っていました。
この考え方は90年代の自民党ボス連のほぼ全員、いまも宏池会系の中に流れています。
岸田氏もこの流れを汲んでいます。
もっとも、初めて外国に自衛隊を送ったPKOが宮沢氏で、今回の戦後防衛政策の根本的変革である防衛3文書改訂をしたのが彼、たまたま時期があっただけだとも言えますが、共に宏池会の領袖だというのも皮肉な巡り合わせです。

この戦後日本における戦争観の大前提が崩れたのが、ウクライナ戦争です。

今回のウクライナ戦争が衝撃的だったのは、戦争を起こす合理性が欠落していたことです。
ウクライナとロシアは戦争に発展するような大きな外交紛争を抱えていたわけではなく、ゼレンスキーすら戦前はロシアと融和的だと国内で批判されていたのです。

NATOは加盟を拒否していましたから、いきなり国境まで西側陣営が迫ったわけでもなかったのです。

しかし2022年2月24日に、演習と称して国境に集結していたロシア軍は一斉に国境を超えました。

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ロシア軍のキエフ侵攻が停滞、士気低下も=米高官 | ロイター (reuters.com)

直前まで米国から警告されていたゼレンスキーは、これを信じようとしませんでした。
国境を大軍が超えて、初めてウクライナが侵略されていることに気がついたのです。
ゼレンスキーだけではなく、親露派のみならず西側の専門家の多くが侵攻などありえないとしていました。
戦争を引き起こす合理性と必然性が欠落しているからです。
このように戦争はなんの合理性もなく、なんの予兆すらなく、突如として起きてしまうのです。
独裁者は自由主義国にある民主的掣肘を受けないために、妄想にすぎない「ユーラシア思想」から戦争を引き起こしました。

戦争前に、プーチンは事前に書かれた「勝利宣言」でこう言っています。

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「反ロシアとしてのウクライナは、もはや存在しない。ロシアは、ロシア世界、ロシア人、つまりヴェリコロス人(Great Russians)、ベラルーシ人、小ロシア人(Little Russians・ウクライナ人のこと)の総体を一つにすることによって、その歴史的全体性を回復したのだ。(略)
ロシア家がまずその基礎の一部(キエフ)を失い、次に二つの国家の存在と折り合いをつけなければならなかったとき、もはや一つではなく、二つの民族の存在があった。ウクライナを取り戻すこと、つまりロシアに戻すことは、10年を経るごとに難しくなっていくだろう。
欧米によるウクライナの地政学的・軍事的支配が完全に固まれば、ロシアへの返還はまったく不可能となる--そのためには大西洋圏と戦わなければならない。今、この問題は解決した。ウクライナはロシアに戻ったのだ 」
ロシア・ウクライナ戦争とナショナリズム | 東京大学 (u-tokyo.ac.jp)

こういう大ロシア帝国のレコンキスタ(領土回復運動)がウクライナ戦争だったようで、今どき「大ロシアの復活」もないもんです。
こういう妄想から戦争をすればヒドイ目に合います。

ロシアにとってもこの戦争は「失敗作」です。それもロシア史上にさん然と輝くような。
プロデューサーは半狂乱、脚本は行き当たりばったり、監督は凡庸、俳優は力不足、なにひとついいところがありません。
まるでひと頃のアングラ映画と同じで、なにを見せたいのか誰にも分からないものに仕上がってしまいました。
戦死者と市民の被害だけが徒に積み上がっていきます。

それをよく現しているのが、驚くべきことにはロシアが戦争計画を持っていなかったことです。
自分で戦争を仕掛けて起きながら、どう終結させるべきなのか、いや、そもそもなにが目的でなんのためにやっているのか、誰ひとり認識していなかったのです。
とりあえずキーウ攻略までは詳細なプランがあったようですが、それが頓挫すると、その先はほとんどなにも考えていないため、東と南に分散したロシア軍をまとめることができず、個別にウクライナ軍に撃滅されていきました。

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AP

そもそも100万人を動員可能なウクライナに対してたった19万で侵攻すること自体馬鹿丸出しなので、今頃になって国民の徴兵を開始してろくに訓練をしない新兵を前線に送り出して戦死者の山を築いています。
まともな戦争計画があればこんな恥ずかしいまねはしません。
動員計画くらい作ってから戦争始めろよな、プーチン。

また元々苦手だったロジは悲惨で、初期に全縦深攻撃ができなかったのは、戦車がすすみすぎると補給が追いつかないためでした。
そしてガス欠で止まった軍事車両は、一本道で延々と数60キロに及び、いいようにウクライナからの攻撃にさらされました。

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なぜロシア軍の全長64キロの車列は動きを止めたのか ウクライナ首都近郊  - BBCニュース

前線では燃料も食糧すら届かず、民家に押し入る始末。もう山賊です。

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ロシア兵、ウクライナ民家から略奪か テレビに楽器まで…母国に送付 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

だから今になって和平交渉をしろ、などと言ってみても、ここまで譲ってもいいというラインが自分たちにないために、それを見透かされたウクライナ側から会談自体を拒否されてしまっています。
ロシア通の小泉悠氏から、「私はロシア軍がここまで杜撰な計画で戦争をするのを初めて見た 」と呆れられているほどです。

さて、このようにウクライナ戦争は大方の予想をはずして開始されましたが、最大の喜ばしい「誤算」は予想をはるかに上回るウクライナ軍の頑強な抵抗でした。
彼らの必死の抵抗が無かりせば、いくら西側が武器を供与しても無駄だったはずです。

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ウクライナ議会内で抱擁するポーランドのドゥダ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領
ウクライナ、領土割譲を含む停戦には「合意しない」 キーウではポーランド大統領が演説 - BBCニュース

この国民的抵抗を見て、NATO加盟国を始めとする周辺諸国が軍事的・経済的な支援を送りました。
このときにその最前線補給基地の大任を担い、最大の難民引受国にして、かつ最大の支援国であったのがポーランドです。
ロシアは度々ポーランドはロシアから露骨な脅迫を受けてきましたが、ことごとく跳ね返して支援を継続しています。
ポーランドという頼もしい燐国がなかりせば、ウクライナの抵抗はここまで続かなかったことでしょう。

※われながら冗長なので、後半はカットして次回に回して、改題しました。いつもすいません。

2023年2月 9日 (木)

共産党、松竹氏を超高速除名

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まぁ、思ったとおりですが、それにしても早いね。
土橋さん風に言えば、超高速共産党除名です。

あの党首公選を主張した、松竹信幸氏はいともあっさりと除名されてしまいました。
党内で議論するなんて夢のまた夢なことは分かりきっていましたが、常任幹部会か、せめて規律委員会くらいは出てくるのかと思いましたが、中央本部扱いではなく地区委員会名です。

ずいぶんと軽い扱いですこと。
軽く見せることで、松竹の言うことなんぞ歯牙にもかけない、というポーズを決めたかったようです。
いかにも権威主義の権化のようなノーメンクラツーラらしい反応です。

共産党は『赤旗』でグダグダと除名理由を書いています。
冗長なのでスルーしようかと思ったのですか、誰もこんな悪文など読みそうにないので要約しておきます。
松竹伸幸氏の除名処分について/2月6日 日本共産党京都南地区委員会常任委員会 京都府委員会常任委員会 (jcp.or.jp)

①党首公選制」という主張は、「党内に派閥・分派はつくらない」という民主集中制の組織原則と相いれない。
②党規約が「異論を許さない」ものであるかのように、事実をゆがめて外部から攻撃している。
③「核抑止抜きの専守防衛」なるものを唱え、「安保条約堅持」と自衛隊合憲を党の「基本政策」にせよと迫った。
④党の綱領の安保・自衛隊政策に対して「野党共闘の障害になっている」と攻撃した。
⑤自身の主張を、党内で、中央委員会などに対して一度として主張したことはないことを指摘されて、「それは事実です」と認めた。

共産党特有の、読みやすく分かりにくい文章ですな。
「党内に派閥を作らせない」「異論を党外に発言してならない」ということは、党内で「異論を許さない」ことと同じではないか、と一般人は思うのですが,違いますかね。
そこでいたしかたなく風通しの悪い党内から一歩外に出て発言したら、「外部から攻撃している」となっちゃうわけですから、困った連中です。

でも、松竹氏はジャーナリストですから、自由にしゃべらねば仕事になりません。
赤旗と同じことばかり言っていたら、仕事になりませんからね。
すると、問答無用で即除名だそうですから見上げたものだよ、屋根屋のフンドシです。
やはり共産党は閉鎖的カルトで決まりのようです。
しかも今回は、国民が目の当たりにしてしまったのですから、志位さんしくじりましたね。

ところで松竹氏は、伊勢崎賢治氏(東京外大教授)と一緒に論説と本も書いています。

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日本がいつまでもアメリカと「対等」になれない本当の理由(伊勢崎 賢治,松竹 伸幸) | 現代ビジネス | 講談社(1/4) (gendai.media) 

一読しましたが、あまり面白くありません。
熱意は伝わるんですが、共産党のように半世紀ズレていれば昭和レトロを愛でる楽しさがあるのですが、中途半端に古いのです。
古臭いなぁ、ウクライナ戦争前にはこのレベルでも通用したんだよな、というのが私の感想です。
この対談は2018年に書かれたもので、本まで共著していますが、やはり内容は日本は米国に従属している、その証拠に地位協定も不平等だ、日本は米国と距離を開けて「中立」になれ、というような筋書きになっています。
いまから10年くらい前までは、この議論はそれなりに説得力があったんですがね。

共産党の本部で安保担当だった党員が、この立場に行き着いたのは慶祝の至りで、その部分は素直に評価します。
私の知っている党員諸兄は、党のパンフと赤旗くらいしか読みませんでしたからね。

しかし松竹氏は安保担当として外部世界の文献などを読んでいると、どこかで慄然としたんでしょう。
なんせ共産党は自衛隊は「違憲」で日米同盟は「全国民の力で安保廃棄」ですから、安全保障議論のスタート台にすら立てないのです。
この安全保障論がネックで他の野党からも、選挙協力はしても、政権には入れないからね、と釘を刺されていたことも身に沁みて知っていました。
そりゃそうでしょうとも。自衛隊解体、天皇制廃止なんて、つい最近まで言っていた極左政党をどうして政権に入れますか。

松竹さん、板挟みになったんでしょうな。
上役の志位氏は「全野党共闘」だなんて言って気勢を上げていても、それは選挙の時だけのこと。
選挙期間中だけは自衛隊を違憲と言わないだけのこと、党内では違憲で通しています。
今回もそれが除名理由になっていましたね。
外ヅラと内ヅラがまったく違うんですから、理念に誠実であろうと思う人にはやれんだろうな。お察しします。
そこで、「そりゃご都合主義です」と言ったら、王様の耳はロバの耳で、即クビ。

それに安保フンサーイなんて叫んで1万回デモをしても無駄だと、この年季の入った党員は感じていたのかもしれません。
デモなんて行ってみれば分かるように、来ている人はいつも同じ年寄りばかり。
デモのタイトルが違うだけで、来る人は一緒。
初めて行った若き日は高揚しても、何千回やっても現実はまったく進まない、こんなデモもあと何年できるのか、とその不毛さを悟ります。
デモだけではなにも変わらない、黒光りするほどレトロな党の綱領はまるで昭和の歌声喫茶です。
そしてリアルな安全保障論議をしたいと思っても許されない党規約、そんなときに彼が出会ったのが伊勢崎氏だったのでしょう。

ただし、今となっては出し遅れの証文です。なぜでしょうか。
時代のほうが先に進んでしまったのです。
地位協定という不平等性がある条約ひとつ変えるにも個別に交渉してもダメで、せいぜいが運用でお茶を濁すしかなかったのです。
なぜでしょうか。それは端的に日本に力がなかったからです。
だから防衛官僚は問題があることを知りつつ、「運用」でごまかしていたのです。

ではどうするのか。
コペルニクス的展開ですが、日本の地位を米国と同等にすればいいのです。
これに気がついたのが安部氏でした。

ルトワックは、今の日米同盟がフェーズ3に入ったとしています。
フェーズ1は、従属論者がいう対米従属期です。
伊勢崎氏などの議論は、このフェーズ1の時期に対応した考えです。

「両国の国益にかかわる政策を米国が一方的に決めていた。米国が決定内容を日本に通知することもあったが、通知しないことも珍しくなかった。(略
)米政府高官らは定期的に日本を訪れて米国の要求を提示し、日本政府は同意できる範囲で応じてきた。いずれにせよ、日本側が独自に日米絡みの政策を立案することはなく、その体制も存在しなかった。 」
【世界を解く―E・ルトワック】到来した「日米3・0」の時代 - 産経ニュース (sankei.com)

安部氏の登場とともに、フェーズ2段階に入ります。
安部氏の提唱によりザ・クアッドが成立したのです。

「安倍氏は、日本は独自の政策を持った独立国であると表明し、実際に独自政策の策定に着手した。防衛問題にも真剣に向き合った。外交ではインドとの関係を強化し、日米豪印によるクアッドの枠組みに引き込んだ。これにより、インドとの連携強化を望んでいた米国は、これまでになく密接な関係をインドと構築することができた」
(産経前掲)

そして第3フェーズが現在です。
安部氏が準備した防衛3文書の法制化は、ウクライナ戦争後の国際環境に対応した国際スタンダードの安全保障政策です。

「安倍氏の時代に道筋がつけられた日米の安全保障関係が国家間で制度化されたのだ。私はこれを「日米3・0」と呼ぶ。
米国が日本に防衛政策で要求を重ね、日本が防衛費や憲法の制約を盾に抵抗するといった緊張状態は一気に解消された。米国から言われてやるのではなく、日本の国益および日米の集団的安全保障に照らして日本が自発的に政策決定を下すようになったのだ」
(産経前掲)

この国際政治の地殻変動が鮮明になったのが、ウクライナ戦争でした。
中露同盟に対して、どういう対抗軸を国際社会がつくりだせるのかが今問われている問題なので、それは必然的に米国を基軸国とする以外に選択肢がないのです。
これが私が「新冷戦」と呼ぶ国際状況です。
松竹氏の構想する「核抑止なき中立」など、入る余地がまったくありません。
スウエーデン、ノルウェーまでが中立を捨て、スイスさえ武器を送ろうかという時代なのですよ。

ここで初めて憲法前文が謳う「われらは平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う 」という理念が活きてくるわけです。
松竹氏や伊勢崎氏は、一周遅れのトップランナーなんです。

ところで、除名は数ある処分でももっとも厳しいもので、以後松竹氏は「党のおたずね者」となります。
どういうことかといえば、共産党員は松竹氏と口を聞くこともできないのです。
「松竹」なる人物はこの世に存在しない、透明人間となってしまいました。
メディアが党員にインタビューしても同じことで、まんま赤旗と金太郎飴のようなことを口移しに言うだけです。

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共産・志位委員長は「自分の口で言えばいいと思う」 「党首公選」への反応めぐりベテラン党員が抱いた違和感: J-CAST ニュース【全文表示】

普通の政党なら、オレも松竹さんの言うことはわかるよな、しかしやり方がまずかった、くらいの意見は出るものですが、不思議なことにはひとりとしてそんな輩はゼッタイに登場しません。

もうちょっと聞くふりでもすれば、さすがは共産党、やっぱり民主的だなとなったのでしょうが、要するに規約一点張りですから、取りつくシマもありゃしません。
たとえば、せっかく志位氏がインタビューされていても、言う台詞は「赤旗の藤田論文がいうとおり」とメンドーなことは全部部下に押しつけてスルーでした。
不祥事が起きた時に、広報部次長に矢面に断たせる社長のようなものです。
トップというのはこういう時のためにあるんでしょうが。こういう上司は持ちたくないですね。

せめて党に持ち帰って議論しましょう、くらい言えばサマになったのに。

松竹氏は日本記者クラブの改憲の中でこんなことも言っています。

「私の行動で除名されるなら、憲法で保障された言論、表現の自由は死ぬ。共産党は国民の支持を失い、滅びかねない」
zakzak:夕刊フジ公式サイト

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まぁそのとおりではあるんですが、そういう共産党を選んだのはあなた、松竹さん自身なのですよ。
共産党がそういう言論の自由などという民主的権利を捨てなければ入党できないことくらい、とうにご存じだったはずです。
だから外部のサイトで伊勢崎氏と対談してみたり、とうとう文春などという「ブルジョワ出版社」から本まで出したのでしょう。
党員としてはヒラだヒラだと仰せだが、党本部の安保部門の責任者クラスにはいたわけで、職場で赤旗配りしていたわけじゃありません。
いわば指導部の一角にいたのです。
方針にクチバシも突っ込めないヒラ党員たちからすれば、方針に関与できるただけで本部様の存在だったではなかったのでしょうか。
もう少しそのへんの思い返しがないところで、一方的に被害者になられても困ります。

志位氏が盛んに言っていた「藤田論文」の藤田編集局次長と松竹氏は、この事件以後元の職場(共産党本部ですが)前ですれ違ったのだそうです。

「実は先ほど共産党前で写真を撮ったとき、藤田さんとすれ違ったんですよ。すれ違った後に気付いたのですが...。声をかけた方が良かったかも。向こうも気付いていないと思います。なんか、すごくやつれていましたね...、下向いた感じで。
それはともかく、当然、何らかの反応はあると思っていました。逆に、反応がなくてスルーされることが一番嫌でした。何か反応があって、党内の議論が盛り上がるというのが一番の目的なので、反応が出てきたことは、まずは歓迎です。ただ、赤旗の編集局次長の論文が出てくるとは思いませんでしたね」
(JCAST前掲) 

藤田氏と目が合わなくてよかったですね。
もう彼ら共産党員にとって、あなたはすでに「いてはいけない人物」「否定すべきもの」なのですから、党本部の前なんか歩いちゃダメですよ。

それにしても寂しい党です。

 

 

2023年2月 8日 (水)

中国気球余話

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米国上空を堂々と2日間も徘徊していた中国の謎の気球が、海上を出たところで撃墜されたようです。
気球と言うとのどかな響きですが、この中国の高高度気球は、高度2万メートル以上を飛べる特殊な気球で、数十mもある巨大なゴンドラに機材を搭載していたようです。

あまりにも大きいために、陸上での被害を考えて海上に出たところを落としたようです。
米軍はわざわざF-22というステルス戦闘機を使い、気球とゴンドラの間を撃ち抜くという妙技を見せました。
しかも高度2万でやって見せたことは、米空軍の高高度迎撃能力を誇示したことになります。
ただし高度2万は厳密には領空とは呼べないのですが、軍事目的で飛行していれば落とされても文句はいえません。

今後、サルベージして調査しますが、航空事故の専門家によれば「飛行機事故と同じなので問題ない」とのことです。
中国はうるさく返還を求めるでしょうが、米国はこれを軍事偵察と考えていますので、機器の返還には応じないでしょう。

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ロイター

「アメリカ軍の発表によると4日午後2時39分、高度およそ2万メートルを飛行していた気球に向け、F22戦闘機がミサイルを発射。一発で気球を撃ち落としたということです。
アメリカにとっては“予定通り”の撃墜でした。
バイデン大統領:「1日に説明を受け、速やかに撃墜するよう国防総省に指示した。そして、誰一人傷付けることなく実行するには領空内の海上に出た時だという判断のもと、見事にやり遂げた」
現地メディアが気象条件などから、気球のルートを分析したものです。行く先々に軍事基地があるのは偶然でしょうか」
(テレ朝2月5日)

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【中国の気球撃墜】ルート上に“米軍事基地”の分析も(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

侵入経路はアラスカ南部から入り、北米中西部を堂々と縦断するコースです。
この気球は風に乗って勝手に飛ぶのではなく、操縦も効くようです。

「複数の発表によれば、この気球は、バッテリーや太陽電池を含む最大453キロの貨物を運ぶことができる。また光学機器、赤外線カメラ、サーマルカメラ、高周波スキャナー、レーダーなど、さまざまな機器が多数搭載されていた可能性がある。
つまり米国の軍事基地上空を飛行し、気球は中国の情報機関にとって重要な多くの情報収集を行うことができたと考えられる。そしておそらく、気球は収集した情報を、その地域の上空を飛行する衛星を用いて、送信していたと思われる」
(スプートニク2月2日)

この気球の飛行コースは米国核戦略の大通りですから、バイデンは議会からなぜアラスカの前で落とさなかったんだと突っ込まれているそうですが、当然です。
ちなみにスプートニクはこうあざ笑っています。


「米空軍は、中国の気球を撃墜するだけの技術的能力を有していたということである。
そうだとすると、識別マークのない不明な気球がアラスカ上空で、米国の領空に侵入したと同時に撃墜することもできた。しかし、気球は北米の西から東を横断したのである。それはなぜか。それはおそらく、米軍司令部の軟弱さと優柔不断の結果であろう。
中国気球が2日間もの間、米空軍の最重要基地の上空を何の障壁もなく、飛行したという驚くべき事実を説明できるのはこれしかない」
(スプートニク前掲)

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米中、対話路線に痛手 気球飛来で国務長官訪中延期: 日本経済新聞 (nikkei.com)

アラスカの南から北上してアラスカ州を横断しているのは、米国の早期警戒システムを偵察したかったのでしょう。
アラスカ南部には、米国の弾道ミサイル早期警戒システムの最重要施設である「サイトII」クリアー空軍基地が存在します。

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弾道ミサイル早期警戒システム - Wikiwand

今回の気球の飛行コースは、アラスカの弾道ミサイル早期警戒基地から中西部の米軍基地の上へ飛んでいるのですから、偶然なわけはありません。
気球は衛星と違って、きわめてゆっくりと飛行しますから、画像撮影や電波偵察などを長時間行うことが可能です。

ところもあろうに、中国の盟友のロシア官営の「スプートニク」がこんな記事を出していて驚きました。

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スプートニク
「中国のエンジニアたちは、非常に興味深い機器を製造した。概算で言えば、これは米空軍の9つの基地、州兵10の基地を網羅する。
とりわけ重要なものとして挙げられるのが以下である。
・マルムストローム空軍基地 弾道ミサイル「ミニットマン3」
・エルスワース空軍基地 戦略爆撃機B-1B「ランサー」
・オファット空軍基地 米空軍の核戦略司令部
・ホワイトマン空軍基地 ステルス戦略爆撃機В-2А
・スコット空軍基地 航空軌道軍団司令本部
・米空軍サイバーコマンド、サイバーワシントン州空軍司令部
・米軍輸送司令部
・国防情報システム局東部グローバルオペレーションセンター
・アーノルド空軍基地 米空軍技術開発機関、宇宙研究所
・ラングレー空軍基地―米空軍航空戦闘軍団司令部、米空軍指揮統制機構、第479戦術戦闘航空団、戦闘機F–22
概して、中国の気球が通過した付近の基地をざっと見ただけでも、この偵察気球が主に米空軍に関するかなり貴重な情報を収集しえたことが十分に理解できる」
(スプートニク2月2日)
【視点】中国の偵察気球が米国上空を通過 - 2023年2月6日, Sputnik 日本 (sputniknews.jp)

なにやら、1960年に起きて一気に冷戦に突入したきっかけを作ったU-2撃墜事件を思わせます。
このときU-2も2万5千mを飛行しており、この高度に当時のソ連空軍戦闘機は到達できませんでした。
結局、S-75対空ミサイルで落としたのですが、米国のこのときの言い訳が「高高度での気象データ収集を行っていた民間機が、与圧設備の故障で操縦不能に陥った」 という白々しいウソの発表をしました。

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U-2撃墜事件 - Wikipedia

今回の中国は、「民間の気象観測の飛行船が誤って米国上空に侵入してしまった」などと言っているようですが、この気球には太陽電池パネルと各種の通信装置のアンテナが見えています。
おそらくは遠隔操縦も可能なはずで、こんなものを民間がこれほどの高高度で飛ばす必要もなく、軍事目的以外考えられません。

またこの気球はADS-Bという信号を発していないことを、JSF氏が指摘しています。

「ADS-B とはGPSなどの衛星測位システムを利用して、航空機が自らの位置を発信して外部からの追跡を可能にするシステムです。航空関係者のみならず「フライトレーダー24」などのアプリを使えば民間の一般人でもチェックすることが可能です。
国際的にADS-Bを発信する義務があるわけではないので(国によっては既に義務化)、これをもって民間の気球ではないと言い切ることは出来ませんが、長距離を飛ぶ予定であるなら追跡にも便利で安全も高まるので、民間の機材ならばADS-Bを搭載して発信していた方が自然です。軍事目的の機材だったならば隠密に作戦を行いたいのでADS-Bの発信はされません」
(JSF2月7日) 
撃墜された中国の気球はADS-Bを発信していなかった(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

民間用だったらほぼ備えているADS-B 発信装置がついていていところを見ると、いっそう軍事偵察用の疑いは濃厚になります。
ちなみに日本にも仙台や鹿児島に飛来しています。
米国のものとほぼ同型で、バス数台分という巨大サイズでで、天体望遠鏡で民間人が撮影に成功しています。

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中国の「偵察気球」に似た物体  2019年に日本で目撃…鹿児島でも(MBC南日本放送) - Yahoo!ニュース

仙台のものを調査した東北大学の服部准教授によれば、大連にある人民解放軍の飛行船基地から飛ばされた可能性があるといいます。

「Q. そこに何がある?
(服部誠准教授)「大連の気球打ち上げの基地ですね。なので、私自身がなんで中国って思っているかというもう一つの根拠が、ここにちゃんとした設備があって、打ち上げる能力を持った人がいて、打ち上げることができる設備があるから。」
実は2021年にも岩手県や小笠原諸島の上空で同じような球体が目撃されています。
(服部誠准教授)「今回、目撃されているものだけでなく、もっとたくさん打ち上げているはずです。そのうちの氷山の一角がこうやって見えているということ」
(ANN2月5日)
米軍が撃墜の中国「謎の気球」過去に日本上空にも“似た球体”専門家「構造ほぼ一緒」(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

ところで、この事件を受けて、ブリンケンは訪中を中止しました。
この事件はを米国は大きく見ており、偵察機と違って無人気球ですが、累積警告の対象としています。
これから報復に乗り出すでしょうが、予想されるのは対中経済制裁の強化で、TiKToK制裁法案にとどまらず中国のIT全般への規制や半導体規制の更なる強化が予測されています。
議会は、財務省が所轄するSDNリスト、商務省が所轄するエンティティリスト、国防省が所轄する中国人民軍企業リストなどの一本化を求めており、中国共産党員9600万人のリストと組織図の公表を求めています。
当初はこれらの制裁は5年以内でしたが、この気球事件で前倒しで実施されるようです。

この制裁によって中国人民軍支配企業と目された企業は、すべてエンティティリストに掲載し、経済活動そのものを止められる可能性があります。
このエンティティリスト(EL)とは「懸念顧客リスト」と訳され、このようなものです。

「懸念顧客者リスト[Lists of Parties of Concern] 以下のリストのうちの1つに掲載されている企業、団体又は個人が、輸出取引において可能性のある当事者と合致するように見える場合、輸出取引を進める前に更なる相当な注意が必要とされます 」
(■MOFCOM Order No. 4 of 2020 on Provisions on the Unreliable Entity List)
https://bit.ly/35TePOC

中国商務省がエンティティリストの対象として上げた項目が「安全保障」「発展」「ビジネス上の脅威」「中国企業への差別」ですから、なんのこたぁない全部です。
現在のところ、AIや半導体など一部の限定された企業だけがエンティティリストに掲載されている状態であり、ファーウェイですら0金融制裁の対象となるリストには入っていませんが、今後は入れられる可能性が高いと見られます。

それにしてもこのバラバラ感はなんでんでしょう。
外交部はブリンケンを招待して習近平にまで面会させるとまで言っておきながら、一方で軍事気球を北米に飛ばす、なんですか、右手と左手がケンカしているような状態は。
外交的宥和を図ろうとする勢力と強硬派が暗闘しているのでしょうか。

 

2023年2月 7日 (火)

CSISレポートに対する韓国の反応

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昨日からの続きです。

米CSIS(戦略国際問題研究所)は、去る1月9日に中国による台湾侵攻シミュレーションを公表しました。
The First Battle of the Next War
大雑把には昨日記事にしたとおり、中国は台湾だけを標的にするのではなく、米軍の策源地であるグアム、在日米軍基地、在韓米軍基地までも先制攻撃するという衝撃的内容でした。
日本の軍事専門家は無意識に台湾海峡に焦点を当ててしまいがちですが、CSISは戦域を大きくとって第1列島線内側とグアムにまで拡大して観察しています。

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日経

結果は昨日みたとおり、米国の辛勝といったところで、台湾は防衛され、中国軍は大損害を受けて撃退されますが、日米共に大きな損害を蒙ります。
ちなみにCSISは日本は先制攻撃によって戦力をほとんど消滅させられ、台湾防衛戦には加わらないとしています。
実にシビアですが、今のように空自の基地はシェルターもなく丸裸、ミサイルディフェンスは混迷、継戦能力もなく、サイバー攻撃の対応すらできていない現況では、そう言われても致し方方ありますまい。
悔しかったら、リアルな戦争を戦える自衛隊にするしかありません。
ただしCSISのシミュレーションにおいて最悪シナリオは日米両空軍が地上で撃滅されてしまい、自衛隊が戦闘に参加しないことですが、逆に最良シナリオは日本が米国とともに戦争に全面的に介入すれば、戦況は劇的に好転します。

さて、このCSISの台湾シミュレーションを見て驚いたのが韓国です。
このシミュレーションでは早々に米韓側の優勢を担保してきた空軍力が、地上で壊滅してしまうとされているからです。
在韓米空軍と韓国空軍は、共に戦争冒頭のミサイルによる先制攻撃によって地上で9割の戦闘機を失います。
日本はまだしも、早期警戒監視システムを持ち、イージス艦や空自のPACで一定数を迎撃できますが、韓国はいずれも米軍頼みでした。
しかも、CSISはこの中国の台湾侵攻と北朝鮮が連動して動くことを想定しています。

北は中国の韓国へのミサイル攻撃を分担して受け持ち、韓国の空軍基地に対する大量のミサイル攻撃とロケット砲攻撃を仕掛けます。
これにより、韓国が北に対して持っていた最大のアドバンテージである空軍力が完全に消滅します。

CSISのレポートを読んで、これに気がついたのが、朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)主筆でした。
[楊相勲コラム]我が国の戦闘機の50%が消滅した後に戦争が始まるだろう
(朝鮮日報1月19日)

実は韓国はムン政権6年にも及んだ対北融和政策によって、北朝鮮は友愛の兄弟だ、真の敵は日本だ、というスットコドッコイのぬるま湯に首まで浸っていました。
韓国軍も骨の髄まで弛緩しきってしまい、米軍がいるからいいや、なんとかしてくれるべぇ、という他力本願の空気が支配していたようです。
鈴置高史氏によれば、台湾有事ですら、「韓国の半導体の競争相手の台湾が沈めばヤッタね」と思っていたそうで、台湾防衛など念頭をよぎりもしなかったようです。
鈴置高史(2023年2月1日)
台湾有事が引き起こす第2次朝鮮戦争 米日の助けなしで韓国軍は国を守れるのか | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)

ヤン主筆も中国が台湾に侵攻した場合、韓国は中立を守る、との前提で記事を書いていますし、CSISも同様に韓国を同盟国として考えてはいません。
その代わり、北から攻撃を受けても米国は知らん、自力でなんとかしろ、というスタンスです。
平時ならまだしも、台湾有事のような鉄火場では韓国など二の次三の次扱いされます。
もはや韓国にかつてのような守るべき価値はないのですが、気がついていないのは当の韓国だけのようです。
日本も同様に、安倍氏が提唱した「台湾有事は日本の有事」という認識はかなり浸透してきましたが、韓国有事は日本有事ではないのです。
ましてや自国が攻撃されている状況では、韓国などまったく誰も気にしてくれないでしょうね。
さて、この米軍頼みはかつての第1次朝鮮戦争において、米海軍の空母艦載機の近接支援と、日本から飛来する戦略爆撃機によって北の侵攻をくい止めたという成功イメージがあるからです。
米国の空軍力がなければ、当時の韓国政府は釜山から玄界灘に追い落とされていたはずです。
ところが、ミサイルの発達によってこの米軍の空軍力を頼みとする戦略の根幹が揺らぎました。
CSISのウォーゲームでは、第7艦隊の2隻の空母は戦争初期に撃沈されるとしているとしています。
私はこの判定には大いに異議があるのですが、最悪シナリオとして考えておかねばなりません。
米軍はこの東アジア地域の空軍力壊滅に対して、他の地域全体から来援を呼ぶことでしょう。
このシナリオは既に米軍には存在するはずで、太平洋軍のみならず招集をかけます。
この場合の来援機が到着する前進配備基地が、嘉手納であり、普天間です。
1996年7月、在日米軍作戦部は嘉手納統合案の研究に絡めて、普天間の固定翼機を含めた基地機能の移設を目標に据えた技術評価を実施しています。  
その結果、このような規模の収容能力が必要だという結論が出て、日本側に通知されています。  


・普天間・・・平時71機    有事最大230機
・嘉手納・・・平時113機    有事最大390機
・嘉手納+普天間の有事の機数    計      ・620機
※機数はあくまで目安で、増減はありえます。 

その他、横田で嘉手納と同数、岩国と厚木着で普天間と各々同数を受け入れるかもしれません。
ちなみに、返野古は狭すぎてものの役に立ちません。
有事における来援機のスペースが考慮されていないのです。

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INF条約の陰で進んだ中国ミサイル開発の全容:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)

米露INF条約(中距離核戦力制限条約)によって米国は中距離弾道ミサイルを放棄してしまいました。
漁夫の利を得たのは中国で、その間に大量の中距離弾道ミサイルを作り上げます。

「特にアジアにおいては中国の経済発展と軍事力増強、1990年代以降のミサイル開発の加速、さらには北朝鮮の核開発とミサイル開発に伴い、軍事的バランスが大きく変化している。
中国は現在、70基の大陸間弾道ミサイル(ICBM)のほか、INF条約で廃棄対象となった中距離弾道ミサイル(IRBM、射程3000-5500km)16基、核弾頭搭載可能な準中距離弾道ミサイル(MRBM、射程1000-3000㎞)80基、GLCM(射程1500㎞以上)54基に加え約280個の核弾頭を保有していると見積もられている。
このうちMRBMは日本全域を射程に収めており、IRBMはグアムのほか東南アジア全域とロシア東部全域を攻撃できる。中国のINFはアジアにおけるアメリカの同盟国を射程に収めているだけでなく、沖縄やグアムの主要な米軍施設を攻撃できる能力を備えているのである。北朝鮮もまたICBM6基、IRBM12基、MRBM10基と見積もられている」
(北村順2019年2月28日)
INF条約の陰で進んだ中国ミサイル開発の全容:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)

 
このおそろしいまでのミサイルギャップに気がついたトランプは、2019に離脱します。

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Michito Tsuruoka / 鶴岡路人

米国は当初新たな中距離弾道ミサイルLRHWを第1列島線に配備しようとしましたが、見送りとなったままです。
理由はうちの国のトマホーク調達があるからといいますが、うちの国のトマホークなんて、ただぶちあげただけで、いつになるか見当もつかないのですがね。

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読売

「米軍は中国に対抗する中距離ミサイルの開発を急いでおり、米陸軍が極超音速兵器「LRHW」(射程2700キロ・メートル超)を早ければ2023年中に実戦配備する計画だ。米インド太平洋軍には第1列島線上への配備計画があり、日本も有力候補と目されてきた。
在日米軍への配備を見送るのは、日本政府が昨年12月に閣議決定した「国家安全保障戦略」で反撃能力の保有が盛り込まれ、日本が長射程の巡航ミサイルなどを導入するためだ。反撃能力について議論した今月13日の日米首脳会談や11日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも中距離ミサイルは議題に上らなかった。見送りの意向は日本政府に非公式で伝えている」
(読売2023年1月23日)
日本への中距離ミサイル配備、米が見送りへ…「反撃能力」導入で不要と判断 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

う~ん、この中距離弾道ミサイルギャップは深刻です。
早急に手を打たないと、中国への抑止は成り立たないと思うんですが、日本への配備は見送りだそうで、いいんでしょうか。
またキナ臭くなると、在韓米軍は日本か、あるいは別地域へと戦闘機を移動させるでしょう。
韓国基地で地上で撃破されるより、日本への移動を選ぶということです。
「楊相勲主筆も台湾有事の際に、在韓米軍が手薄になることを懸念しています。このウォー・ゲームの以下のくだりを「米軍は韓国内の戦闘機の半数を他の地域に動かして運用するのが最善としている」と要約して引用しました。
いかなる形であれ、半島に緊張が走った瞬間、在韓米空軍は戦闘機などほぼすべての航空機をいったん日本に移すと見られています。
2017年に米朝間で戦争の危機が高まった際にも、在韓米軍に所属する多数の戦闘機が日本に飛来したことが確認されています。当時、米軍は韓国に住む米国籍の非戦闘員の日本への避難訓練を実施しましたが、退避が必要なのは市民だけではありません」
(鈴置前掲)
これを見て、韓国軍もまた日本へ退避したい、と日本に要請するかもしれません。
結果は分かりきっていますが、日本には在韓米軍機を収容するだけでイッパイイッパイですし、そこまでしてやる義理がないので、とうぜん拒否します。
日米には地位協定によって米軍機を引き受ける義務がありますが、韓国にはなにひとつ相互の軍の地位を定めた法律がない以上、いかなる形であれ、受け入れ義務は存在しません。
日韓で唯一あった軍事上の協定はGSOMIAでしたが、確かおたくは廃棄したいんでしたっけね。
もう少し燐国と友好的であれば、物品役務相互提供協定(ACSA)くらいできたものを。

鈴置氏も、すでに日本は韓国を捨て、台湾をパートナーとして選んでいるのだ、と突き放しています。

受け入れません。まず、それを可能にする法的な取り決めがありません。それに、台湾救援で手一杯な時に「第2次朝鮮戦争」への巻き込まれは迷惑至極です。
そもそも国民感情が許さないでしょう。日本の足を引っ張り続けてきた韓国から、都合のいい時だけ助けてくれと言われるのです。普通の人なら怒りだすはずです。韓国空軍機を受け入れれば、日本が北朝鮮の攻撃の的になるのです。
すでに、日本は中国に立ち向かうためのパートナーとして、韓国ではなく台湾を選びました。台湾の半導体メーカー、TSMCは熊本県に工場を建設中です。日本政府が積極的に誘致した結果で、この工場を中核に高性能のロジックの生態系を作るのが目的です。誘致のため、5000億円近い補助金も出します。
韓国のサムスン電子のロジック部門も、TSMCに次ぐ世界2位の技術水準を誇ります。でも、サムスン電子を誘致しようとの声はまったく起きなかった。韓国という国が中国側に付く可能性が台湾と比べ、はるかに高いからです。
実際、ここに至っても米国が画策する対中半導体封鎖網にも韓国は参加を渋っています」
(鈴置前掲)

自称「徴用工」問題においてもそうですが、球は日本側に渡っているから譲歩しろという者がいますが、逆です。
有事を考えた場合、我が国が頭を下げねばならない点はなにもありませんが、逆に今回のCSISのシミュレーションでも改めて明らかになったように、朝鮮半島有事ですがってくるのは韓国の側なのです。 

 

 

2023年2月 6日 (月)

米CSISの厳しい台湾有事シミュレーション

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5年前までは海自の指揮官らは、今なら防いでみせるが、今後5年以降はバランスは大きく崩れるだろうと言っていたことを思い出します。
それを裏付けるように、去る1月9日、米CSIS(戦略国際問題研究所)が中国による台湾侵攻ウォー・ゲーム「The First Battle of the Next War」を発表しました。
ポイントを紹介します。

結論から言えば、きわめて厳しい結果を双方にもたらすでしょう。

「中国の台湾侵攻は失敗する可能性が高いが、アメリカ及び日本を含むアメリカの同盟国にとって、それは「高い代償を伴う勝利」となるだろう──ワシントンに本拠を置くシンクタンクが24の机上演習用ウォーゲームでシミュレーションを行い、そんな予測を発表した」
(ニューズウィーク2023年1月12日)
台湾防衛の代償──米死傷者1万人、中国1.5万人、日本も多大な犠牲 CSISが24通りのウォーゲームの結果を発表(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

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CSIS

要約します。

①中国軍は侵攻時、最初にグアムと日本の米空軍基地にミサイルに先制攻撃を仕掛ける。米空軍は200機内外の戦闘機を失うが、その90%が離陸もできず地上で破壊される。
②台湾空軍は初回のミサイル攻撃でほぼ半分の戦力を失う。
③北朝鮮の韓国への攻撃が連動し、北は中国と同様に韓国の空軍基地に対する大量のミサイル攻撃で先制攻撃し、韓国空軍は地上で壊滅する。
④米海軍は2隻の空母を失う。
⑤自衛隊は先制攻撃によって、軍用機122機、艦船20数隻を失い、以後の戦闘には加わらない。

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CSIS

ここでCSISが指摘していくことは、周辺国に対する影響です。
空母がいきなり2隻揃って撃沈されたり、地上で200機もの航空機が撃破されるとはにわかに信じがたいのですが、とりあえずは置きます。
日本は河野太郎氏がミサイルディフェンスを白紙化してしまったために混迷しており、イージス艦と空自ではスポット的防衛に限定されています。
おそらく中国は中距離弾道ミサイルによる飽和攻撃を仕掛けてくるはずですから、半数以上を討ち漏らすかもしれません。
また当然の定石としてサイバー攻撃も同時に実施してくるでしょうから、これに対しては自衛隊は対策を検討し始めた段階で、現時点ではほぼ丸腰です。

この場合、空自は地上で壊滅します。

とまれ私たちはともすれば「台湾+米軍VS中国」という枠組みで見たがり、自衛隊はせいぜい周辺事態法の後方支援ていどで考える傾向があります。
しかし、CSISは中国は台湾侵攻に当たって、主敵を米軍の空軍力と定めて、これを徹底的に封じ込めることを意図すると見ています。
したがって、米空軍の最大の策源地である在日及び在韓米空軍基地を先制ミサイル攻撃することから、台湾侵攻は始まるとしています。
これによって日本と韓国は、好むと好まざるとに関わらず攻撃を受けることとなります。
つまり、台湾侵攻は当初から大規模な地域紛争として開始されるのです。

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CSIS

一方、中国側は台北を陥落させることができず、海軍は壊滅、空軍力もその大部分を失います。
損害は1万8千人にも達し、3万人が捕虜となります。
仮に一時的に勝利しても、住民の抵抗によって、支配は短期間で終わるでしょう。

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CSIS

①中国も酷い損失を被る。海軍は138隻が沈んで壊滅。
②水陸両用部隊も壊滅。渡海作戦中に1万5千人が船と共に溺死。
③空軍力は軍用機161機を喪失し壊滅。
④戦闘による死傷者は溺死者を別にして7000人に達し、捕虜は3万人を超える。

防衛側が勝利する4条件。

①台湾が抗戦すること。台湾政府が抗戦を放棄した場合、すべては終わる。
②米国の介入にためらいがないこと。武力介入が迅速、かつ直接的でなければならない。
③そのために、米軍が日本の基地から作戦を展開できることが絶対条件。
④中国の水陸両用作戦を妨げるために、米軍に対艦ミサイルの備蓄が十分にあること。

CSISの提言。

「ウクライナを例にとりつつ、著者らは欧米が物資を支援する「ウクライナ・モデル」は台湾には通用しないと指摘する。「中国が台湾を包囲し、何週間、ことによると何カ月も孤立させる恐れがある」からだ。
「台湾は侵攻に備えて、必要な物資を十分に備蓄しておくべきだ。また、アメリカが介入に手間取ったり、中途半端な介入をしたりすると、防衛は一層困難になる」と、著者らは釘を刺す。「米軍の死傷者が増え、中国が占領体制を強化し、戦闘がエスカレートするリスクが高まるだろう」
(NW前掲)

私見をはさまずに紹介しました。
いかが思われたでしょうか。


 

2023年2月 5日 (日)

日曜写真館 蘭の葉のとがりし先を初嵐

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月落ちてひとすぢ蘭の匂ひかな 大江丸

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紫の淡しと言はず蘭の花 後藤夜半

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むせび泣くあまりに高き蘭の香に 渡辺恭子

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われをにくむ人に贈らむ蘭の花 会津八一

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胃が痛む月夜や蘭の香の忽と 宮坂静生

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すんごりとなほなる蘭かことに月 広瀬惟然

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乱るゝは風の当字や蘭の花 横井也有

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蘭の香の言葉のはしにただよへり 米澤吾亦紅

2023年2月 4日 (土)

始まった沖縄の有事避難演習

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沖縄の離島住民の退避訓練が行われるようです。
すでに図上演習は、鹿児島県では実施済みです。

「武力攻撃を想定した訓練は、鹿児島県内では初めてです。
外国からの武力攻撃の可能性があるとして、離島の住民が島外に避難する事態を想定した図上訓練が、18日鹿児島県庁で行われました。
鹿児島県庁で行われた訓練。モニターには「屋久島、口永良部島が武力攻撃の可能性」とあります。
武力攻撃を想定した訓練は県内では初めてで、内閣官房や県などが開催しました。
訓練では県や屋久島町が実際に住民を避難させる案を説明しました。
このなかで、屋久島町の住民全員が島外に避難するには定期便だけでは最低6日かかるため臨時便で対応することや、島内の医療機関に入院している患者の対応などが検討されました」
(鹿児島テレビ2023年1月18日)
離島への武力攻撃に備え避難手段確認 鹿児島(鹿児島ニュースKTS) - Yahoo!ニュース

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鹿児島テレビ

鹿児島では「武力攻撃」を想定しており、今年度中には実際に住民も参加しての訓練をするようです。
これにならって沖縄県でも、避難計画の図上訓練がこの3月におこなわれるようでず。

もっとも危険な宮古、石垣のほうが鹿児島より3カ月も遅れています。
まだ図上演習の段階ですが、政府と自治体、警察、自衛隊、消防などの公的機関の連携と受け渡しを確認するために必須です。
やっとか、という感じですが、一歩前進には間違いありません。

「中国の南西諸島侵攻を想定し、沖縄の離島住民の避難方法を検証する初の図上訓練の計画の全容が28日、明らかになった。3月中旬に政府と沖縄県に加え、与那国島など離島の5市町村が参加して連絡態勢や民間の航空機、船舶を活用した迅速な避難を試す。台湾有事からの波及を含む南西諸島侵攻が懸念される中、政府は実際に住民を避難させる実動訓練につなげたい考えだ」
(産経 2023年1月28日)
〈独自〉沖縄初の有事避難検証へ 政府、県など図上訓練 - 産経ニュース (sankei.com)

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産経

現在、沖縄、鹿児島に限らず、大災害が頻発する中で、各県は先を争うようにして大規模避難訓練を実施しています。
参加数は昨年度に比べ1・7倍で、「武力侵略」が空論ではなく、北朝鮮や中国の弾道ミサイル発射やウクライナ戦争など、日本の安全保障環境で「戦争」が現実味を帯び始めたことが影響しているのでしょう。


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〈特報〉テロから武力侵攻想定へ 「住民不在」で実効性に疑問も、国民保護訓練 - 産経ニュース (sankei.com)

ただし上図でわかるように、大半の訓練に住民自身は不参加で、訓練の想定も現実味に欠けるという声は専門家から常々上がっていました。
たとえば、国は2020年5月、都道府県向けの通知で、国主導の訓練は「広域での高度な訓練」を行うと明記しました。
これはいままでのように大水、地震、噴火などの自然災害だけではなく、武力侵略を想定する県をまたいだ事態を想定しています。

また図上演習だけではなく、去年1月には国主導で、高知県民を山口、愛媛両県に実際に少数を移動する大規模訓練もなされました。
これは沖縄で予定されている大規模避難計画のひな型だと思えばよいでしょう。

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武力攻撃想定し「全高知県民避難訓練」全国初の実施、33機関参加 | 高知新聞 (kochinews.co.jp)

「(高知県の)訓練の想定は、「某国から日本への武力攻撃の可能性の示唆」があり、検討の結果、「2カ月後に高知県が攻撃目標となり得る」と判断された。国は国民保護法の「武力攻撃予測事態」に認定し、全県民を山口、愛媛両県に飛行機と船、バスで1カ月かけて避難させる―との内容。
14日は関連省庁や自衛隊、海上保安庁、高知、山口、愛媛の3県、高知市と南国市など33機関・計240人が参加。高知港、高知龍馬空港を使った移送の手順を確認する図上シミュレーションを行う。さらに、高知市と南国市のスポーツ施設から、住民役のエキストラをバスで港、空港に運ぶ実動訓練も実施する。
武力攻撃の想定について、内閣府は「広域避難という訓練の目的からシチュエーションを考えており、蓋然(がいぜん)性は考慮していない。愛媛、山口を避難先としたのも、南海トラフ地震に備えて高知県と連携していることを踏まえた」と説明。県危機管理部は「地震時の備えにもつながる」とするが、県庁内には「現実味を欠く」と戸惑う声もある」
(高知新聞2022年1月13日)
高知県に武力攻撃、全県民脱出せよー 国と県など1/14訓練 「現実味欠く」疑問の声も | 高知新聞 (kochinews.co.jp)

高知の場合、33機関約240人 程度で演習を行っていますが、実際に人と機関を動かすという演習はいかに実効性に欠けると言われようと、やらねばならないのです。
ここですり合わせができていないと、実際に演習で人と機関を動かす場合に必ず混乱します。
沖縄ではこのような訓練が想定されています。

「図上訓練は政府では内閣官房と消防庁、国土交通省が主体となる。沖縄の離島では①台湾との距離が110キロの与那国町②尖閣諸島のある石垣市③宮古島市④多良間(たらま)村⑤竹富(たけとみ)町-の5市町村が参加する。
訓練は武力攻撃事態などへの政府や自治体の対処を規定している国民保護法に基づいて行う。想定は武力攻撃が予測される事態を政府が認定を検討している早期の段階で住民避難に着手する。より早く、多くの住民を避難させる輸送手段を確保できるか検証する。
住民避難には通常から離島に運航している民間の航空機と船舶を使う。
5つの離島で観光客を含めて約12万人の避難のために可能な限り早く、多くの航空機と船舶を離島に送り込む。そのような事態になれば沖縄本島も住民は屋内避難の対象になるため、離島住民の避難先は九州とする」
(産経前掲)

避難の流れはこうなります。
石垣、宮古、多良間、竹富の5市町村は、住民に危機が迫っていることを認識してもらい、集落などの単位ごとに空港と港に集まってもらう輸送手段の確保と要領を説明します。
宮古・八重山からの脱出を想定している人数は、沖縄県の試算で1日2万5千人です。
鹿児島と違って、至近距離に本土がないので困難な避難となるでしょう。

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沖縄タイムス

「有事における住民避難に関し、沖縄県は16日、民間の航空機や船舶の輸送力を全て確保した場合、宮古、八重山の先島地方から県外へ移動できる1日当たりの人数は最大約2万500人、平時の約9300人の倍以上になるとの試算を初めて示した。避難先は鹿児島県や福岡県など九州7県を想定している」
(沖縄タイムス2022年12月17日)
有事の住民避難、1日最大2万500人 宮古・八重山から九州へ 沖縄県が初の試算 | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス (okinawatimes.co.jp)

2020年の国勢調査では宮古の人口が5万4020人、八重山が5万3297人ですから、宮古の避難想定数が1万500人、石垣で1万、いずれも5分の1ていどということになります。
島に残されたひとたちにはシェルターなどを準備せねばなりません。

宮古・八重山のシェルター建設は進んでいないようです。
沖タイの阿部岳記者はこんなツイートをしています。

「きょうは政府が先島諸島に建設を検討しているシェルターについて。不穏です。例えば中国がシェルターを造り始めたら、身構えますよね。
シェルターは一見あった方がよさそうで、反対しにくそうに見える。でも、ミサイル発射から着弾までのわずかな時間に人々が逃げ込める距離に造ろうとしたら、いくつ造っても足りない。
命を守る効果は限定的。緊張を高め、戦争を呼び寄せるリスクが大きい」
阿部岳 / ABE Takashi(@ABETakashiOki)さん / Twitter

こういう人たちと議論しても始まりませんが、記者ならともかく県知事までがこの調子ですからなんともかともです。
命ど宝だとか、先島切り捨てを許さない、とか言いながら、島民が身を守る最低限の施設まで「戦争準備」となってしまうのですから話になりません。
しかし、こういう空気に押されてシェルター建設はまだ青写真もできていないようです。

阿部記者は巨大な核シェルターのようなものを考えているようですが、不勉強ですね。
ヨーロッパの例を見ると、いろいろの大きさがあるのです。
むしろ大きい施設をひとつ作るのではなく、公民館や市役所、大きいビルの地下に作ってあります。

シェルターを設置すると不動産税が軽減されたり、建設費に補助金がでる例もあるようです。
もっとも進んだシェルター保有国はスイスです。

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「スイス国内にはおよそ30万の核シェルターが個人の家屋、施設、病院といった場所にあり、5100の公共の防衛施設がる。通算すると860万人もの人々が避難できる。これは、当時のスイスの人口比で考えると、114%もカバーできる計算になる。
なぜなら、1962年の米ソ冷戦下でのキューバ危機を受けて、1963年に全戸に核シェルターの設置を義務付ける連邦法が成立している。
民間防衛に関する連邦法の第45条と第46条では「全ての住民のために住居から避難可能な近隣に避難場所を用意する」そして「 家屋所有者は、家屋、宿泊施設等を建築する際には、避難の部屋を建設し、必要な設備を設置、管理する」という連邦法の元に1963年以降に建設されたほぼすべての家屋で避難場所が設置されている」
世界の核シェルター事情 (takayakoumuten.co.jp)

スイスで阿部記者のような発言をしたら、鼻先で笑われるでしょうね。
鹿児島県の場合、避難に要する期間は6日間と試算されていますから、その準備を含めて台湾有事を想定した場合、最低でも一カ月以上前には準備に取りかからねばなりません。
同時並行でシェルターも建設する必要があります。

とまれ、いまでも遅すぎるくらいです。
デニー知事なら「戦争を前提としている。避難計画をすれば中国を刺激する」などといいそうですが。

ありとあらゆる手段で先島の人々を守らねばなりません。

2023年2月 3日 (金)

一度「尖閣」を政治から切り離して環境問題で考えてみたらいかがですか

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石垣市が、同市の施政地域である尖閣諸島を東海大学と共に現地調査しました。
今回はドローンを使った空撮と、付近海面の水質調査、漂着ゴミなどを調べました。
画期的なことです。

「沖縄県石垣市は29、30の両日、同市の尖閣諸島周辺で環境調査を行い、ドローンを使った上空からの調査を初めて実施した。尖閣諸島の魚釣島ではヤギの食害などによる自然破壊が懸念されており、市は今後、上空からの映像をもとに実態解明を急ぐ。調査船には東海大の海洋研究チームのほか中山義隆市長や市議らも乗船し、産経新聞記者も初めて同行取材した。
同市による調査は約1年ぶり2回目。平成24年には東京都も現地調査を実施したが、上陸はせず、船上から島の様子を視認するにとどまっていた。今回は尖閣諸島の魚釣島に調査船が接近し、ドローンを飛ばして上空約150メートルから計4回、あわせて30分以上にわたり同島を撮影することに成功した」
(産経1月31日)
尖閣諸島で初のドローン調査 中国公船が領海侵入し、接近 - 産経ニュース (sankei.com)

ドローンを使った尖閣の上空調査によれば、尖閣の生態系の破壊は急速に進行しているようです。

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(16) 尖閣調査 迫る中国公船 - YouTube

「中山義隆市長が会見し、魚釣島の山肌が崩落するなど自然環境が急激に悪化している現状を説明。「早急な対応が必要」と話した。調査チームの山田吉彦・東海大教授(海洋政策)も映像をもとに「生態系を維持できない島になりつつある」と述べ、危機感をあらわにした」
(産経1月31日)
尖閣の上空映像初公開 急激に環境悪化か 石垣市長「早急な対応必要」(産経新聞) - Yahoo!ニュース

尖閣は、かつて某政治団体が放した山羊が繁殖してしまい、草を食い荒らしてハゲ山化させてしまいました。
いったん表土がはがされると、無数のひび割れが生じて、やがて雨水によって地盤の崩落が始まります。
また過剰な山羊の糞によって、リン酸過多とになり、やがて不毛な島と化します。

実際に沢小笠原群島の媒島(なこうどじま)では、野生化した山羊が生態系を攪乱した例があります。

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野生化したヤギ | NHK for School

山羊の食欲は旺盛で植物を選びません。特に棘がない植物が多いこの島では、短期間で喰い荒らされていきました。
かつては美しい緑の島だった媒島では見る見るうちに裸のハゲ山の島に変わってしまいました。

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同上

ハゲ山と化した島の土壌は土を食い止める力を失い、島周辺の海に赤土が流出し珊瑚礁を殺します。
こうなった場合、しっかりと土留めをして、山羊を捕獲するしかありません。

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同上

こうして媒島一帯は見る影もない生態系になっていったのです。

今、小笠原では環境省による再生計画が進行しています。
Microsoft Word - 070613基本計画【決定稿】.doc (ogasawara-info.jp)
尖閣諸島に対しても同様の計画が必要です。

人が長期間立ち入らない無人島と接触する場合、慎重な事前調査が必要で、それ相応の自然環境を保全する知見も必要なはずですが、いきなり外部の生態系から孤島に山羊を放つとは無責任にもほどがあります。
山羊の繁殖力の強さを、なにも考慮していなかったようです。

結果として、この団体は尖閣を防衛するといいながら、その自然を棄損してしまいました。
今回の中山市長のように、専門家のアドバイスを受けてやるべきでした。

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同上

「魚釣島では昭和53年に政治団体が持ち込んだヤギが繁殖し、草木を食べ尽くすなどの被害が指摘されている。調査チームの山田教授は「草木が減ったため山が水をためる能力を失い、崩落が急速に進んでいる。漂流ゴミも多く、危機的な状況といえる」と話した」
(産経前掲)

生態系が危機に貧しているとわかった以上、早急に尖閣の自然を再生せねばならないはずですが、難しいようです。
土地規正法がネックになっているのです。

「安全保障上重要な土地の利用を規制する土地利用規制法の全面施行に伴い、政府が昨年末に指定した第1弾の対象区域58カ所への効力が2月から発生する。政府は土地の利用状況調査に乗り出し、場合によっては利用規制を講じる。ただ、今回の指定対象には中国が領海侵入を繰り返す尖閣諸島(沖縄県石垣市)は入らなかった」
(産経1月27日)
【岸田政権考】土地規制法 尖閣の指定を見送った理由は - 産経ニュース (sankei.com)

この土地規正法は、原発や自衛隊基地周辺の土地や離島が外国人に取得されたりすることに対する法律でしたが、これは原則として私有地を対象としています。

「同法の対象となる国境に近い離島は、国が現在、保全・管理を行っている島のうち、原則として国と地方公共団体以外が所有する土地を含む島となっている。
魚釣島や北小島、久場島など複数の島々で構成される尖閣諸島は、すでに大半の島が国有化されており、同法の対象は個人所有の久場島に限られる見通し。その久場島も国が借り上げている。第三者が土地を買ったり借りたりするなど、具体的な動きができない状態にあるのだ」
(産経前掲)

まったく馬鹿げた話で、これでは安全保障の為に作られた法律によって、尖閣が守られないということになってしまいます。
尖閣の自然保全が急務なことはわかりきったことで、法の運用などは政府の判断でどうにでもなる問題ではないですか。
要は、中国を刺激したくない、当たらず騒がず、臭いものには蓋、決断は後の政権に先送り、といういかにも岸田政権らしい及び腰が原因です。

しかし中国は待ってくれません。
今回も、中国海警察が調査水域で待ち構えていました。
しかし今回画期的なことには、日本の調査船を海保が「艦隊」で全力ガードしたことです。

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同上

「レーダーの中央に位置する調査船の左右と後方に、船影が3つ浮かんでいる。海保巡視船だ。少し離れた左側にも船影が2つある。これは中国公船だ。しかし別の船影2つがぴったりと張りついている。海保巡視船がスクラムを組み、中国公船を調査船に寄せ付けないでいるのだ」
(産経前掲)

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同上

この日、海保は管区外からも警備船を集結させて、押し寄せる中国海警との間に防壁を作って徹底的にガードに努めました。
日頃の日本漁船の保護といい、海保には頭が下がります。
まさに守護神です。

しかし実にこの間11時間もの間、中国海警は領海侵犯を続け、このような「警告」を海保に発していたそうです。

「海上保安庁「こちらは日本国海上保安庁巡視船。尖閣諸島は日本の領土である」
中国海警局「こちらは海警船。貴船の主張は受け入れられない。釣魚島およびその付属の島々は、古来から中国の固有領土である。その周辺12海里は中国の領海である。貴船はわが国の領海に侵入した、直ちに退去してください」
(産経前掲)

ちなみに中国中央電子台はこのような妄想ニュースを流したそうです。

[北京 30日 ロイター] - 中国海警局が30日、尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺の海域から日本の船舶5隻を追い払ったと、中国国営中央テレビ(CCTV)が報じた。
報道によると、海警局の報道官は5隻が「釣魚島周辺の領海に違法に侵入」し、海警局の船によって追い払われたと指摘。「日本側に対し、この海域でのあらゆる違法行為を直ちに停止し、このような事態が二度と起こらないようにすることを求める」とした」
(ロイター1月31日)
中国海警局、日本の船舶追い払ったと主張 尖閣周辺で=国営TV | ロイター (reuters.com)

なにを言っているのやら。

そもそも政府が国有化に伴う責任を果たそうとせずに、事実上放置してきたことがこの尖閣問題をいっそうこじらせてきました。
日本の立場は一貫して「領土問題は存在しない」です。
なにもない以上、おかしな中国への忖度は無用のはずです。
尖閣の調査と山羊の捕獲、植林、サンゴなどの自然再生、同時に灯台の設置、付近海域の調査などは、国土保全、海上交通の安全確保としてとうぜんの国としての義務です。

それらの作業をするために一定数の公務員の常駐も必要でしょう。
なぜしないのか、そのほうが不思議です。
今のように、国有地であることがやらない理由になるようでは困ります。
一度政治から切り離して、尖閣の生態系保全を考える時なのです。
切り離して淡々と環境保護をすることが、中国へのもっともよい態度表明となるはずです。

いいかげんにしゃっきりしたらいかがですか、岸田さん。

 

2023年2月 2日 (木)

バイデンの失敗・そして中東諸国は米国に離反した

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世界はバイデン政権になってから、いっそう不安定化してしまいました。
それはウクライナ戦争で固まるどころか、いっそう揺れはひどくなり、米国の伝統的同盟国だったはずのサウジはロシアへの経済制裁に協力しなかったばかりか、ドル決済から離脱してもかまわないとまで言い始めています。

「米ドルやユーロであろうと、サウジ・リヤルであろうと、貿易決済の方法について協議することに何ら問題はない。我々は世界の貿易改善に寄与する議論を拒んだり、除外したりしているとは考えていない」
サウジアラビア、米ドル以外の通貨での貿易に関する協議にオープン - ブルームバーグ (bloomberg.com)

この動揺を抑えるべく、ブリンケン国務長官は中東を訪問している最中です。
先日、東エルサレムでイスラエル人を襲うテロが起き、それに対してイスラエル軍は報復にでています。

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ブリンケン米国務長官、パレスチナを訪問 追加支援の拠出を表明:朝日新聞デジタル (asahi.com)

「27日に東エルサレムの入植者地区にあるシナゴーグの外でパレスチナ人の銃を持った男が7人を殺害し、28日にも別の襲撃があった。
26日には、ヨルダン川西岸のジェニン難民キャンプでイスラエル軍の襲撃があり、ここ数年で最も死者が多い軍事作戦の一つで、9人が死亡している。イスラエルは、イスラム聖戦の過激派を標的とし、ロケット砲撃への報復としてハマスが支配するガザ地区を攻撃したと発表した」
(アラブニュース2023年1月30日)
ブリンケン氏、カイロに到着し中東訪問を開始|ARAB NEWS

もう見飽きたパターンです。いったいどれだけ繰り返したら気が済むのでしょうか。
イランから武器をもらったハマスなどのテロ組織が無差別テロを行い、それに対してイスラエル軍が報復するというパターンです。
そしてメディアはイスラエル軍の空爆のみ非難し、テロリスト側は「民衆の抵抗」と描く、いつもどおりです。
ただしいくらイスラエルを非難してみても、原因の根が断ち切れていないのですから、どこまでも続きます。

ブリンケンはパレスチナ自治政府のアッバスに「イスラエルと独立したパレスチナ国家が平和的に共存する「2国家解決」の支持を表明」(朝日 2月1日)したそうですが、ブリンケンは、パレスチナとイスラエルの二国間だけでこの問題を解決できると本気で思っているのでしょうか。
パレスチナ自治政府が掲げてきたのが「アラブの大義」である以上、共存関係はアラブ世界全体とイスラエルとの間に成立しなければならないはずです。
しかも共存の最大の障害物であるイランと戦うという意志で統一されねば、ほんとうの「共存」は生まれないのです。

実は2年前すでに抜本的解決策は出来ていました。それがアブラハム合意です。
しかもトランプは、プランを出すだけではなく、慎重に数年かけて段階を踏んでそれを実現してしまったのです。

これを壊したのが、ブリンケンのボスのバイデン御大です。
彼が、米国外交の金字塔ともいうべきこのアブラハム合意を壊してしまい、またテロと報復の無限ループが始まってしまったのです。

仮にトランプに2期目があったなら、イスラエルとサウジやUEAなどの湾岸諸国との経済や社会交流はを通した友好関係はじっくりと進み、一方イランは厳しい包囲下に置かれてしまい、中東制覇の夢も頓挫していたはずでした。

ところが、核合意が再建されてしまい、いまやイランは後述するようにロシアのウクライナ侵略を軍事的に支える最大の支援国と化しています。

アブラハム合意は中東和平の合意であると同時に、イラン包囲網の形成でした。
イスラエルとアラブ首長国連邦が国交正常化に合意し、9月にはバーレーンも加わり、これをエジプトも歓迎し、ヨルダンも平和交渉の前進につながると発表しました。

トランプは、この画期的中東和平案を段階を踏んで実現しています。
まず2017年12月、トランプはエルサレムをイスラエルの首都として認めると発表し、さらに19年11月には、イスラエルの占領地区の入植地を国際法違反とは認めない、と方針転換しました。
そして2020年1月29日、満を持して中東和平案を発表しましたが、その骨子としてパレスチナを独立国家として承認する一方、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地でイスラエルの主権を認め、エルサレムをイスラエルの首都として認める、というものでした。

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ネタニエフ首相とトランプ
トランプ氏、中東和平案を発表 パレスチナは反発 - BBCニュース

トランプは当時こう述べていました。

「今日、イスラエルは平和に向けて大きく一歩前進した。私のビジョンは、両者にとってウィンウィンとなるものだ。パレスチナ国家が成立してもイスラエルの安全を脅かさないようにする、現実的な二国家共存策だ」
(BBC 2020年1月29日)

後にバイデンがこの合意を反故にすることでわかるのですが、実に巧妙に考えられた合意案でした。
これをパレスチナ自治政府のアッバスが呑めば、パレスチナ紛争は終わり、自動的にイランからサウジまでを支配してきた「パレスチナの大義」の旗印は消滅するのです。
ちなみに「パレステナの大義」とは、イスラエルの完全否認であり、ユダヤ人を海に追い落とすまで永遠に戦い続けるという意味です。
この非現実的にして、過激なこの「パレスチナの大義」幻想は、イランによって温存され、その手先のハマスはロケット弾テロを飽きずに繰り返しています。

中東諸国から多大な物的支援をもらい「民族解放貴族」の地位に安住していたパレスチナ暫定政府は、これを「謀略」だとして反発し、暴動に訴えました。
ばかな話です。パレスチナには現実的判断ができる指導者はいないのでしょうか。

トランプの中東和平案はこれで終わりではなく、その1年半後の2020年8月の「アブラハム合意」として結実します。
アブラハム合意 - Wikipedia

アブラハム合意の意味はこのように要約されます。

①パレスチナ問題が他のあらゆる問題の拒否に繋がらないよう分離したこと。
②スンニ派のアラブ諸国を、それを脅かすシーア派の国(イラン)に対抗できるよう束ねたこと

この政策の要点は、たんなる目先の中東和平の合意ではなく、むしろイランをパレスチナ問題から切り離して孤立化させることにありました。ですから、アブラハム合意は18年5月のトランプによる合意からの離脱とワンセットで見るべきです。

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「平和の輪」は、我々の紛争地域を救うことができる|ARAB NEWS

トランプは離脱の理由として、核計画の制限が期限付きなうえ、弾道ミサイル開発も制限していないことなどを挙げ、制裁の再開しました。
完全な包囲網を作られてしまったとわかったイランは猛反発、オバマがかけた梯子で二階にあがったていた欧州首脳も激怒し、「深刻な懸念」を表明しました。

ところが、この画期的なトランプの中東政策を覆す者が現れたのです。
それも米国内から、しかも大統領として。
それがバイデンです。

世界は均一に歴史が進んでいるわけではありません。
リベラルが好きな進歩史観によれば、歴史は一直線に進化するように描かれていますが、そうではありません。
いまだ戦国時代の地域もあれば、古代中世を延々とやっている国もあります。
さしずめ中東はいまだに戦国時代であって、ロシアや中国など中世世界の発想から出られないでいます。

バイデンは、いかにもアメリカン・リベラルらしい直線的進歩史観で中東と対応しようとしました。
トランプが利と利を巧みに組み合わせて、複雑な中東和平案を練り上げたのに対して、バイデンは人権オンリーですからなんともかとも。

サウジのような皇太子が殺人をするような非民主的な国家よりも、イランと対話することを選んでしまったのです。
バイデンはトランプが廃棄したイラン核合意に回帰し、融和的政策を打ち出そうとしました。
それを見ていたサウジなどの湾岸諸国は、一斉に米国からの離反を開始します。

このことによる影響は、ウクライナ戦争に対して米国が呼びかけた経済制裁に、中東諸国が従わなかったことで明らかになりました。
中東は経済制裁には加わらず、ロシア非難にも消極的でした。

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中東アフリカ、対ロ制裁に冷ややか 食糧や兵器で依存: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「ウクライナに侵攻したロシアへの米欧主導の制裁に、中東アフリカ諸国が冷ややかだ。食糧や兵器をロシアに頼る国が多く、産油国の連帯もある。人権を理由にした対ロ圧力にはいっそう消極的だ。ロシアが孤立を深めるばかりと言い切れない一因になっている。
国連総会で7日採択されたロシアの人権理事会の理事国資格を停止する決議は、過去の決議より態度を後退させる国が急増した。人道状況の改善を求めた3月24日の決議で棄権したが今回は反対に回った18カ国のうち、中東アフリカからは8カ国だった。賛成から棄権に転じた39カ国をみると過半を占めた」
(日経2022年4月14日)

これは、人権をなにかといえば口にする米国を疎ましく思っていたこともある上に、サウジやUAEは原油生産を巡って、世界第2位のロシアと利害を共有していたからです。
ウクライナ侵攻直後の去年3月上旬、プーチンはサウジとUAEの指導者と相次いで電話協議し、原油生産を巡り「協調を続ける」ことで一致した。

これは欧米各国のエネルギー危機を救済するために増産を呼びかけた、バイデンに対するあてつけでした。

一方、トランプのアブラハム合意によって外堀を埋められていた状態のイランは一気に力を取り戻し、ロシアと同盟を組んで軍事支援を強化しました。
いまやロシアのドローンの過半はイラン製であり、その操作や訓練にも協力しているといわれています。

弾道ミサイルの供与も約束したようです。
また今後、ドローンの生産ラインもロシア国内に作るようです。

ロシアはお返しに最新鋭の戦闘機を大量に供与しました。
これで中東の空軍のバランスは、大きくイランに傾くことでしょう。

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ロシアとイランが接近、今なぜ?自爆ドローンとは?深まる懸念 | NHK

「ウクライナに侵攻したロシアと、ロシアにドローン無人機)を供給するイランがさらに軍事協力を深めているとして、米英両国が9日、懸念を表明した。ロシアで攻撃用ドローンを共同生産したり、イランが弾道ミサイルを供与したりする検討が進んでいるとみて、警戒を強めている。
 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官は、9日の電話会見で「ロシアがイランに前例のないレベルの軍事・技術支援をしている」と指摘。全面的な防衛協力へと移行しつつあるとの認識を示し、「ウクライナだけでなくイランの近隣国にも脅威だ」と危機感を示した」
(朝日2022年12月10日)
イランとロシアを米英が警戒 ドローン共同生産やミサイル供与検討か:朝日新聞デジタル (asahi.com)

プーチンは2022年7月、軍事侵攻後、旧ソビエト諸国以外では初めての外国訪問としてイランを選びました。
最高指導者ハメネイやライシ大統領と相次いで会談して、経済や安全保障などの分野で協力を深めることで一致し、ハメネイから直接、侵攻に踏み切ったロシアの立場への理解を取り付けました。
現在は、貿易全体に占めるロシアとの取り引きは去年実績で輸入が3%、輸出が1%ですが、イランはもまた厳しい制裁によって包囲されており、ロシアはドル決済を伴わない貴重な抜け道となっていくようです。
いまやこの両国は陸上ルートで結ばれ、緊密な物資の往来をするまでになっています。

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2022年7月19日テヘランを訪問したプーチン大統領、ハメネイ師(中央)、ライシ大統領
NHK

いまやこの両国は、陸上ルートで結ばれ、緊密な物資の往来をするまでになっています。

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「スエズ運河に対抗する新たなルートが誕生するかもしれない。インドからイランを経由して中央アジアを抜けてロシアから北ヨーロッパに繋がるというルートである。このプロジェクトの実現に向けて主導しているのがロシア、アゼルバイジャン、イランの3か国である」
(白石和幸 

また、イランはかねてから核兵器製造と弾道ミサイル技術を与えてきた中国との関係もいっそう密にしており、北朝鮮を組み込んだ関係はいっそう強化されています。
このならず者連合のルートを使って、ロシアは榴弾砲の弾薬やドローンを大量にもらい受けています。
バイデンが愚かな中東政策をとらなければ、ウクライナはもっと楽に侵略を食い止められたはずです。

一方、もう一方の当事者であるイスラエルは、アブラハム合意を廃棄されてしてしまったために、再び敵によって周囲を固められる結果となりました。
とうぜんのこととして、そこから生まれてくるのは右派政権でした。

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イスラエルで右派政権誕生へ 総選挙で野党が第1党に、与党勢力伸び悩み:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

「イスラエル国会(定数120)は29日、ネタニヤフ元首相主導の連立政権を賛成多数で承認、ネタニヤフ新政権が正式に発足した。1年半ぶりに政権復帰するネタニヤフ氏の新連立政権には宗教政党や極右政党が参加し、イスラエル史上最も右寄りの政権となる」
(産経2022年12月30日)
ネタニヤフ新政権発足 イスラエル史上「最右派」 - 産経ニュース (sankei.com)

戦国時代が終わろうとしていた中東を、再び戦国の世に戻してしまったのがバイデンです。
これは中東に限られず、ウクライナに飛び火し、世界に影響を与えています。


2023年2月 1日 (水)

産経「ホワイト国」解除記事の行間を読む

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先日、産経がスクープで「ホワイト国に復帰」を抜きました。

「政府は、韓国を輸出管理で優遇する「ホワイト国(優遇対象国)」に再指定し、対韓輸出管理を緩和する方向で検討していることが分かった。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が関係改善を模索していることを踏まえた。いわゆる徴用工訴訟問題を巡る韓国の解決策も見極めた上で、再指定の可否を慎重に判断する。複数の政府関係者が27日、明らかにした」
(産経2023年1月23日)
<独自>韓国の「ホワイト国」復帰検討、徴用工見極め判断 - 産経ニュース (sankei.com) 

これは官邸情報に一番精通している産経が報じたので、驚きが走りました。
朝日あたりだったら、ふふん、またコリアに忖度しやがったな、ていどだったでしょうがね。
当初、私も産経の飛ばしだと思って、スルーしていました。

しかしこの記事、よく読むと、産経とも思えないおかしな解説を加えているのです。

「対韓輸出管理を巡っては、当時の安倍晋三政権が令和元年8月、徴用工問題をめぐり文在寅(ムン・ジェイン)政権が具体的な対応を示さないことへの事実上の対抗措置として韓国をホワイト国から除外。半導体材料3品目の輸出管理も厳格化した。韓国は輸出管理措置の解除を求めてきたが、日本は韓国の輸出管理体制の不備などを理由に応じてこなかった」
(産経前掲)

おいおい、何を言ってるんだい、産経さん。
日本政府は安全保障上の懸念から大量破壊兵器の材料となる物品を輸出管理規制したのであって、「徴用工への対抗措置」ではありませんよ。たまたま時期が重なっただけです。
自称「徴用工」はコリアが勝手に作り上げた捏造歴史問題であり、一方、輸出管理規制強化問題は安全保障上の問題なのです。
ただしあたりまえですが、この時期になったというのはまったく無関係だったのではなく、ムン政権になってからの慰安婦財団解体による日韓合意の一方的廃棄、自称「徴用工」判決を含めた韓国の非友好的・非合理な行為の数々が、日本政府の腹をくくらせてしまったことはありえるでしょう。
しかし、あくまでもコレはコレ、アレはアレであって、混同してはなりません。

と、ここまではイロハのイで、こんな初歩的なことを、たぶんこの記事を書いている官邸番の記者が知らないはずがありません。
そこで裏目読みすると、ひょっとして今の岸田官邸は自称「徴用工」問題を輸出管理規制強化の解除とワンセットで考えているとも受け取れます。

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外務省の船越健裕アジア大洋州局長(写真左、EPA時事)と韓国外務省の徐旻廷アジア太平洋局長
「徴用」めぐる問題 日韓外務省局長 韓国側解決案について協議 | NHK | 徴用問題

というのは内容こそ公表されていませんが、現在、日韓局長会議が頻繁に開かれて、しきりとナニかをすり合わせているのは事実なのです。
まず12月30日、そしてわずか2週間後の1月16日に立て続けに日韓局長級会談をしているのです。
いままで疎遠だった日韓局長会議をこれだけ詰めてやっている以上、おそらくはなんらかの合意を目指して急ピッチで協議を重ねていることだけ間違いありません。

松野官房長官は会見で、自称「徴用工」問題について協議していることだけは明らかにしています。

「松野官房長官
1月16日に船越外務省アジア大洋州局長は訪日中の徐旻廷韓国外交部アジア太平洋局長との間で、日韓局長協議を実施しました。
先般の日韓首脳会談において、両首脳が日韓間の懸案の早期解決を図ることで改めて一致したことを受け、昨年 12 月の協議に続き、双方は旧朝鮮半島出身労働者問題を含め、日韓関係全般について率直な意見交換を行いました。
その上で、双方は懸案を解決して日韓関係を健全な関係に戻し、更に発展させるべく外交当局間の意思疎通を継続していくことで改めて一致しました。
これ以上の詳細については、外交上のやり取りであり、差し控えたいと思います」
(日テレ2023年1月16日)
【全文】日韓局長協議「懸案を解決して健全な関係に」官房長官会見(1/16午後)(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース 


また林外相もパク・チン外相が、電話会談でこの自称「徴用工」問題の「最終盤の解決」を話しあったとされています。
林氏はいうまでもなく、早期解決論者です。

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林外相 韓国外相候補のパク氏と会談 懸案解決に向け協議で一致 | NHK | 日韓関係

「韓国側が、先週、この案を明らかにして以降、林外務大臣と韓国のパク・チン外相が電話で会談したほか、外務省の担当局長どうしが意見を交わすなど、日韓両政府間のやり取りが活発になっていて、日本の外務省幹部の1人は「最終盤にあることは間違いない」としています。
この案について、日本政府内では「徴用」をめぐる問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みだとする日本の立場と矛盾せず、これをもとに解決策が取りまとめられれば受け入れも可能だという意見が出ています」
(NHK2023年1月18日)
「徴用」日本企業に弁済を求めない担保が不可欠 日本政府 | NHK | 徴用問題

おいおい、なにが「日韓請求権協定で解決済みだとする日本の立場と矛盾せず、これをもとに解決策が取りまとめられれば受け入れも可能だ」ですか。
そもそも韓国政府が行っている「財団肩代わり」案は第三者弁済案であって、たんに支払いを日本企業に請求しないというだけにすぎません。

この考え方自体、いまだ個人保障は残っているという立場ですから、既に1965年の日韓請求権協定において完全に終わっている、という日本政府の原則と対立するものです。
それをムン政権とその傀儡司法が日本企業にぶつけるというトンデモをしたために国際問題化したにすぎません。
わが国は筋違いな攻撃を受けただけで、知ったこっちゃないのです。

今回の第三者弁済案は、韓国が内政上の問題として従来怠ったきた個人保障を自らするというだけのことで、どうぞご勝手に、やっとこれで韓国政府が個人補償をするという原点に戻りましたね、というだけのことです。
それをして日本への妥協だとか、解決案だとか、日韓のトゲが抜けたなんて思わないでいただきたい。
本来、とっくにやるべきだった韓国政府がやるというだけのことですから。

日本にはありもしない歴史問題で、ムンがご迷惑をおかけしました、と謝罪する類のことです。
日本はコリアと違って、なにかと謝罪を求める体質がないので黙っていますが、あらぬ二国間紛争を吹きかけられたことについて一札あってしかるべきでしょう。

そして「ホワイト国」、つまり現在の用語でいう「グループA」に「再指定」するという案件はまったく別次元です。
なぜこれが一緒になって、まるで韓国案の引き出物のようにしてここで登場せねばならないのか、さっぱりわかりません。
なにを考えているのやら。

どうやら岸田氏は、手土産で「ホワイト国」再認定しただけではなく、「痛切な反省とお詫び」もしてしまうようです。

「政府は元徴用工訴訟問題で韓国の原告らが求める日本側の謝罪を巡り、日本企業の賠償を韓国財団に肩代わりさせる解決案を韓国政府が正式決定すれば、過去の政府談話を継承する立場を改めて説明して「痛切な反省」と「おわびの気持ち」を示す方向で検討に入った。日本との関係改善に意欲的な尹錫悦政権を後押しする狙い。政府関係者が28日、明らかにした」
(共同1月28日)
政府「おわび」継承説明へ 韓国肩代わり案後押し(共同通信) - Yahoo!ニュース

ここまでやる気だから、官邸は今ナニを韓国と協議しているのか、自民党内にも知らせていなかったのです。
宏池会外交丸出しです。


 

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