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2023年2月 2日 (木)

バイデンの失敗・そして中東諸国は米国に離反した

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世界はバイデン政権になってから、いっそう不安定化してしまいました。
それはウクライナ戦争で固まるどころか、いっそう揺れはひどくなり、米国の伝統的同盟国だったはずのサウジはロシアへの経済制裁に協力しなかったばかりか、ドル決済から離脱してもかまわないとまで言い始めています。

「米ドルやユーロであろうと、サウジ・リヤルであろうと、貿易決済の方法について協議することに何ら問題はない。我々は世界の貿易改善に寄与する議論を拒んだり、除外したりしているとは考えていない」
サウジアラビア、米ドル以外の通貨での貿易に関する協議にオープン - ブルームバーグ (bloomberg.com)

この動揺を抑えるべく、ブリンケン国務長官は中東を訪問している最中です。
先日、東エルサレムでイスラエル人を襲うテロが起き、それに対してイスラエル軍は報復にでています。

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ブリンケン米国務長官、パレスチナを訪問 追加支援の拠出を表明:朝日新聞デジタル (asahi.com)

「27日に東エルサレムの入植者地区にあるシナゴーグの外でパレスチナ人の銃を持った男が7人を殺害し、28日にも別の襲撃があった。
26日には、ヨルダン川西岸のジェニン難民キャンプでイスラエル軍の襲撃があり、ここ数年で最も死者が多い軍事作戦の一つで、9人が死亡している。イスラエルは、イスラム聖戦の過激派を標的とし、ロケット砲撃への報復としてハマスが支配するガザ地区を攻撃したと発表した」
(アラブニュース2023年1月30日)
ブリンケン氏、カイロに到着し中東訪問を開始|ARAB NEWS

もう見飽きたパターンです。いったいどれだけ繰り返したら気が済むのでしょうか。
イランから武器をもらったハマスなどのテロ組織が無差別テロを行い、それに対してイスラエル軍が報復するというパターンです。
そしてメディアはイスラエル軍の空爆のみ非難し、テロリスト側は「民衆の抵抗」と描く、いつもどおりです。
ただしいくらイスラエルを非難してみても、原因の根が断ち切れていないのですから、どこまでも続きます。

ブリンケンはパレスチナ自治政府のアッバスに「イスラエルと独立したパレスチナ国家が平和的に共存する「2国家解決」の支持を表明」(朝日 2月1日)したそうですが、ブリンケンは、パレスチナとイスラエルの二国間だけでこの問題を解決できると本気で思っているのでしょうか。
パレスチナ自治政府が掲げてきたのが「アラブの大義」である以上、共存関係はアラブ世界全体とイスラエルとの間に成立しなければならないはずです。
しかも共存の最大の障害物であるイランと戦うという意志で統一されねば、ほんとうの「共存」は生まれないのです。

実は2年前すでに抜本的解決策は出来ていました。それがアブラハム合意です。
しかもトランプは、プランを出すだけではなく、慎重に数年かけて段階を踏んでそれを実現してしまったのです。

これを壊したのが、ブリンケンのボスのバイデン御大です。
彼が、米国外交の金字塔ともいうべきこのアブラハム合意を壊してしまい、またテロと報復の無限ループが始まってしまったのです。

仮にトランプに2期目があったなら、イスラエルとサウジやUEAなどの湾岸諸国との経済や社会交流はを通した友好関係はじっくりと進み、一方イランは厳しい包囲下に置かれてしまい、中東制覇の夢も頓挫していたはずでした。

ところが、核合意が再建されてしまい、いまやイランは後述するようにロシアのウクライナ侵略を軍事的に支える最大の支援国と化しています。

アブラハム合意は中東和平の合意であると同時に、イラン包囲網の形成でした。
イスラエルとアラブ首長国連邦が国交正常化に合意し、9月にはバーレーンも加わり、これをエジプトも歓迎し、ヨルダンも平和交渉の前進につながると発表しました。

トランプは、この画期的中東和平案を段階を踏んで実現しています。
まず2017年12月、トランプはエルサレムをイスラエルの首都として認めると発表し、さらに19年11月には、イスラエルの占領地区の入植地を国際法違反とは認めない、と方針転換しました。
そして2020年1月29日、満を持して中東和平案を発表しましたが、その骨子としてパレスチナを独立国家として承認する一方、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地でイスラエルの主権を認め、エルサレムをイスラエルの首都として認める、というものでした。

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ネタニエフ首相とトランプ
トランプ氏、中東和平案を発表 パレスチナは反発 - BBCニュース

トランプは当時こう述べていました。

「今日、イスラエルは平和に向けて大きく一歩前進した。私のビジョンは、両者にとってウィンウィンとなるものだ。パレスチナ国家が成立してもイスラエルの安全を脅かさないようにする、現実的な二国家共存策だ」
(BBC 2020年1月29日)

後にバイデンがこの合意を反故にすることでわかるのですが、実に巧妙に考えられた合意案でした。
これをパレスチナ自治政府のアッバスが呑めば、パレスチナ紛争は終わり、自動的にイランからサウジまでを支配してきた「パレスチナの大義」の旗印は消滅するのです。
ちなみに「パレステナの大義」とは、イスラエルの完全否認であり、ユダヤ人を海に追い落とすまで永遠に戦い続けるという意味です。
この非現実的にして、過激なこの「パレスチナの大義」幻想は、イランによって温存され、その手先のハマスはロケット弾テロを飽きずに繰り返しています。

中東諸国から多大な物的支援をもらい「民族解放貴族」の地位に安住していたパレスチナ暫定政府は、これを「謀略」だとして反発し、暴動に訴えました。
ばかな話です。パレスチナには現実的判断ができる指導者はいないのでしょうか。

トランプの中東和平案はこれで終わりではなく、その1年半後の2020年8月の「アブラハム合意」として結実します。
アブラハム合意 - Wikipedia

アブラハム合意の意味はこのように要約されます。

①パレスチナ問題が他のあらゆる問題の拒否に繋がらないよう分離したこと。
②スンニ派のアラブ諸国を、それを脅かすシーア派の国(イラン)に対抗できるよう束ねたこと

この政策の要点は、たんなる目先の中東和平の合意ではなく、むしろイランをパレスチナ問題から切り離して孤立化させることにありました。ですから、アブラハム合意は18年5月のトランプによる合意からの離脱とワンセットで見るべきです。

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「平和の輪」は、我々の紛争地域を救うことができる|ARAB NEWS

トランプは離脱の理由として、核計画の制限が期限付きなうえ、弾道ミサイル開発も制限していないことなどを挙げ、制裁の再開しました。
完全な包囲網を作られてしまったとわかったイランは猛反発、オバマがかけた梯子で二階にあがったていた欧州首脳も激怒し、「深刻な懸念」を表明しました。

ところが、この画期的なトランプの中東政策を覆す者が現れたのです。
それも米国内から、しかも大統領として。
それがバイデンです。

世界は均一に歴史が進んでいるわけではありません。
リベラルが好きな進歩史観によれば、歴史は一直線に進化するように描かれていますが、そうではありません。
いまだ戦国時代の地域もあれば、古代中世を延々とやっている国もあります。
さしずめ中東はいまだに戦国時代であって、ロシアや中国など中世世界の発想から出られないでいます。

バイデンは、いかにもアメリカン・リベラルらしい直線的進歩史観で中東と対応しようとしました。
トランプが利と利を巧みに組み合わせて、複雑な中東和平案を練り上げたのに対して、バイデンは人権オンリーですからなんともかとも。

サウジのような皇太子が殺人をするような非民主的な国家よりも、イランと対話することを選んでしまったのです。
バイデンはトランプが廃棄したイラン核合意に回帰し、融和的政策を打ち出そうとしました。
それを見ていたサウジなどの湾岸諸国は、一斉に米国からの離反を開始します。

このことによる影響は、ウクライナ戦争に対して米国が呼びかけた経済制裁に、中東諸国が従わなかったことで明らかになりました。
中東は経済制裁には加わらず、ロシア非難にも消極的でした。

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中東アフリカ、対ロ制裁に冷ややか 食糧や兵器で依存: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「ウクライナに侵攻したロシアへの米欧主導の制裁に、中東アフリカ諸国が冷ややかだ。食糧や兵器をロシアに頼る国が多く、産油国の連帯もある。人権を理由にした対ロ圧力にはいっそう消極的だ。ロシアが孤立を深めるばかりと言い切れない一因になっている。
国連総会で7日採択されたロシアの人権理事会の理事国資格を停止する決議は、過去の決議より態度を後退させる国が急増した。人道状況の改善を求めた3月24日の決議で棄権したが今回は反対に回った18カ国のうち、中東アフリカからは8カ国だった。賛成から棄権に転じた39カ国をみると過半を占めた」
(日経2022年4月14日)

これは、人権をなにかといえば口にする米国を疎ましく思っていたこともある上に、サウジやUAEは原油生産を巡って、世界第2位のロシアと利害を共有していたからです。
ウクライナ侵攻直後の去年3月上旬、プーチンはサウジとUAEの指導者と相次いで電話協議し、原油生産を巡り「協調を続ける」ことで一致した。

これは欧米各国のエネルギー危機を救済するために増産を呼びかけた、バイデンに対するあてつけでした。

一方、トランプのアブラハム合意によって外堀を埋められていた状態のイランは一気に力を取り戻し、ロシアと同盟を組んで軍事支援を強化しました。
いまやロシアのドローンの過半はイラン製であり、その操作や訓練にも協力しているといわれています。

弾道ミサイルの供与も約束したようです。
また今後、ドローンの生産ラインもロシア国内に作るようです。

ロシアはお返しに最新鋭の戦闘機を大量に供与しました。
これで中東の空軍のバランスは、大きくイランに傾くことでしょう。

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イラーンのドローンシャヘド136
ロシアとイランが接近、今なぜ?自爆ドローンとは?深まる懸念 | NHK

「ウクライナに侵攻したロシアと、ロシアにドローン無人機)を供給するイランがさらに軍事協力を深めているとして、米英両国が9日、懸念を表明した。ロシアで攻撃用ドローンを共同生産したり、イランが弾道ミサイルを供与したりする検討が進んでいるとみて、警戒を強めている。
 米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官は、9日の電話会見で「ロシアがイランに前例のないレベルの軍事・技術支援をしている」と指摘。全面的な防衛協力へと移行しつつあるとの認識を示し、「ウクライナだけでなくイランの近隣国にも脅威だ」と危機感を示した」
(朝日2022年12月10日)
イランとロシアを米英が警戒 ドローン共同生産やミサイル供与検討か:朝日新聞デジタル (asahi.com)

プーチンは2022年7月、軍事侵攻後、旧ソビエト諸国以外では初めての外国訪問としてイランを選びました。
最高指導者ハメネイやライシ大統領と相次いで会談して、経済や安全保障などの分野で協力を深めることで一致し、ハメネイから直接、侵攻に踏み切ったロシアの立場への理解を取り付けました。
現在は、貿易全体に占めるロシアとの取り引きは去年実績で輸入が3%、輸出が1%ですが、イランはもまた厳しい制裁によって包囲されており、ロシアはドル決済を伴わない貴重な抜け道となっていくようです。
いまやこの両国は陸上ルートで結ばれ、緊密な物資の往来をするまでになっています。

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2022年7月19日テヘランを訪問したプーチン大統領、ハメネイ師(中央)、ライシ大統領
NHK

いまやこの両国は、陸上ルートで結ばれ、緊密な物資の往来をするまでになっています。

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「スエズ運河に対抗する新たなルートが誕生するかもしれない。インドからイランを経由して中央アジアを抜けてロシアから北ヨーロッパに繋がるというルートである。このプロジェクトの実現に向けて主導しているのがロシア、アゼルバイジャン、イランの3か国である」
(白石和幸 

また、イランはかねてから核兵器製造と弾道ミサイル技術を与えてきた中国との関係もいっそう密にしており、北朝鮮を組み込んだ関係はいっそう強化されています。
このならず者連合のルートを使って、ロシアは榴弾砲の弾薬やドローンを大量にもらい受けています。
バイデンが愚かな中東政策をとらなければ、ウクライナはもっと楽に侵略を食い止められたはずです。

一方、もう一方の当事者であるイスラエルは、アブラハム合意を廃棄されてしてしまったために、再び敵によって周囲を固められる結果となりました。
とうぜんのこととして、そこから生まれてくるのは右派政権でした。

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イスラエルで右派政権誕生へ 総選挙で野党が第1党に、与党勢力伸び悩み:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

「イスラエル国会(定数120)は29日、ネタニヤフ元首相主導の連立政権を賛成多数で承認、ネタニヤフ新政権が正式に発足した。1年半ぶりに政権復帰するネタニヤフ氏の新連立政権には宗教政党や極右政党が参加し、イスラエル史上最も右寄りの政権となる」
(産経2022年12月30日)
ネタニヤフ新政権発足 イスラエル史上「最右派」 - 産経ニュース (sankei.com)

戦国時代が終わろうとしていた中東を、再び戦国の世に戻してしまったのがバイデンです。
これは中東に限られず、ウクライナに飛び火し、世界に影響を与えています。


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コメント

欧米の価値観、それも特に強大なアンクル・サムを常に内心嫌っていた国や勢力は途上国には特に多いですからね。
アメリカは民主党政権だろうと共和党政権だろうと常にイスラエルとは蜜月関係にあります。
で、トランプがエルサレムをイスラエルの首都だと認めて大使館も移転!と言った時には大変な反発がありましたし、私も「おいおい、それ大丈夫か?」と思いましたけど、実は商人トランプならではのセンスで全体でWin-Winに持ち込む深慮遠謀が隠されていたという話ですね。

バイデンさんはそれこそ良いお爺さんで典型的な調整型の人ですけど、それだけに腰が座ってないというかとにかく中途半端な上に「反トランプ勢力」にも担ぎ上げられて大統領になったお方ですから。とにかく事なかれ主義な上にトランプがやったことはとにかく潰すという姿勢。どっかの宏池会首相みたいで相性は良いでしょう。
本人だけではなく取り巻き連中に例えば昔のキッシンジャー(私は大嫌いだけど)みたいな清濁併せ呑む切れ者がいないんでしょうね。

アブラハム合意。奥が深かったですね。今や世界の政治や文化の後ろにサウジアラビアは欠かせないほどになっています。LIVゴルフや現在攻防戦の最中のF-1グランプリの所有権とかね。巨大スポーツビジネスの影にサウジアラビアありきになっています。要は欧米伝統文化のトップスポーツにまでサウジが巨大な影響力で喧嘩を売ってる(取り込もうとしてる)状態。


「油ハム」って発音すると、ものすごく身体に悪そうな「超々加工肉製品」っぽいですね(笑)

イランがロシアへ武器供与し、ロシアはイランのイスラエルへの行為を黙認。
これを受けイスラエルはウクライナへアイアンドームの供与を検討中。

ロシアはイスラエルへ武器供与は敵対行為だと警告したそうですが、アイアンドームが供与されればウクライナの防空能力は上がると予想されます。

飛び火してますねー

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