共産党、松竹氏を超高速除名
まぁ、思ったとおりですが、それにしても早いね。
土橋さん風に言えば、超高速共産党除名です。
あの党首公選を主張した、松竹信幸氏はいともあっさりと除名されてしまいました。
党内で議論するなんて夢のまた夢なことは分かりきっていましたが、常任幹部会か、せめて規律委員会くらいは出てくるのかと思いましたが、中央本部扱いではなく地区委員会名です。
ずいぶんと軽い扱いですこと。
軽く見せることで、松竹の言うことなんぞ歯牙にもかけない、というポーズを決めたかったようです。
いかにも権威主義の権化のようなノーメンクラツーラらしい反応です。
共産党は『赤旗』でグダグダと除名理由を書いています。
冗長なのでスルーしようかと思ったのですか、誰もこんな悪文など読みそうにないので要約しておきます。
松竹伸幸氏の除名処分について/2月6日 日本共産党京都南地区委員会常任委員会 京都府委員会常任委員会 (jcp.or.jp)
①党首公選制」という主張は、「党内に派閥・分派はつくらない」という民主集中制の組織原則と相いれない。
②党規約が「異論を許さない」ものであるかのように、事実をゆがめて外部から攻撃している。
③「核抑止抜きの専守防衛」なるものを唱え、「安保条約堅持」と自衛隊合憲を党の「基本政策」にせよと迫った。
④党の綱領の安保・自衛隊政策に対して「野党共闘の障害になっている」と攻撃した。
⑤自身の主張を、党内で、中央委員会などに対して一度として主張したことはないことを指摘されて、「それは事実です」と認めた。
共産党特有の、読みやすく分かりにくい文章ですな。
「党内に派閥を作らせない」「異論を党外に発言してならない」ということは、党内で「異論を許さない」ことと同じではないか、と一般人は思うのですが,違いますかね。
そこでいたしかたなく風通しの悪い党内から一歩外に出て発言したら、「外部から攻撃している」となっちゃうわけですから、困った連中です。
でも、松竹氏はジャーナリストですから、自由にしゃべらねば仕事になりません。
赤旗と同じことばかり言っていたら、仕事になりませんからね。
すると、問答無用で即除名だそうですから見上げたものだよ、屋根屋のフンドシです。
やはり共産党は閉鎖的カルトで決まりのようです。
しかも今回は、国民が目の当たりにしてしまったのですから、志位さんしくじりましたね。
ところで松竹氏は、伊勢崎賢治氏(東京外大教授)と一緒に論説と本も書いています。
日本がいつまでもアメリカと「対等」になれない本当の理由(伊勢崎 賢治,松竹 伸幸) | 現代ビジネス | 講談社(1/4) (gendai.media)
一読しましたが、あまり面白くありません。
熱意は伝わるんですが、共産党のように半世紀ズレていれば昭和レトロを愛でる楽しさがあるのですが、中途半端に古いのです。
古臭いなぁ、ウクライナ戦争前にはこのレベルでも通用したんだよな、というのが私の感想です。
この対談は2018年に書かれたもので、本まで共著していますが、やはり内容は日本は米国に従属している、その証拠に地位協定も不平等だ、日本は米国と距離を開けて「中立」になれ、というような筋書きになっています。
いまから10年くらい前までは、この議論はそれなりに説得力があったんですがね。
共産党の本部で安保担当だった党員が、この立場に行き着いたのは慶祝の至りで、その部分は素直に評価します。
私の知っている党員諸兄は、党のパンフと赤旗くらいしか読みませんでしたからね。
しかし松竹氏は安保担当として外部世界の文献などを読んでいると、どこかで慄然としたんでしょう。
なんせ共産党は自衛隊は「違憲」で日米同盟は「全国民の力で安保廃棄」ですから、安全保障議論のスタート台にすら立てないのです。
この安全保障論がネックで他の野党からも、選挙協力はしても、政権には入れないからね、と釘を刺されていたことも身に沁みて知っていました。
そりゃそうでしょうとも。自衛隊解体、天皇制廃止なんて、つい最近まで言っていた極左政党をどうして政権に入れますか。
松竹さん、板挟みになったんでしょうな。
上役の志位氏は「全野党共闘」だなんて言って気勢を上げていても、それは選挙の時だけのこと。
選挙期間中だけは自衛隊を違憲と言わないだけのこと、党内では違憲で通しています。
今回もそれが除名理由になっていましたね。
外ヅラと内ヅラがまったく違うんですから、理念に誠実であろうと思う人にはやれんだろうな。お察しします。
そこで、「そりゃご都合主義です」と言ったら、王様の耳はロバの耳で、即クビ。
それに安保フンサーイなんて叫んで1万回デモをしても無駄だと、この年季の入った党員は感じていたのかもしれません。
デモなんて行ってみれば分かるように、来ている人はいつも同じ年寄りばかり。
デモのタイトルが違うだけで、来る人は一緒。
初めて行った若き日は高揚しても、何千回やっても現実はまったく進まない、こんなデモもあと何年できるのか、とその不毛さを悟ります。
デモだけではなにも変わらない、黒光りするほどレトロな党の綱領はまるで昭和の歌声喫茶です。
そしてリアルな安全保障論議をしたいと思っても許されない党規約、そんなときに彼が出会ったのが伊勢崎氏だったのでしょう。
ただし、今となっては出し遅れの証文です。なぜでしょうか。
時代のほうが先に進んでしまったのです。
地位協定という不平等性がある条約ひとつ変えるにも個別に交渉してもダメで、せいぜいが運用でお茶を濁すしかなかったのです。
なぜでしょうか。それは端的に日本に力がなかったからです。
だから防衛官僚は問題があることを知りつつ、「運用」でごまかしていたのです。
ではどうするのか。
コペルニクス的展開ですが、日本の地位を米国と同等にすればいいのです。
これに気がついたのが安部氏でした。
ルトワックは、今の日米同盟がフェーズ3に入ったとしています。
フェーズ1は、従属論者がいう対米従属期です。
伊勢崎氏などの議論は、このフェーズ1の時期に対応した考えです。
「両国の国益にかかわる政策を米国が一方的に決めていた。米国が決定内容を日本に通知することもあったが、通知しないことも珍しくなかった。(略
)米政府高官らは定期的に日本を訪れて米国の要求を提示し、日本政府は同意できる範囲で応じてきた。いずれにせよ、日本側が独自に日米絡みの政策を立案することはなく、その体制も存在しなかった。 」
【世界を解く―E・ルトワック】到来した「日米3・0」の時代 - 産経ニュース (sankei.com)
安部氏の登場とともに、フェーズ2段階に入ります。
安部氏の提唱によりザ・クアッドが成立したのです。
「安倍氏は、日本は独自の政策を持った独立国であると表明し、実際に独自政策の策定に着手した。防衛問題にも真剣に向き合った。外交ではインドとの関係を強化し、日米豪印によるクアッドの枠組みに引き込んだ。これにより、インドとの連携強化を望んでいた米国は、これまでになく密接な関係をインドと構築することができた」
(産経前掲)
そして第3フェーズが現在です。
安部氏が準備した防衛3文書の法制化は、ウクライナ戦争後の国際環境に対応した国際スタンダードの安全保障政策です。
「安倍氏の時代に道筋がつけられた日米の安全保障関係が国家間で制度化されたのだ。私はこれを「日米3・0」と呼ぶ。
米国が日本に防衛政策で要求を重ね、日本が防衛費や憲法の制約を盾に抵抗するといった緊張状態は一気に解消された。米国から言われてやるのではなく、日本の国益および日米の集団的安全保障に照らして日本が自発的に政策決定を下すようになったのだ」
(産経前掲)
この国際政治の地殻変動が鮮明になったのが、ウクライナ戦争でした。
中露同盟に対して、どういう対抗軸を国際社会がつくりだせるのかが今問われている問題なので、それは必然的に米国を基軸国とする以外に選択肢がないのです。
これが私が「新冷戦」と呼ぶ国際状況です。
松竹氏の構想する「核抑止なき中立」など、入る余地がまったくありません。
スウエーデン、ノルウェーまでが中立を捨て、スイスさえ武器を送ろうかという時代なのですよ。
ここで初めて憲法前文が謳う「われらは平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う 」という理念が活きてくるわけです。
松竹氏や伊勢崎氏は、一周遅れのトップランナーなんです。
ところで、除名は数ある処分でももっとも厳しいもので、以後松竹氏は「党のおたずね者」となります。
どういうことかといえば、共産党員は松竹氏と口を聞くこともできないのです。
「松竹」なる人物はこの世に存在しない、透明人間となってしまいました。
メディアが党員にインタビューしても同じことで、まんま赤旗と金太郎飴のようなことを口移しに言うだけです。
共産・志位委員長は「自分の口で言えばいいと思う」 「党首公選」への反応めぐりベテラン党員が抱いた違和感: J-CAST ニュース【全文表示】
普通の政党なら、オレも松竹さんの言うことはわかるよな、しかしやり方がまずかった、くらいの意見は出るものですが、不思議なことにはひとりとしてそんな輩はゼッタイに登場しません。
もうちょっと聞くふりでもすれば、さすがは共産党、やっぱり民主的だなとなったのでしょうが、要するに規約一点張りですから、取りつくシマもありゃしません。
たとえば、せっかく志位氏がインタビューされていても、言う台詞は「赤旗の藤田論文がいうとおり」とメンドーなことは全部部下に押しつけてスルーでした。
不祥事が起きた時に、広報部次長に矢面に断たせる社長のようなものです。
トップというのはこういう時のためにあるんでしょうが。こういう上司は持ちたくないですね。
せめて党に持ち帰って議論しましょう、くらい言えばサマになったのに。
松竹氏は日本記者クラブの改憲の中でこんなことも言っています。
「私の行動で除名されるなら、憲法で保障された言論、表現の自由は死ぬ。共産党は国民の支持を失い、滅びかねない」
zakzak:夕刊フジ公式サイト
まぁそのとおりではあるんですが、そういう共産党を選んだのはあなた、松竹さん自身なのですよ。
共産党がそういう言論の自由などという民主的権利を捨てなければ入党できないことくらい、とうにご存じだったはずです。
だから外部のサイトで伊勢崎氏と対談してみたり、とうとう文春などという「ブルジョワ出版社」から本まで出したのでしょう。
党員としてはヒラだヒラだと仰せだが、党本部の安保部門の責任者クラスにはいたわけで、職場で赤旗配りしていたわけじゃありません。
いわば指導部の一角にいたのです。
方針にクチバシも突っ込めないヒラ党員たちからすれば、方針に関与できるただけで本部様の存在だったではなかったのでしょうか。
もう少しそのへんの思い返しがないところで、一方的に被害者になられても困ります。
志位氏が盛んに言っていた「藤田論文」の藤田編集局次長と松竹氏は、この事件以後元の職場(共産党本部ですが)前ですれ違ったのだそうです。
「実は先ほど共産党前で写真を撮ったとき、藤田さんとすれ違ったんですよ。すれ違った後に気付いたのですが...。声をかけた方が良かったかも。向こうも気付いていないと思います。なんか、すごくやつれていましたね...、下向いた感じで。
それはともかく、当然、何らかの反応はあると思っていました。逆に、反応がなくてスルーされることが一番嫌でした。何か反応があって、党内の議論が盛り上がるというのが一番の目的なので、反応が出てきたことは、まずは歓迎です。ただ、赤旗の編集局次長の論文が出てくるとは思いませんでしたね」
(JCAST前掲)
藤田氏と目が合わなくてよかったですね。
もう彼ら共産党員にとって、あなたはすでに「いてはいけない人物」「否定すべきもの」なのですから、党本部の前なんか歩いちゃダメですよ。
それにしても寂しい党です。
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このあたりが、自民党政権が盤石な理由でしょう。
党員・支持者ともに異論を許さない自称リベラルと、アンチ安倍な傾向を持つ人間が総理大臣になっちゃう自民党と、「自分と異なる意見に寛容なのは、どっちか?」と問われれば、答えは自明ですから。
投稿: リンデロン | 2023年2月 9日 (木) 05時01分
民主主義社会には当然、異論を「持つ自由」も、「公表する自由」も「広める行動をする自由」もありますね。
そして、様々な会社や組織の中で、異論を主張し続ける人や、異論を広めて力を持たせようとする人が、人事で跳ね返されることも現実にあります。
本人や周囲はその理由を「察し」ますが、会社や組織や「上」は決して異論が理由だとはいいませんね。それは非民主的で独裁的であり、社会にそぐわないとわかっているからです。
異論を持って広く共有しようとした人に罰を与えることを、堂々と規約に定めているのが日共です。
そこで、日共という組織と中の人たち及び支持者は、それを本当に当然の良いことだと考え、疑問の欠片も持ったことはないのだろうか、と考えます。
そうやって異論を持ち語る人を処分し排除し、存在した異論を葬りながら民主主義を語る、そのおかしさに気づかないなら、そんな人たちの方が、良くないとわかっていてやる人の何倍も怖い。
そういう人たちの言う「外交」「対話と交渉」や、「誰一人取り残さない」(各地の選挙で共産党候補が主張している)、「排他的でなく包摂的な平和の枠組み」(日共雑誌での志位たん)って具体的にどういうことですの?
異論には須く罰を!が日共の中だけのことならば、それでこそ日共なので好きにすれば?で済みます。
論敵や異論を持つ人の職場へ圧力をかけて「あいつを辞めさせろ!」「謝罪しろ!」と運動する自由を、それが非常に非民主的なやり方である自覚がなく当たり前と思い込んで、疑問や申し訳なさを1μも見せることなく行使してしまえる人、そんな非民主的な圧力を掛けられて言われた通りに人を処分する選択をする人、そのような劣化した思考力の持ち主が、日共の外側には増殖しない方が良いはずですがねぇ。
投稿: 宜野湾より | 2023年2月 9日 (木) 13時11分
面白い事件だと思いましたが、これで共産党が変わるかも?などと期待する一部マスコミの期待的論調が可笑しかったです。
爾来、民主と集中制は実現不可能な言語的にも論理的にも矛盾する概念であって、共産党のいう内部的な「民主」とやらがどのように形成されているのかに焦点をあてるべきだったでしょう。
早く言えば現代的民主主義なんか、もろ共産党の敵です。
そもそも共産党にとって民主主義は外的攻撃に利用すべきものなので、内部民主主義の矛盾にはほっかむりする必要があります。
イデオロギー闘争が消滅した現在、権力集中にだけは勤しんで上がぬくぬくしたいだけのもの。
「シン・共産党宣言」も一応もの好きで読みました。ようは「野党共闘をスムーズに行うための党改革をすべし」という事。このように自ら譲歩をもって他者に合わせる的な思考は、共産党の「他者を感化・教化して地獄へ引きずり込む」自主・主体的思想と相いれるはずもありません。
著者が本当に共産党を改革したいというなら、1%ルールなどの党費徴収のからくりや、資金面や人脈からの内実を実態に則して暴いて行く方が効果的と思った、生煮えのつまらない本でした。
けれど、アッチ系の人達にだけは重要な事柄だったのは間違いなく、共産党と組んで政権を維持している地方自治体なども若干は参考になったかも知れません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年2月 9日 (木) 19時08分
果たして共産党は自分が口にする言葉の意味が理解できてるのか、甚だ疑問ですね。「安倍独裁」と言いながら自党は20年以上も同一人物がトップに君臨するわ、「言論の自由を守れ」と言いながら今回の様な暴挙に出るわ、護憲を標榜しながら憲法に基づいて制定された公選法違反の常習者と言うみっともない実態。
彼らはダブスタと言うより、「矛盾」の概念が理解出来ないのでしょうね。
投稿: KOBA | 2023年2月19日 (日) 23時09分