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2023年2月13日 (月)

トルコ大地震、地震多発国なのになぜ?

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トルコ-シリア大震災で被害に合われた方のご無事を祈っております。
わが国の支援物資は、厳冬に震える被災者の手に少しでも早く届けられねばなりません。
現時点で、トルコ南部を震源に発生したこの大地震で、トルコとシリア当局などによると、両国で確認された死者は12日、計3万3千人を超えたと報じられています。
おそらく4万に達するでしょう。
トルコ地震、死者3万人超え さらに大幅増か、発生7日目 | 共同通信 (nordot.app)

さて、今回のトルコの状況を見て、驚かされたのはその建物の倒壊の多さとすさまじさでした。
建物の倒壊が発生した都市は7ツもあります。

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【詳報】トルコ大地震 死者1万7000人 72時間以降に救出も | NHK | トルコ大地震

震源地と重ねてみると、この建物の倒壊は地震が発生した線に沿って発生しているのがわかります。

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BBC

しかも下のBBCがドローンで撮った被災地ハタイの画像のように、一区画が丸ごと倒壊したために下敷きで何百人が下敷きになっているのか想像すらできないケースが報告されています。

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被災地ハタイの惨状、上空からドローン撮影 トルコ・シリア地震 - BBCニュース

現代建築技術では防げるはずのパンケーキクラッシュさえ多く見られています。
これは上層階が垂直に下の階を押しつぶす最も危険な現象で、住民は助かりません。

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NHK

「トルコで調査の経験がある東京大学地震研究所の楠浩一教授は、今回の地震による建物の被害について「低層から中層に至るまで多様な建物が倒壊している。中でも柱が瞬時に強度を失い、建物全体が真下に折り重なるように崩れ落ちる『パンケーキクラッシュ』と呼ばれる非常に危険な壊れ方がいくつかの地点で起きている」と指摘しています」
(NHK2月8日)
「パンケーキクラッシュ」で被害拡大か トルコの大地震 | NHK | トルコ大地震

またいかなる理由なのか、軍隊が災害派遣に投入するのが遅れているようです。
被災後、住民が倒壊した建造物の瓦礫に近づくことすら厳しく禁じられねばなりません。

気持ちはわかるのですが、救出しようとしたりすれば、2次災害が引き起こされるからです。
しかし今回は、各地で倒壊したビルの瓦礫に住民らがツルハシで挑んでいる姿が多く見られています。
こんな風景は日本で見たことがありません。


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トルコの被災地アンタキヤ、区画が丸ごとがれきに BBC記者報告 - BBCニュース

精強と言われた65万のトルコ軍は、いったいどこに行ってしまったのか。
この地震で壊滅したシリア国境付近の地域は、クルド人が多く住む地域です。
クルド人は独立を求めて、トルコ政府やシリアと戦い続けてきました。
トルコ軍は再三に渡ってこのクルド人地域に軍事侵攻しており、激しい戦闘が交えられました。





ロイター

上の写真は、反体制派の拠点のひとつであるシリア北西部ジンダリスの9日の状況を伝える貴重な写真です。
シリア側からはアクセスできず、トルコからのルートも閉ざされているために、その状況すら判明していません。
むしろアサド政権は、国際社会の救援を妨害しているようです。
黒井文太郎氏によれば,アサド政権は国際社会の救援物資を中抜きし、さらにはこの機会に半政府勢力支配地域に軍を入れたいという思惑もあるようです。
逆に反政府勢力が、このアサド政権の政治利用を恐れて救援物資を通さないという情報も出ています。

とまれ、シリア側の被災地は、完全に反アサド勢力の拠点地域に入っているために、救援どころか故意に放置されているようです。

「反体制派地域で救助活動にあたる民間団体「シリア民間防衛隊(ホワイト・ヘルメッツ)」のトップ、ラエド・サレー氏は本紙に、「人命救助に必要な機材がない。貴重な時間が失われている」と語った。
シリア民間防衛隊によると、北西部の反体制派地域では2037人が死亡、2950人が負傷した。全・半壊した建物は約1700棟に上る。数少ない医療機関には負傷者が次から次へと運び込まれているという」

(読売前掲)

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シリアの地震援助は強硬派グループによって保留されている、と国連は言う|ロイター (reuters.com)

上の写真は、シリアの反政府勢力が支配する町ジャンダリスです。
シリア軍が被災地を爆撃したという未確認情報も伝えられています。

「英スカイニュースは7日、シリアのアサド政権軍が6日の地震発生直後、反体制派勢力が支配する地域を空爆したと報じた。攻撃されたのは地震で被害を受けたシリア北部アレッポ県マレアで、英下院外交委員長のカーンズ議員は「実に冷酷で凶悪な攻撃」と非難。クレバリー外相も、「まったく容認できない」とアサド政権を批判した。空爆による犠牲者の有無など詳細は不明」
(毎日2月8日)
シリア・アサド政権軍、被災地空爆か 英外相ら批判「実に冷酷」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

にわかには信じがたいニュースですが、トルコ軍の不活発な救援活動を状況をみると、なにかしらの政治的な影があるのは間違いないでしょう。

ところで、今回のトルコ大地震の不思議さはこれだけではありません。
今回のトルコ大震災の被害規模は、東日本大震災を既に上回っていますが、そのマグニチュードスケールは7.8と7.5にすぎません。
あえて「すぎない」と言わしていただきます。それはそのマグネチュードに比してあまりにも被害が大きいからです。

私たち日本人が経験した最大級の地震はいうまでもなく、東日本大震災でしたが、マグニチュード9.0、震度7でした。
マグニチュードが「1」違うと、地震のエネルギーは30倍も違います。

トルコの震災がマグネチュード約8とした場合、見かけは0.8倍ですが、実は30倍の大きさになります。

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気象庁  震度とマグニチュード (jma-net.go.jp)

同じマクネチュード8だった2003年9月の十勝沖地震と比較してみましょう。
十勝沖地震の被害はこのようなものです。

「この地震により,北海道及び東北各県に被害が発生し,行方不明者2名,負傷者849名,住家全壊116棟,住家半壊368棟,住家一部破損1,580棟,床下浸水9棟の被害が発生したほか,合計37,176人に避難勧告が出され,7,429人が避難した」
3−7 十勝沖地震 : 防災情報のページ - 内閣府 (bousai.go.jp)

日本における「全壊」は、住めなくなることをいうので、倒壊とは限りません。
建物全体が倒壊するケースはなく、その一部が崩れたケースが多かったようです。

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2003年9月の十勝沖地震で崩落した釧路町役場の玄…|最後の17世紀の津波からの経過… 写真1/1|zakzak:夕刊フジ公式サイト

上の写真は、十勝沖地震で崩落した釧路町役場の玄関ですが、建物本体は保たれています。

日本で建物倒壊を多数出したのは、1995年1月の阪神淡路大震災でした。マグネチュード7.2、もっとも震源に近かった神戸で震度6でした。
死者は6千人を超えました。
下の写真は阪神淡路地震で倒壊した民家です。

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「阪神淡路大震災で死亡した方の約4分の3は、倒壊した家屋による圧死・窒息によるものだったと言われています。
阪神淡路大震災で被害のあった家屋は、全壊が約10万5千棟、半壊が約14万4千棟に達しました。特に被害が甚大だったのは、東灘区、灘区の阪急電鉄と阪神電鉄の間の断層に沿った地域です」
阪神淡路大震災で10万棟の住宅が倒壊した原因と、その悲劇を生まないための教訓 |

わが国はこの阪神淡路大震災の苦い経験から耐震基準の見直しが図られました。

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「耐震基準とは、建築基準法によって定められた耐震性能の高い建物を建築するための基準です。
この基準をクリアする耐震性の目安としては、

・震度5の地震が起きても建物がほとんど損傷しない
・震度6〜7の大地震が起きても建物が倒壊しない

の2点となっています。
地震の多い日本では震度5の地震は比較的よく起こるため、そのレベルの地震では建物はほとんど損傷せず、また、まれにある震度6強以上の大地震が起きても、命に危険は及ばない耐震性が求められています
耐震基準改正の変遷と耐震診断のすすめ方・費用 | BUILD WORKs|京都の注文住宅・リフォームの工務店・建築設計事務所
 

今回のトルコ大震災を報じたBBCは日本の耐震基準があれば、このような一区画が丸ごと倒壊するなどということは起きなかったとして、わが国の耐震補強の図を載せています。

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BBC

「日本のような国では、大地震の歴史にもかかわらず、何百万人もの人々が人口密度の高い高層ビルに住んでいますが、建築規制が災害時に人々の安全を守るのにどのように役立つかを示しています。
建設の安全要件は、建物の用途と地震のリスクが最も高い地域への近接性によって異なります:単純な補強から、建物全体のモーションダンパー、巨大なショックアブソーバーの上に構造全体を配置して地面の動きから隔離することまで」
(BBC2月10日)
トルコ地震:なぜこれほど多くの建物が倒壊したのか?- BBCニュース 

一方今回のトルコの大地震も、トルコ南東部に延びる「東アナトリア断層」で発生し、北側のアナトリアプレートに向かって、南側のアラビアプレートが北上し、断層にひずみがたまったことで起きたようです。

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日本と同様「地震国」トルコを「他山の石」に 地震への備えと警戒を(鳥取市)(TSKさんいん中央テレビ) - Yahoo!ニュース   

このようなプーレが衝突する追記では地震が多発しますが、トルコも地震多発国でした。

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トルコの地震一覧 - Wikipedia

近年だけでこんなに頻発しています。

・1999年デュズジェ地震
2003年ビンギョル地震
・2010年エラズー県地震
・2011年トルコ西部地震
・2020年エーゲ海地震
・2011年トルコ東部地震 
2023年ガズィアンテプ地震
トルコの地震一覧 - Wikipedia
 

このうち、1999年のデュズジェと2011年のトルコ東部地震は共にマグネチュード7を超えています。
つまりトルコは、日本と同様にいつでも巨大地震が来てもおかしくない国だったのです。

今回、新しい建物でもが簡単に倒壊が発生しています。
マラティヤのアパートの下半分は崩れ落ち、瓦礫の上に斜めに立っています。
しかもこの建物は新しいアパートです。

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BBC

下の画像はこのアパートの倒壊の瞬間をとらえたものです。

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BBC
この建物は最新の地震規制に準拠していたというのがうたい文句でしたが、いとも簡単に倒壊しました。
法律上は2018年の震災基準によって、新たに建てられる建造物は鉄筋で補強され、高品質のコンクリートを使用することを義務づけられているはずです。
また、地震の影響を効果的に吸収し分散させるために柱と梁を補強せねばなりません。
上のような日本の耐震基準に則っていればこのような倒壊事故はありえなかったはずです。

ではなぜこのような大規模な建物倒壊に発展してしまったのでしょうか。
次回に続けます。


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コメント

軍の出動の遅さは気になってました。発災翌日には日本から先発隊が出たし各国が向かったのに、肝心のトルコ陸軍の出動がまだ全く見られませんでした。現地映像で確認出来たのが昨日。
で、被災者の政権批判が流れ始めたらツイッターシャットアウト···。こりゃ何かあるなと。

 同じBBC報道から今度は、倒壊する事のない程度の法的耐震基準は設けられていて、「手抜き工事が主な原因」という趣旨の報道が出ました。
じっさい、出国すべく空港で捕まった業者の映像がながれ、百三十数名の不動産開発・建設業者が逮捕されたもようです。
しかし、逮捕状の発行が早すぎです。
これは政権への批判をかわすため、責任の所在や市民の憎悪の対象から政府を守るためのエルドアン的方法としか考えられないんですが、どうでしょう? 
なお、軍隊は市民の命を守るためでなく、反エルドアン派クーデター発生時や対シリア・クルド人対策にそなえているのだろうと勝手に想像しています。

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