絶妙だった、バイデンのキーウ訪問
いつ行くのか、もう侵略1周年まで日がないゾ、とやきもきしていたバイデンがとうとうキーウを電撃訪問しました。
プーチンの年次教書演説のわずか2日前、という絶妙なタイミングを選びました。
「【キーウ(キエフ)=遠藤良介、ワルシャワ=渡辺浩生】バイデン米大統領は20日、ウクライナの首都キーウを電撃的に訪問し、同国のゼレンスキー大統領と会談した。バイデン氏のウクライナ入りは昨年2月24日のロシアによる軍事侵攻以降で初めて。侵攻から1年の節目を前に、抗戦を続けるウクライナとの連帯やウクライナに対する支援を継続する決意を示した。
米政府高官によると、米軍が展開していない戦時中の国の首都に現職大統領が訪問するのは初めてという歴史的な訪問となった。バイデン氏は21~22日、隣国のポーランドを訪問する予定だが、キーウ入りに関する日程は安全上の理由から公開されていなかった」
(産経2月20日)
バイデン氏がゼレンスキー氏と会談 キーウを電撃訪問 - 産経ニュース (sankei.com) 。
バイデン氏がキーウ電撃訪問、ゼレンスキー氏と会談…「ウクライナも民主主義も持ちこたえた」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
バイデンは数時間前に「不測の事態を避ける」と称して、キーウ訪問をロシアに通告しました。
数時間前ですから、既にポーランドに入っていたはずですが、やるならやってみろというなかなかのタンカの切り方です。
これをあえてリークしてロシアに恥をかかせるというのも、いかにもいかにもです。
ただし、命懸けの。
プーチンが狂気の世界の住人だった場合、攻撃を仕掛けてくる可能性が捨てきれません。
大統領が殺された場合、最悪なら限定核戦争。控えめに見ても米軍が直接参戦に踏み切ったことでしょう。
米国は、プーチンに米国と全面対決する意志があるかどうかを試したのです。
プーチンの年次教書演説の内容がわかってきました。
派手なマッチョを演じるかと思いきや、戦争に耐えるための耐乏生活を呼びかける内容となっています。
出だしからしてこうです。
「困難な時」って、お前さんがひとりで始めたことだろう、って。
歴史を引っかき回し、隣国を支配する「遊び」に手を染めたのは自分だからです。
「プーチン大統領は「私はこの演説を、ロシアにとって困難な時に行っている。それは世界中で根本的に不可逆的な変化の時期で、ロシアと人々の未来を決める最も重要な歴史的なできごとでもある」と述べました。
さらに「欧米諸国はウクライナでの紛争を世界的な対立に変えようとしている。ただ、彼らは戦場でロシアを負かすことは不可能だと理解すべきだ」と述べ軍事侵攻を継続する姿勢を強調しました 」
(NHK2月22日)
プーチン大統領が侵攻継続姿勢を強調 侵攻後初の年次教書演説 | NHK | ロシア
「ロシアのプーチン大統領は2時間近くに及んだ21日の年次教書演説で、前線での戦況や軍事作戦の見通しに触れなかった一方、軍事作戦に従事する兵士や家族らへの社会支援の拡充を強調した。プーチン氏は米欧側の制裁に対抗できるよう経済改革を進めていく方針も表明。演説からは、プーチン氏が軍事作戦の長期化を見据え、国民理解の維持に腐心している様子が強くうかがわれた」
(産経2月21日)
露の苦戦反映か、戦果触れず プーチン氏演説 - 産経ニュース (sankei.com)
また核軍縮条約については、離脱するとまでは言わず「停止」するそうです。
「ロシアのプーチン大統領は21日の年次教書演説でロシアと米国の新戦略兵器削減条約(新START)について「履行を停止する」と表明した。核の脅威を高め、米欧をけん制する狙いとみられる。プーチン氏は条約からの離脱は否定した。米ロと同じく核保有国である仏英の出方を見極める姿勢を示し、新たな多国間での核軍縮条約の可能性も探りたい意向を示唆した」
(日経2月22日)
プーチン氏、核軍縮条約「履行を停止」 年次教書演説で - 日本経済新聞 (nikkei.com) 。
条約から離脱せずに「履行停止」とはどのような意味かはわかりませんが、新STARTの下でおこなわれている相互核査察に応じないという意味なのかもしれません。
多国間核軍縮と言いますが、今のロシアに応じるのはせいぜいが中国か北朝鮮くらいのものですが、この両国とも「伸び盛り」の核兵器マニアですから応じるかどうか。
いずれにしても、プーチンにはフィンランド大統領の言葉を借りれば「敗北を認める能力がない」ようです。
「(CNN) フィンランドのニーニスト大統領は10日、ロシアのプーチン大統領について、ウクライナでの戦争における敗北を受け入れることができないとの見方を示した。ノルウェーのストーレ首相との共同記者会見で語った。
ニーニスト氏は「プーチン大統領が何らかの敗北を認めることができるとは、とうてい思えないと伝えた。彼にその能力があるのか。それが問題だ。わたしは、彼には敗北を受け入れる能力はないと思う」と述べた。
ストーレ氏は、交渉による解決やロシアの侵攻停止は望めないとし、残念ながらそうしたことが即座に実現することはないとの見方を示した」
フィンランド大統領、プーチン氏は「敗北を受け入れる能力がない」 - CNN.co.jp
米国は、大統領のキーウ訪問と同時に中国にもガツンとかましました。
「米領空を飛行した気球の問題については、二度とあってはならないと王氏に伝えた。王氏は会談に先立つ数時間前、気球を撃墜した米国の対応を「ヒステリック」だと非難した。
ブリンケン氏は19日放映予定の米NBCニュースのインタビューで、中国がロシアに武器支援を検討していることを非常に懸念しており、王氏に対して「われわれの関係に深刻な結果をもたらすことになる」と伝えたと明らかにした。
「少なくとも兵器を含むさまざまな種類の致死性のある支援が考えられている」と指摘し、米政府は近いうちに詳細を発表するとした」
(ロイター2月15日)
米国務長官、中国外交トップの王氏と会談 ロシア支援巡り警告 | Reuters
ブリンケンと王毅のミュンヘン会談は、当初から正式なものではなく、短時間顔を合わせる程度のものとして設定されました。
というのは、険悪になるのがわかりきっていたからです。
正式な外交責任者間の会談にしてしまうと、共同声明を出さねばなりませんから、互いに言いたいことを言うためには非公式会談だったほうが都合がよかったのです。
米国は、気球事件をむしろ奇貨として、ロシアに軍事援助なんかしやがったら同罪だからな、と言うためにこの会談を開いたようなものです。
とうぜん激しいやりとりがあったようですが、王毅は頑として謝るどころか、気球を落としたことに噛みついたそうです。
それにしても、どうしてここまで突っ張れるのかね、王毅さん。
米国本土にスパイ気球流していて、その現物が捕獲されてしまったら、言い訳きかんだろうが。
王毅は徹底的に習近平におもねることで、外相から常務委員の外交担当にまでのしあがった男です。
従来の外交部は、米中緊張緩和を最優先事項にしていましたが、ここで風向きが変わりました。
習近平は、米国への宥和は絶対許さない方針で、軍部も習近平の顔色を見て南シナ海のフィリピン沿岸警備隊へのレーザー照射などの過激な動きをしています。
本来、習近平の止め男にならねばならないはずの王毅が、とんだゴマスリ男で戦狼スタイルで突っ走るのですから、ディスペレートです。
プーチンのラブロフと同じで、独裁者の外相は皆、戦狼になってしまうようです。
米国務長官、ドイツなど歴訪へ 中国・王毅氏との会談は実現するか | 毎日新聞 (mainichi.jp)
また福島香織氏によれば、中国がロシアのゴロツキ集団ワグネルに衛星図像や軍事ハードウェアなどの電子産品を提供していたことについてブリンケンは王毅にねじ込んだようです。
ブリンケンは北京に対し、モスクワがウクライナに戦争を仕掛けたとき、「もし中国がロシアに物質的支持、あるいは制裁逃れに協力するようなことがあれば、影響と結果をもたらすだろう(悪い結果をもたらす)」と警告していますから、今の半導体輸出規制をさらに強化するでしょう。
一方王毅は、ブリンケンとの会談の後、盟友ロシアを訪問しています。
習近平訪露への露払いです。
ロイター
「[21日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領の側近であるパトルシェフ安全保障議会書記は21日、同国訪問中の中国外交担当トップの王毅氏に対し、中国がロシア外交政策の最優先事項で、両国は西側諸国に対し結束する必要があるという認識を伝えた。ロシア国営通信RIAノーボスチが報じた。
パトルシェフ書記は「ロシアと中国を封じ込めを目指す西側諸国によるキャンペーンに対し、国際分野におけるロシアと中国の協力と関係の深化はとりわけ重要」と述べた」
(ロイター2月22日)
中ロシア高官が会談、協力と関係深化巡り協議 西側に対抗へ (ロイター) - Yahoo!ニュース
いうまでもありませんが、ゼレンスキーは妥協するつもりはいささかもありません。
ここで妥協して和平などしたら、待っているのは朝鮮戦争型分断国家です。
ゼレンスキーは、いわゆる「ウクライナ疲れ」をいうイタリアメディアに向けてこう言っています。
「イタリアの世論調査ではプーチンを侵略者だと思うと答えているのわずか50%です。
それについてどう思いますか?」
ゼレンスキーは「その50%が必ずしも親ロシアだとはかぎりません。たぶん、戦争を恐れ、それに伴うエネルギー高騰、インフレを恐れているのです。
面倒ごとはいやだ、と考えるのは正常な反応です。だから、私はなぜウクライナが戦わねばならないかを説明しなければならない。突然強盗がやってきて、ものを盗み、妻や娘を犯し、殺す。それが私たちの国で起きていることです。私もイタリア人と同じ、食べ物をたべ、家族を愛している。これは生存のための戦いなのです」
福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.732 2023年2月22日
まことにそのとおりです。
侵略1周年に当たって、私たちはこのゼレンスキーの「生存のための戦い」という言葉をもう一回かみしめる必要があります。
ウクライナに平和と独立を
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昨日はプーチンが年次教書演説で新START離脱発言。そしてあくまでも仕掛けてきたのはウクライナと西側だというこれまでの繰り返し。バイデンはいいタイミングでしたね。
イタリアにしても何故かヨーロッパの極右系って揃ってロシア大好きなのがよく分からんなあ···等と思う今日は竹島のぬこの日です。
今鍵を握ってるのは中国の対応でしょうね。外相が出世すると外務担当委員になるという共産党政権ならではの分かりにくさ。本当に新冷戦の始まりと核戦争の脅威が近付いたと思います。。
投稿: 山形 | 2023年2月22日 (水) 07時42分