北朝鮮、またまた(以下略)弾道ミサイル発射
北朝鮮が、夏の花火大会よろしくポンポン弾道ミサイルを上げています。
【ソウル=時吉達也】韓国軍合同参謀本部は20日、北朝鮮が同日午前7時と7時11分ごろ、西部粛川(スクチョン)付近から日本海に向け、短距離弾道ミサイル2発を発射したと明らかにした。日本の海上保安庁は20日、防衛省の情報として、北朝鮮が弾道ミサイルの可能性があるものを計3発発射したと発表した。日米韓当局はミサイルの種類の特定などを急いでいる。
日本政府関係者によると、ミサイルはいずれも日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したとみられる。北朝鮮は18日にも大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したばかり。米韓が19日に実施した、戦略爆撃機などによる合同訓練に対抗したとみられる」(産経2月20日)
金与正氏「日本越え」警告 韓国軍、北朝鮮の弾道ミサイルは「2発で短距離」 - 産経ニュース (sankei.com)
今回の弾道ミサイルは、日本でもっとも確かなソースであるJSF氏によれば抜き打ちで撃ったと北朝鮮は言っているようです。
部隊名は「第1赤旗英雄中隊」というのだとか。ドン臭いというかレトロというか。
しかし部隊名に「赤旗」とか「親衛」「英雄」などとつくとエリート部隊のようです。
国民や他の部隊が飢餓線上でも、このミサイル部隊だけはいいもの食っているんでありましょう。
JSF
「2月19日、北朝鮮は前日18日の夕方に発射したICBMについて、既存の液体燃料式ICBM「火星15」だったことを発表しました。事前計画無しの抜き打ち指示による即応発射訓練とあり、新名称組織の「ミサイル総局」の命令を受けて発射したのは第1赤旗英雄中隊、発射場所は平壌国際空港(順安空港)、発表された火星15の飛行数値は以下の通りです。
水平距離:989km
最大高度:5768.5km
飛行時間:4015秒(66分55秒)
ロフテッド軌道(山なりの弾道)による火星15の全力性能発揮が実施されています」
(JSF2月19日)
北朝鮮発射ICBMは液体燃料の火星15(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース
火星15と火星17は、混在してひとつの赤旗なんじゃら部隊に配備されているようです。
両者は大きさが異なるので、移動式発射装置(TEL)も、9軸18輪が6両、火星17用の11軸2輪TELは12両があるようです。
北朝鮮は実に多彩なミサイルを持っていますが、いちばん射程が長い大陸間弾道弾ミサイルは今回発射された「火星」シリーズです。
射程は、今のところロフテッド軌道でポーンと高く上げていますが、通常モードで撃てば1万キロに達すると見られています。
北朝鮮はなぜミサイルを発射するの?1からわかる!「北朝鮮とミサイル」 改訂版(1)|NHK就活応援ニュースゼミ
北朝鮮を中心に半径1万キロの円を描くと、アメリカのロサンゼルスあたりまで射程に入ることになります。
一方、「北極星」「北極星2」「北極星3」の名前がついているミサイルは、SLBMと呼ばれているもので、潜水艦発射弾道ミサイルです。
実はこれが一番やっかいなシロモノで、バカデカイ「火星」ミサイルを北朝鮮の悪路をゴロゴロと引っ張っていれば偵察衛星に必ず探知されるのですが、潜水艦から発射するので秘匿性が高いのです。
北朝鮮「新型潜水艦弾道弾『北極星3型』の発射実験に成功」 : 政治•社会 : hankyoreh japan (hani.co.kr)
普通は潜水艦から撃つものですが、なんと北はダムから発射して見せました。
こんなところから撃つのは、まともな潜水艦がないからです。
かんじんの潜水艦のほうがまともなものがないので、実用化にはまだ時間がかかりそうです。
2016年のちょっと古い評価ですが、西村金一氏(幹部学校戦略教官室副室長 )のこのような評価があります。
「北朝鮮のSLBNの能力を評価すると、初歩段階である。たとえば、韓国国防省によると、SLBNには1発しか搭載できないという。
中国やロシアのSLBMと北朝鮮のSLBMとは、射程の違いから大きな差があることから、その運用に大きな違いが生じる。
中国SLBMのJL-2潜水艦発射弾道ミサイルの射程は8000kmであり、これと比べると北朝鮮のものは500kmであり短すぎる。射程や発射できる弾数から見て、米ロが保有しているSLBMとはまったく異なるものであり、SLBMという用語に騙されてはいけない」
(西村金一)
main (jfss.gr.jp)
西村金一
SLBMの射程が短いために、米国を狙おうとすれば潜水艦はかなり北米まで近づいて撃たねばなりません。
本来、このような戦略型潜水艦は安全な自国沿岸か、海溝にひっそりと潜って待機しているものですが、こんなポンコツを北米まで引きずって行く間に、確実に日米の対潜網に引っ掛かり、あえない最期を遂げることでしょう。
新型を作ったと誇示していますが、潜水艦技術は簡単に習得できるものとちゃいまんねん。
弾道ミサイルや核兵器のように中露からもらうといっても、潜水艦の開発技術は秘匿性のレベルが極めて高いのです。
弾道ミサイルのように、商品として売買しているものではないために、中露は一昔前のキロ級のものは売っても、現在運用中の静粛性の高い大型戦略原潜を与えることはまず考えられません。
ウクライナ戦争で大いに貸しを作ればあるいは、と思わんではありませんが、常識的にはロシアが虎の子の戦略原潜を供与するとは思えません。
最後に、今回の目的ですが、淡々とスケジュールどおりやっているだけのことです。
産経さんもこの連発が「戦略爆撃機などによる合同訓練に対抗した」と書いていますが、ミスリードです。
左向きの人たちもなにかと、「日米が追い込むから、北はミサイルを撃つのだ」という言い方をしますが、同様に間違っています。
辺真一氏などは記念日に合わせてやっていると言っていましたが、これもアテになりません。
なんせ週刊弾道ミサイルですからね。
北朝鮮は、米韓合同演習をしたからどうのとか、日本海で日米共同訓練をしたからこうのでミサイルを撃っているのではありません。
あらかじめある核戦力獲得の工程表どおり、撃っているにすきません。
ですから、こちらが何をしようとしまいと、ミサイルを撃ち続けます。
あたかも日米韓国が何らかのリアクションをしたからその報復で撃ったのだという言い方を認めてしまうと、今回も与正女史がこう言っていることを、こちら側から追認することになりかねません。
「金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(ヨジョン)党副部長は20日、朝鮮中央通信を通じて談話を発表し「われわれが太平洋を射撃場として活用する頻度は米国の行動次第だ」と強調。日本列島上空を越える弾道ミサイルの発射を警告した」
(産経前掲)
北は、こちらがリアクションを自粛使用としまいと核兵器開発を止めないのです。
彼らのゴールは、核兵器のバランスを取ること、すなわち相互破壊確証(MAD)のようです。
そしてそのゴールは、バイデンの無為無策によって眼前まで近づいています。
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金与正氏の発言など見ると、未だに「米国さん、かまってよ!」と言っているよう。それでも一歩々々必ず国際公認核保有国になるべく努力を重ねているものの、バイデンの動きは意図してか鈍いように見えます。
米国は韓国にまず必要な軍事力をつけさせようとしてい、自らは4%増という実質的な軍事費ダウンをしてます。
一国主義からの脱却を図っているのかも知れませんが、同盟国からの不信を買う事も、北朝鮮のような国に誤ったメッセージを送る事にもなりはしないか。バイデンじゃ不安ですね。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年2月21日 (火) 08時32分