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2023年3月

2023年3月31日 (金)

英国と日本のマリアージュが始まる

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日英同盟( Anglo-Japan Alliance)が絵に描いた餅から、現実のものになろうとしています。
戦前の日英同盟が米国の反対で廃棄され、そこから大戦と亡国へとつながっていったことを考えると、新しい歴史的な出発点が間近に迫ってきた気がします。

この数年で世界とアジア情勢は大きく変化しました。
いままで日米同盟が単独で支えてきた対中シフトに、オーストラリア、そしてインドが加わり、FOIPという陣形が姿を見せ始めたからです。
そしてこれに英国が加わろうとしており、誘われるようにしてフランス、ドイツといったいままで中国ベッタリだったNATO諸国も東アジアに艦隊を派遣しました。

大きく時代が変わろうとする地殻変動の地鳴りが聞こえてきます。
こういう歴史的変化をまったく報じないで、「大臣レク」があったのなかったの、「高市が逃げきった」からどーしたのこーしたのと、ああ、くだらない。とことんドメスティック。
世界は永田町から半径3キロで回っているようです。

オールドメディアのバカを言い募っているとキリがありませんからこれくらいにするとして、CPTPP (アジア太平洋地域における経済連携協定 Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership) の英国加盟協議は佳境に入ったようです。
日本のメディアはほぼスルーのようですが、唯一FNNがこのように短く報じています。

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FNN

「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に、イギリスが加盟することで、3月中にも大筋合意することがFNNの取材でわかった。
TPPは、加盟国の間で関税の撤廃や引き下げ、貿易ルールの共有などがおこなわれる協定で、日本やオーストラリア、カナダなど11カ国が参加して、アメリカ抜きで発効した。
アメリカの離脱をめぐっては、トランプ氏が大統領就任を控え表明した際に、当時の安倍首相が「大変厳しい」と語っていた。
イギリスは、EU(ヨーロッパ連合)からの離脱をきっかけに、2021年からTPP加盟国との交渉を進めていた。
複数の政府関係者によると、3月中にも12カ国目として加盟することで、大筋合意するという。
イギリスはTPPに、日本に次ぐ2番目の経済大国として参加することになる」
(FNN3月28日)
【独自】イギリスがTPPに加盟へ EU離脱後から各国と交渉 12カ国目、日本に次ぐ経済大国(FNNプライムオンライン(フジテレビ系)) - Yahoo!ニュース

おいおい、3月中ってあと2日しかないぞ。
1カ月ほど前に、ポリティコがこのように報じています。

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FNN

「英国は、欧州連合を離脱した後、世界の他の地域との商業的関係を拡大しようとしているため、近い将来、太平洋横断貿易ブロックに参加することを望んでいる、とビジネス貿易大臣のケミ・バデノックはこう述べた。
「私たちはすぐに参加しようとしています」とバデノックは木曜日に議会で語った。「私たちは交渉の素晴らしい段階に達しました」そしてやがて「良いニュース」があります。
11年前にEUを離脱して以来、英国の保守党政権は、ブレグジットのメリットと呼ばれるものを実現するために、一連の新しい貿易協定を仲介しようと努めてきました。英国はすでに環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の13加盟国の半数以上と二国間協定を結んでいるが、協定に参加すると、世界経済生産高の多くを占める国々との貿易の車輪にさらに油を塗るでしょう。
野党労働党が残留農薬などの分野で基準が弱まると警告した後、バデノック氏は、英国はCPTPPに参加するための交渉の最終段階で食品基準を保護するために取り組んでいると述べた。また、英国が協定への参加と引き換えにマレーシアからのパーム油の輸入関税を緩和する懸念もある」
(ポリティコ2023年3月1日)
英国は「差し迫った」環太平洋貿易ブロックへの参加を検討 |エッジ市場 (theedgemarkets.com)

しかしいずれにせよ、大勢は決したようです。
英国は12番目の加盟国としてCPTPPに加盟するでしょう。
英国加盟が実現されれば、日本外交の大きな勝利です。
故安倍氏が残した遺産である「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の経済面であるCPTPPに、ヨーロッパにおける初めての参加国として英国を迎えることができれば、アジア・太平洋地域の自由主義陣営はさらに強化されます。

英国国際問題研究所(チャタム・ハウス)報告によると、日英関係がパートナーシップとして発展する要素はたくさんあると指摘しています。
CHHJ7800-UK-Japan-Report-JAPANESE-WEB.pdf (chathamhouse.org)

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◾英国はインド太平洋地域の政策をより明確かつ公的なものにし、地域の同盟国と協力して、戦略的目標を実現するために、軍事、外交、経済分野における共通の価値観に関する声明と協調を図るべきである。日本との「準同盟」は、新しい時代の高い野望を反映した正式な合意に基づく。
◾英国は、環太平洋パートナーシップ(CPTPP)の包括的かつ進歩的な協定 への加盟を求めることによって、共有された経済及び貿易利益を保護するためのメカニズムを強化することができる
英国は日本企業にとってヨーロッパへの入り口として貴重な役割を果たしてきた。既存の外務・防衛大臣の「2+2」会合は、FOIP 戦略における英国のパートナーシップを定義する必要性に基づいて、貿易・投資政策を扱う閣僚を含むように拡張され、より総合的な「3+3」形式になる可能性がある。
英国は日本でイギリス海軍の軍艦を前進させることを検討すべきであるシンガポールやブルネイに新しい英国基地が加わると、日本は北朝鮮, 北極海,北太平洋周辺の作戦に向けてより良い立場にある 。
また、米国第7艦隊と海上自衛隊とのシームレスな統合を促進する。
CHHJ7800-UK-Japan-Report-JAPANESE-WEB.pdf (chathamhouse.org)

う~ん、わくわくしますね。大きな鳥が殻をやぶって翼を拡げようとしているようです。
このチャタムハウスの文中に「準同盟」と記されていることに注目してください。
この表現は、テリーザ・メイ首相が来日した時に使った"like-minded "な国(価値観を共有する国家)と照合します。
英国がファイブアイズ(英米豪NZ)といったアングロサクソン系国家以外に、この表現を用いたのは日本が最初だそうです。

テリーザ・メイ首相の時期から、英国は「グローバル・ブリテン」構想を立てていました。

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英連邦(コモンウェルス)

メイを引き継いだボリス・ジョンソンは、EUという名の「ヨーロッパ合衆国」を拒否し、独自の国家戦略の展望としてアジア・太平洋を選択しました。
そこに新しい巨大経済圏を作り、EUでは望めなかった多くの国との自由防衛協定を締結し、徹底した規制緩和によって外国企業を呼び込み、西の拠点としてのロンドン、東の拠点としての東京を構想しました。
東の拠点が東京であるのは、安倍氏が米国離脱後に空中分解しかかったTPPを独力で牽引し、その指導的国家となったからです。
この東のTPPと英国の英連邦自由貿易圏構想がドッキングして、多重なFTAで結ばれた巨大なマーケットに世界から多くの先端企業や金融を呼び込むという気宇壮大なものです。
この中で、英国はロンドンのシティを「テムズ河のシンガポール」として位置づけようとしています。

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読売新聞写真部さんはTwitterを使っています: 「英国の最新鋭 #空母「クイーン・エリザベス」が4日、米海軍横須賀基地に到着しました(読売ヘリから、上甲鉄撮影)。画面中央奥は、海上自衛隊の護衛艦「いずも」

そしてこの巨大経済圏を守る防衛力が、日米同盟を機軸とした日米英豪の軍事的連携です。
具体的には、チャタムハウスは、英国は英海軍のシンガポールやブルネイの海軍基地を利用可能とすることを提言しています。
また、米国第7艦隊と海自とのシームレスな統合に強力するとも提言しています。

チャタムハウスは、これらの構想を具体化するために、日英はいままでの2プラス2(防衛・外交大臣間協議)から3プラス3(防衛・外交・通商)に発展させるべき時期だとも言っています。
このような大きな状況を眺めてくると、今の日英準同盟は実はもっと大きなアライアンス(同盟)につながっていく過渡的なものに思えてきます。
それは「アングロサクソン+日+印連合」という国家間アライアンスです。

世界はウクチイナ戦争移行、大きくは自由主義陣営と独裁国家群との冷戦に突入し、さらに自由主義陣営は2つのクラスターになっていくかもしれません。

一つ目のプレートは、米国を盟主とするアングロサクソン圏+日+印連合
二つ目は、ドイツを盟主とするヨーロッパ合衆国連合

このように見てくると、世界のプレートが三つに割れていこうとする、まさにその歴史的時期に私たちは立ち会っているのかもしれません。
英国、CPTPPへようこそ。

 

※追記
英国の加盟が11カ国で認められました。

「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に参加する日本など11カ国は31日、英国の加盟を認めることで合意した。2018年に協定が発効して以降、新規加盟が認められるのは初めて。英国の加盟により、TPP経済圏はアジア太平洋地域から欧州へと拡大することになる。
31日にオンラインで開いた閣僚級会合で合意した。英国は早ければ7月にニュージーランドで開催される閣僚級の「TPP委員会」で協定文書に署名する見通し。署名後、各国の承認手続きを経て、英国の加盟が正式決定する。
 英国は20年末に欧州連合(EU)から離脱完了し、EU以外との経済関係を強化する狙いから21年2月にTPPへの加盟を申請した。英国が加盟すれば、世界全体の国内総生産(GDP)に占めるTPP加盟国の合計は12%から15%に拡大する」
(毎日3月31日)
TPP、英国加盟で合意 協定発効以降、新規加盟は初(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

2023年3月30日 (木)

戦時経済に移行したロシア

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偶然ですが、来年2024年はいろいろな重要選挙がひしめいた年となります。
まず、24年1月には台湾総統選、3月にロシア大統領選、5月にウクライナ大統領選、欧州議会選挙が上半期のどこか、11月には米大統領選が実施されます。

どれひとつとして、まぁいいやというものがない惑星直列的選挙イヤーとなります。

ですから、その前年の今年は24年選挙イヤーの前哨戦となります。
プーチンがバフムトで恥も外聞ない突撃を敢行させたのも、中国の「和平案」に色気を見せたのも、ムシがいい非武装地帯提案もすべて今年中にウクライナをナンとかしないとならないからです。
絶対にウライナ戦争は負けられない、占領しているウクライナの土地が奪還されてはならない、全土の占領は不可能でも南部と東部は死んでも手放さない、手放したら身の破滅、ロシアの終わり、と決意をしているはずです。
とはいえ、この1年間でロシアはすでに10万人以上が死傷しています。

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BBC

「ロシア側では優に10万人以上の兵士が殺されたり負傷したりしている。おそらくウクライナ側でも同じことが言える」
ロシア政府が9月に発表した戦争開始後の死者は5937人。セルゲイ・ショイグ国防相は、それよりずっと多いとする報道を否定している。(略)なお、1979~89年のアフガニスタン戦争でのソ連軍の死者は1万5000人とされている」
(BBC2022年11月11日)
ロシアのウクライナ侵攻、両軍の死傷者は約20万人=米軍トップ - BBCニュース

去年11月時点で10万を超えたのですから、今年一杯この苦戦が続けばその倍に達することでしょう。
ソ連崩壊の原因のひとつとなったアフガン戦争ですら1万5千人ですから、その20倍近い戦死者の山を築いたことになります。
また勝利を得るためには、大都市部での徴兵も必要になるので、国民の不満がいつ爆発するのかわかりません。
独裁者は、ゼロコロナを瞬く間に止めた習近平のように、あんがい民衆の動向を気にしているものなのです。
いったん爆発したら、再選どころか国全体の統治自体がおぼつかなくなります。
大帝国を誇ったソ連が崩壊した3つのきっかけは、一にアフガン出兵の失敗、二にチェルノブイリ事故、三に過剰な軍拡でした。
今のロシアは、この3つのうち2つまでが被っています。

ところで、戦争の行方を決定するのは、戦力だけではなくそれを支える経済力です。
戦争は国力の戦いであり、いかに早く総力戦体制を築くのかが勝敗の分かれ目だからです。
ロシアはすでに戦時経済に移行しました。
戦時経済とは、軍需生産を最大限にするために民需を抑制する統制経済体制のことです。

「戦時経済とは、政府が戦争を遂行するために、市場に統制や動員などという形で強く介入した時の経済という意味で使っている。つまり、程度の差こそあれ戦争に経済を従属させたときの経済という意味である」
(荒川憲一『戦時経済体制の構想と展開』)
Microsoft Word - 博論要旨3.doc (hit-u.ac.jp)

プーチンは去年7月、「政府の戦争継続を可能とするため、物資や労働力を武器製造などに優先的に調達できるよう、政府の権限を強化する」、ふたつの法案を通しました。
この法案が出来てきた背景には、ウクライナでビックリ仰天の戦車を喪失したからです。
喪失数、やられもやられたり1700両!
戦車大国を自認するロシアの保有台数の半分に達します。
ちなみに、わが国の自衛隊の戦車保有数は560両で、G7諸国ではまずまずの数ですが、たった1年でその3倍オシャカにしてしまったことになります。

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AP共同

「ロシアのウクライナ侵略に伴う両軍の兵器の損失を調査している団体「Oryx」の集計で、ウクライナ軍が破壊した露軍の戦車が10日朝時点で1012両に上ることが明らかになった。ウクライナ軍の手に渡った分なども含めると、露軍が失った戦車の総数は1700両を超えた。Oryxの調査に協力している専門家は米CNNに対し、侵略開始時点で露軍が運用可能だった戦車数は約3000両だったと指摘した。露軍はこの半数以上を失った計算となる」
(読売2023年2月10日)
ロシア軍が戦車の半数失ったか、攻撃で1000両超破壊され…国際団体調査 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

当然、ロシアは戦車の増産を図ろうとしていますが、なにぶんかんじんな部品や資材、電子部品が足りないのです。

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ウラルヴァゴンザヴォドがモスクワでの戦勝記念日パレードに向けて戦車を準備 |ニュース |OTR - ロシアの公共テレビ (otr-online.ru)

世界的な戦車メーカーでロシア唯一の戦車メーカーであるウラルヴァゴンザヴォド社(ウラル戦車工場)は部品不足により、戦車の生産がストップしました。
西側による経済制裁の影響で欧州製の部品が入ってこなくなり、工場の操業が停止してしまいました。
つまり、ロシア軍は新規の戦車を製造できないだけでなく、戦車の修理や保守、バージョンアップもできなくなっています。
たとえば、ロシア政府は倉庫や車両保管場に眠っていた1万両もの古い戦車を引っ張り出して再使用しようとしました。
しかし長期保管されていた比較的新型のT-72やT-80の多くは1970年代に製造されたT-62よりも状態が悪かったのです。
なぜなら、高価な電子部品を使うデジタル照準器は既に盗まれており、フランス製部品がないと製造できないためです。

「ロシアでは高度な光学機器や電子機器が保管庫から出されると、あっという間に品質が低下したり盗まれたりする傾向がある」
(フォーブス2023年1月31日)
ロシアは古いT-72戦車を改装を進めるも光学機器不足か | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

月に150両のペースで撃破されているのに対して、ウラル戦車工場は月20両を製造するのがやっとなのです。
最近、ウクライナ戦線に博物館から引っ張りだしたようなT62が大量に出現したのは、このような理由からです。
戦車のみならず、ミサイル、航空機などの製造も滞っています。

この状況を打破するために出来たのがこの戦時経済移行法です。

「ロシア政府は経済活動に対する統制を強化し、戦時経済体制への移行を図っている。それを可能にする2つの法案が、7月に下院で可決された。法案は上院で可決された後、プーチン大統領の署名を経て成立する。
添付文書によると、法案は特に軍を支援し、「武器や軍装備品を修理する必要性の短期的な高まり」に対応する狙いがあるという。
政府の戦争継続を可能とするため、物資や労働力を武器製造などに優先的に調達できるよう、政府の権限を強化することが同法の目的である。ロシア軍には兵器枯渇の兆候も出ており、法案はこうした状況を打開する方策の一つとみられる」
(木内登英2022年8月1日)
戦争長期化と制裁への対応でロシアは戦時経済体制に移行 | 2022年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

木内氏によれば、この戦時経済移行法によって、政府が企業に対して国防契約の履行を義務付けることを可能にし、国防省などに契約条件を変更する権限を与えるものです。
政府は命令一本で、民間企業に民間向けから軍需品向けに切り替えるように強制できることになったわけです。

また、労働者に対しても、所定の労働時間を超えて夜間や週末、休日に勤務する条件や年次有給休暇の規定を変更する権限を政府に与えました。
政府が特定の企業の従業員に残業代を支給して、時間外労働を要請することが可能となりました。

ではこの戦時経済移行法が、どのようにロシアの国民経済に影響を与えるでしょうか。
とうぜんのこととして、真っ先に起きるのが民間のモノ不足です。

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ロシアビヨンド

それでなくても、ロシアはウクライナ戦争による国際社会の経済制裁にあえいでいました。
たとえば、ロシアの主要な銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除されたためにロシアの貿易決済が困難をきたし、貿易が停滞しています。
ロシアの貿易収支は黒字の大部分は、石油やガスの輸出が担っています。
そしてロシアの技術力は軍需産業に特化したものなために、自国では中間財や生産財をつくることができません。
よくロシアンフレンドは、ロシアの輸出が堅調であり、原油は中国とインドがむしろ多く買ってくれるので、なんの心配もないぞよ、とご託宣を垂れていますが、いくら原油で稼いでも、中間財や製造装置の輸入が制限されてしまっては元も子もありません。

下図はロシアの民需生産を、コロナの影響がある前年とその影響がない前々年度とで比べたものです。

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ロシアのモノ不足はどれほど深刻なのか、ロシアが発表している生産統計で分析 4割強の減産を余儀なくされた自動車、徴兵や若者の国外脱出で労働供給も減少(2/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

「上図は、今年1〜10月期の製造業全体の水準(2021年を100とする指数で99.6)を下回った業種を並べたものである。顕著に減少しているのが自動車であり、58.4と4割強も減少した。自動車の場合、コロナ前の2019年を100とする指数でも63.7と、腰折れ状態であることに変わりはない」
(土田陽介2022年12月4日)

重工業である軍需産業に限られた資材を最優先に割り当てようとすれば、民需は自ずと制限されます。
インドや中国から輸入しようとしても、ヨーロッパと同等の性能のものを代替するのは困難であり、最終製品は外観は同じでも中身は故障を多発します。

そしてさらにおそらく100万人規模に達すると見られる徴兵のために、労働力がタイトになってきています。

「戦争の長期化を受けて、ロシアでは労働供給が減少している。徴兵された働き盛りの国民がいれば、徴兵逃れで出国した若者も多数いるため、この労働供給の減少は構造的なものだ。つまり、生産に費やすことができる要素は不変であるどころか、むしろ減っている。輸入品の代替生産の強化など、人手が足りなければ不可能だ」
(土田前掲)

土田氏は去年12月の段階ではまだ「入り口にすぎない」と見ています。
この1年間で、モノ不足による物価高はより深刻になるはずです。
インフレが進行し、同時に不況も進むというスタグフレーションに陥るかもしれません。
本格的影響は今年一年間に渡ってじっくりと出てくるのであって、ロシアは遅効性の「戦時経済」という毒を飲んでしまったのです。

プーチンは国民をなだめるために、社会福祉の支出を大幅に拡大し、来年だけで9360億ルーブル増の3兆4000億ルーブルに引き上げることも計画しています。
国民の戦争支持を獲得、来年の選挙にかつためには、国民への年金増額、給付金支給のバラ撒きは欠かせないのです。

たった4日で終わるはずの「特殊軍事作戦」の終わりは見えません。

 

 

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【フォト】独英の主力戦車が到着、米装甲車も ウクライナ、戦況打開目指す - 産経ニュース (sankei.com)

ウクライナに平和と独立を

 

 

 

 

2023年3月29日 (水)

ロシア、ベラルーシを核の楯に

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 プーチンがまた危ないことをしてきました。
世界で唯一の同盟国であるベラルーシに核を配備するというのです。
この時期に危ないことをする男ですが、当人は米国もやってるじゃん、と居直っています。


「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は25日、同盟関係にあるベラルーシに戦術核兵器を配備することで、ベラルーシ側と合意したことを明らかにした。
プーチン大統領はロシア国営テレビに対し、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領がベラルーシ国内に戦術核兵器を配備するという問題を、以前から提起してきたと語った。
そして、アメリカが欧州に戦術核兵器を配備していることを引き合いに、今回の動きは核拡散防止条約には違反しないと述べた。
「(戦術核の配備は)ここでも何らめずらしいことではない」、「そもそも、何十年も前からそうしてきたのはアメリカだ。彼らは長い間、同盟国の領土に戦術核兵器を配備してきた」とプーチン氏は述べた。
ロシア政府が兵器の管理権をベラルーシ政府側に譲渡することはないとしている。
また、ロシアは7月1日までに、ベラルーシ国内で戦術核兵器の貯蔵施設の建設を完了させる方針だと付け加えた」
(BBC 3月26日)
プーチン氏、ベラルーシに戦術核兵器配備へ 核拡散防止条約違反ではないと - BBCニュース w o 。

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BBC  核搭載可能な短距離弾道ミサイル「イスカンダル」

なにが「珍しいことではないだ」、大炎上しているウクライナの横でこんなマネをすれば、核のエスカレーションラダーをまた登ったと思われるに決まっているだろうって。
なるほど、プーチンが言うようにこのロシアの措置自体は、核拡散防止条約(NPT)に違反してはいません。
私たち日本人も知っている「核武装のもう一つの手段」であるニュークリアシェアリングと同じ仕組みですから合法です。
核の鍵はロシアが握り、配備する発射拠点だけがベラルーシになる「だけ」のことだからです。

一見、常識的に見えますが、とんでもない。
ベラルーシに移すことで、ロシアの核使用の垣根が低くなるのですよ。
単に両陣営の緊張が高まっている時期ということだけではなく、西側の報復は全部ベラルーシに向かいますから、ロシアは安全地帯。
ですから、「気軽に」核を撃てるようになります。

仮にプーチンが小型核を発射したとすれば、NATOと米国には選択肢はふたつしかありません。
ひとつは通常戦力で報復するか、さもなくば核には核で応えるかです。
それはロシアの核弾頭が落ちてくる場所によって異なります。
無人島だったり、森林地帯だった場合は前者、バルト諸国やスカンジナビア諸国、東欧諸国なら後者です。

ちなみに「報復をしない」という選択肢はありえません。
核攻撃に対して同盟国が核の業火に炙られている時に、なにもせずに座して傍観すれば、その瞬間、相互確証破壊の論理は崩壊します。
撃っても撃ち返さないのですから、ロシアが世界の盟主となってしまうわけです。
したがって報復しないということは、たんに自身の核の傘(拡大抑止)を自分で否定してしまうことにとどまらず、米国が覇権国家であることを止め、世界が混沌の淵に落ちることを意味します。

では、後者、すなわち西側が報復核攻撃を決意した場合、どこが目標となるでしょうか。
ロシアの戦術核は、リトアニアとポーランドとの間にある飛び地のカリーニングラード配備されています。

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藻谷浩介が歩く「ロシアの飛び地カリーニングラード」 | 藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」 | 藻谷浩介 | 

ロシアは長距離核はロシアの深部に配備し、小型核はあえて本土から切り離した飛び地のカリーニングラードに置くことで、報復攻撃が本土に及ばないようにしています。
つまりロシアは今回、これをベラルーシにも分散させてしまおうということになります。
これはいままでのロシアの動きには反しています。
1991年のソ連崩壊に伴い、それまでソ連という枠内にいて核を配備されていたロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの核は、あの手この手で1996年にはロシア一国に回収されました。

ちなみにウクライナの核も、この時国外に持ち去られました。
独立頑固派は、核さえあればみすみすロシアに侵略されなかった、と悔しがっています。
気持ちは分かるのですが、当時のウクライナは内乱が絶えず、核の管理能力はなかったのですからいたしたかがありませんでした。

それはさておき、ロシアが核をベラルーシにも分散させたことで、ロシアは大きな恩恵を受けることになります。
米ハドソン研究所研究員の村野将氏は、このように述べています。

「もしロシアがウクライナ・西側に対して核の警告発射を試みたり、実際に限定的な核攻撃を加えることを考えた場合、それらをベラルーシから発射すれば、米国が反撃する矛先は策源地のベラルーシに向くことになるでしょう。すると、ロシアは本国やカリーニングラードへの核反撃を一旦回避できると考えているのかもしれません」
(村野将3月26日)
Yahoo!ニュース 公式コメンテーター村野将さんのコメント - Yahoo!ニュース

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プーチンの盟友・ルカシェンコ訪中の背後で何がうごめいているのか?(遠藤誉) - 個人 - Yahoo!ニュース

村野氏によれば、ベラルーシは米国政府には核戦略上、注目された国でした。
実は、ベラルーシは2016年にオバマ政権の現役政府高官が参加して行ったシミュレーションで、報復核攻撃の目標として選択されたことがあるのです。
このウォーゲームは、いまの国務長官であるブリンケンも参加している大規模なもので、ロシアが小型核を使用した場合を考えるものでした。
この場合は、ロシアが小型核をドイツに発射するという設定です。
この時に、米国が選んだ報復攻撃目標がベラルーシでした。

地図を見れば分かるように、ベラルーシは、ポーランドやリトアニアといったNATO加盟国とにらみ合う位置にあります。
ロシアから見れば前進配備拠点ですが、今回プーチンは核の運搬手段としてベラルーシ空軍機とイスカンダル短距離ミサイルを考えているとインタビューで答えています。
そしてすでに「われわれは既にベラルーシに(戦術核を搭載できる)イスカンデルを引き渡し、4月3日から訓練に入り、7月1日にベラルーシ領に戦術核専用の保管庫が完成する」と予告しました。

ロシアは、ルカチェンコみずから望んだと言っていますが、ほんとうだとすると愚かなことを。
これでベラルーシは、プーチンの狂気が進行した場合、ロシアの身代わりとなって、真っ先に攻撃を受ける国に志願したことになります。
だって、ベラルーシの核の発射ボタンはプーチンが持っているのですよ。
プーチンと側近しか撃てない。
協議もナニもない、モスクワで発射コード入れられたら、ベラルーシから核ミサイルが飛んでいくわけです。
そしてその報いは、ベラルーシに来るのですよ。
なんて言って騙されたのかはは知らないが、ルカチェンコ、あんた馬鹿だねぇ。
プーチンの核の楯にされたのを気がつかないなんて。

 

 

 

 

20230328-173954

[ウクライナ侵攻1年]ロ占領の全領土奪還誓う ゼレンスキー大統領 世界で追悼行事 |
ウクライナに平和と独立を

 

2023年3月28日 (火)

バフムトのロシア軍失速

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ロシア軍のバフムト攻撃の勢いが落ちた、と英国国防省が分析しています。
バフムトは、この冬、ロシア軍の猛攻にさらされていました。

プーチンは圧倒的な砲撃力を背景にしたワグネル軍の攻撃で、ウクライナ軍を防戦一方に追い込んできましたが、英国防省は「相当の戦力を消耗し、勢いを失いつつある」との分析を公表しています。

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ウクライナ軍 激戦続く要衝バフムトの映像公開(2023年3月27日) - YouTube

「ウクライナ軍がバフムトの西側で反撃し、ウクライナ軍が南北両側から追い込まれるリスクは残るものの、ロシアの攻撃が勢いを失いつつある可能性が現実にある。
市中心部では戦闘が続いており、ウクライナの防衛は北と南からの包囲の危険にさらされている 」
(英国国防省3月22日)
「バフムトに対する攻撃はほぼ止まっている。これはロシア軍の極端な消耗の結果である可能性が高く、国防省とワグナーの対立悪化も関係してるようだ。
ロシアは作戦の主軸をアウディーイウカ方面とクレミンナ方面に移して前線の安定化を目指しており、この変化は今年1月からの攻勢で決定的な成果が得られなかったため、全体に『防衛的な作戦方針』に回帰したことを示唆している」
(同3月25日)

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バフムートの戦闘が「安定化」とウクライナ軍総司令官 - BBCニュース

BBCも同様にこう報じています。

「ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官は24日、ロシア軍が数カ月にわたって占領を試みている東部バフムートでの戦闘は「安定している」と発言した。(略)
ウクライナ陸軍の部隊司令官オレクサンドル・シルスキー氏も23日、ロシア軍はバフムート近郊で「疲れ切っている」との見方を示した。
また、ロシアは「人員や装備の損失にもかかわらず、何としてもバフムートを奪取しようと望みを捨てていないものの(中略)著しく戦力を失っている」と指摘した。

その上で、ウクライナによる昨年の反撃成功例を挙げ、「キーウ近郊やハルキウ、バラクリヤ、クピアンスクでそうしたように、我々は間もなくこの機会を活用する」と述べた」
(BBC3月25日)

どうやらロシア軍は、道路が凍結している冬期に、東部バフムトからの「一点突破全面展開」をめざしていたようです。
膠着した戦線を一点でこじあけて、その狭い穴からドっと拡がってウクライナを追い込むという手筈でした。
ここでとられたのが、損害をかえりみないワグネル軍のゾンビーアタックでした。
実際、ウクライナ軍は一時は窮地に陥ったという報道も多く流れましたし、バフムトも半分が占領されていたようです。
これを見て、ロシアンフレンドたちは、ウクライナ軍潰走したゾ、これで戦争の趨勢は決した、とはしゃいでいたようです。
ウクライナ軍はまもなく大敗北喫し戦争終結、これだけの証拠 紛争の東アジア飛び火に備えて日本がすべきこと(1/5) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

このロシアの戦法は、先の大戦の末期に日本でも現れた「一撃講和論」にやや似ています。
一撃講和論とは、圧倒的不利な状況の中で敵軍に一撃を加えて、少しでも有利な状況を作り出して、それをもって講和に持ち込むというものです。
しかし少し考えればわかるように、戦略的に圧倒的に有利な側が、一時の損害で講和に合意するはずはありません。
これは敗勢に陥った側がよく考える方法で、自軍のメンツを保ちつつ講和を有利に運ぼうとする時に生まれます。

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昨年動員された30万人のロシア軍兵士は、ほぼ全員がいまや戦場に投入されている  ブルームバーク

いまのロシアに置き換えれば、バフムートで一点突破をして多少力関係を有利にしてから、和平交渉をダシに使って、長期戦に持ち込むもうという思惑です。
ですから、バフムートで仮にロシア軍が勝利したとしても、それは長期戦に向けた時間稼ぎにすぎません。
長期戦に必要なものは、兵員と弾薬、それと国内の団結です。

「匿名を条件に語った関係者によると、ロシアは長期戦を念頭に最大40万人の契約軍人を集めることを目指している。これによりロシア軍の人員を補充したい考えだという。
契約軍人を大幅に増やす野心的な計画が実現すれば、予備役を再び強制的に動員することは避けられるだろうと、関係者は述べた。年内にはプーチン大統領の再選を目指す選挙戦が本格化することも背景にあるという。昨年秋の動員令は国民の信頼を揺るがし、最大100万人ともいわれるロシア人の国外脱出を引き起こした」
(ブルームバーク3月25日)
ロシア、兵士40万人の追加採用を画策-春は攻撃でなく防戦に注力へ - Bloomberg

砲弾は大増産できるゾ、と呼号しています。

「プーチンは、西側はウクライナへの武器供給を維持できないと主張し、ロシアが自国の防衛産業基盤(DIB)を動員する可能性を誇張して、ウクライナに対するさらなるウクライナの抵抗と西側の支援は無駄であるという誤った印象を作り出した。(略)
プーチンは、ウクライナへの継続的な西側兵器の提供は単に戦争を長引かせる試みであると主張した」
(国際戦争研究所)
ロシアの攻撃キャンペーン評価、25年2023月<>日 |戦争研究所 (understandingwar.org)

一方、兵員のほうは契約軍人を大幅に増やすつもりのようです。
ロシア軍がワグネルを重用したのは、正規軍の消耗を避けて温存するためでしたから、使い捨てにできました。
今度は40万人契約軍人を増やすというのですから、できるのかな、ホントに。

「ロシアは既に、数年間の条件で契約軍人の募集を開始している。地方当局には採用人数のノルマが課され、候補者には徴兵委員会への出頭を指示する招集令状を発行していると、事情に詳しい関係者は明らかにした。兵役経験者や農村部の住民を当局はまず狙っているという」
(ブルームバーク前掲)

その正規軍も、極東地域などモスクワから離れたところからの徴兵が主で、モスクワ、サンクトペテルブルクなどの都市部の動員は手つかずで置いています。

「ロシアの独立系調査機関「CIT」が動員令を実施した53の自治体を調べると、地域に偏りがあることもわかった。ロシア当局の発表どおりなら、招集されるのは予備役の1%。しかし首都モスクワでは0.8%と低い割合だったのに対し、東部シベリアの比較的貧しいクラスノヤルスク地方では5.5%、ウクライナに近いクリミア半島セバストポリでは4%と高い確率を示したのだ。
「モンゴル系住民など少数民族の住む地域も、確率が高くなっています。
背景にあるのは少数民族を優先的に危険な戦地に送ろうという差別的な考えと、抗議運動への恐れでしょう。都市部で反発が強くなれば、多くの市民が参加しプーチン政権を揺るがしかねない。そのため動員の重点を、地方の貧困地域に置いているのだと思います」
死者にも令状&少数民族地域に偏り…ロシア動員令「酷すぎる実態」

これは富裕層が住む都市部で徴兵をかけたら、1年前のような大規模デモをかけられてしまうからです。
ですからアジア系が多い地域や、戦争に反抗的な人々を動員しています。

彼らはすでに30万人ていどが動員され、即席訓練で前線に投入されて大損害を出しています。

少数民族地域ばかりで徴兵し、彼らの多くを殺してしまったら必ず反乱が起きます。
もうすでに何回か極東地域では小規模反乱が起きているようです。
少数民族地域のトゥヴァ共和国では、徴兵の大家に羊を配ったために抗議行動が起きたようです。

「動画では、名前もなき兵士が「プーチン氏と指揮官たちは兵士への敬意を欠いている」「戦争に参加させるために脅迫してきた」などと非難を口に出している。さらに動員された兵士たちの各家族に雄羊を支給するというトゥヴァ共和国の政策について「戦争に動員された対価が雄羊って、何だよ」と笑った」
ロシア動員兵が「プーチン倒せ」と反乱の雄たけび 劣悪な環境に不満爆発=英紙 | 

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ニューズウィーク 動員されたロシアの予備役

「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による部分動員令によって招集された兵士たちが、政府から報酬が支払われていないとして「実力行使」に出る事態が相次いでいる。SNSには、新兵用の訓練センターの敷地内で100人以上が集まって抗議のスローガンを叫ぶ姿を映した動画のほか、仲間たちが見守る中で上官と対峙して報酬の支払いを訴える兵士の動画などが次々に投稿されている」
(ニューズウィーク2022年11月4日)
動員ロシア兵100人超の「反乱」発生...報酬の不払いに不満を爆発させる様子が動画に|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

しかもこれが激化しても、それを押さえる地方政府は財政が破綻しかかっており、警察力が弱体化しています。
やがて反乱は抑えきれなくなり、都市部に波及していきます。
これがプーチンが恐れるシナリオです。

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このような中で、来年24年3月にロシアの大統領選挙が行われます。
いちおう大統領を選ぶ直接選挙があるのが、この独裁国家の唯一の安全弁です。
中国はこれすらありません。

プーチンの5期目は確実視されているものの、ウクライナで敗北するようなことでも起きれば、状況は一気に流動的になりかねません。

「関係者によると、ロシア政府内の多くや体制内エリートはロシアの勝利に確信を持てていない。だが、強硬派の安全保障当局者は今回の戦争を国家の存亡に関わると見なして継続を決意し、プーチン氏本人を動かす影響力も持っていると関係者は語った」
(ブルームバーク前掲)

プーチンはバフムトを突破口にしてウクライナ軍を敗勢に追い込み、中国の和平提案をちらつかせながら、ロシアは平和を求める、戦争を欲しているのはウクライナ側だ、平和の敵はゼレンスキーだぁ、米国が戦争をやらしているんだぁ、というプロパガンダを行いたいのです。
日本にも、プーチンの思惑どおりのことを言っているロシアンフレンドが大勢いますね。
そのための冬期大攻勢でしたが、結果的には失敗に終わりました。
占領地は拡大せず、前線は膠着し、先鋒を任せたワグネル軍はおびただしい損害を出して、モスクワに怨念すら抱くようになってしまいました。

ウクライナ軍は、西側の支援物資がそろそろ到着しだしているので一転して反撃に入ろうとしていますが、両軍の前に立ちはだかったのが、ウクライナ東部名物春の大泥濘大会でした。

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さと う🌛さんはTwitterを使っています: 「泥の季節は、冬の終わりから春の初めにかけて、雪や氷が溶けて土が濁り、旅行が困難になる時期です。」 / Twitter

ウクライナは世界有数の肥沃な土地ですが、それは晴れていればの話です。
いったん雨が続けば、東部の道は黒い泥土に覆われ、あらゆる車両、装軌車は通行することさえ困難になります。
かつてのドイツ軍の進撃をはばんだのも、この春の大泥濘でした。

雨が上がり、道がよくなり、そしてNATOとノルウェイから約束の年間100万発の砲弾が届けば、ここからが勝負です。


 


 

 

 

 

 

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【世界の論点】ウクライナ反攻 露軍後退 - 産経ニュース (sankei.com)
ウクライナに平和と独立を

2023年3月27日 (月)

岸田氏の「必勝しゃもじ」がなぜ悪い

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いつもお世話になっている(笑)日刊ゲンダイさんが、首相の「必勝シャモジ」についてこんな厭味を垂れています。

「必勝しゃもじ」がかつてない逆風にさらされている。岸田首相がウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領に直接会った際、地元・広島の名産品として贈呈したからだ。1年以上もロシアの侵略にさらされる戦時大統領に必勝グッズを贈る見識のなさ。物見遊山気分だったのはバレバレ、非難を浴びて当然だ。(略)
平時の外遊ならまだしも、侵略されている戦争当事国に「必勝しゃもじ」を贈る能天気ぶりに、ツイッター上は〈理解に苦しむ〉〈感覚が異常〉などと大荒れ。きのうはツイッター上で「必勝しゃもじ」が一時、トレンド入りした。岸田首相が贈呈したしゃもじは50センチ大で、「必勝」の文字と共に「岸田文雄」の署名入り。岸田首相一行がキーウ入りの際に列車に積み込んだ「うまい棒」の段ボールに梱包されていたとみられる。国際ジャーナリストの春名幹男氏がこう言う。

「2016年、当時のオバマ米大統領が現職として初めて被爆地・広島を訪問した際、4羽の折り鶴を持参して話題になりました。県民をはじめ、日本国民の琴線に触れる贈り物だったと思います。贈られる側の気持ちや立場を考えていたからこそ、出た発想でしょう。かたや岸田さんはどうか。ウクライナの風習・文化は脇に置いて、とりあえず『外交慣例』として『地元名産品』を贈った。思慮の浅さ、押し付け感が否めません」
(日刊ゲンダイ2023年3月25日)
岸田首相キーウ手土産「必勝しゃもじ」の能天気…広島訪問オバマ氏持参「折り鶴」とは大違い|ニフティニュース (nifty.com)

立憲の石垣のりこ議員も、こんなことを言ってディスっておられるようですが、「思慮が浅い」のはあんただ。
では、デスク用品セットか、博多人形でも贈ったほうがよかったのかな。
そもそもわざわざ国会で取り上げることかね。ま 、共同声明文書など満足に読んでもいないんだろうけど。

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FNN

「立憲民主・石垣のりこ議員:(参院予算委)
選挙とかスポーツ競技ではありませんので、日本がやるべきはやはり、いかに和平を行うかであって、「必勝」というのは、あまりにも不適切ではないかと思うのですが、その点いかがでしょうか?
岸田首相:(参院予算委)
ウクライナの方々は祖国や自由を守るために戦っておられます。我が国としてウクライナ支援をしっかり行っていきたいと考えております」
(FNN3月24日)
必勝しゃもじ」侵略されたウクライナには不適切?岸田首相の手土産に野党批判 後援会土産の「まんじゅう」論争も(FNNプライムオンライン) - Yahoo!ニュース

共同宣言を多少でも吟味するのが国会の仕事のはずですが、なぁにいってんだか。
私はずいぶんと彼らしくもなく、ストレート勝負に出たなと思ったんですがね

この国際ジャーナリスト氏は、オバマの折り鶴と岸田氏の必勝しゃもじを比べていますが、馬鹿ですか。
あのね、「贈られる側の気持ちや立場」というなら、オバマ訪日時のわが国は侵略も受けず天下泰平でした。
だから、オバマは誰かに知恵をつけられて折鶴のひとつも持って行ったのでしょうが、あれが日本人の心に響きましたっけね。
感動は、むしろ彼が被爆者の老人を抱いた時に起きました。
これは米国が許しを乞うたと、国民はとらえました。
そしてもう赦す時期になったのか、と思ったのです。

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オバマ米大統領、広島で献花 被爆者の手を握り、抱き寄せ - BBCニュース

このオバマの広島訪問は、安部氏のパールハーバーと議会演説が対になっています。
この安部氏の議会演説は、このようなロジック構築がなされています。

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この安部米議会演説は英語でなされ、おそらく日本人が国際社会で行った最高の演説のひとつに上げられるはずです。
外務省米国連邦議会上下両院合同会議における安倍総理大臣演説「希望の ... 
土曜雑感 安倍首相米国議会演説の新鮮な凄味: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

ひとつめは戦争犠牲者に対する慰謝、ふたつめは寛容による和解、みっつめは敵対から同盟へという筋道でした。
ただひたすら反省してみせるのではなく、共に死者を悼むことを通じて、許し合い、いまある友情を育むという流れです。
これがドレスデン和解という知恵です。
ドレスデン和解とは: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

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ローマン・ヘルツォーク大統領

1995年2月13日、ドイツ統一後2代目大統領・ローマン・ヘルツォークのドレスデン追悼式典で 、このように述べています。
この演説は、自国民に対して向けられたのではなく、招待されたイギリス女王名代・ケント公、米国統合参謀本部議長・ジョン・ジャリカシュビリ、英国・ナウマン・インジ国防幕僚長という制服組トップ、駐独・英米大使に対して向けられていることを留意してください。  
ヘルツォークは、まずこう言います。

まず死者に対する哀悼を捧げたいと思います。それは文明の起源にまでさかのぼる人間感情の表現です」 

その上に立って、死者に戦勝国も敗戦国もなく、敗戦国が死者を追悼することは戦争犯罪を相殺することではないとしています。


「我々ドイツ人が他の国民に対して行った犯罪行為を自国の戦争犠牲者、追放の犠牲者によって相殺しようとしている、と主張する人に対してはそれが誰であるにせよ抗議する」

ヘルツォークはドイツ民族が巨大なナチス犯罪が故に、自国の犠牲者を弔ってはならないのか、これは連合国がよくいう「相殺主義」なのかと問うています。
そしてこう畳みかけます。


生命は生命で相殺はできない」「死者の相殺はできない」

なんの飾りもない肺腑をえぐる言葉です。これが後に「ドレスデン和解」と言われる神髄の部分です。

ウクライナで岸田氏がしたのは、この別バージョンです。
岸田氏は、ロシアの非道によって亡くなられた死者を追悼することによって、ウクライナと同じ目線に立ちました。
その象徴が、もうひとつの贈り物である宮島御砂焼の折り鶴です。

人はこうべを垂れてなにものかに祈る時があります。
無惨に失われた多くの生命に対して許しを乞い、彼らの魂の救済を祈るのです。
そしてそれを止められなかったわが身の無力さを感じ祈るのです。

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ウクライナ電撃訪問の岸田首相、ブチャで献花「平和取り戻すため最大限の支援」(字幕・22日) | Watch (msn.com)

折り鶴はいうまでもなく平和への希求ですが、そのためにはいまはまずはロシアに勝たねばなりません。
石垣議員のように安全地帯で言うだけの「和平」は、ロシアの恒久的占領と虐殺の続行を意味します。
そのような「和平」はなった時から虐殺が始まるのです。
ロシア軍をウクライナ全土から追い出さねばなりません。

これは共同宣言に「ロシアは、直ちに敵対行為を停止し、ウクライナ全土から全ての軍及び装備を即時かつ無条件に撤退させなければならない」と書き込まれているとおりです。
つまりは勝つこと以外、平和は訪れないのです。

このことを岸田氏は理解していたと思います。
ゼレンスキーと会談する前にブチャを訪れたのは、日本がウクライナと連帯する気持ちを現しており、現地で「強い憤り」を表明し、「平和を取り戻すために最大限の支援を送る」と言明しました。

この岸田氏の訪宇の流れを見てなにも感じなかったら、そちらの方の問題です。
立憲の石垣氏は、「選挙とかスポーツ競技ではありませんので、日本がやるべきはやはり、いかに和平を行うかであって、「必勝」というのは、あまりにも不適切ではないか」だそうですが、そのとおり首相が訪問したのは戦争であり、いまウクライナが血を流しているのモスポーツではなく戦争です。

だからこそ、ゼレンスキーに「必勝しゃもじ」を送ったのです。
「和平」はどこか天の一角から舞い降りるものではなくもぎ獲るものです。

和平とは勝利の同義語であり、勝利なき和平は敵の軍隊による占領と虐殺の言い換えにすぎません。
もちろん、この家族や友から贈られた「必勝しゃもじ」を雑嚢に入れて、日本軍の兵士がロシアと戦いに赴いた故事を、岸田氏は知ってそうしたのでしょう。
そしてその兵士たちの多くは首相の地盤の宇品港から出陣し、還らなかった兵士も多かったと聞きます。
ですから、「必勝しゃもじ」には、祖国に殉じてロシアと戦った兵士たちの思いも託されているわけです。

ゼレンスキーはこうテレグラムしているようです。

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「本日、岸田文雄首相と話し合った重要な課題は、安全保障です。私たちは、安全保障協力の拡大に関する対話を継続することに合意した。我々は、ロシアに対する更なる制裁圧力、ロシアの侵略によって侵害された正義を回復する方法、そして日本の七カ国グループ議長国としての枠組みでの協力について話した。我々は、ウクライナの復興に日本が関与することに焦点を当てた。
本日の会談の結果、我々は「ウクライナと日本の際立ったグローバル・パートナーシップに関する共同声明」に署名した。この文書には、私たちが共に守ってきた価値観と、まだ実現されていない私たちの願望の両方が反映されています。
岸田総理から、一枚の木の板を託された。
日本古来の呪術の板のようなもので、そこには必ず勝つと書かれている。
テロリストを止めることができるのは、ただ1つ、我々の勝利だけです。そして、私たちはそれを確実にする–ウクライナの勝利を。
会談とウクライナへの強い支援に感謝します」

おお、「呪術の板」ですか(笑)。あたらずとも遠からず。
120年前、「必勝しゃもじ」を持った兵士らの犠牲の上に、我が国はロシアの植民地化を免れました。
ロシアは執念深いので、ちゃんとこの「必勝しゃもじ」に込めた日本人の「呪術」を理解していました。
それを伝えるロシア官製タス通信です。

「かつて、日本兵はシャモジ米スプーンに祈りを捧げ、お守りとして戦いに持っていきました。日本のメディアによると、ゼレンスキーに贈られた「シャモジ」は「真の勝利」というインクで書かれ、寄付者の名前である岸田文雄首相が示されました」
Премьер Японии подарил Зеленскому солдатский талисман времен русско-японской войны (tass.ru)

石垣のり子氏よりわかっているぞ。

下の写真は、ロシアとの戦いに出征する前に宮島を詣でた兵士らが奉納した厳島神社の「必勝しゃもじ」の柱です。
彼らはその足で宇品港から戦地に赴きました。

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廿日市市宮島歴史民俗資料館

願わくば、ウクライナの人々が、「呪術の板」の後ろに、東方のちいさな島国がロシアと戦い勝利を納めたな歴史があることを知られることを祈ります。

 

 

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キーウ南方で爆撃、1人負傷=ロシア軍のイラン製無人機―ウクライナ - 海外経済ニュース - 時事エクイティ (jiji.com)

ウクライナに平和と独立を

 

2023年3月26日 (日)

日曜写真館 来年も又来ておくれ花の鳥 

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動くもの一物もなき花の景  寒暑

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ゆとりより生るゝものに花の風  燕音

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だっこしてまたおんぶして花の山  随笑

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何事かまくし立てたり花の鳥  素抱

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さゑずりのありかは花の奥の奥  素抱

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いちにち雨心に烟る花を観て  暮津

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花堤さてとここらで折り返そ  寒暑

 

 

2023年3月25日 (土)

日宇共同声明とショボかった中露共同声明

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うーん、申し訳けありません。日本ウクライナ共同声明をじっくり吟味しないで、評価してしまいました。
岸田さん、偶然とはいえ、プーチンと習の向こうを張って西側代表でキーウに乗り込むという快挙をしながら、国内報道ではWBC一色でほとんどスルー状態でした。
ついているような、ついていないような、どこまでもほどほど感がある人です。
これが安部氏がやっていたら、オールドメディアはなんと言ったことやら、岸田さんだから誰も反応しない(苦笑)。

しかしよく読むと、なかなかスゴイことが書き込まれています。
外務省が全文をアップしているので、ぜひご一読ください。
100478708.pdf (mofa.go.jp)

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【詳細】日本とウクライナ 首脳会談受け共同声明 | NHK | ウクライナ情勢

要約をしておきます。

●日本とウクライナとの間の特別なグローバル・パートナーシップに関する共同声明
①二国間関係を「特別なグローバル・パートナーシップ」に格上げする。
②ロシアのウクライナに対する侵略が、法の支配に基づく国際秩序の根幹を損い、国連憲章の主権及び領土一体性の原則する重大な違反行為である。
③ロシアの侵略は欧州・大西洋地域のみならずインド太平洋地域及びそれ以外の地域における安全、平和及び安定に対する直接的な脅威となっている。
④力による領土の取得や国境の力による変更は認めない。
⑤ロシアは、直ちに敵対行為を停止し、ウクライナ全土から全ての軍及び装備を即時かつ無条件に撤退させなければならない。
⑥ゼレンスキー大統領の平和フォーミュラの実施に向けた努力を支持する。
⑦ロシアによるウクライナの民間人及び重要インフラ、特にエネルギー施設に対する無差別攻撃を強く非難する。
⑧ロシアに対する制裁を維持・強化。
⑨戦争犯罪及びその他の残虐行為への処罰。
⑩ロシアの核兵器使用の威嚇は、国際社会の平和及び安全に対する深刻で容認できない脅威である。
⑪ロシアによるザポリッジャ原子力発電所占拠に対し、最も重大な懸念。
⑫ウクライナの穀物輸出の国際取り組みを支持する。
⑬ロシアによる情報操作と偽情報キャンペーンの継続的な活用を非難する。
⑬日本の財政・経済支援 71億米ドルへの増加。
⑭G7サミットへのテレビ会議招請。
⑮二国間交流の拡大。
⑯欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であり、自由、民主主義、法の支配といった基本的な価値や原則を共有する。
⑰ウクライナは防衛力の抜本的強化や外交活動の強化などの日本の国家安全保障戦略の策定を称賛した。
⑱国連海洋法条約(UNCLOS)の尊重、並びに航行及び上空飛行の自由を維持する重要性を確認した。
⑲東シナ海及び南シナ海情勢への深刻な懸念を表明し、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対した。
⑳台湾海峡の平和と安定の重要性と両岸問題の平和的解決を促す。
㉑核兵器不拡散条約(NPT)体制を維持・強化し、核軍縮・不拡散及び軍備管理を推進する。
㉒国連安保理決議に違反する大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を含む北朝鮮による核兵器及び弾道ミサイルの開発を強く非難。
㉓北朝鮮の全ての大量破壊兵器(WMD)及び全ての弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄を実現することに引き続きコミットする。
㉔拉致問題の即時解決。

※ひとつの項目を分割したのものもあるので、要約と文書番号は符号しません。

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ウクライナ外務省

実によくできています。
特に評価すべきは、ロシアのウクライナ侵略を単独で捉えずに、欧州と大西洋地域、インド太平洋地域の安全、平和と安定に対する脅威として位置づけたことです。
う~ん、うまい。ここなのです。
ウクライナ侵略と中国の軍事膨張をひとつのものとして認識し、それに対して国際社会が共同で対処していく、これが今の西側の基本戦略です。
ここをはずすと、アッチはアッチ、コッチはコッチとなってしまう。
今日のウクライナ侵略は、明日の台湾侵略なのです。
G7サミット議長国として、この正しい認識をきちんと示した意味は実に大きい、と思います。

ここさえ押さえておけば、あとは北の核武装に対しても「完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄を実現する」と言えるし、さらには拉致問題も国際社会の責務だという文脈がでてきます。
ちなみにこれは、かつてのトランプ時代に用いられたもので、complete,verifiable,irreversible,dismantlement (完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)のことです。
具体的には、核関連施設を全て明らかにした上で、濃縮ウランやプルトニウムなどの核物質や施設を廃棄させる。その上で、国際原子力機関(IAEA)など国際機関が実効的な査察を行い、後戻りができないことを確認することなどが必要になります。

次に、共同認識という総論だけではなく、「敵対行為を停止し、ウクライナ全土から全ての軍及び装備を即時かつ無条件に撤退させなければない」という西側の意志を明確にしました。
安易な和平提案には乗らない、ロシアの全面撤退まで支援する、ということです。

これはロシアいま習がモスクワに行ってゴソゴソやっていることに対する、強いアンチテーゼになっています。
習は「平和の使者」を気取って、国際舞台に登場したかったはずですが、そのメンツにパイをぶつけた形になりました。
それでなくても、訪露直前に国際刑事裁判所がプーチンを「ウクライナから子供を拉致している」として国際指名手配にしました。

「オランダ・ハーグにあるICC=国際刑事裁判所は、ウクライナ情勢をめぐり、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちを移送したことが国際法上の戦争犯罪にあたるとして、ロシアのプーチン大統領などに逮捕状を出したと明らかにしました」
(NHK3月18日)
国際刑事裁判所 プーチン大統領に逮捕状 ウクライナ情勢めぐり | NHK | ロシア

これでプーチンは、親露国以外には海外に出ることさえかなわなくなったわけです。
また、プーチンは「国際指名手配戦争犯罪人」であるために、面会すること自体反社会的な行為となります。
かくして、反社行為一番乗りが習になってしまいました。

中語は、習近平の3期目の国際戦略として「中露新時代の包括的戦略パートナーシップ」を提唱しました。
これは新たな「世界の多極化を目指す」世界戦略の一環でした。

「習氏は、ロシアとともに「本当の多国間主義を堅持し、世界の多極化と国際関係の民主化を推進」すると強調。その上で「グローバル・ガバナンス(多国間統治)を、さらに公正、合理的な方向に発展させることを促進する」と訴えた」
(産経3月20日)
習氏「ロシアと世界の多極化を推進」 訪露で談話 - 産経ニュース (sankei.com)

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中露共同声明 ウクライナ戦争の「和平交渉を求める中露陣営」と「戦争継続に寄与する日米欧陣営」浮き彫り(遠藤誉) - 個人 - Yahoo!ニュース

プーチンと習は2時間に渡って通訳だけを入れた密室会談をしていますが、その時にはウクライナ戦争をめぐる話題だけではなく、ロシアのイランの核武装支援と中国の一帯一路との協同などを話し合ったと考えられます。
世界レベルで習がいう「多極化」戦略を進める、その恒久的パートナーシップをロシアと結ぼうということです。もちろん中国の主導で。

孤立を緩和したいプーチンにとっても、中国から財政援助や武器援助を取り付けつつ、「和平提案」で時間稼ぎをしたかったはずですが、その目論見がはずれました。
ロシアはこの思惑を壊された腹いせにこう言っています。

「ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は23日の記者会見で、岸田首相が21日にウクライナを訪問したことについて、「ロシアと中国の首脳会談から注目をそらす目的だった可能性がある」と主張した」
(読売3月24日)
ロシア外務省、岸田首相のウクライナ訪問に「中露首脳会談から注目そらす目的の可能性」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

本来、中露の思惑としては、具体的に中国はロシア支持を明確にしたかったはずですが、トーンダウンしてなんの具体案もないものになってしまいました。

新華社の中露共同宣言の要約を載せておきます。
「いかなる制裁にも反対する」以外、具体的にはなにも言っていません。
深夜の記者会見で、すさまじい勢いでしゃべるプーチンに対して、習が寝落ちしそうな顔をしていたのがよく分かります。

中国とロシアの国家元首は、和平交渉を通じてウクライナ危機の解決を強調する共同声明に署名しました-新華網 (news.cn)

●ウクライナ問題について双方は、国連憲章の目的と原則は遵守されなければならず、国際法も尊重されなければならないとした。
●ロシア側は、ウクライナ問題に対する中国の客観的かつ公正な立場を積極的に評価する。
●双方は、いかなる国家または国家グループが、軍事、政治およびその他の利益を追求するために、他国の正当な安全保障上の利益を損なうことに反対する。
●ロシア側は、和平交渉をできるだけ早く再開することを重ねて言明し、中国はこれを高く評価した。ロシア側は、中国が政治・外交的手段を通してウクライナ危機の解決に積極的な役割を果たそうとしていることを歓迎し、「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」という文書に示された建設的な提案を歓迎する。
●双方は、ウクライナ危機を解決するために、すべての国の正当な安全保障上の懸念を尊重しなければならず、陣営間の対立形成や火に油を注ぐようなことを防止しなければならないと指摘した。双方は、責任ある対話こそが、問題を着実に解決する最善の方法であると強調した。
●この目的のために、国際社会は建設的な努力を支援すべきだ。双方は、局面の緊張を助長したり、戦争を長引かせる一切の行動を停止するよう求め、危機がさらに悪化したり、最悪の場合は制御不能になる事態になることを防ぐよう求める。
●双方は、国連安全保障理事会によって承認されていない、いかなる一方的な制裁にも反対する

ね、ざっとよんでもなにも書いてないでしょう。
日宇共同声明が、インド太平洋から、台湾、拉致まで網羅され、それがトータルに認識できるのに対して、中露共同宣言ときたらなにが「国際憲章を守れ」だつうの。
具体性がないとはいえ、米国や西側の「侵略」(笑)に対して、いっそうロシアは中国の一帯一路に協力し、大中華経済圏に統合されていくのでしょう。
ウクライナ取込みは、プーチンにとって大スラブ統合計画の一環だったはずですが、残念無念、一帯一路に呑み込まれてジ・エンドです。

またかつてのは中ソ対立の頃から、ロシアは中国を下目に見ていましたが、いまや完全に逆転。
「ロシア大統領府と中国共産党中央委員会の対話強化」、共同訓練といっても、どちらが主人となるのかは明々白々です。
元々ほんとうは仲がよくない両国なので、どこまでもつのやら。

 

 

 

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 JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)
ウクライナに平和と独立を

 

2023年3月24日 (金)

高市氏を何としても追放したい勢力

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不愉快なことなので短めに。
今の高市氏へのいわれなきバッシングが続くのは、岸田氏にこの事態を止める意志がないからです。
総務省は既に答弁と文書で、こう言っているのです。

「同席者2名に聞き取りを行った結果。
『この時期にはNHK予算など放送のレクがあったとしてもおかしくないが、個々のレクについては覚えていない。放送の政治的公平性の答弁に関しては、5月12日の委員会前日に大臣の指示を受けて夜遅くまで答弁のやりとりがあったことを覚えており、その前の2月に文書にあるような内容の大臣レクがあったとは思わない
NHK予算などの時期でもあり、この時期に放送のレクがなんらかあったとしてもおかしくないが、8年も前のことであり、個々のレク時期や内容は記憶にない。この2月13日付の大臣レク文書に記載された内容のレクについても記憶にない

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はい、終了。これ以上なにかあるのでしょうか。
まわりくどい言い方をしていますが、総務省は「2月に文書にあるような内容の大臣レクがあったとは思わない」と答えています。
大臣レクなるものがあったなかったという議論にはなんの意味もありませんが、これでオシマイです。
総務省は「小西文書」にあった2月13日付けの「大臣レク」などなかったと言っています。

ところがメディアはあいもかわらず、この部分を報ぜずに、こういう書き方をしています。

放送法上の「政治的公平」をタテに、安倍晋三政権時代、総務相として同政権に批判的な番組に圧力をかけようとした疑いがもたれている高市早苗・経済安全保障担当相。今月上旬に問題発覚以降、「文書は捏造ねつぞう」と叫んでいるが、その答弁の迷走ぶりが目に余る。一部からは擁護論も飛び出したが、それも筋違いで旗色は悪くなるばかり」
(東京3月18日)
「捏造だ」→「確認できない」高市早苗氏の答弁が迷走中 それでも国民民主・玉木氏が擁護する理由は:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

おいおい、なにが「安倍晋三政権時代、総務相として同政権に批判的な番組に圧力をかけようとした疑いがもたれている高市早苗」ですか。
「小西文書」にすら、そんなことはただのひとことも出てこかったし、総理と電話したていどのことにすぎません。
唯一、放送法解釈について、高市氏が登場するのは5月12日の委員会答弁だけで、これはとうに公開されている議事録を意味ありげに添付してあったただけのことです。

その委員会答弁も実にマイルドなもので、従来の見解を踏まえつつこう言っているだけことです。
正確を期するために当該部分をそのまま抜き出します。

●平成27年5月12日 参議院総務委員会 高市総務大臣答弁
放送法第4条第1項第2号の政治的に公平であることに関する政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げましたら、1つの番組のみでも選挙期間中またはそれに近接する期間において、殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間に渡り取り上げる特別番組を放送した場合のように選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合といった極端な場合におきましては一般論として、政治的に公平性であることを確保しているとは認められないと考えられます。

選挙期間中に特定候補の利益となったり、逆にことさらディスる報道のような行き過ぎは認められない、と言っているだけのことで、このどこが東京新聞が言うように「同政権に批判的な番組に圧力をかけようとした疑い」なのでしょうか。教えてほしいものです。
単に高市だったら、安部のお気に入りだから放送法解釈を改悪する気だという憶測でモノを言っているにすぎません。
つまりは印象による誘導です。

そもそも当時安部氏には放送法改正の意志はありませんでした。
総理とは無関係に補佐官が問い合わせたていどのことです。
その磯崎氏についても、総務省は「精査」文書の中で「強要はなかった」、解釈変更しろとは言われていない、と書いています。
それを新しいネタなんぞないのにグダグダとどこまでも粘着しやがって、どうにかしています。

ところが、今回の茶番を長引かせているのは、左翼メディアと立憲の粘着もさることながら、問題はむしろ岸田首相が傍観者きどりでいることです。
自分が任命したはずの閣僚が孤立無援の戦いを強いられているのに手を貸そうともしない、総務大臣に調査も命じない、ともかくなにもしない。

初めは、岸田氏特有の様子見でもしているのかと思いましたが、どうも違うようです。
岸田氏は意識的に高市氏を潰したいのです。
自分には火の粉が及ばない、任命責任を問われたら更迭を匂わすくらいはしたい、大方そんなところです。
岸田氏にとっては、安部政権時代の政策はできるだけ変更し、その遺産は使えるものはもらうが、理念は切り捨てようということです。

とくに岸田氏と高市氏の政策が鋭く食い違ったのは、増税政策を巡ってでした。
財政再建派=増税派である岸田氏は、防衛予算を増やすためには増税を主張して国民から呆れられたように、麻生副総裁を最高顧問に据えて自民党内に総裁直属の財政健全化推進本部を設置してまで、増税路線を突っ走る気でした。
麻生氏は安部氏の盟友といわれながら、財政・金融政策では正反対の立場でした。

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高市早苗氏「正規なものならびっくりする」…放送法文書巡り辞任要求を拒否 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

これに真正面から叛旗をひるがえしたのが高市氏です。
当時、政調会長だった高市氏は直ちに直属の財政政策検討本部を作って対抗し、昨年7月の参院選前には、経済政策の補正予算編成をめぐって麻生氏や茂木敏充・幹事長と大げんかを演じました。

官邸は党の意見に介入できませんから、岸田氏は発信力がある高市をなんとかしないとまずいと思ったのでしょう。
そこで政調会長という党役職ナンバー2から、官房をもたない経済安全保障大臣という実体のない閑職に飛ばしたのです。
閣僚にすれば、総理の自分に抵抗できないと踏んだからです。
しかし高市氏は、それでもひるまず増税については、罷免されても言うことは言うという反骨ぶりを発揮しました。

岸田氏は、閣内を財務省派で固めています。
今回の「小西文書」で、高市氏に不利な材料を出している松本総務相でした。
松本大臣は、ここまで総務省文書が問われている時期に、なんと第三者調査をしないと言ってしまいました。

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産経

「松本剛明総務相は22日の閣議後記者会見で、放送法が定める「政治的公平」の解釈を巡る行政文書について、第三者による調査を実施することに否定的な考えを示した。「総務省で精査を進め、説明、報告できることはしてきた。これからも総務省でしっかり対応したい」と述べた。
総務省は、令和3年に発覚した同省幹部への接待問題の調査では、元検事の弁護士らによる外部有識者委員会を設置し、接待が行政に影響を与えたかどうかを調べた。松本氏は、第三者が調査した当時との違いを問われ「(今回は)総務省における法律の解釈にかかることだ」と説明した」
(産経3月22日)
放送法文書、第三者調査せず 松本大臣「総務省で対応」 - 産経ニュース (sankei.com)

ここまで国会が空転している責任は総務省にあります。
総務省の官僚が小西氏に漏洩した疑いがもたれているのに、どの口で「解釈の問題だ」といえるのでしょうか。呆れたもんです。
松本氏は総務大臣として公正な第三者による調査をせねばならない立場なのにシラっとしてなにもしない。
これでは小西一派となんら変わりません。

松本氏のボスは財務省閥のドンである麻生氏です。
この松本氏自身も、父の十郎氏は大蔵官僚出身の閣僚でした。
つまりは財務省閥に属する人物です。

「岸田官邸を表向き仕切る筆頭総理秘書官の嶋田隆氏は元経産事務次官で、財政には一切、口を出さない。政策立案は事実上、財務省から出向する秘書官・宇波弘貴氏の仕事だ。年次は茶谷氏の3年下、同じ主計局畑を歩んできた右腕である。ある自民党ベテラン議員が語る。
「いま総理の周りを固めるのは、政治家も大蔵省出身者やその縁戚ばかり。特に宮沢喜一元総理の甥で、30代まで大蔵省で過ごした党税調会長の宮沢洋一さんには、茶谷と宇波が連日、足しげく通って報告を入れています」
岸田文雄が「財務省のポチ」になることは「東大に3回落ちた」ときから始まっていた(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

このように岸田官邸は財務省に完全に支配されています。
このような空気の中で、増税反対を言うことはいかに勇気が必要だったのか想像がつくでしょう。

とまれ、岸田政権の財務官僚出身の側近たちは、高市氏を憎悪しています。
ですからこの「小西文書」を流したのは官邸だとまでは思いませんが、少なくともいい気味だ、メディアに袋叩きになって閣僚辞任しろ、そして次の総裁選挙をあきらめるくらいぶちのめされればいい、くらいは考えていても不思議ではありません。

おお、いやだ。
岸田さん、これを続けたらあなた、自民の鉄板保守層の支持をごっそり失うよ。

 

 

 

2023年3月23日 (木)

岸田首相、キーウ訪問

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WBC決勝戦。あまりのスゴイ試合に陶然となりました。
8回で1点被弾したときには、もう9回裏、いや延長戦まで覚悟しましたが、大谷よく抑えた。
リアルタイムで見て、夜また録画で見る、という二度見をしてしまいました。
そのうちまた見よう。後々の語り種になる試合でした。
おめでとう、そしてありがとう、侍ジャパン!

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侍ジャパン劇的勝利に歓喜のテレビ朝日 “鬼門”のWBC決勝戦、悲願の生中継(Full-Count) - Yahoo!ニュース

さて、岸田氏がやっとキーウに辿りついたようです。
厭味ったらしく言えば、遅すぎる上に、なんの武器援助もできない、カネだけは出すから許して、ということをわざわざ言いにいっただけのことでした。
ただし、内容がショボイことは初めからわかっていたことで、G7議長国の
首相がこの時期に、このタイミングでキーウに「いる」という意味は絶大でした。
習近平の訪露に対して、真正面から自由主義陣営の団結を対峙する結果になったからです。
岸田氏は国内の国会慣習がどうの、側近から情報が漏れたなどというお粗末な理由で行きそびれているうち、これ以上ない絶好の機会にめぐり合ってしまったというわけです。
運がいい人。まぁ、運も政治家の財産のひとつですからね。

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岸田首相の訪問「勇気示した」 ゼレンスキー氏が意義強調|あなたの静岡新聞 (at-s.com)

プーチンが20日から3日間、習近平との接待で、岸田氏なんぞにかまっていられなかったのは確かでした。
自称「平和の使者」として訪露する習がモスクワにいる間にキーウ攻撃をしたら、習のメンツ丸つぶれ、もらえるものももらえなくなる。
そのうえ、今後、兄と慕う中国との関係すら怪しくなります。

「岸田総理大臣はウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と首脳会談を行いました。
G7各国の首脳がウクライナを訪れる中、岸田総理大臣も1月にゼレンスキー大統領と電話で会談した際に訪問の要請を受け、5月のG7広島サミット前の実現を目指して調整を続けていました。
ウクライナを訪れている岸田総理大臣は、ゼレンスキー大統領と首脳会談を行ったあとの共同記者会見で、ウクライナに殺傷能力のない装備品を支援するため、NATO=北大西洋条約機構の基金を通じて3000万ドルを拠出すると明らかにしました」
(NHK2023年3月22日)

【随時更新】岸田首相 ウクライナ訪問 ゼレンスキー大統領と会談 | NHK | ウクライナ情勢

この時期、西側がせねばならなかったのは、国際社会の総意としてキーウを訪れ、ブチャで虐殺された人々のために献花することでした。
その使命を岸田氏は見事に果たしたと言うべきでしょう。

ただし、セキュリティの大甘ぶりは言わねばなりません。
岸田氏はポーランドから陸路で入っています。
キーウ駅でウクライナ外務省のジャパロワ第1次官に出迎えられる首相の写真が、在日ウクライナ大使館から公開されています。

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ウクライナ外務省のジャパロワ第1次官と岸田首相

問題は、ポーランド駅の映像を日テレが撮って放映してしまったことです。
あとは、メディアは我先にと速報を流していましたっけね。
得意そうに、日テレはこんなことを報じています。

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【ノーカット動画】ウクライナに向かう岸田首相を撮った (ntv.co.jp)

「ウクライナを訪問するため、ポーランド側の国境のプシェミシル駅に到着した岸田首相の姿を、NNNのカメラがとらえました。時刻は現地時間の21日午前1時23分(日本時間の同日午前9時23分)。車列はホームに直接乗り入れ、黒っぽいコート姿の岸田首相はポーランド側の担当者と言葉を交わしながら列車に乗り込みました。ゼレンスキー大統領と会談するためウクライナに向かったとみられます」
(日テレ2023年3月21日 11:33)

夜の11時半にポーランド国境駅にいたのですから、そこからキーウに到着する時間は正確に予測がつくわけです。
もちろんこの間の鉄路で首相を襲撃することは可能でしょうし、その後のゼレンスキーと会談をする時間もほぼ正確に弾きだせるはずです。
ロシアは、この時間に確実にゼレンスキーの居場所を察知しえたはずでした。
たぶん米国を通してロシアには、ポーランドに入った時点で事前通告はしていたでしょうが、それを守るかどうかはアチラの話です。

いったい、わが国のセキュリティはどうなっているのでしょうか。
これをスクープと呼んではいけません。
ウクライナは観光地ではないのですよ。
いままさに戦場で、首都キーウですら日常的ミサイル攻撃を受けている都市です。
この戦場に行こうというのに、官邸から情報はダダ漏れ、メディアはスッパ抜いて得意顔。
どうかしています。

日テレの報道は、国と国際社会を危機に追いやる愚劣な行為です。
仮に出先が首相のポーランド到着を察知しても、それを報じるかどうかは社のトップクラスの了承が必要だったはずです。
社の上層部の了承なしに、こんな報道ができるはずがないからです。

こういう抜け駆けを安易に許してしまうから、日本は情報管理が甘い、信用できない、情報を渡せないと諸外国から言われるのです。
安部氏や菅氏だったならば、訪問前にメディアの社長クラスを呼び集めて、ウクライナ訪問に関しては報道管制を敷くと宣言したことでしょう。
菅氏なら、ギュギューにメディアを締めたはずです。
自国の首相だけではなく、ゼレンスキーの生命と安全に関わる重大なことです。
そのくらいするのが、「いま現在戦場である国」を訪問する国の責務です。
仮に知っていても報じることは一切厳禁、破れば放送法第4条1項によって電波停止処分にすると言い渡せばいいのです。
解除は国が決めることです。

私は今回の日テレの報道は、放送法違反を問うべきだと思います。
放送法は抽象的に憲法がどーたら、報道の自由がこーした、などと議論しても始まりません。
生きている材料として、今回の日テレのウクライナ訪問報道を議論すべきです。

 

 

 

 

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ウクライナ兵の犠牲者、これまでに1万3000人=ゼレンスキー氏側近 - BBCニュース
ウクライナに平和と独立を

 

 

2023年3月22日 (水)

なにも変わらない杉尾議員

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いやー、昨日のワールドベースボールクラシックは興奮しました。
まさにわが国の総力を結集した戦いでした。
あの陣容で負けたら、もう未来はない。
大谷が9回の裏の2塁打で叫んでいましたね。あんな彼を見たのは初めてでした。

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その後不調だった村上が渾身の一打を撃つ。
こんなできすぎた筋書きなんて書けませんよ。
スポーツには神がいますよ。
今日は世界一を目指しましょう。

それに比してわが国会は最低です。
高市氏が杉尾氏に対して「もう質問するな」と言ったとかいわないとかで、委員長から発言撤回を求められたようで、さすが高市氏もこれには折れました。
岸田政権は高市氏を助けるどころか、立憲に加担したいようです。
やれやれ、今どきウクライナに行っても、それはアリバイっていうんですよ。これについては明日。

「20日の同委では冒頭に末松信介委員長(自民)が高市氏を注意。高市氏は「重く受け止める」と述べるにとどめ、自民党議員が改めて反省の弁を促したものの、陳謝などに応じなかった。審議が一時ストップする場面もあった。
このため、末松氏は「(15日の)表現は全く適切でない。大きな間違いだ。ぜひ省いてもらいたい」と高市氏の対応を強く批判。委員長が自ら発言撤回を要請する異例の展開に、高市氏もようやく折れた形となった」
(時事2023年3月20日)
高市氏「質問しないで」発言撤回=委員長異例の注意、謝罪応ぜず―総務省側、文書「捏造認識ない」・参院予算委|ニフティニュース (nifty.com)

なんでも末松信介参院予算委員長が高市早苗氏に「誠に遺憾。質問に真摯に答えて頂きたい」と謝罪要求をしたのだとか。
末松氏はこんな腰抜けでしたっけね。たぶん官邸からナンか指示があったのでしょう。
岸田氏は、増税路線に抵抗する高市氏を切りたいようです。
ですからこの自民出身の委員長は、野党側の暴言には注意ひとつしないで、空転すれば高市氏に謝罪を求める。
筋が違います。謝罪するのは杉尾議員のほうです。

杉尾氏はこう言っています。前後を抜粋します。

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経済安保担当・高市早苗大臣:「私が確認をしました」
立憲民主党・杉尾秀哉議員:「つまり高市大臣の言っていることは全く根拠がない。全く信用ができません」
経済安保担当・高市早苗大臣:「私が信用できない、答弁が信用できないんだったら、もう質問をなさらないで下さい」
高市大臣「信用できないなら質問しないで」 総務省の行政文書めぐり野党追及(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

他人に質問する時に、「あんたの言うことはオレは信用していないが、質問に答えろ」と言って聞く馬鹿が世の中どこにいるのでしょうか。
自分の見込みに基づいて、被取材者に圧力をかける、これがTBSにいた頃からの杉尾秀哉氏の一貫したやり方です。

もしこの人物が刑事だったら、こんな奴にあたった容疑者は悲惨でしょうな。
なんせ初めから、ロクな捜査もしないうちにお前が犯人だと決めつける、決めつけたら命懸け。
そのうえ調査はしないから、自白頼み。

今回なら高市は「大臣レクを受けていた」と白状させ、「捏造」と主張していた発言を全否定させて議員辞職に追い込むことが目的です。
お前が吐けば解決だ、なにか隠しているだろう、オレはなんでも知っているぞ、さぁさぁさぁ、お前の言うことなんぞ信用していないが、とっとと吐けというわけです。
こういうやり方を見込み捜査といいます。

見込み捜査とは、予め犯人像を決め付けた上で、行われる捜査を指す。犯人像と合致する者は、最初から犯人であるとの前提で捜査がなされ、犯人像と合致しない者は、捜査の対象にすらならないかもしれない。冤罪を起こし、真犯人を逃す温床になる。ただし、犯人像が絞れない事件は、未解決事件になる可能性がある」
見込み捜査 - Wikipedia

自分の結論に合う自白しか求めていないから執拗に質問する、質問するが相手の言うことなんぞ聞かないで、都合よく自分の絵にハマる部分だけを引き出していこうとします。
今どきはこんなこと警察でもやんないよ、杉尾さん。
これをやると、後の裁判で自白を強要されたと被疑者が言い出して覆り、見込み捜査が人権無視として批判を浴びることがあったからです。
しかし大臣には人権なんかあると思っていないから、やるわけです。

杉尾さんはTBSでエライさんをしていた頃から、この見込み報道の常習犯でした。
TBSがメディアの教科書に載るような汚点を残した事件に、松本サリン事件と坂本弁護士テープ事件があります。
この主役が杉尾秀哉氏です。

杉尾氏は、TBSの「ニュースの森」の人気キャスター時代、松本サリン事件の被害者である河野義行氏を生放送で犯人として決めつけるような質問を浴びせました。
今回の高市氏に対する傲慢なくちぶりと瓜二つです。
杉尾氏は、悪質なリーク情報を鵜呑みにし、自分の足で歩く取材を怠り、河野氏の「自白」に頼りました。

黙々とこの杉尾氏の傲慢な「追及」に耐えていた河野氏は、最後に「そういうふうにおっしゃって私を犯人だと決めつけるんですね」と語っていたのが印象的です。 
メディアが罪無き人を罪に落とす、というあってはならない罪を杉尾氏は犯したのです。

「マスコミは、一部の専門家が「農薬からサリンを合成することなど不可能」と指摘していたにもかかわらず、オウム真理教が真犯人であると判明するまでの半年以上もの間、警察発表を無批判に報じたり、河野が救急隊員に「除草剤をつくろうとして調合に失敗して煙を出した」と話したとする警察からのリークに基づく虚偽の情報を流すなど、あたかも河野が真犯人であるかのように印象付ける報道を続けた。実際は、事件発生当日の1994年6月27日に、河野が薬品を調合した事実はなかった」
松本サリン事件 - 冤罪・報道被害 - わかりやすく解説 Weblio辞書

この河野氏冤罪の先頭にいたのがTBSでしたが、結局、後に河野氏が冤罪だとわかると、メディアは一斉に手のひら返しをします。

  • マスコミ各社は、誌面上での訂正記事や読者に対する謝罪文を相次いで掲載した。久米宏が当時「ニュースステーション」の中継対談で番組の“顔”として詫びた。また前述の『週刊新潮』の謝罪は今も行われていない。なお、報道各社の社員個々人による謝罪の手紙については河野のもとに多数届いたという。
  • オウム真理教は、アレフへ再編後の2000年に河野に直接謝罪した。

国家公安委員長やメディア各社が謝罪するなか、杉尾氏はなんの謝罪の言葉もありませんでした。
まことにブレない男です。たいした自信です。
ジャーナリストなら即刻廃業すべきところですが、TBSは彼を守ったようです。

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こういう杉尾氏のような見込み取材は、オウム事件においてこれが最後ではありませんでした。
松本サリン事件から5年前の1989年、「TBS坂本弁護士テープ問題」という日本メディア史上最悪の不祥事が起きています。
これは、坂本弁護士がオウム真理教を批判する内容のビデオを、あろうことか「3時にあいましょう」のスタッフが放送前にオウム真理教幹部に見せたという問題で、その9日後に起きた「坂本堤弁護士一家殺害事件」の原因になった事件でした。
殺人犯に殺害動機となるものをメディアが与えていたのですから、ヘルプレスです。

「TBSは、1989年(平成元年)10月に当時すでにサンデー毎日『オウム真理教の狂気』特集などで批判されていたオウム真理教の取材映像を放送予定であったが、反オウムの弁護士坂本堤のインタビュー映像が合わせて放送されることを知ったオウムは、坂本のインタビュービデオ(以下ビデオ)を見せるようTBSに要求し、オウム真理教幹部の早川紀代秀(坂本弁護士事件実行犯の1人)らがTBS内でこのビデオを視聴した。
信者がビデオを見たことがどれだけ影響を与えたかは不明瞭だが、その後11月に麻原彰晃坂本堤の殺害を指示、11月4日坂本弁護士一家殺害事件が発生」
TBSビデオ問題 - Wikipedia 

これはテロリストに殺害標的の情報を与えた共犯行為として、まさに放送法の電波停止要件そのものだったはずです。
「政治的公平」などという立場で異なるものとは違って、まさにそのものズバリ市民の生命を奪う共犯にメディアがなってしまったのですから、言い訳が効きません。

放送法第4条
 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

当座はこのテープ漏洩事件は外部に漏れませんでしたが、殺害事件から6年後、日テレが「TBSが放映前の坂本弁護士のインタビュービデオをオウム幹部に見せた」というスクープを報道して一気にテレビ界を揺るがす事件に発展しました。
ここで杉尾氏は、「ニュースの森」の中で、調査するどころか完全否定し、かてて加えて居直ったように抗議声明までも出したのです。
コンプライアンス違反にとどまらず、悪質な隠蔽です。
自社の「3時のあなた」のディレクターに聞けば分かったことなのに、ここでも見込み調査はせずに、シカとして居直るのですから話になりません。

そして5か月後、オウム幹部の公判において当事者の供述やメモが明らかになり、TBSはビデオを見せたことが事実であることが立証されました。
TBSは、放送法第1項の「公安及び善良な風俗を害しないこと」を大きく逸脱したのは明らかです。
この裁判証言が出た時点で、政府と総務省はTBSを厳しく罰するべきでしたが、無為無策でした。

このような度重なる杉尾氏の行為は、ジャーナリスト失格というより、もはや人間性に問題があります。
TBSは杉尾氏を矢面のキャスターを降板させますが、実は世間の批判からかばっただけのことでした。
そしてほとぼりが冷めると、この主婦受けするだけの男を、局長待遇という役職に昇進させているのですから、企業ガバナンスもへったくれもない会社ですな、TBSという企業は。

このようなTBSに対して、政府は一連のオウム事件で放送法違反による電波停止を課するべきでした。
こんなテロリストの共犯者の放送事業者を問えないような放送法などあって無きが如し、既に形骸化の極みだったのです。
それをいまさら放送法の解釈をどうしたの、言論の自由を守れと、そのメディアと野党が騒ぐのですから、どの口で言うのか。

こういう中で杉尾氏は、今になっても反省ひとつせず、あいかわらず今度は国会で「見込み追及」をして、反撃されると憲法違反だと叫んでいられるわけです。

 

 

 

2023年3月21日 (火)

「隠し砦の三悪人」と小西議員

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小西氏と、この文書に顔を出す「隠し砦の三悪人」の顔ぶれのつながりがあぶり出されてきました。
なんのこたぁない、小西氏まで含めて彼ら全員が仲良く旧郵政省派閥に属し、通信政策局総務課上司、同僚という密室的関係です。

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【顔画像】小西文書の作成者は誰か|捏造ではないかと話題に (miyamatakeru.com)

このかつての上司と同僚は3名です。


・西潟暢央データ通信課長
・長塩義樹放送政策課長
・安藤友裕情報流通行政局長

以下、3名のプロフィールについては、miyamatakeru.com)を参考にさせていただきました。ありがとうございます。

西潟氏はこのような人物です。

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西潟暢央データ通信課長 

その後西潟暢央データ通信課長は総務省内の課をいくつか歴任した後、2008年には「総務大臣政務官事務取扱」(政務官と同じ役割)という、大臣の補助をする役職に抜擢。
実務では、組織のオンライン化やクラウド化を推進する役割を担った。

次に長塩義樹放送政策課長。

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長塩義樹放送政策課長

大阪大学法学部を卒業後、1988年に当時の郵政省に入庁。
情報流通行政局地上放送課長を経た後、「小西文書」が作成された2015年には放送政策課長。
2020年には東海総合通信局長となり、2022年に同職を退いており退職したとみられる。

3人目は、安藤友裕情報流通行政局長。

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安藤友裕情報流通行政局長

東海総合通信局長を経て、2012年には東海総合通信局長などを歴任し、2019年に総務省を退職し、同年からNTTコミュニケーションに天下り。
ちなみに、NTTドコモの電波回線を総務省が管理していることもあって、NTTグループは総務省の天下り先の代表格です。

そして4人目が、この文書を「暴露」し、いまや隠れもしない「小物世界の大物」と称されるコニたんこと小西ひろゆき議員。

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小西 洋之

1998年3月、東京大学教養学部教養学科卒業。同年4月、郵政省に入省。通信政策局総務課に配属される。郵政官僚時代はITベンチャー支援をはじめ、情報通信政策などに携わるほかに農林水産省や経済産業省へ出向したという経歴の持ち主です。
在職中は「隠し砦の三悪人」と同じ部局にいたと思われます。
誰がどう見ても、このルートで漏洩したとしか思えません。

たぶん総務省旧郵政省派の「隠し砦の三悪人」の誰かが、小西氏に耳うちして「小西文書」を見せた。
小西氏のほうから「何か高市を叩ける材料をくれ」といったのか、官邸支配を嫌悪する総務省側が言い出したのは不明。
いずれにしても出された「第一級の行政文書」に、小西氏は大喜びで飛びつき、柳の下の4匹を狙った。
しかし、漏洩された総務省はビビった。
国家機密漏洩罪、守秘義務違反、歪曲していたらもっと罪は深くなって、総務省は組織解体の危機に陥る。
そこで今回の調査報告を出して、連座するのはお断りだという組織防衛に走った。
そうは大きくハズれていないと思いますよ。
さぁどうするね、小西クン。

総務省はもっとも大きな利権を抱えている省庁です。
省庁利権さえ確保しておけば、自由自在に民間企業を操れるだけではなく、官僚の天下り先をキープできます。
総務省利権の源泉は電波利権、即ち総務省が放送と携帯の電波帯を無料で割り当てる形とすることで、新たに電波が欲しい事業者や、すでに電波を持っていて既得権を守りたい事業者の首根っこを握ることができます。
だから民間の放送事業者は、東北新社やNTTによる高額接待問題のような総務省官僚への接待を繰り返すのです。

本来は欧米のように電波ビジネスは、電波オークションで公平に入札額で決定すべきですが、それを行わず総務省が割り当て制度にしています。
この安価な割り当てによって最も恩恵を受けてきたのは大手新聞社とその系列化のテレビ局です。
事業収入に占める電波利用料はNHK0.28%、フジテレビ系0.11%、日本テレビ系0.18%にすぎませんから、テレビ業界ほどほとんど濡れ手に粟の商売はないといってよいでしょう。

そしてもうひとつのコントロールの手段は、今回の「小西文書」に登場した放送法です。
いまは高市氏が総務大臣時代に「電波を止めることができる」と言ったことが蒸し返されていますが、ほんとうに総務省を支配下に置いたのは、菅元総理の総務大臣時代でした。

たとえば、関西テレビの『あるある大事典II』の納豆データ捏造が大問題となると、菅氏は直ちに「電波停止もありうる」と発言して行政指導としては最も重い警告を出しました。
またTBSの『朝ズバッ!』でも不二家に関する捏造報道が起きると、放送局が事実と異なった報道をしたとして、総務大臣が放送局を行政処分できる内容の放送法改正案を提出しました。
政治的公平というアツモノではなく、情報バラエティで放送法改正を言い出すとは、さすが菅氏です。

結局、改正には至りませんでしたが、菅氏がテレビ業界から恐怖の眼で見られたことは確かでしょう。

今回、菅氏はなにも発言していませんが、その意見を聞きたいものです。

ところで、夕刊フジが世論調査しました。
調査数は1万千ですから、まずまず信用がおける数です。

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「注目のアンケートは17日昼から18日朝、夕刊フジ編集局ツイッターで行った。1万6783票の回答があった=別表。89・7%が、司直の捜査や証人喚問などを求め、《ここまで来たら喚問や刑事告発で白黒つけるべき》《早く地検なり警察の手に委ねて真相を捜査することが最善》《徹底的に真相究明》《東京地検特捜部の捜査待ってます》などの声が相次いだ 」
(ZAKZAK3月19日)

国会喚問に応じるのですね。

 

2023年3月20日 (月)

総務省みずから信憑性がないと言ってしまう

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そろそろ全体像が見えてくるのかな、また総務省が「正確性に係わる精査」文書を出してきました。
総務省|「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について (soumu.go.jp)

小西氏は高市氏に対して、「捏造だというなら証拠を出せ」と言ってきたわけで、「大臣レク」があれば高市氏は即ギルティという論法です。
高市氏は正確にはこう言っています。

小西委員が入手された文書の信憑性に、私は大いに疑問を持っています。もし私と安倍総理の電話の内容が文書に残っているとしたら、私の電話に盗聴器でもついてるのでしょうか?大臣室に盗聴器がついてたとしても、安倍総理がなにをおっしゃったのかは入らないはず。まったくの捏造文書だと考えております」
「それはもう捏造でしょう。(そもそも)安倍首相は首相在任中は、いくら電話やメールをしてもかかってこない。何日かたって『何度も電話をもらってたよね』と言われるぐらいだった」
「安倍首相は放送法にも強い関心はなかったので、私と放送法についてちゃんとすり合わせていれば、安倍首相と私の委員会での答弁が食い違うことはなかった」
「どういう作り方をしたらあんな変な文書ができるのか。私のしゃべり方とも全然違う

(参院予算委員会3月4日)
高市氏「安倍氏は放送法に強い関心なかった」 総務省文書 - 産経ニュース (sankei.com)

安部氏は当時安保法制に集中したかったし、こういう放送法がらみでやっても意味がないと思っていたようです。
だから、仮に磯崎氏が放送法の手直しを進言しても相手にしなかったはずです。

まぁそれはそれとして、やっぱり私は高市氏が「信憑性に疑問がある」で止めておくべきだったと思いますね。
「議員辞職」を口にする必要はまったくありません。
小西側が言葉尻を取り上げて、文書がホンモノだったら辞めると高市は言った、無罪証明を出せ、という短絡論法に持ち込みたいのは明らかだからです。
モリカケで使い古された手ですよ、これは。
ですから、モリカケサクラで騒いだ野党やメディアの連中が、そっくりそのままの構図で騒ぎだしたのです。

Gyoseibunsho

小西ひろゆき氏

森友問題は故安部氏が「関係していたら辞める」と言った揚げ足取って、延々と追及して国会を空転させたのですが、こういう言い方をすれば、必ず野党とメディアは「疑われた側の安倍総理が無実の証拠を出す必要がある」という言い方で追い込もうとします。
あの人たちは、スキャンダルでしか政府を攻撃できない哀しい生き物なのです。

高市氏は、こういうところまで安部氏を模範にすることはありません。
総理を目指すのなら、もう少しぬらりくらりといった老獪さをおぼえられたほうがいいでしょう。


さて、漏洩された側の総務省は、こういう小西氏の追い込み方に恐怖心を覚えたのでしょう。
この文書が出たのは、旧自治省と旧郵政省との確執が遠因でした。

総務省大臣室に勤務していた高橋洋一氏はこう言っています。

「行政文書だろうと。あまり内容のよくないものだということはわかりました。正しいと思って私は読んでいたのですが、よく読んだところ、総務省のなかの、旧郵政省と旧自治省の争いが官邸までいったということです。磯崎補佐官は旧自治省の方です。
山田秘書官は旧郵政省の方ですから、そこでバトルしているだけの話です。
総務省内の話が官邸まで及んだ。特に高市さんは総務大臣でしたから、すぐにわかるのです。でも、「そんなところには関わらない」というスタンスだったと思います。ほとんど関心がない感じです。片寄せすると、一方の肩を持ってしまうことになるでしょう」
総務省『内部文書』の背景にある「旧郵政省と旧自治省の争い」 高橋洋一が指摘(ニッポン放送) - Yahoo!ニュース

つまりは総務省の旧郵政省閥が、旧自治省だった磯崎補佐官を貶めたかったので、彼を「ヤクザ」と悪しざまに書いた文書を流出させたようです。
高市氏はそんなことに関心がなかったし、介入する気もなかったのに、安部氏の後継者と見られたばかりに首を狙われてとばっちりを食ったのです。

問題はむしろ総務省側です。
高市氏が議員辞職に追い込まれでもしたら、国家公務員守秘義務違反、機密漏洩で問われるのは総務省の側だからです。
いまは黙っていますが、さすがの岸田さんも大臣が故なきことで首をとられれば、政府側は総務省の漏洩責任を問うでしょうから、総務省は大きな打撃を受けることになります。
そこで、総務省は自己保身の本能に従って組織防衛に走ったようです。
それがこの調査文書の公開です。

では、総務省調査をみていきます。
全文を書き起こしておきます。太字は引用者です。

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●「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について
総務省が 3 月 7 日に公表した、放送法に定める「政治的公平」に関する行政文書の正確性について、文書に示された関係者に対し、総
務省職員が聞き取りを行うなどし、文書の作成者、発言者の確認の有無、作成経緯等を精査した結果は以下のとおり。

1 精査の対象とした文書
・総務省が 3 月 7 日に公表した全ての文書

2 文書の作成者等
・文書を構成する全 48 ファイル中(別表参照)、22 ファイルは作成者が確認できたが、26 ファイルは作成者が確認できていない
・また、発言者に対する内容の確認が行われたことが確認できたものはなかった。

3 文書中の不自然・不一致等(例)
① H.27.3.6 「大臣レクの結果について
安藤局長からのデブリ模様」の資料
作成者不明、形式が「聞き取り」

→文書整理 No.39 (P66)
山田秘書官(3/13(金))高市大臣から「総理」か「今井秘書官」に電話→文書整理 No.43 (P71 一つ目の・)、作成者不明
また、平川参事官の連絡 (3/9( 月 )) から山田秘書官の連絡(3/13(金))まで 4 日の期間
文書の作成経緯が特に不明なもの→文書整理 No.42、43
⑤ やりとりが記録された文書の記載上、正確な時刻が不明のもの
(一部再掲)
→文書整理 No.12、36、39、42
文書の作成者が不明のもの(一部再掲)
→文書整理 No.1、5、7、11、13~15、18、20、22、26、28、31、33、35、36、38~43、45~48

4 その他の精査の状況
礒崎補佐官関連
・礒崎補佐官から放送法の政治的公平に関する問合せ自体があったことは確認された。
・本件の過程で、強要などがあったとの認識は示されなかった。

・文書に記載されている打ち合わせの回数や個々の発言の内容が正確であるとの認識は示されなかった。
② 高市大臣関連
・引き続き精査を実施中。
③ 安倍総理関連
・引き続き精査を実施中。
※ 役職・肩書は全て当時のもの
000867909.pdf (soumu.go.jp)

うーん、なんといっても致命的なのは、この下図の全78ページの文書と48個のファイルのうち、作成者不明が3分の2に当たる50頁もあったことです。

文書の作成者が不明のもの(一部再掲)
→文書整理 No.1、5、7、11、13~15、18、20、22、26、28、31、33、35、36、38~43、45~48


これは痛い。

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ファイルの対応表

率直に言えば、ここまで作成者がわからないものを唯一の根拠として、国会で大臣を追及しようとした小西氏の行動は、ハナから無理があったのです。
大臣ひとりの首を獲り、さらには任命責任で政権を打倒しようと思っているのでしょうから、詰めが甘い。

総務省は既に「行政文書ファイル管理簿 にはない」と答えているわけで、その理由はひとつしか思い浮かびません。
「小西文書」が、たんに管理簿(台帳)に載せるまでもない私的なメモだったことです。
もし、小西が豪語するように「第一級の行政文書」だったなら、それは議事録、復命書、稟議書のようにきちんとした文書様式があり、日時がない、作成者も欠落し、罵倒語もあるようなものを作るはずがありません。

したがって「小西文書」とは、官僚が心覚えに書いて、部局内で回したていどのメモだったとかんがえるのが自然です。
小西氏が主張するように、「行政文書の管理簿に存在しない「極秘文書」だからこそ、提供者はこの文書を私に託した」などとという超機密文書にはとてもじゃありませんが見えません。
あれが「極秘文書」ですか、ぶはは、ご冗談を。
おそらく漏洩したほうも、かつての同僚だった小西氏に、「こんなもんもあるけどね」程度で見せたら、勝手に国会に持ち出されて、国会が空転する騒ぎにまで発展した、といったところでしょう。

さもなくば、池田信夫氏が言うように「官僚のクーデター」です。
こちらだと根が深いし、総務省の「前川喜平」の可能性も捨てきれませんが、現時点ではなんともいえません。

調査の結果、総務省はかんじんの高市大臣関係では、「問い合わせはあったが、強要はなかった」としていますから、磯崎氏はもちろん、高市氏や安部氏などは蚊帳の外でした。
内容も前回文書にあった、高市氏の発言などの回数や個々の発言の内容が「正確であるとは認められない」としています。
なんだ高市氏の「信憑性がない」という見方そのままじゃないですか。
総務省も漏洩文書が信憑性に乏しいと認めているのです。

礒崎補佐官から放送法の政治的公平に関する問合せ自体があったことは確認された。
・本件の過程で、強要などがあったとの認識は示されなかった。
・文書に記載されている打ち合わせの回数や個々の発言の内容が正確であるとの認識は示されなかった。

なんだ作成者が不明な上に、そこで言っていることの回数も内容も正確ではないということですか(脱力)。
しかもこの文書は行政文書ファイル管理簿には載っていないそうです。
はれほれ、ゼンゼンだめじゃん。

宮本岳志「この文書はどのような形で保存されていたのか」
総務省「総務省で電子的に保存されていた。確認した結果【”行政文書ファイル管理簿”への記載が行われておりませんでした】

小西さん、もう投了でしょう、これは。
かつての同僚に文書漏洩を頼んだことを白状して、楽になっちゃいなさい。

 

 

2023年3月19日 (日)

日曜写真館 たくましき光にめしひ鐵はこぶ

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はなうめのくれなゐに童が鉄かま 飯田蛇笏 

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ぐひすや火の籠りゐる鉄の色 石田郷子

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三日月の鉄牛牽きて戻りけり 齋藤玄

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叱咤する他なき寒さ鉄を積む 中田勘一

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春暁の鉄軋ませて電車発つ 畑佐白城子

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吹きつけし霧にたちまち冷ゆる鉄 宇佐美魚目

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春暁の鉄軋ませて電車発つ 畑佐白城子

S055

はくれむの負ふ錆び色は鉄の性 栗生純夫 

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北風に打つ鉄の皮ぽろぽろと 右城暮石

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夜の鉄に言葉鋭き男達 小倉清二郎

 

 

2023年3月18日 (土)

北朝鮮核武装を阻む3つの障壁

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北朝鮮がまたまたまた(以下略)弾道ミサイルを発射しました。
いかんと思いつつ、いまや日本国民はおしなべて馴れっこになりつつあります。 

ロフテッド軌道で打ち上げられ、北は自ら火星17号であると称しています。
また現在行われている米韓合同演習フリーダムシールドを「軍事的威嚇」だと非難し、これはそれに対する警告だとしていますが、無視しましょう。
合同演習をしようとしまいと、彼らは撃つのです。ウクライナに関心が集まっている内に撃たなにゃ損々ということです。

 発射は平壌国際空港(順安国際空港)から日本海に向けて行われ、公表された飛行性能の数値は以下の通りです。
・最大高度6045km
・水平距離1000.2km
・飛行時間4151秒(約69分)
北朝鮮今年2発目のICBMは火星17(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

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火星14
レッドライン越え譲歩迫る 北朝鮮「ICBM発射」 - 読んで見フォト - 産経フォト (sankei.com)

ロフテッド軌道などという特殊な用語が説明なしで通じるくらい、よく撃ってくれました。

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火星14の仕組みはこうなっています。

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hwasong-14 火星14 (weapons-school.mods.jp)

注目願いたいのは、先端のシュラウドと呼ばれる部分です。
シュラウドとは、弾頭を覆って熱から守るカバーです。
これが、ミサイルにとって非常に重要です。
下の写真は弾頭の模型を見る正恩です。

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北朝鮮がミサイル発射に失敗=韓国 - BBCニュース

どうしてカバー如きが大事なのでしょうか。
ミサイルが目標に接近して爆発した場合の効果は、弾頭の爆発力によって決まります。
その爆発力は目標をとらえてナンボです。

ロケットから分離された核弾頭が目標に到達できるかどうかは、一にかかって再突入(re-entry )の正否によります。
再突入に失敗すれば、弾道ミサイルはオシャカだからです。
たとえば、スペースシャトルにおいては、再突入開始時の速度はおよそマッハ25(30,000 km/h)、はやぶさ2き帰還カプセルでは12 km/s(43,200 km/h)で大気圏に突入しました。

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ベルカ宇宙軍 on Twitter

すさまじい高速ですが、これにより周辺温度は1万℃、カプセル表面では3000℃に達します。
とんでもない温度で、打ち上げても再突入を可能とするシュラウドの技術がないと、宇宙空間に行ったきりとなってしまいます。
いったん大気圏外に出たミサイルを、再度大気圏内に突入させねばただの「人工衛星」で終わってしまうのがおわかりいただけたでしょうか。

これでは、「地球観測にようこそ」で終わってしまいますが、もちろん正恩が欲しいのは米国に到達し、打撃を与えうる大陸間弾道ミサイルですから、再突入の技術がなんとしてでもなければなりません。
あいにくこの再突入は宇宙技術の中でも高い障壁だとされていますが、北は獲得したと言っていますが、ほんとうに保有しているかどうかは実証されていません。

次に、弾頭に複数の核弾頭(MIRV/Multiple Independently-targetable Reentry Vehicle・ マーヴ・複数個別誘導再突入体)を搭載できる技術があるかです。

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MIRV(多弾頭)
GEPR

というのは多弾頭にするには、核爆弾を小型化しなければならないからです。
この再突入と多弾頭化、そして核の小型化の3セットがないと、ICBM技術は出来上がったとは呼ばないのです。

「多弾頭型の大陸間弾道ミサイルの弾頭は、再突入ヴィークル込みで一体あたり200kg程度にコンパクト化しなければならない。こうすれば、一体の大陸間弾道ミサイルで、弾頭が6本は仕込める。そうすれば、一回のミサイル発射で6箇所の目標を同時に攻撃できる」
北朝鮮5回目核実験と日本の安保 – Global Energy Policy Research | GEPR 

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娘とミサイル見物に行く親父
WSJ

「北朝鮮は、一度に複数の場所を攻撃できる重い部品を搭載して、ICBMの発射を成功させたことを示していない。韓国航空大学校のミサイル専門家、Chang Young-keun氏によると、そうするためには、ICBMにポスト・ブースト・ビークル(PBV)を搭載する必要がある。PBVは地球の大気圏外でミサイルのメインブースターから切り離され、別々の標的に向けて複数の弾頭を放つ装置だ。これらの部品を合わせると、重量が最大2トン増え、ミサイルの飛行可能距離がおよそ1200~2500マイル削られる」
(ウォールストリートジャーナル2022年12月6日)
北朝鮮の新型ICBM、兵器として依然技術不足 - WSJ

現時点で、北朝鮮は搭載量と飛距離を伸ばしてはいますが、前述した3点セットが完成したという証明はできていません。

 

 

 

2023年3月17日 (金)

漏洩した者をさっさと刑事告訴しろ

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まだ「小西文書」で騒いでいますが、ほぼ決着はつきかかっているようです。
これが高市氏潰しが目的なのは明々白々ですから、これで高市氏が潰れたら総理の器ではなかったということです。
高市さん、一種の総理のためのストレステストを受けていると覚悟してください。

森友が始まったのが2015年、加計が始まったのが2017年、桜を見る会が2020年、実に3年間、延々と安部叩きにメディアと野党は狂奔していたのです。
この間メディアは、さも安部氏にはヒトには言えない悪事がある極悪人であるかのように連日報じたのです。

こういう空気の中から、山上某のようなテロリストが現れたのはけだし当然のことです。
安部氏はこのような激しい個人攻撃を満身に浴びながら、安保法制をまとめ上げ、特定秘密法を通し、いまや自由主義陣営共通の安全保障アーキテクチャー(構造)となったFOIPを作り上げたのです。
安部氏の後継者になるということは、即ちこのような個人攻撃を受け続けるという意味です。

さて、日刊ゲンダイは、「高市氏 孤立し"白旗"寸前か」と題して、こんな記事を載せています。
いつもながら、報道というよりアジビラだね。

「もうほとんど“詰んだ”のではないか。
 安倍政権下で作成された「放送法」の解釈をめぐる総務省の行政文書。記載のある「大臣レク」について、当時の高市総務相(現・経済安保担当相)は「受けるはずがない」とレクそのものを否定していたが、13日の参院予算委員会の集中審議で、総務省担当者が「レクは行われた可能性が高い」と真逆の答弁を展開したのだ」
(日刊ゲンダイ3月14日)
高市早苗氏は“白旗”寸前…総務省文書「大臣レクあった」に抗弁も官邸から見放され孤立無援|ニフティニュース (nifty.com) 月。

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小西ひろゆき氏

ゲンダイさん、なにが「白旗寸前」ですか(笑)。
岸田氏が閣僚である高市氏になんの手助けもしないのは事実ですが(彼も潰したいのでしょうが)、彼女の負けん気は日増しに強くなっていますぜ。
野党とメディアは、なぁ高市や、「レクを受けた」ということさえ認めれば、楽になるぞ、自白せぇや、カツ丼食べるか、とやりたいみたいです(笑)。
ところが彼女は屈伏する気などナッシング。
昨日なんか、とぼけた質問をした杉尾元TBSキャスターを「もう質問するな」とやり込めたばかりです。

ところで、先日の予算委員会の小笠原情報流通行政局長の国会答弁は悲惨でした。

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【画像】高市大臣が存在否定の“大臣レク” 総務省「あった可能性が高い」 高市氏は中身否定「言うはずもないことが…」 - ライブドアニュース (livedoor.com)

「作成者によりますと「約8年前のことでもあり、記憶は定かではないが、日ごろ確実な仕事を心がけているので、上司の関与を経てこのような文書が残っているのであれば、同時期に放送法に関する大臣レクが行われたのではないかと認識している」ということでありました。
一方、当該文書に記載されました同席者の間では、同時期はNHK予算国会提出前の時期であり高市大臣に対し放送部局のレクが行われたことはあったかもしれないが、個々のレクの日付内容まで覚えていないとするものがあり、必ずしも一致していない部分がございます。以上を勘案いたしますと、2月13日に関係の大臣レクがあった可能性が高いと考えられます」

わかって言っているのでしょうか、小笠原局長。
わかっているなら狡猾、わかっていないなら、局長、あんたバカだ。
局長が言っているのは2点。

①高市大臣レク結果の文章については、作成者によると、「約8年前でもあり記憶は定かではない」としつつも、「日ごろ確実な仕事を心がけており、上司の関与を経てこのような文書が残っているのであれば、同時期に放送法に関する大臣レクが行われたのではないかと認識している」とのことだった。
同席者の認識は必ずしも一致していない部分もあるが、以上を勘案すると、2月13日に放送法関連のレクがあった可能性が高い

これは証言ではなく、ただの憶測です。
したがって「可能性がある」もないも、無価値な発言にすぎません。
だってそうでしょう。オレはいつもしっかりした仕事をしているから8年前もしたはずだ、ただし記憶にない、なんて恥ずかし気もなくよく言えたもんです。

記憶になければないと言えばいいし、あればあったでそれを縷々言えばよろしいだけのことです。
あの場には6人いて、半分は知らないと答えて、残り3人の総務省官僚で意見が割れ、しかも確たる証拠文書もない。

フツー、そういうことは「可能性はない」と判断するのです。
無理に「可能性がある」と言いたいものだから、小笠原局長の答弁はこんな短い中で前段と後段がズレています。
「確かな仕事」をしていたなら、大雑把にでも内容を覚えているのは常識で、少なくとも何に対してレクしたのか、誰にしたのか、くらいは記憶に止まっているべきです。
この答弁を読んだ記者達の多くは、そんなことを忘れるかねぇと関心していました。
内容は忘れても、「したこと」はしっかり覚えているのがあたりまえだそうです。
6人もいたのですから、それを証拠づけるスケジュール表のひとつくらい見つけてもいいでしょうに。

共産党の宮本岳志議員の「この文書はどのような形で保存されていたのか」という質問に対して、「電子的に保存されていた。確認した結果、行政文書ファイル管理簿への記載が行われておりませんでした」、と答えています。
ならば、なおさらおかしい。
じゃあ、「小西文書」はどこにあって、どいう形態で誰が持っていたのですか。
結局、証拠となる裏付け資料はない、記憶はおぼろ、出席した者の意見もくい違う、しかし「レクした可能性が高い」って言うんですから、小笠原局長は高市氏になにか含むものがあるようです。

それとも誰か、たとえば「上司の関与を経て」というくらいですから、この「上司」をかばっているのでしょうか。
たぶんそんなところでしょうね。この漏洩事件はNTTに出向したようなペーペーじゃなくて、 総務省の上層部から指示が出ているはずです。
こういう時には、「可能性についてはお答えできません」と言うべきです。
なにか隠しているのは総務省官僚の側ではないのですか。
つまりあんな答弁に証拠能力はないのです。
メディアはこのあいまいな憶測発言を、まるで事実の証言のように報じるの「公正中立」とは言えません。

この文書自体にも不審なことがいくつかあります。
高市氏が「捏造」(後に高市氏はこの言葉はきついので訂正しました)と呼ぶように、高市氏の「電話」内容をどうして総務官僚が知っているのでしょうか
この部分です。

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「政治的公平に関する国会答弁の件について、高市大臣から総理か今井秘書官かに電話があったようだ。
・ 総理は「軽く総務委員会で答弁しておいた方が良いのではないか」という反応だったとのこと。
本件については総理が前向きであり、今井秘書官の指示で、菅官房長官には本件について相談していない。

ちっとちょっと、どうして高市氏の電話内容を知っているのよ。
総務省には大臣電話に盗聴装置を仕掛けているのですか。

なんで高市氏と総理の電話で、総理がこう言ったとわかるのでしょうか、不思議ですね。
これもまた憶測と忖度です。
彼ら官僚は、大臣など腰掛けですぐに通過していく軽くてパーの神輿のほうが都合がよいのです。
かつての民主党政権時の防衛大臣のように、専門知識皆無。くじ引きで大臣になったようなヒトなら理想的です。
大臣答弁の台本を渡せばいいだけの、カワイイ操り人形だからです。

一方、高市氏のような理念と骨があり、しかも総理直結のパイプまで揃った政治家がトップになられると、本能的に忌避します。
そういう優秀な政治家は、省益に反することもしかねないからです。
8年前、総務官僚たちは高市氏が放送法について従来の解釈とは温度差があることを知って怯え、足を引っ張ろうとしたはずです。
総務省とはっきり見解が異なる礒崎補佐官などに至っては、「総理に影響のない人物が激高して変なヤクザがからんだようだ」とまで感情的書かれ方をされています。

ここで問題は一転して総務省に投げ返えされます。
では誰が68枚もの「取り扱い厳重注意」指定の文書を、野党に流出させたのでしょうか。
小西氏が情報公開法の手続きをして入手したなら問題ありませんが、そうではなく総務官僚Xの手によって、特定の政治家に打撃を与えるために流出したとなると、問題は別です。

かつて防衛省の内部文書の取り扱いについて野党はさんざん追求したものですが、今回は「取り扱い厳重注意」分署が大量に流出し、世界に拡散してしまいました。
中国やロシアは、なんてセキュリティが甘い国だとせせら笑っていることでしょうから、国益の棄損です。

あたりまえですが、日本にも国家公務員法に守秘義務が定めてあります。

●国家公務員法第 100 条
職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。

ここで言う「職務上知ることのできた秘密」とは、職員が職務に関連して知り得たすべての秘密をいいます。
したがって、例えば、税務署の職員が税務調査によって偶然知り得た納税者の家庭的事情や、労働基準監督署の職員が調査の過程で偶然知り得た調査対象企業の経営状況なども「職務上知ることのできた秘密」に含まれます。
ましてや今回の「取り扱い注意」文書などは、ストレートに守秘義務対象に属することはいうまでもありません。
なお、これは退職後も適用されます。

これについて小西氏側は「公益通報」だと言っているようです。
公益通報が恣意的に解釈されると、オレはこれは正義だと信じてどんどん漏洩させてしまうことになりかねません。
今回がこのケースですが、「公益通報」には厳然と条件があります。
それが「違法性」の有無です。

●公益通報(いわゆる内部告発)と守秘義務の関係について
公益通報の対象となる「通報対象事実」は、犯罪行為の事実等を指すものであり、一般的には、公益通報により、守秘義務違反に問われることはないものと考えられます。
ただし、公益通報者が、通報中に、犯罪行為の事実等のほかに職務上知り得た秘密を外部機関に漏らした場合には、当該秘密は「通報対象事実」に該当せず、守秘義務違反に該当する場合もあります。
untitled (jinji.go.jp)

たとえば高市氏が殺人を計画していたなどということを官僚が知って、それを証拠立てる文書を流したのならこれはリッパな「公益通報」です。
今回は放送法の解釈についてであって、しかも内容的にはなんの新味もありません。
ただ「総理に電話した」ということを、想像力たくましくこう言ったに違いないと憶測しているだけのことです。
たった4カ所の高市氏当所に63ページという膨大な文書を流出させたのですから、大丈夫ですか、と言いたくなります。

高市氏と磯崎氏は、容疑者不詳で国家公務員法違反で東京地検特捜に刑事告訴すべきです。

2023年3月16日 (木)

プーチンvsブリゴジンの内ゲバ発生か?

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ISW(戦争研究所)が面白いレポートを出しています。
あのならず者集団「ワグネル」の指導者であるブリゴジンと、プーチンがいまや抜き差しならない対立をしているという情報です。
ロシアの攻撃キャンペーン評価、12年2023月<>日 |戦争研究所 (understandingwar.org)

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エフゲニープリゴジン
「弾薬供給を拒否」 ワグネルトップがロシア軍批判 対立激化か - 産経ニュース (sankei.com)

「ロシア国防省(MoD)とワグナーグループの投資家エフゲニープリゴジンの間の紛争は、バフムトの戦いを背景に最高潮に達した可能性があります。
ロシア国防省、特にロシア国防相セルゲイ・ショイグとロシア参謀総長ヴァレリー・ゲラシモフ将軍は、プリゴジンを弱体化させ、クレムリンでのより大きな影響力への野心を狂わせるために、エリートと有罪判決を受けたワグナー軍の両方をバクムットに故意に消耗させる機会をつかんでいる可能性があります」
(ISW)

なるほどね、どうしてバフムト戦線であるような甚大な人的消耗を前提としたゾンビーアタックをかけるのか、私も不思議に思っていました。
なにせ銃も満足に渡さないで、仲間の死体から奪えですから、これはもう戦術なんてもんじゃありません。
バフムト戦線でのロシア軍のゾンビーアタック: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

共産圏の軍隊はみんなああいうものなのだ、と言えばそれで終わりなのですが、どうやらISWはその背景にプーチン陣営とブリゴジンの対立があったとみています。
朝鮮戦争の折の人海戦術の背景にも、投入された共産軍兵士の大部分は投降した旧国府軍兵士らで占められていたといいますし、プーチンがいまや邪魔者となったブリゴジン軍「ワグネル」をすり潰すにはいい機会だったようです。

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ウクライナ要衝バフムト中心まで1.2km ロシア主張 (tv-asahi.co.jp)

「ロシアの国防省は、プリゴジンが囚人を募集し、弾薬を確保する能力をますます制限しており、プリゴジンにロシアの国防省への依存を公に認めることを余儀なくさせていました。
たとえば、プリゴジンは、彼が手紙を郵送し、弾薬の緊急要求で国防省の代表者(おそらくショイグとゲラシモフに)を送ろうとしたが、代表者が彼の苦情を提示することを許可されなかったと公に不満を述べた」
(ISW前掲)

ブリゴジンは、新たに囚人などを使って兵員を集めようとしましたが国防省から拒絶され、さらには武器弾薬さえも与えられなかったようです。
特に刑務所を人材プールにしていたワグネルにとって、囚人を利用できなくなることは致命的だったはずです。
結果、丸腰のワグネル戦闘員に無謀な突撃を繰り返させ、バフムトの半分はかろうじて占領したものの、全滅に等しい打撃を受けてしまいました。
怒ったブリゴジンは、西側メディアに自軍の戦死者の映像を公開し、実情を暴露しました。
もちろんプーチンへの当てつけです。

「ロンドン 22日 ロイター] - ロシアのウクライナ侵攻に部隊を派遣しているロシア民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は22日、弾薬を奪われ殺害されたという戦闘員数十人の遺体画像を公開した。弾薬供給を巡る軍部への非難を一段と加速させた格好。
プリゴジン氏は21日、ロシアのショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長がワグネルへの弾薬の供給を拒否し、ワグネルを崩壊させようとしていると批判した。一方、国防省はこうした批判を否定している。
プリゴジン氏はこの日、ウクライナ東部バフムトで戦死した数十人の戦闘員が凍土の上に倒れている写真を公開。異例の手段で軍部を批判し、戦闘員らは弾薬が不足したため死亡したと主張した」
(ロイター2日通23日)
ワグネル創設者、戦闘員の遺体画像公開 弾薬供給巡る軍批判加速 | ロイター (reuters.com)

プリゴジンはプーチンに、バフムトから撤退させると脅迫しました。
一方、人的消耗が激しいバフムトでの市街戦の矢面にワグネルを利用してきたロシア軍は窮地に立たされることになります。
ロシア軍中枢のショイグ国防大臣やゲラシモフ参謀総長兼総司令官の意図は、戦略的要衝でもないバフムトで、うるさくなってきたワグネル軍を潰してしまい、ブリゴジンの影響力を断つことでした。
しかしここでワグネル軍に撤退されれば、代替がいないのです。

しかし、しょせんPMC(Private military company /民間軍事企業)は傭兵にすぎません。
正規軍とは違って大砲や戦車などは持たない軽装備ですから、「ワグネル」がこんなに前面に出てくることのほうがヘンなのです。
米軍もPMCを使っていますが、不祥事を起こしたせいで契約は縮小し、基地の警備ていどでおちついています。

ワグネル軍がここまで重用されたのは、プーチンが緒戦のキーウ侵攻に失敗したことにショックを受けて、ショイグ、ゲラシモフといった軍中枢に対して深い不信感を持ってしまったからです。
このロシア軍の弱さは、4日でゼレンスキーを亡命に追い込み、首都にロシア国旗を翻すつもりだったプーチンにとって大きな政治的打撃でした。
ここで登場するのが、かつてプーチンの料理番だったエフゲニー・ブリゴジンです。
なんだか『沈黙の戦艦』のスティブン・セガールみたいな話で笑ってしまいますが、ホントです。

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料理人時代のブルガジンとプーチン

「プーチンのシェフ」がロシア政界で台頭 配食事業を経て民間軍事会社創設、ウクライナ侵攻で暗躍:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

この料理長は、シェフを辞めた後に政府にケータリングをする会社でボロ儲けし、オルガルヒとして頭角を現します。
一般のオルガルヒは戦争に消極的で、次々にプーチンによって消されていきますが、このブリゴジンだけはプーチンの「影の軍隊」としてまともな軍隊には任せられないようなダーティな任務で重用されることになります。
これが「ワグネル」です。

プリゴジンは、2014年のドンバスでワグネルが誕生したと述べています。

「古い武器を掃除し、防弾チョッキを自分で見つけ、この問題で私を助けてくれる専門家を見つけました。その瞬間から、2014 年 5 月 1 日から、愛国者のグループが生まれました」

そしてドンバスの分離主義者に加担した後、中央アフリカ共和国、スーダン、リビア、モザンビーク、ウクライナ、シリアなどを転戦して、 何年にもわたって多くの残虐行為に関わったとされています。
今回のウクライナ戦争においても、ブリゴジンは信用を失墜したショイグ・ゲラシモフを口汚く罵り、ロシア右翼の代弁者として正規軍に代わるような勢いでした。
こういう調子で、大受けしました。

「この役立たずども全員に機関銃を持たせて、裸足で前線へ送ってやる」

そして去年6月には、ゼベロドネツクで攻防で大きな戦果をあげたと主張しています。

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[深層NEWS]東部セベロドネツク攻防「南から露突破なら補給線断たれる」…高橋杉雄氏 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

「ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから24日で4か月がたち、ロシア軍は、東部2州のうちルハンシク州の完全掌握を目指してウクライナ側が拠点とするセベロドネツクへの攻撃を続けています。
ルハンシク州のハイダイ知事は24日、地元メディアに対して「残念ながら、ウクライナ軍はセベロドネツクから撤退せざるをえない」と述べ、防衛にあたってきた部隊が別の拠点に移動することを明らかにしました」
(NHK2022年6月25日)
ロシア セベロドネツク掌握の見通しも一進一退の攻防続くか | NHK | ウクライナ情勢

このセベロドネツク攻防の前には、プーチンから囚人の動員を許され、弾薬の補給も受けられるようになっていきます。
かくしてプーチンの信用を勝ち得たワクネルは、もはやかつてのようなダーティな戦争屋ではなく、ロシア軍の先鋒を担うようになっていきます。
この力を背景にして、ブリゴジンは政治力を発揮し、総司令官のラピンの解任をプーチンに働きかけ、自分の盟友である「アルマゲドン将軍」ことセルゲイ・スロヴィキンを後任として昇進させることに成功しました。

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セルゲイ・スロヴィキン将軍
露メディア「ロシア軍の指導部は、民間人の犠牲を問題視しない者ばかりだ」 | 「アルマゲドン将軍」はウクライナ侵攻をどう変えるのか | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

スロヴィキンはシリア内戦において残虐な民間人殺戮を実行した男です。
たぶんブリゴジンとはシリア絡みで知り合ったのでしょう。

ウクライナでも民間人への打撃を与えることに狂奔しました。それが電力施設への無差別爆撃です。

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ロシア大規模攻撃 電力供給は5割まで低下 インフラ被害深刻化 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

「スロヴィキン氏は冬の到来を迎えたウクライナでエネルギーインフラ破壊作戦を開始し、住民数百万人を電気も水道もない状態に陥らせた。また、南部の街ヘルソンからのロシア軍の撤退を指揮した。この撤退はウクライナ側にとって大きな成功となった」
(BBC 2023年1月12日)
ロシア、ウクライナ侵攻の総司令官を交代 3カ月で2度目 - BBCニュース

去年10月には、もはや軍の中枢を押さえるまで一歩というところまで、ブリゴジンは迫っていたのです。
そしておそらくは次の大統領選に病弱なプーチンは出られず、オレが候補として出てやる、そう考えたのでしょう。
ここでプーチンに赤信号が点灯しました。
こんな危険な男は排除せねばならない。
プーチンは、周囲には唐突に10月5日の演説で、エカテリーナ2世の権威に挑戦したプガチョフの乱を連想させる暗喩を使いました。
皇帝に楯突く者は容赦しないぞ、という意思表示です。

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エメリヤン・プガチョフ - Wikipedia

「ロシア文化の神話にしたがえば、凡庸な司令官のミスを正すには、前線で岐路にあるとき、毅然として口数が少なく言葉を選ばない(クトゥーゾフやジューコフのような)民衆的な将軍が登場しなければならない。
そして神話の中だと、そうした武将たちは、もうひとつ重要な資質を備えていなければならない。つまりその人物は、いかなる場合でも、まずい決定を下して大惨事を起こした君主を批判すべきではない。それによって当局の権威を失墜させるべきでもない。逆に権威を強化しなければならないのだ。
君主はしばし背後に下がり、司令官に戦況を好転させる。その後に表舞台へ出て、勝利を手にするのである」
(クーリエジャポン2022年11月10日 )
露メディア「ロシア軍の指導部は、民間人の犠牲を問題視しない者ばかりだ」 | 「アルマゲドン将軍」はウクライナ侵攻をどう変えるのか | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

つまり、プーチン皇帝はブリゴジンが「大祖国戦争」の頃のジューコフのように「君主を批判せずに」、「口数がすくなく言葉を選ぶ武将」であるうちは重用しても、公然とモスクワを非難し、国軍の人事にかこつけて自分を批判するようになった時、ためらわずに抹殺する決意をしたはずです。
そしてブリゴジンに、なんの戦略的に無価値なバフムトを攻略することを命じました。

どうしてこんな意味がない街を攻撃しているのか西側軍事筋は首をひねったものですが、答えはワグネル潰しだったのです。

プーチンは冷酷にも、銃も弾薬も渡さずに丸裸でウクライナ軍機関銃陣地に突撃させました。
どのようなことになるのかは百も承知でそうさせたのです。
その結果、かろうじてバフムトの半分は占領したものの、事実上この地でワグネル軍は壊滅的打撃を受けました。
将校クラスまで脱走して、ウクライナ軍に逃げ込むありさまです。

ロシア軍大勝利、ウクライナ軍崩壊とロシアンフレンドは煽っていましたが、実情はこうだったのです。
続いて今年の1月になって、プリゴジンが総司令官に押し込んだスロヴィキンは副司令官に降格されて、ブリゴジンの天敵であるゲラシモフが復活しました。
完全なブリゴジン包囲体制です。

ISWはこう結論づけます。

「ロシア軍指導部は、バクムットでワグナー軍とプリゴジンの影響力を潰そうとしているのかもしれない」
(ISW前掲)

そしてウォールストリートジャナルはブリゴジンは「蚊帳の外」に追い出されたと述べています。

「プリゴジン氏は、1月のバフムト北部の都市ソレダルや昨夏のセベロドネツクにおける勝利を自らの手柄にしようとするなど、戦場でのワグネル戦闘員の存在感を利用して、プーチン政権に対する影響力を高めることを狙ってきた。
 ところが、プリゴジン氏はここにきて蚊帳の外に置かれつつある。背景には、ロシアが戦闘態勢の見直しに着手していることがある。具体的には、ウクライナ侵攻を指揮してきた前司令官を交代させるとともに、プリゴジン氏による戦闘員の追加動員を制限している。
プリゴジン氏の攻撃は、ウラジーミル・プーチン大統領が議員や軍幹部、宗教指導者を前に年次教書演説を行っているタイミングで起きた。演説では、長期化するウクライナ侵攻に多くの時間が割かれた」
(WSJ2月25日)
ロシアの内紛露呈、ワグネル創設者は蚊帳の外に - WSJ

ブリゴジンのモスクワ非難は、プーチンの年次教書演説に合わせて行われました。
彼の非難の矛先は、ショイグやゲラシモフにはなく、クレムリンの主に対して向けられています。
さて、ブリゴジンが破れたままになってしまうのか、それともモスクワに駆け上るのか、まったく読めません。
一番考えられるのは、他のオルガリヒと同様に、ひっそりと「自殺」していたでしょうか。

いずれにしても、ロシアはここにきて大きく揺らぎ始めました。

 

 

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ウクライナに平和と独立を

2023年3月15日 (水)

総務省にも「前川喜平」がいたようだ

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総務省「小西文書」を読むと、高市氏の部分はきわめて少なく、文書に内容がないことがわかりました。
なんせたった4カ所で、発言内容も「電話をした」ていどのことですからね。

本来は高市=言論弾圧でやりたかったのでしょうが、毎日の願いも虚しく「小西文書」には高市氏は4カ所しか登場せずにスカ。
しかたがないので、高市氏の言葉尻だけを捉えて、小西氏は「レクがあったかないか」という方向に、追及を逸らしていってしまいました。
こういう「追及」も、連日なされると、高市氏がなにか隠している悪人に見えてきます。

20230314-062510

おいおい、です。
大臣レクがあろうとなかろうと、どっちだっていいじゃん、そんなこと。
ゴールポストを動かすンじゃないよ。

小西氏らは第1次攻撃目標である言論弾圧に置くことに失敗したので、あわてて「大臣レク」をもらったか否かにすり替えたのですが、いかんともせんショボイ。
本来の「放送法第4条を改悪する悪人」路線にしてほしかったですね。
それなら、もう少しかみ合った議論になったはずです。

20230315-032056

これこれ、これが本筋。
というのは、高市氏や文書中に出てくる磯崎補佐官の放送法に関する考えは、総務省の公式見解とやや違うからです。
踏襲しつつも、さらに一歩踏み出そうとしています。
※高市氏は昨日、磯崎氏の影響は受けていない証拠を出すと言っています。

まず、放送法4条をおさえておきます。

●放送法
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
放送法 | e-Gov法令検索

誰の眼にも、第4条なんてあってなきが如しというのはわかりますね。
左翼偏向番組なんか真っ昼間から夜中までじゃんじゃんありますし、逆に左巻きじゃないワイドショーの司会者なんていたのかしら。
放送局も放送法なんか信じちゃいないし、視聴者もこんな条文があったなんて知らない。
こうしてモリカケサクラの時なんぞ、ワイドショー情報が情報弱者に流れ込んでいたものです。

だから高市氏が総務大臣だった時「電波を止められます」と放送法に定められたことを発言すると、暗黒時代がやってきたというメディアの煽りに乗ってしまうことになります。
その原因は、所轄官庁の総務省が第4条2項の「政治的公平性」を死文化したからです。

総務省の見解はこうです。

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総務省見解を要約します。

●総務省の放送法第4条についての見解
①放送法3条の「放送の自由」を最優先する。
②ひとつの番組で見ずに、放送番組全体で見る。
③4条2項の「政治的公平性」の判断は、BPOなどのような事業者の自主的取組に任せる。

総務省は、放送法で放送事業者の自由は保障されているから、文句があるなら放送業界が作ったBPOに言え、つまりは監視対象自らに監視をさせるということです。
どこに業界の管理とその取り締まりを、業界団体に丸投げする官庁がありますか。
こういうのを所轄官庁との馴れ合いとか癒着とか呼びます。
当然のこととしてBPOは、政治的公平性が怪しい人物らによって委員ポストが独占されることになりました。
このようにハナから「政治的公平性」を骨抜きにしていたのが、ほかでもない所轄官庁のはずの総務省だったのです。

一方、「小西文書」に添付してる高市氏の答弁はこうです。

●平成27年5月12日 参議院総務委員会 高市総務大臣答弁
放送法第4条第1項第2号の政治的に公平であることに関する政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げましたら、1つの番組のみでも選挙期間中またはそれに近接する期間において、殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間に渡り取り上げる特別番組を放送した場合のように選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合といった極端な場合におきましては一般論として、政治的に公平性であることを確保しているとは認められないと考えられます」

高市氏が言っているのは、総務省見解を踏まえつつ、極端な場合は政治的公平性を確保していない、ということです。
ここで例示されているのは、国論を二分する政治問題や選挙期間中に特定の候補者に対して誹謗したり、逆に礼賛するようなことは逸脱だとしています。

活字媒体と違って政府から特権的電波帯を割り当てられている放送事業者が、一定の法的規範に従うのは当然のことで、そのために放送法が存在したはずです。
総務省は、地上波の特権的割り当てによって発生した電波利権に大あぐらを書いている官庁です。

 2013年のテレビ局の事業収入は、NHKが6517億円、フジテレビが3468億円、日本テレビが2277億円です。
企業でいう「仕入れ」の電波利用料は1993年から導入されましたが、NHKがわずか18億7800万円、フジテレビ系が3億9920万円、日本テレビ系が4億3260万円で、事業収入に占める電波利用料はNHK0.28%、フジテレビ系0.11%、日本テレビ系0.18%にすぎません。

「2006年度の歳入の内訳をみると,携帯電話関連で8割を占めているとみられる。ここで議論がある。携帯電話関連で637億円くらい負担しているのに,テレビやラジオは約6.7億円と2ケタ少ない。売り上げは携帯電話事業のほうがテレビよりも大きいが,電波帯域はテレビのほうが広い。一方で,アマチュア無線などが2.6億円負担している。当然,テレビの負担は少なすぎるという声が上がっている」
(日経テック2008年4月22日)

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電波の特定財源「電波利用料」 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

あきらかにテレビ局は、この安価な電波利用料によって労せずして大儲けできる業界なのです。

総務省はこの放送事業者を監督すべき立場なはずですが、東北新社の総務省高額接待実験でも分かったように、むしろこの利権の擁護者と化しています。
ですから、一方でいつでも電波を止められると脅しながら、片方では甘い利権のアメを与え続け、「政治的公平性」のようなトゲは見て見ぬふりをしてきました。
有体にいえば総務省は、放送法は、放送業事業者への武器としては持っておいて損はないが、常日頃は4条の「政治的公平性」などどうでもよく、むしろ骨抜きにして癒着してきたのです。

そのような総務省官僚たちにとって、元総務省官僚でありながら、かねがね問題意識を持っていた礒崎陽輔補佐官は目の上のたんこぶだったはずです。
「小西メモ」にも、安藤情報流通行政局長の磯崎氏に対する「官邸に影響力ないからヤクザに絡まれたようなもの」というような侮辱的言辞が記録されているほどです。
磯崎氏はなまじ省内にいただけに実情を知り尽くしており、しかも魔王安倍の懐刀になってしまい、4条を的確に使えと言うのですから、抹殺したい対象と考えていたことでしょう。

その磯崎氏は「小西文書」の中で、このように質問しています。

20230314-060929

「聞きたいことは2つある。まず1つ目だが、1つの番組では見ない、全体で見るというが、全体で見るときの基準が不明確ではないかということ。「全体でみる」「総合的に見る」というのが総務省の答弁となっているが、これは逃げるための理屈になっているのではないか。そこは逃げてはいけないのではないか。
(確かに様々な事例、事案があるので、「基準」を作れとは言わないが)総務省としての考え方を整理して教えて欲しい」

磯崎氏は、もっと原則的に放送法を運用しろ、と言っているだけのことで、高市氏も似たような考え方をしていたと思います。
3条の報道編成の自由は守られるべきだが、行き過ぎは4条でチェックして対応してもいいのではないかという意見です。
あたりまえではないですか。行き過ぎもチェックできないような放送法4条など無意味です。
むしろあることで、免罪符を与えているだけのことです。

そもそもこんな放送法4条は、超安価に電波帯を分けてやる言い訳に作ったような条項にすぎません。
これだけ公平に作られているのだからパブリックインフラです、だから安くせにゃならんのです、ということを法的に担保しているだけで、前述のように総務省みずからの手で空文化していました。

なんせ管轄機関が、当該事業者に監視してもらえと、業界丸投げを堂々と言っているのですから、話にならない。

私は今回の「取り扱い厳重注意」文書が易々と野党議員の手に渡ったのは、なんらかの総務省官僚の意志、ないしは黙認があったのだと思っています。
総務省は目障りだった高市氏を叩き、政治生命を抹殺しようと考えていたのかもしれません。
そう考える、総務省の「前川喜平」がいたとしてもおかしくないのです。

ちなみにホンモノの前川氏は、事務次官就任前後でありながら、なんと国会前でシュプレッヒコールをあげていたそうです(笑)。
ハンパないね。
この男の動機は、獣医学部新設を阻むという文科省の省益と、自分の左翼思想が二重になっています。
今回の総務省の「前川」官僚にも、同類の臭みを感じます。
漏洩したのはNTTに出向している人物と特定されていますが、彼はただのトカゲのシッポ切りでしょう。
将来の総理を期待されている現役大臣の首を獲ろうという仕掛けですから、もっと大物が控えているはずです。
それもひとりではなく複数。

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朝鮮学校の無償化不適用「不条理」と語り、「SEALDs」集会に参加 前川喜平氏に慄然とした  | 草莽崛起ーPRIDE OF JAPAN (fc2.com)

毎日などはまるで安部政権が言論弾圧するつもりだった、と大げさに書き立てています。
毎日新聞は1面トップには、「安倍政権、放送法の「政治的公平」解釈変更議論か 立憲が内部文書」と大きな活字が踊っています。

「立憲民主党の小西洋之参院議員は2日、国会内で記者会見し、2014~15年に安倍内閣が一部の民放番組を問題視し、放送法が規定する「政治的公平」の「解釈変更」(小西氏)を試みていたことを示す総務省作成の内部文書を入手したとして公表した。当時の高市早苗総務相は、政治的公平性を欠く放送を繰り返した局に電波停止を命じる可能性に言及しており、政府内での議論の結果だった可能性がある」
(毎日3月2日)
安倍政権、放送法の「政治的公平」解釈変更議論か 立憲が内部文書 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

まぁ、政府が法律の解釈変更をするなんてことは違法でもなんでもありませんから、「公益通報」には該当しないでしょう。
ですから、今回仮に「総務省の前川喜平」がいたとすれば、守秘義務違反を問われることになります。

2023年3月14日 (火)

資料「小西文書」開示される

 

054_20230313161901

総務省のいわゆる「小西文書」が開示されています。
000866745.pdf (soumu.go.jp)
総務省|政治的公平に関する文書の公開について (soumu.go.jp)

そこで、高市氏に関しての部分だけ機械的に抜き出してみました。

20230313-110932

①「政治的公平」に関する放送法の解釈について(磯崎補佐官関連)
平成 27年
2 月 13 日(金):高市大臣レク(状況説明)
17 日(火):磯崎補佐官レク(高市大臣レク結果の報告
5 月 12 日(火):参・総務委員会
(自)藤川政人議員からの「政治的公平」に関する質問に対し、磯崎補佐
官と調整したものに基づいて、高市大臣が答弁

②礒崎総理補佐官ご説明結果(概要)
大臣レクの結果について安藤局長からのデブリ模様
(平成27年3月6日(金) 夕刻
○ 安藤局長から、総理に連絡する際は、
・今回の整理ペーパーの内容は「事務的にはギリギリの線のものであること」、
・礒崎補佐官に対し、一度「(高市大臣から)答弁は準備します」とお伝えして
いること

③高市大臣と総理の電話会談の結果
(平成27年3月9日(月)夕刻)
・ 政治的公平に関する件で高市大臣から総理に電話(日時不明)。
・ 総理からは、「今までの放送法の解釈がおかしい」旨の発言。
実際に問題意識を持っている番組を複数例示?(サンデーモーニング他)

④山田総理秘書官からの連絡
【政治的公平の件について】
(平成27年3月13日(金)17:45)
・ 政治的公平に関する国会答弁の件について、高市大臣から総理か今井秘書官かに電話があったようだ。
・ 総理は「軽く総務委員会で答弁しておいた方が良いのではないか」という反応だったとのこと。

以上の4箇所です。
見る限り「電話をした」「電話があった」というていどのことです。
なにかを高市氏が指示したという記載はありません。

また、この総務省文書とは別に、高市大臣の国会答弁も添付されております。

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● 平成27年5月12日(火)
参議院総務委員会 
○高市大臣
最近の放送を見てどう思うかということなんですけれども、今ですね割と忙しくしておりまして、放送番組をじっくりとたくさん見る機会には恵まれておりません。ただ、放送番組は放送事業者が自らの責任において編集するものでございまして、放送法は放送事業者による自主自律を基本とする枠組みになっておりますから、個別の放送番組の内容について、何か言えということでしたら、なかなかコメントしづろうございます。なお、個別の番組について何か社会的な問題が発生した場合には、まずは放送事業者が調査を行うなど私的な取り組みが行われることとなります。総務省としても放送事業者の取り組みの結果を踏まえて適切に対応することにしております。

○高市大臣
率直に申し上げまして、藤川委員の問題意識、共有されている方も多いんじゃないかと思いますし、私自身の総務大臣の職に就きまして、非常にここのところの解釈というのも難しいものだなぁと感じております。例えばですね、国論を二分するような政治的課題について、ある時間帯で与党党首の記者会見のみを放送したとしても、あとのニュースの時間に野党党首のそれに対する意見を取り上げている場合のように、ある番組で一方の政治的見解のみを取り上げて放送した場合でも、他の番組で他の政治的見解を取り上げて放送しているような場合は、放送事業者の番組全体として政治的公平を確保しているものと認められるとされております。

○高市大臣
放送法は放送事業者の自主自律を基本とする枠組みとなっており、放送番組はそのもとで、放送事業者が自らの責任において編集するものであります。政治的公平の観点から番組の編集の考え方について社会的に問われた場合には、放送事業者において政治的公平を確保しているということについて国民に対して説明をする必要があると考えております。

○高市大臣
放送法第4条第1項第2号の政治的に公平であることに関する政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げましたら、1つの番組のみでも選挙期間中またはそれに近接する期間において、殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間に渡り取り上げる特別番組を放送した場合のように選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合といった極端な場合におきましては一般論として、政治的に公平性であることを確保しているとは認められないと考えられます。

○高市大臣
前問と同じように政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げますが、1つ番組のみでも国論を二分するような政治課題について、放送事業者が一方の政治的見解を取り上げず、殊更に他の政治的見解のみを取り上げて、それを指示する内容を相当な時間に渡り繰り返す番組を放送した場合のように当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合といった極端な場合においては、一般論として政治的に公平性であることを確保していることは認められないものと考えます。

なお、総務省の「政治的公平性」についての見解は以下です。

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この高市総務大臣(当時)答弁が、「言論弾圧を画策していた」かどうか、お読みになればわかるはずです。
高市氏は、完全に総務省の見解を踏襲して答弁しています。

以上、私の主観入れずに引用しましたが、果たしてこれが大臣辞任すべきものかどうかの判断はお任せいたします。

 

2023年3月13日 (月)

なにが「一級の行政文書」だ

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ああ、うるさい、まるで高市大臣の首をとったかのような煩さです。
なんでも行政文書に書いてあったからホントだ、捏造だからホントだったら議員辞める、と言ったんだから高市は辞職しろということのようです。

日刊ゲンダイは大喜びで、高市はひとりボッチだ、もうすぐ議員辞職に追い込めるゾ、とこう書いています。

放送法の政治的公平性をめぐり、解釈変更に至ったプロセスが記された総務省の内部文書が表沙汰になって1週間あまり。事態は動いているのに、高市早苗経済安保担当相は強情を張り続け、居場所を失いつつある。
 問題のペーパーを行政文書と認めた総務省は10日、調査状況を発表。発言記録があった総務省関係者など十数人に聞き取りをしたところ、当時の礒崎陽輔首相補佐官から政治的公平性に関する問い合わせがあったと説明したが、高市大臣や安倍元首相に関連する資料は内容の精査を続けるとした。
一方の高市大臣は、資料の一部の正確性が確認できないことについて、当時の総務相として「責任を感じている。大変申し訳ない」と閣議後の会見で謝罪。しかし、参院本会議では自身の名前が記された4文書について「正しい情報ではない」「大臣も議員も辞職すべきとは考えていない」と強気な姿勢を崩さなかった」
(日刊ゲンダイ3月12日)
高市早苗氏に「更迭」浮上! 謝罪はしても辞職拒否、火ダルマ必至の岸田首相が決断も|ニフティニュース (nifty.com) 源太イ。

まさに、「森友に便宜を与えていたら辞職する」と言った故安部氏と同じですね。
高市さん、安部氏の時もそうでしたが、こんなことは安易に言わないこと。
売り言葉に買い言葉で議員の首をかけると不用意に言ってしまったから、小西氏やメディアが有頂天になったのですよ。

では、その行政文書ってナンなの?
「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」というものが、定義しています。
まずはそこから当たったらいいのに、最初のボタンをキチンとかけないから服が歪んでいきます。

2 この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律 | e-Gov法令検索

要は、「当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有している文書」にすぎません。
お役人が仕事の時に書いたメモ、報告書、取得した文書、図画などの総称です。
いうまでもないことですが、あくまでも「お役人が書いた」というだけのことで、正確さが担保されているわけでもなんでもありません。
ましてや今回の「小西文書」とやらは、仮にこれが正式な報告書なら必ず備えてなければならない、発出の日時、担当部局名、担当者、宛て先等の必須項目がすべて欠落していますから、「行政文書」といっても一番格が低い「行政メモ」の類です。
これが例の「西山文書」みたいな秘密議定書の類や決済文書、正式の議事録ならもう少しカッコウがついたんですがね。
こんな程度の「爆発物」で大臣の首狩りをするというのですから、小西氏に哀れすら感じます。

これが民間企業なら問題にすらならなかったでしょう。
というか、まともな民間会社だったらありえません。
親会社に説明に行った者が、そこの幹部の悪口を書いただけのメモを外部に漏らすんですからね。
ところがそれを仰々しく「行政文書であるゾ」と銘打って出してくれば、へへぇ、お上の言うことかと国民が思うと考えているようです。
小西氏は、日本人の官高民低意識につけ込んだのです。ああ、イヤダ。

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小西ひろゆき (参議院議員)さんはTwitter

「小西文書」には、平成27年(8年も前ですぜ)に磯崎補佐官に総務省流通行政局長と放送政策課長がレクチャー(大臣レク) したことがメモされています。
この中で、高市氏が登場するのはわずか4カ所です。

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〇がついているのが高市氏の発言のようですが、「放送事業者の番組全体で見る」とはどういうことか、「政治的公平性の確保について、これを判断するのは誰?」という質問をしているようです。
たぶん正式な議事録では前後の文脈があり、質問ももっと長かったはずですが、たったこれだけです。
直接放送法についての高市氏の意見は記載されていません。

しかも正確さとはほど遠く、誰それが「こう言った」ということを仲間うちに伝える目的で政策したメモすぎません。
私は農水省との会議に出たことがありますが、官庁は事前に細かな資料を揃え、会議の発言も詳細に議事録で取っています。
これは所属セクションに持ち帰って、報告するための資料にするためです。

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小西ひろゆき (参議院議員)さんはTwitter

そしてこの1次報告書は一般公開はされません。
次回の会議の時に、セクションの責任者がチェックして、さらに参加者に回覧し確認してから正式な議事録となります。
今回の「小西文書」なるものは、単に誰それがこういうのを聞いたていどのことを書き記したペーパーていどで「行政メモ」です。
それも書いた者の主観が濃厚に入ったものです。
たとえばこの部分。

「礒崎補佐官は官邸内で影響力はない(長谷川補佐官は影響力あるとの言)。... 今回の話は変なヤクザに絡まれたって話ではないか」

おいおい、いくら直属ではないとはいえ、首相補佐官を「官邸内では影響力がない」という噂を書き、さらには磯崎氏を「ヤクザ」呼ばわりしたうえで、「絡まれた」とまで書いています。
ここまで品性に欠けることを正式な行政文書で書けるはずがなく(まちがいなく所属長が削除します)、行政メモであっても書いた者の「お仲間」に配ったような私的メモの類です。
仮にこのような特定の人物をヤクザ呼ばわりした文書を、そのまま官邸も読む文書にして配ったら、この書いた人物は左遷ていどでは済まないはずです。
こんなジャンク文書を使って、「小西文書」=「行政文書」=真実という短絡の三段論法で、高市氏の首を獲ろうとしています。
図々しくはありませんか。

もちろん文書には、開示義務があります。
正式な開示請求があれば同法第5条「行政文書の開示義務」に則って開示されることもあります。
今回、小西氏がどこの誰から手に入れたのか知りませんが(特定されています)、開示請求によらない文書の入手ですから、小西氏とそれを漏洩した官僚は違法性を問われねばなりません。

メモとはいえ、自分らで「行政文書は真実だ」と言っているのですから、相応の罰を受けてもらいましょう。

 ● 懲戒処分の指針について
(13) 公文書の不適正な取扱い
   ア 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。
懲戒処分の指針について (jinji.go.jp)

立憲はこの漏洩を「公益通報」だとしており、小西氏は漏洩した官僚は「真の英雄だ」とまで言っています。

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立憲・小西氏の資料、与党が配布認めず 質疑取りやめ午後に再協議へ [放送法めぐる内部文書問題]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

「安倍政権下で、安倍総理や高市大臣の違法行為を告発した総務省職員は、国家公務員の鏡であり、真の英雄です」
J-CAST

このようなハンパなメモを「公益通報」とするかどうかは、後の判断にお任せしますが、普通の民間企業なら即刻アウトです。
なぜなら、前述したようにこの磯崎補佐官の会議に出席した参加者全員が閲覧して、内容に対して確認がとれて初めて共有化された行政文書である議事録となるからです。
このような主観的な私的メモに、特定の人物を貶めるようなことが記されており、それを決済を仰がずに野党に手渡して倒閣スキャンダルとして漏洩した場合、書いた者は企業から訴追されるかもしれません。

日本の官僚の中には、文科省次官まで行った前川喜平や経産省の反原発運動家の古賀茂明のようなものか大勢います。
彼らが自分のメモ書きを行政文書だ、これは公益通報だといって、野党に手渡したらどうでしょうか。
役人は自分の書いた私的メモ一本で、大臣の首を獲れて政権に打撃を与えられることになりはしませんか。
たまったもんじゃありません。

 

2023年3月12日 (日)

日曜写真館 手折られて恋の椿となりにけり

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ころもがへ椿は花の紬かな  舎羅

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ふるさとの山は麗し藪椿 八木高穂

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翼なき鳥にも似たる椿かな マブソン

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青眼椿落ちて椿のほかはみなぶるー 小宅容義

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たかが椿の下を通るに身構ふる 林 朋子

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一はるの花を持ける椿かな 鈴木道彦

 

 

2023年3月11日 (土)

トランプのウクライナ「暴言」について

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トランプが大統領になったらウクライナ支援を真っ先に止めると言ったので話題になっています。
共和党大会で、こんなことを言ったらしいですね。

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「アメリカ・ファースト」を強調するトランプ前大統領が演説を行い、大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止するなどと述べ、自身への支持を訴えました。
 トランプ前大統領:「ジョー・バイデンをホワイトハウスから追い出し、これを最後に、アメリカを悪党どもから解放するつもりだ」
 トランプ前大統領は4日、共和党保守派による大規模イベントの演説で大統領への返り咲きに自信を示し、そうなれば、最優先でウクライナ支援を止めると表明しました。
 メキシコ国境の強化なども掲げ、「アメリカ第一主義」の復活を目指す姿勢を印象付けています。 「アメリカ・ファースト」を強調するトランプ前大統領が演説を行い、大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止するなどと述べ、自身への支持を訴えました。
 トランプ前大統領:「ジョー・バイデンをホワイトハウスから追い出し、これを最後に、アメリカを悪党どもから解放するつもりだ」
 トランプ前大統領は4日、共和党保守派による大規模イベントの演説で大統領への返り咲きに自信を示し、そうなれば、最優先でウクライナ支援を止めると表明しました。
 メキシコ国境の強化なども掲げ、「アメリカ第一主義」の復活を目指す姿勢を印象付けています」
(テレ朝3月5日)
トランプ氏「最優先でウクライナ支援停止する」 大統領への返り咲きに自信 (tv-asahi.co.jp)

さっそく保守界隈のみなさんから、またまたトランプダメ論が噴出しています。
トランプはプーチンとディールして手打ちするつもりだ、白旗上げて交渉しろという橋下徹と一緒じゃないかというわけです。
そうですかね、私はそうも思わないけど。

このトランプというヘンな政治家は、いいところでもあるし悪いところもありますが、特徴的なのは増幅して発信することです。
分かりやすくはしょって、口汚く、しかも人一倍デカイ声で芝居ッ気たっぷりに言ってしまうのです。

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時事

一言えばいいところを十言う。
大のプロレス好きで、実際に関わっていました。似合いすぎてコワイ。大統領より似合っているくらい。

うまくはまると、国民大衆の欲するツボをピタリと押さえますし、失敗すると例の米国議会占拠事件のように凶事の引き金を引いてしまったりします。
彼を言葉に慎みがなく、下品で大統領としての威厳に欠けるという評判は、支持派、反対派共に大勢います。
大統領だった時は、ボルトン補佐官とポンペオ国務長官、マティス国防長官が補佐してくれましたが、いまはひとり荒野に吠える野人です。

ではなぜ、こうもあえてヒールめたいたしゃべり方をするでしょうか。
会った人たちは、トランプは下馬評とは違って、よく他人のいうことに耳を傾けるタイプだと評しています。

おそらくこの言い方は、トランプが言葉遣いと礼儀作法にうるさいエスタブリッシュメントに向けてしゃべっていないからです。
彼が語りかけているのは、東部のアイビーリーグを出たボタンダウンの似合う知識階級ではなく、すりきれたジーンズを履き潰し、爪の間の機械脂が抜けないような労働者階級であり、ダイナーでチリを食う商工業者やザラザラの手をした農民なのです。
だから、トランプの発言は常に芝居っけたっぷりにデフォルメされており、極端に聞こえます。

中層下層階級は、戦争などしたくないのです。
真っ先に駆り出されて死ぬのは自分で、戦争のコストを税金で支払うのも自分達だからです。

思えば、米国外交は失敗続きでした。
米国のトラウマとなったベトナム以降、米国はしなくていい戦争をどれだけしてきたことか。
そしてことごとく「失敗」しています。
イラク戦争とその後の安定化政策のために、約5千人の米兵が戦死し、M1戦車すら与えたイラク軍は、いまや丸々イランの手に落ちようとしています。

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イラク戦争とは?原因や目的などをわかりやすく解説 | 世界雑学ノート (world-note.com)

20年近いアフガニスタンでの治安維持作戦と国家再建計画は、無残なまでに失敗し、追い出されるようにして米国はアフガンを去りました。
下の写真をご覧ください。これは米軍撤退直後の7月初めに撮られたものですが、そこかしこに車両は散乱し、食料や備品も置き去りにして米軍は「夜逃げ撤退」をしてしまいました。
この撤退直後、包囲していたタリバンが素早くこの基地を接収し、いまは彼らの軍事拠点になってしまいました。
これでは米国の威信もへったくれもありません。
いくらバイデンが「類まれな勝利」と言い募っても、ただの敗走にすぎません。

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車放置、食料散乱…米軍ひっそり撤収 アフガン・バグラム空軍基地

リビアでの政権交代や、シリアでのゲリラ戦の関与も失敗しました。
そしてこの間にアジアは手薄になり、南シナ海全域を中国は事実上の領土・領海としてしまいました。

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JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

「今回フィリピンが公開した写真以外に、米シンクタンクや米国防総省なども南沙諸島の中国人工島建設状況に関する空中写真などを断続的に公表している。
それらの写真情報によると、かねてより明らかになっていた3つの人工島に設置された3000メートル級滑走路の周辺には、格納整備施設をはじめとする建造物などが着々と整備され、航空基地が完成しつつある。それらの主要人工島だけでなく7つの人工島すべてにさまざまなレーダー設備や通信施設が設置されており、南沙諸島に点在した人工島をネットワーク化した中国人民解放軍の前進軍事拠点(南沙海洋基地群)が完成するのは間近と考えられる」
(木村淳史2018年2月15日)
日米の無策をよそに、中国が南シナ海をほぼ掌握 中国の人工島基地、北朝鮮問題に隠れてますます充実(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

この20年間、莫大な予算と多くの米国人の生命が失われましたが、そこで勝ち得たものはあまりに少なく、あまりに大きな犠牲でした。
これを起こしたのは、民主党、共和党の区別なく、「言葉遣いに慎重かつ上品なエスタプリッシュメント」たちでした。
トランプの政策は、民主党か共和党を問わず、彼らに対する根深い不信感から出ています。
トランプは共和党内にいながら、実は「トランプ党」なのです。
そのことを隠そうともしないし、共和党主流は一貫して彼の敵でした。

20230311-032704

時事

彼はエスタブリッシュメントたちに対して、冗談じゃない、もうお前らの犠牲になるのはこりごりだ、という声を叩きつけました。
あんた方は上品なことを言っているだけだが、戦うのはオレたちだ、戦争をする前になぜ同じ米国のパワーを使って止めることを考えなかったのか、と言っています。
州兵までアフガンに突っ込むようでは世も末だ、こんなくだらない戦争をするより国内がひどいことになっているのに、なぜ眼を向けないと彼は言います。

戦争や大きな政府の福祉領政策のために税金は高くなる一方だから減税を実施しろ、連邦政府は大きくなりすぎて硬直しているので規制緩和をしろ、外国人不法移民に職を取られないように国境警備を強化しろ、暖炭素で高騰しているエネルギー価格を安くするために炭鉱を復活させろ、といった政策はことごとくエスタブリッシュメントから嫌われました。

トランプが心を砕いたのは、戦争をすることではなく、戦争を未然に防ぐことでした。
戦争をさせないことこそが、トランプの真骨頂なのです。

もっとも成功した例は、イスラエルとイスラム教スンニ派のアラブ諸国との国交正常化に向けた「アブラハム合意」の枠組みを作ったことでした。
この合意によって、イランは完全に包囲されました。
イランと戦争をして解決するのではなく、テロの輸出をさせない仕組みが出来上がったのです。
また中国に対しては軍事的圧力ばかりではなく、むしろ中国への経済依存から米国を切り離す政策を打ち出しました。
中国に逃げていた米国に工場を持ち帰ることで、雇用を増やしていきました。

また、50年以上も手つかずのフローズン・コンフリクト(凍った紛争)となっていた朝鮮に対して激烈な軍事敵圧力をかけ続けました
日本海に3隻の空母を並べて見せたり、シールズの斬首チームを送り込んだりしたのもこの頃です。

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米空母3隻が集結、日本海で軍事演習 - CNN.co.jp

その一方で大胆な対話の呼びかけて正恩をおびき寄せ、2回の直接会談で事実上の核凍結にまで持ち込みました。

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トランプ大統領、金正恩氏が重篤との報道「正しくないと聞いている」 - Bloomberg

これなどまるで大仕掛けなイリージョンを見るような鮮やかな手際でした。
イラン、北朝鮮外交はまさに米国外交のレガシーでした。
バイデンには逆立ちしてもむりです。

もし2期目がトランプにあったならと考えてみます。
たぶんトランプはプーチンに戦争をさせなかったはずです。
プーチンが侵攻に踏み切ったのはバイデンの、「ロシアと戦争になるじゃないか」という一言があったからでした。
これでプーチンは、米国がウクライナ侵攻しようと軍事介入はしないと見込んだのです。

トランプなら、本気で戦争をする気なのかと思えるほど、対ロシアへの軍事的プレッシャーを強めたでしょう。
限定戦争なら受けて立つというくらい吠えたかもしれません。
そしてそれ以上にNATOに対しては、口汚いばかりに軍備の増強を要求し、ウクライナが侵略されたら次はお前らだとメルケルに言ったかもしれません。

民主党のウクライナ支援は間違っているとは思いませんし、増強することがあっても削減などすべきではないのはいうまでもないことです。
しかしそれ以上に、「戦争をさせない」ということに、米国は最大限の圧力をかけてもよかったのです。

トランプの言いぐさは常に逆説的です。
一定の変数の中で発言しますから、予測することが困難です。
またいまのようなひとりの野人としてのトランプではなく、チームトランプとでもいうべきボンペオが入って脇を締めた場合には、そうとうに違った発言と行動になるはずです。
そういえば、ルトワックはトランプのブレぶりを心配しており、むしろボンペオを推していましたね。
ただし、「戦争をさせない」ことを最重要視する基本的考えは不動なはずです。
そのように考えると、少しはトランプが見えてくるのではないでしょうか。

 

 

2023年3月10日 (金)

日本は、韓国国防部を見習え(逆説)

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ほー、というカンジですが、韓国国防部が、今回の韓国提案と哨戒機レーダー照射問題は別だと言い出しました。

「韓国国防部は、日帝強占期(日本の植民地時代)の強制動員をめぐる政府の解決策の後続措置と関連し、「哨戒機に関連する案件は強制徴用問題と関係のないもの」だとし、「望ましい解決策を模索する必要がある」と述べた。哨戒機をめぐる対立は2018年12月、日本の哨戒機の低空飛行に韓国海軍が対応する過程で生じた軋轢を指す。
 国防部のチョン・ハギュ報道官は7日の定例記者会見で、政府の強制徴用解決策の発表後、国防分野における韓日懸案の解消の見通しに関する質問に「国防部も韓日および韓米安全保障協力の強化に向けた諸事項を検討していく」と答えた。チョン報道官は「哨戒機に関連する案件は強制徴用問題と関係のないもの」だとしたうえで、「軍の立場はこれまでと変わっておらず、今後望ましい解決策を模索する必要がある」と述べた」
(ハンギョレ3月6日)
韓国国防部「韓日哨戒機関連案件は強制徴用問題とは無関係」 : 政治•社会 : hankyoreh japan (hani.co.kr)

まことに原則的なことではあります。
「ホワイト国に戻す」という経産省などは是非ツメの垢を煎じて呑むべきでありましょう。
まったくそのとおり、我が国の一部官僚の先ッ走りとはエライ違いで、韓国が正しい。パチパチ。

ところで「ホワイト国に戻す」という、自称「徴用工」訴訟の「現金化」と、純然たる安全保障上の問題である輸出管理規制はまったく別次元のことはいうまでもありません。
ならず者国家の核開発や弾道ミサイル開発に、我が国の物資や部品などが利用されてはならないことは、特に説明する必要もないことであって、それをルーズにしていた韓国は「ホワイト国」という優遇枠から脱落して当然のことなのです。
それを強引に自称「徴用工」問題と結びつけてしまい、やがては軍事条約であるGSOMIAやレーダー照射事件にまでエスカレーションラダーをひとりで駆け上ったのは、ひとえに韓国の側です。

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JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

ムン・ジェイン政権が目指したのは、自称「徴用工」判決による日韓基本条約(日韓請求権協定)の一方的廃棄です。
これは今の日韓関係そのものの基軸的条約だっただけに、歴代の左派政権も手をつけられませんでした。
それを打ち破ったのがムン・ジェインでした。
このムンジェインという政治家が他の極左政治家と違うのは、たとえば後継者である共に民主党のイ・ジェミョンと違って、ただの反日ではなかったことです。
ムンは戦略性を持っていたのです。
それがわからないと、なぜ自称「徴用工」問題をぶつけてきたのか意味が理解できなくなります。

韓国最高裁判決を読むとわかるように、日韓基本条約を廃棄するために持ち出したロジックは、日本の植民地支配こそが諸悪の根源であり、それに対する個人賠償の請求権は残っているとしたことです。
この論理は、後に現実に徴用工裁判判決を根拠とした原告団の差し押さえ判決が出るに及んで、自称「徴用工」のみならず日本統治時代に惹起したすべてのことに対して、韓国民は賠償を求める権利(求償権)を持つという意味だとわかりました。

この論理を敷衍すれば、当時のいかなる企業活動も悪の権化である以上、日本企業は無条件に賠償に応じねばならないことになります。
実際に原告団は、当時の在朝鮮日本企業をすべて洗い出して賠償運動をするつもりのようです。
この場合、日本企業と日本政府は天文学的賠償金を課せられることになります。

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https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20180301...

ムン政権は、独立記念日を1919年4月11日に変更しました。
実は、韓国内でこの独立記念日論争はえんえと続けられてきていて、いまさら新しいものではありません。
ざっくり言うと、韓国内保守派は1948年8月15日を「建国記念日」としています。
その理由は、常識的に見て韓国が米国によって 「独立を与えられた」のが、この年月日以外考えられないからです。

一方、左派はそのへんが曖昧でした。
キム・テジュン(金大中)は1998年に、8月15日を「建国50年」と呼んでいますし、ムンジェインの師匠だったノムヒョン(廬武鉉)もまた2003年にこの日を独立した年と認識する発言をしています。
この前例を初めて破った大統領がムンだということになります。

ムンは、1919年には朝鮮半島は分断されていなかったが、1948年には既に南北で別個に政府が作られていた、したがって1948年は分断の象徴的年だと考えます。
分断を固定化したのは1950年の北朝鮮軍の侵攻ではないかと言いたいところですか、ムンたち親北派らにとって朝鮮戦争などは「ない」も同然なのです。
ですから、1919年3月1日の独立運動とそれに続く4月11日の「臨時政府」樹立は、輝かしい南北を問わない朝鮮人民の金字塔ということになります。

つまり朝鮮民族は決して米国やソ連にによって独立を与えられた属国ではなく、1919年に「臨時政府」を持った独立国であり続け、1948年に成立した韓国政府はその後継政権にすぎないといいたいわけです。
したがって「臨時政府」を主権国として見るなら、日本統治時代の経済活動、行政活動の一切は違法であるということになります。
これこそが自称「徴用工」判決を支える思想です。
これはムンが目指した「高麗連邦」へ向けた下地づくりの一環だったのです。

ですから日本側は包括的に解決してはならず、ひとつひとつ切り分けて解決せねばなりません。
すべての補償は終了しており、これは不可逆的であり、これが国際法なのだ、という日本の立場は1センチも動かしてはなりません。
そうしないとムンが仕掛けた「日韓請求権協定の否定」という罠を、こちら側が認めてしまうことになります。

そのためにはまず、自称「徴用工」問題においては、財団を作るのはそちらの勝手だという立場を守らねばなりません。
韓国司法がどのような判決を出そうと、我が国は関知しない、勝手にやれという基本姿勢です。
外国の判決に我が国は従う義務はありませんから、二度ととばっちりを日本に持ってこないように、韓国国内法でしっかり管理しろと言い渡すべきです。
そして後にまたムン政権のような極左政権が登場しようと恣意的に改変ができないように、日本企業へ支払いを求める求償権を無効化するべきです。
これを今回の解決合意で確認し合わないと、自称「徴用工」問題は解決にはなりません。

ちなみに林外相は、日本企業の寄付を容認するとか。
もはや害相だね、この馬鹿。
日本に対する求償権を完全消滅させるのが、今回のキモだろうが。

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日経

「林芳正外相は6日、韓国政府が発表した元徴用工問題の解決策について「非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すものとして評価する」と述べた。日本企業による自発的な寄付活動は「政府は特段の立場を取らない」と語り、容認する姿勢を示した。」
(日経3月6日)
林外相、日本企業の自発的寄付を容認 元徴用工問題 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

次に「ホワイト国」ですが、戻す戻さないはこれも自称「徴用工」問題とはまったく別次元ですから、いま検討すべきことではありません。
韓国が誤りなく輸出管理規制をかけていることが、万人の眼にも明らかになったと思われた時点で協議すればよいことです。
それをお先走りの経産省官僚が「戻してもよい」というようなことを言い出したからおかしくなりました。
韓国は不正な横流しがあることを知って隠蔽していました。
北朝鮮やイランに6フッ化ウラン製造のためフッ化水素を横流していたのです。

実は以前から、横流し問題は韓国国内でも問題にされていました。

「3年でおよそ3倍…生物・化学兵器系列が70件で最多
ミサイルの弾頭加工やウラン濃縮装置などに転用できる韓国産の戦略物資が、このところ大量に違法輸出されていることが16日に判明した。大量破壊兵器(WMD)製造にも使える韓国の戦略物資が、第三国を経由して北朝鮮やイランなどに持ち込まれた可能性もある。
保守系野党「大韓愛国党」の趙源震(チョ・ウォンジン)議員が産業通商資源部(省に相当)から提出を受けた「戦略物資無許可輸出摘発現況」によると、2015年から今年3月までに政府の承認なく韓国の国内業者が生産・違法輸出した戦略物資は156件に上った。
2015年は14件だった摘発件数は、昨年は41件と3倍近くに増えた。さらに今年は、3月までの摘発件数だけでも31件に上り、急増する様子を見せている。
戦略物資とは、WMDやその運搬手段に転用できる物品や技術のこと。昨年5月には、ウラン濃縮などに使える韓国産の遠心分離器がロシア、インドネシアなどに違法輸出された。
17年10月には原子炉の炉心に使われるジルコニウムが中国へ、また生物・化学兵器(BC兵器)の原料となる「ジイソプロピルアミン」がマレーシアなどへ輸出された」
(朝鮮日報2019年5月17日)

韓国企業は、ミサイルの弾頭製造やウラン濃縮装置などの軍事転用するための物資を第3国経由で横流ししていました。
これが甘い韓国当局の摘発でも、2015年からら2019年3月まで156件あったというのだから呆れます。
おそらくこんなものは氷山の一角でしょう。
こんな杜撰な管理をしていて、ホワイト国にしろとはどの口で言えるのか。
だから日本は輸出管理規制を強化したのです。
ところがあろうことか、日本側からホワイト国復帰を前提とした協議をしてもよいと言い出したと伝えられたのでおかしくなりました。

「[東京 6日 ロイター] - 経済産業省は6日、日本が韓国向けの輸出管理を強化した2019年7月の措置について、それ以前の状態に戻すため日韓の協議を速やかに行っていくと発表した。韓国政府が関連協議中は世界貿易機関(WTO)紛争解決手続きを中断するとの発表を受け、政策対話を再開する環境が整ったと判断した。
両国は輸出管理についての政策対話を20年3月を最後に実施してこなかったが、経産省幹部によると「近く開催する」という。開催時期や場所は未定。今後、韓国側との協議を進め輸出管理の実効性について確認するとともに、韓国側の姿勢を見極めていくとしている」
(ロイター3月6日)
輸出管理で速やかに日韓協議、強化前の状態に戻すため=経産省 | Reuters

私はこれを読んで、思わずヘッと笑ってしまいました。
おいおい、これではこちらから輸出管理規制強化が自称「徴用工」問題に対する報復だと認めたようなものだからです。
それも韓国がWTO提訴を降ろすことと、輸出管理規制問題がまるでバーターのように扱われていました。
自分の国のこれまで言ってきた論拠を、自分で否定してどうする、バカじゃないか、経産省。

これについて青山議員が自民党外交部会で経産省官僚に噛みついています。
青山氏のブログから。

「▼次に、ホワイト国の問題 ( 日本から韓国に輸出するときに審査で優遇する「ホワイト国」から韓国を西暦2019年7月に除外したこと ) について経産省が答弁しました。
 そのうち重要な点は以下の通りです。
( 1 ) ホワイト国は、労働者の問題とまったく別次元であり関係が無いということを、青山議員らの指摘通りに、明言する。
( 2 ) したがって、ホワイト国に戻すとはまったく決まっていない。
 韓国がWTOへの提訴を「中断」すると表明するなどして、ようやく日韓で協議する環境が整っただけだ。
( 3 ) 協議の結果は、一切、予断していない。韓国の姿勢は依然、必ずしも充分ではない。協議を行って、韓国がおこなう輸出管理の実効性を確認してから、判断する。
( 4 ) この紙を、外交部会にも経産部会にも諮らず、すなわち党に諮らずに、経済産業省記者クラブで発表してしまったことは、深くお詫びする。
( 5 ) この紙の文中にある「 ( 韓国をホワイト国から外した ) 2019年7月以前の状態に戻すべく」という表現が誤解を招いたことをお詫びする。
 ホワイト国に戻すとはまったく決まっていない。
 韓国の輸出管理に問題が無くなったと確認しない限り、ホワイト国には戻さない」
( ※ 気持ちが荒れているひとほど、読んでほしいです )  外交部会で政府から何を引き出したか  ★推敲しました|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road (shiaoyama.com)

青山氏の見立てどおり、「経産省が、韓国をホワイト国に戻す方向であったことは間違いない」と思われます。
彼らは岸田氏を忖度したのか、今回の韓国解決案を丸飲みし、これに輸出管理規制は元に戻し、外交関係も復旧させ、そしてレーダー照射事件についてはうやむやにして、ワンパッケージで包括的解決と謳い上げたかったのでしょう。

岸田氏は、2月末には韓国案を受け入れる立場に決めていたとされます。

「最終的に韓国政府が提示した解決策の案は韓国最高裁で敗訴した日本企業の賠償金相当額を韓国の財団が支払う▽韓国の原告の一部が求める日本政府による新たなおわびは表明しない▽歴代内閣の歴史認識を引き継ぐ意向を確認するにとどめる-というものだった。
2月28日、韓国政府案を確認した首相は「韓国側が国内を説得してこの案を発表するのであれば日本としても受け入れられる。(日韓関係は)一歩踏み出せる」と周囲に語った。
徴用工訴訟問題に一定の区切りが付いた瞬間だった。6日後の3月6日、韓国政府が正式に発表した」
(産経3月9日)
徴用工、2月末に韓国案 首相「慎重にやれ」(産経新聞) - Yahoo!ニュース 

岸田氏が経産省に具体的指示をだしたかどうかはわかりませんが、まったく無関係ではありえないはずです。

残るはレーダー照射問題ですが、浜田防衛相はこんなことを言い始めています。

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「浜田靖一防衛相は7日の記者会見で、韓国政府が発表した元徴用工問題の解決策について「日韓関係を健全な関係に戻すものだ」と評価した。韓国軍による海上自衛隊機への火器管制レーダー照射問題を念頭に、「日韓防衛当局間には課題があるが、北朝鮮の核・ミサイルを巡る対応など韓国との連携はますます重要だ」と強調した」
(時事3月7日)
浜田防衛相「韓国との連携重要」:iJAMPポータル (jiji.com) 

意味不明ですが、「課題はあるが連携を深める」という意味でしょう。
こういう対応をうやむやにする、といいます。
それに対して、韓国国防部のスッキリしたことよ、「徴用工」とは関係ないって、さ。
これが正しいのです。
韓国が言うようにまったく無関係なのですから、自衛艦旗を掲げての韓国への入港を禁じているような国との「連携」もなにもあったものではありません。

 

 

 

 

2023年3月 9日 (木)

立憲、モリカケの再来にはならんぞ

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顔も見たくはないという俗物に、立憲の小西氏と安住氏の御両名がいます。
彼らのおかげでどれだけ国会の品位が下がったことか、考えただけでうんざりします。
私がすっかり内政嫌いになってしまったのは、あの3年間に渡ったモリカケサクラの時期でした。
政治ってスキャンダル探しのことなの、週刊文春の発売日を待って国会追及するもんなの、いまそれこそが議論すべきことなの、やること他にないの、とまぁこんな気分でした。

2020年当時、毎日新聞はこう書いています。

「安倍晋三首相を巡っては、学校法人「森友学園」(大阪市)と「加計学園」(岡山市)、「桜を見る会」などの疑惑が浮上してきた。説明が尽くされたとは言いがたく、辞任で真相究明がさらに遠のく恐れがある。問題を追及してきた関係者からは、「疑惑にふたをしたまま逃げるのか」などと怒りや戸惑いの声が上がった」
(毎日2020年8月28日)
モリカケ、桜…「疑惑にふたして逃げるのか」「うやむやのまま」追及の関係者憤り | 毎日新聞 (mainichi.jp)

安倍氏を暗殺されて、彼らは最大のお得意さんを失いました。
安部氏暗殺事件当日の報道でさえ、朝日はこう書きます。

「森友・加計、桜…「負の遺産」真相不明のまま 安倍元首相が死亡
第2次安倍政権では、森友学園をめぐる公文書改ざんや加計学園問題、「桜を見る会」問題など負の側面も問われた」
(朝日2022年7月20日)
森友・加計、桜…「負の遺産」真相不明のまま 安倍元首相が死亡 [参院選2022] [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

立憲が勘違いするはずです。
アベという絶対悪を叩いていさえすれば「政治」をやった気になれる、朝日、毎日、東京などのメディアの覚えもメデタイ。

当時、メディアはアベ政権打倒で統一戦線を組んでいましたから、立憲の豆鉄砲でも「疑惑は深まるばかりです」「追及から逃げるのか」と書けて便利だったのでしょう。

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ファクトチェック・小西ひろゆき! 立憲民主党の議員は、なぜ平然と嘘をつくのか? | おとな研究所 (otonaken.com)

その結果、国会は茶番ともいえない空疎な場に化しました。
「戦争を二度と起こすな」と言っているリベラルのみなさんはお忘れのようですが、日本が戦争に転がり込むひとつの原因は政党政治の堕落にあります。
小沢一郎が作った小選挙区・二大政党制の最大の欠陥は、優秀な野党が存在しないとこの制度は回らないことです。
なにせ選択肢が二つしかないですからね。
するとどうなるかといえば、ともかく対立政党を叩けばそれが自分の得点となるという矮小なことになったのです。
手段は高尚なことでなくてもけっこう、いやむしろ国民に分かりやすくするには、むしろ週刊誌スキャンダルのほうがよいということになったのでした。

戦前では、現代の二大政党制のモデルとなった大正末期の普通選挙法以降、政友会と、民政党(当初は憲政会)という二つの大政党が、交互に政権を担当する状況が成立していました。
しかしこれが崩壊するのが、共にスキャンダル追求を武器に使い、国民の失望を買ったためです。

井上寿一『政友会と民政党 戦前の二大政党制に何を学ぶか』 によれば、政友会の田中義一内閣が不戦条約を結んだ際には、民政党の側が「人民の名において」という条約の文言を、天皇の大権干犯だとして揚げ足を取って、結局軍部の独走を招くことになります。
この堕落した政党政治が、国会不信を招き、戦争を招きよせたともいえるでしょう。

このスキャンダル政治はひたすら与党の、特に安倍氏に近い立場の政治家を標的とします。
立憲は、いま日本が直面している中国の脅威やデフレ脱却、増税、日韓関係などは見向きもせずに、ひたすらスキャンダルを追います。
政策を考える必要がないのですから、楽なもんです。
こういう体質のまま、間違って政権をとると、かつての民主党政権のようになります。
真面目に政策を考えてこなかったために、見事に全部失敗。
国民は二度と野党に政権を与えない、という教訓を得たのでした。

しかしなんの総括も反省もない彼らは、同じことを繰り返します。
どうでもいいようなことを針小棒大に叫び、火のないところでも、火が燃えていると百回叫べば、同じ体質のメディアは「疑惑は深まるばかり」とやんやの喝采を送ってくれるのです。
かくて野党の政策立案能力はカラッポとなり、証拠があろうとなかろうと、どうでもよいささいなことであろうと、まったく意に介さない「野党第1党」と称する愚者の群れが誕生したのです。
こんなことをこんなに長いことやってりゃ、そりゃバカになるよね。
昭和初期の政党政治の腐敗そのままの光景です。
彼らはこの愚かさに気がついた国民民主党や維新の会を「自民補完勢力」と罵りましたが、己の度し難い愚かさこそが自民党を支えていることに気がついているのでしょうか。

今回、立憲が集中砲火を浴びせているのは、高市経済安全保障相です。
理由は簡単。高市氏がもっとも正統な安倍氏の後継者と目されているからです。
ですから、高市首相誕生をなんとしてでも妨害したいメディアと立憲の共闘が成立しました。

立憲の国対委員長の安住は、記者団に向かってこう言ったそうです。

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立憲民主「安住淳」は国会出禁だ 新聞“くず”批評、表現の自由で政権追及との矛盾 | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)

「総務省が7日、放送法の「政治的公平」の解釈に関する文書を行政文書だと認めたことで、最初に文書を入手、公開した立憲民主党は沸き返った。少子化対策など政策論戦で岸田文雄政権を攻めあぐねていたところに、格好の追及材料をつかんだ格好で、まずは文書を「捏造(ねつぞう)」と主張する高市早苗経済安全保障担当相に照準を合わせ、政権を揺さぶりたい考えだ。
「安倍晋三政権の負の遺産の一つが報道介入だった。特定の政治家や政党が解釈をねじ曲げたことには徹底して戦っていきたい」
立民の安住淳国対委員長は7日、国会内で記者団を前にそう宣言。「捏造と言い張る高市氏は、事実とわかった以上、責任を取るべきだ」と語気を強めた」
(産経3月7日)
総務省文書、沸き立つ立民 「安倍政権の負の遺産」 - 産経ニュース (sankei.com)

「安倍晋三政権の負の遺産」ですか、死せる孔明、生ける仲達を走らす、です。
総務省の「小西文書」とやらは、8年も前のことで、この時期に出てくるのは統一地方選前に自民党に打撃を与えたい下心丸出しです。
しかもその文書は、確かに総務省の行政文書ではあるものの、80ページもありながら、ほとんど内容ナッシング。
しかも高市氏に関する言及があるのは、わずか4ページ、それも「高市氏が安倍氏に電話したようだ」、あるいは「総理か秘書官に電話があったようだ」という役人の憶測です。
日時不明、記載者不明、内容は伝聞、こんなものになんの価値があるのですか。
ただの役人のメモにすぎません。

本当に立憲が言うように「報道の自由」を権力が奪ったなら、とっくに報道特集やサンモニなど打ち切りになっています。
ここはロシアでも中国でもないのですよ、一緒にしなさんな。
モリカケで騒いだような「忖度」でもありません。
もちろん汚職でもないし、法律違反でもない。
それとも政府内部の政治家は、メディアに意見を持ってはいけないとでも。
つまり、なんでもないことを、大声で問題視しているだけのことです。

高市氏が言うように憶測で書かれているために内容は不正確で検証不能、いったいこんなクズ文書を掲げて立憲はなにをしたいのでしょうか。

国会とはいわば食堂街みたいなものです。
古くて味も落ちている自民党のような老舗食堂もありますが、それでも潰れないのは、横の野党第1党屋が、隣の悪口しか言わないからです。
自分の店のオリジナルなメニューもなく、工夫すらせずに、悪口だけの商法でどこまで続けるんでしょうかね。

2023年3月 8日 (水)

岸田さん、筋を通しなさい

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いわゆる自称「徴用工」訴訟問題に韓国が解決案を出してきました。
自分で勝手に騒いだあげく自分から袋小路に飛び込み、現金化もできず、謝罪ももらえず、日韓関係を史上最悪の氷河期にしたのですから、勝手にやれ、と突き放したくなります。
困ったのは、岸田政権がこの韓国案に前のめりになってしまっていることです。

まずは、韓国政府解決案の要旨を見ておきましょう。
<韓国政府の徴用賠償問題解決策全文> | 聯合ニュース (yna.co.kr)

①韓国大法院による2018年の3件の確定判決の原告に対して、判決金と遅延利子を支払う。
②同財団は強制動員被害者の苦痛と痛みを記憶し、未来世代に発展的に継承していくため、被害者追悼や教育・調査・研究事業などを積極的に推進する。
③財団の財源に関しては、民間の自発的な寄与などを通じて賄い、今後財団の目的事業に関連する可用な財源をさらに拡充していく。
④韓国政府は韓日両国が1998年10月に発表した「21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ共同宣言(金大中・大渕共同宣言)」を発展的に継承する。
⑤政府は最近の厳しい朝鮮半島や地域・国際情勢の中で自由民主主義、市場経済、法治、人権という普遍的価値を共有する最も近い隣人である日本と共に韓日両国の共同利益と地域、世界の平和繁栄のため努力していく。

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ハンギョレ

気がつきましたか、韓国案はまるで「現金化」こそが焦点であるような書き方をしています。
あたかも「現金化」を日本側に求めさえしなければ、万事丸くおさまるかのようです。
いいでしょうか、「現金化」などは韓国の過激な原告訴訟団が、自分で可能かどうかもろくに考えもせずに日本企業からユスリとろうとしたロジックの結末にすぎません。
それにムン政権とその傀儡の大法院が相乗りして(というより初めから絵図を書いていたのは、ムン氏でしょうが)勝訴判決を出したために、二国間紛争にまで進展したのです。

そして本当に「現金化」したなら、わが国は条約違反としてそれなりの厳しい対応をとると警告してきました。
そもそも訴訟団の「現金化」の内容は三菱重工の商標権などですから、誰が買うもんですか、そんなもん。
ジャンク品にミツビシのブランドつけて売るとでも(笑)。

おそらくは初めから訴訟団の目的はそこにはなかったはずです。
日本統治時代に朝鮮半島で経済活動をしていたあらゆる日本企業に対し、「謝罪と賠償」を要求し莫大な「賠償金」をせびりとるのが本来の目的だったはずです。

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韓国政府は6日、日韓の最大の懸案である元徴用…:元徴用工問題の解決策発表:時事ドットコム (jiji.com)

しかし日本側の毅然とした拒否に合って、ムン政権と訴訟団の目論見は全部狂い始めました。
彼らの知る昭和の日本政府なら、ここで早くも与党内部から「大人の解決」を言うものがうごめき始めて、する必要のない妥協をこちら側から言い出したことでしょう。
安部政権となってその悪しき風潮が消滅し、理をもって対応する、安直な妥協はしないという原則に立ち返りました。

この対応に逆上したムン政権は乱れに乱れまくったようです。
そこで無謀なエスカレーションに走ったのです。
自称「徴用工」問題とはまったく別次元の安全保障上の問題にすり替えて、日韓間の唯一の軍事的紐帯であるGSOMIAまで廃棄すると脅迫したり、海自の哨戒機にレーダー照射するなどの愚行に走りました。

こうなるともう話し合いもクソもありませんから、日本はムン政権であるうちは関係を凍結することにしたのです。

日韓関係が氷河期になろうと、痛くもかゆくもなかった、これが日本の本音です。
韓国がこれほど居丈高になっているのは、日本が伝統的に持っていた「朝鮮半島は日本の生命線」という安全保障の根本思想があったからです。
ところが今は、まったく消えたわけではありませんが、9割がた消滅しています。
朝鮮半島が生命線に見えたのは、南下してくるロシア熊を朝鮮半島で食い止める、という戦略を伝統的に日本が持っていたからです。
実際に日露戦争を戦った理由は、ロシアの南下阻止でした。
これは100年前のことではなく、ロシアは現代においても他国を平然と侵略する国家であることはウクライナ戦争で証明されています。

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「ロシア対ウクライナ」地政学から見た紛争の裏側 | ウクライナ侵攻、危機の本質 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

では、今、ロシアが極東方面において朝鮮半島経由で南下することがありえるでしょうか。
100%ないと思います。
ウクライナ戦争で国力のすべてを絞りきったロシア熊には、もはやそんなパワーは残されていないからです。

北朝鮮に対しては、特に韓国の協力などいりません。
必要最小限の弾道ミサイル情報の交換だけで充分です。
むしろムン政権のような親北政権が正恩にすり寄り、レーダー照射などやらかして戦争を挑発するほうがよほど危険です。
日本には既にFOIPと日英同盟とNATOとの連携が控えていますから、いまや韓国など生命線でもなんでもなくなっているのです。

日本が韓国に対して言わねばならないのは、ひとことでいえば「条約を守れ」です。
条約を尊重する、国際法を守れ、そしてそれに背くような自称「徴用工」訴訟を勝訴としたような違法状態を自分で無効化しろ、ということです。

かつて菅さんが会見で簡潔にこう述べています。

「まず国際法上、主権国家は他国の裁判権には服さない。これは決まりですから、そういう中でこの訴訟は却下されるべき、このように考えます。そして、日韓の慰安婦問題については、1965年の日韓請求権協定において、完全かつ最終的に解決済みである。ですから、韓国政府として国際法上違反を是正する、そうした措置を採ることを強く求めたいと思います。
我が国としては、このような判決が出されることは、断じて受け入れることはできません」
(2021年1月8日首相会見)

「主権国は他の国の裁判権に服さない」、そして慰安婦問題は65年の日韓請求権協定で終わっているし、さらにそれは日韓慰安婦合意で裏書きされている、これが日本政府の立場のすべてです。
この日本政府の立場は、なんど蒸し返そうと不変です。

したがって韓国政府が、日本企業へ支払いを求める権利(求償権)を無効化せねば問題解決にはなりません。
今回の解決案なるものにも、このことはまったく触れられておらず、韓国外務省も「最高裁判決を尊重しつつ実質的な解決方法を提示し、過去を記憶する新しい努力を推進する」と言っています。
つまり火種は別な形で温存されたのです。
再び、ムン政権のような親北の極左政権に交代すれば、財団が日本企業に「現金化」を要求することでしょう。

また、「ホワイト国」うんぬんに至っては、今回議題とすること自体がナンセンスです。
貿易上の問題と訴訟はまったく別の次元の問題であって、一緒にして騒いでいるのはそちらの国です。
わが国としては、輸出管理がしっかりと公正になされているか、北やイランに大量破壊兵器の素材を流してはいないかを明確にすることです。
そして、わが国の哨戒機に軍事的挑発をしたこと、自衛艦旗を入港禁止にするなどの不法行為を働いたことを反省することです。
これを同時期にパッケージでだしてきたことを日本側は警戒すべきなのに、同列で解決しようとして韓国の土俵に乗ってしまっています。

ところで、韓国のハンギョレは完敗じゃないかとお怒りのようです。

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聯合

「これには強制動員に対する日本政府の直接の謝罪も、戦犯企業の謝罪と賠償も含まれていない。三菱重工業などの日本の戦犯企業の「損害賠償(慰謝料支払い)責任」を認めた大韓民国最高裁の最終確定判決(2018年10月30日、11月29日)とは接点が全くない」
(ハンギョレ3月6日)
最高裁判決・被害者の苦痛は無視…「日本完勝」もたらした尹政権 : 政治•社会 : hankyoreh japan (hani.co.kr) 

それは韓国大法院判決とは「なんの接点もない」のはむしろ当然です。

●2018年10月30日 韓国大法院判決
a. 原告が請求しているのは未払賃金や補償金ではなく、「強制動員慰謝料請求権」(日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配及び侵略戦争と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権)に基づく慰謝料であること。
【韓国】[立法情報(日本関係)]元徴用工への損害賠償を確定させる大法院判決 (ndl.go.jp)

この大法院判決は、自称「元徴用工」の要求が未払い賃金の清算ていどにすぎなかったことを、「日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配及び侵略戦争と直結した日本企業の反人道的な不法行為」、つまり日本統治全体に対する謝罪と賠償まで間口を拡げてしまいました。
ムン政権と歩調を合わせた歴史問題の政治化です。
ですから大法院判決は、日韓基本条約の否定まで行き着きました。
これは慰安婦問題で当事者の要求からどんどん離れていき、原告の運動を乗っ取って反日暴走していく様によく似ています。
運動団体は解決したくないのです。解決すると終わってしまうからです。
今回も財団から金を受け取ろうとすると、慰安婦財団の時のように運動団体が大騒ぎして取り上げてしまうことでしょう。

日本が「帝国主義の野蛮な韓国支配」を謝罪し、日韓基本条約の改訂まで踏み込まないかぎり、「大法院判決とは接点がない」わけですから、これでは話になりません。
今回、韓国政府が日本に「野蛮な韓国支配を謝罪せよ」なんて要求したら、半永久的に解決は不可能だったはずです。(あたりまえだ)
だからこそ韓国政府は、韓国と日本のメンツがたつように、1998年10月8日に当時の金大中大統領と日本の小渕恵三首相が東京で共同で発表した「韓日共同宣言-21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ」を持ち出して軟着陸させようと思ったのです。

もちろん、永久に日韓が確執しているのがあるべき姿だと信じて疑わないハンギョレは、これについてもこう書いています。

(日韓共同制限は)「過去の直視」と「未来志向」だ。ところが尹錫悦政権は今回の解決策で、「未来志向」を口実として「過去の直視」という絶対的課題を投げ捨てた格好だ。
政府の発表に続き、日本は岸田文雄首相が「過去の談話を継承する」という表現で歴史に対する反省・謝罪を示すものと考えられているだろうが、これは侵略戦争に対する包括的な反省であって、強制動員問題に直接的に言及するものではない。また、日本の歴代政権は「談話の継承」の意思を表明してきたため、今回の問題に対する追加措置だともみなしがたい」
(ハンギョレ前掲)

林外相の「過去の談話を継承する」という発言でさえ、岸田氏はおそらく言葉使いに迷ったのでしょう。
「謝罪と反省」などと言ったら最後、自分が外相時代に結んだ慰安婦合意を覆して再び自称「徴用工」を持ち出したことを問わねばならなくなります。
岸田氏は慰安婦合意の当事者として、韓国政府に言わねばならないのは「歴史問題の再発防止」です。
「未来志向」というのなら、二度と歴史を外交カードとしない、と韓国に言わさなくてはなりません。
裏切られた外相として、2015年の慰安不合意で「最終的かつ不可逆的に」という一項が入っていることを思い出させてやるべきです。
それができて、初めて「過去の談話を継承する」と言ってよいのです。

「日本政府としては、共同宣言にある「小渕総理大臣は、今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた」という一文を、何らかの形で引用する形に持っていきたいのだろう。ただ、自民党内の一部には、日韓共同宣言に強い嫌悪感を示す声も上がっている」
(牧野愛博 2月8日)
「徴用工問題の解決」に焦る韓国・尹政権、「日本へのたってのお願い」はやはり「謝罪」と「献金」か(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース 

今回、おそらくは米国国務省が圧力をかけていることは容易に想像できます。
ブリンケンのツイートです。

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慰安婦問題の時もそうでしたが、米国は日韓関係が悪化すると必ず介入しますが、後始末をしていきません。
ムン政権が慰安婦合意を廃棄してしまった時もだんまりでした。
GSOMIAという米国の利害に直接関わるようになると、やっと韓国を叱ったていどです。
今回も似たことになるのではないかというのが、私の予想です。

岸田さん、前のめりになるのはけっこうですが、筋を通しなさいよ。
また左翼政権に戻ると、どうなるかわかったもんじゃありませんからね。
それにしてもこんなときに「小西文書」なんかやっているのですから、バカじゃないですか、うちの国の国会は。

 

2023年3月 7日 (火)

岸田首相、インド訪問するのだとか

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岸田首相が、インドを訪問するそうです。
いやまったく部下の尻拭いをご苦労なこってす。
ただカラ手ではいきません。
なんでもG7広島サミットにモディさんをゲスト招待することを、伝えに行くのだとか。

「岸田文雄首相は今月、インドを訪問し、モディ首相と会談する方向で調整に入った。19~21日を軸としている。関係者が3日、明らかにした。先進7カ国(G7)の議長国として、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対抗するため、20カ国・地域(G20)議長国のインドとの連携を強化したい考えだ」
(産経3月3日)
首相、月内にインド訪問へ 19~21日軸 - 産経ニュース (sankei.com)

予定の訪問だったのかもしれませんが、常識的に見て林外相の大失態をフォローしに行くというのが大方の見方となるのは致し方がないことです。
それほど大きなチョンボでしたからね。

インドの英字経済紙「エコノミック・タイムス」はこう書いています。

「この動き[G20外相会議欠席]は、ニューデリーと東京との関係に何らかの影を落とすかもしれない。
日中友好議員連盟の元会長である林の驚くべき行動は、中国の地域における自己主張の強い行動に対する懸念が高まる中、日本がインドとの安全保障関係の強化を目指している中で起きた。両国はここ数週間、合同防衛演習を実施していた」
林義正:日本のFM林義正がG20外相会議をスキップする-エコノミックタイムズ (indiatimes.com)

元日中議連会長だったことまでが、この「欠席」と関連づけられていいます。
林氏の「欠席」は、今、共同訓練までしている日印の軍事的連携まで破壊しかねなかったのです。
おそるべき53秒。

日本に与えられた国際的使命は、武器援助ができない以上限られています。
大量にバラ撒かれたロシア地雷の撤去、病院・学校の再建、財政援助、そしてロシアへの軍事支援の阻止です。
そのために、いまインドに対してやらねばならないことは、インドにロシア制裁に加わってロシア産原油の輸入を減らしてくれることを依頼し、武器支援などはしないと言明させること、でした。
誠心誠意、共にウクライナ支援に立ち上がってくれることを依頼するのが、林外相の任務だったはずですが、自分からコケてしまったのですからなんとも。

一方林氏にすれば、岸田氏の了解をとって「欠席」を決めたはずですから、彼から見れば二階に上がってはしごはずされた気分になるでしょう。
同時に、これで彼の次期首相のメは消えました。

安倍氏がいたら特使で派遣してモディ氏と直接会談という手もあったのに、本当に彼のいない欠落はあまりにも大きい、と涙が出ます。
今回も、ほら言ったことじゃないでしょう、岸田さん、という安倍氏の声が天から聞こえて来そうです。
よく知られたことですが、林氏の外務大臣起用には、安倍、麻生か共に反対しています。
菅氏も聞かれればいい顔をしなかったはずです。

苦手ですが、内政の話を少々。
耳学問になっちゃうんだよな、内政って。ま、いいか。

岸田氏は、首相となっても宏池会の長から降りず座り続けたのは、派閥が安定しなかったからです。
前会長である古賀誠氏は引退したのにまだ脂ぎっているようで、傘下の議員に強い影響力を持っているそうです。
彼の立場は安部氏ビジョンを、逆さにしたものだと思えばよいでしょう。
共産党機関紙『しんぶん赤旗』にも改憲阻止を訴えて顔を出すお方です。

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池内さおり Saori Ikeuchi 東京12区さんはTwitter

「96条をかえて憲法改正手続きのハードルを下げるということがでていますが、私は認めることができません。絶対にやるべきではない」とのご託宣でした。
90年代末の自民党幹事長連は野中、加藤の両幹事長、山崎副総裁と全員揃って、実にステキなうすらピンク色に染まっていました。

それはさておき、今話題の林氏は、この古賀の舎弟なのです。
考え方も古賀氏と似ているのでしょう。
そして虎視眈々と、岸田の次はオレだと考えています。
彼が参院から衆院に鞍替えしたのは、総理・総裁を狙っているというのがもっぱらの下馬評ですから、こんな奴を野放しにすると岸田氏は寝首をかかれる可能性があります。
だから位打ちで重要ポストに就けたのです。

もうひとつの側面が、副総裁の麻生氏との関係です。
麻生氏はいまは独自派閥ですが、元来は祖父の吉田茂が作った宏池会の流れに属していました。
俗に保守本流と言われています。
ですから、麻生氏の宿願は、岸田氏が率いる宏池会と合流して「大宏池会」を作ることでした。
ところがそれを阻んでいるのが、麻生氏の天敵の古賀氏だったからややっこしい。

なんせ麻生-古賀の遺恨試合はいまだ続いていています。
なまじ選挙区が同じなために、福岡1区の候補者公認となると、常に両派がバトル。
ですから、麻生氏は総裁選で岸田氏を推す条件として上げたのが、古賀氏の最高顧問解任だったそうです。
始めは岸田氏はこれを拒否し、後に古賀氏を最高顧問から解任に踏み切っています。

こんなガタガタに派閥がなるのは、ひとえに岸田政権の基盤が脆弱だからです。
逆に言えば、安部氏が強かったのは、高い理念とそれを語れる弁舌を備え持ち、そして圧倒的多数の最大派閥「清和会」(安部派)を率いていたからです。
だから高潔な精神を持ちながら、どぶ泥のような党内政治で勝ち抜くことができたのです。

安部氏と比べると、岸田氏はすべてに「そこそこ感」満載です。
理念はおしなべてうすらピンクに染まっており、非核と増税以外にこれといって岸田氏独特の主張は見当たりません。
しかも岸田派は第4派閥にすぎませんから、自民党内でも弱小派閥でありパワー不足です。
そのうえ派閥内も安定しないのですから、長続きを望むほうが無理です。
だからせめてじばんだけは固めたいと、誰が見てもこの時期適任とは思えない林氏を外相に据えたのは、自派閥すら統制できないで政権運営ができるか、という他派閥野声をはねのけたかったのかもしれません。
こういう情けない派閥力学の結果、転げ込んだのが林氏の外相就任でした。

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林外相「G20欠席」がインドに与えた衝撃:フォーサイト編集部 | 週末に読みたい海外メディア記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp)

うがった見方をすれば、岸田氏は林氏を「行かせない」ことで、外相失格の烙印を押したかったのかもしれません。
岸田氏が考えているのは、安倍外交の「八掛け完成」です。
外交においては、安倍氏のやり残したクアッドを完成に導き、英豪と同盟関係を構築しつつインドとも準同盟を結び、NATOとの緊密な連携を構築する、ことをなし遂げることです。

内政では、原発の再稼働と、なんといっても憲法改正をなし遂げてしまって下さい。
ここまでできれば、安倍氏と並ぶ大宰相として長期政権も夢ではありません。
そのためには、彼のソコソコ感を丸出しにして、理念は語らないことです。
課長止まりの手腕を逆手にとって、野党と波風を立てずに、野党が好きそうな非核を叫び続け、保守層から嫌われてもここまでやれれば立派。
しかし増税で財務省に媚びを売れば、保守層が背くでしょう。

思えば、安倍氏は自分で全部やってしまうのではなく、ふにゃふにゃしたリベラル顔の岸田氏に残りを仕上げさせる気だったような気もします。
実際、防衛3文書など、安倍氏がやったら安保法制並で荒れたでしょうからね。
安部がつき、菅がこねし天下餅、座して喰らうは岸田文雄、といったところでしょうか。

 

2023年3月 6日 (月)

バフムト戦線でのロシア軍のゾンビーアタック

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プーチンは、3月中にドンバス地方の2州(ドネツク州、ルハンシク州)を完全占領しろと、ロシア軍に対して 命じました。
ロシア軍は全力を上げて攻撃を仕掛け、ウクライナ軍は一時守勢に立たされていました。
特に激戦地だったのはバフムトで、特に戦略要衝とも思えない都市でしたが、何千人もの血を吸う街となってしまいました。

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NHK

このバフムト戦線で、ロシア軍がとった戦法が「ゾンビーアタック」です。
NHKが4日に放映したように、捕虜にとなったワグネル戦闘員から、ゾンビーアタックの異常な実態がわかってきました。

ワグネルはプーチン直属のよく言ってやれば「民間軍事会社」、有体にいえば「ならず者集団」ですが、様々な不正規戦争に投入され、残忍な爪痕を残してきました。
このウクライナ戦争にも使い回され、いまや大量の兵力の消耗によって、囚人や精神障害者までを「徴兵」し、特に殺人犯を前線に配してきました。

ここでワグネルが使った戦術が、ゾンビーアタックです。
映画『スターリングラード』をご覧になった方は、主人公がスターリングラードにいきなり連れてこられて体験するので覚えておられるかもしれません。

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突撃する部隊の半分は丸腰である。
映画 スターリングラード (2001) - YouTube

主人公らは、銃を渡されずに突撃させられ、前の兵士が死ぬとその銃を拾って戦えと命じられます。
機関銃で撃ちまくるドイツ軍になにも持たずに突撃しろというのですから、当然全滅になりますが、それでかまわないのです。
その分しか銃は用意されていないし、兵隊の生命など無価値だと考えているから、銃のような貴重な物資は二人に一丁で充分だと考えていたのです。
したがって全滅するのは想定内で、むしろ死んでくれないと銃の数が足りません。

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同上
逃げて来る味方を機銃掃射する督戦隊。

当然ほとんど全員が死にますが、わずかに生き残った者は命からがら自軍の前線に戻ろうとします。
しかしそこに待っているのは、味方の督戦隊の機関銃です。
戻ろうとした兵士は全員が「逃亡兵」として射殺されることになります。

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中国軍人海戦術。これは映画。
朝鮮戦争の赤い津波 - ニコニコ動画 (nicovideo.jp)

ちなみにこの戦術は、中国軍が朝鮮戦争や後の中越戦争で使用しました。
中越戦争では中国軍は人海戦術を多用し、膨大な戦死者を出しています。
まぁ、一人っこ軍隊の中共軍に、今それをやれといっても無理でしょう。
中越戦争 - Wikipedia
よく混同されるのは、日本軍のいわゆるバンザイアタックですが、これは追い込まれてしまって選択の余地がない場合の最後の戦術でした。
初めから武器すら与えず突撃させたわけではありませんので、念のため。

この映画の冒頭に描かれたゾンビーアタックのシーンは、当時から話題を呼んでいて、いくらなんでもあれはないだろうと言う者も多かったのですが、なんとまたバフムトで復活して実在することを証明しました。
今回もまた、第1波の部隊だけはいちおう自動小銃を持たされてていますが、砲撃と戦車の支援なきむき身の兵士の突撃は自殺行為にすぎませんから、たちまち全員が戦死します。
しかし続く第2波は銃さえ持たないで突撃させられ、第1波の戦死者が落とした銃を拾って、再び突撃しますが、もちろん生き残れません。
そして第3、第4、と果てしなく再現なく飽和攻撃を仕掛けるのです。
吐き気がするような戦術で、こんなものを軍隊の「戦術」と呼ぶべきかさえ迷います。

このゾンビーアタックと戦ったウクライナ側の証言です。

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CNN

「ワグネルの戦い方では、主に刑務所で直接徴集した新兵からなる第1陣をまず送り込む。彼らは軍事的な戦術についてほとんど知識がなく、装備も貧弱だ。大半は、ただ半年の契約期間を生き延びて釈放されることだけを期待している。
「彼らは10人ほどのグループを組んで、30メートル進むと穴を掘り始める。そこで陣地を確保する」と、アンドリーさんは説明する。続いて別のグループがまた30メートル進む。そうした形で徐々に前進しようとするが、その間に多くの犠牲者が出るという。
第1陣が損耗し切るか進めなくなって初めて、ワグネルはより経験を積んだ戦闘員を送り込む。大抵は側面から、ウクライナ側の陣地の制圧を狙ってくる。
この攻撃は恐ろしいもので、現実と思えない経験だったと、アンドリーさんは振り返る。
「味方の機関銃手は正気を失いかけた。撃ったはずの敵が倒れないと言っていた。しばらくして血を流すか何かした後、ようやく倒れると」
アンドリーさんは戦闘の様子をゾンビ映画のワンシーンになぞらえる。「彼らは味方の死体を乗り越えてやってくる。死体を踏みつけにして」「攻撃の前に、何か薬物でもやっているとしか思えない。そんな感じだ」
(CNN203年2月2日)
まるで「ゾンビ映画」、ウクライナ軍兵士が語るワグネルとの戦い(1/3) - CNN.co.jp

別の米国人義勇兵(ウクライナ軍少佐)は、かねてから新兵を弾除けに使っていたと述べています。

「ロペス それも本当です。ドネツクやルハンスクの志願兵や徴集兵の大隊の中には1932年や1941年に製造されたライフル銃を使っているところもあると聞いています。ロシア軍はこうした部隊を使ってウクライナ軍の位置を探り、他の部隊が砲撃できるようにしています。32年や41年に製造されたライフル銃を持たされた部隊は殺されてしまいます。気が狂っているとしか思えない戦法です」
(木村正人2022年6月13日)

専制国家しかやれないような非人道的戦術ですが、これが復活したことをNHKは、ウクライナ軍に捕虜となったワグネル指揮官から聞き取りしていますので、おそらく真実だと考えられます。

ただし、この戦法は一定の「合理性」を持っています。
相手軍が気持ちが悪くなんて精神をおかしくしてしまったり、弾薬を極度に消耗するために継戦能力を喪失しかねないからです。
ロシア軍は、ワグネルや動員して戦い方も知らない新兵に弾除けの役目を負わせて、自軍のベテラン兵らはその後に前進します。
そして実際にバフムトでは、ウクライナ軍の前線に綻びが生じました。

ワグネルのボスであるブリゴジンはこう言っています。

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NHK

「ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏は3日、SNSで「ワグネルの部隊はバフムトを実質的に包囲した。残された道路は1つだけだ」と強調し、ウクライナのゼレンスキー大統領に部隊を撤退させるよう促しました」
(NHK3月4日)
ワグネル「バフムトを包囲した」 ウクライナは徹底抗戦の構え | NHK | ウクライナ情勢

確かに最大の激戦地であるバフムト正面では、民間軍事会社ワグネルを中心としたロシア側の攻撃が徐々に前進し、ウクライナ軍を包囲する態勢ができつつあることは事実のようです。
しかしそれは「限定的で、ウクライナ軍の退路は確保されており、むしろロシア軍の移動が制限されている」ようです。

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NHK

「ウクライナ軍は、バフムトの一部からの統制された戦闘撤退の条件を設定しているようだ。 ロシア軍は、戦前の人口約70万人の都市であるバクムットを奪取するために戦っており、その過程で壊滅的な犠牲者を出している。
3月1日に投稿されたジオロケーション映像は、ウクライナ軍がバクムット地域の28つの重要な橋、バクムット北東部のバクムティフカ川を渡る橋と、バクムットのすぐ西にあるクロモフト-バクムットルートに沿った橋を破壊したことを確認している。
橋の先制破壊は、ウクライナ軍がバフムト東部でのロシアの移動を阻止し、バクムットからの潜在的な西向きのロシアの出口ルートを制限しようとする可能性があることを示している可能性がある。
ウクライナのオレクサンドル・ロドニャンスキー大統領顧問は、ウクライナ軍は必要に応じてバクムットの陣地から撤退することを選択できると述べた」
(ISW戦争研究所3月4日)
ウクライナ紛争の最新情報 |戦争研究所 (understandingwar.org)

一方、ロシア軍が重視しているドネツク州南西部の要衝ウフレダルでは、ロシア軍は数千人の犠牲者を出して攻撃が頓挫しています。
同じく、ルハンシク州のクレミンナやスバトベ正面でも大きな部隊が攻撃しているが、ウクライナ軍の激しい抵抗に遭遇し、攻撃は進捗していません。
ウクライナ軍は持ちこたえるのに手一杯であって、現時点では戦線は膠着状態にあります。

なおロシア軍は、今まで経験したことのない戦死者を積み上げています。

「ロシア軍がこの戦争で被った人員と兵器の大量損耗は、今後の戦況に大きな影響を与えることになる。
英国防省によると、2月末の時点におけるロシア軍の死傷者は20万人で、死者数は6万人に上る可能性があるという。
この6万人という数字は、第2次世界大戦以降の戦争で死亡したロシア兵士の数よりも多い。
戦略国際問題研究所(CSIS)のリポートは次のように分析している。
「ウクライナ戦争でのロシア軍の死者数は6万から7万人だ。ロシア軍の毎月の死者数は、チェチェン戦争での死者数の少なくとも25倍、アフガニスタン戦争での死者数の35倍である(略)
しかし、ロシアはウクライナで毎月約150台の戦車を失っており、再生可能数は損失数には及ばないだろう。
つまり、経済制裁下における兵器生産の限界により、戦車以外の兵器においてもその損耗を穴埋めできない状況だ。
その結果、ミサイルや弾薬は不足し、戦車等の主要兵器が不足する状況である。
ロシアは、イランや北朝鮮から弾薬や兵器を入手する努力をしているが、それでは不足を賄えない状況だ」
(渡部悦和 3月2日)
なぜロシア軍はこれほど弱いのか、中国人民解放軍が徹底分析 台湾統一を見据え、ロシアの失敗から多くを学ぶ目的(3/6) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

また、ロシア軍の損害は控えめな見積もりですが、このように見積もられています。
実際はこれではきかないはずです。

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プーチン、ついに“自滅”か…戦費「3兆円」ムダ遣いで、これからロシアが辿る「壮絶な末路」【2022年ベスト記事】(週刊現代) | マネー現代 | 講談社 (gendai.media)

ロシアは、戦車、大砲、砲弾、そしてなにより兵士という戦争資源が枯渇し、中国からの支援が喉から手がでるほど欲しています。
このロシアの窮状を充分知り尽くして、習近平は訪露をすることになります。

 

 

 

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ウクライナ軍志願兵の元米軍兵士が語る「負傷兵を置き去りにする露軍の非道」 信じがたい露軍の戦術、徴集兵に「1932年製ライフル」を持たせてオトリに(1/7) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

ウクライナに平和と独立を

2023年3月 5日 (日)

日曜写真館 春風やすぐに似合ひてボート漕ぐ

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白鳥を翔たす湖面の強き張り 片山由美子

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冬湖岸ボート転倒して眠る 上田五千石

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湖の尖る水皺真菰枯る  長岡貝郎

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ボート繋がれギイギイと自己嫌悪 津田清子

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鳥帰る合せ鏡の湖と空  藤本末尾

 

※クリックしてご覧ください。

 

2023年3月 4日 (土)

あまりにえげつない西山事件

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篠田英朗氏が、「国際政治の研究は面白いが、日本外交は夢なく、つまらないので、今の専門にした。年寄りになって何となく日本のことも書くようになったが、やめたほうがいいかな」とツイートされていました。
私ごときが言うのはナンですが、わかるなぁ。
このブログがついつい国際政治を多く扱ってしまうのは、その世界史の展開を目の当たりにするようなダイナミックさ故です。
コセコセした、宏池会がどーしたのこーしたの、立憲がどこと組んだからウンヌンといった、国内政局なんか見たくもないですからね。
自分の国を卑小化する習慣はありませんが、先日の林大臣の「欠席」問題や、朝日や毎日か「西山事件」を手放しで讃える姿をみると、心底げんなりします。

この「西山事件」とは、沖縄返還に際して日米が密約をしたということを、当時毎日新聞記者の故西山太吉氏がスクープした事件です。
西山氏は先日亡くなったようで、朝日と毎日が顕彰しています。

「沖縄返還の際の日米密約を追及した元毎日新聞記者、西山太吉さんが24日、91歳で心不全で亡くなった。昨年、沖縄返還50年のインタビューで、民主主義のために「国家のうそ」にぎりぎりまで迫る意義を、「新聞記者たるもの」と語気を強めて語っていた。
 西山さんは、密約に関わる極秘文書の入手を外務省の女性事務官に頼んだことが秘密漏洩(ろうえい)のそそのかしにあたるとして国家公務員法違反容疑で1972年に逮捕、起訴され、毎日新聞を退社。最高裁まで争ったが、78年に有罪が確定した。密約を政府は否定し続けたが、2000年以降に米側の公文書や元外務省幹部の証言で確認された」
(朝日2023年2月27日)
「国家のうそ」に迫る「哲学」 沖縄密約報道の西山太吉さん [沖縄はいま]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

ここで朝日が「国家のウソ」と言っているのは、沖縄返還協定の裏条項のことです。
毎日新聞に西山氏が書いたのは、400万ドルの土地復元費用を日本政府が負担する密約でした。
その後の調べで、米国側条約文書には、VOA移転費用など合計2000万ドルを日本側が肩代わりする密約があったことが明らかになっています。
さらに、沖縄返還協定に書かれた3億2000万ドル以外に、基地の移転費用6500万ドルや労務費3000万ドルなど、別の「秘密枠」もあったとされているようです。

今になると、だからどうしたというんだというていどの「国家のウソ」にすぎません。
条約に裏の付帯条項がついてくるのはよくあることで、世界史にはよく見られることです。
当然のこととして、これはつかみ金的性格のしろもので、いわば立ち退き迷惑料です。
迷惑料ですから算定根拠などないに等しいし、米国からすれば戦争で奪った土地を返すという世界史に前例がないことをしてやっているんだから、このくらい寄こせということにすぎません。
このていどの密約を拒否して、沖縄が半永久的に返らなくてもよい、という選択肢など当時の日本政府にはなかったし、今もないでしょう。
累計で米側に1万1900万ドル払って、戦争で占領された沖縄県を「買い戻した」ということです。

もしいやならば、もう一回戦争をして奪還しますか。
軍事占領された領土は、北方領土のように実力で奪還するか、相手国が国力を疲弊させて手放すまで返ってきませんよ。
日本政府には、沖縄県民を外国の支配下にこれ以上置くことができなかったのです。
これを汚い交渉だ、裏金を払って「国民にウソをついた」とまで非難されれば、佐藤首相(当時)も気の毒です。

朝日は西山氏をいたく崇拝しているようでこうも書いています。

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西山太吉氏
朝日

朝日としてはこの人物を「国家のウソ」を暴き、「ぎりぎりまで迫る意義を新聞記者たるもの」の範として讃えたいようです。
この人物が最高裁まで争ったことを、こういう描き方をしています。

「西山さんは、密約に関わる極秘文書の入手を外務省の女性事務官に頼んだことが秘密漏洩(ろうえい)のそそのかしにあたるとして国家公務員法違反容疑で1972年に逮捕、起訴され、毎日新聞を退社。最高裁まで争ったが、78年に有罪が確定した」
(朝日前掲)

これではまるで義人です。西山氏が訴追された国家公務員法違反容疑はについて1978年には判決が下っています。
彼を正義のジャーリストと言いたいなら、この判決文を読んでからにしたほうがいいでしょう。
この判決文はサイトから読むことが可能です。
裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

昭和53年5月31日
最高裁判所第一小法廷
裁判要旨

五 外務省担当記者であつた被告人が、外務審議官に配付又は回付される文書の授受及び保管の職務を担当していた女性外務事務官に対し、「取材に困つている、助けると思つて安川審議官のところに来る書類を見せてくれ。君や外務省には絶対迷惑をかけない。特に沖縄関係の秘密文書を頼む。」という趣旨の依頼をし、さらに、別の機会に、同女に対し「五月二八日愛知外務大臣とマイヤー大使とが請求権問題で会談するので、その関係書類を持ち出してもらいたい。」旨申し向けた行為は、国家公務員法一一一条、一〇九条一二号、一〇〇条一項の「そそのかし」罪の構成要件にあたる。

まずこの部分ですが、最高裁判決は西山氏が外務省女性事務官に「取材に困っている助けると思って審議官が持っている秘密文書を見せてくれ。迷惑はかけないから」と「そそのかした」とされています。
さらに西山氏は、この女性事務官に「関係書類を持ち出しもらいたい」とまで要求をエスカレートさせます。

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日米の密約スクープした記者は逮捕された…「沖縄返還は国の形変えた」元新聞記者の視座【沖縄発】 | nippon.com

ただし最高裁は、「そそのかし」が「報道の目的から出たもので法秩序全体の精神」に背かなければ違法とまでは言えないとしています。
よくこの裁判が言論弾圧だというようなことを言う者がいますが、この判決を読んで言っているのでしょうか。
最高裁は国家の秘密を知るために政府関係者に秘密を漏らすことを頼む、いわゆる「そそのかし」は漏洩罪には当たらないと言っているのです。

「六 報道機関が公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといつて、直ちに当該行為の違法性が推定されるものではなく、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為である」
(最高裁判決前掲)

ただし、ここで最高裁が問うているのは、西山氏が女性事務官に仕掛けた性交渉を用いた行為についてです。
最高裁判決は抑えた調子ながらもこう断じています。

「七 当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で女性の公務員と肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたなど取材対象者の人格を著しく蹂躪した本件取材行為(判文参照)は、正当な取材活動の範囲を逸脱するものである
(最高裁判決前掲)

「二  しかしながら、報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでないことはいうまでもなく、取材の手段・方法が贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合は勿論、その手段・方法が一般の刑罰法令に触れないものであつても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びるものといわなければならない
(最高裁判前掲)

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西山氏は、初めに出稿した記事の扱いが小さかったことに焦って、この秘密文書のコピーをあろうことか当時の社会党の横路孝弘に渡してしまい、国会で追及させてしまいました。
これは取材者に対してのセクシャルハラスメントに並ぶ、信じがたいメディアのルールの逸脱です。

こんなマネをすれば、文書に押された稟議書の決裁印から外務省の安川審議官が特定され、さらには秘書の蓮見喜久子氏まで特定されるまで瞬く間のことでした。

後になされる毎日新聞の「お詫び」にはこう書かれています。

「西山記者は、ニュースソースを秘匿しつつ事実を明らかにすることを意図していたとしながらも、原資料そのものを第三者に提供したことが、結果的には、かえってニュースソースを明らかにすることになりました。この点は、新聞記者のモラルから逸脱したものといわざるをえません。このことは、西山記者の個人的行為であったとはいえ、毎日新聞社は、蓮見さんに多大のご迷惑をかけたことに深くおわびします」
(毎日 1972年4月15日)

この事件により毎日新聞は社会的信用を失墜し、一気に経営難に陥ることとなります。

機密文書が漏洩したことに怒った外務省は東京地検特捜部に起訴して、蓮見と西山を国家公務員法違反で逮捕しました。
特捜部の捜査によって、西山氏は女性事務官の関係が明らかになっています。

裁判官が書いた「黒の事件簿」といったあんばいですが、判決文はこう述べています。(改行したくとも句読点で繋いであるので切れません)

「二 これを本件についてみると、被告人は、従前それほど親交のあつたわけでもなく、また愛情を寄せていたものでもない前記Bをはじめて誘つて一夕の酒食を共にしたうえ、かなり強引に同女と肉体関係をもち、さらに、同月二二日原判示「ホテルC」に誘つて再び肉体関係をもつた直後に、前記のように秘密文書の持出しを依頼して懇願し、同女の一応の受諾を得、さらに、電話でその決断を促し、その後も同女との関係を継続して、同女が被告人との右関係のため、その依頼を拒み難い心理状態になつたのに乗じ、以後十数回にわたり秘密文書の持出しをさせていたもので、本件そそのかし行為もその一環としてなされたものであるところ、同年六月一七日いわゆる沖縄返還協定が締結され、もはや取材の必要がなくなり、同月二八日被告人が渡米して八月上旬帰国した後は、同女に対する態度を急変して他人行儀となり、同女との関係も立消えとなり、加えて、被告人は、その情報源が外務省内部の特定の者にあることが容易に判明するようなその写を国会議員に交付していることなどが認められる。
そのような被告人の一連の行為を通じてみるに、被告人は、当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で右Bと肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたが、同女を利用する必要がなくなり、同月二八日被告人が渡米して八月上旬帰国した後は、同女に対する態度を急変して他人行儀となり、同女との関係も立消えとなり、加えて、被告人は、本件第一〇三四号電信文案については、その情報源が外務省内部の特定の者にあることが容易に判明するようなその写を国会議員に交付していることなどが認められる」
(最高裁判決)

このへんの男女の経緯は、後に蓮見氏側が週刊新潮に告白文を出してもめたのですが、少なくともこのように最高裁は事実認定をしたということです。
要するに、西山氏は既婚者の女性事務官をセクシャルハラスメントを仕掛けて、抵抗できなくして情報を吸い上げ、秘密文書を盗んで来いと命じたわけです。
そして、用がなくなると「態度を急変させて他人行儀になった」として関係を断ってしまいました。
冷血なまでの利用主義です。この人物のどこに「哲学」があるというのでしょうか。

セクシャルハラスメントの定義はこうです。

「セクハラとは、セクシャルハラスメントの略語で、職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により、解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じることを言います」
パワハラ・セクハラについて | Yahoo!しごとカタログ

西夫馬氏は蓮見氏に行った行為については、蓮見氏側のインタビューが存在します。

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週刊女性自身 昭和49年2月9・16合併号
クリックすると大きくなります。

この蓮見氏のインタビューによれば、西山氏は蓮見氏に対して、「オレがこの職場に来るのはきみがいるからだ。きみは個性的で美しい」と接近し、私鉄ストの夜に「送って行く」と言って騙して男女関係を迫ったようです。
そして何度となく不倫関係を迫り、拒めなくなったところで安川審議官の持つ機密文書の持ち出しを命じました。
そして役にたたなくなると捨てたというわけです。まさに詐欺師の手法です。
そして女性側の職場と家庭を徹底的に破壊したのです。

まさに絵に書いたような定義どおりのセクシャルハラスメントです。
朝日ご愛顧のフェミニスト上野千鶴子氏がよく怒らないものです。

私には西山氏はただの人間のクズにしか見えませんが、朝日や毎日にとってはこのような男が、「ぎりぎりまで真実に迫った正義の人」と写るようです。
蓮見氏はこの後すぐに離婚していますが、女性ひとりの人生を破壊しておきながら「正義のジャーリスト」を気取らないでいただきたいものです。
そしてこの西山氏は92歳で死ぬまで、自分は絶対正義だ、自分は正義のジャーナリストだと信じて疑わなかったのですら、いい気なものです。

共産主義がソ連崩壊によって1991年に崩壊するまで、日本においても社会主義幻想が活きていました。
それにもっとも強く支配されていたのが、日本のメディアと野党です。
理念を喪失した彼らは、その後政権批判だけが拠り所となって、今に至ります。
それがメディアの「政権の監視」論であり、野党の「反自民」です。

滅亡に向かいつつある左翼メディアにとって、彼らが社会主義の理念に確信を抱き、かつ時代を支配できたと思えた黄金期を懐かしみたいのかもしれません。

 

 

2023年3月 3日 (金)

林外相G20会合に「行かない」ということの重さ

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林外相が、昨日開かれたG20の外相会議を欠席したことについて、まだくすぶっているようです。
まぁ、だよね。
とうとうホスト国のインドまでが怒りだしたようで、いくらFOIP外相会談のほうには出るからさぁ、と言っても鎮火しないようです。
もはや国際問題ですか。

【ニューデリー時事】日本の林芳正外相が国会対応のため1日からの20カ国・地域(G20)外相会合を欠席することについて、議長国を務めるインドの主要紙は「日本の信じられない決定」(ヒンドゥスタン・タイムズ)など総じて批判的に受け止めている。
 ヒンドゥスタン紙は、欠席を巡って日本国内で批判が集まっていることも紹介しながら「決定はインドを動揺させる可能性が高い」と伝えた。経済紙エコノミック・タイムズは「日印関係に影を落とすかもしれない」と指摘した」
(時事3月1日)
「信じられない決定」 林外相G20欠席に批判的 インド主要紙(時事通信) - Yahoo!ニュース

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林芳正外相、日韓協力「今ほど重要な時はない」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

外相が外交問題引き起こしたらシャレになりませんな。
副大臣を出すという問題じゃないのですが、林氏はお分かりになっていないようです。
いいでしょうか。G20が外相をだした時に、日本だけが格落ちの副大臣を出したら、それは「オレの国はこんな会議はくだらないと思っている」という意志表示にとられかねませんよね。そんなこともわからないんですか。

いや、あれは国会開催中はの外遊は慣例で禁じられているんで、などといっても無駄。
そんなドメスティックな慣習は、日本人ですら知らないくらいですから、インド人はもっと知らない。
このウクライナ戦争という難しい時期に、ロシア、米国も参加するG20の議長国をせねばならないインドの意気込みと不安は察して余りあります。

モディ首相は故安部首相と強い絆で結ばれていました。
安部氏はなにをさておいてもインドに訪問し続け、インドは彼をなんとパレードで出迎えてくれたものです。

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B_Otakuのクルマ日記 特別編 閲覧注意 (b-otaku.com)

安部氏を通じて、インドは自由主義社会に目覚めてクアッドに参加することを決意したのです。
モディ首相の安部氏追悼文にはこのような一節があります。

「インドと日本の戦略的パートナーシップを変革させるというこれまでにない取り組みにおいて、安倍さんと共に働くという栄誉に恵まれました。
安倍さんは、それまで比較的経済面に限定されていた印日二国間関係を、国家利益にかなう他分野に拡大しただけではなく、両国そして域内の安全保障の柱となりうるよう、より広範かつ包括的な関係へと昇華させたのです」
私の友人、安倍さん…インドのモディ首相が追悼文 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

林氏はこのインドとの固い絆を壊してしまったのですから、たいしたものです。
モディ氏は日本に反安部政権ができたと感じたことでしょう。

さて、G20の参加国とはこんなメンツです。
フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合(EU)(G7の議長国順))に加え、アルゼンチン、豪州、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ。
ちなみに2日の会議の出席者はこのようなクラスです。

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G20の分断深刻化 外相会合、途上国は対露批判に同調鈍く(産経新聞) - Yahoo!ニュース

トルコには大地震の見舞いと今後の支援について伝えねばならないでしょうし、国際的支援の枠組みづくりを提起せねばなりません。
そもそもウクライナ戦争で紛糾することは目に見えていますし、そのとおりになったのですが、ここで首脳が「キーウに訪問していない」唯一の自由主義国なうちの国が、さらに議長国の足を引っ張ってどうしますすか。

いま急務の広範な対露包囲網の形成には、G20議長国のインドをぜひ棄権の立場から、侵略に対抗する立場に変えねばなりません。
そのうえに、今やインドはグローバルサウスの自由主義国側の牽引車です。
ですから大前提として、この時期にG20議長国という困難な仕事をしているインドへのリスペクトが大前提なのです。
共に困難をシェアする、それができないようなら、外相などいてもいなくても関係ありません。
インドの有力メディアが、「国内事情での外相欠席は、議長国インドをいら立たせるだろう」といった論評を乗せたのは、インド政府のいらだちを代弁したものなのです。

しかも、G20に欠席する理由がわからないから困ります。
参院自民党から、国会審議を重要視しろと言われた、という話も出ました。


他の野党は、いつもなら「国会軽視だ」と騒ぐのですが、今回に限ってそんなことを言ったのは、安定の反日運行の共産党だけです。
維新はこんな国会慣習は廃止してしまえと言っていますし、立憲も今回は妙にものわかりがよいことを言っています。

「立憲民主党の斎藤嘉隆参院国会対策委員長も27日に「国会対応を優先してもらいたい」と求めた」
(日経3月1日)
林芳正外務大臣がG20欠席、外交より国会慣例 答弁は53秒のみ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

おいおい、立憲からも出た方がいいと言われたら、もうヘソ噛んで死んだほうがいいと思うゾ。
そして「日本不在」を示した言い訳の国会答弁は、大演説のひとつでもやったのかと思いきや、たったの53秒(笑)。

「林氏は3月1日の参院予算委員会におよそ7時間出席した。質問は自民党の上月良祐氏による1問のみで、答弁時間は53秒。テーマは在外邦人の孤独・孤立対策だった。
憲法63条に答弁を求められた首相や閣僚は国会に「出席しなければならない」との規定はある。一方で、基本的質疑への閣僚出席に関して国会法などに明確な法的根拠があるわけでない」
(日経前掲)

参院自民党の幹事長は世耕氏ですから、安倍氏ならゼッタイにインドを優先しましたよね、あなたもう安部派の後継者になれないね、宏池会に来ます、と言って黙らせればよい。
林外相の「出ない」という所業は、おそらく安部氏の外交路線を継承しない、できたら壊したい、宏池会流にやりたいというポーズなのですから。
そこまでやるとはさすがに思えませんが、昨日のウォールストリートジャーナル風に言えば「中程度の確信」でしょうか。

とまれこの時期に、外相がG20外相会議に「出ない」という選択がないことくらい党内に説得できないようなら、辞めてくれたほうがいいようなものです。

林氏はG20外相会議にはでられなくても、クアッドには出られると思ったといいますが、2者択一の問題ではありません。
どちらにも出るのが外相としての義務です。
義務を遂行できないような外相は、存在自体が国益を毀損しているのですから、即刻解任すべきです。
というか、こんなことを黙認したのが岸田氏なのですから、一緒に辞めたらいかがでしょうか。

 

 

 

 

2023年3月 2日 (木)

米エネルギー省、新型コロナは武漢ラボから流出の可能性が高い

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時々、思うのですが、あの新型コロナが人工的に中国が作ったもので、故意であるか不作為であるかを問わず、それを世界に拡散させてしまったとしたら世界はどう反応するでしょうか。
感染死亡者は、去年9月末で世界全体で100万人を超えました。
とてつもない災厄です。

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新型コロナ 世界全体の死者数 100万人超える | 新型コロナウイルス | NHKニュース

米国では騒がれなくなったものの、いまだ高い死亡者数を出しています。
とうとう累計死亡者数が今年2月に110万に達しました。

「米国では新型コロナウイルスの流行の勢いは衰え続け、今年の冬は感染者数が急増する事態にはならなかった。しかし、死亡者数は累計で増え続けている。
米国では最近、新型コロナウイルスによる死者数が流行開始からの累計で110万人を超えた。死亡証明書のデータによると、現在も1日に数百人単位で亡くなっている。死亡者の多くは高齢者であることは以前と変わらず、心臓や肺などに基礎疾患があるケースが多い」
(ウォールストリートジャーナル2023年2月21日)
米国のコロナ死者数 なぜ止まらないのか - WSJ

100万人殺されたら、ホワイトハウスはどう対応したらよいのか戸惑うほどです。
トランプ政権はストレートに中国に証拠を突きつけて糺弾してやると息巻きましたが、米国の情報機関のコンセンサスが割れたために追い詰めるに至りませんでした。
彼に2期目があれば、あるいはとは思いますし、決定的証拠を握っているとはポンペオが言っていましたが、どうやら状況証拠だったようです。とまれ、情報機関がトランプに背中を向けてしまったために、あれ以上は厳しかったかもしれません。

当時、米国メディアも、トランプ憎しが凝り固まっていたために、彼の政権が出した様々な疑惑をオルト・ライト(新右翼)の陰謀論のひとことで片づけてしまいました。
ところがトランプが政権を去ると、おそらく彼らは愕然としたはずです。
なぜなら、曇りのない眼で調べてみると、トランプが言っていたことのほうが正しかったからです。

「新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)は中国・武漢の研究所から手違いでウイルスが流出して引き起こされた──これはつい最近までオルト・ライト(新右翼)的な陰謀論としておおむね無視されてきた主張だ。
ワシントン・ポストは2020年初め、「専門家が何度もその誤りを証明した陰謀論を、執拗に蒸し返している」として、トム・コットン上院議員を批判。CNNは「陰謀論や誤情報を信じている友人や家族を説得する方法」を伝え、ニューヨーク・タイムズも「非主流の説」扱いをし、公共放送のNPRも「研究所の事故で流出したという説は虚偽だと証明されている」と述べるなど、アメリカの他の主要メディアもおおむねこの説を否定していた。
そうした中で、本誌は例外的に2020年4月、武漢ウイルス研究所(WIV)はウイルスの病原性や感染性を強める「機能獲得型」研究を行なっており、ここから流出した可能性も否定できないと報道した。同様の報道を行なったのは、左派系雑誌のマザー・ジョーンズに加え、ビジネス・インサイダー、ニューヨーク・ポスト、FOXニュースと、ごく少数のメディアだけだ」
(ニューズウィーク2021年6月16日)

かくして今や、米国メディアはCNNのようなリベラルから保守系FOXニュースまで、いまや一致して武漢ウィルスラボを発生源とするのがもはや米国メディアのコンセンサスとなっています。
あいかわらず関心すら示さないのが、うちの国のメディアですが、まぁどうでもよろしい。

さて、米国エネルギー省が、新型コロナウィルスの発生源を武漢ウィルスラボと結論づけたと、ウォルーストリートジャーナルが報じました。
新型コロナの起源を求めていた私とすれば、ああ、やっぱりそうだっのか、というところでした。

「【ワシントン】米エネルギー省は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の起源について、研究所からウイルスが流出した可能性が最も高いと結論付けた。ホワイトハウスや米議会の主要議員に最近提出された報告書から明らかになった。
 同省はウイルスが広まった経緯についてこれまで判断を下していなかったが、アブリル・ヘインズ国家情報長官(DNI)のオフィスがまとめた2021年の資料を改訂する中で今回の考えを示した」
(WSJ 2023 年 2 月 27 日)
新型コロナの起源、研究所から流出の可能性高い=米エネルギー省 - WSJ

しかし残念ながら、このエネルギー省のレポートは現時点では非開示なので、見つけたと推測される「あらたな証拠」がなにかはわかりません。
ただ、エネルギー省は参加に多くの研究機関を持ち、病理学的新証拠を発見したようにも見えます。
というのは、それを強く示唆するフレーズをWSJは社説で書いているからです。

「26日の報告において重要な点は、エネルギー省が「新たな」情報に基づいて、その結論に至ったということだ。最終的にどんな情報が判断の変更に影響したのかが明らかになれば幸いだ。エネルギー省は国立研究所の責任を負う部署であり、研究所の一部は生物学的な研究を行っているため、同省の判断は、なおさら注目に値する。中央情報局(CIA)や国家安全保障局(NSA)の専門分野は同省と異なり主に人の介在や電波信号の傍受による諜報活動を扱う」
(WSJ 2023 年 2 月 28 日)
【社説】コロナ流出「コンセンサスなし」は逃げ - WSJ

FBIも流出説に傾いているようです。

「Covidウイルスは、中国の武漢にある研究所から漏れた可能性が最も高いと、FBI長官のクリストファー・レイ氏は述べています。「FBIはかなり長い間、パンデミックの起源は武漢での潜在的な実験室での事件である可能性が高いと評価してきました」とクリストファー・レイはフォックスニュースのインタビューで語った。 ところで,私は武漢ウィルスラボがしていた機能獲得実験によって、人間の喉や肺のACE2受容体に感染し易いようウイルスを操作していたと考えている」
(ヒンドスタンタイムス2023年3月1日)
中国が管理する研究所からコビッドが「最も可能性が高い」リーク:FBI長官の主張|世界のニュース-ヒンドゥスタンタイムズ (hindustantimes.com) 

武漢ウィルスラボの主任研究員だった石正麗とそのグループは、RaTG13という新型コロナウィルスの始祖ウィルスを雲南省墨江ハニ族自治権にある鉱山の坑道で発見しました。
コウモリの糞にRaTG13が含まれていたのです。
そして武漢ウィルスラボに1万匹を優に超えるコウモリを収集し、そこで変異実験を開始しました。

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ピーター・ダザック
WHO国際調査団、メンバー1人が武漢研究所に近い関係

石正麗の米国側協力者にピーター・ダザックというウィルス学者がいます。
彼は武漢ウィルスラボに入り浸っていたにもかかわらず、コウモリなど見たこともないというウソ八百を平然と言っていました。
このダザック証言が虚偽であることは、後に所内でコウモリが逃げ出す動画が流出したことでバレてしまいました。
ちなみに彼はどのような政治的裏技を使ったのかはわかりませんが、なんとWHO現地調査団に潜り込んでしまいました。
中国の支配下にあるWHOでなくては、できない仕業です。
こんな男が入ったWHO調査報告は、言うのもヤボですよね

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NW

このダザックはパンデミック初期に、自らの影響下にある26人もの科学者と連名で、2020年2月19日、医学誌ランセットに「新型コロナウィルス感染が自然な発生源を持たないことを示唆する陰謀論を、私達は断固として非難する」と宣言し、これが「世界の科学者の総意」のように報じられたために、支配的な認識となっていました。

「米政府関係者は、エネルギー省が見解を変えるに至った新たな情報と分析について、詳細を明らかにしなかった。また、エネルギー省とFBIはそれぞれ、実験室からの意図せぬ漏洩が起きた可能性が最も高いとしながらも、その結論に至った根拠はそれぞれ異なると付け加えた。
更新された文書は、新型コロナウイルスがどのように出現したかについて、情報当局がいまだ断片をまとめる過程にあることを浮き彫りにしている。3年以上前に始まった新型コロナの大流行では100万人以上の米国人が死亡した。
米連邦捜査局(FBI)はエネルギー省と同様、何らかの事故でウイルスが中国の研究所から流出した可能性があるとしている。一方で四つの連邦政府機関や国家情報関連の諮問機関などは、ウイルスが自然界から広がったものとしている他、二つの政府機関は起源について判断を示していない」
(WSJ前掲)


FBIは、武漢ウィルスラボからの流出によりパンデミックが引き起こされたとする「中程度の確信」を、2021年にすでに公表しており、現在もこの流出説を維持しています。
なお、この「中程度の確信」という言い方は、情報が錯綜したり、対立する場合、その結論の信用の度合いを示すものです。

「FBIは微生物学者・免疫学者などを含む研究者を雇用しており、炭疽菌やその他の生物学的脅威の可能性を分析するために2004年にメリーランド州フォートデトリックに設立された米バイオディフェンス分析対策センター(NBACC)の支援を受けている。(略)
長期の戦略分析を行う米国家情報会議(NIC)と政府関係者が特定を避けた4機関は、このウイルスが感染した動物からの自然感染によって生じた「確度は低い」と評価している、と最新報告書は述べている。
機密扱いの同報告書を読んだ前出の関係者らによると、米中央情報局(CIA)および政府関係者が名前を明かさない別の機関は、実験室からの漏洩説と自然伝播説の間で決めかねている。
各機関の分析は異なっているものの、今回の報告書は新型コロナが中国の生物兵器プログラムの結果ではないという既存のコンセンサスを再確認したものだという」
(WSJ前掲)

つまり、米国の情報機関の意見は割れているのです。
そして別れていることをいいことに、バイデンは動かないのです。

「ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は26日にCNNの番組に出演したが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道を肯定も否定もしなかった。サリバン氏は、ジョー・バイデン大統領が一連の情報機関に対し、新型コロナ感染症の起源について可能な限り見極めるため資金を投じるよう繰り返し指示してきたと述べた。
「バイデン大統領は特に、エネルギー省の一部である複数の国立研究所をこの評価に参加させるよう要請した。何が起きたかを理解するためにあらゆる手段を動員したいと望んだからだ」とサリバン氏は説明。「情報機関のコミュニティーにはさまざまな見解がある」とし、「その多くは十分な情報を持っていないと述べている」と語った[
(WSJ前掲)

ちなみに、ウォールストリートジャーナルは、政府が「情報機関に明確なコンセンサスがない」という一点を言い訳にして、のらりくらりと逃げを打っていることに対して、このような論評を加えています。

「だから何だと言うのか。各情報機関の間にコンセンサスが存在したことなど、かつてあったのか。カービー氏にそうした質問をした記者はいなかったが、われわれは質問をするのをいとわない。
機密情報はその本質からして曖昧で、さまざまな解釈が可能なことが多い。これこそが、政府機関がその判断に「低信頼度」とか「中信頼度」などといった言葉を付記する理由だ。政府機関の間で見方が異なることは、有益である可能性がある。それは、集団的意思決定が政策の選択に影響を及ぼす可能性が低くなることを意味するからだ。
米政権が新型コロナの起源をめぐる話題を機密情報のブラックボックスに押し戻したいと思い、この問題を誰もが忘れてくれるよう期待しているのではないか、との懸念は当然のものだ

それによって、ジョー・バイデン大統領は中国への対応がもっと容易になるかもしれない。しかし、それは新型コロナ感染で深刻な打撃を受け、新型コロナの起源に関する「証拠の優越性(民事訴訟で要求される立証の度合い)」がどの程度のものかを知る資格がある米国、あるいは世界全体にとって役立つものではない
(WSJ社説前掲 太字引用者)

ウォールストリートジャールのような米国言論界を代表するようなメディアが、政府高官の発言に対して「だからなんだと言うんだ」と書くのですから尋常ではありません。
バイデン政権は、「情報機関にコンセンサスがない」というのを言い訳にしていますが、そもそもそのようなものは「ない」のです。
情報機関が共通認識に辿りつけないのは、彼らの情報があくまでもシギント(電子情報収集)やヒューミント(人による情報収集)にすぎず、ウィルスの解析による証拠とは比べるべくもないからです。
ところが、いまやウィルス流出説に集まってきている膨大な情報群は、自然発生説を量質共にはるかに上回っています。
ここでWSJが言う「証拠の優越性」(Preponderance of evidence) という米国民事訴訟上の概念が重要となります。
「アメリカ合衆国の民事訴訟で物事を立証する際に要求される立証の程度(→standard of proof)の一つであり、ある事実が“ないというよりはある”と言えるかどうかで判断することである。
証拠の優越(preponderance of evidence)の原則は、”more-likely-than-not”原則、或いは50%超原則ともよばれ、その証明度は、例外的に適用される別の証明度より低いものです 」
preponderance of evidenceについての用語を詳しく説明します。:パテントに関する専門用語詳細ページ(今岡憲特許事務所) 
仮に今、仮に感染で死亡した遺族が団体訴訟を起こした場合、この「証拠の優越性」を訴訟ロジックに用いるはずです。
つまり5割を超える確率で「そうである」とする証拠が、「そうでない」を上回っていた場合、このウィルス流出疑惑は正当性を主張できるのです。

WSJが言うように、バイデン政権が「新型コロナの起源をめぐる話題を機密情報のブラックボックスに押し戻したいと思い、この問題を誰もが忘れてくれるよう期待しているのではないか」と思っているのは大いにありえる推測です。
バイデンは、先日の気球事件においても、アラスカに接近していることを知りながら、撃墜をためらい、米本土に侵入を許したままアラスカでの撃墜すらできませんでした。

ここで落としておけばよかったのです。
アラスカ州で落としていたら、無人の森林地帯だったのですから。
バイデンが恐れたのは、気球問題を中国との真正面からの対決事案にしたくなかったからです。
結局、中西部に侵入した気球は、多くの国民に目撃されてライフルで撃たれてしました。
こうなってやっと撃墜の命令を出したのです。

このあたりどこぞの国の首相にも似ていますが、リベラル特有の判断の遅さと及び腰です。
ウクライナ支援でも初めから一括して戦車や航空機を供与していれば、違ったはずでした。

それをまるで熱い湯にソロソロと足を入れるように、逐次供与してかえって戦争を長引かせてしまいました。
このようにジョー・バイデンという人は、このエネルギー省レポートに対しても、中国へのカードが一枚増えたとは思わず、いざこざがまた増えた、頭が痛いと思うタイプの人のようです。

 

2023年3月 1日 (水)

フィンランド首相、「凍結された戦争」にしてはならない

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中国が書いた「和平提案」にはこういう一項があります。

「4.和平交渉の再開。対話と交渉は、ウクライナ危機に対する唯一の実行可能な解決策です。危機の平和的解決に資するすべての努力は、奨励され、支持されなければならない。国際社会は、平和のための交渉を促進する正しいアプローチに引き続きコミットし、紛争当事者ができるだけ早く政治的解決への扉を開くのを助け、交渉再開のための条件とプラットフォームを作成する必要があります。中国はこの点で引き続き建設的な役割を果たす。 」
ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場 (fmprc.gov.cn)

美辞麗句が散りばめられていますので、一読するとするっと読めてしまうのですが、ここで中国が言っているのは戦争がなぜ起きたのか、誰が起こしのか、いかなることをウクライナで働いたのかを一切無視して、「ロシアとウクライナが同じ方向に働き、直接対話をしろ。それが政治的解決だ」と言っているのです。

実にムシがいい考え方ですが、日本でも似たような大人ぶりの「和平案」を出す者がいますね。
彼らは「力ではなく外交を」と言いますが、それはウクライナが現時点で停戦してしまえば、その休戦ラインがそのまま新たな「国境線」となってしまう朝鮮戦争のような終結をしろ、という意味にすぎません。
侵攻以来、占領地はこのように変化しました。

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【図解】ウクライナ戦況の推移(AFP=時事) - Yahoo!ニュース

●ウクライナ戦争の推移
■2022年2月24日
4か所から侵攻開始:
北部から首都キーウ、北東部からハルキウ、東部ドンバス地方、南部からヘルソンへ
■3月24日
ロシアの侵攻が最も進む。キーウ郊外に到達し、イルピンで停止
■4月6日
ロシアが北部から撤退。ドンバス地方と南部に戦力集中
■7月15日
戦闘激化。ロシア、5月20日にマリウポリ、6月24日にセベロドネツク、7月3日にリシチャンスクを占領。前線はほぼ進展せず
■11月14日
ウクライナ、8月末~9月初旬にハルキウから、11月中旬にヘルソンから反撃開始。約1万7000平方キロ近くを奪還
■2月1日
前線は再びこう着。ドンバス地方バフムート周辺で戦闘激化。ロシアはウクライナ国土の18.1%を占領
(AFP 2023年2月23日) 

残念ですが侵攻1周年を迎えた2023年2月24日の時点で、ロシアはウクライナの国土の約2割を占領し続けています。

ロシアの燐国であるフィンランド首相であるサンナ・マリン氏はこう述べています。
彼女のウクライナ侵略1周年の公式発言です。

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ウクライナフォーラム

「ロシアはこの戦争に負けるでしょう。これは違法な戦争です。ロシアはそれに対して単独で責任があります。ウクライナでは毎日、ロシア連邦が故意に民間人を殺しています。人々はレイプされます。子供たちは一斉にロシアに強制送還されます。
これらの行動の罪を犯したすべての人は責任を問われなければなりません。プーチンを含むロシアの指導部もそれで逃げることはありません。フィンランドは、ロシアの指導者を含め、これらの凶悪犯罪の責任者を裁判にかけるためのあらゆる努力を支持している」と政府の長は述べた」
(ウクライナフォーラム2月22日)
ウクライナがEU、NATO-フィンランド首相の一部になる (ukrinform.net)

「ロシアは単独で責任がある」という部分をかみしめて下さい。
ここがあいまいになると、まるで喧嘩両成敗のような中国流「対話と交渉」になってしまいます。
最初のボタンを掛け違えると、最後まで服は着られません。

中国が狙っているのは、ロシアと西側双方が消耗し尽くすことです。
ロシアは戦費が枯渇し、満足な武器も与えられず戦死者を築き上げ、支援を求めて中国の門前に馬をつなぐことになります。
中国は労せずして、ロシアという世界第2の核大国を目下の同盟国とすることが可能となるでしょう。
一方、西側もまた「ウクライナ疲れ」で財政がそこを尽き、米国は中国と対峙する余力を失うかもしれません。
自由主義諸国連合はいつ果てるともないウクライナ戦争に厭戦気分に陥り、ゼレンスキーを恨み、米国を恨み、同盟は内部崩壊の危機を迎える
でしょう。
そして中国がこれを仲介し、善意の救世主としてウクライナ戦後世界に君臨するのです。
アホくさーといわないで下さい。これこそが中国が狙う「漁夫の利戦略」なのです。

マリン首相は続けてこう述べています。

「ロシアがウクライナから軍隊を撤退させると戦争は終わるだろう、とマリンは強調し、戦争が凍結された紛争に変わることを許されてはならないことを示唆した。
「これで戦争は終わらない。永続的な平和への道は、ロシアが敵対行為をやめることです。これだけが交渉と平和へのステップへの道を開きます」とサンナ・マリンは結論付けました」
(ウクライナフォーラム前掲)

ここでマリンが「凍結された戦争にしてはならない」(the war must not be allowed to turn into a frozen conflict.)と言っていることに注目してください。
フローズン・コンフリクトとは、膠着した長期間に及ぶ戦争のことです。
もはや何が始まりだったのかさえおぼろとなり、誰が国境線を超えたのかも忘れてしまいますが、戦闘だけは延々と続く、それが「凍結された戦争」です。

ウォールストリートジャーナルは、フィンランド首相のスピーチにもう少し付け加えてこう書いています。

「米国が和平に求めるものはいくつかある。まず、戦争を直ちに終わらせること。戦争が長引けば長引くほど、破壊も進む。
第二に、戦争は完全に和解して終わらせるべきだ。つまり、いつ爆発するか分からない凍結された紛争に陥ってはならない。制裁を継続して世界経済に支障をきたすような状況をわれわれは望まない。欧州の半分が永久に戦争状態になることも望まない。武装を維持した休戦ではなく、条約でこの戦争を終わらせることを望む。
 第三に、ロシアの侵略が罰を免れなかったことを明確にする形で戦争を終わらせるべきだ。将来のロシアの指導者や、その他の潜在的な侵略者たちは、征服を企てる戦争には大きな代償を伴うことを知る必要がある。
 第四に、この戦争の終結を次の戦争のお膳立てにしてはならないことだ。北大西洋条約機構(NATO)の部分的な拡大は誤りだった。湖の片側に「釣り禁止」の看板を立てれば、残された場所で釣りをするのはOKという意味合いになる。
ジョージア、モルドバ、ウクライナ、ベラルーシはNATOに加盟していない。ロシアはそれらの国のすべてに侵攻または破壊を加えた。この戦争は、安全保障の枠組みを明確にして終わらせる必要がある。希望する国のNATO加盟が簡単な解決策になるだろうが、他の方法も可能かもしれない」
(WSJ 2022 年 12 月 13 日 太字引用者)
【オピニオン】ウクライナ和平に備える時 - WSJ

だからこそ、ロシアによる侵略を断罪し、組織的戦争犯罪を国際人道法廷で裁き、プーチンとその眷属を戦争犯罪人として処罰せねばなりません。
それは同時に欧州の新たな安全保障体制の構築につながるということです。
それなくして、安易に「戦争は生命を奪うから直ちに停戦しろ」という情緒論に陥ることは、ウクライナが分断国家になることを認め、さらには次の戦争を招いてしまうことでしょう。

私は今日もウクライナの人々の写真を載せ、「ウクライナに平和と独立を」という言葉を添えています。
これは単なる「平和」ではなく、それを保障するのが「独立」であるという意味です。
独立なき平和を奴隷の平和、あるいは屈従と呼びます。

 

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ウクライナに平和と独立を

 

 

 

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