岸田首相、インド訪問するのだとか
岸田首相が、インドを訪問するそうです。
いやまったく部下の尻拭いをご苦労なこってす。
ただカラ手ではいきません。
なんでもG7広島サミットにモディさんをゲスト招待することを、伝えに行くのだとか。
「岸田文雄首相は今月、インドを訪問し、モディ首相と会談する方向で調整に入った。19~21日を軸としている。関係者が3日、明らかにした。先進7カ国(G7)の議長国として、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対抗するため、20カ国・地域(G20)議長国のインドとの連携を強化したい考えだ」
(産経3月3日)
首相、月内にインド訪問へ 19~21日軸 - 産経ニュース (sankei.com)
予定の訪問だったのかもしれませんが、常識的に見て林外相の大失態をフォローしに行くというのが大方の見方となるのは致し方がないことです。
それほど大きなチョンボでしたからね。
インドの英字経済紙「エコノミック・タイムス」はこう書いています。
「この動き[G20外相会議欠席]は、ニューデリーと東京との関係に何らかの影を落とすかもしれない。
日中友好議員連盟の元会長である林の驚くべき行動は、中国の地域における自己主張の強い行動に対する懸念が高まる中、日本がインドとの安全保障関係の強化を目指している中で起きた。両国はここ数週間、合同防衛演習を実施していた」
林義正:日本のFM林義正がG20外相会議をスキップする-エコノミックタイムズ (indiatimes.com)
元日中議連会長だったことまでが、この「欠席」と関連づけられていいます。
林氏の「欠席」は、今、共同訓練までしている日印の軍事的連携まで破壊しかねなかったのです。
おそるべき53秒。
日本に与えられた国際的使命は、武器援助ができない以上限られています。
大量にバラ撒かれたロシア地雷の撤去、病院・学校の再建、財政援助、そしてロシアへの軍事支援の阻止です。
そのために、いまインドに対してやらねばならないことは、インドにロシア制裁に加わってロシア産原油の輸入を減らしてくれることを依頼し、武器支援などはしないと言明させること、でした。
誠心誠意、共にウクライナ支援に立ち上がってくれることを依頼するのが、林外相の任務だったはずですが、自分からコケてしまったのですからなんとも。
一方林氏にすれば、岸田氏の了解をとって「欠席」を決めたはずですから、彼から見れば二階に上がってはしごはずされた気分になるでしょう。
同時に、これで彼の次期首相のメは消えました。
安倍氏がいたら特使で派遣してモディ氏と直接会談という手もあったのに、本当に彼のいない欠落はあまりにも大きい、と涙が出ます。
今回も、ほら言ったことじゃないでしょう、岸田さん、という安倍氏の声が天から聞こえて来そうです。
よく知られたことですが、林氏の外務大臣起用には、安倍、麻生か共に反対しています。
菅氏も聞かれればいい顔をしなかったはずです。
苦手ですが、内政の話を少々。
耳学問になっちゃうんだよな、内政って。ま、いいか。
岸田氏は、首相となっても宏池会の長から降りず座り続けたのは、派閥が安定しなかったからです。
前会長である古賀誠氏は引退したのにまだ脂ぎっているようで、傘下の議員に強い影響力を持っているそうです。
彼の立場は安部氏ビジョンを、逆さにしたものだと思えばよいでしょう。
共産党機関紙『しんぶん赤旗』にも改憲阻止を訴えて顔を出すお方です。
池内さおり Saori Ikeuchi 東京12区さんはTwitter
「96条をかえて憲法改正手続きのハードルを下げるということがでていますが、私は認めることができません。絶対にやるべきではない」とのご託宣でした。
90年代末の自民党幹事長連は野中、加藤の両幹事長、山崎副総裁と全員揃って、実にステキなうすらピンク色に染まっていました。
それはさておき、今話題の林氏は、この古賀の舎弟なのです。
考え方も古賀氏と似ているのでしょう。
そして虎視眈々と、岸田の次はオレだと考えています。
彼が参院から衆院に鞍替えしたのは、総理・総裁を狙っているというのがもっぱらの下馬評ですから、こんな奴を野放しにすると岸田氏は寝首をかかれる可能性があります。
だから位打ちで重要ポストに就けたのです。
もうひとつの側面が、副総裁の麻生氏との関係です。
麻生氏はいまは独自派閥ですが、元来は祖父の吉田茂が作った宏池会の流れに属していました。
俗に保守本流と言われています。
ですから、麻生氏の宿願は、岸田氏が率いる宏池会と合流して「大宏池会」を作ることでした。
ところがそれを阻んでいるのが、麻生氏の天敵の古賀氏だったからややっこしい。
なんせ麻生-古賀の遺恨試合はいまだ続いていています。
なまじ選挙区が同じなために、福岡1区の候補者公認となると、常に両派がバトル。
ですから、麻生氏は総裁選で岸田氏を推す条件として上げたのが、古賀氏の最高顧問解任だったそうです。
始めは岸田氏はこれを拒否し、後に古賀氏を最高顧問から解任に踏み切っています。
こんなガタガタに派閥がなるのは、ひとえに岸田政権の基盤が脆弱だからです。
逆に言えば、安部氏が強かったのは、高い理念とそれを語れる弁舌を備え持ち、そして圧倒的多数の最大派閥「清和会」(安部派)を率いていたからです。
だから高潔な精神を持ちながら、どぶ泥のような党内政治で勝ち抜くことができたのです。
安部氏と比べると、岸田氏はすべてに「そこそこ感」満載です。
理念はおしなべてうすらピンクに染まっており、非核と増税以外にこれといって岸田氏独特の主張は見当たりません。
しかも岸田派は第4派閥にすぎませんから、自民党内でも弱小派閥でありパワー不足です。
そのうえ派閥内も安定しないのですから、長続きを望むほうが無理です。
だからせめてじばんだけは固めたいと、誰が見てもこの時期適任とは思えない林氏を外相に据えたのは、自派閥すら統制できないで政権運営ができるか、という他派閥野声をはねのけたかったのかもしれません。
こういう情けない派閥力学の結果、転げ込んだのが林氏の外相就任でした。
林外相「G20欠席」がインドに与えた衝撃:フォーサイト編集部 | 週末に読みたい海外メディア記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp)
うがった見方をすれば、岸田氏は林氏を「行かせない」ことで、外相失格の烙印を押したかったのかもしれません。
岸田氏が考えているのは、安倍外交の「八掛け完成」です。
外交においては、安倍氏のやり残したクアッドを完成に導き、英豪と同盟関係を構築しつつインドとも準同盟を結び、NATOとの緊密な連携を構築する、ことをなし遂げることです。
内政では、原発の再稼働と、なんといっても憲法改正をなし遂げてしまって下さい。
ここまでできれば、安倍氏と並ぶ大宰相として長期政権も夢ではありません。
そのためには、彼のソコソコ感を丸出しにして、理念は語らないことです。
課長止まりの手腕を逆手にとって、野党と波風を立てずに、野党が好きそうな非核を叫び続け、保守層から嫌われてもここまでやれれば立派。
しかし増税で財務省に媚びを売れば、保守層が背くでしょう。
思えば、安倍氏は自分で全部やってしまうのではなく、ふにゃふにゃしたリベラル顔の岸田氏に残りを仕上げさせる気だったような気もします。
実際、防衛3文書など、安倍氏がやったら安保法制並で荒れたでしょうからね。
安部がつき、菅がこねし天下餅、座して喰らうは岸田文雄、といったところでしょうか。
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岸田首相は党内外やインド高官からの批判を受けて、つまりは林大臣欠席のフォローのためが訪印の主たる目的でしょう。
しかし、そもそも日本国外務省がインドとのG20日程調整を失敗した原因は、インド側が日本の都合よりも中共の都合を優先したからです。
そうしてみれば、インド側からのG20欠席批判はお門違いでしょう。
それでも林大臣は国会よりもG20に出席すべきだったと私は考えますが、岸田=林ラインは欠席について相当腹を括っていたハズ。
このちぐはぐな外交音痴さは、インドをして「中・ロにもうちょい近づいても大丈夫」とのサインとなるでしょう。
このようなコンビが「レーダー照射問題」を棚上げにしたままで、地域の安全保障のために韓国に譲歩しようと言うのですから、まず先が見えてます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年3月 7日 (火) 05時13分