林外相G20会合に「行かない」ということの重さ
林外相が、昨日開かれたG20の外相会議を欠席したことについて、まだくすぶっているようです。
まぁ、だよね。
とうとうホスト国のインドまでが怒りだしたようで、いくらFOIP外相会談のほうには出るからさぁ、と言っても鎮火しないようです。
もはや国際問題ですか。
【ニューデリー時事】日本の林芳正外相が国会対応のため1日からの20カ国・地域(G20)外相会合を欠席することについて、議長国を務めるインドの主要紙は「日本の信じられない決定」(ヒンドゥスタン・タイムズ)など総じて批判的に受け止めている。
ヒンドゥスタン紙は、欠席を巡って日本国内で批判が集まっていることも紹介しながら「決定はインドを動揺させる可能性が高い」と伝えた。経済紙エコノミック・タイムズは「日印関係に影を落とすかもしれない」と指摘した」
(時事3月1日)
「信じられない決定」 林外相G20欠席に批判的 インド主要紙(時事通信) - Yahoo!ニュース
林芳正外相、日韓協力「今ほど重要な時はない」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
外相が外交問題引き起こしたらシャレになりませんな。
副大臣を出すという問題じゃないのですが、林氏はお分かりになっていないようです。
いいでしょうか。G20が外相をだした時に、日本だけが格落ちの副大臣を出したら、それは「オレの国はこんな会議はくだらないと思っている」という意志表示にとられかねませんよね。そんなこともわからないんですか。
いや、あれは国会開催中はの外遊は慣例で禁じられているんで、などといっても無駄。
そんなドメスティックな慣習は、日本人ですら知らないくらいですから、インド人はもっと知らない。
このウクライナ戦争という難しい時期に、ロシア、米国も参加するG20の議長国をせねばならないインドの意気込みと不安は察して余りあります。
モディ首相は故安部首相と強い絆で結ばれていました。
安部氏はなにをさておいてもインドに訪問し続け、インドは彼をなんとパレードで出迎えてくれたものです。
B_Otakuのクルマ日記 特別編 閲覧注意 (b-otaku.com)
安部氏を通じて、インドは自由主義社会に目覚めてクアッドに参加することを決意したのです。
モディ首相の安部氏追悼文にはこのような一節があります。
「インドと日本の戦略的パートナーシップを変革させるというこれまでにない取り組みにおいて、安倍さんと共に働くという栄誉に恵まれました。
安倍さんは、それまで比較的経済面に限定されていた印日二国間関係を、国家利益にかなう他分野に拡大しただけではなく、両国そして域内の安全保障の柱となりうるよう、より広範かつ包括的な関係へと昇華させたのです」
私の友人、安倍さん…インドのモディ首相が追悼文 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
林氏はこのインドとの固い絆を壊してしまったのですから、たいしたものです。
モディ氏は日本に反安部政権ができたと感じたことでしょう。
さて、G20の参加国とはこんなメンツです。
フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合(EU)(G7の議長国順))に加え、アルゼンチン、豪州、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ。
ちなみに2日の会議の出席者はこのようなクラスです。
G20の分断深刻化 外相会合、途上国は対露批判に同調鈍く(産経新聞) - Yahoo!ニュース
トルコには大地震の見舞いと今後の支援について伝えねばならないでしょうし、国際的支援の枠組みづくりを提起せねばなりません。
そもそもウクライナ戦争で紛糾することは目に見えていますし、そのとおりになったのですが、ここで首脳が「キーウに訪問していない」唯一の自由主義国なうちの国が、さらに議長国の足を引っ張ってどうしますすか。
いま急務の広範な対露包囲網の形成には、G20議長国のインドをぜひ棄権の立場から、侵略に対抗する立場に変えねばなりません。
そのうえに、今やインドはグローバルサウスの自由主義国側の牽引車です。
ですから大前提として、この時期にG20議長国という困難な仕事をしているインドへのリスペクトが大前提なのです。
共に困難をシェアする、それができないようなら、外相などいてもいなくても関係ありません。
インドの有力メディアが、「国内事情での外相欠席は、議長国インドをいら立たせるだろう」といった論評を乗せたのは、インド政府のいらだちを代弁したものなのです。
しかも、G20に欠席する理由がわからないから困ります。
参院自民党から、国会審議を重要視しろと言われた、という話も出ました。
「理事懇談会では、23年度予算案の審議を巡り、岸田首相と全閣僚が出席する「基本的質疑」を3月1、2日に行うことで一致した。3日には、首相と鈴木財務相、要求された閣僚が出席する「一般質疑」を行うことでも大筋合意した。
3日は、インドで日米豪印4か国の協力枠組み「クアッド」の外相会談の開催が調整されている。野党がその日の予算委で林氏の答弁を要求すれば、クアッド外相会談も出席できない」
(読売3月1日)
林外相、G20欠席へ…参院予算委が審議出席要求(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
他の野党は、いつもなら「国会軽視だ」と騒ぐのですが、今回に限ってそんなことを言ったのは、安定の反日運行の共産党だけです。
維新はこんな国会慣習は廃止してしまえと言っていますし、立憲も今回は妙にものわかりがよいことを言っています。
「立憲民主党の斎藤嘉隆参院国会対策委員長も27日に「国会対応を優先してもらいたい」と求めた」
(日経3月1日)
林芳正外務大臣がG20欠席、外交より国会慣例 答弁は53秒のみ - 日本経済新聞 (nikkei.com)
おいおい、立憲からも出た方がいいと言われたら、もうヘソ噛んで死んだほうがいいと思うゾ。
そして「日本不在」を示した言い訳の国会答弁は、大演説のひとつでもやったのかと思いきや、たったの53秒(笑)。
「林氏は3月1日の参院予算委員会におよそ7時間出席した。質問は自民党の上月良祐氏による1問のみで、答弁時間は53秒。テーマは在外邦人の孤独・孤立対策だった。
憲法63条に答弁を求められた首相や閣僚は国会に「出席しなければならない」との規定はある。一方で、基本的質疑への閣僚出席に関して国会法などに明確な法的根拠があるわけでない」
(日経前掲)
参院自民党の幹事長は世耕氏ですから、安倍氏ならゼッタイにインドを優先しましたよね、あなたもう安部派の後継者になれないね、宏池会に来ます、と言って黙らせればよい。
林外相の「出ない」という所業は、おそらく安部氏の外交路線を継承しない、できたら壊したい、宏池会流にやりたいというポーズなのですから。
そこまでやるとはさすがに思えませんが、昨日のウォールストリートジャーナル風に言えば「中程度の確信」でしょうか。
とまれこの時期に、外相がG20外相会議に「出ない」という選択がないことくらい党内に説得できないようなら、辞めてくれたほうがいいようなものです。
林氏はG20外相会議にはでられなくても、クアッドには出られると思ったといいますが、2者択一の問題ではありません。
どちらにも出るのが外相としての義務です。
義務を遂行できないような外相は、存在自体が国益を毀損しているのですから、即刻解任すべきです。
というか、こんなことを黙認したのが岸田氏なのですから、一緒に辞めたらいかがでしょうか。
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岸田は安倍政権で長いこと外務大臣やってたんだから重要性くらい良く分かっているだろうに。むしろ「何が何でも行ってインドの顔立てて来い!」と命令しなきゃですね。何日も前からインド側から「がっかりだ」というサイン出てたんだから。。
投稿: 山形 | 2023年3月 3日 (金) 06時10分
岸田もいつものパターンで、自分自身でことの良し悪しを考えず、色んな人に「会議に行かせろ」「いや行かせるな」「国会優先しろ」「いやしやくて良い」と言われて、訳わからなくなって「とりあえずステイ(国会優先)で!」となったのでしょう。
トップの器ではない。
投稿: | 2023年3月 3日 (金) 08時23分
先の国連総会でのスピーチは、
英文(原文)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100464036.pdf
日本語仮訳
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100464035.pdf
(↑鶴岡路人先生のツイートで知り。ちなみにこういう大事な文章を直ぐにリリースしないのも、新聞が全文載せないのも役立たず)
全文を通読してもこれまでにないインパクトある良いもので、これを作成した方々が素晴らしかったわけですが、ともかくもあの時林外相はこれを述べることが選べて、評価も得られました。
けれどやはり、どこかで裏切るという予想は裏切らない。
ウォッチャーにとっては「あーやっぱりね」と思うも、裏切り方がダイナミックです。
何事にもなかなか腹を立てない方のアタクシも、これは「残念」では済まない大損害、しかも間違いなく防げたはずの大損害で、心底まずいことだと考えます。我が国の失地回復ができるのだろうか。
「外交で解決しろ!」や海外出羽守の人たちほど、もっともっともっと怒って宜しいはず。
最新評価「53秒の男」(オフィス・マツナガさんから借りパク)の林外相だけでなく、関係する全ての人たちがどうしてアレを選ぶ、選ばせる判断ができてしまったのか、深く反省して挽回に動くだろうか…
投稿: 宜野湾より | 2023年3月 3日 (金) 09時37分
一般人の自分が考えても、国会の53秒よりG20の方が何百倍何千倍重要かわかります。まして、超一流の大学出た外務省の官僚の方々や、国会議員の先生方が、それが分からないなんて、不思議でなりません。いろいろ言われてますが、自分は、林さん自身が確信をもって欠席したものだと思っています。正直、TVであの人の顔見るたび虫唾が走ってしまいます。出来ることなら速攻辞めてもらいたいけど、無理ですね。
投稿: 一宮崎人 | 2023年3月 3日 (金) 13時41分
インドがこれほど不満を表明するって事は大臣欠席についてむこうサイドの了承も取り付けてなかったという事…
向こうからしたら完全に軽く見られたと思われてもしょうがない。
相手におもねる丁寧(すぎる)外交が売りの日本にとってはとんでもない失態です。
まして外務大臣経験者の首相がこの判断ですからね。
その岸田首相、WBCの始球式には御足労頂けるとのことで開いた口が塞がりません。
この状況を考慮して発表前にキャンセルすべきだったのではないでしょうか?
下手に国際的なイベントだけに世界中に広まりますよ。
投稿: しゅりんちゅ | 2023年3月 3日 (金) 18時23分
立憲が物わかりがよさそうな発言をしたのは、単に日和っただけなのかも。言う事がブレまくりなのは、流石ルーピー遺伝子の継承者。
投稿: KOBA | 2023年3月 4日 (土) 13時58分