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2023年3月31日 (金)

英国と日本のマリアージュが始まる

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日英同盟( Anglo-Japan Alliance)が絵に描いた餅から、現実のものになろうとしています。
戦前の日英同盟が米国の反対で廃棄され、そこから大戦と亡国へとつながっていったことを考えると、新しい歴史的な出発点が間近に迫ってきた気がします。

この数年で世界とアジア情勢は大きく変化しました。
いままで日米同盟が単独で支えてきた対中シフトに、オーストラリア、そしてインドが加わり、FOIPという陣形が姿を見せ始めたからです。
そしてこれに英国が加わろうとしており、誘われるようにしてフランス、ドイツといったいままで中国ベッタリだったNATO諸国も東アジアに艦隊を派遣しました。

大きく時代が変わろうとする地殻変動の地鳴りが聞こえてきます。
こういう歴史的変化をまったく報じないで、「大臣レク」があったのなかったの、「高市が逃げきった」からどーしたのこーしたのと、ああ、くだらない。とことんドメスティック。
世界は永田町から半径3キロで回っているようです。

オールドメディアのバカを言い募っているとキリがありませんからこれくらいにするとして、CPTPP (アジア太平洋地域における経済連携協定 Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership) の英国加盟協議は佳境に入ったようです。
日本のメディアはほぼスルーのようですが、唯一FNNがこのように短く報じています。

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FNN

「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に、イギリスが加盟することで、3月中にも大筋合意することがFNNの取材でわかった。
TPPは、加盟国の間で関税の撤廃や引き下げ、貿易ルールの共有などがおこなわれる協定で、日本やオーストラリア、カナダなど11カ国が参加して、アメリカ抜きで発効した。
アメリカの離脱をめぐっては、トランプ氏が大統領就任を控え表明した際に、当時の安倍首相が「大変厳しい」と語っていた。
イギリスは、EU(ヨーロッパ連合)からの離脱をきっかけに、2021年からTPP加盟国との交渉を進めていた。
複数の政府関係者によると、3月中にも12カ国目として加盟することで、大筋合意するという。
イギリスはTPPに、日本に次ぐ2番目の経済大国として参加することになる」
(FNN3月28日)
【独自】イギリスがTPPに加盟へ EU離脱後から各国と交渉 12カ国目、日本に次ぐ経済大国(FNNプライムオンライン(フジテレビ系)) - Yahoo!ニュース

おいおい、3月中ってあと2日しかないぞ。
1カ月ほど前に、ポリティコがこのように報じています。

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FNN

「英国は、欧州連合を離脱した後、世界の他の地域との商業的関係を拡大しようとしているため、近い将来、太平洋横断貿易ブロックに参加することを望んでいる、とビジネス貿易大臣のケミ・バデノックはこう述べた。
「私たちはすぐに参加しようとしています」とバデノックは木曜日に議会で語った。「私たちは交渉の素晴らしい段階に達しました」そしてやがて「良いニュース」があります。
11年前にEUを離脱して以来、英国の保守党政権は、ブレグジットのメリットと呼ばれるものを実現するために、一連の新しい貿易協定を仲介しようと努めてきました。英国はすでに環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の13加盟国の半数以上と二国間協定を結んでいるが、協定に参加すると、世界経済生産高の多くを占める国々との貿易の車輪にさらに油を塗るでしょう。
野党労働党が残留農薬などの分野で基準が弱まると警告した後、バデノック氏は、英国はCPTPPに参加するための交渉の最終段階で食品基準を保護するために取り組んでいると述べた。また、英国が協定への参加と引き換えにマレーシアからのパーム油の輸入関税を緩和する懸念もある」
(ポリティコ2023年3月1日)
英国は「差し迫った」環太平洋貿易ブロックへの参加を検討 |エッジ市場 (theedgemarkets.com)

しかしいずれにせよ、大勢は決したようです。
英国は12番目の加盟国としてCPTPPに加盟するでしょう。
英国加盟が実現されれば、日本外交の大きな勝利です。
故安倍氏が残した遺産である「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の経済面であるCPTPPに、ヨーロッパにおける初めての参加国として英国を迎えることができれば、アジア・太平洋地域の自由主義陣営はさらに強化されます。

英国国際問題研究所(チャタム・ハウス)報告によると、日英関係がパートナーシップとして発展する要素はたくさんあると指摘しています。
CHHJ7800-UK-Japan-Report-JAPANESE-WEB.pdf (chathamhouse.org)

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◾英国はインド太平洋地域の政策をより明確かつ公的なものにし、地域の同盟国と協力して、戦略的目標を実現するために、軍事、外交、経済分野における共通の価値観に関する声明と協調を図るべきである。日本との「準同盟」は、新しい時代の高い野望を反映した正式な合意に基づく。
◾英国は、環太平洋パートナーシップ(CPTPP)の包括的かつ進歩的な協定 への加盟を求めることによって、共有された経済及び貿易利益を保護するためのメカニズムを強化することができる
英国は日本企業にとってヨーロッパへの入り口として貴重な役割を果たしてきた。既存の外務・防衛大臣の「2+2」会合は、FOIP 戦略における英国のパートナーシップを定義する必要性に基づいて、貿易・投資政策を扱う閣僚を含むように拡張され、より総合的な「3+3」形式になる可能性がある。
英国は日本でイギリス海軍の軍艦を前進させることを検討すべきであるシンガポールやブルネイに新しい英国基地が加わると、日本は北朝鮮, 北極海,北太平洋周辺の作戦に向けてより良い立場にある 。
また、米国第7艦隊と海上自衛隊とのシームレスな統合を促進する。
CHHJ7800-UK-Japan-Report-JAPANESE-WEB.pdf (chathamhouse.org)

う~ん、わくわくしますね。大きな鳥が殻をやぶって翼を拡げようとしているようです。
このチャタムハウスの文中に「準同盟」と記されていることに注目してください。
この表現は、テリーザ・メイ首相が来日した時に使った"like-minded "な国(価値観を共有する国家)と照合します。
英国がファイブアイズ(英米豪NZ)といったアングロサクソン系国家以外に、この表現を用いたのは日本が最初だそうです。

テリーザ・メイ首相の時期から、英国は「グローバル・ブリテン」構想を立てていました。

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英連邦(コモンウェルス)

メイを引き継いだボリス・ジョンソンは、EUという名の「ヨーロッパ合衆国」を拒否し、独自の国家戦略の展望としてアジア・太平洋を選択しました。
そこに新しい巨大経済圏を作り、EUでは望めなかった多くの国との自由防衛協定を締結し、徹底した規制緩和によって外国企業を呼び込み、西の拠点としてのロンドン、東の拠点としての東京を構想しました。
東の拠点が東京であるのは、安倍氏が米国離脱後に空中分解しかかったTPPを独力で牽引し、その指導的国家となったからです。
この東のTPPと英国の英連邦自由貿易圏構想がドッキングして、多重なFTAで結ばれた巨大なマーケットに世界から多くの先端企業や金融を呼び込むという気宇壮大なものです。
この中で、英国はロンドンのシティを「テムズ河のシンガポール」として位置づけようとしています。

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読売新聞写真部さんはTwitterを使っています: 「英国の最新鋭 #空母「クイーン・エリザベス」が4日、米海軍横須賀基地に到着しました(読売ヘリから、上甲鉄撮影)。画面中央奥は、海上自衛隊の護衛艦「いずも」

そしてこの巨大経済圏を守る防衛力が、日米同盟を機軸とした日米英豪の軍事的連携です。
具体的には、チャタムハウスは、英国は英海軍のシンガポールやブルネイの海軍基地を利用可能とすることを提言しています。
また、米国第7艦隊と海自とのシームレスな統合に強力するとも提言しています。

チャタムハウスは、これらの構想を具体化するために、日英はいままでの2プラス2(防衛・外交大臣間協議)から3プラス3(防衛・外交・通商)に発展させるべき時期だとも言っています。
このような大きな状況を眺めてくると、今の日英準同盟は実はもっと大きなアライアンス(同盟)につながっていく過渡的なものに思えてきます。
それは「アングロサクソン+日+印連合」という国家間アライアンスです。

世界はウクチイナ戦争移行、大きくは自由主義陣営と独裁国家群との冷戦に突入し、さらに自由主義陣営は2つのクラスターになっていくかもしれません。

一つ目のプレートは、米国を盟主とするアングロサクソン圏+日+印連合
二つ目は、ドイツを盟主とするヨーロッパ合衆国連合

このように見てくると、世界のプレートが三つに割れていこうとする、まさにその歴史的時期に私たちは立ち会っているのかもしれません。
英国、CPTPPへようこそ。

 

※追記
英国の加盟が11カ国で認められました。

「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に参加する日本など11カ国は31日、英国の加盟を認めることで合意した。2018年に協定が発効して以降、新規加盟が認められるのは初めて。英国の加盟により、TPP経済圏はアジア太平洋地域から欧州へと拡大することになる。
31日にオンラインで開いた閣僚級会合で合意した。英国は早ければ7月にニュージーランドで開催される閣僚級の「TPP委員会」で協定文書に署名する見通し。署名後、各国の承認手続きを経て、英国の加盟が正式決定する。
 英国は20年末に欧州連合(EU)から離脱完了し、EU以外との経済関係を強化する狙いから21年2月にTPPへの加盟を申請した。英国が加盟すれば、世界全体の国内総生産(GDP)に占めるTPP加盟国の合計は12%から15%に拡大する」
(毎日3月31日)
TPP、英国加盟で合意 協定発効以降、新規加盟は初(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

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コメント

10年前が分かれ道でしたね。
当時は自民党でも一部農水族はTPP絶対反対!という中での難しい局面で安倍総裁がなんとか導いて圧勝した衆院選。私も当初は疑問でした。
もし、あれで民主党政権が続いていたら···もう、ちょっと考えただけでゾッとします!
あとはちゃんとしたスパイ防止法と能力が必要です。

民主党候補や農協が組んで大反対していたTPP、オバマ時代に甘利さんが強面のフロマンを口説き落としてアメリカ加入させたのを政権交代でトランプがひっくり返しちゃいましたけど、とにかく成立して良かった。
そこに欧州ではブレグジットやらなんやらありつつ中国の露骨な一帯一路に戦狼外交にロシアのヨーロッパ融和離れというダイナミックな動きが重なって、状況は一変しました!!

英国にはピトケアン諸島がありますので環太平洋で。

私も最初はTPPで日本は喰われる論に注目した頃がありました。
でも民主国家の国際的枠組みですから、メリットを貰ったり譲ったりはあって当然ですね。その中身を見て不断の勉強を続けないと、ですね。
我々の側にも他人の仕事に安さと便利さ、都合良さを求め過ぎる意識を変える必要はあると思いつつ、考え得るメリットの一面にIT産業を考えてみました。
英国には、米国でいうシリコンバレーに相当する地域が幾つかあります。
スコットランドの「シリコン・グレン」はかつて電子産業一択だったせいでITバブル崩壊による大惨状を被り、そこから脱却すべく、世界のユーザーに愛されるゲームソフトをつくるRockstar Gamesを始めとする数々のソフトウェア産業と、新たなテクノロジーの開発に取り組むベンチャーの育成を柱にしながら、稼ぎの多様化に挑んでいる最中です。
また、イングランドのケンブリッジ周辺には「シリコン・フェン」があり、半導体設計と知財ライセンス提供のArm Holdings(今ソフトバンク傘下なのが玉に瑕)や、人間のプロ囲碁棋士に勝ったプログラムAlphaGoでおなじみのDeepMindなどを始めとして、有望企業が集積されています。
いずれの地域でも、知財を研究者開発者に帰属させて独立しやすい環境を整えることで投資も呼び込み、エンジェル投資家とユニコーン企業の誕生を促進する目論見と仕組みがあり、英国政府も産学連携を深化させる政策を取っています。
こうした方向性や具体策を我が国が学び取り入れ、互いに進出し合ってメリットが生まれてほしい、そして地続きに台湾のCPTPP加盟があることがどれほど重要か。
現状から描けてしまう我が国の将来像の厳しさ塩っぱさばかりを思っていても楽しくはない、裏打ちし合う経済圏と防衛力へ、考えは膨らみます。

中国と台湾の加盟申請をどうするのか。
中国を断り台湾を入れるのが良いのでしょうが、これに中国がイチャモンを付けてくるのは必須ですね。

脱退したアメリカに言われ半導体製造装置の輸出規制も強化されるようですし、中国との関係は悪化し、対立はより強くなる。
今の外務大臣で大丈夫かな。

このアライアンスは、セキュリティクリアランス整備を日本が何がしか構築した後やっと本格始動することでしょう。
高市大臣の在任中にやり遂げられることを切望します。

欧ー米英ー日ー印、この中でグローバルサウスの中規模国との乖離に対してポジティブに橋渡しできる位置に日本はあります。
日の出の勢いのインドとはまた違うスタンスで欧米との溝に通路を作る。政府及び自民党チームも既にアジア歴訪して動いているようです。
同時に、ODA一本槍でない協力関係作りが急務だと細谷氏始め国際政治識者達が発信され一定の支持を得ているのを観て、やっとここまでと嬉しく思います。

TPP、クアッド他アジア太平洋には何重にも枠組みが積まれました。これ一つ一つでは絶大な効力がないけれど、大きくても何も決められない。
多様すぎるアジアを、ケースバイケースで使える渦巻きを選んで回していく為の、現実的な枠組みなのかと最近思う次第です。

> 自由主義陣営は2つのクラスターになっていくかも
こちらならではの興味深い考察ですね。
インドは単体で違う方向にいくかもしれません。独欧州グループが厳しいなあ…。

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