トランプのウクライナ「暴言」について
トランプが大統領になったらウクライナ支援を真っ先に止めると言ったので話題になっています。
共和党大会で、こんなことを言ったらしいですね。
「アメリカ・ファースト」を強調するトランプ前大統領が演説を行い、大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止するなどと述べ、自身への支持を訴えました。
トランプ前大統領:「ジョー・バイデンをホワイトハウスから追い出し、これを最後に、アメリカを悪党どもから解放するつもりだ」
トランプ前大統領は4日、共和党保守派による大規模イベントの演説で大統領への返り咲きに自信を示し、そうなれば、最優先でウクライナ支援を止めると表明しました。
メキシコ国境の強化なども掲げ、「アメリカ第一主義」の復活を目指す姿勢を印象付けています。 「アメリカ・ファースト」を強調するトランプ前大統領が演説を行い、大統領に返り咲いたら真っ先にウクライナ支援を停止するなどと述べ、自身への支持を訴えました。
トランプ前大統領:「ジョー・バイデンをホワイトハウスから追い出し、これを最後に、アメリカを悪党どもから解放するつもりだ」
トランプ前大統領は4日、共和党保守派による大規模イベントの演説で大統領への返り咲きに自信を示し、そうなれば、最優先でウクライナ支援を止めると表明しました。
メキシコ国境の強化なども掲げ、「アメリカ第一主義」の復活を目指す姿勢を印象付けています」
(テレ朝3月5日)
トランプ氏「最優先でウクライナ支援停止する」 大統領への返り咲きに自信 (tv-asahi.co.jp)
さっそく保守界隈のみなさんから、またまたトランプダメ論が噴出しています。
トランプはプーチンとディールして手打ちするつもりだ、白旗上げて交渉しろという橋下徹と一緒じゃないかというわけです。
そうですかね、私はそうも思わないけど。
このトランプというヘンな政治家は、いいところでもあるし悪いところもありますが、特徴的なのは増幅して発信することです。
分かりやすくはしょって、口汚く、しかも人一倍デカイ声で芝居ッ気たっぷりに言ってしまうのです。
時事
一言えばいいところを十言う。
大のプロレス好きで、実際に関わっていました。似合いすぎてコワイ。大統領より似合っているくらい。
うまくはまると、国民大衆の欲するツボをピタリと押さえますし、失敗すると例の米国議会占拠事件のように凶事の引き金を引いてしまったりします。
彼を言葉に慎みがなく、下品で大統領としての威厳に欠けるという評判は、支持派、反対派共に大勢います。
大統領だった時は、ボルトン補佐官とポンペオ国務長官、マティス国防長官が補佐してくれましたが、いまはひとり荒野に吠える野人です。
ではなぜ、こうもあえてヒールめたいたしゃべり方をするでしょうか。
会った人たちは、トランプは下馬評とは違って、よく他人のいうことに耳を傾けるタイプだと評しています。
おそらくこの言い方は、トランプが言葉遣いと礼儀作法にうるさいエスタブリッシュメントに向けてしゃべっていないからです。
彼が語りかけているのは、東部のアイビーリーグを出たボタンダウンの似合う知識階級ではなく、すりきれたジーンズを履き潰し、爪の間の機械脂が抜けないような労働者階級であり、ダイナーでチリを食う商工業者やザラザラの手をした農民なのです。
だから、トランプの発言は常に芝居っけたっぷりにデフォルメされており、極端に聞こえます。
中層下層階級は、戦争などしたくないのです。
真っ先に駆り出されて死ぬのは自分で、戦争のコストを税金で支払うのも自分達だからです。
思えば、米国外交は失敗続きでした。
米国のトラウマとなったベトナム以降、米国はしなくていい戦争をどれだけしてきたことか。
そしてことごとく「失敗」しています。
イラク戦争とその後の安定化政策のために、約5千人の米兵が戦死し、M1戦車すら与えたイラク軍は、いまや丸々イランの手に落ちようとしています。
イラク戦争とは?原因や目的などをわかりやすく解説 | 世界雑学ノート (world-note.com)
20年近いアフガニスタンでの治安維持作戦と国家再建計画は、無残なまでに失敗し、追い出されるようにして米国はアフガンを去りました。
下の写真をご覧ください。これは米軍撤退直後の7月初めに撮られたものですが、そこかしこに車両は散乱し、食料や備品も置き去りにして米軍は「夜逃げ撤退」をしてしまいました。
この撤退直後、包囲していたタリバンが素早くこの基地を接収し、いまは彼らの軍事拠点になってしまいました。
これでは米国の威信もへったくれもありません。
いくらバイデンが「類まれな勝利」と言い募っても、ただの敗走にすぎません。
車放置、食料散乱…米軍ひっそり撤収 アフガン・バグラム空軍基地
リビアでの政権交代や、シリアでのゲリラ戦の関与も失敗しました。
そしてこの間にアジアは手薄になり、南シナ海全域を中国は事実上の領土・領海としてしまいました。
JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)
「今回フィリピンが公開した写真以外に、米シンクタンクや米国防総省なども南沙諸島の中国人工島建設状況に関する空中写真などを断続的に公表している。
それらの写真情報によると、かねてより明らかになっていた3つの人工島に設置された3000メートル級滑走路の周辺には、格納整備施設をはじめとする建造物などが着々と整備され、航空基地が完成しつつある。それらの主要人工島だけでなく7つの人工島すべてにさまざまなレーダー設備や通信施設が設置されており、南沙諸島に点在した人工島をネットワーク化した中国人民解放軍の前進軍事拠点(南沙海洋基地群)が完成するのは間近と考えられる」
(木村淳史2018年2月15日)
日米の無策をよそに、中国が南シナ海をほぼ掌握 中国の人工島基地、北朝鮮問題に隠れてますます充実(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)
この20年間、莫大な予算と多くの米国人の生命が失われましたが、そこで勝ち得たものはあまりに少なく、あまりに大きな犠牲でした。
これを起こしたのは、民主党、共和党の区別なく、「言葉遣いに慎重かつ上品なエスタプリッシュメント」たちでした。
トランプの政策は、民主党か共和党を問わず、彼らに対する根深い不信感から出ています。
トランプは共和党内にいながら、実は「トランプ党」なのです。
そのことを隠そうともしないし、共和党主流は一貫して彼の敵でした。
時事
彼はエスタブリッシュメントたちに対して、冗談じゃない、もうお前らの犠牲になるのはこりごりだ、という声を叩きつけました。
あんた方は上品なことを言っているだけだが、戦うのはオレたちだ、戦争をする前になぜ同じ米国のパワーを使って止めることを考えなかったのか、と言っています。
州兵までアフガンに突っ込むようでは世も末だ、こんなくだらない戦争をするより国内がひどいことになっているのに、なぜ眼を向けないと彼は言います。
戦争や大きな政府の福祉領政策のために税金は高くなる一方だから減税を実施しろ、連邦政府は大きくなりすぎて硬直しているので規制緩和をしろ、外国人不法移民に職を取られないように国境警備を強化しろ、暖炭素で高騰しているエネルギー価格を安くするために炭鉱を復活させろ、といった政策はことごとくエスタブリッシュメントから嫌われました。
トランプが心を砕いたのは、戦争をすることではなく、戦争を未然に防ぐことでした。
戦争をさせないことこそが、トランプの真骨頂なのです。
もっとも成功した例は、イスラエルとイスラム教スンニ派のアラブ諸国との国交正常化に向けた「アブラハム合意」の枠組みを作ったことでした。
この合意によって、イランは完全に包囲されました。
イランと戦争をして解決するのではなく、テロの輸出をさせない仕組みが出来上がったのです。
また中国に対しては軍事的圧力ばかりではなく、むしろ中国への経済依存から米国を切り離す政策を打ち出しました。
中国に逃げていた米国に工場を持ち帰ることで、雇用を増やしていきました。
また、50年以上も手つかずのフローズン・コンフリクト(凍った紛争)となっていた朝鮮に対して激烈な軍事敵圧力をかけ続けました
日本海に3隻の空母を並べて見せたり、シールズの斬首チームを送り込んだりしたのもこの頃です。
その一方で大胆な対話の呼びかけて正恩をおびき寄せ、2回の直接会談で事実上の核凍結にまで持ち込みました。
トランプ大統領、金正恩氏が重篤との報道「正しくないと聞いている」 - Bloomberg
これなどまるで大仕掛けなイリージョンを見るような鮮やかな手際でした。
イラン、北朝鮮外交はまさに米国外交のレガシーでした。
バイデンには逆立ちしてもむりです。
もし2期目がトランプにあったならと考えてみます。
たぶんトランプはプーチンに戦争をさせなかったはずです。
プーチンが侵攻に踏み切ったのはバイデンの、「ロシアと戦争になるじゃないか」という一言があったからでした。
これでプーチンは、米国がウクライナ侵攻しようと軍事介入はしないと見込んだのです。
トランプなら、本気で戦争をする気なのかと思えるほど、対ロシアへの軍事的プレッシャーを強めたでしょう。
限定戦争なら受けて立つというくらい吠えたかもしれません。
そしてそれ以上にNATOに対しては、口汚いばかりに軍備の増強を要求し、ウクライナが侵略されたら次はお前らだとメルケルに言ったかもしれません。
民主党のウクライナ支援は間違っているとは思いませんし、増強することがあっても削減などすべきではないのはいうまでもないことです。
しかしそれ以上に、「戦争をさせない」ということに、米国は最大限の圧力をかけてもよかったのです。
トランプの言いぐさは常に逆説的です。
一定の変数の中で発言しますから、予測することが困難です。
またいまのようなひとりの野人としてのトランプではなく、チームトランプとでもいうべきボンペオが入って脇を締めた場合には、そうとうに違った発言と行動になるはずです。
そういえば、ルトワックはトランプのブレぶりを心配しており、むしろボンペオを推していましたね。
ただし、「戦争をさせない」ことを最重要視する基本的考えは不動なはずです。
そのように考えると、少しはトランプが見えてくるのではないでしょうか。
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とにかくアクが強いので好き嫌いが真っ二つ割れる人ですね。
トランプが期限を先延ばししながらジワジワと脚抜けしようとしてたアフガンではバイデンさんは一昨年夏に「夜逃げ」やらかしす大チョンボ。
良い顧問がいないんですかね?
バイデンはサウジアラビア訪問でも実質のゼロ回答。
で、せっかく米国がジワジワと網をかけてイラン包囲網完全というところで、中国の仲介でイランとサウジが和解しやがった!
投稿: 山形 | 2023年3月11日 (土) 06時04分
トランプが言いたかったのは、米国に比べ一番の当事者たる欧州の負担が少なすぎるという事であって、それなら「(アメリカは)ウクライナへの支援を止める」という事を極端な言葉を用いて表現したものでしょう。
「ウクライナの成功を望んでいる」と表明していますし、トランプが大統領だったら戦争が防げたというのも肯首できます。
ただ、次期大統領候補として激戦のさなかのウクライナを前に、影響を考えずこういう事を言う見識の低さは如何ともしがたいと思います。
トランプ政権というのは、アメリカにとって「黄金の四年間」でした。
しかし、いま思うにそれはチームが良かったのであって、例えば中国との関係見直しに踏み切ったのも、ナヴァロのような逸材が側近として影響力を発揮したからだと思うんです。
トランプの本質は戦争嫌いの愛国リベラリストで、中・露の化けの皮が剥げた現在以降、どのような手腕を持ってとするか興味は尽きません。今でも考えますが、ボルトンが辞める直接の原因となったイラク攻撃中止は正しかったのか? 台湾を守るために具体的にどうするか、これもちゃんとした発信はありません。
それでもバイデンよりはかなりマシでしょうけれど。
現在までトランプ人気は衰えず、おまけにマコーネルの政界復帰は難しい容態だと言われています。議事堂襲撃事件の事実も少しづつめくれて来ています。トランプ御大に風が吹いていると考えられますが、まさか民主党がバイデン爺をそのまま立てるとも思えません。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年3月11日 (土) 10時56分
トランプさんの再登場を心底期待しております。私はほとんどトランプ信者です。しかし、トランプさんに期待はしているがやはり不安はあります。再度不正選挙が行われないとも限りませんし。民主党はホントに選挙で勝ったのだろうかという疑問は私には根強くありますね。あのような選挙が行われたのはアメリカの恥ではありませんか。
ウクライナの戦争を停止してもらいたい。極東の方へアメリカの関心が向けられますように。その前に中東がありますね。
アメリカが世界のリーダーとなれることを期待します。アメリカがロシアと仲良くなれますように、日米ロが協力できますようにと願っております。
投稿: ueyonabaru | 2023年3月11日 (土) 20時03分
> ueyonabaru様
「先の大統領選挙で不正は無かった」と言ってる人たちからも、結局「バイデンジャンプ」の原因までは納得できる説明は聞けませんでしたし。
来年の選挙も大いに心配です。
投稿: KOBA | 2023年3月12日 (日) 14時06分
KOBAさん
>「バイデンジャンプ」の原因
これはバイデンだから起きたのではなく、アメリカの選挙の開票は人口が疎な郊外から行わられ、最後に密集地の都心部で行われる手順です。
そして、トランプ支持層は郊外に多く、民主党の支持層は都心部に多いのは激戦州含めてアメリカの全体的な傾向なのです。
ですから、最初に開票される郊外の票を元に共和党が幸先よいスタートを切るも都市部の票が開票されるにつれて民主党が追い上げるという構図が繰り返されるのです。
近年の選挙で民主党が勢力を伸ばしているアリゾナやジョージアにしたってフェニックスやアトランタへの移住が進んだ結果、かつての共和党の地盤が崩されてきていると言えます。
投稿: 中華三振 | 2023年3月12日 (日) 15時21分
極端な話、プーチンの戦争を止められるのはプーチン本人しかいなかったと思います。強いて言うならば独裁者にへつらうために都合の良い情報を提供したインテリジェンスや軍上層部がそんなことをしなければプーチンも侵略を思いとどまったかもしれません。
ヒトラーは死ぬまで連合国との講和を考えず講和を計画したヒムラーを裏切り者扱いしたようにプーチンが生きている限りロシアの侵略は終わらないでしょう。
投稿: 中華三振 | 2023年3月12日 (日) 15時29分