要人警備態勢を根本的に見直すべきです
また要人暗殺が起きてしまいました。
メディアが作り出した模倣犯です。
狙われたのは岸田氏ですが、幸いにも難を避けることができました。
「岸田文雄首相が15日午前11時半ごろ、衆議院和歌山1区の補欠選挙の応援で訪れていた和歌山市内で、演説を始めようとしていたところ、発煙筒のようなものが投げ込まれた。白い煙が上がった後、爆発音がしたが、岸田首相はその場から避難し、けがはなかった。
岸田首相はこの日、和歌山市の雑賀崎漁港を視察。魚の試食を終えて演説を始めるところだった」
(BBC4月15日)
岸田首相の演説会場に爆発物投げ込む、男を現行犯逮捕 和歌山市・衆院補選応援で - BBCニュース
投げられたものは手製の爆弾のようなものでした。
BBC
発煙筒だったという説もありましたが、漁師の背中に破片が突き刺さっていたという報道がありますので、かつて過激派が使っていた手製のパイプ爆弾の一種だと思われます。
「銃器評論家の津田哲也氏によると、一般的なパイプ爆弾は、パイプの中に火薬と起爆装置などを詰め込んで密閉。着火とともに内部の圧力が高まり、破裂する仕組みという。
和歌山市の現場での映像を確認した津田氏は、爆発物を覆う金属のようなものが、シルバー色系統だった点に着目。仮に材質が鉄だった場合、破裂の衝撃で多数の負傷者が出てもおかしくないとし、「薄いアルミニウムなどが使われたのではないか」とみている」
(産経4月15日)
爆発物は「パイプ爆弾」か 自作も可能、ネットに情報も - 産経ニュース (sankei.com)
犯人と首相の距離は10メートルほどで、この「金属製のパイプ」が鉄製で、釘やガラス、パチンコ玉などが入れられていた場合、首相と周囲の人も含めて多数の死傷者が出たはずです。
爆弾を使ったということは、無差別テロと呼んでいいでしょう。
聴衆に紛れてこの木村隆二という男は、カチカチと手製爆弾を点火しようとして、周囲の屈強の漁師に取り押さえられたようです。
この漁師の行動がなければ、2発目が爆発していた可能性があります。
この漁師さんの勇気と豪腕には敬服しますが、着火していた場合、大惨事となっていたはずです。
ところで事件当日の流れは以下でした。
首相演説直前に爆発、威力業務妨害容疑で24歳男逮捕 岸田氏は無事(産経新聞)|dメニューニュース(NTTドコモ) (docomo.ne.jp)
時系列で見てみましょう。
NHK【瞬間の映像】筒状のもの投げ込まれ悲鳴 現場にいた人たちは | NHK | 首相演説先 爆発事件
犯人は群衆に潜んで手製爆弾を着火しようとしていました。
しかし聴衆の中の警官は、聴衆を監視するのではなく、視線は岸田氏へ行ってしまっており、まったく気がついていませんでした。
気がついたのは周囲にいた漁師で、彼がいなければ第2弾も投げられていたはずです。
NHK
首相は上図の④から演説待機場所に行こうとしていました。
この首相の演台への動線は、完全に聴衆に背を向けてしまうもので、聴衆の中にいたテロリストに撃ってくれといわんばかりです。
NHK同上
このとき木村某は一発目の手製爆弾を投げつけて、首相の足元に落下します。
SPは初め手製爆弾を鉄板の入ったバックで押さえ込むようにしています。
NHK同上
その後、SPは手製爆弾を足で聴衆方向に蹴り飛ばしています。
この行動は非常に問題です。
このSPはまったく爆弾訓練をしてこなかったとみえて、これが触発式信管ならその場で爆発していました。
しかも多くの人がいる方向に蹴るとは、大丈夫ですか、この警官。
【発生の瞬間映像】岸田総理の演説会場で爆発音 男を威力業務妨害容疑で現行犯逮捕 | TBS NEWS DIG
テロリストは周囲の人たちによって、押さえ込まれてしまいました。
といってもテロリストを捕らえたのは勇敢な漁師であって、警官はその後に慌てて確保しただけのことですが。
岸田首相の演説直前に爆発音 首相は無事 容疑者逮捕 和歌山|NHK 首都圏のニュース
木村が捕まった前に投げた手製爆弾が爆発して白煙を出します。
「手製のパイプ爆弾」「発火装置仕込み時限で爆発させたか」…識者分析:写真 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
首相を複数のSPで取り囲むようにして車に保護しました。
このときの首相の退避姿勢も頭ががら空きで、第3撃が受けていたら首相は頭部に打撃を受けてもおかしくはありませんでした。
結論的に言えば、警備当局の度し難い失敗といわれても致し方ないでしょう。
今回は地元の県警だけに任せずに警視庁警備課が警備案を了承しているので、そうとうに深刻に総括してもらわねばなりません。
日大危機管理学部の福田充氏はこう述べています。
「1人のSPがよく対応したとか、漁協の漁師がよく取り押さえたとか、今回の事件で問題なのはそんな点ではない。この現場の要人警護の全体、警備計画そのものがダメだと言いたい。動線も、公衆対応の警戒線も、警官SPの姿勢・視点も、会場の出入規制も、手荷物検査も出来ていない」
福田充 Mitsuru Fukuda
SPは群衆に紛れ込んでいるテロリストを発見できず、手製爆弾を投げさせてしまっています。
そして首相の近辺にいたSPは、手製爆弾が首相の足元にころがって来るまで気がついていません。
これが威力が高い軍用手榴弾だった場合「爆発時5メートル範囲以内の人間は致命傷を受け、15メートル範囲に殺傷能力のある破片が飛散する。 更に、一部の細かな破片は230メートルまで飛散した」(ウィキ)場合がありますから、首相はおろか周囲の人々は確実に殺傷されていたでしょう。
警備計画はこうなることを未然に防ぐために、要警護者と聴衆の距離、動線を計画せねばいけません。
金属探知機ていどを設置するのは簡単ですので、設置しなかったほうが不思議でした。
福田氏の指摘どおり、、個別のSPの対応うんぬんではなく、警備計画全体が銃器と爆弾による無差別テロの時代に対応していないのです。
仮に犯人が山上某のように銃器を持って、やや遠方から狙撃したらどうだったでしょうか。
前述したように、首相は演説位置に行くまでに、背中ががら空きで聴衆の眼にさらしっぱなしにしています。
また退避させる際も、頭部は丸出しのままです。
標的としてこれほど簡単な的はありません。
ちなみに、同じようなケースの場合、米国シークレットサービスは、安全を確保するまで要警護者を組み敷いています。
爆弾はテロの凶器としては扱いにくいものです。
周囲まで巻き込んでしまうために、テロリストにためらいが生じるからです。
本気で爆弾をテロに使うなら、自爆テロのように自分もろともこの会場全体を吹き飛ばす威力のものを用意しなければなりません。
容易に素人でも爆弾や銃器を製造できるノウハウがSNS上で拡散されているのですから、それを想定していない今の警備方法はもはや過去の遺物なのです。
岸田首相を襲撃した犯人が取り押さえられる瞬間の動画&爆発する瞬間の動画まとめ - GIGAZINE
木村某は要監視対象にもなっていなかったようです。
「まじめでいい子」だったそうですが、先進国のホームグロウン・テロリストはおしなべて中産階級出身で高教育を受けた「いい子」です。
こんなことが半年間に2度も起きるような国になったわけで、それを前提に要人警護を立てるしかないのに、警備当局はそれを怠りました。
今後要人は、選挙演説中には手荷物検査を実施し、前と横のぐるりは防弾ガラスで囲むしかないでしょう。
といっても携帯で作動させる方式も流布されていますから、防ぐことは簡単ではありません。
今回このテロに対しての罪名は、殺人未遂ではなく威力業務妨害だそうです。
脱力します。
この金属探知機も設置しないような杜撰な警備計画、爆弾を群衆に向かって蹴る警官、そしてこの罪名を聞くと、警察は「第2第3の山上」を量産したいようです。
警備当局は半年に2度も大失態を重ねたわけで、抜本的に警備態勢を見直すのが当然です。
こんなことでは世界の要人を集めたサミットなど出来ませんよ。
首相は屈することなく街頭演説を続けたようです。
テロに対して、大変に立派な姿勢で見直しましたが、今後の仕事はテロの厳罰化です。
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アルミっぽいですね。
読売とかでは専門家「時限発火装置付き」のように言ってますけど、ライターで着火して投げてから50秒程度ということは···ただ長い導火線付けたシンプルな物かと。
火薬は黒色火薬でしょうが、量は少なく釘等の榴弾も無かったようで威力は極小。
2発目を点火する前に押さえ付けた漁師のおっちゃんは見事。
問題は山上を持ち上げたマスコミと、統一教会問題にすり替えた野党。
そして残念なことにヤフーニュースのコメント欄とか(正直バカはっかし)では「増税して国民をおざなりにして利権ばかり貪っていたから狙われもする」とか「国民を不幸にしてるんだから相応の報い」、全く関係無いことをもっともらしく言い訳にして攻撃する連中ですね。
民主主義国の選挙で選ばれた安倍さんは殺され岸田も狙われた。ただの卑劣なテロ実行犯です。法改正してただの威力業務妨害罪や殺人未遂とは別に「テロ罪」として処理すべき事案です。現役首相が狙われたってことは「国家転覆罪」の未遂でしょう。
SPの対応も「岸田を素早く守ったが、ブツを聴衆の方へ蹴った」と批判してたり(まあ、確かに)、某国会議員等は「選挙で人気取りのための仕込みでは」などと呟いたり。。
言論の自由があるのは素晴らしいことですけど、いくらなんでも品が無さすぎませんかね。ネット時代だからすぐに思い付いたことを書き込んじゃうんでしょうけど。
投稿: 山形 | 2023年4月17日 (月) 06時26分
安倍氏暗殺事件の時もそうでしたけど日本の自称・リベラルの左翼が言う民主主義は暴力に屈しないという文言は民主主義(自分達に近い左翼思考)が保守派からの批判に遭わないという身勝手で傲慢な思想ですからね。
結局、彼ら彼女らは民主主義を正しく理解していないから「テロは許されないが〜テロを生み出した背景を考慮すべし」みたいな逃げ口上にもならない前置きを踏まえた上でテロ思想に共鳴してしまうのでしょう。
この人たちは2.26事件や赤報隊事件についても同じようなことを言うのだろうか。
投稿: 中華三振 | 2023年4月17日 (月) 08時26分
仕事で使用する
金属製のねじ込みキャップと
ニップルとよばれるパイプにネジ加工したものですね・・・
薄い鉄やステンレス素材ならば
ホームセンターでいつでもいくらでも手に入る材料です。
こんな危険なものが作れるのですね
(問題は中身でしょうが)
無事でよかったです。
ウログ主さんの仰る様に
警護のシステムを再デザインしないと
なんともならないですね、恐ろしいことが
再度怒らないことを願うばかりです。
投稿: ながしめ | 2023年4月17日 (月) 08時55分
前回の安倍氏暗殺の時も当初マスコミは原因の一端を担った意識があったのかお悔やみムード一色でしたが、犯人の素性が公開された途端に手のひら返しというゲスという言葉でも足りない愚行を行いました。
今回も今のところ自己弁護に注力している状況ですが彼らにとって有益な情報が出た途端に模倣犯を生んだ原因になった事も忘れてお祭り騒ぎになるのでしょう。
とりあえずG7外相会議の直前にこれが起ったという事を警察組織は心に刻みつけておかなければいけませんね。
悲しい話ですが、もう国民の善意に甘える警備体制ではダメだというのが今の日本の現実です。
投稿: しゅりんちゅ | 2023年4月17日 (月) 12時03分
この犯人の男がどのような供述をするかは知らないけれど。
それが例えば、警備や警護のあり方が如何に稚拙かを世に知らしめるためとか、我々の社会がどれほど脆弱で、テロリストに好意的ですらあるかを示すためとかであったとしても、無視するのが宜しいですね。
テロリズムを実行した者がまた現れたという事実だけを見て考え、対策するのみです。
どうせマスコミは「売れそうなトピック、売りたいトピック」にして報じるだろうけれど、語り語られる「理由」の一切に耳を貸す必要は無く、男に反面教師的な「功」ですら与える必要も無く、テロリストの人物像やバックグラウンド情報に価値を持たせる必要も無いです。
投稿: 宜野湾より | 2023年4月17日 (月) 12時32分
思いついた事をどんどん書き込んでいい風潮と、明らかに煽ってるアカウントがコロナ以降ほんとあけすけで品がない…。そこに逐次ネタを投下し続けるマスコミ。
たとえ岸田さんが無事でも誰か巻き込まれて亡くなっていたら、それこそ手柄のように身代わりだの犠牲だの平気であいつは生きてると書き立てているでしょうね。
去年の時よりはネット上にNZテロの首相の声明を引いて「テロリストに何も与えるな」という意見が増えて良いねの数もそれなりにあり、賛否の声はあれど周知が始まるのはなによりです。
警護の見直しは絶対必要ですが、人手不足で増員が望めない昨今、演説の場も取材も報道もまとめて見直すことになります。
見直してもテロは起きる訳で、私達は警察に発砲を許すなら身を伏せ隠す所作を地震時と同じくらい身体で覚えて、それでも起きる流れ弾被弾についてある種の諦めと共に食らった時の補償について考えないとです。
バスが過激派に焼かれた時代に戻りつつあっても、それでも世界一安全な国に私達はとりあえずいます。キッシー、この後アフリカ歴訪ですよね、行き先選びはナイスです。無事を祈ります。
投稿: ふゆみ | 2023年4月17日 (月) 13時57分
安倍総理暗殺事件を起こした山上のバカらしい映画が作られ、その試写会で宮台真司は「国家が何も対処しない。そういう場合の覚悟の暴力対応は認めらるべき」との、いわゆる「自力救済論」の考え方を堂々と開陳しています。こういう考え方は、かつてのラディカルの思想そのものだし「先祖返り」とも言えるもの。
けれど、そういう風潮は左側の世界で確かに「容認」される方向へ傾いてます。
要人演説時における「表現の自由」との兼ね合いについて、安倍首相をヤジり倒す側がこれを排除した北海道警に勝訴するという転倒した判決が出ています。
今回の警護そのものの問題は当然として、判決以来の聴衆への行政側のスタンスとして警察権力はより控えめに行使されるようになったと思います。つまり、警護捜査の対象を聴衆へは向かわせられないのです。
これまでのリベラルの枠を超えたラディカルな行動様式についても、左翼陣営やマスコミ、司法の在り方までが加勢しているような具合です。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年4月17日 (月) 14時13分