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« 奈良県知事選の教訓 | トップページ | 中国の台湾侵攻を正当化する「ひとつの中国」論 »

2023年4月12日 (水)

仏マクロン、訪中して台湾を売り飛ばす

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スペイン首相サンチェス、フランス大統領マクロン、欧州委員長フォンデアライエンなどのEU勢が、争うようにして習近平詣でをしています。
去年まで含めると、11月にはドイツ首相ショルツ、12月にはEU大統領ミシェルが中国に行っています。

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産経

「中国の習近平国家主席は6日、北京を訪問中のマクロン仏大統領、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長の両首脳と会談した。米国主導の「対中包囲網」が狭まる中、中国としては欧州と経済関係を強化し、米欧の結束にくさびを打ち込む狙いがある。マクロン氏はロシアが侵攻を続けるウクライナの和平実現に向けて習氏に協力を求めた」
(毎日4月7日)
中国とフランス、EU首脳会談 習近平氏、米国との同調阻止狙い | 毎日新聞 (mainichi.jp)

ウクライナ戦争に仲介を求めるということ自体は愚行ではあるものの、まだ許せます。
NATOには、これ以上の支援を送るカネもなければ根性もない。
さっさと停戦して、今年は静かなクリスマスを迎えたい、これが本心だということは理解できます。

許しがたいのは、台湾に関してもこのような言質を、習近平に与えてしまったことです。
しかも、中国軍が台湾を包囲する大演習をしている時期に!
マクロンはなんと言ったのか。

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まるで臣下のよう、と東野篤子氏に評されたマクロン

「フランスのマクロン大統領は、米中の対立が激しくなっている台湾問題をめぐり、欧州の利益を最優先で検討し、単に米国に追従するべきではないとの考えを示した。仏紙レゼコー(電子版)などが9日、マクロン氏の訪中時のインタビューとして報じた。(略) 
レゼコーによると、台湾問題について問われたマクロン氏はまず、「欧州人としての関心事は(欧州の)統一だ」とし、中国に欧州の団結を示すためにフォンデアライエン氏と訪中したと説明。「中国も自分たちの統一を重視しており、彼らの見地からすると台湾もその一部だ。中国の考え方を理解することは重要だ」と述べた。 」
マクロン氏、台湾問題「米国に追従すべきでない」 戦略的自立を主張(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース 

このマクロンの「台湾問題で米国の側につかない」という言辞は、いつあっても不思議ではない台湾侵攻が起きた場合、フランスは民主主義陣営の立場に立たず、国境の実力による変更を容認し、法による支配すら否定し、「中国の統一を理解する」ということになります。
もちろんウィグルはおろか、香港なんてアブナイことはひとことも言いません。

これで自由と人権の旗手を気取っているのですから、早々に看板を降ろすべきです。

フランスは、このような美的表現をとって説明していますが、要は、エアバスを160機買ってくれるという金満大国に、もみ手をしたいだけのことです。

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【社説】対中抑止力を弱めるマクロン氏 - WSJ

「あまりにも長い間、ヨーロッパはこの戦略的自治を構築していません。今日、イデオロギーの戦いに勝った」とエマニュエル・マクロンは「エコーズ」とのインタビューで語った。
しかし、この戦略は今実装されなければなりません。「ヨーロッパにとっての罠は、その戦略的位置の明確化に達したとき、それは私たちのものではない世界の混乱と危機に巻き込まれることです」
Emmanuel Macron : « L'autonomie stratégique doit être le combat de l'Europe » | Les Echos

どうやらマクロンは、フランス特産のゴーリズム(ドゴール主義)に回帰したようです。
しかもウォールストリートジャーナルが評するように「最悪のタイミングで」。

ところで、ゴーリズムとはこのような考え方です。

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ド・ゴール
ウィキ

「その基本的な信条は、「フランスの存続のためにフランスは外国に依存すべきではなく、フランスはいかなる外国の圧力に対しても従属すべきではない」というものだった。
この信条に基づき、ド・ゴール政権下のフランスは独自の核抑止力を作り、アメリカ合衆国への過度の従属を避けるためにNATO軍事機構からの脱退を行うこととなった」
ド・ゴール主義 - Wikipedia

もちろんマクロンは、ド・ゴールのようにNATOやEUまでを否定することはしませんでしたが、中心となる思想は一緒です。
すなわちその基本的な信条は、「フランスの存続のためにフランスは外国に依存すべきではなく、フランスはいかなる外国の圧力に対しても従属すべきではない」というものです。
この場合、「いかなる外国」とは、英米のアングロサクソンを指します。
英米と対峙する「第3の勢力」として、フランスとEUを対峙させるという意思表示です。

また、経済に関してもこのような動きをしています。

「【3月30日 CGTN Japanese】中国海洋石油グループ(CNOOC)は29日、上海で中国初となる人民元決済による輸入液化天然ガス(LNG)取引が成立したと発表しました。これは、中国の石油・天然ガス貿易におけるクロスボーダー人民元決済が実質的な一歩を踏み出したことを示しています。
今回の取引は、上海石油・天然ガス取引センターでCNOOCとフランスのエネルギー大手トタルエナジーズが合意したものです」
(CGTN3日津30日)
中国初の液化天然ガスクロスボーダー人民元決済取引が成立(CGTN Japanese) - Yahoo!ニュース 

マクロンはこのように中国で述べています。

フランス大統領にとって、戦略的自治は、ヨーロッパ諸国が「属国」になるのを防ぐために不可欠であり、ヨーロッパは米国と中国に対する「第三の極」になることができます。
「私たちはブロックツーブロックの論理に入りたくありません」と、「ドルの治外法権」にも反対する国家元首は付け加えます」(Les Echos)

私たちヨーロッパは、米国の属国ではなく戦略的自治を大事にするブロックです。
中国様、よろしかったら、どうぞこの非米ブロックと仲良くしませんか。
具体的には、気位だけが高いプーチンを説得できるのは、お友達の貴国しかいないのです。

先日訪露した際に出した仲介案はトレビアンです。

そう、私たちもロシアを解体にまで追い詰める気はありません。
あそこには一行たりともロシア軍の撤退、占領地の放棄は書かれていませんでした。

これは現状維持で停戦する、ミンスク合意の焼き直しです。
頭が固く頑固なゼレンスキーは米国を頼りにしていますが、私たちは内心不愉快に思っています。

・・・と、マクロンが習に言ったであろうことを再現してみました。
フランスの本音は、マクロンが2月18日に言った、「ロシアの敗北を願うが崩壊は望まず、そんな立場をとらない」というほどほどにという考えです。
フィリップ・セトン駐日フランス大使は、フランスの立場をこう説明しています。

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「ウクライナが納得するまで支援」駐日フランス大使が語った 欧州の立場とアジア安保 (tv-asahi.co.jp)

「フランス大統領はドイツの首相とともに戦争へとエスカレートさせないよう、ミンスク合意を復活させようと奮闘しました。これが去年2月のマクロン大統領のモスクワ訪問の目的でした。しかし、これらの努力は実りませんでした」
(駐日仏大使インタビュー)

つまり、フランスはウクライナを支援するが、使いモノにならない軽戦車支援ていどのものでお茶を濁して、ロシア軍が決定的に敗北し国家崩壊に至る打撃を与えない。
そしてウクライナ戦争の落し所は、ミンスク合意の復活だ。
ちなみにミンスク合意とはこのような内容です。

「2014年に勃発したウクライナ東部紛争をめぐり、ロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの首脳が2015年2月にベラルーシの首都ミンスクでまとめた和平合意。双方の停戦や親ロシア派勢力が占領する2地域に事実上の自治権にあたる「特別な地位」を与えることなどで合意されたが、ロシアがウクライナは合意を履行せず、武力解決を試みていると主張し圧力を強めていた」
(インタビューと同じ)

だから、フランスはウクライナに占領地の全面奪還など言わないように説得する。
ドネツクやクリミア、アゾフ海沿岸は諦めて、領有権だけの主張に止め、占領地にはミンスク合意どおり「特別な地位」を与える。
習近平はプーチンをなだめて、この線で丸く納めてほしい。

とまぁ、こんなところで、マクロンは台湾をエサにして中国を取り込もうとしたのでしょうが、逆に自由主義陣営の分裂に手を染めてしまいました。
習の広州視察にまでついて行ったというのですから、ここまで媚を売ればもう芸のうちです。

「中国を公式訪問したフランスのマクロン大統領は7日、南部の広東省広州市を訪れ、2日連続で習近平国家主席との会談と夕食会に臨んだ。習氏が北京から行動を共にする形で外国首脳を連日もてなすのは異例。米国との対立が長期化する中、中国は欧州諸国との関係強化の要としてマクロン氏を重視している」
(時事4月8日)
中国主席、仏大統領と連日会談 広州に同行、異例の厚遇:時事ドットコム (jiji.com)

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Jakub Janda 楊雅嚳(@_JakubJanda)さん / Twitter

ウォールストリートジャーナルは、「最悪のタイミングでド・ゴール主義に戻った」、として社説でこう斬って捨てています。

「フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、21世紀版のシャルル・ド・ゴールになることを夢見ており、彼の夢想の中には欧州が米国と距離を置くべきだとする考えも含まれている。しかし彼は先週末、中国共産党トップ・習近平国家主席と会談した後という最悪のタイミングでド・ゴール主義的なひらめきを示してしまった。(略)
マクロン氏が対ロシア戦争で米国民の支持を減らしたいと思っているなら、これ以上うまい発言はなかっただろう。米国の兵器と諜報活動がなければ、ロシアはずっと以前にウクライナを打ち負かしていただろうし、ロシアと国境を接する北大西洋条約機構(NATO)加盟国の少なくとも1カ国も、恐らく同じ運命をたどっていたはずだ。
マクロン氏は、米国の兵器やエネルギーに対する欧州の依存度を軽減したいと述べている。それは結構だ。しかしそれなら、そのための資金を出し、政策を変更してはどうか 」

【社説】対中抑止力を弱めるマクロン氏 - WSJ 

列国議会同盟も直ちに、「マクロンはヨーロッパを代表していていない」という抗議声明を出しました。

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Inter-Parliamentary Alliance on China

また同時期に中国を訪問した欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、中国に対してロシアに武器供与をするな、EUはゼレンスキーを断固支持するという、大変に原則的な立場を中国に伝えて、ムシュ・デ・プレンジデントをたしなめた形になりました。


「欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は同日、別の記者会見に臨んだ。中国がロシアに武器を提供すれば国際法違反となり、欧州連合(EU)と中国の関係を「著しく損なう」ことになると強調した。
フォン・デア・ライエン氏はまた、中国が「公正な和平を促進する」役割を果たすのを期待していると発言。ロシア軍の完全撤退を求めるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の和平案を「断固として」支持すると述べた」
(BBC4月7日)
マクロン仏大統領が訪中 習氏に「ロシアを理性的にする」よう要請 - BBCニュース

グレンコ・アンドリー氏の冷やかな視線。

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日本も、来るG7サミットを目前にして、議長国としてこのような自由主義陣営を分断しようとするマクロンに厳しい警告を発せねばなりません。
このまま行くと、G7共同声明に台湾防衛を書き込むどころか、「中国を取りこもう」などというものになりかねませんからね。

 

 

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コメント

グレンコ·アンドリー氏と同じことを思いました。去年の2月、マクロンはとんだピエロでした!

 林外相より酷い媚中ぶりですね。

 仏大手紙の調査では、いま大統領選をやればマクロンはルペンに負ける、という信頼性がある数字が出ています。
だから、たんに年金制度改革への批判や支持率回復のためにする経済界へのおもねりの表出のように思ってました。

しかし、かつては「NATOは脳死状態」と言ってみたり。
マクロンに限らず、どうもフランスは和を乱すのがお好きなようです。
新しいというだけで、クソの役にもたたない哲学を珍重して知識人に害悪を振りまいて来たフランスらしさ、とも思います。

そんなら、「NATOから米国を引けば、アンタら立っていられるの?」と聞き返したくもなります。
とんだ勘違い野郎にすぎないし、中国から見れば完全にデュープス。
フランスという国家や、自らの力量を正しく測れない理想先行のダメな指導者の一例ですね。

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