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2023年5月16日 (火)

英国、ウクライナに「長い拳」を供与

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とうとう英国は、いままでためらってきた長距離巡航ミサイルストームシャドウの供与に踏み切り、間髪をいれずウクライナは使用を開始しているようです。
小泉悠氏によれば、実は数カ月前から供与されていたのですが、ミグ29のシステムに統合するのに手間取っていたようです。

やっと使用開始にこぎつけたようで、ルハンスク後方の目標に命中したことが確認されています。
いままでハイマースなどでは届かなかった後方の目標が攻撃範囲に入ったことで、ただでさえ怯えているロシア軍にとっての心理的圧迫感は相当なはずです。

「ウクライナ軍は2023年5月12日と13日にウクライナ東部ルハンスク州Luhansk Oblastのロシア後方地域のルハンスク(露語:ルガンスク)市を英国の長距離巡航ミサイル「ストームシャドー(Storm Shadow)」で攻撃したとのことで、ウクライナがロシアの物流を狙う可能性についてロシアの不安を高めているようだ」
(ウクライナプラウダ5月4日)
戦争研究所は、ウクライナ軍がバクムット戦線で何キロを奪還したかを報告しています|ウクライナ・プラウダ (pravda.com.ua)

ルハンスク親ロシア軍は、当初はウクライナ製の「グロム2」短距離弾道ミサイルと主張していましたが、後に回収された部品に「STORM SHADOW」と書かれてある物が発見されて修正しました。

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ストームシャドウの回収された部品
JSF(@rockfish31)さん / Twitter

ストームシャドウは、英仏共同開発の最新鋭長距離巡航ミサイルです。

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航空機搭載ストームシャドウ巡航ミサイル
航空万能論

「ストームシャドウは長距離のスタンドオフ空中発射ミサイルであり、間違いなく世界で最も先進的な兵器です。ミサイルは、英国が開発した強力な通常弾頭を備えており、埋設および保護されたコマンドセンターなどの重要な強化されたターゲットとインフラストラクチャを攻撃するように設計されています。
ミッションとターゲットのデータは、航空機がミッションを離れる前に武器のメインコンピューターにロードされます。解放後、翼が展開し、武器は地形プロファイルマッチングと統合された全地球測位システム(GPS)を使用して低高度でターゲットに向かってナビゲートします」
イギリス空軍 - ストームシャドウ (archive.org)

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Anton Gerashchenko

ストームシャドウの射程は250キロで、米国がウクライナに供与しているハイマースの射程が80キロですから、実にその3倍に達します。
この公表されている250キロは輸出型であって、英国が供与するのは自国用でさらに射程が長いと言われています。

もちろん英国はウクライナに領外目標に使用しないことを約束させており、ウクライナは承認しています。
供与される数はわかりませんが、英国はこれを約600基ほど保有していますが、数発ということはないでしょうが、そう多くはなさそうです。
ゼレンスキーは再三に渡って射程約300キロの地対地陸軍戦術ミサイル(ATACMS) を要請してきましたが、ホワイトハウスはロシアを刺激したくないために、これを却下し続けてきました。
米宇交渉が不透明なために、英国が先に供与を開始してしまったというわけです。

英国のストームシャドウは航空機発射型で、トルネード攻撃機に4発つるして飛行している写真が公表されています。
ウォーレス国防相は、「ストームシャドウ」はウクライナが所有するソビエト連邦時代の航空機でも使用できると述べ、それを可能にした技師や科学者を称賛した」(ガーディアン5月19日)と述べているところをみると、すでにウクライナ空軍機の運用は可能となっているようです。

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英国も当初は米国同様に供与に慎重姿勢でしたが、決断に踏み切った理由を、ロシアの無差別な民間施設を狙ったミサイル攻撃によって2万3千人もの民間人が犠牲になったことに対する「比例対応」だと、ウォーレス国防相は述べています。

「大臣は、この決定はロシアの侵略、特にモスクワによるウクライナの民間人の繰り返しの標的に対する「比例した対応」であると述べた。少なくとも23,000人の民間人が死亡または負傷したとウォレスは述べた。ロシアは「医療施設、病院、診療所、医療センターに対して788回の攻撃」を行い、多くの場合、ミサイル攻撃で民間人を殺害したと彼は付け加えた。
「ストームシャドウの使用は、ウクライナがウクライナの主権領土内に拠点を置くロシア軍を押し戻すことを可能にするだろう」とウォレスは議員に語り、「ロシアは彼らの行動だけがそのようなシステムの提供につながったことを認識しなければならない」と付け加えた」
(ガーディアン前掲)
英国がウクライナに長距離ストームシャドウミサイルを送ると国防相は発言 |防衛政策 |ガーディアン (theguardian.com) 


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ロシアが「最大規模の」ドローン攻撃 ウクライナ首都と各地で - BBCニュース

ウォレスは、ロシア軍が大規模な民間施設爆撃し続けたことを民間人を標的にした無差別エスカレーションととらえており、ストームシャドウ供与はその「エスカレーションに応じて調整された比例対応だ」と述べています。
そもそもウォーレスが言うように、「ロシアが侵攻しなければ、こうした動きは何一つ必要なかった」のです。
ロシアよ、恨むならみずからの民間人虐殺を恨むがいい、というわけです。

またこのストームシャドウは、ウクライナの自衛に「最大の好機」をもたらす「ゲームチェンジャー」となるとも述べています。
ゲームチェンジャーとは、戦局のルールを変えてしまうような決定的な兵器のことですが、供与数も限られており、ストームシャドウだけでは大きく戦況を左右することはないはずです。
しかし、その効果的な使い方いかんでは大きな追い風となることでしょう。

もっともありえる推測としては、クリミア大橋の破壊です。
クリミア大橋が破壊された場合、クリミア半島はロシア本土から遮断され孤立します。
おそらく同時に東部とクリミアを結ぶ南部サポリージャが遮断されるでしょうから、広く薄く延びたロシア軍は相互に支援が不可能となり、一気に苦境に立たされることになります。

いずれにせよ、今後、ストームシャドウという長い拳を得たウクライナ軍に、ロシアは怯え続けることになるはずです。

※改題しました。

 

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コメント

英国の供与発表から直後に使えるもんじゃ無いはずなのに?と疑問でしたが、ミグの火器管制システムへの対応を数ヶ月でやってのけたと!たぶんBAeの現場はデスマーチ(笑)。よくやり遂げました。
単位はフランスと共同開発なのでメトリックだろうけど。。

 ストームシャドウ供与に関して、マスコミコントロールもお見事でした。
実際にはATACMSさえウクライナへ供与済みでは? そうでなくとも訓練ぐらいは開始しているだろう、と思わせるに充分なお手並みです。
ロシアによるあからさまな民間人や施設への無差別攻撃は増える一方だし、そのためにもATACMSの供与は必須じゃないでしょうか。

今までもロシア国内では爆発事件や暗殺が毎日のように頻発しています。反転攻勢が本格化した場合、ロシア国内ももたないかも。
ともあれ、はぼ一発勝負。ウクライナに深刻な失敗は許されません。

「代償は、ロシアにとって耐えられないものにしたい」(仏首相)

この決断がATACMS供与の呼び水となることを願います

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